(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20230926BHJP
E04D 3/30 20060101ALI20230926BHJP
E04D 3/00 20060101ALI20230926BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
E04D3/362 G
E04D3/30 M
E04D3/00 M
E04G23/02 H
(21)【出願番号】P 2019095196
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018168293
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019027632
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
(72)【発明者】
【氏名】小田 純二
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】和泉 正章
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-094121(JP,U)
【文献】実開昭48-084522(JP,U)
【文献】実開昭63-081120(JP,U)
【文献】実開昭56-001929(JP,U)
【文献】特開2013-067984(JP,A)
【文献】特開2001-020470(JP,A)
【文献】特開2003-213849(JP,A)
【文献】特開2003-213942(JP,A)
【文献】実開昭47-015423(JP,U)
【文献】実開平02-030433(JP,U)
【文献】特開2001-220862(JP,A)
【文献】特開2012-180719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
13/00-15/07
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の端縁と長さ方向の端縁とによって区画された輪郭形状を有する板材本体を備え、該板材本体の幅方向の一方の端縁をその端縁に設けられた棟側ハゼ部を介して水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部に嵌合させるとともに、該幅方向のもう一方の端縁をその端縁に設けられた軒側ハゼ部を介して水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合させることにより屋根構造体を構築する横葺き屋根材であって、
前記棟側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向の一方の端縁につながる起立壁と、該起立壁に延在して設けた凹部の上端部につながり水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部に連係可能な顎部と、一端に該顎部の上端縁につながり境界に
は水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態で相互間にエアーポケットを形成する凹部を設ける側壁を有し、
該側壁の上端とその延在する他端
に設けられた垂下壁
上端との間
には水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態で相互間にエアーポケットを形成する凹所を有する天壁と、該垂下壁の下端につながり該棟側ハゼ部を屋根の下地材にビスを介して固定するベースからなり、
前記軒側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向のもう一方の端縁に垂下保持される傾斜壁と、該傾斜壁の下端につながり水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部の顎部に連係可能な顎部と、該顎部の底壁の端縁において垂下保持される舌片からなり、
前記棟側ハゼ部の起立壁
に延在して設けた前記凹部は、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延するとともに、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態において
、該他の横葺き屋根材の前記舌片との相互間でエアーポケットを形成するとともにL字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を差し入れる
ことのできるスペースを
提供する
ものであることを特徴とする横葺き屋根材。
【請求項2】
前記軒側ハゼ部は、それそのものの弾性変形によるスプリングバックを伴って水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合可能であり、かつ、前記L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を前記凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し用治具による梃子の原理を利用して前記舌片を弾性変形させることにより水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部との嵌合を解除するものである、ことを特徴とする請求項1に記載した横葺き屋根材。
【請求項3】
前記天壁
