(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 377
A61B5/055 372
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2019116625
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2018124088
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0309019(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0146935(US,A1)
【文献】特開2011-092553(JP,A)
【文献】特開2001-224576(JP,A)
【文献】特開2013-240571(JP,A)
【文献】特開2019-216848(JP,A)
【文献】特開平04-118782(JP,A)
【文献】特開2014-069007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0051516(US,A1)
【文献】特開2006-087499(JP,A)
【文献】特表2009-508656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00 - 6/14
A61B 8/00 - 8/15
G01T 1/161 - 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する医用データを取得する第1取得部と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する第2取得部と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、
前記医用データを処理した出力データを生成する生成部と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記数値データは2以上の有限の要素数分の要素を含み、
前記要素数は、前記収集条件に対応する複数の候補条件の個数に対応し、かつ、前記複数の候補条件に対応する第1の要素と前記複数の候補条件の何れにも該当しない事に対応する第2の要素とを含み、
前記要素の値は、前記複数の候補条件に対する前記収集条件の採否及び/又は値に応じた数値に対応する、
医用情報処理装置。
【請求項2】
被検体に関する医用データを取得する第1取得部と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する第2取得部と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、
前記医用データを処理した出力データを生成する生成部と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記収集条件は、パルスシーケンスの種別、フレーム番号、k空間充填軌跡の種別、繰り返し演算の繰り返し数及び/又はパラレルイメージングの倍速率を含む、
医用情報処理装置。
【請求項3】
被検体に関する医用データを取得する第1取得部と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する第2取得部と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、
前記医用データを処理した出力データを生成する生成部と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得部は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得部は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成部は、前記数値データと前記生データ又は前記生データに基づく前記医用画像とを含む入力データに前記機械学習モデルを適用して、前記生データ又は前記医用画像に基づく前記出力データを生成し、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置である、
医用情報処理装置。
【請求項4】
被検体に関する医用データを取得する第1取得部と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する第2取得部と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、
前記医用データを処理した出力データを生成する生成部と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得部は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得部は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成部は、前記数値データと前記生データとを含む前記入力データに前記機械学習モデルを利用して再構成処理を施して前記被検体に関する前記医用画像を生成する、
医用情報処理装置。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、前記数値データと前記医用データとを入力とし、教師データを用いて学習される、請求項
3記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記要素の値は、前記収集条件が採用する旨の第1の値と前記収集条件が採用しない旨の第2の値との何れかを有する、請求項
1記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記出力データとして、前記被検体に関する医用診断に供されるデータを生成する、請求項
3記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記機械学習モデルは、前記数値データと前記医用データとの各々を、チャネル毎に異なる重みを乗じて加算するように構成される、請求項
3記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記収集条件は、データ収集軌跡各々についての収集回数及び又は収集方向であり、
前記数値データは、要素数が有限の複数のデータ収集軌跡の候補に対して対象撮像における収集回数及び/又は収集方向に応じた数値が割り当てられたマスクデータである、
請求項
3記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記第2取得部は、前記複数のデータ収集軌跡の候補に対する収集回数及び/又は収集方向を、ユーザの指示に従い又は自動的に決定する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記第2取得部は、前記複数のデータ収集軌跡の候補に対する収集回数及び/又は収集方向を、前記医用撮像における撮像時間に基づいて所定のルールに従い決定する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記数値は、データ収集を行う旨の第1の数値とデータ収集を行わない旨の第2の数値とを含む、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記複数のデータ収集軌跡の候補の各々は、ラディアル法に関するk空間でのデータ収集軌跡であり、k空間の略中心を直線状に通過する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記複数のデータ収集軌跡の候補間の角度間隔は、所定の角度に設定される、請求項
13記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
前記複数のデータ収集軌跡の候補は、360度を前記要素数で除した角度に基づく角度で略等間隔に配置される、請求項
13記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
前記複数のデータ収集軌跡の候補の各々は、スパイラル収集に関するk空間でのデータ収集軌跡であり、k空間を渦巻き状に通過する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項17】
前記生成部は、前記機械学習モデルを前記マスクデータと前記生データとに適用し、デノイズされた生データを前記出力データとして生成し、前記デノイズされた生データにフーリエ変換を施して前記医用画像を生成する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項18】
前記生成部は、前記生データにフーリエ変換を施して仮の医用画像を生成し、前記機械学習モデルを前記マスクデータと前記仮の医用画像とに適用し、デノイズされた医用画像を前記出力データとして出力する、請求項
9記載の医用情報処理装置。
【請求項19】
前記被検体に磁気共鳴イメージングを施して前記医用データとしてk空間データを収集する撮像部、を更に備える請求項
3記載の医用情報処理装置。
【請求項20】
被検体に関する医用データを取得する工程と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する工程と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する工程と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記数値データは2以上の有限の要素数分の要素を含み、
前記要素数は、前記収集条件に対応する複数の候補条件の個数に対応し、かつ、前記複数の候補条件に対応する第1の要素と前記複数の候補条件の何れにも該当しない事に対応する第2の要素とを含み、
前記要素の値は、前記複数の候補条件に対する前記収集条件の採否及び/又は値に応じた数値に対応する、
医用情報処理方法。
【請求項21】
被検体に関する医用データを取得する工程と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する工程と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する工程と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記収集条件は、パルスシーケンスの種別、フレーム番号、k空間充填軌跡の種別、繰り返し演算の繰り返し数及び/又はパラレルイメージングの倍速率を含む、
医用情報処理方法。
【請求項22】
被検体に関する医用データを取得する
第1取得工程と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する
第2取得工程と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する
