(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】筐体ケース及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20230926BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H05K5/03 G
H05K5/00 A
(21)【出願番号】P 2022115319
(22)【出願日】2022-07-20
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 輝
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-64064(JP,A)
【文献】実開平5-25798(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、
前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、
を備え、
前記第1ケース部品は、
前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部と、
前記複数の板バネ部のそれぞれのケース外側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力によって前記側壁部のケース内側の面を押圧するように構成された複数の突起部と、
を備える、
筐体ケース。
【請求項2】
少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、
前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、
を備え、
前記第1ケース部品は、前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部を備え、
前記第2ケース部品は、前記側壁部のケース内側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力を受けるように構成された複数の突起部を備える、
筐体ケース。
【請求項3】
前記第2ケース部品の前記側壁部の前記底面側の端面は、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに、前記第1ケース部品と対向して離間するように構成されている、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項4】
前記第2ケース部品の前記側壁部は、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに、前記板バネ部の少なくとも一部を収容するとともに、前記突起部以外の部分で前記板バネ部と離間するように構成された段差部を備える、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項5】
前記第2ケース部品の前記側壁部の前記底面側の端面のケース内側の角部が全周にわたって連続的にテーパ部となっている、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項6】
前記板バネ部の前記上面側の端面のケース外側の角部が全周にわたってテーパ部となっている、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項7】
前記第1ケース部品は、前記第1ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、
前記板バネ部は、前記第1ケース部品の前記側壁部の前記上面側の端面に固定され、
前記板バネ部の厚さは、前記第1ケース部品の前記側壁部の厚さよりも薄い、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項8】
前記板バネ部は、前記第1ベース部における前記所定の空間の底面の周縁部に固定されている、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項9】
前記第2ケース部品の前記側壁部は、前記筐体ケースの外から見て、前記スリットの全てを覆うように構成されている、
請求項1又は2記載の筐体ケース。
【請求項10】
請求項1又は2記載の筐体ケースと、
前記筐体ケースに実装されるとともに、通電により発熱する電子部品と、
を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体ケース及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームルータ、モデム、パソコン本体、モニタ等の電子機器は、一般的に、複数個のケース部品が組み合わさった筐体ケースにおいて、電子部品を搭載した基板が実装されており、当該ケース部品において、外部から外気を吸気し、かつ、電子部品で発生した熱を排気する吸排気口が設けられた構成となっている。筐体ケースとして、例えば、一方のケース部品において、側面板に弾性を有する片持の舌片と、当該舌片の自由端に設けた凸部とを備え、他方のケースにおいて、側面板に開口を備え、両方のケース部品を嵌合固定したときに、凸部が開口に嵌合するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、筐体ケースとして、一方のケース部品の側壁内面に凸部を設け、かつ、他方のケースの側壁に該凸部と接触する片持ち状のバネ部を設けてケース部品間のガタツキを吸収するように構成したものがある(例えば、特許文献2参照)。吸排気口として、例えば、メッシュ状に配列した複数の開口部や、細長い複数の羽板を所定の隙間をあけて平行に並べたルーバー等を用いたものがある(例えば、特許文献3参照)。また、吸排気口は、目隠しする部品で覆うこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-27189号
【文献】特開平10-62765号
