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特許7355473循環腫瘍細胞分離キット、循環腫瘍細胞分離容器及び循環腫瘍細胞の分離方法
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  • 特許-循環腫瘍細胞分離キット、循環腫瘍細胞分離容器及び循環腫瘍細胞の分離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】循環腫瘍細胞分離キット、循環腫瘍細胞分離容器及び循環腫瘍細胞の分離方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G01N33/48 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023545876
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2022038554
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022049652
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 嵩也
(72)【発明者】
【氏名】神田 まりか
(72)【発明者】
【氏名】駒井 邦哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 智雅
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-500585(JP,A)
【文献】特開2019-211216(JP,A)
【文献】特表2005-501236(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046557(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/182575(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/112119(WO,A1)
【文献】特表2020-523577(JP,A)
【文献】特表2014-524027(JP,A)
【文献】特表2015-506482(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168767(WO,A1)
【文献】特開2007-271388(JP,A)
【文献】特開平1-199158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/50,
A61B 5/15,
C12M 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離キットであり、
水溶液が収容されており、かつ所定量の血液が採取される血液採取容器と、
25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材が収容された細胞分離容器とを備え、
前記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物(A)又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物(B)を含み、
前記低分子化合物(A)が、トレハロース、又は硫酸アンモニウムを含み、
前記高分子化合物(B)が、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はコーンスターチであり、
前記高分子化合物(B)が、数平均分子量が10,000以上200,000未満の高分子化合物(B1)と、数平均分子量が2,000以上10,000未満の高分子化合物(B2)とを含み、
前記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である、循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項2】
前記水溶液が、前記低分子化合物(A)を含む、請求項1に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項3】
前記水溶液が、前記高分子化合物(B)を含む、請求項1に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項4】
前記水溶液が、前記低分子化合物(A)と前記高分子化合物(B)とを含む、請求項1に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項5】
前記高分子化合物(B)が、細胞膜保護作用を有する化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項6】
前記高分子化合物(B)が、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンである、請求項1~のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項7】
前記細胞分離材が、細胞分離用組成物である、請求項1~のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項8】
前記細胞分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、
前記有機成分が、樹脂を含み、
前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む、請求項に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項9】
血球凝集剤をさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離キットを用いて、血液中の循環腫瘍細胞を分離する方法であって、
前記水溶液が収容された前記血液採取容器に血液を採取して、前記血液と前記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程と、
前記細胞分離材が収容された前記細胞分離容器に、前記検体を添加する添加工程と、
前記検体が添加された前記細胞分離容器を遠心分離する遠心分離工程と、
血漿中に分離された循環腫瘍細胞を回収する回収工程とを備える、循環腫瘍細胞の分離方法。
【請求項11】
前記遠心分離工程において、血球凝集剤と前記検体とが混合された液が収容された細胞分離容器を遠心分離する、請求項10に記載の循環腫瘍細胞の分離方法。
【請求項12】
血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離容器であり、
所定量の血液が採取される循環腫瘍細胞分離容器であり、
容器本体と、
前記容器本体内に収容された水溶液と、
前記容器本体内に収容された25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材とを備え、
前記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物(A)又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物(B)を含み、
前記低分子化合物(A)が、トレハロース、又は硫酸アンモニウムを含み、
前記高分子化合物(B)が、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はコーンスターチであり、
前記高分子化合物(B)が、数平均分子量が10,000以上200,000未満の高分子化合物(B1)と、数平均分子量が2,000以上10,000未満の高分子化合物(B2)とを含み、
前記循環腫瘍細胞分離容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を循環腫瘍細胞分離容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である、循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項13】
前記水溶液が、前記低分子化合物(A)を含む、請求項12に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項14】
前記水溶液が、前記高分子化合物(B)を含む、請求項12に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項15】
前記水溶液が、前記低分子化合物(A)と前記高分子化合物(B)とを含む、請求項12に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項16】
前記高分子化合物(B)が、細胞膜保護作用を有する化合物を含む、請求項1215のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項17】
前記高分子化合物(B)が、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンである、請求項1215のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項18】
前記細胞分離材が、細胞分離用組成物である、請求項1215のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項19】
前記細胞分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、
前記有機成分が、樹脂を含み、
前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む、請求項18に記載の循環腫瘍細胞分離容器。
【請求項20】
請求項1215のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離容器と、
血球凝集剤とを備える、循環腫瘍細胞分離キット。
【請求項21】
請求項1215のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞分離容器を用いて、血液中の循環腫瘍細胞を分離する方法であって、
前記循環腫瘍細胞分離容器に血液を採取して、前記血液と前記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程と、
前記検体が収容された前記循環腫瘍細胞分離容器を遠心分離する遠心分離工程と、
血漿中に分離された循環腫瘍細胞を回収する回収工程とを備える、循環腫瘍細胞の分離方法。
【請求項22】
前記遠心分離工程において、血球凝集剤と前記検体とが混合された液が収容された循環腫瘍細胞分離容器を遠心分離する、請求項21に記載の循環腫瘍細胞の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離キット及びそれを用いた循環腫瘍細胞の分離方法に関する。また、本発明は、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離容器及びそれを用いた循環腫瘍細胞の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環腫瘍細胞(Circulating tumor cells、以下「CTC」と記載することがある)は、腫瘍組織から遊離して血液中へ浸潤したがん細胞であり、がん転移の形成過程に深く関与すると考えられている。例えば、CTCは、肺がんにおける予後予測因子及び進展度のマーカー、並びに、乳がんの再発リスクの層別化マーカーとなり得る可能性が報告されている。
【0003】
しかしながら、CTCは、患者の血液1mLあたり数個~数十個程度しか存在しないため、血液中のCTCを分離することは容易ではない。
【0004】
血液中のCTCを分離するために、下記の非特許文献1に示すように、様々な方法が試みられている。
【0005】
また、下記の特許文献1には、アルデヒドを放出可能な成分と、抗凝固剤と、シクロデキストリン又はその官能化誘導体とを含む組成物が開示されている。特許文献1には、上記組成物で安定化されたCTCを分離できる場合があることが記載されている。例えば、特許文献1には、血漿を単離した後、バフィーコートからCTC及び白血球を分離できる場合があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2021-500585号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Zeina Habli, Walid AlChamaa, Raya Saab, Humam Kadara and Massoud L. Khraiche. Circulating Tumor Cell Detection Technologies and Clinical Utility: Challenges and Opportunities. Cancers 2020, 12, 1930; doi:10.3390/cancers12071930