生成工程と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得工程は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得工程は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成工程は、前記数値データと前記生データ又は前記生データに基づく前記医用画像とを含む入力データに前記機械学習モデルを適用して、前記生データ又は前記医用画像に基づく前記出力データを生成し、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置である、
医用情報処理方法。
【請求項23】
被検体に関する医用データを取得する
第1取得工程と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する
第2取得工程と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する
生成工程と、
を具備し、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得工程は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得工程は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成工程は、前記数値データと前記生データとを含む前記入力データに前記機械学習モデルを利用して再構成処理を施して前記被検体に関する前記医用画像を生成する、
医用情報処理方法。
【請求項24】
コンピュータに、
被検体に関する医用データを取得する機能と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する機能と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する機能と、
を実現させ、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記数値データは2以上の有限の要素数分の要素を含み、
前記要素数は、前記収集条件に対応する複数の候補条件の個数に対応し、かつ、前記複数の候補条件に対応する第1の要素と前記複数の候補条件の何れにも該当しない事に対応する第2の要素とを含み、
前記要素の値は、前記複数の候補条件に対する前記収集条件の採否及び/又は値に応じた数値に対応する、
医用情報処理プログラム。
【請求項25】
コンピュータに、
被検体に関する医用データを取得する機能と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する機能と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する機能と、
を実現させ、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記収集条件は、パルスシーケンスの種別、フレーム番号、k空間充填軌跡の種別、繰り返し演算の繰り返し数及び/又はパラレルイメージングの倍速率を含む、
医用情報処理プログラム。
【請求項26】
コンピュータに、
被検体に関する医用データを取得する
第1取得機能と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する
第2取得機能と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する
生成機能と、
を実現させ、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得機能は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得機能は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成機能は、前記数値データと前記生データ又は前記生データに基づく前記医用画像とを含む入力データに前記機械学習モデルを適用して、前記生データ又は前記医用画像に基づく前記出力データを生成し、
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置である、
医用情報処理プログラム。
【請求項27】
コンピュータに、
被検体に関する医用データを取得する
第1取得機能と、
前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する
第2取得機能と、
前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データを処理した出力データを生成する
生成機能と、
を実現させ、
前記医用データは、医用画像診断装置で収集した生データ又は前記生データに基づく医用画像であり、
前記収集条件は、前記医用画像診断装置による医用撮像の撮像プロトコル、前記生データに対するデータ処理条件及び/又は前記医用画像に対する画像処理条件を含
み、
前記第2取得機能は、前記被検体に対する医用撮像の前記収集条件を数値化した前記数値データを取得し、
前記第1取得機能は、前記医用データとして、前記収集条件に従い前記医用撮像により収集された前記生データを取得し、
前記生成機能は、前記数値データと前記生データとを含む前記入力データに前記機械学習モデルを利用して再構成処理を施して前記被検体に関する前記医用画像を生成する、
医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像データやその生データ等の医用データを用いた機械学習において、一部が欠損した医用データから元データを復元するために、多くの学習データから学習した深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)を適用する手法がある。例えば、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)において、カーテシアン収集によりアンダーサンプリングされたk空間データにDNNを適用して欠損部分が復元されたk空間データを生成し、復元後のk空間データに基づいて再構成画像を得る手法がある。また、アンダーサンプリングされたk空間データにDNNを適用して直接復元画像を得る方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0276953号明細書
【文献】米国特許第9672617号明細書
【文献】米国特許第9668699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、機械学習を用いた出力データの精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、被検体に関する医用データを取得する第1取得部と、前記医用データの収集条件を数値化した数値データを取得する第2取得部と、前記数値データと前記医用データとを含む入力データに機械学習モデルを適用して、前記医用データに基づく出力データを生成する生成部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る医用情報処理装置を実装する磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の処理回路によるMR撮像の典型的な流れを示す図である。
【
図3】
図3は、
図2のステップS2及びS3におけるマスクデータの生成処理を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る第1のDNN再構成の流れを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る第2のDNN再構成の流れを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る第3のDNN再構成の流れを模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るモデル学習装置の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7の学習サンプル生成機能による処理を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る医用情報処理装置の他の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る数値データを模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、他の数値データの機械学習モデルへの入力を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、他の数値データの機械学習モデルへの入力を模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る機械学習モデルのネットワーク構造を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係る他の機械学習モデルのネットワーク構造を模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、複数のCNNを有する機械学習モデルの入出力を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用情報処理装置、方法及びプログラムを説明する。
【0008】
本実施形態に係る医用情報処理装置は、医用情報を処理する処理回路を実装する装置である。本実施形態に係る医用情報処理装置は、例えば、医用画像診断装置に搭載されたコンピュータにより実現される。本実施形態に係る医用画像診断装置としては、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、X線コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、X線診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT装置(Single Photon Emission CT)装置及び超音波診断装置等の単一モダリティ装置であっても良いし、PET/CT装置、SPECT/CT装置、PET/MRI装置、SPECT/MRI装置等の複合モダリティ装置であっても良い。他の例として、本実施形態に係る医用情報処理装置は、医用画像診断装置にケーブルやネットワーク等を介して通信可能に接続されたコンピュータであっても良いし、当該医用画像診断装置とは独立のコンピュータであっても良い。以下、本実施形態に係る医用情報処理装置は、磁気共鳴イメージング装置に実装されるものとする。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用情報処理装置50を実装する磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、架台11、寝台13、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25、寝台駆動装置27、シーケンス制御回路29及び医用情報処理装置50を有する。
【0010】
