(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 647A
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2019122030
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216431(JP,A)
【文献】特開2015-095583(JP,A)
【文献】特開2016-036012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を基板の表面に供給する処理液供給工程と、
前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成工程と、
前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去工程とを含み、
前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含み、
前記処理液供給工程が、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を含
み、
前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含み、
前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含み、
前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分によって前記除去対象膜を溶解することで、前記除去対象膜の膜片が形成され、
前記処理膜形成工程において形成される前記処理膜が前記除去対象膜の膜片を保持する、基板処理方法。
【請求項2】
処理液を基板の表面に供給する処理液供給工程と、
前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成工程と、
前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去工程とを含み、
前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含み、
前記処理液供給工程が、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を含
み、
前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分に前記基板の前記表層を溶解させることによって前記除去対象物が基板の表面から離間する、基板処理方法。
【請求項3】
前記処理膜形成工程が、前記除去対象物と前記基板の表面との間に前記処理液が入り込んだ状態で、前記処理液を固化または硬化させる工程を含む、請求項1
または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理膜形成工程が、前記処理液を固化または硬化させることによって、前記溶解成分による前記溶解対象物の溶解の進行を抑制する溶解抑制工程を含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含み、
前記溶解抑制工程が、前記処理膜と前記基板との接触界面付近における前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させる工程を含む、請求項
4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含み、
前記溶解抑制工程が、前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させることによって、前記処理膜と前記基板の表面との間に隙間を形成する工程を含む、請求項
4または
5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理液が、溶質と、前記溶質を溶解させる溶媒とを有し、
前記溶質が、前記溶解成分と、高溶解性成分と、前記高溶解性成分よりも前記除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有し、
前記処理膜形成工程が、固体状態の前記高溶解性成分、固体状態の前記低溶解性成分および固体状態の前記溶解成分を有する前記処理膜を形成する工程を含み、
前記除去工程が、前記処理膜中の固体状態の前記高溶解性成分を前記除去液に選択的に溶解させる工程を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板の表面に存在する前記除去対象物が、前記基板の表面と化学結合している、請求項1~
7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記除去対象膜が、ドライエッチングによって生じた残渣である、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記溶解対象物が、前記基板の前記表層および前記除去対象物を含み、
前記除去対象物が、化学機械研磨によって生じた残渣である、請求項
8に記載の基板処
理方法。
【請求項11】
処理液を基板の表面に供給する処理液供給ユニットと、
前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成ユニットと、
前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去液供給ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記処理膜形成ユニットおよび前記除去液供給ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記処理液供給ユニットから前記基板の表面に向けて前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理膜形成ユニットによって前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の上面に前記処理膜を形成する処理膜形成工程と、前記除去液供給ユニットから前記基板の表面に向けて前記除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去工程とを実行するようにプログラムされており、
