(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】フットレスト
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20230926BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20230926BHJP
B60N 3/06 20060101ALI20230926BHJP
A47C 7/50 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61G5/12 705
A61G5/02
B60N3/06
A47C7/50 A
(21)【出願番号】P 2022564629
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2022023429
(87)【国際公開番号】W WO2022260161
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021098366
(32)【優先日】2021-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521246758
【氏名又は名称】有限会社ハーティー・メッセージ
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】敷地 雄一
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-17353(JP,A)
【文献】特開昭54-155689(JP,A)
【文献】特開平10-127697(JP,A)
【文献】米国特許第5522644(US,A)
【文献】米国特許第3376067(US,A)
【文献】米国特許第3249388(US,A)
【文献】特開2006-6878(JP,A)
【文献】特開2007-21144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/12
A61G 5/02
B60N 3/06
A47C 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記第1フットレスト部の下面側にワイヤー調整手段を備え、
前記ワイヤーの一端が前記ワイヤー調整手段を介して固定されていることを特徴とする請求項3に記載のフットレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子のフットレストに関し、特に、開閉操作が容易で衛生的なフットレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な車椅子に係るフットレスト(「フットプレート」、「フットサポート」等とも言う。)は、使用者が乗降する際にはフットレスト先端部を上方に持ち上げて閉じた状態(立てた状態)とし、乗車時には使用者が足を載せるために開いた状態(倒した状態)とする。このフットレストの開閉操作は、介助者がしゃがんで手で行ったり、使用者自身が足や手で行ったりするが、手で開閉操作を行うことは非常に不衛生である。
【0003】
また、例えば、フットレストに少し触れただけで閉じた状態から開いた状態にならないように、フットレストの開閉操作には比較的、力を要する。従って、介助者らが手で操作する際にはフットレストをしっかり把持して開閉する必要があるため特に不衛生となる。また、下肢機能が低下した患者にとっては足での操作が困難でるため、結果として手を使うこととなり、やはり不衛生である。
【0004】
そこで、開閉操作を容易としたフットレスト等が種々開示されている(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。特許文献1に開示された車椅子フットレストは、車椅子のフットレストの回転軸に有する第1のギヤと、前記第1のギヤに連接するベルト又はチェーン又はワイヤーと、前記ベルト又はチェーン又はワイヤーの連接する第2のギヤと、前記ベルト又はチェーン又はワイヤーに接続固定された操作ピンとを具備する車椅子フットレスト操作機構であって、前記第1のギヤと前記ベルト又はチェーン又はワイヤーと前記第2のギヤと前記操作ピンとが前記車椅子の膝下両側に位置する前方パイプフレーム内に構成されており、前記前方パイプフレームから突出した前記操作ピン頭部を移動させることにより前記フットレストを上下回転駆動することができることを特徴とする。
【0005】
また、特許文献2に開示された車いすは、低摩擦の回動部を有するフットレストと、第1の状態では一方方向にのみ回転可能であり第2の状態では逆方向に回転可能なリールと、前記フットレストに一端部が取り付けられており前記リールに他端部が取り付けられているワイヤー・ロープと、を備え、車いす本体を構成するパイプ状のフレーム内に前記ワイヤー・ロープの基端部が通されていることを特徴とする。
【0006】
更に、特許文献3に開示されたフットプレートの開閉機構は、車椅子本体の前側左右にそれぞれ設けられた支持軸に、水平位置から立設位置に回動可能に設けられたフットプレートの基部と前記支持軸との間に弾性部材を設け、該フットプレートの不使用時は、該フットプレートが立設位置を維持するようにしていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-192022号公報