架台11は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とを有する。静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台11の筐体に収容されている。架台11の筐体には中空形状を有するボアが形成されている。架台11のボア内には送信コイル45と受信コイル47とが配置される。
【0011】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸に規定し、Z軸に水平に直交する軸をX軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は、直交3次元座標系を構成する。
【0012】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。より詳細には、傾斜磁場コイル43は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対応する3つのコイルを有する。当該3つのコイルは、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を形成する。X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿う傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp及び周波数エンコード傾斜磁場Grが所望の方向に形成される。スライス選択傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場Gpは、空間的位置に応じてMR信号の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。なお、以下の説明においてスライス選択傾斜磁場Gsの傾斜方向はZ軸、位相エンコード傾斜磁場Gpの傾斜方向はY軸、周波数エンコード傾斜磁場Grの傾斜方向はX軸であるとする。
【0013】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御回路29からのシーケンス制御信号に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿う傾斜磁場を傾斜磁場コイル43により発生させる。当該傾斜磁場は、静磁場磁石41により形成された静磁場に重畳されて被検体Pに印加される。
【0014】
送信コイル45は、例えば、傾斜磁場コイル43の内側に配置され、送信回路23から電流の供給を受けて高周波磁場パルス(以下、RF磁場パルスと呼ぶ)を発生する。
【0015】
送信回路23は、被検体P内に存在する対象プロトンを励起するためのRF磁場パルスを送信コイル45を介して被検体Pに印加するために、送信コイル45に電流を供給する。RF磁場パルスは、対象プロトンに固有の共鳴周波数で振動し、対象プロトンを励起させる。励起された対象プロトンから磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)が発生され、受信コイル47により検出される。送信コイル45は、例えば、全身用コイル(WBコイル)である。全身用コイルは、送受信コイルとして使用されても良い。
【0016】
受信コイル47は、RF磁場パルスの作用を受けて被検体P内に存在する対象プロトンから発せられるMR信号を受信する。受信コイル47は、MR信号を受信可能な複数の受信コイルエレメントを有する。受信されたMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。
図1に図示しないが、受信コイル47は、並列的に実装された複数の受信チャネルを有している。受信チャネルは、MR信号を受信する受信コイルエレメント及びMR信号を増幅する増幅器等を有している。MR信号は、受信チャネル毎に出力される。受信チャネルの総数と受信コイルエレメントの総数とは同一であっても良いし、受信チャネルの総数が受信コイルエレメントの総数に比して多くても良いし、少なくても良い。
【0017】
受信回路25は、励起された対象プロトンから発生されるMR信号を受信コイル47を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、空間周波数により規定されるk空間にて表現することができる。よって、以下、デジタルのMR信号をk空間データと呼ぶことにする。k空間データは、画像再構成に供される生データの一種である。k空間データは、有線又は無線を介して医用情報処理装置50に供給される。
【0018】
なお、上記の送信コイル45と受信コイル47とは一例に過ぎない。送信コイル45と受信コイル47との代わりに、送信機能と受信機能とを備えた送受信コイルが用いられても良い。また、送信コイル45、受信コイル47及び送受信コイルが組み合わされても良い。
【0019】
架台11に隣接して寝台13が設置される。寝台13は、天板131と基台133とを有する。天板131には被検体Pが載置される。基台133は、天板131をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台133には寝台駆動装置27が収容される。寝台駆動装置27は、シーケンス制御回路29からの制御を受けて天板131を移動する。寝台駆動装置27は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータ等を含んでも良い。
【0020】
シーケンス制御回路29は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。シーケンス制御回路29は、処理回路51の撮像プロトコル設定機能511により決定された撮像プロトコルに基づいて傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御し、当該撮像プロトコルに応じたパルスシーケンスを実行して被検体PをMR撮像し、被検体Pに関するk空間データを収集する。
【0021】
図1に示すように、医用情報処理装置50は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータ装置である。
【0022】
処理回路51は、ハードウェア資源として、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)、MPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路51は、磁気共鳴イメージング装置1の中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムの実行により撮像プロトコル設定機能511、マスクデータ取得機能512、生データ取得機能513、画像生成機能514、画像処理機能515、表示制御機能516を有する。
【0023】
撮像プロトコル設定機能511において処理回路51は、対象のMR撮像に関する撮像プロトコルを、入力インタフェース54を介したユーザ指示又は自動的に設定する。撮像プロトコルは、一のMR撮像に関する各種の撮像パラメータの集合である。本実施形態に係る撮像パラメータとして、撮像時間やk空間充填方式の種類、パルスシーケンスの種類、TR、TE等のMR撮像を行うために直接又は間接に設定される種々の撮像パラメータが適用可能である。
【0024】
マスクデータ取得機能512において処理回路51は、対象のMR撮像に関するマスクデータを取得する。マスクデータは、要素数が有限の複数のデータ収集軌跡の候補に対して対象撮像における収集回数及び/又は収集方向に応じた数値が割り当てられたデータである。データ収集軌跡は、k空間上における生データの収集軌跡を意味し、k空間充填方式の種類に関係する。例えば、k空間充填方式がラディアル法である場合、データ収集軌跡は、k空間の中心を通る一般のライン(スポーク)である。k空間充填方式がスパイラル法あるいは可変密度スパイラル法である場合、データ収集軌跡は、k空間の中心から外周へ向かう渦巻き型の曲線である。マスクデータの取得は、処理回路51によるマスクデータの生成、複数のマスクデータの中から任意の一のマスクデータの選択、他装置からのマスクデータの受信、転送又は伝送等の処理を含むものとする。
【0025】
生データ取得機能513は、k空間データを取得する。k空間データの取得は、処理回路51の制御のもとに行われるMR撮像によるk空間データの収集、複数のk空間データの中から任意の一のk空間データの選択、他装置からのk空間データの受信、転送又は伝送等の処理を含むものとする。
【0026】
画像生成機能514において処理回路51は、マスクデータ取得機能512により取得されたマスクデータと生データ取得機能513により取得されたk空間データとに、機械学習モデル521を利用した再構成処理を施して、被検体Pに関するMR画像を生成する。機械学習モデル521は、メモリ52に記憶されている。機械学習モデル521は、複数の調整可能な関数及びパラメータ(重み付け行列又はバイアス)の組合せにより定義されるパラメータ付き合成関数である。機械学習モデル521は、入力層、中間層及び出力層を有する多層のネットワークモデル(DNN:Deep Neural Network)により実現される。以下、機械学習モデル521を利用した再構成処理をDNN再構成と呼ぶことにする。
【0027】
画像処理機能515において処理回路51は、MR画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路51は、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の画像処理を施す。
【0028】
表示制御機能516において処理回路51は、種々の情報をディスプレイ53に表示する。例えば、処理回路51は、画像生成機能514により生成されたMR画像、画像処理機能515により生成されたMR画像、撮像プロトコルの設定画面等をディスプレイ53に表示する。
【0029】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ52は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、メモリ52は、k空間データや制御プログラム、機械学習モデル521等を記憶する。
【0030】
ディスプレイ53は、種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ53は、画像生成機能514により生成されたMR画像、画像処理機能515により生成されたMR画像、撮像プロトコルの設定画面等を表示する。ディスプレイ53としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0031】
入力インタフェース54は、ユーザからの各種指令を受け付ける入力機器を含む。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチスクリーン、タッチパッド等が利用可能である。なお、入力機器は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、磁気共鳴イメージング装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース54の例に含まれる。
【0032】