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血液中のCTCを分離する方法の一例として、非特許文献1及び特許文献1にも記載のように、細胞の比重差を利用する遠心分離法(密度勾配遠心分離法)が知られている。遠心分離法は、低コストであり、簡便であるという利点がある。
【0009】
ところで、臨床現場では、患者から採血した検体が検査に供されるまでに、ある程度の時間が経過することがある。例えば、検体を検査施設に輸送したり、検査施設において検査待ちの検体が多量に存在していたりする場合には、採血してから検体が検査に供されるまでに、数日程度の時間が経過することがある。
【0010】
従来の遠心分離法では、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いてCTCを分離した場合に、CTCの回収率をある程度高くすることができたとしても、採血後に数日間保管された検体を用いてCTCを分離した場合に、CTCの回収率が低下しやすい。
【0011】
本発明の目的は、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、循環腫瘍細胞の回収率を高めることができる循環腫瘍細胞分離キット及び循環腫瘍細胞分離容器を提供することである。また、本発明は、上記循環腫瘍細胞分離キットを用いた循環腫瘍細胞の分離方法、及び、上記循環腫瘍細胞分離容器を用いた循環腫瘍細胞の分離方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面では、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離キットであり、水溶液が収容されており、かつ所定量の血液が採取される血液採取容器と、25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材が収容された細胞分離容器とを備え、前記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含み、前記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である、循環腫瘍細胞分離キット(以下、「CTC分離キット」と記載することがある)が提供される。
【0013】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記水溶液が、前記低分子化合物を含む。
【0014】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記水溶液が、前記高分子化合物を含む。
【0015】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記水溶液が、前記低分子化合物と前記高分子化合物とを含む。
【0016】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記低分子化合物が、トレハロース、又は硫酸アンモニウムを含む。
【0017】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記高分子化合物が、細胞膜保護作用を有する化合物を含む。
【0018】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記高分子化合物が、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンである。
【0019】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記細胞分離材が、細胞分離用組成物である。
【0020】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記細胞分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、前記有機成分が、樹脂を含み、前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む。
【0021】
本発明に係るCTC分離キットのある特定の局面では、前記CTC分離キットは、血球凝集剤をさらに備える。
【0022】
本発明の広い局面では、上述した循環腫瘍細胞分離キットを用いて、血液中の循環腫瘍細胞を分離する方法であって、前記水溶液が収容された前記血液採取容器に血液を採取して、前記血液と前記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程と、前記細胞分離材が収容された前記細胞分離容器に、前記検体を添加する添加工程と、前記検体が添加された前記細胞分離容器を遠心分離する遠心分離工程と、血漿中に分離された循環腫瘍細胞を回収する回収工程とを備える、循環腫瘍細胞の分離方法(以下、「CTCの分離方法」と記載することがある)が提供される。
【0023】
本発明に係るCTCの分離方法のある特定の局面では、前記遠心分離工程において、血球凝集剤と前記検体とが混合された液が収容された細胞分離容器を遠心分離する。
【0024】
本発明の広い局面では、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる循環腫瘍細胞分離容器であり、所定量の血液が採取される循環腫瘍細胞分離容器であり、容器本体と、前記容器本体内に収容された水溶液と、前記容器本体内に収容された25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材とを備え、前記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含み、前記循環腫瘍細胞分離容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を循環腫瘍細胞分離容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である、循環腫瘍細胞分離容器(以下、「CTC分離容器」と記載することがある)が提供される。
【0025】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記水溶液が、前記低分子化合物を含む。
【0026】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記水溶液が、前記高分子化合物を含む。
【0027】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記水溶液が、前記低分子化合物と前記高分子化合物とを含む。
【0028】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記低分子化合物が、トレハロース、又は硫酸アンモニウムを含む。
【0029】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記高分子化合物が、細胞膜保護作用を有する化合物を含む。
【0030】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記高分子化合物が、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンである。
【0031】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記細胞分離材が、細胞分離用組成物である。
【0032】
本発明に係るCTC分離容器のある特定の局面では、前記細胞分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、前記有機成分が、樹脂を含み、前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む。
【0033】
本発明の広い局面では、上述した循環腫瘍細胞分離容器と、血球凝集剤とを備える、循環腫瘍細胞分離キットが提供される。
【0034】
本発明の広い局面では、上述した循環腫瘍細胞分離容器を用いて、血液中の循環腫瘍細胞を分離する方法であって、前記循環腫瘍細胞分離容器に血液を採取して、前記血液と前記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程と、前記検体が収容された前記循環腫瘍細胞分離容器を遠心分離する遠心分離工程と、血漿中に分離された循環腫瘍細胞を回収する回収工程とを備える、循環腫瘍細胞の分離方法(以下、「CTCの分離方法」と記載することがある)が提供される。
【0035】
本発明に係るCTCの分離方法のある特定の局面では、前記遠心分離工程において、血球凝集剤と前記検体とが混合された液が収容された循環腫瘍細胞分離容器を遠心分離する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、循環腫瘍細胞の回収率を高めることができる循環腫瘍細胞分離キット及び循環腫瘍細胞分離容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る循環腫瘍細胞分離キットを模式的に示す正面断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る循環腫瘍細胞分離容器を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0039】
本発明に係る循環腫瘍細胞分離キット(以下、「CTC分離キット」と記載することがある)は、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる。本発明に係るCTC分離キットは、水溶液が収容されており、かつ所定量の血液が採取される血液採取容器と、25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材が収容された細胞分離容器とを備える。本発明に係るCTC分離キットでは、上記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含む。本発明に係るCTC分離キットでは、上記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された混合液を得たときに、上記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である。
【0040】
本発明に係る循環腫瘍細胞分離容器(以下、「CTC分離容器」と記載することがある)は、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられる。本発明に係るCTC分離容器は、所定量の血液が採取される循環腫瘍細胞分離容器である。本発明に係るCTC分離容器は、容器本体と、上記容器本体内に収容された水溶液と、上記容器本体内に収容された25℃での比重が1.065以上1.080以下の細胞分離材とを備える。本発明に係るCTC分離容器では、上記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含む。本発明に係るCTC分離容器では、上記CTC分離容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水をCTC分離容器内に採取して、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された混合液を得たときに、上記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下である。
【0041】
本発明に係るCTC分離キット及びCTC分離容器では、上記の構成が備えられているので、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、循環腫瘍細胞(CTC)の回収率を高めることができる。
【0042】
本発明に係るCTC分離キットでは、血液を血液採取容器に採取すると、上記血液と上記水溶液とが混合された混合液(検体)が得られる。混合液の浸透圧は適度に小さいため、CTCが安定化しやすい。また、上記水溶液に含まれる上記低分子化合物又は上記高分子化合物の作用により、CTCが安定化しやすい。このため、本発明に係るCTC分離キットでは、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率を高めることができる。なお、本発明に係るCTC分離容器でも、同様の作用により、採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率を高めることができる。