【文献】特開2017-93710号公報
【文献】特開2015-146863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1から特許文献3に開示された種々のフットレストによると、何れも比較的簡易な構成によって、フットレストの開閉操作を容易にしているものと思料する。特に、何れのフットレストにおいても、フットレストの開閉操作において、フットレストに直接手で触れる必要が無く、衛生的であるものと思料する。
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されたフットレストでは、何れも手動操作が必要となる。
【0010】
また、特許文献3に開示されたフットレストの使用時、立設状態となっているフットレストの先端部の位置まで足を上げる必要があり、関節可動域に制限のある患者にとっては非常に困難であるものと思料する。更に、弾性部材によって立設状態を維持するように付勢されているため、この付勢力を超える踏み込み力が必要となり、下肢機能が低下した患者にとっては困難である。また更に、特許文献3に開示されたフットレストの操作は、基本的に使用者自身が行うものであるため、介助者がフットレストを使用状態に維持することが非常に困難であるものと思料する。
【0011】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、簡易な構成で開閉操作が非常に簡単であり、フットレストに直接、手で触れる必要がないため衛生的な車椅子用のフットレストを提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、車椅子に配設されるフットレストであって、フットレスト本体が第1フットレスト部と第2フットレスト部とに略二分され、該第1フットレスト部と該第2フットレスト部とが連結部材によって連結され、前記第2フットレスト部が軸受部を備え、前記車椅子が備えるレッグパイプの下端部に配設されたフットレストポストに前記軸受部を装着することによって前記第2フットレスト部が回動自在に軸支され、前記第1フットレスト部及び前記第2フットレスト部が備える挿通孔にワイヤーが挿通され、前記ワイヤーの一端が前記第1フットレスト部の先端部に固定され、前記ワイヤーの他端が前記フットレストポストに固定され、前記第1フットレスト部と前記第2フットレスト部との連結部に、前記第1フットレスト部と前記第2フットレスト部とを折り畳む方向に付勢する付勢手段が配設されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のフットレストにおいて、前記第1フットレスト部の先端部にワイヤー調整手段を備え、前記ワイヤーの一端が前記ワイヤー調整手段を介して固定されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、車椅子に配設されるフットレストであって、フットレスト本体が第1フットレスト部と第2フットレスト部とに略二分され、該第1フットレスト部と該第2フットレスト部とが連結部材によって連結され、前記第2フットレスト部が軸受部を備え、前記車椅子が備えるレッグパイプの下端部に配設されたフットレストポストに前記軸受部を装着することによって前記第2フットレスト部が回動自在に軸支され、前記第1フットレスト部及び前記第2フットレスト部の下面側にワイヤーが配設され、前記ワイヤーの一端が前記第1フットレスト部に固定され、前記ワイヤーの他端が前記フットレストポストに固定され、前記第1フットレスト部と前記第2フットレスト部との連結部に、前記第1フットレスト部と前記第2フットレスト部とを折り畳む方向に付勢する付勢手段が配設されていることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明のフットレストにおいて、前記第1フットレスト部の下面側にワイヤー調整手段を備え、前記ワイヤーの一端が前記ワイヤー調整手段を介して固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフットレストによると、足での開閉操作が非常に容易であるため、下肢機能が低下した患者であっても開閉操作を行うことができるとともに、手で直接、フットレストに触れる必要がないため、非常に衛生的である。
【0017】
特に、本発明のフットレストに係るフットレスト本体は、第1フットレスト部と第2フットレスト部とに略二分されているため、フットレストを閉じた状態から開いた状態とする際、従来のフットレストと比較して、足を上げる高さが約二分の一でよい。従って、下肢機能が低下した患者であっても、比較的容易に開閉操作を行うことができるものと思料する。
【0018】
また、本発明のフットレストはその構成が簡易であるため、操作性に優れ、衛生的なフットレストを低コストで提供することができる。
【0019】
更に、本発明のフットレストにおいて、ワイヤーの一端がワイヤー調整手段を介して第1フットレスト部に固定されることによって、ワイヤーの引張力を容易に回復することができ、フットレストの開閉操作の容易性を長期的に確保できるとともに、開いた状態及び閉じた状態をしっかりと長期に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフットレストを備えた車椅子の正面図である。