に設けられる前記凹所は、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延する少なくとも1本の
ものからなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載した横葺き屋根材。
【請求項4】
前記ベースは、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延する少なくとも1本のリブを有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載した横葺き屋根材。
【請求項5】
前記板材本体は、長さ方向の一方の端縁に、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手に重ね合わさって屋根材同士を相互につなぎ合わせる上継手を有し、もう一方の端縁に、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の上継手に重ね合わさって屋根材同士を相互につなぎ合わせる下継手を有し、
該下継手は、板材本体の幅方向に沿って伸延する少なくとも1本の溝部と、該溝部に隣接して設けられ、該板材本体の幅方向に沿って伸延するとともに該板材本体の外表面よりも低い頂面を有する陸部とを交互に配列した凹凸部からなり、
該上継手は、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手に重ね合わさった際に、該隣接配置する別の横葺き屋根材の板材本体の外表面と面一状態で配置される上継手本体と、該上継手本体の先端部につながり該隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手の溝部に位置して化粧溝を形成する屈曲縁部からなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載した横葺き屋根材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載した横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体につき、その屋根構造体の任意の位置の屋根材を部分交換するに当たり、
前記屋根構造体の任意の位置の屋根材を下記の手順にしたがって部分交換することを特徴とする横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法。
記
1.L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部の起立壁に設けられた凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し治具による梃子の原理を利用して、交換すべき横葺き屋根材の舌片を弾性変形させることによって交換すべき横葺き屋根材の軒側ハゼ部と、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部との嵌合を解除する。
2.L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を、交換すべき横葺き屋根材の棟側ハゼ部の起立壁に設けられた凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し治具による梃子の原理を利用して、水上側に位置する他の横葺き屋根材の舌片を弾性変形させることによって交換すべき横葺き屋根材の棟側ハゼ部と、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合を解除する。
3.前記ビスを取り外して交換すべき横葺き屋根材を撤去する。
4.撤去した部位に新規な横葺き屋根材を配置してその屋根材の棟側ハゼ部のベースをビスを介して下地材に固定する。
5.新規な横葺き屋根材の軒側ハゼ部を水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合させるとともに、その棟側ハゼ部に水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部を嵌合させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横葺き屋根と呼ばれる屋根構造体は、長さ方向の寸法(桁行方向の寸法)が幅方向の寸法(梁間方向の寸法)よりも長い板状本体を備えた屋根板材を使用し、桁行方向において屋根板材同士を接続する作業を先行して行い、その接続作業が完了したならば梁間方向において屋根板材同士を接続する作業をそれぞれ棟に至るまで交互に行うことによって構築されるものである。
【0003】
かかる屋根構造体に使用される屋根板材は、通常、特許文献1に見られるように、板材本体の幅方向の水上側の端縁に下ハゼを設け、該板材本体の幅方向の水下側の端縁に上ハゼを設け、該下ハゼを水上側に位置する他の屋根板材の上ハゼに嵌合させるとともに、該上ハゼを水下側に位置する他の屋根板材の下ハゼに嵌合させて屋根板材同士を軒から棟に向けて連結して屋根構造体を構築している。
【0004】
