(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ハーモニック減速裝置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
F16H1/32 B
(21)【出願番号】P 2022006221
(22)【出願日】2022-01-19
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521435732
【氏名又は名称】盟英科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 昆儒
(72)【発明者】
【氏名】李 昌霖
(72)【発明者】
【氏名】李 東祐
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 慶輝
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060423(JP,A)
【文献】特開2011-220386(JP,A)
【文献】特開2009-133414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットに接続され、中心軸を中心に回転するように前記駆動ユニットによって駆動する波発生器と、
複数の第1の外歯車構造と、複数の第2の外歯車構造と、各第1の外歯車構造と各第2の外歯車構造との間に配置される分割溝とを外周部に配置すると共に、前記波発生器の外周部と接続される、可撓性歯車と、
前記複数の第1の外歯車構造と噛み合うための複数の第1の内歯車構造を有する第1の剛性歯車と、前記複数の第2の外歯車構造と噛み合うための複数の第2の内歯車構造を有する第2の剛性歯車と、それぞれ定義された2つの剛性歯車と、
を備え、
前記第1の剛性歯車に含まれる前記第1の内歯車構造の数は、前記可撓性歯車に含まれる前記第1の外歯車構造の数と同じであり、前記第2の剛性歯車に含まれる前記第2の内歯車構造の数は、前記可撓性歯車に含まれる前記第2の外歯車構造の数よりも多くされ、前記第1の剛性歯車の互いに反対側である側では、それぞれ内周側及び外周側と定義され、前記第2の剛性歯車の互いに反対側である側では、それぞれ内周側及び外周側と定義され、前記第1の剛性歯車は前記第2の剛性歯車の近傍に配置され、前記第1の剛性歯車における前記内周側と前記第2の剛性歯車における前記内周側は、互いに対向して配置され、前記第1の剛性歯車における各前記第1の内歯車構造は、第1の上面及び4つの第1の連結面を有し、4つの前記第1の連結面はそれぞれ前記第1の上面4つのエッジに接続されており、各前記第1の上面と断面となす第1の交線と、前記中心軸に平行となる第1の水平ラインとなす第1の角度は0.1~5度であり、前記断面において、前記第1の交線と前記中心軸との直線距離は、前記第1の剛性歯車における前記内周側から前記第1の剛性歯車における前記外周側に向かって徐々に減少し、前記断面における法線方向と前記中心軸は互いに垂直となり、かつ、前記中心軸は前記断面を通過
し、
前記可撓性歯車が前記波発生器によって駆動される場合、前記可撓性歯車の径方向の変形の最大の寸法は可撓性歯車長軸として定義され、前記可撓性歯車の径方向の変形の最小の寸法は可撓性歯車短軸として定義され、
前記可撓性歯車長軸をC
L
と、前記可撓性歯車短軸をC
S
と、各前記第1の内歯車構造における第1の歯部面幅をL
1
と、前記第1の角度をθ
1
とすると、C
L
、C
S
、L
1
、θ
1
はθ
1
=C
1
*tan
-1
((C
L
-C
S
)/(4*L
1
))の関係式を満たし、ただし、0.08≦C
1
≦0.45である
ことを特徴とする、ハーモニック減速裝置。
【請求項2】
前記第2の剛性歯車における各前記第2の内歯車構造は、第2の上面及び4つの第2の連結面を有し、4つの前記第2の連結面と前記第2の上面における4つのエッジに接続されており、各前記第2の上面と前記断面となす第2の交線と、前記中心軸に平行となる第2の水平ラインとなす、第2の角度は0.1~5度であり、かつ、前記断面において、前記第2の交線と前記中心軸との直線距離は、前記第2の剛性歯車における前記内周側から前記第2の剛性歯車の前記外周側に向かって徐々に減少する、請求項1に記載のハーモニック減速裝置。