【文献】再表2015/37039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0005】
特許文献1、2の筐体ケースは、ケース部品間の嵌合部で接触面を有し、ケース部品の製造時のバラツキや、組立時のバラツキにより、ケース部品間の隙間の大きさも不均一で部分的に非接触面もあるため、ケース部品の変形(熱的変形、機械的変形)、振動、衝撃が加わった際に、接触面の固着と滑りによる軋み音や、ケース部品同士の衝突によるビビリ音やガタツキ音などの異音が発生することがある。また、特許文献3の筐体ケースでは、ケース部品の吸排気口の配置によりデザイン上の制約がある。
【0006】
本発明の主な課題は、デザイン上の制約をなくしつつ異音の発生を抑えることに貢献することができる筐体ケース及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の視点に係る筐体ケースは、少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、を備え、前記第1ケース部品は、前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部と、前記複数の板バネ部のそれぞれのケース外側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力によって前記側壁部のケース内側の面を押圧するように構成された複数の突起部と、を備える。
前記第1の視点に係る筐体ケースの変形として、少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、を備え、前記第1ケース部品は、前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部を備え、前記第2ケース部品は、前記側壁部のケース内側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力を受けるように構成された複数の突起部を備える。
【0008】
第2の視点に係る電子機器は、前記第1の視点に係る筐体ケースと、前記筐体ケースに実装されるとともに、通電により発熱する電子部品と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
前記第1、第2の視点によれば、デザイン上の制約をなくしつつ異音の発生を抑えることに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る筐体ケースの組み合わせ前の構成を模式的に示した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【
図4】実施形態1に係る筐体ケースに基板を実装した電子機器を横置きした場合の吸排気の流れを模式的に示した断面図である。
【
図5】実施形態1に係る筐体ケースに基板を実装した電子機器を縦置きした場合の吸排気の流れを模式的に示した断面図である。
【
図6】実施形態2に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
【
図7】実施形態2に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【
図8】実施形態3に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
【
図9】実施形態3に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1に係る筐体ケースについて図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
図2は、実施形態1に係る筐体ケースの組み合わせ前の構成を模式的に示した断面図である。
図3は、実施形態1に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【0013】
筐体ケース1は、電子装置、機械などの発熱しうる物体(例えば、
図4の電子部品40を搭載した基板30)を実装(かつ、収容)するために用いられるケースである(
図1~
図3参照)。筐体ケース1は、通信機器等の電子機器に用いることができる。筐体ケース1は、2つ以上(
図1~
図3では2つ)のケース部品10、20が嵌合するように構成されている。筐体ケース1の嵌合部3は、側壁の全周にわたって配されている。筐体ケース1は、ケース部品10、20の嵌合部3の全周にわたってケース外側とケース内側との間の吸排気用の隙間を備える。筐体ケース1の嵌合部3の吸排気用の隙間は、自然空冷により、筐体ケース1の内部に実装された物体で発生した熱をケース外部に放出するように構成されている。嵌合部3におけるケース部品10、20が嵌合した部分は、外観から隠れている。ケース部品10、20同士は、ケース部品10、20の側壁部12、22の全周にわたって、嵌合部3で多点接触している。これによりケース部品10、20同士を嵌合部3で確実に接触させることができるので、嵌合部3の微小隙間で発生する軋み音やビビリ音等の異音やガタツキを抑えることができる。筐体ケース1は、ケース部品10と、ケース部品20と、を備える。
【0014】
ケース部品10は、ケース部品20と嵌合する筐体ケース1の構成部品である(
図1~
図3参照)。ケース部品10は、中身が空洞(所定の空間に相当)な立体(例えば、
図1では直方体)の上面が開放された構造となっている。ケース部品10は、所定の空間の底面を覆うベース部11(第1ベース部に相当)を備える。ケース部品10は、筐体ケース1の底面に位置するベース部11の全周囲の端部から上面側に側壁部12が延在した構造となっている。側壁部12は、ベース部11から所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う。ケース部品10の側壁部12の上端部には、複数の板バネ部13が固定されている。
【0015】