ところで、この種の屋根板材は、とくに下ハゼが軒側に向けて大きく迫り出したオーバーハング形状を呈しており、例えば、屋根構造体の構築が完了した後において屋根板材の一部分に疵や凹みなどの外観不良が発見され、その部位の屋根板材の交換を行うべく、屋根板材の下ハゼ、上ハゼとの嵌合を解除しようとしてもその解除が容易でなく、上ハゼと下ハゼとの嵌合を解除するためには、交換すべき屋根板材の水上側に位置する屋根板材を下地材から一旦取り外して軒側に向けてスライドさせる必要があることから、交換対象となる屋根板材よりも後に取り付けられた屋根板材を全て取り外したのちでなければ屋根板材の交換は困難であり、屋根板材の効率的な部分交換を実施することができないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、屋根構造体の構築が完了したのちにおいて屋根板材の一部分に外観不良が発見された場合であっても、他の屋根板材を取り外すことなしに外観不良を起こした屋根板材のみを交換することが可能で、かつ、屋根板材同士の連結強度が高い横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、幅方向の端縁と長さ方向の端縁とによって区画された輪郭形状を有する板材本体を備え、該板材本体の幅方向の一方の端縁をその端縁に設けられた棟側ハゼ部を介して水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部に嵌合させるとともに、該幅方向のもう一方の端縁をその端縁に設けられた軒側ハゼ部を介して水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合させることにより屋根構造体を構築する横葺き屋根材であって、前記棟側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向の一方の端縁につながる起立壁と、該起立壁に延在して設けた凹部の上端部につながり水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部に連係可能な顎部と、一端に該顎部の上端縁につながり境界には水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態で相互間にエアーポケットを形成する凹部を設ける側壁を有し、該側壁の上端とその延在する他端に設けられた垂下壁上端との間には水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態で相互間にエアーポケットを形成する凹所を有する天壁と、該垂下壁の下端につながり該棟側ハゼ部を屋根の下地材にビスを介して固定するベースからなり、前記軒側ハゼ部は、前記板材本体の幅方向のもう一方の端縁に垂下保持される傾斜壁と、該傾斜壁の下端につながり水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部の顎部に連係可能な顎部と、該顎部の底壁の端縁において垂下保持される舌片からなり、前記棟側ハゼ部の起立壁に延在して設けた前記凹部は、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延するとともに、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合状態において、該他の横葺き屋根材の前記舌片との相互間でエアーポケットを形成するとともにL字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を差し入れることのできるスペースを提供するものであることを特徴とする横葺き屋根材である。
【0008】
上記の構成からなる横葺き屋根材において、前記軒側ハゼ部は、それそのものの弾性変形によるスプリングバックを伴って水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合可能であり、かつ、前記L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を前記凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し用治具による梃子の原理を利用して前記舌片を弾性変形させることにより水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部との嵌合を解除するものであるのが好ましい。
【0009】
また、上記の構成からなる横葺き屋根材において、前記天壁に設けられる前記凹所は、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延する少なくとも1本のものからなり、前記ベースは、前記板材本体の長さ方向に沿って伸延する少なくとも1本のリブを有するのが望ましい。
【0010】
さらに、本発明は、前記板状本体の長さ方向の一方の端縁に、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手に重ね合わさって屋根材同士を相互につなぎ合わせる上継手を有し、もう一方の端縁に、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の上継手に重ね合わさって屋根材同士を相互につなぎ合わせる下継手を有し、該下継手は、板材本体の幅方向に沿って伸延する少なくとも1本の溝部と、該溝部に隣接して設けられ、該板材本体の幅方向に沿って伸延するとともに該板材本体の外表面よりも低い頂面を有する陸部とを交互に配列した凹凸部からなり、該上継手は、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手に重ね合わさった際に、該隣接配置する別の横葺き屋根材の板材本体の外表面と面一状態で配置される上継手本体と、該上継手本体の先端部につながり該隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手の溝部に位置して化粧溝を形成する屈曲縁部からなることで構成することができる。
【0011】