【請求項3】
前記可撓性歯車が前記波発生器によって駆動される場合、前記可撓性歯車の径方向の変形の最大の寸法は可撓性歯車長軸と、前記可撓性歯車の径方向の変形の最小の寸法は可撓性歯車短軸と定義され、
前記可撓性歯車長軸をC
Lと、前記可撓性歯車短軸をC
Sと、各前記第2の内歯車構造における第2の歯部面幅をL
2と、前記第2の角度をθ
2とすると、C
L、C
S、L
2、θ
2は、θ
2=C
2*tan
-1((C
L-C
S)/(4*L
2))の関係式を満たし、ただし、0.08≦C
2≦0.45である、請求項
2に記載のハーモニック減速裝置。
【請求項4】
前記可撓性歯車に環状本体が定義され、各前記第1の外歯車構造は前記環状本体の外周部に形成され、各前記第2の外歯車構造は前記環状本体の外周部に形成され、かつ、複数の前記第1の外歯車構造と複数の前記第2の外歯車構造との間に前記分割溝が形成される、請求項1に記載のハーモニック減速裝置。
【請求項5】
前記第1の外歯車構造の歯先円(Addendum Circle)直径をD
a1と、前記第1の外歯車構造の歯元円(Dedendum Circle)直径をD
f1と、前記第2の外歯車構造の歯先円(Addendum Circle)直径をD
a2と、前記第2の外歯車構造の歯元円(Dedendum Circle)直径をD
f2と、前記分割溝の幅をW
Gとすると、
D
f1<D
f2である場合、D
f1、D
a2、W
Gは次の関係式を満し、
D
f1>D
f2である場合、D
a1、D
f2、W
Gは次の関係式を満し、
前記可撓性歯車に第1の環状部、第2の環状部及び連結環状部が定義され、前記第1の環状部の一方側部は、前記連結環状部と接続し、前記連結環状部の一方側部は前記第2の環状部と接続し、複数の前記第1の外歯車構造が前記第1の環状部の外周部に形成され、複数の前記第2の外歯車構造は前記第2の環状部の外周部に形成され、前記連結環状部の外周部、複数の前記第1の外歯車構造及び複数の前記第2の外歯車構造は共に前記分割溝を形成し、前記第1の環状部の厚みをt
1と、前記第2の環状部の厚みをt
2と、前記連結環状部の厚みをt
3と、前記可撓性歯車の内径をD
bとすると、t
1=(D
f1-D
b)/2であり、t
2=(D
f2-D
b)/2であり、かつ、t
1<t
2である場合、t
1≦t
3≦t
2となり、t
1>t
2である場合、t
2≦t
3≦t
1となる、請求項
4に記載のハーモニック減速裝置。
【請求項6】
各第1の外歯車構造及び各前記第2の外歯車構造は同様な形状に形成される、請求項1に記載のハーモニック減速裝置。
【請求項7】
各前記第1の外歯車構造と各前記第2の外歯車構造とは異なる形状に形成され、各前記第1の外歯車構造又は各前記第2の外歯車構造は直線状の歯車構造として構成される、請求項1に記載のハーモニック減速裝置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置に関し、特に2つの剛性歯車を備えるハーモニック減速裝置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照されたい。
図1は、2つの剛体歯車を有する従来のハーモニック減速裝置の部分断面図である。2つの剛体歯車を有する従来のハーモニック減速裝置において、可撓性歯車Fが波発生器WGの外周部に取り付けられた後、可撓性歯車Fの外歯車構造F1が変形する。変形した外歯車構造F1と、2つの剛性歯車R1、R2がそれぞれ含む2つの内歯車構造R11、R12の内周側との間に干渉問題が発生する(すなわち、