【
図2A】
図1に示したフットレストの平面図である。
【
図2B】
図1に示したフットレストの下面図である。
【
図2C】
図1に示したフットレストの正面図である。
【
図2D】
図1に示したフットレストの閉じた状態を示す正面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るフットレストの使用状態における閉じた状態を示す正面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係るフットレストの使用状態における開いた状態を示す正面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るフットレストの平面図である。
【
図5A】本発明の他の実施形態に係るフットレストの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のフットレストの実施形態について、図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフットレスト10を備えた車椅子1を示す正面図である。同図に示すように、本実施形態の車椅子1は、一般的な車椅子の構成とほぼ同様であって、主として、車体2、手押しハンドル3、バックサポート4、アームサポート5、シート6、走行車輪7(後輪)、キャスター8(前輪)、ハンドリム9等を含んで構成されている。
【0022】
そして、本実施形態の車椅子1に配設されたフットレスト10は、
図2A~
図2Dに示すように、フットレスト本体11が第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とに略二分され、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とが連結部材14によって連結されている。連結部材14には、例えば蝶番等が適用でき、
図2Bに示すように、フットレスト本体11の下面側において、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とを突き合わせた状態で連結部材14によって折り畳み可能に連結されている。
【0023】
本実施形態に係るフットレスト本体11を構成する第2フットレスト部13は、軸受部15を備えている。本実施形態に係る軸受部15は略筒状を成すが、その長手方向における中央部が、一部切り欠かれた状態となっており、この切り欠かれた部分に、後述するワイヤー19が配設されている。また、本実施形態に係る車椅子1が備えるレッグパイプ16の下端部に配設されたフットレストポスト17に、第2フットレスト部13が備える軸受部15を装着することによって、第2フットレスト部13がフットレストポスト17を回動軸として回動自在に軸支されることとなる。
【0024】
更に、本実施形態に係る第1フットレスト部12及び第2フットレスト部13は、それぞれの内部を横方向に貫通する挿通孔18を備えており、この挿通孔18にワイヤー19が挿通されている。より具体的には、ワイヤー19の一端19aが、第2フットレスト部13に形成された挿入口22から第2フットレスト部13に係る挿通孔18に挿入され、更に第1フットレスト部12に係る挿通孔18に挿通される。そして、ワイヤー19の一端19aは、第1フットレスト部12の先端部において固定具20によって固定され、ワイヤー19の他端19bはフットレストポスト17に固定具21によって固定されている。
【0025】
ここで、ワイヤー19の他端19bのフットレストポスト17への固定位置は特に限定されないが、
図3A及び
図3Bに示すように、フットレストポスト17を正面から見た場合の真上方向を0°としたとき、フットレスト本体11(第1フットレスト部12及び第2フットレスト部13)の配設側と反対方向に90°の位置、換言すれば、フットレスト本体11の配設側を内側とした場合、外側に90°の位置にワイヤー19の他端19bが固定されることが好ましい。この位置にワイヤー19の他端19bを固定することによって、本実施形態のフットレスト10を使用する際、即ちフットレスト10を開いた状態にした際、フットレスト本体11をより水平状態に維持することができる。
【0026】
そして、本実施形態に係る第1フットレスト部12と第2フットレスト部13との連結部には、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とを折り畳む方向に付勢する付勢手段23が配設されていることを特徴とする。本実施形態に係る付勢手段23としては、例えば図示したねじりコイルばね等が挙げられるが、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とを折り畳む方向に付勢するものであれば、特に限定されるものではない。
【0027】
以上の構成から成る本実施形態のフットレスト10は、使用していないときは、
図1及び