また、本発明は、上記の構成からなる横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体につき、その屋根構造体の任意の位置の屋根材を部分交換するに当たり、前記屋根構造体の任意の位置の屋根材を下記の手順にしたがって部分交換することを特徴とする横葺き屋根材にて構築された屋根構造体における屋根材の部分交換方法を提案するものである。
記
1.L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部の起立壁に設けられた凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し治具による梃子の原理を利用して、交換すべき横葺き屋根材の舌片を弾性変形させることによって交換すべき横葺き屋根材の軒側ハゼ部と、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部との嵌合を解除する。
2.L字形状をなす取り外し用治具の先端鉤状部を、交換すべき横葺き屋根材の棟側ハゼ部の起立壁に設けられた凹部に差し入れ、該L字形状をなす取り外し治具による梃子の原理を利用して、水上側に位置する他の横葺き屋根材の舌片を弾性変形させることによって交換すべき横葺き屋根材の棟側ハゼ部と、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部との嵌合を解除する。
3.前記ビスを取り外して交換すべき横葺き屋根材を撤去する。
4.撤去した部位に新規な横葺き屋根材を配置してその屋根材の棟側ハゼ部のベースをビスを介して下地材に固定する。
5.新規な横葺き屋根材の軒側ハゼ部を水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に嵌合させるとともに、その棟側ハゼ部に水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部を嵌合させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の横葺き屋根材は、板材本体の軒側ハゼ部の顎部を、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部から引き離し(非連係状態とすること)、該板材本体の棟側ハゼ部の顎部を、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部から引き離す(非連係状態とすること)だけで、それらの部位における嵌合を解除することが可能であり、交換したい部分のみの横葺き屋根材を取り外すことができ、逆に、板材本体の軒側ハゼ部の顎部を、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部に連係させ、該板材本体の棟側ハゼ部の顎部を、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部に連係させるだけで横葺き屋根材を取り付けることができ、屋根材の部分交換を簡単に行い得る。
【0013】
また、本発明の横葺き屋根材は、棟側ハゼ部の起立壁における凹部、天壁の凹所によってエアーポケットが形成されるため、嵌合部位での浸透圧現象による雨水等の吸い込みを回避することが可能であり、止水性を高めることができる。
【0014】
また、本発明の横葺き屋根材は、吊子などを必要としないことから、屋根構造体を構築する際に使用する構成部材が少なくて済む。
【0015】
さらに、本発明の横葺き屋根材は、上継手の屈曲縁部が軒方向に隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手の溝部に位置してその部位に化粧溝を形成するため、この化粧溝が屋根の美観を改善するのに有用なアクセントとなるとともに、屋根材の重ね合わせ部のスタート部位には隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手の陸部が位置することから該陸部が雨水等の浸入をブロックすることができる。また、化粧溝により、屋根の葺きあげ施工時に施工誤差が生じたとしても化粧溝幅の範囲内で施工誤差を微調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にしたがう横葺き屋根材の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】本発明にしたがう横葺き屋根材を下地材に取り付けた状態を側面で示した図である。
【
図3】本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築する要領を示した図である。
【
図4】本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体の一部分を示した外観斜視図である。
【
図5】(a)(b)は、本発明にしたがう横葺き屋根材の取り外し要領の説明図である。
【
図6】本発明にしたがう横葺き屋根材の取り外し要領の説明図である。
【
図7】本発明にしたがう横葺き屋根材の取り外し用治具を示した図である。
【
図8】本発明にしたがう横葺き屋根材の嵌合部分を拡大して示した図である。
【
図9】本発明に係る部分交換方法の他の実施形態において用いる新設屋根材(a)、切断撤去部分1tを除去した状態の横葺き屋根材(b)および切断除去する棟側ハゼ部の遊端部分(c)を示す略線図である。
【
図10】本発明に係る部分交換方法の他の実施形態において用いる新設屋根材の部分交換方法を説明するための断面図である。
【