通信インタフェース55は、LAN(Local Area Network)等を介して磁気共鳴イメージング装置1と、ワークステーションやPACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)等とを接続するインタフェースである。ネットワークIFは、各種情報を接続先のワークステーション、PACS、HIS及びRISとの間で送受信する。
【0033】
なお、上記の構成は一例であって、これに限定されない。例えば、シーケンス制御回路29は、医用情報処理装置50に組み込まれても良い。また、シーケンス制御回路29と処理回路51とが同一の基板に実装されても良い。シーケンス制御回路29、傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25は、医用情報処理装置50とは異なる単一の制御装置に実装されても良いし、複数の装置に分散して実装されても良い。
【0034】
以下、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1及び医用情報処理装置50の動作例を説明する。
【0035】
図2は、処理回路51によるMR撮像の典型的な流れを示す図である。
図2に示す処理は、対象となるMR撮像の撮像プロトコルの設定から開始される。
【0036】
図2に示すように、処理回路51は、撮像プロトコル設定機能511を実行する(ステップS1)。ステップS1において処理回路51は、被検体Pに関する撮像プロトコルを設定する。撮像プロトコルに含まれる撮像パラメータとして、撮像時間やk空間充填方式の種類、パルスシーケンスの種類、TR、TE等が設定される。本実施形態においてk空間充填方式の種類は、ラディアル法、スパイラル法、カーテシアン法等の如何なる方式であっても良い。但し、以下の説明を具体的に行うため、k空間充填方式はラディアル法であるとする。
【0037】
ステップS1が行われると処理回路51は、マスクデータ取得機能512を実行する(ステップS2及びS3)。ステップS2及びS3において処理回路51は、対象のMR撮像に関するマスクデータを生成する。マスクデータは、要素数が有限の複数のデータ収集軌跡(スポーク)の候補に対して、対象撮像において収集する旨の数値又は収集しない旨の数値が割り当てられたデータである。換言すれば、マスクデータは、有限の要素数の候補軌跡のうちの収集対象軌跡を示すデータである。
【0038】
図3は、ステップS2及びS3におけるマスクデータ91の生成処理を模式的に示す図である。
図3に示すように、ラディアル法に関するデータ収集軌跡は、k空間の略中心を放射状に通過する。
図3の上段に示すように、本実施形態に係るMR撮像においては予め定められた有限の要素数のデータ収集軌跡の候補(以下、候補軌跡と呼ぶ)の集合70から、収集対象のデータ収集軌跡(以下、収集対象軌跡と呼ぶ)が選択される。
図3において候補軌跡は点線で示される。候補軌跡の要素数(本数)及び角度は予め設定される。候補軌跡の要素数は、当該要素数の全ての候補軌跡についてデータ収集が行われた場合、十分な画質が保証できる程度の本数に設定される。候補軌跡の要素数は、有限であることが好適である。すなわち、候補軌跡の要素数は、無理数でなければ、例えば、100万本等の多くの本数であっても良い。なお、
図3は、図面の簡単のため、8本の候補軌跡を示している。
【0039】
本実施形態に係る候補軌跡の角度は、基準角度、例えば、0度からの角度に規定される。隣り合う候補軌跡の角度間隔は所定の角度に設定される。具体的には、隣り合う候補軌跡の角度間隔は略等間隔に設定されると良い。このように、要素数及び角度を制限することにより、機械学習の学習データの候補軌跡の要素数及び角度も制限することが可能になる。
【0040】
各候補軌跡の収集角は、基本角の倍数に設定される。すなわち、1番目のデータ収集軌跡の収集角を0度としたとき、2番目の候補軌跡の収集角=基本角、3番目の候補軌跡の収集角=「基本角×2」、4番目の候補軌跡の収集角=「基本角×3」、・・・、のように設定される。
【0041】
基本角は、要素数が有限であれば、黄金角(Golden Angle)、例えば、略111.25度の無理数に設定されても良い。例えば、要素数が1000本である場合、1番目の候補軌跡の収集角を0度、2番目の候補軌跡の収集角を黄金角、3番目の候補軌跡の収集角を「黄金角×2」、4番目の候補軌跡の収集角を「黄金角×3」、・・・、のように1000番目の候補軌跡まで設定される。
【0042】
収集角は、360度を要素数で除した値に設定されても良い。例えば、要素数が1000本である場合、基本角は、360/1000度=0.36度に設定されても良い。また、基本角は、360/1000度の倍数に設定されても良い。例えば、倍数が309である場合、基本角は、360/1000度×309=111.24度に設定されることとなる。これにより基本角を黄金角に略等しくすることができる。
【0043】
候補軌跡には識別のため番号(以下、軌跡番号と呼ぶ)が割り振られる。軌跡番号はマスクデータの生成のために用いられる。軌跡番号の割り振りのルールは、如何なるルールでも良い。例えば、収集角の小さい又は大きい候補軌跡から順番に番号が割り振られても良いし、候補軌跡の設定順序に従い番号が割り振られても良い。
【0044】
まず、処理回路51は、撮像時間と候補軌跡とに基づいて収集対象軌跡を選択する(ステップS2)。例えば、処理回路51は、ステップS1において設定された撮像時間に基づいて所定のルール(以下、選択ルールと呼ぶ)に従い、集合70に含まれる候補軌跡の中から収集対象軌跡を選択する。具体的には、まず、処理回路51は、撮像時間に応じて収集対象軌跡の本数を決定する。次に処理回路51は、選択ルールに従い、決定された本数分の収集対象軌跡を集合70の中から選択する。選択ルールとしては、例えば、収集対象軌跡間の角度が略同一になるように選択することが好適である。例えば、
図3の中段に示すように、8本の候補軌跡の中から略均等角度の3本の候補軌跡、すなわち、1番目、4番目及び7番目の候補軌跡が収集対象軌跡として選択される。
図3において収集対象軌跡は実線で示される。
【0045】
収集対象軌跡は、スライスあるいはボリューム毎、又はフレーム毎に設定される。すなわち、収集対象軌跡は、1画像毎に設定される。ラディアル法による画像は、典型的には、800本程度のスポークにより、画質が保証される。しかしながら、本実施形態によれば、1画像につき30本から50本程度のスポークにより、同等の画質を保証することができる。これは、本実施形態に係る収集軌跡は角度間隔が略均等であることが一因である。
【0046】
次に、処理回路51は、選択された収集対象軌跡に基づいてマスクデータ91を生成する(ステップS3)。
図3の下段に示すように、マスクデータ91は、複数の候補軌跡に対して、選択された(すなわち、データ収集する)旨の数値又は選択されていない(すなわち、データ収集しない)旨の数値が割り当てられた数値データである。例えば、選択された旨の数値として「1」、選択されない旨の数値として「0」が割り当てられる。処理回路51は、候補軌跡毎に選択されたか否かを判定し、選択された場合「1」を割り当て、選択されていない場合「0」を割り当てる。「0」又は「1」の数値は候補軌跡の軌跡番号順に配列される。例えば、
図3の場合、マスクデータ91は、1番目、4番目及び7番目の候補軌跡が選択され、2番目、3番目、5番目、6番目及び8番目の候補軌跡が選択されていないので、(1、0、0、1、0、0、1、0)となる。
【0047】
ステップS3が行われると処理回路51は、生データ取得機能513を実行する(ステップS4)。ステップS4において処理回路51は、シーケンス制御回路29にMR撮像の実行を指示する。シーケンス制御回路29は、傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御し、ステップS2において選択された収集対象軌跡についてMR撮像を実行し、当該収集対象軌跡に関するk空間データを収集する。収集されるk空間データは、ステップS3において生成されたマスクデータにより表される収集対象軌跡に対応するk空間データである。収集対象軌跡は要素数分の候補軌跡の中から選択されたものであるので、典型的には、ステップS4において収集されるk空間データは疎(スパース:sparse)である。
【0048】
ステップS4が行われると処理回路51は、画像生成機能514を実行する(ステップS5)。ステップS5において処理回路51は、ステップS3において生成されたマスクデータとステップS4において収集されたk空間データとにDNN再構成を施してMR画像を生成する。
【0049】
図4、
図5及び
図6は、本実施形態に係るDNN再構成の流れを模式的に示す図である。
図4に示す第1のDNN再構成において処理回路51は、k空間データRDとマスクデータMDとに機械学習モデル521-1を適用し、当該k空間データRDに対応するMR画像RIを生成する。機械学習モデル521-1は、k空間データとマスクデータとを入力し、当該k空間データに対応するMR画像を出力するようにパラメータが学習されている。機械学習モデル521-1の構造については、特に限定されない。k空間データRDとマスクデータMDとに基づき機械学習モデル521-1により生成されるMR画像RIは、k空間データRDに対するフーリエ変換等の解析学的再構成法により生成されるMR画像に比して、k空間データRDに含まれる信号欠損に起因するアーチファクトが低減される。これは、機械学習モデル521-1がk空間データRDに加え、当該k空間データRDに対応する収集対象軌跡を示すマスクデータMDを入力に用いているからである。
【0050】
なお、本実施形態に係る信号欠損は、スパースを含む、所望のk空間データに対する実際のk空間データの如何なる差異を含む概念である。例えば、信号欠損としては、スパースの他、種々の原因により生ずるノイズに起因する信号劣化、A/D変換の過程で生じる連続値から離散値への変換に起因する情報欠落等を含む。
【0051】
図5に示す第2のDNN再構成において処理回路51は、k空間データRDとマスクデータMDとに機械学習モデル521-2を適用し、k空間データRDに含まれる信号欠損部分が復元されたk空間データRDMを生成する。機械学習モデル521-2は、k空間データとマスクデータとを入力し、デノイズされたk空間データを出力するようにパラメータが学習されている。k空間データRDとマスクデータMDとに基づき機械学習モデル521-2により生成されるk空間データRDMは、k空間データRDに比して、k空間データRDに含まれる信号欠損に起因するアーチファクトが低減される。これは、機械学習モデル521-2がk空間データRDに加え、当該k空間データRDに対応する収集対象軌跡を示すマスクデータMDを入力に用いているからである。
【0052】
図5に示すように、k空間データRDMが生成された場合、処理回路51は、k空間データRDMにフーリエ変換を施して、k空間データRD又はk空間データRDMに対応するMR画像RIを生成する。MR画像RIは、信号欠損部分が復元されたk空間データRDMに対するフーリエ変換により生成されているので、信号欠損を含むk空間データRDに対するフーリエ変換により生成されるMR画像に比して、画質が良好である。
【0053】
図6に示す第3のDNN再構成において処理回路51は、k空間データRDにフーリエ変換を施して、k空間データRDに対応する仮MR画像RIMを生成する。仮MR画像RIMは、信号欠損を含むk空間データRDにフーリエ変換を施して生成された再構成画像であるので、信号欠損を多く含む。