前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含み、
前記コントローラが、前記処理液供給工程において、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を実行するようにプログラムされて
おり、
前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含み、
前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含み、
前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分によって前記除去対象膜を溶解することで、前記除去対象膜の膜片が形成され、
前記処理膜形成工程において形成される前記処理膜が前記除去対象膜の膜片を保持する、基板処理装置。
【請求項12】
処理液を基板の表面に供給する処理液供給ユニットと、
前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成ユニットと、
前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去液供給ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記処理膜形成ユニットおよび前記除去液供給ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記処理液供給ユニットから前記基板の表面に向けて前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理膜形成ユニットによって前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の上面に前記処理膜を形成する処理膜形成工程と、前記除去液供給ユニットから前記基板の表面に向けて前記除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板
外へ排除する除去工程とを実行するようにプログラムされており、
前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含み、
前記コントローラが、前記処理液供給工程において、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を実行するようにプログラムされて
おり、
前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分に前記基板の前記表層を溶解させることによって、前記除去対象物が前記基板の表面から離間する、基板処理装置。
【請求項13】
前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記除去対象物と前記基板の表面との間に前記処理液が入り込んだ状態で、前記処理液を固化または硬化させるようにプログラムされている、請求項11
または12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記処理液を固化または硬化させることによって、前記溶解成分による前記溶解対象物の溶解の進行を抑制する溶解抑制工程を実行するようにプログラムされている、請求項11
~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含み、
前記コントローラが、前記溶解抑制工程において、前記処理膜と前記基板との接触界面付近における前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させる工程を実行するようにプログラムされている、請求項
14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含み、
前記コントローラが、前記溶解抑制工程において、前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させることによって、前記処理膜と前記基板の表面との間に隙間を形成する工程を実行するようにプログラムされている、請求項
14または
15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記処理液が、溶質と、前記溶質を溶解させる溶媒とを有し、
前記溶質が、前記溶解成分と、高溶解性成分と、前記高溶解性成分よりも前記除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有し、
前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、固体状態の前記高溶解性成分、固体状態の前記低溶解性成分および固体状態の前記溶解成分を有する前記処理膜を形成し、前記除去工程において、前記処理膜中の固体状態の前記高溶解性成分を前記除去液に選択的に溶解させるようにプログラムされている、請求項11~
16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板の表面に存在する前記除去対象物が、前記基板の表面と化学結合している、請求項11~
17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記除去対象膜が、ドライエッチングによって生じた残渣である、請求項
11に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記溶解対象物が、前記基板の前記表層および前記除去対象物を含み、
前記除去対象物が、化学機械研磨によって生じた残渣である、請求項
18に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、基板に付着した各種汚染物、前工程で使用した処理液やレジスト等の残渣、あるいは各種パーティクル等(以下「除去対象物」と総称する場合がある。)を除去するために、洗浄工程が実施される。
洗浄工程では、脱イオン水(DIW:Deionized Water)等の洗浄液を基板に供給することにより、除去対象物を洗浄液の物理的作用によって除去したり、除去対象物と化学的に反応する薬液を基板に供給することにより、当該除去対象物を化学的に除去したりすることが一般的である。
【0003】