図11】本発明に係る部分交換方法の他の実施形態において用いるカバークランプ材の斜視図(a)と部分交換後の状態を示す断面図(b)である。
【
図12】本発明にしたがう横葺き屋根材の他の実施形態を示した外観斜視図である。
【
図13】本発明にしたがう横葺き屋根材の他の実施形態を示した外観斜視図である。
【
図14】(a)は、
図12、13に示した横葺き屋根材の平面を示した図であり、(b)は
図12、13に示した横葺き屋根材の正面を示した図である。
【
図15】(a)は、
図14(a)のA-A断面を示した図であり、(b)は、
図14(a)のB-B断面を示した図であり、(c)は、
図14(a)のC-C断面を示した図である。
【
図16】本発明にしたがう横葺き屋根材の上継手、下継手を軒方向に隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手、上継手に重ね合わせる直前の状態を示した外観斜視図である。
【
図17】本発明にしたがう横葺き屋根材の上継手、下継手を、軒方向に隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手、上継手に重ね合わせた状態を示した外観斜視図である。
【
図18】屋根材のつなぎ合わせ部分の要部断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう横葺き屋根材の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。本発明にしたがう横葺き屋根材は、長さ方向の寸法は任意(フリー)で、幅方向の寸法が180~400mm程度、厚さ0.35~0.8mm程度の、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板やカラー鋼板等の防錆処理鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム合金板、亜鉛板等からなるものが用いられ、ロール成形法やプレス成形法等を適用して所定の断面形状へと成形されるものである。なお、本発明において、水上側に位置する他の横葺き屋根材、水下側に位置する他の横葺き屋根材、軒方向に沿って隣接配置する別の屋根材とは、本発明にしたがう横葺き屋根材と同じ構成からなるものをいうものとする。
【0018】
図1における符号1は、横葺き屋根材の板材本体である。板材本体1は、長さ方向の端縁1a、1bと幅方向の端縁1c、1dとによって区画された輪郭形状を有するものからなっている。
【0019】
また、符号2は、板材本体1の幅方向の一方の端縁1cに設けられた棟側ハゼ部、3は、板材本体1の幅方向のもう一方の端縁1dに設けられた軒側ハゼ部、4は、板材本体1の裏面に貼着された断熱材である。断熱材4は、横葺き屋根材を取り付ける際に板材本体1と下地材の間に配置されるものであってもよく、板材本体1の座屈を防止する機能を兼ね備えているものが用いられる。
【0020】
図2は、本発明にしたがう横葺き屋根材を、屋根の下地材(野地板)に取り付けた状態を側面について示した図である。本発明にしたがう横葺き屋根材は、板材本体1の幅方向の一方の端縁1cをその端縁1cに設けられた棟側ハゼ部2を介して水上側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′の軒側ハゼ部3′に嵌合せるとともに、幅方向のもう一方の端縁1dをその端縁1dに設けられた軒側ハゼ部3を介して水下側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′′の棟側ハゼ部2′′に嵌合させることにより取り付けられるものである。なお、ここでは、3枚の横葺き屋根材を軒から棟に向けてつなぎ合わせたものを例として示したが、屋根構造体を構築するに当たっては、軒先から棟に至るまで同様の要領で横葺き屋根材が取り付けられることになる。
【0021】
板材本体1に設けられた棟側ハゼ部2は、具体的には、板材本体1の幅方向の一方の端縁1cにつながる起立壁2aと、該起立壁2a上端部につながり水上側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′の軒側ハゼ部3′に連係可能な顎部2bと、一端が顎部2bにつながる側壁2cを有し他端に垂下壁2dを有する天壁2eと、垂下壁2dの下端につながり棟側ハゼ部2を屋根の下地材にビス2fを介して固定するベース2gからなるものが適用される。
【0022】
起立壁2aには、板材本体1の長さ方向に沿って伸延する凹部2a1を設けることができ、また、天壁2eには、板材本体1の長さ方向に沿って伸延する凹所2e1を設けることができ、他の横葺き屋根材の板材本体1′の軒側ハゼ部3′との嵌合状態でその相互間にエアーポケットを形成することにより浸透圧現象による雨水の吸い込みを回避することができるようになっている。また、ベース2gの、垂下壁2dとビス2fの取り付け部との間には、補強と雨水の浸入を防止する観点から、板材本体1の長さ方向に沿って伸延するリブ2g1を設けてもよい。
【0023】
板材本体1の棟側ハゼ部2は、顎部2bが、水上側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′の軒側ハゼ部3′、とくにその顎部3b′に連係するため、棟側ハゼ部2が軒側ハゼ部3′に嵌合している状態では、屋根材同士が強固に連結されることになり、板材本体1に負圧が作用してもその連結が簡単に解除されることはない。
【0024】
また、軒側ハゼ部3としては、板材本体1の幅方向のもう一方の端縁1dに垂下保持される傾斜壁3aと、該傾斜壁3aの下端につながり水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部2′′に連係可能な顎部3bと、該顎部3bの底壁3b1の端縁において垂下保持される舌片3cからなるものが適用される。
