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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
F16K31/06 305A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022518515
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2020018178
(87)【国際公開番号】W WO2021220430
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000108557
【氏名又は名称】タイム技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今西 正和
(72)【発明者】
【氏名】村井 善昌
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024304(JP,A)
【文献】特開2016-061420(JP,A)
【文献】特開昭63-130977(JP,A)
【文献】特開2013-124768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の各弁体と、
前記第1と前記第2の各弁体を一端に連結した磁性材料製の第1と第2の各プランジャと、
一端の開口端から前記第1と前記第2の各プランジャが摺動自在に挿入された非磁性材料製の第1と第2の各ガイド筒と、
前記第1と前記第2の各ガイド筒の他端部に前記第1と前記第2の各プランジャに対向するように配置された第1と第2の各固定鉄心と、
前記第1と前記第2の各プランジャを前記第1と前記第2の各固定鉄心から離隔する方向に付勢する第1と第2の各付勢部材と、
前記第1と前記第2の両固定鉄心を結ぶように配置された磁性材料製の第1のプレートと、
前記第1と前記第2の両ガイド筒の一端部を結ぶように配置された磁性材料製の第2のプレートと、
前記第1のガイド筒と前記第2のガイド筒との内いずれか一方を囲うように配置された単一のソレノイドと、
少なくとも前記第1のプレートを覆う非磁性材料製の外装カバーと、を備え、
前記第1のプランジャから前記第1の固定鉄心と前記第1のプレートと前記第2の固定鉄心と前記第2のプランジャと前記第2のプレートとを経由して前記第1のプランジャに戻る磁気通路が構成され、前記単一のソレノイドへの通電で前記第1と前記第2の各プランジャが前記第1と前記第2の各付勢部材の付勢力に抗して前記第1と前記第2の各固定鉄心に向けて吸引移動されて、前記第1と前記第2の各弁体の開弁/閉弁動作が行われるようにした2連電磁弁において、
前記外装カバーを組み付けた際に前記第1のプレートを前記第1の固定鉄心に向けて押圧する、前記外装カバーの一部をバネ状に加工して形成された付勢部を外装カバーに設けたことを特徴とする2連電磁弁。
【請求項2】
下端部を前記第2のプレートに当接し、前記第1のガイド筒に外挿する、円筒形状で磁性材料製の第1のカラーと、
下端部を前記第2のプレートに当接し、前記第2のガイド筒に外挿する、円筒形状で磁性材料製の第2のカラーとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の2連電磁弁。
【請求項3】
前記第1の固定鉄心は、前記第1の固定鉄心の上端部が前記ソレノイドの上端部より先に前記第1のプレートに当接し、前記外装カバーを組み付けた状態で、前記ソレノイドの上端部と前記第1のプレートとの間に隙間ができるように設定され、
前記第1のカラーは、前記第1のカラーの下端部が前記ソレノイドの下端部より先に前記第2のプレートに当接し、前記外装カバーを組み付けた状態で、前記ソレノイドの下端部と前記第2のプレートとの間に隙間ができるように設定されるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の2連電磁弁。
【請求項4】
前記外装カバーに設けた前記付勢部は、前記外装カバーの前記第1のプレートの上方に配置される天板に横長のコの字形状に切り欠いて形成された、片持ち梁状の板バネであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の2連電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電磁弁に関し、特に燃焼装置等で使用する2個の弁体を有する2連電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の電磁ソレノイドで、2個(以下「第1と第2」)の可動弁を開弁/閉弁駆動する2連電磁弁が特許文献1などに開示されている。