図2Dに示すように、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とが、連結部材14の配設位置で山折りに折り畳まれるとともに、第2フットレスト部13は略直立した状態(レッグパイプ16と略並行の状態)で維持されることとなる。
【0028】
フットレスト10を使用する場合は、
図3Aに示すように、車椅子1の使用者の足Fで、第2フットレスト部13側における連結部材14の配設位置近傍を踏み込む。第2フットレスト部13は軸受部15によってフットレストポスト17を回動軸として回動自在に軸支されているため、第2フットレスト部13はフットレストポスト17を回動軸として回動する。このとき、第1フットレスト部12及び第2フットレスト部13には、それぞれの挿通孔18に一のワイヤー19が挿通されるとともに、このワイヤーの両端がそれぞれ所定の位置に固定されているため、第2フットレスト部13の回動に伴って第1フットレスト部12の先端側がワイヤー19で引っ張られて徐々に開いていき、最終的に
図3Bに示すように、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とが一直線上に並んだ開いた状態(使用状態)となる。
【0029】
なお、第2フットレスト部13の回動は、
図2A及び
図2Bに示すように、第2フットレスト部13が備える当接部25が、フットレストポスト17の下方に延設された当接パイプ24に当接することによって規制され、第2フットレスト部13が水平状態に維持されることとなる。また、第2フットレスト部13に連結された第1フットレスト部12も、両端が固定されたワイヤー19によって第1フットレスト部12の先端部が引っ張られるため、第1フットレスト部12の先端部が下方へ傾斜することなく、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とが一直線上に並んだ開いた状態が維持されることとなる。
【0030】
図3Bに示した使用状態(開いた状態)から
図3Aに示した収納状態(閉じた状態)にする場合は、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13との連結部に配設された連結部材14の配設位置あたりを足Fで裏面側から少し持ち上げる。すると、ワイヤー19が連結部材14の回動ピン27より上方に位置しているため、回動ピン27がワイヤー19を持ち上げると、付勢手段23の付勢力によって第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とが折り畳まれるとともに、ワイヤー19が第1フットレスト部12の先端側を引っ張り、それに伴って第2フットレスト部13が回動して、最終的に
図3Aに示した収納状態(閉じた状態)となる。
【0031】
以上のとおり、本実施形態のフットレスト10によると、足Fでの開閉操作が非常に容易であるため、下肢機能が低下した患者であっても開閉操作を行うことができるとともに、手で直接、フットレスト10に触れる必要がないため、非常に衛生的である。
【0032】
特に、本実施形態のフットレスト10に係るフットレスト本体11は、第1フットレスト部12と第2フットレスト部13とに略二分されているため、
図3Aに示すように、フットレスト10を閉じた状態から開いた状態にする際、従来のフットレストと比較して、足Fを上げる高さが約二分の一でよい。従って、下肢機能が低下した患者であっても、比較的容易に開閉操作を行うことができるものと思料する。
【0033】
また、本実施形態のフットレスト10はその構成が簡易であるため、操作性に優れ、衛生的なフットレスト10を低コストで提供することができる。
【0034】
更に、本実施形態のフットレスト10は、
図3Bに示した開いた状態にしたとき、足Fを載せていなくても水平状態を維持することができる。つまり、使用者自身での開閉操作が困難な場合であっても介助者が足で開閉操作を行うことができ、例えば、介助者がフットレスト10を閉じた状態から開いた状態にし、介助者がその足を除けた後に使用者が足を載せることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態に係るフットレスト10について詳述したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
図4に示した本発明の他の実施形態に係るフットレスト10aは、基本的な構成は、上記の実施形態に係るフットレスト10と同様である。
【0036】
そして、本実施形態のフットレスト10aでは、フットレスト本体11に挿通されたワイヤー19の一端19aが、フットレスト本体11に係る第1フットレスト部12の先端部に配設されたワイヤー調整手段30を介して固定されていることを特徴とする。このワイヤー調整手段30は、第1フットレスト部12の先端部に取付固定された台座31にネジ棒32が配設され、このネジ棒32にナット33が螺嵌されている。ネジ棒32の先端部近傍にワイヤー19の一端19aが取付固定されており、ナット33を回すことによってネジ棒32が前後方向に移動するように構成されている。従って、本実施形態のフットレスト10aの継続使用等によってワイヤー19が伸びてきた場合は、ワイヤー調整手段30に係るネジ棒32を後退させる方向にナット33を回す。すると、ネジ棒32の後退に伴ってワイヤー19の一端19aが、他端19bと反対方向に引っ張られるため、ワイヤー19の引張力を回復することができる。