図1の囲み部分Aで干渉問題が発生する)。このようにして、可撓性歯車と2つの剛性歯車R1、R2との間の噛み合わせ効率が低下するため、2つの剛性歯車を有するハーモニック減速裝置の寿命が短くなってしまうのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の技術的不備に対して、本発明は、2つの剛体歯車を有する従来のハーモニック減速裝置の低いメッシュ効率と低い寿命を改善するように主に構成されたハーモニック減速裝置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る特定の実施形態において、ハーモニック減速裝置は、波発生器、可撓性歯車及び2つの剛性歯車を含む。波発生器は駆動ユニットに接続されるように構成されており、前記波動発生器は、中心軸に対して回転するように前記駆動ユニットによって駆動されるように構成されている。可撓性歯車と波発生器の外周部に接続されている。可撓性歯車の外周部には複数の第1の外歯車構造、複数の第2の外歯車構造及び分割溝を有し、分割溝は各第1の外歯車構造及び各第2の外歯車構造の間に位置し、2つの剛性歯車のそれぞれは、第1の剛性歯車と第2の剛性歯車に定義される。第1の剛性歯車は、複数の第1の内歯車構造を含み、第2の剛性歯車は複数の第2の内歯車構造を含む、複数の第1の内歯車構造は、複数の第1の外歯車構造と噛み合うために用いられる。複数の第2の内歯車構造は複数の第2の外歯車構造と噛み合うために用いられる。第1の剛性歯車に含まれる第1の内歯車構造の数量は、可撓性歯車に含まれるのと同じである。第2の剛性歯車に含まれる第2の内歯車構造の数量は、可撓性歯車に含まれる第2の外歯車構造よりも多いとなる。第1の剛性歯車の互いに反対側である側では、それぞれ内周側と外周側に定義される。第2の剛性歯車の互いに反対側である側では、それぞれ内周側及び外周側と定義される。第1の剛性歯車は第2の剛性歯車の近傍に配置される。かつ、第1の剛性歯車の内周側と第2の剛性歯車の内周側は、互いに対向して配置される。第1の剛性歯車における各第1の内歯車構造は、第1の上面及び4つの第1の連結面を含む。4つの第1の連結面は、第1の上面4つのエッジに接続されている。各第1の上面と断面とが定義された第1の交線と、中心軸に平行となる第1の水平ラインと、なす第1の角度は0.1度~5度である。かつ、断面において、第1の交線と中心軸との直線距離は、第1の剛性歯車の内周側から第1の剛性歯車の外周側に向かって徐々に減少する。断面の法線方向と中心軸とは互いに垂直となり、かつ、中心軸は断面を通過する。
【発明の効果】
【0005】
前記上記を纏めて、本発明に係るハーモニック減速裝置は、第1の角度、第2の角度及び分割溝の設計によって、可撓性歯車における第1の外歯車構造と第1の剛性歯車における第1の内歯車構造との噛み合わせ効率、並びに、可撓性歯車における第2の外歯車構造と第2の剛性歯車における第2の内歯車構造との噛み合わせ効率を高めることができると共に、ハーモニック減速裝置の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】従来の2つの剛性歯車を有するハーモニック減速裝置を示す部分模式図である。
【
図2】本発明に係るハーモニック減速裝置を示す模式図である。
【
図3】本発明に係るハーモニック減速裝置を示す断面模式図である。
【
図4】本発明に係るハーモニック減速裝置を示す分解模式図である。
【
図5】
図2の断面線V-Vを示す断面模式図である。
【
図7】本発明に係るハーモニック減速裝置の第1の剛性歯車及び第2の剛性歯車を示す断面模式図である。
【
図8】本発明に係るハーモニック減速裝置の第1の剛性歯車を示す局部断面模式図である。
【
図9】本発明に係るハーモニック減速裝置の第2の剛性歯車を示す局部断面模式図である。
【
図10】本発明に係るハーモニック減速裝置の可撓性歯車を示す局部断面模式図である。
【
図11】本発明に係るハーモニック減速裝置の可撓性歯車の変形前と変形後を示す模式図である。
【
図12】本発明に係るハーモニック減速裝置の可撓性歯車を示す局部断面模式図である。
【
図13】本発明に係るハーモニック減速裝置の可撓性歯車を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0008】
図2乃至