【0003】
特許文献1には、第1と第2の可動弁と、第1と第2の可動弁の各可動弁を一端に連結した第1と第2の各プランジャと、一端の開口端から第1と第2の各プランジャが摺動自在に挿入された第1と第2の各案内筒と、第1と第2の各案内筒の他端部に第1と第2の各プランジャに対向するように配置された第1と第2の各固定鉄心と、第1と第2の各プランジャを第1と第2の各固定鉄心から離隔する方向に付勢する第1と第2の各スプリングと、第1と第2の両固定鉄心を結ぶように配置された強磁性材製フレームと、第1と第2の両案内筒の一端部を結ぶように配置された磁性材製スペーサと、第1の案内筒と第2の案内筒との一方を囲うように配置された単一の電磁ソレノイドとを備え、第1のプランジャから第1の固定鉄心と強磁性材製フレームと第2の固定鉄心と第2のプランジャと磁性材製スペーサとを経由して第1のプランジャに戻る磁気通路が構成され、電磁ソレノイドへの通電で第1と第2の各プランジャが第1と第2の各スプリングの付勢力に抗して第1と第2の各固定鉄心に向けて吸引移動される2連電磁弁の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-130977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の2連電磁弁では、磁性材製スペーサを載置固定する非磁性材料製のホルダを設け、このホルダに、強磁性材製フレームを締結することで強磁性材製フレームと磁性材製スペーサが分離しないように2連電磁弁を組み立てている。ここで、ホルダを非磁性材料製とするのは、強磁性材製フレームと磁性材製スペーサとの間に磁束がホルダを介して短絡的に流れて、上記磁気通路の形成が阻害されることを防止するためである。そして、第1と第2の両固定鉄心の押圧するように強磁性材製フレームをホルダに取り付けることにより、強磁性材製フレームから磁性材製スペーサに至る中に組み込まれた固定鉄心、スプリング、案内筒などを適切に固定させている。
【0006】
しかしながら、上記のようなホルダは機械的な強度が必要であり、このような非磁性材料製で成形されたホルダを用いることは、材料費が高くなってコストアップの要因になる。
【0007】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、上記のようなホルダを不要とした2連電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係る2連電磁弁は、第1と第2の各弁体と、第1と第2の各弁体を一端に連結した磁性材料製の第1と第2の各プランジャと、一端の開口端から第1と第2の各プランジャが摺動自在に挿入された非磁性材料製の第1と第2の各ガイド筒と、第1と第2の各ガイド筒の他端部に第1と第2の各プランジャに対向するように配置された第1と第2の各固定鉄心と、第1と第2の各プランジャを第1と第2の各固定鉄心から離隔する方向に付勢する第1と第2の各付勢部材と、第1と第2の両固定鉄心を結ぶように配置された磁性材料製の第1のプレートと、第1と第2の両ガイド筒の一端部を結ぶように配置された磁性材料製の第2のプレートと、第1のガイド筒と第2のガイド筒との内いずれか一方を囲うように配置された単一のソレノイドと、少なくとも第1のプレートを覆う非磁性材料製の外装カバーと、を備え、第1のプランジャから第1の固定鉄心と第1のプレートと第2の固定鉄心と第2のプランジャと第2のプレートとを経由して第1のプランジャに戻る磁気通路が構成され、単一のソレノイドへの通電で第1と第2の各プランジャが第1と第2の各付勢部材の付勢力に抗して第1と第2の各固定鉄心に向けて吸引移動されて、第1と第2の各弁体の開弁/閉弁動作が行われるようにした2連電磁弁において、外装カバーを組み付けた際に第1のプレートを第1の固定鉄心に向けて押圧する、外装カバーの一部をバネ状に加工して形成された付勢部を外装カバーに設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る2連電磁弁は、請求項1に記載の2連電磁弁において、下端部を第2のプレートに当接し、第1のガイド筒に外挿する、円筒形状で磁性材料製の第1のカラーと、下端部を第2のプレートに当接し、第2のガイド筒に外挿する、円筒形状で磁性材料製の第2のカラーとを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る2連電磁弁は、請求項2に記載の2連電磁弁において、第1の固定鉄心は、第1の固定鉄心の上端部がソレノイドの上端部より先に第1のプレートに当接し、外装カバーを組み付けた状態で、ソレノイドの上端部と第1のプレートとの間に隙間ができるように設定され、第1のカラーは、第1のカラーの下端部がソレノイドの下端部より先に第2のプレートに当接し、外装カバーを組み付けた状態で、ソレノイドの下端部と前記第2のプレートとの間に隙間ができるように設定されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る2連電磁弁は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の2連電磁弁において、外装カバーに設けた付勢部は、第1のプレートの上方に配置される外装カバーの天板に横長のコの字形状に切り欠いて形成された、片持ち梁状の板バネであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る2連電磁弁では、外装カバーを取り付けると、外装カバーに形成された付勢部が第1のプレートを押圧し、第1のプレートが、第1のプレートから第2のプレートに至る間に組み込まれた固定鉄心、ソレノイド、付勢部材などを押圧して適切に固定維持させることができる。
【0013】
通常、電磁弁(2連電磁弁も含む)は、非磁性材料製の外装部(カバー)により覆われている場合が多い。本発明は、少なくとも第1のプレートを覆う外装カバーに、外装カバーの一部をバネ状に加工して形成された付勢部を設けることにより、外装カバーを取り付ける際に外装カバーの付勢部が第1のプレートを押圧して第1のプレートと第1の固定鉄心とを密着し、第1のプレートから第2のプレートに至る間の部品が固定保持される。そのため、特許文献1などに開示されているホルダを不要とし、コストを低減させることができる。また、上記のように外装カバーの付勢部の付勢力により第1プレートと第1の固定鉄心とを密着し、第1のプレートから第2のプレートに至る間の部品も各々部品間で密着保持できることから、第1プレートと第1の固定鉄心との間やその他部品間などにおいて、隙間が生じることを起因とする電磁弁の動作不具合を抑止することができる。
【0014】
請求項2に係る2連電磁弁では、第1のガイド筒および第2のガイド筒に、それぞれ、磁性材料製の第1のカラーおよび第2のカラーを外挿し、それぞれ、その下端部を第2のプレートに当接して配置することにより、第1のプランジャから第1の固定鉄心と第1のプレートと第2の固定鉄心と第2のプランジャと第2のプレートとを経由して第1のプランジャに戻る磁気通路における磁気圧損を小さくすることができるため、コイル14への開弁電圧を下げることが可能になり、コイル14の部品コストを低減することができる。
【0015】
請求項3に係る2連電磁弁では、ソレノイドの上端部と第1のプレートとの間およびソレノイドの下端部と第2のプレートとの間に隙間ができるように第1の固定鉄心および第1のカラーの形状を設定することにより、外装カバーを組み付ける際に、第1の固定鉄心の上端部がソレノイドの上端部より先に第1のプレートに当接し、また、第1のカラーの下端部がソレノイドの下端部より先に第2のプレートに当接する。そのため、第1の固定鉄心と第1のプレートとが、また、第1のカラーと第2のプレートとが密着して保持することができる。そのため、第1の固定鉄心と第1のプレートとの間や第1のカラーと第2のプレートとの間で、密着性が不全になることで生じる磁気損失を効果的に抑止することができる。
【0016】
請求項4に係る2連電磁弁では、第1のプレートを押圧する外装カバーの付勢部を外装カバーの天板に横長のコの字形状に切り欠いて形成された、片持ち梁状の板バネとすることで、外装カバーの付勢部による第1のプレートから第2プレートに至る第1の固定鉄心などの内部部品への付勢力の伝達効率を上げるとともに、板バネのストロークを十分に取ることにより、各内部部品の各寸法公差を吸収することができる。このように、外装カバーの付勢部を成形により設けることにより、部品の追加を不要として製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁の閉弁状態での断面図である。
図2】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁の開弁状態での断面図である。
図3】(A)第1プレートの周辺拡大図、(B)第2プレートの周辺拡大図である。
図4】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁の上部の分解図である。
図5】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁のカバーの組み付けを説明する図である。
図6】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁のカバーの(A)上面図と(B)側面図である。
図7】外装カバーの付勢部の作用を説明する(A)側面透視図および(B)付勢部の周辺部分の拡大図である。