【0043】
また、遠心分離により血液中のCTCを分離する従来の方法では、血液を採取してから遠心分離操作を行うまでの間に検体が保管された場合に、保管中に細胞死及び細胞形態の変化が進行する。そのため、保管時間が長くなるにつれて、遠心分離後に、分離材により形成される隔壁上に混入する赤血球数及び白血球数が増加する。蛍光顕微鏡による観察やNGSによる分析では、癌細胞の純度が高いことが好ましいため、混入する血球数が増えると、CTCの検出感度が低下する。さらに、上記特許文献1のように、遠心分離後にバフィーコートからCTCを分離する場合には、CTCと共に白血球等の不要な細胞も一緒に回収されるため、セルソーター等を用いて、不要な細胞の除去が必要になり、操作が煩雑になる。
【0044】
これに対して、本発明に係るCTC分離キット及びCTC分離容器では、上記の構成が備えられているので、保管中の細胞死及び細胞形態の変化を抑えることができ、また、白血球の混入も抑えることができる。そのため、本発明に係るCTC分離キット及びCTC分離容器では、CTCを簡便かつ安定的に、しかも高い回収率で分離することができる。
【0045】
図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態に係る循環腫瘍細胞分離キットを模式的に示す正面断面図である。
【0047】
図1に示すCTC分離キット5は、血液採取容器1と、細胞分離容器2とを備える。
【0048】
血液採取容器1は、血液採取容器本体11と、水溶液12と、栓体13とを備える。血液採取容器本体11は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する。水溶液12は、血液採取容器本体11内に収容されている。水溶液12は、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含む。栓体13は、血液採取容器本体11の開口に挿入されている。
【0049】
細胞分離容器2は、細胞分離容器本体21と、細胞分離材22と、栓体23とを備える。細胞分離容器本体21は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する。細胞分離材22は、細胞分離容器本体21内に収容されている。細胞分離材22の25℃での比重は1.065以上1.080以下である。栓体23は、細胞分離容器本体21の開口に挿入されている。
【0050】
図2は、本発明の一実施形態に係る循環腫瘍細胞分離容器を模式的に示す正面断面図である。
【0051】
図2に示すCTC分離容器6は、容器本体61と、水溶液62と、細胞分離材63と、栓体64とを備える。容器本体61は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する。水溶液62及び細胞分離材63は、容器本体61内に収容されている。水溶液62は、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含む。細胞分離材63の25℃での比重は1.065以上1.080以下である。栓体64は、容器本体61の開口に挿入されている。
【0052】
次に、本発明で用いられる上記水溶液及び上記細胞分離材について説明する。
【0053】
(水溶液)
上記水溶液は、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75以上500以下の低分子化合物(以下、「低分子化合物(A)」と記載することがある)又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物(以下、「高分子化合物(B)」と記載することがある)を含む。したがって、上記水溶液は、抗凝固剤を含み、かつ、低分子化合物(A)又は高分子化合物(B)を含む。上記水溶液は、抗凝固剤と、水とを含むことが好ましい。上記水溶液に含まれる溶質は、抗凝固剤を含む。上記水溶液に含まれる溶質は、低分子化合物(A)又は高分子化合物(B)を含む。本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記水溶液は、低分子化合物(A)と高分子化合物(B)とを含むことが好ましい。
【0054】
<抗凝固剤>
上記水溶液は、抗凝固剤を含む。上記抗凝固剤として、従来公知の抗凝固剤を用いることができる。上記抗凝固剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記抗凝固剤としては、ヘパリン、ヘパリンの金属塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの金属塩及びクエン酸等が挙げられる。
【0056】
抗凝固性能を良好に発揮させる観点から、上記抗凝固剤は、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0057】
上記水溶液における上記抗凝固剤の濃度は、好ましくは2mM以上、より好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上、好ましくは2000mM以下、より好ましくは1000mM以下、より一層好ましくは500mM以下、更に好ましくは250mM以下、更により一層好ましくは100mM以下、特に好ましくは50mM以下である。上記抗凝固剤の濃度が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗凝固性能を良好に発揮させることができる。
【0058】
<分子量が75以上500以下の低分子化合物>
上記水溶液は、分子量が75以上500以下の低分子化合物(低分子化合物(A))を含むことが好ましい。低分子化合物(A)は、抗凝固剤とは異なる化合物である。低分子化合物(A)を用いることにより、浸透圧が調整しやすくなる。低分子化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
低分子化合物(A)の分子量は、90以上であってもよく、200以上であってもよく、350以下であってもよく、250以下であってもよい。
【0060】
低分子化合物(A)の分子量は、該低分子化合物(A)の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、該低分子化合物(A)の構造式が特定できない場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での数平均分子量を示す。
【0061】
低分子化合物(A)は、細胞膜保護作用を有する化合物を含むことが好ましい。この場合には、CTCの安定性をより一層高めることができるので、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0062】
低分子化合物(A)としては、無機塩、糖類、糖アルコール、硫酸アンモニウム、アデニン、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0063】
上記無機塩としては、リン酸水素ナトリウム等のナトリウム塩、及び炭酸水素カリウム等のカリウム塩等が挙げられる。
【0064】
上記糖類としては、グルコース、トレハロース、ジヒドロキシアセトン、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、及びラクツロース等が挙げられる。なお、トレハロースは、細胞膜保護作用を有する化合物である。
【0065】
上記糖アルコールとしては、イノシトール、D-マンニトール及びD-ソルビトール等が挙げられる。
【0066】
低分子化合物(A)は、トレハロース、硫酸アンモニウム、グルコース、アデニン、又はイノシトールを含むことが好ましく、トレハロース、又は硫酸アンモニウムを含むことがより好ましく、トレハロースと、硫酸アンモニウムとを含むことが更に好ましい。低分子化合物(A)は、トレハロースを含むことが好ましく、硫酸アンモニウムを含むことも好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0067】
上記水溶液100重量%中、低分子化合物(A)の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9.5重量%以下、更に好ましくは7重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。低分子化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0068】
上記水溶液がトレハロースを含む場合に、上記水溶液100重量%中、トレハロースの含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上、好ましくは9重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6重量%以下である。上記トレハロースの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCをより一層安定化させることができ、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0069】
上記水溶液が硫酸アンモニウムを含む場合に、上記水溶液100重量%中、硫酸アンモニウムの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは9重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6重量%以下である。上記硫酸アンモニウムの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCをより一層安定化させることができ、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0070】
上記水溶液がグルコースを含む場合に、上記水溶液100重量%中、グルコースの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記グルコースの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。特に、上記グルコースの含有量が上記下限以上であると、CTCへ栄養源が供給されるので、CTCの生存率を高めることができ、その結果、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0071】
上記水溶液がアデニンを含む場合に、上記水溶液100重量%中、アデニンの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは9重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記アデニンの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。特に、上記アデニンの含有量が上記下限以上であると、CTCへ栄養源が供給されるので、CTCの生存率を高めることができ、その結果、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0072】
上記水溶液がイノシトールを含む場合に、上記水溶液100重量%中、イノシトールの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは9重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記イノシトールの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。特に、上記イノシトールの含有量が上記下限以上であると、CTCへ栄養源が供給されるので、CTCの生存率を高めることができ、その結果、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0073】
上記水溶液100重量%中、低分子化合物(A)と水との合計含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは85重量%以上、好ましくは99.5重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0074】
<数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物>
上記水溶液は、数平均分子量が2,000以上200,000未満(2千以上20万未満)の高分子化合物(高分子化合物(B))を含むことが好ましい。高分子化合物(B)は、抗凝固剤とは異なる化合物である。高分子化合物(B)を用いることにより、本発明の効果が発揮される理由は、高分子化合物(B)がCTCの細胞膜を効果的に保護することによって、CTCを安定化させるためであると推察されるが、これに限定されない。高分子化合物(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