図6を参照されたい。本発明に係るハーモニック減速裝置100は、波発生器1、可撓性歯車2及び2つの剛性歯車を含む。波発生器1の外周部に可撓性歯車2が設けられ、可撓性歯車2の外周部に2つの剛性歯車が設けられる。説明の便宜上、以降の説明において、2つの剛性歯車をそれぞれ第1の剛性歯車3及び第2の剛性歯車4と定義すると共に、第1の剛性歯車3及び第2の剛性歯車4のそれぞれに含まれる内歯車構造をそれぞれ、第1の内歯車構造31及び第2の内歯車構造41と定義する。
【0009】
波発生器(Wave Generator)1は、例えば、例えば、モータのシャフトやモータのロータ等の駆動ユニットに接続される。波発生器1は、中心軸CPに対して相対的に回転するように駆動部によって駆動されるように構成されている。
【0010】
可撓性歯車2と波発生器1との外周部が互いに連結される。可撓性歯車2に環状本体2Aが定義される。各第1の外歯車構造21は、環状本体2Aの外周に形成される。各第2の外歯車構造22は環状本体2Aの外周に形成される。複数の第1の外歯車構造21と複数の第2の外歯車構造22との間に分割溝2Bが形成される。
【0011】
特定の実施形態において、各第1の外歯車構造21の各々の構造(形状)は、各第2の外歯車構造22の各々の構造と完全に同じであってもよい。かつ、可撓性歯車2に含まれる第1の外歯車構造21の数量は、可撓性歯車2に含まれる第2の外歯車構造22の数は同じであってもよいが、上記の例に制限されない。別の実施形態において、各第1の外歯車構造21の各々の構造(形状)は、各第2の外歯車構造22の各々の構造と異なってあってもよい。例えば、第1の外歯車構造21の各々は、直線状の歯車構造に構成され、第2外歯車構造体22の各々は、直線状の歯車構造に構成されなくてもよい。
【0012】
第1の剛性歯車3は複数の第1の内歯車構造31を含む。第1の剛性歯車3に含まれる複数の第1の内歯車構造31は、可撓性歯車2における複数の第1の外歯車構造21と互いに噛み合うように用いられる。第2の剛性歯車4は複数の第2の内歯車構造41を含む。第2の剛性歯車4に含まれる複数の第2の内歯車構造41は、可撓性歯車2における複数の第2の外歯車構造22と互いに噛み合うように用いられる。実際では、第2の剛性歯車4は外部の出力部材と接続してもよい。例えば、第2の剛性歯車4は車輪、作業アームなどに直接または間接的に接続するように用いられる。
【0013】
第1の剛性歯車3は第2の剛性歯車4の近傍に配置される。かつ、第1の剛性歯車3の互いに反対側である側では、それぞれ内周側3A及び一外周側3Bと定義される。第2の剛性歯車4の互いに反対側である側では、それぞれ内周側4A及び外周側4Bと定義される。第1の剛性歯車3の内周側3Aと第2の剛性歯車4の内周側4Aとは互いに対向するように配置される。
【0014】
上記のように、前記特定の実施例において、可撓性歯車2に含まれる第1の外歯車構造21の数は、可撓性歯車2に含まれる第2の外歯車構造22の数と同じであってもよいし、第1の剛性歯車3に含まれる第1の内歯車構造31の数は、可撓性歯車2に含まれる第1の外歯車構造21の数と同じであってもよい。また、第2の剛性歯車4に含まれる第2の内歯車構造41の数は可撓性歯車2に含まれる第2の外歯車構造22の数よりも多いとされてもよい。
【0015】
上記を踏まえて、駆動ユニットによって波発生器1が駆動されると、波発生器1は、可撓性歯車2が曲げ変形を繰り返すように可撓性歯車2を駆動し、それによって、可撓性歯車2における複数の第1の外歯車構造21の一部は、第1の剛性歯車3における複数の第1の内歯車構造31の一部と互いに噛み合うようになる。第1の剛性歯車3に含まれる第1の内歯車構造31の数は可撓性歯車2に含まれる第1の外歯車構造21の数と同じであるため、可撓性歯車2が曲げ変形を繰り返すにあたって、可撓性歯車2は第1の剛性歯車3に対し回転されない。なお、曲げ変形を繰り返している可撓性歯車2における一部の第2の外歯車構造22は第2の剛性歯車4における一部の第2の内歯車構造41と互いに噛み合うようになる。可撓性歯車2に含まれる第2の外歯車構造22の数は第2の剛性歯車4に含まれる第2の内歯車構造41の数と異なっているため、第2の剛性歯車4は回転するように、曲げ変形を繰り返している可撓性歯車2に駆動される。このように、駆動ユニットに入力された高速回転動力は、第2の剛性歯車4によって対応的により低い回転速度で出力される。