図8】本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁の下部の分解図である。
図9】別の実施形態である2連電磁弁のカバーの部分を示した図である。
図10図9の2連電磁弁のカバーに設けたコネクタ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁1について図面を参照して説明する。
【0019】
図1および図2は、バーナなどへのガス供給路に介設する本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁1を示したものであり、図1は閉弁状態での断面図であり、図2は開弁状態での断面図である。2連電磁弁1は、弁筐10内に収納した第1弁体21と第2弁体31と、第1弁体21を一端(図1の下端)に連結した第1プランジャ17と、第2弁体31を一端(図1の下端)に、第2弁ステム30を介して連結した第2プランジャ25と、一端(図1の下端)に開口部を設け、一端の開口部から第1プランジャ17と第2プランジャ25が摺動自在に挿入された第1ガイド筒15と第2ガイド筒24と、第1ガイド筒15と第2ガイド筒24の他端部(図1の上端部)に第1プランジャ17と第2プランジャ25に対向するように配置された第1固定鉄心13と第2固定鉄心22と、第1プランジャ17と第2プランジャ25を、それぞれ、第1固定鉄心13と第2固定鉄心22とから離隔する方向に付勢する第1弁ばね19と第2弁ばね23とを備えている。
【0020】
2連電磁弁1は、更に、第1固定鉄心13と第2固定鉄心22とを結ぶように配置された磁性材料製の第1プレート12と、第1ガイド筒15と第2ガイド筒24の一端部(図1の下端部)を結ぶように配置された磁性材料製の第2プレート27と、第1ガイド筒15と第2ガイド筒24との一方(本実施形態では第1ガイド筒15)を囲うように配置された単一のコイル14とを備えている。そして、図1に1点鎖線で示すように、第1プランジャ17から第1固定鉄心13と第1プレート12と第2固定鉄心22と第2プランジャ25と第2プレート27とを経由して第1プランジャ17に戻る磁気通路Hが構成されるようにしている。
【0021】
第1固定鉄心13の他端(図1の上端部)に突設した突起部13aは第1プレート12に設けられた貫通穴12aに挿入されている。また、第2固定鉄心22の他端(図1の上端部)に突設した突起部22aが第1プレート12に設けられた貫通穴12bに挿入してかしめられることにより、第2固定鉄心22は第1プレート12に固定されている。さらに、第1プランジャ17の他端部(図1の上端部)には、当該第1プランジャ17が第1固定鉄心13に当接するときの衝撃を吸収する緩衝部材16が設けられている。第1ガイド筒15とコイル14との間には、磁性材料製で形成された円筒形状の第1弁カラー18がその一端(図1の下端)が第2プレート27に当接して第1ガイド筒15に外挿され、第2ガイド筒24には、磁性材料製で形成された円筒形状の第2弁カラー26がその一端(図1の下端)が第2プレート27に当接するように外挿されている。ここで、第1ガイド筒15および第2ガイド筒24に外挿する第1弁カラー18および第2弁カラー26は、磁気通路Hの磁気圧損を小さくさせることに奏功する。そのため、コイル14への開弁電圧を下げるができることから、コイル14の部品コストを低減することができる。
【0022】
そして、下述するように、本発明にかかる2連電磁弁1では、カバー11を取り付けると、カバー11の上面部に形成された板ばね11aが第1プレート12を下方に押圧する。すると、第1プレート12が第1固定鉄心13を押圧して第1プレート12と第1固定鉄心13とが密着し、次に、第1固定鉄心13がコイル14を押圧して第1固定鉄心13と14とが密着し、次に、コイル14が第1弁カラー18を押圧してコイル14と第1弁カラー18とが密着し、さらに、第1弁カラー18が第2プレート27を押圧して第1弁カラー18と第2プレート27とが密着する。すなわち、カバー11を取り付けると、カバー11の上面部に形成された板ばね11aの下方に向かう付勢力により、第1プレート12から第2プレート27に至る間の各部品が互いに密着して固定されるため、第1プレート12から第2プレート27に至る間の各部品間において隙間が生じることを起因とする2連電磁弁1の動作不具合を抑止することができるのである。
【0023】
図3の(A)は、図2のD1に示す第1プレート12の周辺部の拡大図であり、図3の(B)は、図2のD2に示す第2プレート27の周辺部の拡大図である。図3の(A)や図3の(B)に示すように、本発明にかかる2連電磁弁1では、第1プレート12とコイル14との間に隙間(d1)が、第2プレート27とコイル14との間に隙間(d2)ができるように、第1固定鉄心13および第1弁カラー18の形状を設定している。そのため、第1固定鉄心13の上端部がコイル14の上端部より先に第1プレート12に当接するとともに、第1弁カラー18の下端部がコイル14の下端部より先に第2プレート27に当接する。そのため、第1固定鉄心13と第1プレート12とが、また、第1弁カラー18と第2プレート27とが上記のように密着して保持することができる。このため、磁気通路Hの磁気損失を効果的に抑止することができるのである。