高分子化合物(B)の数平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。高分子化合物(B)の数平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCをより一層安定化させることができ、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0076】
高分子化合物(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での数平均分子量を示す。
【0077】
高分子化合物(B)は、赤血球凝集作用を有さない化合物であることが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0078】
高分子化合物(B)は、細胞膜保護作用を有する化合物を含むことが好ましい。この場合には、CTCの安定性をより一層高めることができるので、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0079】
高分子化合物(B)は、数平均分子量が10,000以上200,000未満の高分子化合物(以下、高分子化合物(B1)と記載することがある)を含むことが好ましい。高分子化合物(B)は、高分子化合物(B1)と、数平均分子量が2,000以上10,000未満の高分子化合物(以下、高分子化合物(B2)と記載することがある)とを含むことがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0080】
高分子化合物(B1)の数平均分子量は、10,000以上200,000未満であり、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0081】
高分子化合物(B2)の数平均分子量は、2,000以上10,000未満であり、好ましくは3,000以上、好ましくは8,000以下、より好ましくは5,000以下である。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0082】
高分子化合物(B)としては、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びコーンスターチ等が挙げられる。
【0083】
高分子化合物(B)は、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンであることが好ましい。高分子化合物(B1)は、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンであることが好ましい。高分子化合物(B2)は、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンであることが好ましい。この場合には、CTCをより一層安定化させることができ、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0084】
上記水溶液100重量%中、高分子化合物(B)の各含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは8重量%以下である。高分子化合物(B)の各含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCをより一層安定化させることができ、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。なお、上記「高分子化合物(B)の各含有量」とは、上記水溶液が1種類の高分子化合物(B)を含む場合に、該高分子化合物(B)の含有量を意味し、上記水溶液が2種類以上の高分子化合物(B)を含む場合に、高分子化合物(B)それぞれの含有量を意味する。
【0085】
上記水溶液100重量%中、高分子化合物(B)の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。高分子化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCをより一層安定化させることができ、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0086】
上記水溶液100重量%中、高分子化合物(B)と水との合計含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、好ましくは99.5重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0087】
上記水溶液100重量%中、低分子化合物(A)と高分子化合物(B)と水との合計含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上、好ましくは99.5重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0088】
<他の成分>
上記水溶液は、本発明の効果を損なわない限り、上述した成分(抗凝固剤、低分子化合物(A)及び高分子化合物(B))以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0089】
(細胞分離材)
上記細胞分離材として、従来公知の細胞分離材を用いることができる。細胞分離材は、遠心分離後に、CTCを含む血漿と、赤血球等の血球細胞との間に隔壁を形成可能な比重を有する。上記細胞分離材としては、細胞分離用組成物、及び細胞分離用冶具等が挙げられる。細胞分離材の作製が容易であることから、上記細胞分離材は、上記細胞分離用組成物であることが好ましい。
【0090】
遠心分離後にCTCと血球細胞との間に隔壁を形成し、CTCと血球細胞とを良好に分離する観点から、上記細胞分離材の25℃での比重は、1.065以上1.080以下である。
【0091】
上記細胞分離材の25℃での比重は、好ましくは1.067以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.079以下、より好ましくは1.078以下、更に好ましくは1.077以下、特に好ましくは1.075以下、最も好ましくは1.073以下である。上記細胞分離材の25℃での比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCと血球細胞とをより一層良好に分離することができ、また、血漿中への血球細胞の混入をより一層効果的に抑えることができる。
【0092】
<細胞分離用組成物>
上記細胞分離用組成物は、遠心分離時に血漿層と血球層との間に移動して隔壁を形成する組成物である。上記細胞分離用組成物は、チクソトロピー性を有することが好ましい。
【0093】
上記細胞分離用組成物は、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含むことが好ましい。上記25℃で流動性を有する有機成分、及び上記無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
25℃で流動性を有する有機成分:
上記「25℃で流動性を有する」とは、25℃での粘度が500Pa・s以下であることを意味する。
【0095】
上記有機成分の25℃での粘度は、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上、好ましくは350Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞分離用組成物の流動性が高められ、遠心分離操作により形成される隔壁の強度を高めることができる。
【0096】
上記有機成分の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0097】
上記有機成分としては、樹脂、及び樹脂と可塑剤等の有機化合物との混合物等が挙げられる。したがって、上記有機成分は、上記樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂と上記有機化合物とを含むことがより好ましい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該混合物(上記有機成分)として流動性を有していればよく、該樹脂又は該有機化合物が流動性を有していなくてもよい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該樹脂は、例えば、25℃で固体の樹脂であってもよい。上記樹脂及び上記有機化合物はそれぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記樹脂としては、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、α-オレフィン-フマル酸エステル共重合体、セバシン酸と2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールと1,2-プロパンジオールとの共重合体、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、及びポリエーテルポリエステル系樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記樹脂は、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
【0100】
上記石油樹脂の市販品としては、イーストマンケミカル社製「リガライトS5090」等が挙げられる。
【0101】
上記シクロペンタジエン系樹脂としては、シクロペンタジエン系モノマーの重合体、シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体、及びジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。上記シクロペンタジエン系樹脂は、水素添加されていてもよい。上記シクロペンタジエン系モノマーの重合体及び上記シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体は、オリゴマーであってもよい。
【0102】
上記シクロペンタジエン系モノマーとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びシクロペンタジエンのアルキル置換誘導体等が挙げられる。
【0103】
上記芳香族系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、インデン、及びメチルインデン等が挙げられる。
【0104】
上記ジシクロペンタジエン樹脂の市販品としては、コロン社製「スコレッツSU500」及び「スコレッツSU90」等が挙げられる。
【0105】
上記ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、及びポリアルキレンナフタレート樹脂等が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0106】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0107】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる樹脂、及び少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と少なくとも1種の該(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体とを重合することにより得られる樹脂が挙げられる。
【0108】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体がアルキル基を有する場合に、該アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、好ましくは20以下である。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
上記有機化合物としては、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体等が挙げられる。上記有機化合物は、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体であることが好ましい。したがって、上記有機成分は、上記樹脂と、上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体との混合物であることが好ましい。