【0054】
図6に示すように、仮MR画像RIMが生成された場合、処理回路51は、仮MR画像RIMとマスクデータMDとに機械学習モデル521-3を適用し、仮MR画像RIMに含まれる信号欠損部分が復元されたMR画像RIを生成する。機械学習モデル521-3は、仮MR画像RIMとマスクデータMDとを入力し、デノイズされたMR画像を出力するようにパラメータが学習されている。仮MR画像RIMとマスクデータMDとに基づき機械学習モデル521-3により生成されるMR画像RIは、仮MR画像RIMに比して、信号欠損に起因するアーチファクトが低減される。これは、機械学習モデル521-3が仮MR画像RIMに加え、当該仮MR画像RIMに用いたk空間データRDに対応する収集対象軌跡を示すマスクデータMDを入力に用いているからである。
【0055】
ステップS5が行われると処理回路51は、表示制御機能516を実行する(ステップS6)。ステップS6において処理回路51は、ステップS5において生成されたMR画像をディスプレイ53に表示する。
【0056】
以上により、処理回路51によるMR撮像が終了する。
【0057】
なお、
図2に示す処理の流れは一例であり、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップS2において処理回路51は、撮像時間に基づいて収集対象軌跡を自動的に選択するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、処理回路51は、ユーザにより入力インタフェース54を介して指定された候補軌跡を収集対象軌跡として選択しても良い。この場合、例えば、処理回路51は、有限の要素数の候補軌跡を選択可能にグラフィカルに表現する模式図をディスプレイ53に表示する。模式図としては、例えば、
図3の上段に示すような、k空間に配置された候補軌跡とその軌跡番号とが描出された画像が良い。ユーザは、入力インタフェース54を介して、表示された模式図に含まれる候補軌跡の中から任意の軌跡を収集対象軌跡に指定する。処理回路51は、指定された軌跡を収集対象軌跡として選択すれば良い。
【0058】
上記の実施例は、1画像のMR撮像のため、各収集対象軌跡について1回又は0回のデータ収集が行われることを前提としている。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ある収集対象軌跡について2回以上のデータ収集が行われても良い。2回以上のデータ収集を行うことにより、当該収集対象軌跡に関するk空間データの信頼性を向上させることができる。例えば、1番目及び4番目の軌跡について2回、2番目、5番目及び7番目の軌跡について1回、3番目、6番目及び8番目の軌跡について0回のデータ収集が行われる場合、マスクデータは、(2、1、0、2、1、0、1、0)となる。
【0059】
上記実施例に係るマスクデータにおいては、データ収集軌跡毎に収集回数に応じた数値が割り当てられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、2回以上の収集が行われるデータ収集軌跡に数値「1」が一律に割り当てられても良い。また、0回と2回以上との場合に数値「1」が割り当てられ、1回の場合のみ数値「0」が割り当てられても良い。本実施形態に係るマスクデータには、その他の規則に従い任意の数値が割り当てられても良い。
【0060】
なお、本実施形態の説明ではマスクデータとして非負の値を用いたがこれに限定されず、負の値、例えば、-1を含んでも良い。
【0061】
また、マスクデータの数値は収集回数に応じた値を有するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ラディアル収集において同じ軌跡を正方向と負方向とで収集する場合を考える。正方向のデータ収集軌跡と負方向のデータ収集軌跡とを異なる軌跡として扱う場合、各データ収集軌跡に収集回数に応じた数値が割り当てられることとなる。正方向のデータ収集軌跡と負方向のデータ収集軌跡とに区別せず、一のデータ収集軌跡に対して、収集方向に応じた数値、又は収集回数と収集方向との組合せに応じた数値が割り当てられても良い。例えば、0度のデータ収集軌跡に対して正方向と負方向とで100回ずつ収集する場合、当該データ収集軌跡に対して、(1,0)等が割り当てられる。なお、(1,0)の「1」は正方向を示す数値の一例であり、「0」は負方向を示す数値の一例である。
【0062】
機械学習モデル521の構造は適宜設計変更可能である。例えば、第2のDNN再構成の場合、機械学習モデル521は、k空間データRDとマスクデータMDとを入力としてk空間データRDMを出力とする任意の多層ネットワーク(以下、本ネットワーク層と呼ぶ)の後続に、FFT(Fast Fourier Transfer)層を組み込んでも良い。FFT層にはk空間データが入力され、入力されたk空間データにFFTが適用され、MR画像が出力される。これにより、機械学習モデル521単独で、k空間データRDとマスクデータMDとに基づきMR画像RIを出力することができる。
【0063】
また、機械学習モデル521は、本ネットワーク層とFFT層との後続にIFFT(Inverse Fast Fourier Transfer)層とを含む単位ネットワーク構造が縦続接続された連鎖構造を有しても良い。IFFT層には、MR画像が入力され、入力されたMR画像にIFFTが適用され、k空間データが出力される。連鎖構造により、信号欠損部分の復元精度を向上させることができる。
【0064】
連鎖構造において、IFFT層の後段に整合層が設けられても良い。整合層には、本ネットワーク層から出力されたMR画像に基づくk空間データと、本ネットワーク層に入力された処理前のk空間データとが入力され、処理前のk空間データを利用して処理済みのk空間データに整合処理が施され、整合処理済みのk空間データが出力される。整合処理において処理済みのk空間データは、信号欠損度合い応じて処理前のk空間データが画素毎に重み付け加算される。例えば、信号欠損度合いが低いほど処理前のk空間データの画素値に高い重みが付与され、信号欠損度合いが高いほど処理前のk空間データの画素値に低い重みが付与される。これにより、処理済みのk空間データと処理前のk空間データとの整合性を確保することができる。
【0065】
また、機械学習モデル521において、本ネットワーク層の前段に要素積計算層が設けられても良い。要素積計算層は、k空間データとマスクデータとの要素積を計算し、要素積データを出力する。本ネットワーク層は、k空間データと要素積データとを入力とし、当該k空間データの信号欠損部分が復元されたMR画像データを出力する。本ネットワーク層と要素積計算層との単位ネットワーク構造が縦続接続されても良い。
【0066】
上記の説明において、機械学習モデル521に入力されるk空間データは、MR撮像により収集されたオリジナルのk空間データであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態に係るk空間データは、MR画像に順投影処理を施すことにより生成される計算上のk空間データであっても良い。また、本実施形態に係るk空間データ又はMR画像は、信号圧縮処理や解像度分解処理、信号補間処理、解像度合成処理等の任意の信号処理がなされた生データであっても良い。また、本実施形態に係る生データは、k空間データに対してリードアウト方向に関してフーリエ変換を施すことにより生成されるハイブリッドデータであっても良い。
【0067】
次に、機械学習モデル521の学習について説明する。機械学習モデル521は、モデル学習装置により生成される。モデル学習装置は、複数の学習サンプルを含む学習データに基づいて、モデル学習プログラムに従い機械学習モデルに機械学習を行わせ、学習済みの機械学習モデル(以下、学習済みモデルと呼ぶ)を生成する。モデル学習装置は、CPU及びGPU等のプロセッサを有するワークステーション等のコンピュータである。モデル学習装置と医用情報処理装置50とはケーブル又は通信ネットワークを介して通信可能に接続されても良いし、接続されていなくても良い。また、モデル学習装置と医用情報処理装置50とが一体のコンピュータにより構成されても良い。
【0068】
図7は、本実施形態に係るモデル学習装置6の構成を示す図である。
図7に示すように、モデル学習装置6は、処理回路61、メモリ62、入力インタフェース63、通信インタフェース64及びディスプレイ65を有する。
【0069】
処理回路61は、CPUやGPU等のプロセッサを有する。当該プロセッサがメモリ62等にインストールされたモデル学習プログラムを起動することにより、学習サンプル生成機能611、学習機能612及び表示制御機能613等を実行する。なお、各機能611~613は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能611~613を実現するものとしても構わない。
【0070】
学習サンプル生成機能611において処理回路61は、入力データと出力データとの組合せである学習サンプルを生成する。処理回路61は、全ての候補軌跡に沿って収集されたk空間データに基づいて学習サンプルを生成する。
【0071】
学習機能612において処理回路61は、複数の学習サンプルに関する学習データに基づいて機械学習モデルにパラメータを学習させる。学習機能612によるパラメータの学習により、
図1に示す学習済みの機械学習モデル521が生成される。
【0072】
表示制御機能613において処理回路61は、学習データや学習結果等をディスプレイ65に表示する。
【0073】
メモリ62は、種々の情報を記憶するROMやRAM、HDD、SSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ62は、例えば、多層化ネットワークの学習のためのモデル学習プログラムを記憶する。メモリ62は、上記記憶装置以外にも、CD、DVD、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ62は、モデル学習装置6にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0074】
入力インタフェース63は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路61に出力する。具体的には、入力インタフェース63は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の入力機器に接続されている。入力インタフェース63は、当該入力機器への入力操作に応じた電気信号を処理回路61へ出力する。また、入力インタフェース63に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でも良い。
【0075】
通信インタフェース64は、医用情報処理装置50や医用画像診断装置、他のコンピュータとの間でデータ通信するためのインタフェースである。
【0076】
ディスプレイ65は、処理回路61の表示制御機能613に従い種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ65は、学習データや学習結果等を表示する。また、ディスプレイ65は、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI等を出力する。例えば、ディスプレイ65としては、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。