【0024】
弁筐10は、流入口34と流通路35とを有している。弁筐10内には、流入口34に常時連通する、第1弁体21を収納する第1弁室40と、第2弁体31の開弁時に流通路35に連通し、(図示しない)調整弁などに連通路42を介して連通する、第2弁体31を収納する第2弁室41が配置されている。また、第1弁室40の下面に面して第1弁体21が着座可能で、第1弁室40と流通路35とを仕切る第1弁座33が設けられている。第2弁室41には、第2弁室41の下面方向に突設し、下端部に第2弁体31が着座可能で、第2弁室41と流通路35とを仕切る、下面中央部に貫通穴32aが設けられた第
2弁座部材32が配置されている。第2弁座部材32は、その上端部を、第2弁シート部材37を介して弁筐10内に配設された中間部材29と弁筐10とで挟持して固定されている。そして、第1弁体21が第1弁座33から隔離することで、第1弁室40と流通路35とが連通し、第2弁体31が第2弁座部材32から隔離することで、貫通穴32aにより流通路35と第2弁室41並び連通路42とが連通するようにしている。尚、第1弁室40と第2弁室41の上面は、弁筐10の上面にシール部材36を介して装着する第2プレート27で閉塞されている。
【0025】
コイル14への非通電時は、図1に示すように、第1弁ばね19の付勢力で第1弁体21が第1弁座33に着座して、流入口34と流通路35とを遮断し、第2弁ばね23の付勢力で第2弁体31が第2弁座部材32に着座して、流通路35と(図示しない)調整弁などに連通する連通路42とを遮断し、ガスなどの流体が2連電磁弁1内に流入すること抑止する。
【0026】
コイル14への通電時には、図2に示すように、第1プランジャ17が第1弁ばね19の付勢力に抗して第1固定鉄心13に向けて吸引移動されて、第1弁体21が第1弁座33から離隔して開弁動作し、矢印(1)に示すように、ガスなどの流体が流入口34から流通路35に供給される。また、第2プランジャ25も第2弁ばね23の付勢力に抗して第2固定鉄心22に向けて吸引移動される。
【0027】
下端に第2弁体31を連結した第2弁ステム30は第2弁ステムばね28により第2プランジャ25の方向に付勢されている。図1のように、コイル14への非通電時の場合は、第2プランジャ25は、第2弁ばね23の付勢力により下方に移動して第2弁ステム30の上端面に当接し、さらに、第2弁ステム30は第2プランジャ25とともに第2弁ステムばね28の付勢力に抗して下方に移動して、上述のように第2弁ステム30に連結した第2弁体31は第2弁座部材32に着座する。しかし、コイル14への通電時には、図2に示すように、第2プランジャ25が第2固定鉄心22に向けて吸引移動して第2弁ステム30が第2プランジャ25から解放されるため、第2弁ステム30は第2弁ステムばね28の付勢力により上方に移動し、第2弁ステム30に連結した第2弁体31が第2弁座部材32から離隔して開弁動作し、矢印(2)に示すように、ガスなどの流体が流通路35から連通路42を介して(図示しない)調整弁などに供給される。
【0028】
尚、第1弁ばね19は、第1ガイド筒15の下端部と第1弁体21の上面に配設された第1弁体受け20との間に介設され、第2弁ばね23は、第2プランジャ25と第2ガイド筒24の上端内面との間に介設され、第2弁ステムばね28は、第2弁ステム30と中間部材29との間に介設されている。
【0029】
上記のように、第1プランジャ17と第2プランジャ25を通る連続した磁気通路Hが構成されるため、単一のコイル14によって第1弁体21と第2弁体31を開弁/閉弁動作させることができる。従って、コイルを夫々有する2個の電磁弁を用いるものに比し、小型化と省電力化とを図ることができる。
【0030】
次に、図4から図8を参照して、本発明の特徴であるカバー11の上面部に形成された板ばね11aにより第1プレート12から第2プレート27に至る間の部品が固定保持される方法について詳述する。なお、カバー11は、非磁性材料である樹脂で形成されている。
【0031】
図4は、2連電磁弁1の第1プレート12から第2プレート27に至る部分での分解図である。図4に示すように、第2固定鉄心22は、上端部に突設した突起部22aが第1プレート12に設けられた貫通穴12bに挿入後かしめられ、第1プレート12に固定保持されている。
【0032】