【0110】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、及びピロメリット酸エステル等が挙げられる。上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソオクチル、及びトリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0112】
上記ピロメリット酸エステルとしては、ピロメリット酸テトライソオクチル等が挙げられる。
【0113】
上記トリメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW700」、及び「モノサイザーW-750」、新日本理化社製「サンソサイザーTOTM」及び「サンソサイザーTITM」等が挙げられる。
【0114】
上記ピロメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW-7010」等が挙げられる。
【0115】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、又はピロメリット酸エステルであることが好ましく、トリメリット酸エステルであることがより好ましい。
【0116】
上記細胞分離用組成物100重量%中、上記有機成分の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、好ましくは97重量%以下である。
【0117】
無機微粉末:
上記無機微粉末としては、微粉末シリカ、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、ガラス微粉末、タルク粉末、カオリン粉末、ベントナイト粉末、チタニア粉末、及びジルコニウム粉末等が挙げられる。
【0118】
細胞分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持する観点からは、上記無機微粉末は、微粉末シリカを含むことが好ましい。細胞分離用組成物の比重を効果的に大きくする観点からは、上記無機微粉末は、微粉末シリカと、微粉末シリカ以外の無機微粉末(第2の無機微粉末)とを含むことがより好ましい。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記微粉末シリカとしては、天然シリカ及び合成シリカが挙げられる。合成シリカとしては、親水性シリカ及び疎水性シリカが挙げられる。親水性シリカは、例えば、粒子表面の水酸基同士が水素結合することにより、細胞分離用組成物にチクソトロピー性を付与すると共に、比重を調整する作用を有する。一方、疎水性シリカは、親水性シリカに比べてチクソトロピー性の付与効果は小さい。
【0120】
細胞分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持する観点からは、上記微粉末シリカは、親水性シリカを含むことが好ましく、親水性シリカと疎水性シリカとを含むことがより好ましい。
【0121】
上記第2の無機微粉末は、微粉末シリカよりも比重が大きい無機微粉末であることが好ましく、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末等の比重が2.5以上である無機微粉末であることがより好ましい。
【0122】
上記第2の無機微粉末の比重は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは3.5以上、特に好ましくは4以上である。上記第2の無機微粉末の比重は大きいほどよい。上記比重が上記下限以上であると、細胞分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0123】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、特に限定されない。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、500nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。
【0124】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法による測定により求めることが好ましい。
【0125】
上記微粉末シリカの比表面積は、特に限定されない。上記微粉末シリカの比表面積は、20m/g以上であってもよく、100m/g以上であってもよく、500m/g以下であってもよく、300m/g以下であってもよい。
【0126】
上記微粉末シリカの比表面積は、BET法により測定される。
【0127】
上記細胞分離用組成物100重量%中、上記親水性シリカの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.10重量%以上、更に好ましくは0.30重量%以上、好ましくは2.50重量%以下、より好ましくは2.00重量%以下である。上記親水性シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0128】
上記細胞分離用組成物100重量%中、上記微粉末シリカの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記微粉末シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0129】
上記細胞分離用組成物100重量%中、上記第2の無機微粉末の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記第2の無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0130】
上記細胞分離用組成物100重量%中、上記無機微粉末の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0131】
他の成分:
上記細胞分離用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、有機ゲル化剤、熱可塑性エラストマー、ポリアルキレングリコール、シリコーンオイル、補助溶媒、酸化防止剤、着色剤及び水等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0132】
上記細胞分離用組成物の25℃での比重は、1.065以上1.080以下である。上記細胞分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.067以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.079以下、より好ましくは1.078以下、更に好ましくは1.077以下、特に好ましくは1.075以下、最も好ましくは1.073以下である。上記細胞分離用組成物の25℃での比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCと赤血球等の血球細胞とをより一層良好に分離することができ、また、血漿中への血球細胞の混入をより一層効果的に抑えることができる。
【0133】
上記細胞分離用組成物の25℃での比重は、細胞分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により測定される。
【0134】
上記細胞分離用組成物の25℃での粘度は、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは70Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0135】
上記細胞分離用組成物の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0136】
<細胞分離用冶具>
上記細胞分離用冶具は、遠心分離時に血漿層と血球層との間に移動して隔壁を形成する冶具である。
【0137】
上記細胞分離用冶具としては、例えば、WO2010/132783A1等に記載の機械的セパレータ(細胞分離用冶具)等が挙げられる。
【0138】
上記細胞分離用冶具の材料としては、例えば、エラストマー等が挙げられる。
【0139】
(循環腫瘍細胞(CTC)分離キット)
上記CTC分離キットは、血液採取容器と、細胞分離容器とを備える。上記CTC分離キットは、後述するように、血球凝集剤をさらに備えることが好ましい。
【0140】
<血液採取容器>
上記血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された上記水溶液とを備える。したがって、上記血液採取容器には、上記水溶液が収容されている。また、上記血液採取容器には、所定量の血液が採取される。
【0141】
上記血液採取容器本体内に収容されている水溶液の量は、血液採取容器本体のサイズ、及び採取される血液量等により適宜変更される。上記血液採取容器本体内に収容されている水溶液の量は、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.5mL以上、更に好ましくは0.7mL以上、好ましくは5mL以下、より好ましくは3mL以下、更に好ましくは2.5mL以下である。上記水溶液の量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0142】
上記血液採取容器は、所定量の血液が採取される血液採取容器である。上記血液の上記所定量は、血液採取容器のサイズ及び内圧等により適宜変更される。上記血液の上記所定量は、1mL以上であってもよく、2mL以上であってもよく、4mL以上であってもよく、12mL以下であってもよく、11mL以下であってもよく、10mL以下であってもよい。
【0143】
上記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を上記血液採取容器内に採取して、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された混合液を得る。例えば、5mLの血液が採取される血液採取容器では、5mLの生理食塩水を該血液採取容器内に採取して、転倒混和するなどして、上記生理食塩水と上記水溶液とを混合し、混合液を得る。本発明の効果を発揮させる観点から、上記CTC分離キットでは、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された上記混合液の浸透圧は、270mOsm/L以上350mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下であるとは、血液採取容器内に採取された血液と上記水溶液とが混合された検体の浸透圧が過度に小さくなくかつ過度に大きくないことを意味する。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であることにより、CTCの細胞死を抑えることができ、かつCTCの細胞形態を維持でき、また、白血球の混入も抑えることができる。そのため、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率を高めることができる。
【0144】
上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された上記混合液の浸透圧は、好ましくは275mOsm/L以上、より好ましくは280mOsm/L以上、更に好ましくは285mOsm/L以上、特に好ましくは290mOsm/L以上、好ましくは340mOsm/L以下、より好ましくは330mOsm/L以下、より一層好ましくは320mOsm/L以下、更に好ましくは310mOsm/L以下、特に好ましくは300mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCの細胞死をより一層抑えることができ、かつCTCの細胞形態をより一層良好に維持することができる。そのため、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0145】
上記混合液の浸透圧は、浸透圧計(例えば、アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定される。
【0146】
上記血液採取容器では、収容されている上記水溶液1mLに対して、血液が3mL以上採取されることが好ましく、4mL以上採取されることがより好ましく、11mL以下採取されることが好ましく、10mL以下採取されることがより好ましい。この場合には、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0147】
上記血液採取容器本体の形状は特に限定されない。上記血液採取容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。