【0077】
次に、本実施形態に係るモデル学習装置6による動作例について説明する。
【0078】
上記の通り、処理回路61は、全ての候補軌跡に沿って収集されたk空間データに基づいて学習サンプルを生成する。入力データ及び出力データの種類は、
図4、
図5及び
図6に示す機械学習モデル521の型に応じて異なる。
図4の機械学習モデル521-1の場合、マスクデータと信号欠損を含むk空間データとが入力データとして用いられ、信号欠損が低減されたMR画像が出力データとして用いられる。
図5の機械学習モデル521-2の場合、マスクデータと信号欠損を含むk空間データとが入力データとして用いられ、信号欠損が低減されたk空間データが出力データとして用いられる。
図6の機械学習モデル521-3の場合、マスクデータと信号欠損を含むMR画像とが入力データとして用いられ、信号欠損が低減されたMR画像が出力データとして用いられる。
【0079】
以下、機械学習モデル521の一例として、k空間データとマスクデータとを入力し、MR画像を出力するようにパラメータが学習される
図4の機械学習モデル521-1を挙げて、機械学習処理について説明する。
【0080】
図8は、学習サンプルの生成機能611による処理を模式的に示す図である。
図8に示すように、フルk空間データRDFが処理回路61により取得される。フルk空間データは、有限の要素数の全ての候補軌跡についてデータ収集することにより得られたk空間データである。フルk空間データRDFは、予め磁気共鳴イメージング装置1等により収集される。
【0081】
図8に示すように、学習サンプル生成機能611において処理回路61は、フルk空間データRDFに対して間引き処理を施し、処理対象軌跡の全ての組合せ(以下、軌跡組合せと呼ぶ)について仮想のk空間データRD1~RDnを生成する。例えば、処理回路61は、フルk空間データRDFに基づいて、各軌跡組合せに対応するk空間データをシミュレーションにより算出する。なお
図8において、仮想のk空間データRD1~RDnは3本の処理対象軌跡に関するk空間データを図示しているが、仮想のk空間データRD1~RDnを構成する処理対象軌跡の本数は、フルk空間データRDFを構成する候補軌跡の本数より少ないのであれば、何本でも良い。仮想のk空間データRD1~RDnは、機械学習モデル521-1の入力データに用いられる。
【0082】
間引き処理が行われると処理回路61は、仮想のk空間データRD1~RDn各々についてフーリエ変換を施して、当該仮想のk空間データRD1~RDnに対応する仮想のMR画像RI1~RInを生成する。仮想のMR画像RI1~RInは、機械学習モデル521-1の正解MR画像として用いられる。
【0083】
また、処理回路61は、仮想のk空間データRD1~RDn各々にマスクデータ変換処理を施して、当該仮想のk空間データRD1~RDnに対応するマスクデータMD1~MDnを生成する。具体的には、処理回路61は、まず、仮想のk空間データRD1~RDn各々の軌跡組合せを特定する。そして処理回路61は、候補軌跡各々について、軌跡組合せに含まれる軌跡には数値「1」を割り当て、軌跡組合せに含まれない軌跡には数値「0」を割り当てる。これによりマスクデータMD1~MDnが生成される。マスクデータMD1~MDnは、機械学習モデル521-1の入力データに用いられる。
【0084】
軌跡組合せ毎にマスクデータMD1~MDnとk空間データRD1~RDnとMR画像RI1~RInとが関連付けられる。軌跡組合せ毎のマスクデータMD1~MDnとk空間データRD1~RDnとMR画像RI1~RInとが学習サンプルとして扱われる。軌跡組合せ毎の学習サンプルはメモリ62に記憶される。
【0085】
これにより、学習サンプルの生成機能611による処理が終了する。次に、学習機能612による学習処理が行われる。学習機能612において処理回路61は、軌跡組合せ毎にk空間データRD1~RDnとマスクデータMD1~MDnとを機械学習モデルに適用して順伝播処理を行い、MR画像(以下、推定MR画像と呼ぶ)を出力する。次に処理回路61は、推定MR結果と正解MR画像との差分(誤差)を当該機械学習モデルに適用して逆伝播処理を行い、勾配ベクトルを計算する。次に処理回路61は、勾配ベクトルに基づいて当該機械学習モデルの重み付き行列やバイアス等のパラメータを更新する。順伝播処理、逆伝播処理及びパラメータ更新処理を、学習サンプルを変更しながら繰り返すことにより、学習済みの機械学習モデル521-1が生成される。
【0086】
学習済みの機械学習モデル521-1は、メモリ62記憶される。また、学習済みの機械学習モデル521-1は、磁気共鳴イメージング装置1に通信インタフェース64を介して送信される。
【0087】
上記の通り、本実施形態に係るk空間充填方式の種類はスパイラル法でも良い。この場合においても、ラディアル法と同様、マスクデータを生成可能である。スパイラル法に関する候補軌跡は、k空間の中心を始点とし任意の点を終点とする螺旋を描く。ラディアル法と同様、処理回路51は、複数の候補軌跡を含む集合の中から、任意の候補軌跡を収集対象軌跡として選択し、選択された収集対象軌跡に対応するマスクデータを生成する。なお、生成可能な候補軌跡は、グラディエントコイルのハードウェア性能に依存するので、対象ハードウェア毎に学習データを用意する必要がある。あるいは。複数のハードウェアに対応可能なように低いグラディエントコイルに合わせてスパイラル法の候補軌跡の集合を定めても良い。
【0088】
上記の説明において、医用情報処理装置50は、磁気共鳴イメージング装置1に組み込まれているとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。
【0089】
図9は、本実施形態に係る医用情報処理装置50の他の構成を示す図である。
図9に示すように、医用情報処理装置50は、磁気共鳴イメージング装置等のモダリティ装置から独立した単独のコンピュータである。
図9の医用情報処理装置50は、
図1の医用情報処理装置50と同様、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有する。各構成の機能等は、
図1と同様であるので説明は省略する。
【0090】
なお、
図9の医用情報処理装置50は、如何なるモダリティ装置により収集された生データでも処理可能である。例えば、生データは、X線コンピュータ断層撮影装置により収集されたサイノグラムデータでも良い。
【0091】
上記の通り、本実施形態に係る医用情報処理装置50は、処理回路51を有する。処理回路51は、少なくともマスクデータ取得機能512、生データ取得機能513及び画像生成機能514を実現する。マスクデータ取得機能512において処理回路51は、要素数が有限の複数のデータ収集軌跡の候補に対して対象撮像における収集回数及び/又は収集方向に応じた数値が割り当てられたマスクデータを取得する。生データ取得機能513において処理回路51は、被検体Pに対する対象撮像において収集された生データを取得する。画像生成機能514において処理回路51は、取得されたマスクデータと取得された生データとに、機械学習モデル521を利用した再構成処理を施して、被検体Pに関する医用画像を生成する。
【0092】
上記の構成によれば、機械学習モデル521がk空間データに加え、当該k空間データに対応する収集対象軌跡を示すマスクデータを入力に用いているので、k空間データのみを入力する場合に比して、出力医用画像の画質を向上させることができる。また、候補軌跡は予め定められた有限の要素数の軌跡に制限されているので、MR撮像毎に収集対象軌跡を計算等する必要がなくなる。これに関連して、学習データに用いるデータ収集軌跡とMR撮像に用いるデータ収集軌跡とを容易に一致させることもできる。
【0093】
上記の実施形態において機械学習モデルの入力は、生データ又は医用画像等の医用データと、要素数が有限の複数のデータ収集軌跡の候補に対して対象撮像における収集回数及び/又は収集方向に応じた数値が割り当てられたマスクデータとであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。マスクデータの概念を、医用データの収集条件を数値化した数値データにまで拡張することが可能である。医用データの収集条件は、医用撮像の撮像プロトコルだけでなく、生データに対するデータ処理条件や医用画像に対する画像処理条件をも含む概念である。医用撮像の撮像プロトコルとしては、前述のデータ収集軌跡だけでなく、パルスシーケンスの種別、フレーム番号、k空間充填軌跡の種別を含む。
【0094】
また、上記の実施形態において機械学習モデルは、生データから医用画像へのDNN再構成に利用されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。機械学習モデルの出力は医用診断に供されるデータであれば如何なるデータでもよい。例えば、機械学習モデルは、生データの欠損部分の復元、医用画像の欠損部分の復元、解剖学的組織等が区分されたセグメンテーション画像の生成、解剖学的組織等の識別結果の出力を行うものでもよい。
【0095】
図10は、数値データ93を模式的に示す図である。
図10に示す数値データ93は、パルスシーケンスの種別が数値化されたデータである。
図10に示すように、数値データ93は、2以上の有限の要素数分の要素94を含む。要素数は、数値化対象の収集条件が属するカテゴリに含まれる複数の候補条件の個数に一致する。例えば、
図10に示すように、数値化対象の収集条件のカテゴリがパルスシーケンスの種別である場合、候補条件としては、例えば、FSE(Fast Spin Echo)、FE(Field Echo)及びEPI(Echo Planar Imaging)の3種類が挙げられる。この場合、数値データ93は、(FSE、FE、EPI)のように表現される。
【0096】
各要素94は、複数の候補条件について当該対象撮像の収集条件が採用しているか否かに応じた数値に対応する。例えば、要素94の値として、当該候補条件が採用する旨の第1の値と採用しない旨の第2の値との何れかが割り当てられる。この場合、数値データ93は、ワンホット・ベクトル(One-Hot Vector)と称される。第1の値と第2の値とは異なる値であれば任意の整数又は自然数でもよいが、例えば、第1の値が「1」、第2の値が「0」に設定されるものとする。
【0097】
例えば、
図10に示すように、対象撮像の収集条件がFSEを採用する場合、FSEに対応する要素84の値は「1」、FEに対応する要素84の値は「0」、EPIに対応する要素84の値は「0」に設定される。なお、要素数は有限又は無限の如何なる数でもよい。すなわち、候補条件数は幾つでも良い。例えば、要素数すなわち候補条件数を100万以上に設定することも可能である。
【0098】
図11は、
図10の数値データ93-1の機械学習モデルへの入力を模式的に示す図である。
図11の上段に示すように、FSEが採用される場合、数値データ93-1のFSEに対応する要素の値は「1」、FEに対応する要素の値は「0」、EPIに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-1と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。