しかし、基板上に形成される凹凸パターンの微細化および複雑化が進んでいる。そのため、凹凸パターンの損傷を抑制しながら除去対象物を洗浄液または薬液によって除去することが容易でなくなりつつある。
そこで、揮発成分を含むトップコート液を基板に向けて供給し、揮発成分の揮発によってトップコート膜を形成した後に、当該トップコート膜を除去する手法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
この手法では、トップコート液が体積収縮しながら固化または硬化してトップコート膜が形成される。これによって、除去対象物が基板から引き離される。そして、除去液によって、トップコート膜が溶解され基板上から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の基板処理方法では、トップコート膜を基板上で溶解させる。そのため、基板上においてトップコート膜から除去対象物が脱落し、その脱落した除去対象物が基板に再付着するおそれがある。したがって、基板上から除去対象物を効率良く除去できないおそれがある。
そこで、この発明の1つの目的は、基板の表面に存在する除去対象物を効率良く除去することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、処理液を基板の表面に供給する処理液供給工程と、前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成工程と、前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板の表面から除去する除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含む。そして、前記処理液供給工程が、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を含む。
【0008】
この方法によれば、処理液に含まれる溶解成分によって、溶解対象物(基板の表層および除去対象物の少なくとも一方)が部分的に溶解される。そのため、処理液供給工程が実行されることによって、除去対象物と基板の表面との間に処理液が入り込みやすい。処理膜形成工程において、除去対象物と基板の表面との間に処理液が入り込んだ状態で処理液が固化または硬化されれば、処理膜の一部が、除去対象物と基板の表面との間に形成される。そのため、除去工程において、処理膜は、除去対象物を充分な保持力で保持しながら、基板の表面から除去され、基板外へと排除される。その結果、除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含み、前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含む。そして、前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分によって前記除去対象膜を溶解することで、前記除去対象膜の膜片が形成され、前記処理膜形成工程において形成される前記処理膜が前記除去対象膜の膜片を保持する。
また、この発明の一実施形態では、前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分に前記基板の前記表層を溶解させることによって前記除去対象物が基板の表面から離間する。
【0009】
ところで、上述の方法とは異なり、溶解成分を含む溶解液を基板に供給した後に、溶解液をリンス液で洗い流し、その後、処理膜の形成に必要な処理膜形成液を基板に供給する方法では、複数の液体が基板の表面に順次に供給される。そのため、溶解液によって基板の表面から一度離れた除去対象物が、処理膜に保持される前に基板の表面に再付着するおそれがある。
【0010】
一方、溶解成分を含む処理液を基板に供給した後、処理液を固化または硬化させることによって処理膜を形成すれば、この処理液を別の液体に置換することなく、処理膜を形成することができる。そのため、溶解対象物を溶解させた後、速やかに、処理膜を形成することができる。したがって、基板の表面から除去対象物が離れた状態を維持しながら処理膜を形成することができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記処理膜形成工程が、前記処理液を固化または硬化させることによって、前記溶解成分による前記溶解対象物の溶解の進行を抑制する溶解抑制工程を含む。そのため、溶解成分による溶解対象物の過剰な溶解を避けることができる。
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含む。そして、前記溶解抑制工程が、前記処理膜と前記基板との接触界面付近における前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させる工程を含む。
【0012】
そのため、処理膜と基板との接触界面付近における処理膜中の溶解成分が消費される。処理膜は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理膜中において溶解成分は拡散しにくい。したがって、処理膜と基板との接触界面付近における処理膜中の溶解成分の消費に伴って、処理膜中の溶解成分による基板の表層の溶解が抑制される。
【0013】
さらに、基板の表面に処理液の液膜が存在するときだけでなく、処理膜が形成された後にも、溶解成分によって基板の表層が溶解される。そのため、処理膜と基板との密着性を低下させることができる。これにより、処理膜形成工程後の除去工程において、基板の表面から処理膜を剥離し易くなる。すなわち、除去対象物を保持した状態の処理膜を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含む。そして、前記溶解抑制工程が、前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させることによって、前記処理膜と前記基板の表面との間に隙間を形成する工程を含む。