【0148】
上記血液採取容器本体の素材は特に限定されない。上記血液採取容器本体の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられる。上記血液採取容器本体の素材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0149】
容器強度、酸素バリア性及び内容物の視認性を良好にする観点からは、上記血液採取容器本体の素材は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0150】
上記血液採取容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に取り付けられていることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材及び形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、採血針が刺通され得るように構成されていることが好ましい。
【0151】
上記栓体としては、血液採取容器本体の開口に嵌合する形状を有する栓体、及びシート状のシール栓体等が挙げられる。
【0152】
また、上記栓体は、ゴム栓等の栓本体と、プラスチック等で構成されたキャップ部材とを備える栓体であってもよい。この場合には、血液採取後に、血液採取容器本体の開口から栓体を引き抜く際に、血液が人体と接触するリスクを抑えることができる。
【0153】
上記栓体(又は上記栓本体)の材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、ブチルゴム、及びハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。上記金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。密封性を高める観点からは、上記栓体の材料は、ブチルゴムであることが好ましい。上記栓体(又は上記栓本体)は、ブチルゴム栓であることが好ましい。
【0154】
上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0155】
<細胞分離容器>
上記細胞分離容器は、細胞分離容器本体と、上記細胞分離容器本体内に収容された上記細胞分離材とを備える。したがって、上記細胞分離容器には、上記細胞分離材が収容されている。
【0156】
上記細胞分離材の収容箇所は、上記細胞分離容器本体内であれば特に限定されない。上記細胞分離材は、上記細胞分離容器本体の底部に配置されていてもよく、上記細胞分離容器本体の内壁面上に配置されていてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記細胞分離材は、上記細胞分離容器本体の底部に収容されていることが好ましい。
【0157】
上記細胞分離容器本体の形状は特に限定されない。上記細胞分離容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。
【0158】
上記細胞分離容器本体の素材は特に限定されない。上記細胞分離容器本体の素材としては、上記血液採取容器本体の素材の欄に記載したものを用いることができる。
【0159】
細胞吸着を効果的に抑え、CTCの回収率をより一層向上させる観点からは、上記細胞分離容器本体の素材は、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0160】
上記細胞分離容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体は、細胞分離容器本体の開口に取り付けられていることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、細胞分離容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材及び形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、針が刺通され得るように構成されていてもよい。
【0161】
上記栓体としては、上記血液採取容器の栓体の欄に記載したものを用いることができる。
【0162】
<血球凝集剤>
上記CTC分離キットは、血球凝集剤を備えることが好ましい。上記血球凝集剤は、容器に収容されていることが好ましい。すなわち、上記CTC分離キットは、血球凝集剤が収容された第3の容器を備えることが好ましい。血球凝集剤を用いることにより、細胞分離容器を遠心分離した際に、赤血球及び白血球などの不要な血球細胞が細胞分離材よりも下方に移動しやすくなり、CTCと血球細胞とをより一層良好に分離させることができる。
【0163】
上記血球凝集剤は、CTC以外の血球細胞を選択的に凝集させ、遠心分離操作により血球細胞を沈降させやすくすることでCTCの純度を高めることができる薬剤である限り特に限定されない。また、上記血球凝集剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0164】
上記血球凝集剤は、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位を有する抗体を含んでいてもよく、赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位を有する抗体を含んでいてもよい。上記血球凝集剤は、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位と、赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位との双方を有する抗体複合体を含んでいてもよい。上記血球凝集剤は、これらの混合物であってもよい。
【0165】
上記血球凝集剤は、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位と、赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位との双方を有する抗体複合体であることが好ましい。上記血球凝集剤は、抗白血球抗体と抗赤血球抗体との抗体複合体であることが好ましい。
【0166】
上記血球凝集剤の市販品としては、STEMCELL Technologies社製「RosetteSep human CD45 depletion cocktail」等が挙げられる。
【0167】
また、別の凝集作用を有する血球凝集剤としては、比重の大きい担体に、抗白血球抗体又は抗赤血球抗体を物理結合又は化学結合させた血球凝集剤や、マイクロビーズ等の不溶性担体に血球細胞を物理吸着させることが可能な血球凝集剤等が挙げられる。
【0168】
(循環腫瘍細胞(CTC)の分離方法(1))
以下、上述したCTC分離キットを用いて、血液中のCTCを分離する方法について説明する。
【0169】
<血液採取工程>
上記CTCの分離方法(1)は、上記水溶液が収容された上記血液採取容器に血液を採取して、上記血液と上記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程を備える。上記CTCの分離方法(1)では、上記検体の浸透圧を適度に小さくすることができるので、本発明の効果が効果的に発揮される。上記血液と上記水溶液との混合方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0170】
上記血液採取工程後、検体を血液採取容器内で保管してもよく、保管することなく、次の工程に進んでもよい。なお、保管温度は、好ましくは1℃以上、好ましくは40℃以下である。
【0171】
<添加工程>
上記CTCの分離方法(1)は、上記細胞分離材が収容された上記細胞分離容器に、上記検体を添加する添加工程を備える。
【0172】
上記添加工程では、上記血液採取容器中の検体の全量を上記細胞分離容器に添加してもよく、上記血液採取容器中の検体の一部を上記細胞分離容器に添加してもよい。上記添加工程で細胞分離容器に添加される検体量は、例えば、1mL以上、11mL以下とすることができる。
【0173】
上記添加工程では、上記細胞分離容器に、上記血液採取容器から採取された上記検体を、フィルターを通して添加することが好ましい。フィルターを通して添加することにより、検体中に存在している凝集物を効果的に取り除くことができる。
【0174】
上記フィルターの孔径は、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下である。上記孔径が上記下限以上及び上記上限以下であると、検体中に存在している凝集物を効果的に取り除くことができ、かつ、CTCを良好に細胞分離容器に添加することができる。
【0175】
上記フィルターの市販品としては、pluriSelect Life Science UG&Co,KG社製「pluriSelect」等が挙げられる。
【0176】
上記添加工程後、検体を細胞分離容器内で保管してもよく、保管することなく、次の工程に進んでもよい。なお、保管温度は、好ましくは1℃以上、好ましくは40℃以下である。
【0177】
<遠心分離工程>
上記CTCの分離方法(1)は、上記検体が添加された上記細胞分離容器を遠心分離する遠心分離工程を備える。遠心分離工程により、細胞分離材によって形成された隔壁よりも下側に血球成分が移動し、上側に血漿及びCTCが移動する。
【0178】
上記遠心分離工程では、血球凝集剤と上記検体とが混合された液が収容された細胞分離容器を遠心分離することが好ましい。上記遠心分離工程では、上記検体が収容された上記細胞分離容器に上記血球凝集剤を添加した後、該細胞分離容器を遠心分離することが好ましい。血球凝集剤を用いることにより、赤血球及び白血球などの不要な血球細胞が細胞分離材よりも下方に移動しやすくなり、CTCと血球細胞とをより一層良好に分離させることができる。
【0179】
上記遠心分離工程における上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下遠心分離する条件等が挙げられる。
【0180】
<回収工程>
上記CTCの分離方法(1)は、血漿中に分離された循環腫瘍細胞(CTC)を回収する回収工程を備える。遠心分離工程後、CTCは細胞分離材により形成された隔壁上に堆積したり、血漿中に存在したりしている。そのため、ピペッティングにより緩やかに血漿を撹拌して、隔壁上に堆積したCTCを懸濁してから回収することが好ましい。
【0181】
(循環腫瘍細胞(CTC)分離容器)
上記CTC分離容器は、容器本体と、上記容器本体内に収容された上記水溶液と、上記容器本体内に収容された上記細胞分離材とを備える。したがって、上記CTC分離容器には、上記水溶液と、上記細胞分離材とが収容されている。また、上記CTC分離容器には、所定量の血液が採取される。
【0182】
上記容器本体内に収容されている水溶液の量は、容器本体のサイズ、及び採取される血液量等により適宜変更される。上記容器本体内に収容されている水溶液の量は、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.5mL以上、更に好ましくは0.7mL以上、好ましくは5mL以下、より好ましくは3mL以下、更に好ましくは2.5mL以下である。上記水溶液の量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0183】
上記CTC分離容器は、所定量の血液が採取されるCTC分離容器である。上記血液の上記所定量は、CTC分離容器のサイズ及び内圧等により適宜変更される。上記血液の上記所定量は、1mL以上であってもよく、2mL以上であってもよく、4mL以上であってもよく、12mL以下であってもよく、11mL以下であってもよく、10mL以下であってもよい。
【0184】
上記CTC分離容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を上記CTC分離容器内に採取して、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された混合液を得る。例えば、5mLの血液が採取されるCTC分離容器では、5mLの生理食塩水を該CTC分離容器内に採取して、転倒混和するなどして、上記生理食塩水と上記水溶液とを混合し、混合液を得る。本発明の効果を発揮させる観点から、上記CTC分離容器では、上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された上記混合液の浸透圧は、270mOsm/L以上350mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が270mOsm/L以上350mOsm/L以下であるとは、CTC分離容器内に採取された血液と上記水溶液とが混合された検体の浸透圧が過度に小さくなくかつ過度に大きくないことを意味する。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であることにより、CTCの細胞死を抑えることができ、かつCTCの細胞形態を維持でき、また、白血球の混入も抑えることができる。そのため、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率を高めることができる。