【0025】
上記軒側ハゼ部3は、それそのものの弾性変形によるスプリングバックを伴って水下側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′′の棟側ハゼ部2′′に嵌合するものであって、嵌合状態では、顎部3bが水下側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′′の棟側ハゼ部2′′の顎部2b′′に連係するため、屋根材同士が強固に連結されることになり、板材本体1に負圧が作用してもその連結が簡単に解除されることはない。
【0026】
本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築するには、軒先の下地材に棟側ハゼ部2と同一形状からなる役物(軒先スタータ)を取り付け、この役物に本発明と同じ構成からなる他の横葺き屋根材の板材本体1′′の軒側ハゼ部3′′を嵌合させる(図示せず)とともに、板材本体1′′の棟側ハゼ部2′′のベース2g′′にビス2f′′をねじ込んで下地材に固定する。
【0027】
そして、さらに、
図3に示すように、既に固定された他の横葺き屋根材の板材本体1′′(この横葺き屋根材は、水下側に位置する横葺き屋根材)の水上側に横葺き屋根材を配置しこの横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3を水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部2′′に嵌合させるとともに棟側ハゼ部2のベース2gにビス2fをねじ込んで下地材に固定し、この作業を棟に至るまで繰り返せばよい。
【0028】
なお、横葺き屋根材を用いて屋根構造体を構築する場合、屋根材同士のつなぎ合わせ作業は、横葺き屋根材の板材本体1の長さ方向で先行して行うことが前提となる。
図4に、本発明にしたがう横葺き屋根材を用いて構築された屋根構造体の一部分の外観斜視図を示す。
【0029】
本発明にしたがう横葺き屋根材にて構築された屋根構造体につき、横葺き屋根材の部分交換を行うには、基本的には、
図5(a)(b)、
図6に示すように、交換すべき横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3の、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部2′′との嵌合およびその棟側ハゼ部2の、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部3′との嵌合を解除し、ベース2gを通してねじ込まれたビス2fを取り外して交換すべき横葺き屋根材を撤去する。そして、撤去した部位に新規な横葺き屋根材を配置して上掲
図3に示したところと同様の要領で新規な横葺き屋根材を取り付ければよい。
【0030】
交換すべき横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3の、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部2′′との嵌合よびその棟側ハゼ部2の、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部3′との嵌合をそれぞれ解除するには、
図7に示すようなL字形状をなす取り外し用治具gを用い梃子の原理を利用して行うことができる。
【0031】
本発明にしたがう横葺き屋根材は、屋根材同士がつなぎ合わさった状態では連結強度は高いが、板材本体1の軒側ハゼ部3の、水下側に位置する他の横葺き屋根材の棟側ハゼ部2′′との嵌合、棟側ハゼ部2の、水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部3′との嵌合を比較的容易に解除することができるため、他の屋根材を取り外すような余計な作業を要することなしに横葺き屋根材の部分交換が可能となる。
【0032】
取り外し用治具gとしては、治具本体g1と、この治具本体g1につながり棟側ハゼ部2の起立壁2aの凹部2a1にて形成されるスペースへの差し入れを可能とする先端鉤状部g2とを備え、治具本体g1の下端部にゴムの如き弾性部材g3が設置された構造からなるものを用いることができるが、棟側ハゼ部2と水上側に位置する他の横葺き屋根材の軒側ハゼ部3′との嵌合、軒側ハゼ部3と水下側に位置する他の横葺き屋根材との棟側ハゼ部2′との嵌合が解除可能であるならば図示のものに限定されることはない。
【0033】
本発明にしたがう横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3の顎部3bにおいては、
図8に示すように、該顎部3bの底壁3b1とこの底壁3b1につながる側壁3b2とのなす角度θを90°以下とすることが、また、底壁3b1の長さLを5mm以上とすることが望ましく、これにより水下側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′′の棟側ハゼ部2′′との連係が確実になり屋根材同士の連結強度を高めることができる。
【0034】
また、顎部3bの底壁3b1から板材本体1′′の外表面に至るまでの垂直高さhは、すが漏れ等を回避する観点から10mm以上とするのが好ましい。
【0035】