板バネ部13は、側壁部12の上端部に固定され、側壁部12の上端部から上面側に延在している。板バネ部13は、隣り合う板バネ部13とスリット14を介して側壁部12に沿って全周にわたって配列されている。板バネ部13は、弾性変形可能に構成されている。板バネ部13の厚さは、側壁部12の厚さよりも薄くなっている。板バネ部13のケース外側の面には、突起部15が設けられている。
【0016】
スリット14は、上面側から底面側に切り込まれたような構成の隙間であり、嵌合部3におけるケース外側とケース内側との間の吸排気路となる。これにより、嵌合部3におけるスリット14を含む隙間を通じてケース内側とケース外側の空気が入れ替わることで、ケース内部の発熱源(例えば、
図4の電子部品40)で発生した熱をケース外側に放出することができる。スリット14は、ケース部品10、20同士が組み合わさったときに、ケース部品20の側壁部22によって外観から隠れている。
【0017】
突起部15は、ケース部品10、20同士を嵌合したときに、板バネ部13が弾性変形してケース部品20の側壁部22の内面を押圧(圧接)する。これにより、ケース部品10の複数の突起部15がケース部品20の側壁部22の内面に全周にわたって断続的に常に接触するようになり、外力による変形にも追従するので、面接触が回避されて固着と滑りがなくなり、ケース部品10、20同士の衝突がなくなり、軋み音、ビビリ音、ガタツキ音などの異音が発生しないようにすることができる。突起部15の高さ(板バネ部13の外側の面からの高さ)は、
図2のように、ケース部品10、20同士を組み合わせる前においてケース部品10、20の各側壁部12、22の外側の面を同一面となるようにケース部品10、20を配置したときに、ケース部品20の側壁部22の内面よりも外側に突出した高さとし、突起部15が側壁部22に接して板バネ部13が弾性変形可能な高さ(塑性変形または破損しない高さ)となっている。突起部15の形状は、ケース部品20の側壁部22の内面との接触面積を極力少なくするため、点接触又は線接触する形状とし、先端を曲面、頂点、又は稜線とする。
【0018】
ケース部品20は、ケース部品10と嵌合する筐体ケース1の構成部品である(
図1~
図3参照)。ケース部品20は、中身が空洞(所定の空間に相当)な立体(例えば、
図1では直方体)の下面が開放された構造となっている。ケース部品20は、所定の空間の上面を覆うベース部21(第2ベース部に相当)を備える。ケース部品20は、筐体ケース1の上面に位置するベース部21の全周囲の端部から底面側に側壁部22が延在した構造となっている。側壁部22は、ベース部21から所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う。側壁部22は、筐体ケース1の外から見て、スリット14の全てを覆うように構成されている。側壁部22は、ケース内側の面に、側壁部22の底面側の端部から上面側に凹んだ段差部27を備える。側壁部22は、嵌合部3で弾性変形するようにしてもよい。
【0019】
段差部27は、ケース部品10、20同士を嵌合したときに、ケース部品10の板バネ部13(突起部15を含む)の少なくとも一部を収容する部分となる。段差部27は、突起部15以外の部分で板バネ部13と離間するように構成されている。側壁部22の底面側の端面のケース内側の角部は、全周にわたって連続的にテーパ部26となっている。テーパ部26は、ケース部品10、20同士を組み合わせる過程で、ケース部品10の突起部15をケース内側にガイドして板バネ部13を弾性変形させる。
【0020】
ケース部品10、20の材料には、プラスチック、金属などの弾性変形可能な材料を用いることができる。ケース部品10、20に金属を用いる場合、ケース部品10の隣り合う突起部15の間隔を、内部の電子部品(
図4の40)から発する電磁波の性質に応じて設定することで、筐体ケース1からの放射を抑えることができる。
【0021】
筐体ケース1は、ケース部品10及びケース部品20同士を嵌合したときに、側壁部12の上面側の端面と側壁部22の底面側の端面とが互いに対向して離間するように構成されている。
【0022】
以上のようなケース部品10、20同士を
図3のように嵌合させると、ケース部品10の板バネ部13が撓み、ケース部品20の側壁部22の内面と突起部15とが常に接触した状態となり、嵌合部3において突起部15以外のケース部品10とケース部品20との間に隙間がある状態を保つことができる。また、この隙間がケース部品10の板バネ部13の変形量以内であれば、ケース部品20が変形しても追従し、接触している状態を維持することができる。また、このような構造とすることで、筐体ケース1の嵌合部3が常に全周にわたって断続的に接触しているため、ケース部品10、20間のガタツキがなくなり、ケース部品10、20同士の衝突によるビビリ音の発生を抑えることができる。さらに、嵌合部3における接触部分が点接触または線接触であるため、固着と滑りが発生する箇所も極僅かになり、かつ、接触部分には常にケース部品10の板バネ部13の変形による反力がかかっているため、滑りにくくすることができ、軋み音の発生を抑えることができる。
【0023】
次に、実施形態1に係る筐体ケースに基板を実装した電子機器の放熱経路について説明する。
【0024】
まず、電子機器を横置き(ベース部11、21の外面が水平となるように配置)した場合の放熱について図面を用いて説明する。
図4は、実施形態1に係る筐体ケースに基板を実装した電子機器を横置きした場合の吸排気の流れを模式的に示した断面図である。
【0025】
図4のように、嵌合したケース部品10、20(
図3の筐体ケース1)内に、電子部品40が搭載された基板30が実装された電子機器5を横置きにした場合、通電により発熱する電子部品40付近の温度上昇に伴う自然対流によりケース部品10、20の外部に対し負圧が発生し、電子部品40の近傍のスリット14を含む隙間から外気を吸い込むように作用する。この外気の吸い込みによりケース部品10、20の内部は外気に対し正圧となるため、電子部品40の遠方のスリット14を含む隙間から内気を排出するように作用する。このような作用は、電子部品40が基板30の端寄りに集中して実装される場合(放熱条件が厳しい場合)に大きくなる。
【0026】