【0185】
上記生理食塩水と上記水溶液とが混合された上記混合液の浸透圧は、好ましくは275mOsm/L以上、より好ましくは280mOsm/L以上、更に好ましくは285mOsm/L以上、特に好ましくは290mOsm/L以上、好ましくは340mOsm/L以下、より好ましくは330mOsm/L以下、より一層好ましくは320mOsm/L以下、更に好ましくは310mOsm/L以下、特に好ましくは300mOsm/L以下である。上記混合液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、CTCの細胞死をより一層抑えることができ、かつCTCの細胞形態をより一層良好に維持することができる。そのため、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、CTCの回収率をより一層高めることができる。
【0186】
上記混合液の浸透圧は、浸透圧計(例えば、アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定される。
【0187】
上記CTC分離容器では、収容されている上記水溶液1mLに対して、血液が3mL以上採取されることが好ましく、4mL以上採取されることがより好ましく、11mL以下採取されることが好ましく、10mL以下採取されることがより好ましい。この場合には、血液が過度に希釈されることなく、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0188】
上記細胞分離材の収容箇所は、上記容器本体内であれば特に限定されない。上記細胞分離材は、上記容器本体の底部に配置されていてもよく、上記容器本体の内壁面上に配置されていてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記細胞分離材は、上記容器本体の底部に収容されていることが好ましい。
【0189】
上記容器本体の形状は特に限定されない。上記容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。
【0190】
上記容器本体の素材は特に限定されない。上記容器本体の素材としては、上記血液採取容器本体の素材の欄に記載したものを用いることができる。
【0191】
上記CTC分離容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体は、CTC分離容器本体の開口に取り付けられていることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、CTC分離容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材及び形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、針が刺通され得るように構成されていてもよい。
【0192】
上記栓体としては、上記血液採取容器の栓体の欄に記載したものを用いることができる。
【0193】
上記CTC分離容器の内圧は特に限定されない。上記CTC分離容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0194】
なお、上記CTC分離容器は、上述した血球凝集剤と共に用いることもできる。すなわち、本明細書では、上記CTC分離容器と、上記血球凝集剤とを備える循環腫瘍細胞分離キット(CTC分離キット)も提供する。上記CTC分離容器を備えるCTC分離キットは、血球凝集剤が収容された第2の容器を備えることが好ましい。血球凝集剤を用いることにより、CTC分離容器を遠心分離した際に、赤血球及び白血球などの不要な血球細胞が細胞分離材よりも下方に移動しやすくなり、CTCと血球細胞とをより一層良好に分離させることができる。
【0195】
(循環腫瘍細胞(CTC)の分離方法(2))
以下、上述したCTC分離容器を用いて、血液中のCTCを分離する方法について説明する。
【0196】
<血液採取工程>
上記CTCの分離方法(2)は、上記CTC分離容器に血液を採取して、上記血液と上記水溶液とが混合された検体を得る血液採取工程を備える。上記CTCの分離方法(2)では、上記検体の浸透圧を小さくすることができるので、本発明の効果が効果的に発揮される。上記血液と上記水溶液との混合方法としては、転倒混和等が挙げられる。
【0197】
上記血液採取工程後、検体をCTC分離容器内で保管してもよく、保管することなく、次の工程に進んでもよい。なお、保管温度は、好ましくは1℃以上、好ましくは40℃以下である。
【0198】
<遠心分離工程>
上記CTCの分離方法(2)は、上記検体が収容された上記CTC分離容器を遠心分離する遠心分離工程を備える。遠心分離工程により、細胞分離材によって形成された隔壁よりも下側に血球成分が移動し、上側に血漿及びCTCが移動する。
【0199】
上記遠心分離工程では、血球凝集剤と上記検体とが混合された液が収容されたCTC分離容器を遠心分離することが好ましい。上記遠心分離工程では、上記検体が収容された上記CTC分離容器に上記血球凝集剤を添加した後、該CTC分離容器を遠心分離することが好ましい。血球凝集剤を用いることにより、赤血球及び白血球などの不要な血球細胞が細胞分離材よりも下方に移動しやすくなり、CTCと血球細胞とをより一層良好に分離させることができる。
【0200】
上記遠心分離工程における上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下遠心分離する条件等が挙げられる。
【0201】
<回収工程>
上記CTCの分離方法(2)は、血漿中に分離された循環腫瘍細胞(CTC)を回収する回収工程を備える。遠心分離工程後、CTCは細胞分離材により形成された隔壁上に堆積したり、血漿中に存在したりしている。そのため、ピペッティングにより緩やかに血漿を撹拌して、隔壁上に堆積したCTCを懸濁してから回収することが好ましい。
【0202】
(循環腫瘍細胞(CTC)の検出方法)
上記CTCの分離方法(1)又は(2)によって分離されたCTCを検出する方法としては、CTCを蛍光標識したのち、蛍光標識されたCTCを検出機器を用いて検出する方法等が挙げられる。
【0203】
すなわち、上記CTCの検出方法は、血液からCTCを分離する工程と、分離されたCTCを蛍光標識する工程と、蛍光標識されたCTCを検出する工程とを備えることが好ましい。上記血液からCTCを分離する工程には、上述したCTCの分離方法(1)又は(2)が用いられていることが好ましい。
【0204】
CTCを蛍光標識する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、CTCが有する抗原と特異的に結合する標識抗体と、CTCとを接触させることで、CTCを蛍光標識することができる。また、CTCに感染してCTCに特有のテロメラーゼ活性で反応して増殖し、蛍光を発するウイルスを含む試薬を用いて、CTCを蛍光標識することもできる。
【0205】
蛍光標識されたCTCは、蛍光顕微鏡及びフローサイトメーター等の検出機器を用いて検出すことができる。
【0206】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0207】
水溶液の溶質として、以下を用意した。
【0208】
(抗凝固剤)
エチレンジアミン四酢酸二カリウム二水和物(EDTA2K・2HO)
【0209】
(低分子化合物(A)に相当しない化合物)
塩化ナトリウム
【0210】
(低分子化合物(A))
硫酸アンモニウム
トレハロース2H
【0211】
(高分子化合物(B))
デキストラン(数平均分子量:40,000)
ポリエチレングリコール(数平均分子量:4,000)
【0212】
細胞分離用組成物の材料として、以下を用意した。
【0213】
(25℃で流動性を有する有機成分の材料)
(メタ)アクリル系樹脂:
アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、25℃で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。
【0214】
(無機微粉末)
親水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「200CF」)
疎水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「RX200」)
炭酸カルシウム粉末(IMERYS社製「Socal UP-G」)
【0215】
(その他の成分)
シリコーンオイル(東レダウコーニング社製「SF8410」)
【0216】
細胞分離用組成物Aの作製:
(メタ)アクリル系樹脂91.9重量部と、親水性シリカ1.00重量部と、疎水性シリカ5.0重量部と、炭酸カルシウム粉末1.95重量部と、シリコーンオイル0.15重量部とを混合し、細胞分離用組成物Aを作製した。
【0217】
細胞分離用組成物Bの作製:
(メタ)アクリル系樹脂92.4重量部と、親水性シリカ0.55重量部と、疎水性シリカ6.9重量部と、シリコーンオイル0.15重量部とを混合し、細胞分離用組成物Bを作製した。
【0218】
得られた細胞分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により比重を測定した。得られた細胞分離用組成物の25℃での比重は下記の表に示した。
【0219】
CTC分離キットにおける血液採取容器本体及びCTC分離容器における容器本体として、以下を用意した。
【0220】
長さ100mm、開口部の内径14mmのPET有底管(ポリエチレンテレフタレート管)
【0221】
CTC分離キットにおける細胞分離容器本体として、以下を用意した。
【0222】
長さ119mm、開口部の内径14mmのPP有底管(ポリプロピレン管)
【0223】
(実施例1)
(1)血液採取容器の作製
表1に示す成分を水(注射用水)に溶解して水溶液を得た。得られた水溶液の成分の種類及び濃度を表1に示す。
【0224】
得られた水溶液1mLを血液採取容器本体内に添加した。血液採取容器内部を、血液採取量が5mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液採取容器を作製した。
【0225】
(2)細胞分離容器の作製
1.8gの細胞分離用組成物Aを、細胞分離容器本体の底部に収容し、スクリューキャップにより密封した。このようにして細胞分離容器を作製した。
【0226】
このようにして、血液採取容器と細胞分離容器とを備えるCTC分離キットを得た。
【0227】
(実施例2~5及び比較例1,2)
水溶液の組成及び細胞分離用組成物の種類を表1,2のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、血液採取容器と細胞分離容器とを備えるCTC分離キットを得た。
【0228】
(比較例3)
(1)血液採取容器の作製
抗凝固剤33重量部を、水67重量部に溶解して、混合液を得た。また、得られた混合液23mgを、血液採取容器本体の内壁面に塗布し、乾燥させた。血液採取容器内部を、血液採取量が5mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして血液採取容器を作製した。
【0229】
(2)細胞分離容器の作製
実施例1と同様にして、細胞分離容器を作製した。
【0230】
このようにして、血液採取容器と細胞分離容器とを備えるCTC分離キットを得た。
【0231】
(実施例6)
CTC分離容器の作製:
表3に示す成分を水(注射用水)に溶解して水溶液を得た。得られた水溶液の成分の種類及び濃度を表3に示す。
【0232】
1.8gの細胞分離用組成物Aを、容器本体の底部に収容した。また、得られた水溶液1mLを容器本体内に添加した。また容器内部を、血液採取量が5mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにしてCTC分離容器を作製した。
【0233】
(実施例7~10及び比較例4,5)
水溶液の組成及び細胞分離用組成物の種類を表3,4のように変更したこと以外は、実施例6と同様にして、CTC分離容器を作製した。
【0234】
(比較例6)
1.8gの細胞分離用組成物Aを、容器本体の底部に収容した。抗凝固剤33重量部を、水67重量部に溶解して、混合液を得た。また、得られた混合液23mgを、容器本体の内壁面に塗布し、乾燥させた。容器内部を、血液採取量が5mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにしてCTC分離容器を作製した。