【0037】
以上のとおり、本実施形態のフットレスト10aによると、フットレスト10aの継続使用等によってワイヤー19が伸びてきた場合であっても、ワイヤー19の引張力を回復することができるため、フットレスト10aの開閉操作の容易性を長期的に確保することができるとともに、開いた状態及び閉じた状態をしっかりと長期に亘って維持することができる。
【0038】
次に、本発明の更に他の実施形態として、
図5A及び
図5Bに示したフットレスト10bは、フットレスト本体11aが第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとに略二分され、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが連結部材41によって回動自在に連結されている。より具体的には、第1フットレスト部12aが備える連結軸受部42と、第2フットレスト部13aが備える連結軸受部43とに連結部材41(連結ピン)を挿通することによって、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが折り畳み可能に連結されている。
【0039】
本実施形態のフットレスト10bに係るフットレスト本体11aを構成する第2フットレスト部13aも、軸受部15aを備える。本実施形態に係る軸受部15aも略筒状を成し、その長手方向(軸方向)における中央部が一部切り欠かれた状態となっている。そして、この切り欠かれた部分に、後述するワイヤー19が配設されている。
【0040】
また、本実施形態のフットレスト10bも、前述した実施形態に係る車椅子1に装着されるが、この車椅子1が備えるレッグパイプ16の下端部に配設されたフットレストポスト17に、第2フットレスト部13aが備える軸受部15aを装着することによって、第2フットレスト部13aがフットレストポスト17を回動軸として回動自在に軸支されることとなる。
【0041】
更に、
図5Bに示すように、本実施形態に係る第1フットレスト部12a及び第2フットレスト部13aの下面側には、ワイヤー19が配設されている。より具体的には、ワイヤー19の一端19aが、第2フットレスト部13aに係る軸受部15aの切り欠かれた部分から第2フットレスト部13aの下面側に挿通される。そして、第2フットレスト部13aの下面側から第1フットレスト部12aの下面側まで配設され、ワイヤー19の一端19aが、第1フットレスト部12aの下面側において固定具20aによって固定され、ワイヤー19の他端19bはフットレストポスト17に固定具21aによって固定されている。
【0042】
ここで、本実施形態のフットレスト10bに係るワイヤー19の他端19bのフットレストポスト17への固定位置や固定方法は特に限定されず、前述した実施形態のフットレスト10,10aと同様の位置に固定してもよいが、例えば
図5Aに示すように、ワイヤー19の他端19bを、フットレストポスト17を正面から見た場合の真上方向から、フットレストポスト17の真下方向へ貫通させ、
図5Bに示すように、フットレストポスト17の下面側で固定具21aによって他端19bを固定してもよい。当該固定方法によってフットレストポスト17の下面側にワイヤー19の他端19bを固定することによっても、本実施形態のフットレスト10bを使用する際、即ちフットレスト10bを開いた状態にした際、フットレスト本体11を水平状態に維持することができる。
【0043】
そして、本実施形態に係る第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとの連結部40には、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとを折り畳む方向に付勢する付勢手段23が配設されていることを特徴とする。本実施形態に係る付勢手段23としては、前述した実施形態のフットレスト10,10aと同様に、例えば
図5A及び
図5Bに示したねじりコイルばね等が挙げられるが、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとを折り畳む方向に付勢するものであれば、特に限定されるものではない。
【0044】
なお、本実施形態のフットレスト10bにおいては、ワイヤー19が、第2フットレスト部13aに係る軸受部15aの切り欠かれた部分から第2フットレスト部13aの下面側に挿通されるが、第2フットレスト部13aの下面側におけるワイヤー19の挿通位置にワイヤー受け部材44が配設されている。ワイヤー受け部材44を配設することによって、フットレスト10bの開閉操作を更にスムーズに行うことができる。
【0045】
また、本実施形態のフットレスト10bにおいても、ワイヤー19の一端19aが、ワイヤー調整手段を介して第1フットレスト部12aの下面側に固定されていることが好ましい。ワイヤー調整手段としては、前述した実施形態のフットレスト10aに係るワイヤー調整手段30と同様の構成のものが適用可能であるが、より簡単な構成としては、例えば、固定具20aに螺子部材を適用し、ワイヤー19の一端19aを巻き取り固定することによって、ワイヤー19が伸びてきた場合であっても、ワイヤー19の引張力を容易に回復することができる。
【0046】