図11の中段に示すように、FEが採用される場合、数値データ93-1のFEに対応する要素の値は「0」、FEに対応する要素の値は「1」、EPIに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-1と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。
図11の下段に示すように、EPIが採用される場合、数値データ93-1のEPIに対応する要素の値は「0」、FEに対応する要素の値は「0」、EPIに対応する要素の値は「1」に設定される。当該数値データ93-1と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。このようにパルスシーケンスの種別を数値化した数値データ93-1を機械学習モデルの入力に加えることにより、医用画像又は生データだけでなく、パルスシーケンスの種別も考慮して出力データを生成することが可能になる。よって機械学習モデルの出力データの精度が向上する。
【0099】
図12は、他の数値データ93-2の機械学習モデルへの入力を模式的に示す図である。
図12に示す数値データ93-2は、収集条件「黄金角フレーム番号」を数値化している。黄金角フレーム番号は、黄金角の規則に従いデータ収集軌跡の収集角が設定されたラディアル法を利用した動画撮像のフレーム番号であり、フレーム番号を当該フレームに関する基準のデータ収集軌跡の黄金角に関連付けたものである。基準のデータ収集軌跡は、当該フレームが複数のデータ収集軌跡で構成される場合、最初、最後又は中間等の任意の序列のデータ収集軌跡である。この場合、数値データ93-2は、(黄金角フレーム#1、黄金角フレーム#2、…)のように表現される。数値データ93-2の要素数は、フレーム番号の候補数に一致又は対応する。
【0100】
図12の上段に示すように、入力医用画像101が黄金角フレーム#1である場合、数値データの黄金角フレーム#1に対応する要素の値は「1」、他のフレームに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-2と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。
図12の中段に示すように、入力医用画像101が黄金角フレーム#2である場合、数値データの黄金角フレーム#2に対応する要素の値は「1」、他のフレームに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-2と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。このように黄金角フレーム番号を数値化した数値データを機械学習モデルの入力に加えることにより、医用画像又は生データだけでなく、黄金角フレーム番号も考慮して出力データを生成することが可能になる。よって機械学習モデルの出力データの精度が向上する。
【0101】
なお、動画撮像におけるラディアル法のデータ収集軌跡の収集角及び収集順序としては、黄金角を利用したものに限らず、反転ビットパターンを利用したものでもよいし、シーケンシャルパターンを利用したものでもよい。この場合、数値データの要素数は、反転ビットパターン又はシーケンシャルパターンの候補数に一致又は対応する。各要素の値は入力医用画像に関する反転ビットパターン又はシーケンシャルパターンが当該要素に対応する反転ビットパターン又はシーケンシャルパターンを採用しているか否かに応じて設定される。
【0102】
図13は、他の数値データ93-3の機械学習モデルへの入力を模式的に示す図である。
図13に示す数値データ93-3は、収集条件「疑似ランダムパターン番号」を数値化している。疑似ランダムパターン番号は、疑似ランダムカーテシアン法を利用した動画撮像の乱数パターンの番号であり、フレーム番号を当該フレームに関する乱数パターンに関連付けたものである。なお、疑似ランダムカーテシアン法は、乱数パターンに従いデータ収集軌跡が設定されたカーテシアン法を指す。この場合、数値データ93-3は、(疑似ランダムパターン#1、疑似ランダムパターン#2、…)のように表現される。数値データ93-3の要素数は乱数パターンの候補数に一致又は対応する。
【0103】
図13の上段に示すように、入力医用画像101が疑似ランダムパターン#1である場合、数値データ93-3の疑似ランダムパターン#1に対応する要素の値は「1」、他の疑似ランダムパターンに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-3と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。
図13の中段に示すように、入力医用画像101が疑似ランダムパターン#2である場合、数値データ93-3の疑似ランダムパターン#2に対応する要素の値は「1」、他の疑似ランダムパターンに対応する要素の値は「0」に設定される。当該数値データ93-3と入力医用画像101との組合せが機械学習モデルに入力される。このように疑似ランダムパターン番号を数値化した数値データを機械学習モデルの入力に加えることにより、医用画像又は生データだけでなく、疑似ランダムパターン番号も考慮して出力データを生成することが可能になる。よって機械学習モデルの出力データの精度が向上する。
【0104】
数値化対象である、動画撮像の収集条件は、上記のものに限定されず、例えば、心時相により規定されるフレーム番号でもよい。心時相により規定されるフレーム番号は、例えば、R波から次のR波までを100%としたときの、当該フレームの心時相を番号で規定したものである。
【0105】
数値化対象の収集条件は、パラレルイメージングの倍速率でもよい。この場合、数値データの要素数は倍速率の候補数に規定される。要素の値は、当該要素に対応する倍速率が、対象撮像にて採用されているか否かに応じた値を有する。パラレルイメージングに起因するアーチファクトは、倍速率に応じた特徴を有している。従ってパラレルイメージングの倍速率を数値化した数値データを機械学習モデルの入力に加えることにより、倍速率に応じた特徴を機械学習モデルが検出することができ、ひいては、機械学習モデルの出力データの精度が向上する。
【0106】
数値化対象である収集条件は、上記のものに限定されず、例えば、生データに対するデータ処理条件や医用画像に対する画像処理条件でもよい。データ処理条件又は画像処理条件としては、例えば、繰り返し演算の繰り返し数がある。繰り返し演算は、生データ又は医用画像に対し繰り返し適用されたノイズ除去処理やエッジ強調処理、平滑化処理等の演算であり、繰り返し数は当該演算を繰り返した数である。あるいは、生データから医用画像を再構成する際に、生データと再構成画像の再構成誤差を減らす演算と、当該演算を交互に実行する際に、当該演算を繰り返した数である。当該演算は、フィルタやDNN等を用いて行われる。数値データの要素数は繰り返し数の候補数に規定され、要素の値は当該要素に対応する繰り返し数だけ、対象演算が繰り返しているか否かに応じた値を有する。このように、繰り返し演算後の医用データと、繰り返し演算の繰り返し数を数値化した数値データとを機械学習モデルの入力に加えることにより、当該医用データだけでなく、繰り返し数も考慮して出力データを生成することが可能になる。よって機械学習モデルの出力データの精度が向上する。なお、繰り返し数はワンホット・ベクトルであっても良い。あるいは、最初の数回(例えば、3回)をワンホット・ベクトルの形で与え、その回数を超えた繰り返し数として与えたベクトルであってもよい。
【0107】
データ処理条件又は画像処理条件に関する数値データとしては、複数種類のデータ処理又は画像処理の採否等が数値化されたものでもよい。この場合、数値データの要素数はデータ処理又は画像処理の候補数であり、各要素の値は、個別のデータ処理又は画像処理の採否に応じた値に設定される。例えば、数値データは、(ノイズ低減、エッジ強調、セグメント処理)等に表現されるとよい。
【0108】
上記の数値データの要素数は、候補条件の数に一致するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。
【0109】
図14は、他の数値データ93-4を模式的に示す図である。
図14に示すように、数値データ93-4は、候補条件に対応する要素94と、何れの候補条件にも該当しない事に対応する要素95とを含む。要素95の値は、例えば、何れかの候補条件に該当する場合、「0」に設定され、何れかの候補条件に該当する場合、「1」に設定される。例えば、
図14に示すように、数値データ93-4がパルスシーケンスを数値化したものであり、実際のMR撮像のパルスシーケンスがFSE、FE及びEPIの何れでもない場合、要素95の値は「1」に設定される。数値データ93-4に要素95を設けることにより、実際のMR撮像のパルスシーケンスが候補条件の何れにも該当しないことを機械学習モデルに対して明示することができる。
【0110】
上記の数値データは、パルスシーケンスの種別やフレーム番号等、一種類の収集条件を数値化したものであることを前提とした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、数値データは、パルスシーケンスの種別及びフレーム番号を1列のベクトルとして表現してもよい。この場合、数値データは、具体的には、(FSE、FE、EPI、フレーム番号1、フレーム番号2、…)等により表現される。
【0111】
また、上記の説明において数値データの要素は、当該候補条件を採用するか否かを2値で表現するワンホット・ベクトルであるとした。しかしながら、要素は、当該候補条件の強度や方向、回数等の多段の概念を3値以上で表現するベクトルでもよい。
【0112】
次に、本実施形態に係る機械学習モデルのネットワーク構造について説明する。
【0113】
図15は、本実施形態に係る機械学習モデル521-4のネットワーク構造を模式的に示す図である。
図15に示すように、機械学習モデル521-4は、例示として、ノイズを有する医用画像#1と当該医用画像に関する収集条件を数値化した数値データ#2との組合せを入力し、ノイズを有さない医用画像を出力するようにパラメータが学習されたDNNであるとする。医用画像#1と数値データ#2とはそれぞれ1セットであるとする。
【0114】
機械学習モデル521-4は、CNN層523を有する。CNN層523は、医用画像#1と数値データ#2との各々を、チャネル毎に異なる重みを乗じて加算するように構成される。例えば、医用画像#1にはチャネル数chの複数のフィルタが適用され、数値データ#2には同数chの複数のフィルタが適用される。フィルタ後の医用画像と数値データとは加算器203によりチャネル毎に加算され加算データに変換される。加算データはバイアス204によりチャネル毎に一定値が加算されバイアスデータに変換される。チャネル毎のバイアスデータがCNN層523から出力される。
【0115】
上記CNN層523のネットワーク構造は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、CNN層523には一段のフィルタ201,202ではなく、多段のフィルタ201,202が設けられてもよい。例えば、フィルタ201のサイズは5×5、フィルタ202のサイズは1×1等に設定されればよいが、フィルタ201,202のサイズは如何なるサイズでもよい。