【0016】
図4乃至
図8を共に参照されたい。第1の剛性歯車3における各第1の内歯車構造31は上面311及び4つの連結面312を含む。4つの連結面312は上面311における4つのエッジに接続されている。各上面311と断面Sとなす交線3111と、中心軸CPに平行となる第1の水平ラインH1と、なす第1の角度θ1は0.1~5度である。かつ、断面Sにおける交線3111と中心軸CPとの直線距離は内周側3Aから外周側3Bに向かって徐々に減少する。なかでも、断面Sにおける法線方向Nと中心軸CPは互いに垂直となり、中心軸CPは断面Sを通過する。
【0017】
同様に、第2の剛性歯車4における各第2の内歯車構造41は上面411及び4つの連結面412を含む。4つの連結面412は上面411における4つのエッジに接続されている。各上面411と断面Sとなす交線4111と、中心軸CPに平行となる第2の水平ラインH2となす第2の角度θ2は0.1~5度である。かつ、断面Sにおける交線4111と中心軸CPとの直線距離D2は内周側4Aから外周側4Bに向かって徐々に減少する。
【0018】
上記に示すように、前記第1の角度θ1、第2の角度θ2及び分割溝2B等の設計によって、可撓性歯車2の軸方向の位置決めができるため、可撓性歯車2と2つの剛性歯車とのとの噛み合わせ効率(Mesh Efficiency)及びハーモニック減速裝置100の負荷能力を高めることができると共に、ハーモニック減速裝置100の全体的な使用寿命を延長することができる。
【0019】
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、従来のハーモニック減速裝置Qにおいて、可撓性歯車Fの外周に本発明における可撓性歯車2に設けられる分割溝2Bを有しないため、従来の可撓性歯車Fが波発生器WGの外周に取り付けられた場合、可撓性歯車Fの外歯車構造F1に比較的大きな変形が発生するのみならず、2つの剛性歯車R1、R2と可撓性歯車Fとが互いに組み合わせた後、可撓性歯車Fにおける外歯車構造F1が既に変形されたため、可撓性歯車Fの軸方向の変位が出がちとなるため、2つの剛性歯車R1、R2における内歯車構造R11、R21と可撓性歯車Fと外歯車構造F1との噛み合わせ効率が低下し、ハーモニック減速裝置Q全体的な寿命が短くなってしまう。
【0020】
また、従来のハーモニック減速裝置Qでは、可撓性歯車Fにおける外歯車構造F1に比較的大きな変形が発生するため、従来のハーモニック減速裝置Qが作動する場合、可撓性歯車Fは左右にぶれやすくなる。一方、本発明に係るハーモニック減速裝置100は、可撓性歯車2に分割溝2Bが設けられること、例えば、
図8に示すような第1の角度θ1、及び例えば、
図9に示すような第2の角度θ2等の設計によって、ハーモニック減速裝置100が作動している時、可撓性歯車2は比較的に左右にぶれにくくなる。
【0021】
図7乃至
図12を参照されたい。好ましい実施形態において、可撓性歯車2が波発生器によって駆動される場合、可撓性歯車2の径方向の変形の最大の寸法は、可撓性歯車長軸C
Lとして定義され、可撓性歯車2の径方向の変形の最小の寸法は、可撓性歯車短軸C
Sとして定義されるとする。そして、各第1の内歯車構造31の第1の歯部面幅がL
1と、第1の角度がθ
1と、各第2の内歯車構造41における第2の歯部面幅がL
2と、第2の角度がθ
2と定義されるとする場合、C
L、C
S、L
1、θ
1は、θ
1=C
1*tan
-1((C
L-C
S)/(4*L
1))の関係式を満たす。なかでも、0.08≦C
1≦0.45である。また、C
L、C
S、L
2、θ
2は、θ
2=C
2*tan
-1((C
L-C
S)/(4*L
2)))の関係式を満たす。なかでも、0.08≦C
2≦0.45である。このように、可撓性歯車2、第1の剛性歯車3及び第2の剛性歯車4は従来の構成よりも優れたとの噛み合わせ効率を得ることができる。
【0022】
図7乃至