以上の構成から成る本実施形態のフットレスト10bも、使用していないときは、
図1及び
図2Dに示したフットレスト10と同様に、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが、連結部材41の配設位置で山折りに折り畳まれるとともに、第2フットレスト部13bは略直立した状態(レッグパイプ16と略並行の状態)で維持されることとなる。
【0047】
フットレスト10bを使用する場合は、
図3Aに示したフットレスト10と同様に、車椅子1の使用者の足Fで、第2フットレスト部13a側における連結部材41の配設位置近傍を踏み込む。第2フットレスト部13aは軸受部15aによってフットレストポスト17を回動軸として回動自在に軸支されているため、第2フットレスト部13aはフットレストポスト17を回動軸として回動する。このとき、第1フットレスト部12a及び第2フットレスト部13aにはワイヤー19が配設されているとともに、このワイヤー19の両端がそれぞれ所定の位置に固定されているため、第2フットレスト部13aの回動に伴って第1フットレスト部12aに係るワイヤー19の一端19a側がワイヤー19で引っ張られて徐々に開いていき、最終的に
図3Bに示した状態と同様に、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが一直線上に並んだ開いた状態(使用状態)となる。
【0048】
なお、第2フットレスト部13aの回動は、レッグパイプ16に当接することによって規制され、第2フットレスト部13aが水平状態に維持されることとなる。また、第2フットレスト部13aに連結された第1フットレスト部12aも、両端が固定されたワイヤー19によって第1フットレスト部12aが引っ張られるため、第1フットレスト部12aの先端部が下方へ傾斜することなく、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが一直線上に並んだ開いた状態が維持されることとなる。
【0049】
また、本実施形態のフットレスト10bにおいても、使用状態(開いた状態)から収納状態(閉じた状態)にする場合は、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとの連結部40に配設された連結部材41の配設位置あたりを足で下面側から少し持ち上げる。すると、ワイヤー19が連結部材41より上方に位置しているため、連結部材41がワイヤー19を持ち上げると、付勢手段23の付勢力によって第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとが折り畳まれるとともに、ワイヤー19が第1フットレスト部12aを引っ張り、それに伴って第2フットレスト部13aが回動して、最終的に収納状態(閉じた状態)となる。
【0050】
以上の構成を備える本実施形態のフットレスト10bによると、足での開閉操作が非常に容易であるため、下肢機能が低下した患者であっても開閉操作を行うことができるとともに、手で直接、フットレスト10bに触れる必要がないため、非常に衛生的である。
【0051】
特に、本実施形態のフットレスト10bに係るフットレスト本体11aも、第1フットレスト部12aと第2フットレスト部13aとに略二分されているため、フットレスト10bを閉じた状態から開いた状態にする際、従来のフットレストと比較して、足を上げる高さが約二分の一でよい。従って、下肢機能が低下した患者であっても、比較的容易に開閉操作を行うことができるものと思料する。その他、前述した実施形態のフットレスト10,10aと同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上、本発明のフットレストの実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、本発明の実施形態に係るフットレスト10,10a,10bにおいて、フットレストポスト17は、レッグパイプ16に直接固定されても良いが、各図に示すように、回動ピン26を回動軸として、回動自在に連結固定されても良い。フットレストポスト17をレッグパイプ16に回動自在に連結固定することによって、フットレスト10,10a,10bを閉じた状態から、フットレストポスト17がレッグパイプ16と略並行状態となるように更に回動させることができ、フットレスト10,10a,10bをよりコンパクトに収納することができる。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0053】
1:車椅子
2:車体
3:手押しハンドル
4:バックサポート
5:アームサポート
6:シート
7:走行車輪
8:キャスター
9:ハンドリム
10,10a,10b:フットレスト
11,11a:フットレスト本体
12,12a:第1フットレスト部
13,13a:第2フットレスト部
14,41:連結部材
15,15a:軸受部
16:レッグパイプ
17:フットレストポスト
18:挿通孔
19:ワイヤー
20,20a,21,21a:固定具
22:挿入口
23:付勢手段
24:当接パイプ
25:当接部
26,27:回動ピン
30:ワイヤー調整手段
31:台座
32:ネジ棒
33:ナット
40:連結部
42,43:連結軸受部
44:ワイヤー受け部材