第1固定鉄心13の上端部には、第1プレート12に設けられた貫通穴12aに挿入するため、上方に突設した突起部13aが設けられている。ここで、第2固定鉄心22のように、第1固定鉄心13が第1プレート12にかしめ処理しないのは、第1固定鉄心13と第2固定鉄心22との両方を同じ工程でかしめを実施するためにはスペースが必要となり、新たに設備を追加する必要があり、結果的に製造コストが高くなってしまうおそれがあるためである。そこで、本実施形態である2連電磁弁1では、製造コストを抑制するため、第1固定鉄心13の上端部に突設した突起部13aを第1プレート12に設けられた貫通穴12aに挿入するだけで、かしめ処理を実施しない。第1固定鉄心13はコイル14の上部開口部14aに挿入され、第1弁カラー18はコイル14の下部開口部14bに挿入される。第1プレート12、第1固定鉄心13、第2固定鉄心22、コイル14および第1弁カラー18を組み付けた状態で第2プレート27に載置する(以下、この組み付けた状態を「第1アッセンブリA」とする)。
【0033】
図5は、カバー11の組み付けを説明する図である。図5に示すように、第1アッセンブリAを覆うように、第1アッセンブリAに対して上方からカバー11を取り付ける。
【0034】
図6の(A)は、カバー11の上面図であり、図6の(B)はカバー11の側面図である。そして、図6の(A)の二点鎖線円Eで囲まれた部分の拡大図を図6の図面右上に示す。図6の(A)に示すように、カバー11は第1アッセンブリAの第1プレート12から第2プレート27の上面までを覆うカバーであり、図6の(A)示す貫通穴11f、11gに(図示しない)ネジを挿入して第2プレート27にネジ留めにて組み付けられる。
【0035】
図6の(A)に示すように、カバー11の上面部には、略120°の間隔で3つの板ばね11a、11a、11aがその先端部を下方に向けて形成されている。図6の図面右上に示す二点鎖線円Eで囲まれた部分の拡大図のように、板ばね11aは、カバー11の天板(上面)に横長のコの字形状に切り欠いて形成された片持ち梁状の板バネである。本実施形態では、板ばね11aの横長のコの字形状のばね部のストロークは、第1プレート12から第2プレート27に至る間の各部品の各寸法公差を吸収できる程度に十分な長さに設定されている。また、貫通穴11dは第1プレート12にかしめられた第2固定鉄心22の突起部22aのための逃げ穴として設けられている。
【0036】
図7は、カバー11の板ばね11aの作用を説明する図である。図7の(A)はカバー11を第1アッセンブリAに取り付けた状態の側面透視図であり、図7の(B)は、図7(A)のC部の拡大図である。
【0037】
上述のように、カバー11を第1アッセンブリAに組み付けると、カバー11の上面部にある3つの板ばね11a、11a、11aの先端部が第1プレート12の上面端部に当接後、第1プレート12の上面端部により図7の(B)の矢印(1)に示すように上方に移動する。そして、板ばね11a、11a、11aの先端部の移動によって生じる板ばね11a、11a、11aの下方(第1プレート12に向かう方向)への付勢力により、第1プレート12が下方に付勢される。これにより、第1プレート12が、その下方に配置された第1固定鉄心13、コイル14および第1弁カラー18を下方に付勢し、第1プレート12と第1固定鉄心13との間、コイル14と第1弁カラー18との間および第1弁カラー18と第2プレート27との間を隙間なく密着させて固定保持される(以下、第1アッセンブリAにカバー11を組み付けた状態を「アッセンブリB」とする)。
【0038】
図8は、2連電磁弁1の(第2プレート27より下方に組み付けられる)下部の分解図である。第2プレート27の下方には、図8に示すように、第2弁カラー26、シール部材36、第1ガイド筒15、第1弁ばね19、(下端部に第1弁体21が連結された)第1プランジャ17、第2ガイド筒24、第2弁ばね23、第2プランジャ25、第2弁ステム30、第2弁ステムばね28、第2弁体31がアッセンブリBとともに弁筐10に組み付けられる。
【0039】
上記の通り、本発明にかかる一実施形態である2連電磁弁1では、少なくとも第1プレート12を覆う(非磁性材である)樹脂で成形されたカバー11に、第1プレート12を下方に付勢する板ばね11a、11a、11aを形成することにより、カバー11の取付により、第1プレート12から第2プレート27に至る間に配置した第1固定鉄心13やコイル14などの部品が各部品の間で密着した状態で固定保持できるとともに、第1プレート12と第2プレート27とが隔離されて、第1プランジャ17から第1固定鉄心13と第1プレート12と第2固定鉄心22と第2プランジャ25と第2プレート27とを経由して第1プランジャ17に戻る磁気通路Hを構成できることから、特許文献1に記載された非磁性材料製のホルダを用いる必要がなく、そのため、製造コストを低減させることができるのである。