【0235】
(評価)
(1)混合液の浸透圧
(1-1)CTC分離キットを用いた場合の試験手順
得られた血液採取容器に生理食塩水5mLを採取した。生理食塩水を採取した後、転倒混和して、生理食塩水と血液採取容器内に収容された水溶液とを混合し、混合液を得た。得られた混合液の浸透圧を、浸透圧計(アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定した。なお、同様にして、血液採取容器内に収容された水溶液の浸透圧も測定した。
【0236】
(1-2)CTC分離容器を用いた場合の試験手順
得られたCTC分離容器に生理食塩水5mLを採取した。生理食塩水を採取した後、転倒混和して、生理食塩水とCTC分離容器内に収容された水溶液とを混合し、混合液を得た。得られた混合液の浸透圧を、浸透圧計(アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定した。なお、同様にして、CTC分離容器内に収容された水溶液の浸透圧も測定した。
【0237】
(2)CTCの回収率
(2-1)CTC分離キットを用いた場合の試験手順(血液採取工程~遠心分離工程)
得られたCTC分離キットを用いて、以下の手順でCTCの回収率を求める試験を行った。なお、各実施例及び各比較例において、CTC分離キットを2組用いた。1組目のCTC分離キットでは、血液採取工程からCTCの検出の工程までを同日に行った。一方、2組目のCTC分離キットでは、血液採取工程から添加工程までを同日に行った後、4日間保管し、次いで、遠心分離工程からCTCの検出の工程までを同日に行った。
【0238】
<血液採取工程>
血液採取容器に、血液5mLを採取した。血液を採取した後、転倒混和して、血液と血液採取容器内に収容された水溶液が混合された検体を得た。
【0239】
<添加工程>
細胞分離容器に、得られた検体1mLを添加した。
【0240】
次いで、細胞分離容器に、CTCであるCell Line(MCF-7)を、50個/血液1mLの量となるように添加した。なお、前述のように、1組目のCTC分離キットでは、そのまま次の工程に進んだ。一方、2組目のCTC分離キットでは、CTCの添加後、細胞分離容器を4℃で4日間保管し、次の工程に進んだ。
【0241】
<遠心分離工程>
血球凝集剤として、STEMCELL Technologies社製「RosetteSep human CD45 depletion cocktail」を用意した。実施例1~3,5及び比較例1~3では、50μLの血球凝集剤を、CTCが添加された細胞分離容器に添加し、20分間静置した。次いで、細胞分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。実施例4では、血球凝集剤を使用することなく、細胞分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。遠心分離後、細胞分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に血漿が位置しており、CTCは隔壁上に堆積していた。
【0242】
(2-2)CTC分離容器を用いた場合の試験手順(血液採取工程~遠心分離工程)
得られたCTC分離容器を用いて、以下の手順でCTCの回収率を求める試験を行った。なお、各実施例及び各比較例において、CTC分離容器を2本用いた。1本目のCTC分離容器では、血液採取工程からCTCの検出の工程までを同日に行った。一方、2本目のCTC分離容器では、血液採取工程後、4日間保管し、次いで、遠心分離工程からCTCの検出の工程までを同日に行った。
【0243】
<血液採取工程>
CTC分離容器に、血液5mLを採取した。血液を採取した後、転倒混和して、血液とCTC分離容器内に収容された水溶液が混合された検体を得た。
【0244】
次いで、CTC分離容器に、CTCであるCell Line(MCF-7)を、50個/血液1mLの量となるように添加した。なお、前述のように、1本目のCTC分離容器では、そのまま次の工程に進んだ。一方、2本目のCTC分離容器では、CTCの添加後、CTC分離容器を4℃で4日間保管し、次の工程に進んだ。
【0245】
<遠心分離工程>
血球凝集剤として、STEMCELL Technologies社製「RosetteSep human CD45 depletion cocktail」を用意した。実施例6~8,10及び比較例4~6では、250μLの血球凝集剤を、CTCが添加されたCTC分離容器に添加し、20分間静置した。次いで、CTC分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。実施例9では、血球凝集剤を使用することなく、CTC分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。遠心分離後、細胞分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に血漿が位置しており、CTCは隔壁上に堆積していた。
【0246】
(2-3)CTC分離キット及びCTC分離容器を用いた場合の試験手順(共通)
<回収工程>
ピペッティングにより緩やかに血漿を撹拌して、隔壁上に堆積したCTCを血漿中に懸濁させてから、血漿をエッペンドルフチューブに回収した。次いで、回収した血漿に、該血漿1mLあたり1mLの溶血剤を添加した。血漿と溶血剤との混合液を25℃で15分間撹拌した後、25℃で500G及び5分間の条件で遠心分離することにより、血漿中に混入している赤血球を溶血させた。上澄み液を除去し、ペレットをPBSと10%BSA液との混合液で懸濁させ、再度溶血処理を行った。溶血処理後、上澄み液を除去し、ペレットを、PBSと10%BSA液との混合液80μLで懸濁して懸濁液を得た。
【0247】
<CTCの染色及び蛍光顕微鏡観察>
80μLの懸濁液に、20μLのFcR Blocking Reagent (Miltenyi Biotec社製)を添加し、ボルテックスミキサーにより撹拌した後、4℃の暗室下で10分間静置した。次いで、懸濁液に、2μLのCD326(EpCAM)-FITC抗体(ヒト)(Miltenyi Biotec社製)を添加して、軽くピペッティングし、4℃の暗室下で10分間静置した。次いで、懸濁液を、PBSと10%BSA液との混合液1mLで洗浄した。この液を96wellプレートに添加して、該プレートに細胞を播種した。次いで、蛍光顕微鏡観察を行うことにより、染色された細胞数をカウントした。
【0248】
CTCの回収率を、以下の式により算出した。また、血液採取工程からCTCの検出の工程までを同日に行った場合(保管0日)のCTCの回収率と、4日間保管した場合のCTCの回収率との差を、CTCの回収率の減少量とした。
【0249】
CTCの回収率(%)=A/B×100
A:蛍光顕微鏡により観測されたCell Line(MCF-7)の数
B:血液に添加したCell Line(MCF-7)の数
【0250】
(3)回収したCTCの蛍光強度
血液採取工程からCTCの検出の工程までを同日に行った場合(保管0日)に回収したCTCの蛍光強度(0)と、4日間保管した場合に回収したCTCの蛍光強度(4)とを、蛍光顕微鏡観察を用いて確認した。具体的には、回収した細胞に、波長470nmの光(LED光源)を照射し、CTCの蛍光強度を観察した。なお、蛍光強度の強い細胞は生細胞であり、蛍光強度の弱い細胞は死細胞又は表面抗原が消失している細胞である。
【0251】
<回収したCTCの蛍光強度の判定基準>
○:蛍光強度(4)が、蛍光強度(0)と同等の強度を維持している
×:蛍光強度(4)が、蛍光強度(0)よりも明らかに小さい
【0252】
(4)隔壁上に残存する白血球数の変化率
(4-1)CTC分離キットにおける細胞分離容器を用いた場合の試験手順(血液採取工程~遠心分離工程)
得られたCTC分離キットを用いて、以下の手順で、細胞分離用組成物により形成された隔壁上に残存する白血球数の変化率を求める試験を行った。なお、CTC分離キットを2組用いた。1組目のCTC分離キットでは、血液採取工程から白血球数の測定までを同日に行った。一方、2組目のCTC分離キットでは、血液採取工程から添加工程までを同日に行った後、4日間保管し、次いで、遠心分離工程から白血球数の測定までを同日に行った。
【0253】
<血液採取工程>
血液採取容器に、血液5mLを採取した。血液を採取した後、転倒混和して、血液と血液採取容器内に収容された水溶液が混合された検体を得た。
【0254】
<添加工程>
細胞分離容器に、得られた検体1mLを添加した。
【0255】
<遠心分離工程>
血球凝集剤として、STEMCELL Technologies社製「RosetteSep human CD45 depletion cocktail」を用意した。50μLの血球凝集剤を、細胞分離容器に添加し、20分間静置した。次いで、細胞分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。遠心分離後、細胞分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に血漿が位置しており、また、白血球は隔壁上に堆積していた。
【0256】
(4-2)CTC分離容器を用いた場合の試験手順(血液採取工程~遠心分離工程)
得られたCTC分離容器を用いて、以下の手順で、細胞分離用組成物により形成された隔壁上に残存する白血球数の変化率を求める試験を行った。なお、CTC分離容器を2本用いた。1本目のCTC分離容器では、血液採取工程から白血球数の測定までを同日に行った。一方、2本目のCTC分離容器では、血液採取工程後、4日間保管し、次いで、遠心分離工程から白血球数の測定までを同日に行った。
【0257】
<血液採取工程>
CTC分離容器に、血液5mLを採取した。血液を採取した後、転倒混和して、血液とCTC分離容器内に収容された水溶液が混合された検体を得た。
【0258】
<遠心分離工程>
血球凝集剤として、STEMCELL Technologies社製「RosetteSep human CD45 depletion cocktail」を用意した。250μLの血球凝集剤を、CTC分離容器に添加し、20分間静置した。次いで、CTC分離容器を25℃で1500G及び20分間の条件で遠心分離した。遠心分離後、細胞分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に血漿が位置しており、また、白血球は隔壁上に堆積していた。
【0259】
(4-3)CTC分離キット及びCTC分離容器を用いた場合の試験手順(共通)
<回収工程>
ピペッティングにより緩やかに血漿を撹拌して、隔壁上に堆積した白血球を血漿中に懸濁させてから、血漿をエッペンドルフチューブに回収した。
【0260】
<白血球数の測定>
多項目自動血球分析装置(SYSMEX社製「XNシリーズ」)を用いて、回収液中の白血球数を測定した。
【0261】
血液採取工程から白血球数の測定までを同日に行った場合(保管0日)の隔壁上の白血球数(0)と、4日間保管した場合の隔壁上の白血球数(4)とから、隔壁上に残存する白血球数の変化率を、以下の式により算出した。なお、表中、「N/A」は、隔壁上の白血球数が少なく、多項目自動血球分析装置での測定において白血球数が検出限界未満であったことを意味する。
【0262】
隔壁上に残存する白血球数の変化率(%)=(A-B)/B×100
A:隔壁上の白血球数(4)
B:隔壁上の白血球数(0)
【0263】
構成及び結果を下記の表1~4に示す。なお、表中、抗凝固剤の濃度は、EDTA2K・2HOの濃度ではなく、EDTA2Kの濃度を意味する。それ以外の成分の含有量は、純分量である。
【0264】
【表1】
【0265】
【表2】
【0266】
【表3】
【0267】
【表4】
【符号の説明】
【0268】
1…血液採取容器
2…細胞分離容器
5…CTC分離キット
6…CTC分離容器
11…血液採取容器本体
12…水溶液
13…栓体
21…細胞分離容器本体
22…細胞分離材
23…栓体
61…容器本体
62…水溶液
63…細胞分離材
64…栓体
【要約】
採血してからそれほど時間が経過していない検体を用いた場合だけでなく、採血後に数日間保管された検体を用いた場合でも、循環腫瘍細胞の回収率を高めることができる循環腫瘍細胞分離キットを提供する。
本発明に係る循環腫瘍細胞分離キットは、血液中の循環腫瘍細胞を分離するために用いられるキットであり、水溶液が収容されており、かつ所定量の血液が採取される血液採取容器と、25℃での比重が1.065~1.080の細胞分離材が収容された細胞分離容器とを備え、前記水溶液が、抗凝固剤を含み、かつ、分子量が75~500の低分子化合物又は数平均分子量が2,000以上200,000未満の高分子化合物を含み、前記血液採取容器に採取される血液の所定量と等量の生理食塩水を血液採取容器内に採取して、前記生理食塩水と前記水溶液とが混合された混合液を得たときに、前記混合液の浸透圧が270~350mOsm/Lである。
図1
図2