図13を参照されたい。好ましい実施形態において、可撓性歯車2の環状本体2Aに、第1の環状部2A1、第2の環状部2A2及び連結環状部2A3がそれぞれ定義される。第1の環状部2A1の一方側部は、連結環状部2A3と接続され、連結環状部2A3の他方側は、第2の環状部2A2と接続される。複数の第1の外歯車構造21は、第1の環状部2A1の外周に形成され、複数の第2の外歯車構造22は第2の環状部2A2の外周に形成される。連結環状部2A3の外周部、複数の第1の外歯車構造21及び複数の第2の外歯車構造22は共に分割溝2Bを形成する。第1の外歯車構造21の歯先円(Addendum Circle)直径をD
a1と、第1の外歯車構造21の歯元円(Dedendum Circle)直径をD
f1と、第2の外歯車構造22の歯先円(Addendum Circle)直径をD
a2と、第2の外歯車構造22の歯元円(Dedendum Circle)直径をD
f2と、分割溝2Bの幅をW
Gとすると、D
f1<D
f2である場合、D
f1、D
a2、W
Gは次の関係式を満たす。
【0023】
【0024】
なかでも、D
f1>D
f2である場合、D
f2、D
a1、W
Gは次の関係式を満たす。
ただし、3.5≦R≦20.8である。
【0025】
なかでも、第1の環状部2A1の厚みをt1と、第2の環状部2A2の厚みをt2と、連結環状部2A3の厚みをt3と、可撓性歯車2の内径をDbとすると、t1=(Df1-Db)/2であり、t2=(Df2-Db)/2である。また、t1<t2であれば、t1≦t3≦t2となり、t1>t2であれば、t2≦t3≦t1となる。
【0026】
上記のように、前記上述した設計によって、可撓性歯車2、第1の剛性歯車3と第2の剛性歯車4とは、従来の技術よりもより優れた噛み合わせ効率を達することができる。
【0027】
上記を纏めて、前記本発明に係るハーモニック減速裝置は、第1の角度、第2の角度及び分割溝の設計によって、可撓性歯車における第1の外歯車構造と第1の剛性歯車における第1の内歯車構造との噛み合わせ効率、並びに、可撓性歯車における第2の外歯車構造と第2の剛性歯車における第2の内歯車構造との噛み合わせ効率を効果的に向上させることができると共に、ハーモニック減速裝置の使用年限を延長し得る。また、第1の角度、第2の角度及び可撓性歯車の上記関連パラメータが上記の関係式を満たすことによって、可撓性歯車と第1の剛性歯車との噛み合わせ効率、並びに、可撓性歯車と第2の剛性歯車との噛み合わせ効率をさらに向上させることができる。
【0028】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0029】
Q : ハーモニック減速裝置
F : 可撓性歯車
F1 : 外歯車構造
WG : 波発生器
R1、R2 : 剛性歯車
R11、R21 : 内歯車構造
A : 囲み部分
100 : ハーモニック減速裝置
1 : 波発生器
2 : 可撓性歯車
2A : 環状本体
2A1 : 第1の環状部
2A2 : 第2の環状部
2A3 : 連結環状部
2B : 分割溝
21 : 第1の外歯車構造
22 : 第2の外歯車構造
3 : 第1の剛性歯車
3A : 内周側
3B : 外周側
31 : 第1の内歯車構造
311 : 上面
3111 : 交線
312 : 連結面
4 : 第2の剛性歯車
4A : 内周側
4B : 外周側
41 : 第2の内歯車構造
411 : 上面
4111 : 交線
412 : 連結面
CP : 中心軸
S : 断面
N : 法線方向
H1 : 第1の水平ライン
H2 : 第2の水平ライン
θ1 : 第1の角度
θ2 : 第2の角度
D1 : 直線距離
D2 : 直線距離
CL : 可撓性歯車長軸
CS : 可撓性歯車短軸
Db : 可撓性歯車の内径
Da1 : 第1の外歯車構造歯先円直径の歯頂部円直径
Df1 : 第1の外歯車構造歯元円直径の歯根部円直径
Da2 : 第2の外歯車構造歯先円直径の歯頂部円直径
Df2 : 第2の外歯車構造歯元円直径の歯根部円直径
L1 : 第1の歯部面幅
L2 : 第2の歯部面幅
t1 : 第1の環状部の厚み
t2 : 第2の環状部の厚み
t3 : 連結環状部の厚み
WG : 分割溝の幅