次に、電子機器を縦置き(ベース部11、21の外面が垂直となるように配置)した場合の放熱について図面を用いて説明する。
図5は、実施形態1に係る筐体ケースに基板を実装した電子機器を縦置きした場合の吸排気の流れを模式的に示した断面図である。
【0027】
図5のように、嵌合したケース部品10、20(
図3の筐体ケース1)内に、電子部品40が搭載された基板30が実装された電子機器5を縦置きにした場合、通電により発熱する電子部品40付近の温度上昇に伴う浮力によりケース部品10、20内の下部はケース部品10、20の外部に対し負圧となり、自然対流により、ケース部品10、20の下部のスリット14を含む隙間から吸気し、かつ、ケース部品10、20の上部のスリット14を含む隙間から排気するエアフローとなる。
【0028】
実施形態1によれば、吸排気路となるケース部品10のスリット14をケース部品20の側壁部22で外観から隠しつつ、ケース部品10の板バネ部13のばね力によりケース部品10の複数の突起部15を全周にわたって断続的にケース部品20の側壁部22の内面に圧接させているので、デザイン上の制約をなくしつつ、異音の発生を抑えることに貢献することができる。つまり、放熱のための吸排気口を筐体ケース1の嵌合部3に設けることで、筐体ケース1の表面(ケース部品10、20のベース部11、21、側壁部12、22)の吸排気口をなくす、又は、必要最低限とすることが可能となり、デザイン上の自由度を確保することができる。また、ケース部品10の板バネ部13のばね力、及び、ケース部品10の複数の突起部15を全周にわたって断続的にケース部品20の側壁部22の内面に点接触又は線接触させることにより、ケース部品10、20間の振動や衝撃、筐体ケース1を握った際の加圧による異音の発生を抑えることができる。
【0029】
また、実施形態1によれば、ケース部品10、20同士の嵌合部3のガタツキを抑えるための嵌合部3の寸法調整や厳しい寸法管理が不要となるため、コストダウン効果が得られる。
【0030】
また、実施形態1によれば、筐体ケース1の外から見て、ケース部品20の側壁部22がスリット14の全てを覆っているので、上面側からの被水経路に対してケース内部への水の浸入を防ぐことに貢献することができる。
【0031】
さらに、実施形態1によれば、異音対策としてケース部品10、20間の嵌合部3の接触部にグリスなどを塗布する必要がなくなる、または、塗布する必要があっても、接触している突起部15のみ塗布すればよいため、コストダウン効果が得られる。
【0032】
[実施形態2]
実施形態2に係る筐体ケースについて図面を用いて説明する。
図6は、実施形態2に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
図7は、実施形態2に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【0033】
実施形態2は、実施形態1の変形例であり、ケース部品10から突起部(
図1の15)を削除する代わりに、ケース部品20の側壁部22の内面に複数の突起部25を設けたものである。複数の突起部25は、側壁部22の内周の全周にわたって断続的に配されている。突起部25は、ケース部品10、20同士が組み合わさったときに、対応するケース部品10の板バネ部13をケース内側に押圧(圧接)して弾性変形させる。また、ケース部品10の板バネ部13の上面側の端面のケース外側の角部は、テーパ部16となっている。テーパ部16は、ケース部品10、20同士を組み合わせる過程で、ケース部品20の突起部25によってケース部品10の板バネ部13をケース内側にガイドして板バネ部13を弾性変形させる。その他の構成及び動作については、実施形態1と同様である。
【0034】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、吸排気路となるケース部品10のスリット14をケース部品20の側壁部22で外観から隠しつつ、ケース部品10の板バネ部13のばね力によりケース部品10の複数の板バネ部13を全周にわたって断続的に、対応するケース部品20の複数の突起部25に圧接させているので、デザイン上の制約をなくしつつ、異音の発生を抑えることに貢献することができる。
【0035】
[実施形態3]
実施形態3に係る筐体ケースについて図面を用いて説明する。
図8は、実施形態3に係る筐体ケースの構成を模式的に示した展開斜視図である。
図9は、実施形態3に係る筐体ケースの組み合わせ後の構成を模式的に示した断面図である。
【0036】
筐体ケース1は、第1ケース部品10と第2ケース部品20とが嵌合するように構成されている。第1ケース部品10は、少なくとも所定の空間(筐体ケース1の内部空間)の底面を覆う第1ベース部11を備える。第2ケース部品20は、所定の空間(筐体ケース1の内部空間)の上面を覆う第2ベース部21を備える。第2ケース部品20は、第2ベース部21から所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部22を備える。第2ケース部品20は、側壁部22と第1ケース部品10とが所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成されている。
【0037】
第1ケース部品10は、第1ベース部11と直接(間接的でも可)固定されるとともに、上面側から底面側に切り込まれたスリット14を介して所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部13を備える。第1ケース部品10は、複数の板バネ部13のそれぞれのケース外側の面に設けられるとともに、第1ケース部品10及び第2ケース部品20同士を嵌合したときに板バネ部13の弾性力によって側壁部22のケース内側の面を押圧(圧接)するように構成された複数の突起部15を備える。
【0038】
実施形態3によれば、吸排気路となる第1ケース部品10のスリット14を第2ケース部品20の第2側壁部22で外観から隠しつつ、第1ケース部品10の板バネ部13のばね力により第1ケース部品10の複数の突起部15を全周にわたって断続的に第2ケース部品20の第2側壁部22のケース内側の面に圧接させているので、デザイン上の制約をなくしつつ、異音の発生を抑えることに貢献することができる。