棟側ハゼ部2の顎部2bとこれにつながる側壁2cとの境界には、屈曲もしくは湾曲により形成された凹部Kを設けておくことが可能であり、この凹部Kにより、水上側に位置する他の横葺き屋根材の板材本体1′の軒側ハゼ部3′との嵌合状態でその相互間にエアーポケットを形成することができるため、止水性をさらに高めることが可能になる(
図2参照)。
【0036】
なお、
図5(a)、(b)ならびに
図6に基づく前述した横葺き屋根材の部分交換方法については、本発明に係る部分交換方法の場合、さらに以下に説明するような他の実施形態の採用も可能である。
【0037】
以下に説明する他の実施形態である部分交換方法とは、特にベース2gを介してねじ込まれたビス2fが、
図5(b)に示すように、簡単には取り外せないとき、即ち、たとえアングルドライバーを使ったとしても、水上側に位置する屋根材の板材本体1′およびそれの軒側ハゼ部3′の撥ね上げが不十分なために、前記ビス2fの取り外しができず、結果的に交換すべき横葺き屋根材の撤去が難しいときには、以下に説明するような部分交換方法であってもよい。
【0038】
かかる他の実施形態に係る部分交換方法とは、要約すると、本来は交換すべき屋根材の棟側ハゼ部2と軒側ハゼ部3を含む板材本体1を全体として一括して取り外して交換すべきところ、その一部分を残留させたまま、即ち、該板材本体1の水下側に当る切断撤去部分1tと水上側に当る据置き部分1rとに中程の適宜の位置で分け、前者(1t)については、下面に接着させている断熱材4ごと切断して撤去する一方、後者(1r)については古いビス止め部分に当る棟側ハゼ部2の部分を断熱材4ごとそのまま残留させて据置き再利用するという方法である。
【0039】
以下に、この方法について、
図9~
図11によって説明する。この方法においては、当然のことながら、切断撤去部分1tを補完する形態の
図9に示すような部分改修用新設屋根材1nを予め準備しなければならない。
【0040】
その部分改修用新設屋根材1nは、前記切断撤去部分1tだけを形造るものではなく、板材本体1n′の他、棟側ハゼ部2′′′および軒側ハゼ部3′′′を備え、かつ該切断撤去部分1t下面に貼り付けられていた断熱材iを補完する一方、据置き部分1r側のものについては干渉することになるので除去した形態のものが準備される。
【0041】
そして、前記新設屋根材1nの特徴的なもう一つの構成は、据置き部分1rをそのまま再利用するという観点から棟側ハゼ部2′′の構造が重複すると共に邪魔になるので、該棟側ハゼ部2′′のうちの
図9(c)に示す顎部2b、側壁2c、垂下壁2d、天壁2eおよびベース2gを切断除去したものを用いる。
【0042】
上記の構成に加えて、本発明では、前記新設屋根材1nの棟側ハゼ部2′′′と前述した水上側に位置する既設横葺き屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3とのしっかりとした嵌合を担保するために、
図11(a)に示すような、断面形状が箱型(略棟側ハゼ部の上部形状)のカバークランプ材9を用いてハゼ継ぎ嵌合部に介在させることにした。その使用の方法は、
図10、
図11に示すとおりであり、据置き部分1rの棟側ハゼ部2′′の上に被せるように装着した後、水上側に位置する屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3をその上から装着して嵌合する。
【0043】
次に、前記新設屋根材1nの部分交換方法の作業手順について説明する。
(1)交換すべき既存の屋根材の板材本体1の水下側の一部を、現場にて断熱材ごと切断して除去し、野地板部分を露出させる。
(2)交換すべき前述した構成に係る
図9に示すような新設屋根材1nを準備する。
(3)該新設屋根材1nについてこれの棟側ハゼ部2′′′の一部をハゼ継ぎ嵌合をしやすいように上部を切断除去する。
(4)水上側既設屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3を前記L字形状の取り外し用治具などを使って持ち上げる(
図9b)。
(5)部分改修用の前記新設屋根材1nを施工個所に装着する。その際、既設横葺き屋根材表面と新設屋根材裏面を接着させることもできる。
(6)別部材の前記カバークランプ材9を据置き屋根材1rの棟側ハゼ部2′′の上に載せて押し込み乍ら被せて装着したのち、該カバークランプ9の上面から前記棟側ハゼ部2′′に向けて頭部フラットビス10をねじ込んで、該カバークランプ9を該棟側ハゼ部2′′に固定する。
(7)持ち上げていた前記水上側屋根材の板材本体1の軒側ハゼ部3を元に戻し前記カバークランプ材9の上に嵌合させて装着する。
【0044】
以上説明した(1)~(7)の手順を踏むことにより、交換すべき傷んだ横葺き屋根材を新設屋根材1nに部分交換するのである。
【0045】
上述したように、本発明にしたがう横葺き屋根材は、屋根構造体が既に構築された状態にあっても、他の屋根材を取り外すことなしに取り換えたい部分の屋根材のみの取り換えが可能であり、屋根材の部分交換を効率的に行い得る。
【0046】
本発明の横葺き屋根材は、基本的には屋根構造体を構築するのに用いられることになるが、建築構造物の外壁を構築する外装材として用いることができる。この場合、横葺き屋根材は、板材本体1の棟側ハゼ部2が軒側を向くように、また、軒側ハゼ部3が基礎側に向くように配置して屋根構造体を構築するのと同様の手順で横葺き屋根材を取り付ければよく、必要に応じて外装材の部分交換も行える。
【0047】
図12、
図13は、本発明にしたがう横葺き屋根材の他の実施形態を模式的に示した外観斜視図であり、
図14(a)(b)は、
図12、13に示した横葺き屋根材の平面図、正面図を示した図であり、
図15(a)~(c)は、