この方法によれば、基板の表層が溶解されることによって、処理膜と基板の表面との間に隙間が形成される。処理膜は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理液と比較して流動性が低い。そのため、処理膜と基板の表面との間に形成された隙間は、処理膜によって埋められることなく維持される。そのため、処理膜形成工程後の除去工程において、処理膜と基板の表面との間の隙間に除去液が入り込みやすい。これにより、除去対象物を保持した状態の処理膜を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記処理液が、溶質と、前記溶質を溶解させる溶媒とを有する。前記溶質が、前記溶解成分と、高溶解性成分と、前記高溶解性成分よりも前記除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有する。前記処理膜形成工程が、固体状態の前記高溶解性成分、固体状態の前記低溶解性成分および固体状態の前記溶解成分を有する前記処理膜を形成する工程を含む。そして、前記除去工程が、前記処理膜中の固体状態の前記高溶解性成分を前記除去液に選択的に溶解させる工程を含む。
【0016】
この方法によれば、処理膜中の固体状態の高溶解性成分が除去液で選択的に溶解される。「固体状態の高溶解性成分が選択的に溶解される」とは、固体状態の高溶解性成分のみが溶解されるという意味ではない。「固体状態の高溶解性成分が選択的に溶解される」とは、固体状態の低溶解性成分も僅かに溶解されるが、大部分の固体状態の高溶解性成分が溶解されるという意味である。
【0017】
そのため、固体状態の高溶解性成分を除去液に溶解させることによって、処理膜と基板との接触界面に除去液を作用させることができる。一方、処理膜中の低溶解性成分は、溶解されずに固体状態で維持される。したがって、固体状態の低溶解性成分で除去対象物を保持しながら、固体状態の低溶解性成分と基板との接触界面に除去液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに除去し、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記基板の表面に存在する前記除去対象物が、前記基板の表面と化学結合している。「除去対象物と基板の表面とが化学結合されている」とは、除去対象物を構成する分子または原子と、基板の表層を構成する分子または原子とが、共有結合、イオン結合、金属結合等によって、結合されていることをいう。
処理膜に保持された除去対象物を基板の表面から引き離すためには、基板の表面への大流量の除去液の供給等によって、除去液から除去対象物に作用する物理力(運動エネルギー)を増大させる手法が考え得る。しかしながら、除去対象物と基板の表面とが化学結合されている場合、除去対象物が処理膜によって保持されることで除去液から受ける物理力を増大させたとしても、除去液の物理力のみによって除去対象物を基板の表面から引き離すことは困難である。
【0019】
そこで、処理液に含まれる溶解成分で基板の表層または除去対象物の少なくとも一方を溶解させれば、除去対象物と基板の表面との結合強度に関わらず、除去対象物を基板の表面から引き離すことができる。したがって、除去対象物と基板の表面とが化学結合している場合であっても、除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含む。そして、前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含む。たとえば、ドライエッチング後の基板の表面には、基板の表面の少なくとも一部を覆う膜状の残渣(除去対象膜)が生じることがある。この方法とは異なり、溶解成分を有していない処理液から処理膜を形成する場合、基板の表面において除去対象膜に覆われた部分において、除去対象膜と基板の表面との間に処理液が入り込みにくい。
【0020】
そこで、処理液中の溶解成分に、除去対象膜を部分的に溶解させることができれば、除去対象膜と基板の表面との間に処理液を入り込ませ易い。さらに、処理液中の溶解成分によって、除去対象膜を分裂させることができれば、分裂した膜片同士の間の隙間を介して、除去対象膜の膜片と基板の表面との間に処理液を一層効率的に入り込ませることができる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含む。前記除去対象物が、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって生じた残渣である。化学機械研磨後の基板の表面には、溶解成分に対する溶解性が基板の表層と同程度の除去対象物が生じることがある。そこで、溶解成分によって、基板の表層を溶解させることができれば、除去対象物と基板の表面との間に処理液を入り込ませ易い。
【0022】
この発明の他の実施形態は、処理液を基板の表面に供給する処理液供給ユニットと、前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成ユニットと、前記基板の表面に除去液を供給することによって、前記処理膜を前記基板の表面から除去する除去液供給ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記処理膜形成ユニットおよび前記除去液供給ユニットを制御するコントローラとを含む、基板処理装置を提供する。
【0023】
前記コントローラが、前記処理液供給ユニットから基板の表面に向けて前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理膜形成ユニットによって前記基板の表面上の前記処理液を固化または硬化させ、前記基板の上面に前記処理膜を形成する処理膜形成工程と、前記除去液供給ユニットから前記基板の表面に向けて前記除去液を供給することによって、前記処理膜に前記除去対象物を保持させた状態で、前記処理膜を前記基板の表面から除去する除去工程とを実行するようにプログラムされている。前記処理液が、前記基板の表層および前記除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる溶解成分を含む。そして、前記コントローラが、前記処理液供給工程において、前記基板の表面に供給された前記処理液中の前記溶解成分によって、前記溶解対象物を部分的に溶解させる溶解工程を実行するようにプログラムされている。
【0024】