【0039】
上記実施形態の一部または全部は以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0040】
[付記1]
少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、
前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、
を備え、
前記第1ケース部品は、
前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部と、
前記複数の板バネ部のそれぞれのケース外側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力によって前記側壁部のケース内側の面を押圧するように構成された複数の突起部と、
を備える、
筐体ケース。
[付記2]
少なくとも所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、
前記所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、前記側壁部と前記第1ケース部品とが前記所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合するように構成された第2ケース部品と、
を備え、
前記第1ケース部品は、前記第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、前記底面側から前記上面側に延在し、前記上面側から前記底面側に切り込まれたスリットを介して前記所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部を備え、
前記第2ケース部品は、前記側壁部のケース内側の面に設けられるとともに、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに前記板バネ部の弾性力を受けるように構成された複数の突起部を備える、
筐体ケース。
[付記3]
前記第2ケース部品の前記側壁部の前記底面側の端面は、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに、前記第1ケース部品と対向して離間するように構成されている、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記4]
前記第2ケース部品の前記側壁部は、前記第1ケース部品及び前記第2ケース部品同士を嵌合したときに、前記板バネ部の少なくとも一部を収容するとともに、前記突起部以外の部分で前記板バネ部と離間するように構成された段差部を備える、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記5]
前記第2ケース部品の前記側壁部の前記底面側の端面のケース内側の角部が全周にわたって連続的にテーパ部となっている、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記6]
前記板バネ部の前記上面側の端面のケース外側の角部が全周にわたってテーパ部となっている、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記7]
前記第1ケース部品は、前記第1ベース部から前記所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、
前記板バネ部は、前記第1ケース部品の前記側壁部の前記上面側の端面に固定され、
前記板バネ部の厚さは、前記第1ケース部品の前記側壁部の厚さよりも薄い、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記8]
前記板バネ部は、前記第1ベース部における前記所定の空間の底面の周縁部に固定されている、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記9]
前記第2ケース部品の前記側壁部は、前記筐体ケースの外から見て、前記スリットの全てを覆うように構成されている、
付記1又は2記載の筐体ケース。
[付記10]
付記1又は2記載の筐体ケースと、
前記筐体ケースに実装されるとともに、通電により発熱する電子部品と、
を備える、
電子機器。
【0041】
なお、上記の特許文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本願発明の趣旨に則り、本願発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれる(属する)ものと、みなされる。
【符号の説明】
【0042】
1 筐体ケース
3 嵌合部
5 電子機器
10 ケース部品(第1ケース部品)
11 ベース部(第1ベース部)
12 側壁部
13 板バネ部
14 スリット
15 突起部
16 テーパ部
20 ケース部品(第2ケース部品)
21 ベース部(第2ベース部)
22 側壁部
25 突起部
26 テーパ部
27 段差部
28 庇部
30 基板
40 電子部品
【要約】
【課題】デザイン上の制約をなくしつつ異音の発生を抑えることに貢献することができる筐体ケース及び電子機器を提供すること。
【解決手段】所定の空間の底面を覆う第1ベース部を備える第1ケース部品と、所定の空間の上面を覆う第2ベース部を備えるとともに、第2ベース部から所定の空間の側面を全周にわたって連続的に覆う側壁部を備え、側壁部と第1ケース部品とが所定の空間の全周にわたって断続的に嵌合する第2ケース部品と、を備え、第1ケース部品は、第1ベース部と直接又は間接的に固定されるとともに、上面側から底面側に切り込まれたスリットを介して所定の空間の側面の全周にわたって配列された複数の板バネ部と、板バネ部のケース外側の面に設けられるとともに、第1、第2ケース部品同士を嵌合したときに側壁部のケース内側の面を押圧するように構成された複数の突起部と、を備える。
【選択図】
図8