【0040】
ここで、2連電磁弁1は2連電磁弁の一例であり、第1弁体21は第1の弁体の一例であり、第2弁体31は第2の弁体の一例であり、第1プランジャ17は第1のプランジャの一例であり、第2プランジャ25は第2のプランジャの一例であり、第1ガイド筒15は第1のガイド筒の一例であり、第2ガイド筒24は第2のガイド筒の一例であり、第1固定鉄心13は第1の固定鉄心の一例であり、第2固定鉄心22は第2の固定鉄心の一例であり、第1弁ばね19は第1の付勢部材の一例であり、第2弁ばね23は第2の付勢部材の一例であり、第1プレート12は第1のプレートの一例であり、第2プレート27は第2のプレートの一例であり、コイル14は単一のソレノイドの一例であり、カバー11は外装部の一例であり、板ばね11aは付勢部の一例であり、第1弁カラー18は第1のカラーの一例であり、第2弁カラー26は第2のカラーの一例である。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0042】
例えば、上記2連電磁弁1では、磁気通路Hの磁気圧損をより小さくしてコイル14への開弁電圧を下げるため、一端(図1では下端)を第2プレート27に当接する第1弁カラー18および第2弁カラー26をそれぞれ第1ガイド筒15および第2ガイド筒24に外挿したが、磁気通路Hの磁気圧損が問題にならなければ、必ずしも第1弁カラー18および第2弁カラー26のようなカラーをガイド筒に外挿する必要はない。
【0043】
また、上記2連電磁弁1では、第2固定鉄心22が第1プレート12にかしめで固定保持したが、これは、第1固定鉄心13がコイル14により支持されるのに対して、第2固定鉄心22の下方に支持するものがないためであり、第1固定鉄心13のように支持するような構成となっている場合は、必ずしもかしめる必要がない。その場合、第2固定鉄心22の上端部に突設した突起部22aを第1プレート12に設けられた貫通穴12bに挿入し、カバー11において第2固定鉄心22の上面に当たる位置に板ばね11aと同様な板ばねを新たに設けることにより、カバー11により第2固定鉄心22を第1プレート12に密着して固定保持してもよい。この場合、かしめ工程がなくなるため、製造コストを低減することができる。
【0044】
また、上記2連電磁弁1では、第2の弁について、第1の弁のように第1プランジャ17に第1弁体21を直接に連結せず、第2プランジャ25に第2弁ステム30を介して第2弁体31を連結している。つまり、第1の弁のように第1プランジャ17と第1弁体21とを一体化せず、第2プランジャ25と第2弁体31とを別体とし、第2の弁体の開弁時には、コイル14の通電により第2プランジャ25のみが吸引移動し、ステム部に連結した第2の弁体は、第2弁ステムばね28の付勢力で開弁するようにした。このような構成にしたのは、第2の弁を組み付ける際に中間部材29が介在するため組み付けが難しくなることや、第2の弁の開弁時に第2弁体31へ過剰な負荷がかかることを抑止することを理由とする。しかし、これらの問題がない場合は、第2の弁も、第1の弁と同様、第2プランジャに第2弁体を直接連結してもよい。
【0045】
図9は、別の実施形態である2連電磁弁100のカバー110の部分を示したものである。2連電磁弁100は、コイル14に接続するピン120a、120a、120aを有するコネクタ120をカバー110と一体成型にて形成したものである。図9の(A)は、上面図であり、図9の(B)は、コネクタ120側から見た側面図である。これにより、コイル14を接続するコネクタを別途必要としないため、部品コストが低減できる。
【0046】
図10は、図9の(A)のコネクタ120部分のF-F断面図である。2連電磁弁100のカバー110に一体成型したコネクタ120には、図10に示すように、ピン120a、120a、120aを支持するピン支持部120bもコネクタ120とともに形成されている。ピン支持部120bを設けることにより、コネクタ120に(図示しない)雌コネクタを着脱する際にピン120aが変形することを抑止することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・2連電磁弁
10・・弁筐
11・・カバー
11a・・板ばね
12・・第1プレート
13・・第1固定鉄心
14・・コイル
15・・第1ガイド筒
17・・第1プランジャ
18・・第1弁カラー
19・・第1弁ばね
21・・第1弁体
22・・第2固定鉄心
23・・第2弁ばね
24・・第2ガイド筒
25・・第2プランジャ
26・・第2弁カラー
27・・第2プレート
28・・第2弁ステムばね
30・・第2弁ステム
31・・第2弁体
32・・第2弁座部材
33・・第1弁座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10