【0116】
CNN層523の後続には後置層525が設けられる。後置層525はCNN層523からの複数チャネル分のバイアスデータに演算を施して、機械学習モデル521-4の出力として、ノイズを有しない医用画像を出力する。後置層525は、少なくとも1層以上の全結合層及び出力層を有するが、これらの層に加え、1以上のCNN層やプーリング層、正規化層等の如何なる層を有してもよい。
【0117】
図15に示すCNN層523の入力は1セットの医用画像と1セットの数値データであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。CNN層の入力は複数セットの医用画像と同セットの数値データとでもよい。
【0118】
図16は、本実施形態に係る他の機械学習モデル521-5のネットワーク構造を模式的に示す図である。
図16に示すように、機械学習モデル521-5は、例示として、ノイズを有する医用画像#1とノイズを有する医用画像#2と医用画像#1に関する収集条件を数値化した数値データ#3と医用画像#2に関する収集条件を数値化した数値データ#4との組合せを入力し、ノイズを有さない医用画像を出力するようにパラメータが学習されたDNNであるとする。医用画像#2は、例えば、医用画像#1のコピーや、医用画像#1に任意の画像処理を施した医用画像等、医用画像#1から派生した医用画像である。また、医用画像2は、医用画像#1と同一の収集条件により収集された別の医用画像でもよいし、別の収集条件により収集された医用画像でもよい。
【0119】
機械学習モデル521-5は、CNN層527を有する。CNN層527は、医用画像#1と医用画像#2と数値データ#3と数値データ#4との各々を、チャネル毎に異なる重みを乗じて加算するように構成される。例えば、医用画像#1にはチャネル数chの複数のフィルタ211が適用され、医用画像#2には同数chの複数のフィルタ212が適用され、数値データ#3には同数chの複数のフィルタ213が適用され、数値データ#4には同数chの複数のフィルタ214が適用される。フィルタ後の医用画像と数値データとは加算器215によりチャネル毎に加算され加算データに変換される。加算データはバイアス216によりチャネル毎に一定値が加算されバイアスデータに変換される。チャネル毎のバイアスデータがCNN層527から出力される。
【0120】
上記CNN層527のネットワーク構造は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、CNN層527には一段のフィルタ211,212,213,214ではなく、多段のフィルタ211,212,213,214が設けられてもよい。
【0121】
CNN層527の後続には後置層529が設けられる。後置層529はCNN層527からの複数チャネル分のバイアスデータに演算を施して、機械学習モデル521-5の出力として、ノイズを有しない医用画像を出力する。出力の医用画像は、医用画像#1からノイズが除去された画像等、医用画像#1に対応する医用画像である。後置層529は、少なくとも1層以上の全結合層及び出力層を有するが、これらの層に加え、1以上のCNN層やプーリング層、正規化層等の如何なる層を有してもよい。
【0122】
なお、複数のCNN層を有する機械学習モデルの場合、各CNN層に対して必ず数値データが入力されなければならないわけではない。
【0123】
図17は、複数のCNN層531を有する機械学習モデル521-6の入出力を模式的に示す図である。
図17に示す機械学習モデル521-6は、例示として、一連の3つのCNN層531-1、CNN層531-2及びCNN層531-3を有する。CNN531-3の後続に後置層533が設けられる。CNN531-1は入力医用画像を入力し、CNN層531-2はCNN層531-1の出力データを入力し、CNN層531-3はCNN層531-2の出力データを入力する。後置層533は、CNN層531-3からの出力データが入力され、例えば、入力医用画像#1からノイズが除去された医用画像を、機械学習モデル521-6の出力として、出力する。CNN層531-1、CNN層531-2及びCNN層531-3のネットワーク構造は、同一でも異なってもよく、任意に設計されればよい。
【0124】
図17に示すように、3つのCNN層531-1、CNN層531-2及びCNN層531-3の全てについて数値データ#2が入力されなくてもよく、例えば、入力側に一番近いCNN層531-1に数値データ#2が入力されず、その後のCNN層531-2及びCNN層531-3に数値データ#2が入力されてもよい。これに限らず、入力側に一番近いCNN層531-1に数値データ#2が入力され、その後のCNN層531-2及びCNN層531-3に数値データ#2が入力されなくてもよい。また、CNN層531-1、CNN層531-2及びCNN層531-3の何れか1つのCNN層に数値データ#2が入力され、他のCNN層に数値データ#2が入力されなくてもよい。もちろん、CNN層531-1、CNN層531-2及びCNN層531-3の全てに数値データ#2が入力されてもよい。
【0125】
上記の実施形態において機械学習モデルの出力は、ノイズを有さない医用画像を出力するとした。しかしながら、機械学習モデルの出力はこれに限定されない。
【0126】
例えば、機械学習モデルは、医用画像と数値データとから、当該医用画像のセグメンテーション結果を出力してもよい。例えば、T1強調画像又はT2強調画像の入力に対し、セグメンテーション結果として、解像学的組織や病変領域が区分された画像が出力される。病変領域としては、例えば、脳梗塞らしさや虚血らしさ、癌の疑いのある画像領域である。医用画像と数値データとから、当該医用画像の識別結果を出力してもよい。例えば、T1強調画像、T2強調画像、又はT1強調画像及びT2強調画像の組合せの入力に対し、識別結果として、脳梗塞である確率が出力される。医用画像と数値データとから、当該医用画像のセグメンテーション結果を出力してもよい。例えば、T1強調画像、T2強調画像、又はT1強調画像及びT2強調画像の組合せの入力に対し、セグメンテーション結果として、脳梗塞らしさを有する画像領域が区分された画像が出力される。
【0127】
T1強調画像やT2強調画像のように異なる画像種の医用画像に基づいて学習を行わせた場合においても、機械学習モデルのパラメータの一部は共通化される。よって機械学習モデルは、学習の効率の低減を抑制しつつ、異なる画像種の医用画像の入力に対する汎用性を獲得することができる。
【0128】
また、機械学習モデルは、医用データと数値データとから、当該医用データの超解像データを出力してもよい。超解像データは、入力医用データに比して空間解像度が高い医用データである。医用データと数値データとを含む入力データと、教師データである超解像データとに基づいてDNNを学習させることにより当該機械学習モデルを生成することが可能である。
【0129】
例えば、周波数を制限したハーフフーリエ(Half-Fourier)法によりk空間データが収集された場合、当該k空間データは、一部欠落し、空間解像度が低下している。ハーフフーリエ法により収集されたk空間データと数値データとを含む入力データと、周波数制限無しのMR撮像より収集されたk空間データ(教師データ)とに基づくDNNを学習されることにより、当該機械学習モデルを生成することができる。当該機械学習モデルを用いることによりハーフフーリエ法により収集されたk空間データから、データ欠損部分が復元されたk空間データ(超解像データ)を出力することが可能になる。
【0130】
上記に示す機械学習モデルは、モデル学習装置6により教師付機械学習を用いて生成可能である。学習サンプルは、様々な収集条件により医用データを収集することにより用意される。具体的には、学習サンプルの入力データは、ある収集条件により収集された入力医用データと、当該収集条件を数値化した数値データとを含む。学習サンプルの出力データは、当該医用データに対応し且つ機械学習モデルの目的に応じた出力医用データを含む。出力データは、例えば、機械学習モデルの目的がデノイズであれば、入力医用データに比してノイズが低減された医用データである。
【0131】
学習機能612において処理回路61は、入力医用データと数値データとを機械学習モデルに適用して順伝播処理を行い、出力医用データを出力する。次に処理回路61は、推定出力医用データと正解出力医用データとの差分(誤差)を当該機械学習モデルに適用して逆伝播処理を行い、勾配ベクトルを計算する。次に処理回路61は、勾配ベクトルに基づいて当該機械学習モデルの重み付き行列やバイアス等のパラメータを更新する。順伝播処理、逆伝播処理及びパラメータ更新処理を、学習サンプルを変更しながら繰り返すことにより、学習済みの機械学習モデルが生成される。
【0132】
上記の説明の通り、医用情報処理装置50は、処理回路51を有する。処理回路51は、被検体に関する医用データを取得し、医用データの収集条件を数値化した数値データを取得し、数値データと医用データとを含む入力データに機械学習モデル521を適用して、当該医用データに基づく出力データを生成する。
【0133】
上記の構成によれば、機械学習モデル521が医用データに加え、当該医用データに対応する収集条件を数値化した数値データを入力に用いているので、医用データのみを入力する場合に比して、出力データの精度を向上させることができる。数値データの要素数は予め定められた候補条件の数に対応しており、また、各要素の値は当該候補条件の採否等に応じた値である。すなわち、収集条件の数値化の規則は予め定められているので、学習時や適用時において機械学習モデルが収集条件を高精度に判別することが可能である。これも出力データの精度を向上させる一要因となる。
【0134】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、機械学習を用いた出力データの精度を向上することができる。
【0135】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで各機能511-516を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで各機能511-516を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する各機能511-516を実現しても良い。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1、
図3及び
図7における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
1 磁気共鳴イメージング装置
11 架台
13 寝台
131 天板
133 基台
21 傾斜磁場電源
23 送信回路
25 受信回路
27 寝台駆動装置
29 シーケンス制御回路
41 静磁場磁石
43 傾斜磁場コイル
45 送信コイル
47 受信コイル
50 医用情報処理装置
51 処理回路
52 メモリ
53 ディスプレイ
54 入力インタフェース
55 通信インタフェース
511 撮像プロトコル設定機能
512 マスクデータ取得機能
513 生データ取得機能
514 画像生成機能
515 画像処理機能
516 表示制御機能
521 機械学習モデル
P 被検体