図14(a)のA-A断面、B-B断面およびC-C断面を拡大して示した図である。
【0048】
上掲
図12~15における符号5は、板材本体1の長さ方向の一方の端縁1aに設けられた上継手、6は、板材本体1の長さ方向のもう一方の端縁1bに設けられた下継手、7は、下継手6の端縁に設けられ、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の上継手を重ね合わせる際に、その上継手を載置する折り返し片である。なお、上継手5は、板材本体1に連続的につながるものであり、板材本体1との境界は、屋根材自体に表れることはないが、ここでは、板材本体1と上継手5との境界を破線で表示するものとする。
【0049】
上継手5は、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手に重ね合わさった際に、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の板材本体の外表面と面一状態で配置される上継手本体5aと、該上継手本体5aの先端部につながり軒方向に沿って隣接配置する別の屋根材の下継手の溝部に位置してその相互間で化粧溝8(
図17、
図18参照)を形成する屈曲縁部5bから構成されている。
【0050】
また、下継手6は、板材本体1の幅方向に沿って伸延する溝部6aと、該溝部6aに隣接して設けられ、該板材本体1の幅方向に沿って伸延する細長い陸部6bとを交互に配列した凹凸部から構成されている。陸部6bの頂面6b1は、板材本体1の外表面よりも低く設定されている。溝部6a、陸部6bの本数は、止水性の改善向上を図るため等、必要に応じて適宜増減することが可能であり、図示のものに限定されることはない。
【0051】
図16は、本発明にしたがう横葺き屋根材の上継手5、下継手6を軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手6′、上継手5′に重ね合わせる直前の状態を示した外観斜視図であり、
図17は、本発明にしたがう横葺き屋根材の上継手5、下継手6を、軒方向に隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手6′、上継手5′に重ね合わせた状態を示した外観斜視図であり、
図18は、屋根材のつなぎ合わせ部分の断面を示した図である。
【0052】
本発明にしたがう横葺き屋根材は、上継手5の上継手本体5aに設けられた湾曲係止片5a1、鉤状係止片5a2を、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手6′の凹所6c′、舌片6d′に連係させ、下継手6の凹所6c、舌片6dに、軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の上継手5′の上継手本体5aに設けられた湾曲係止片5a1′、鉤状係止片5a2′を連係させることにより屋根材同士を軒方向につなぎ合わせるものであって、この状態では、上継手5の屈曲縁部5bが軒方向に沿って隣接配置する別の横葺き屋根材の下継手6′の溝部6a′に位置してその相互間に化粧溝8が形成される。
【0053】
化粧溝8は屋根のアクセントとなり得るものであり美観に優れた屋根を葺きあげることができ、また、屋根材の重ね合わせ部のスタート部位には下継手6の陸部6bが位置することから該陸部6bが雨水等の浸入をブロックして止水性を高めることができる。さらに、屋根の葺きあげ施工時に、施工誤差が生じたとしても化粧溝8の幅寸法の範囲内で施工誤差を微調整することが可能である。
【0054】
上掲
図12~
図15に示した横葺き屋根材の、軒乃至棟方向へのつなぎ合わせ、部分交換は、上掲
図1~8に示した横葺き屋根材において説明したところと同じ要領で行うものであって、ここではその説明は省略する。
【0055】
本発明にしたがう横葺き屋根材としては、棟側ハゼ部2の内側に断熱材4を充填することも可能であり、これにより屋根の断熱性能を高めることができ、また、ハゼ部の強度の改善を図ることができる。とくに、ハゼ部の強度の改善により、屋根の葺きあげ施工時に生じがちであった座屈等の変形を効果的に防止し得る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、既に構築された屋根構造体であったとしても一部分のみの屋根材の交換が可能であり、かつ、屋根材同士の連結強度の高い横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根材の部分交換方法が提供できる。
【0057】
また、本発明によれば、屋根の葺きあげ施工時において屋根材の寸法微調整を行いながら止水性の高い屋根の葺きあげを可能とする横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根の部分交換方法が提供できる。
【0058】
さらに、本発明によれば、化粧溝をアクセントとする美観に優れた屋根の葺きあげが可能な横葺き屋根材およびその横葺き屋根材にて構築された屋根の部分交換方法が提供できる。
【符号の説明】
【0059】
1 板材本体
1a、1b 長さ方向の端縁
1c、1d 幅方向の端縁
2、2′、2′′ 棟側ハゼ部
2a 起立壁
2a1 凹部
2b 顎部
2c 側壁
2d 垂下壁
2e 天壁
2e1 凹所
2f ビス
2g ベース
2g1 リブ
3、3′、3′′ 軒側ハゼ部
3a 傾斜壁
3b 顎部
3b1 底壁
3b2 側壁
3c 舌片
4 断熱材
5 上継手
5a 上継手本体
5b 屈曲縁部
6 下継手
6a 溝部
6b 陸部
7 折り返し片
8 化粧溝
9 カバークランプ材
10 頭部フラットビス