この装置によれば、処理液に含まれる溶解成分によって、溶解対象物(基板の表層および除去対象物の少なくとも一方)が部分的に溶解される。そのため、処理液供給工程が実行されることによって、除去対象物と基板の表面との間に処理液が入り込みやすい。処理膜形成工程において、除去対象物と基板の表面との間に処理液が入り込んだ状態で処理液が固化または硬化されれば、処理膜の一部が、除去対象物と基板の表面との間に形成される。そのため、除去工程において、処理膜は、除去対象物を充分な保持力で保持しながら、基板の表面から除去され、基板外へと排除される。その結果、除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含み、前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含む。そして、前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分によって前記除去対象膜を溶解することで、前記除去対象膜の膜片が形成され、前記処理膜形成工程において形成される前記処理膜が前記除去対象膜の膜片を保持する。
また、この発明の一実施形態では、前記溶解工程において、前記処理液中の前記溶解成分に前記基板の前記表層を溶解させることによって前記除去対象物が基板の表面から離間する。
【0025】
ところで、上述の装置とは異なり、溶解成分を含む溶解液を基板に供給した後に、溶解液をリンス液で洗い流し、その後、処理膜の形成に必要な処理膜形成液を基板に供給する場合には、複数の液体が基板の表面に順次に供給される。そのため、溶解液によって基板の表面から一度離れた除去対象物が、処理膜に保持される前に基板の表面に再付着するおそれがある。
【0026】
一方、溶解成分を含む処理液を基板に供給した後、処理液を固化または硬化させることによって処理膜を形成すれば、この処理液を別の液体に置換することなく、処理膜を形成することができる。そのため、溶解対象物を溶解させた後、速やかに、処理膜を形成することができる。したがって、基板の表面から除去対象物が離れた状態を維持しながら処理膜を形成することができる。
【0027】
この発明の他の実施形態では、前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記処理液を固化または硬化させることによって、前記溶解成分による前記溶解対象物の溶解の進行を抑制する溶解抑制工程を実行するようにプログラムされている。そのため、溶解成分による溶解対象物の過剰な溶解を避けることができる。
この発明の他の実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含む。そして、前記コントローラが、前記溶解抑制工程において、前記処理膜と前記基板との接触界面付近における前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させる工程を実行するようにプログラムされている。
【0028】
そのため、処理膜と基板との接触界面付近における処理膜中の溶解成分が消費される。処理膜は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理膜中において溶解成分は拡散しにくい。したがって、処理膜と基板との接触界面付近における処理膜中の溶解成分の消費に伴って、処理膜中の溶解成分による基板の表層の溶解が抑制される。
【0029】
さらに、基板の表面に処理液の液膜が存在するときだけでなく、処理膜が形成された後にも、溶解成分によって基板の表層が溶解される。そのため、処理膜と基板との密着性を低下させることができる。これにより、処理膜形成工程後の除去工程において、基板の表面から処理膜を剥離し易くなる。すなわち、除去対象物を保持した状態の処理膜を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0030】
この発明の他の実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記基板の前記表層を含む。そして、前記コントローラが、前記溶解抑制工程において、前記処理膜中の前記溶解成分によって前記基板の前記表層を溶解させることによって、前記処理膜と前記基板の表面との間に隙間を形成する工程を実行するようにプログラムされている。
この装置によれば、基板の表層が溶解されることによって、処理膜と基板の表面との間に隙間が形成される。処理膜は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理液と比較して流動性が低い。そのため、処理膜と基板の表面との間に形成された隙間は、処理膜によって埋められることなく維持される。そのため、処理膜形成工程後の除去工程において、処理膜と基板の表面との間の隙間に除去液が入り込みやすい。これにより、除去対象物を保持した状態の処理膜を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0031】
この発明の他の実施形態では、前記処理液が、溶質と、前記溶質を溶解させる溶媒とを有する。前記溶質が、前記溶解成分と、高溶解性成分と、前記高溶解性成分よりも前記除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有する。そして、前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、固体状態の前記高溶解性成分、固体状態の前記低溶解性成分および固体状態の前記溶解成分を有する前記処理膜を形成し、前記除去工程において、前記処理膜中の固体状態の前記高溶解性成分を前記除去液に選択的に溶解させるようにプログラムされている。
【0032】
この装置によれば、処理膜中の固体状態の高溶解性成分が除去液で選択的に溶解される。そのため、固体状態の高溶解性成分を除去液に溶解させることによって、処理膜と基板との接触界面に除去液を作用させることができる。一方、処理膜中の低溶解性成分は、溶解されずに固体状態で維持される。したがって、固体状態の低溶解性成分で除去対象物を保持しながら、固体状態の低溶解性成分と基板との接触界面に除去液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに除去し、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0033】
この発明の他の実施形態では、前記基板の表面に存在する前記除去対象物が、前記基板の表面と化学結合している。処理液に含まれる溶解成分で基板の表層または除去対象物の少なくとも一方を溶解させれば、除去対象物と基板の表面との結合強度に関わらず、除去対象物を基板の表面から引き離すことができる。したがって、除去対象物と基板の表面とが化学結合している場合であっても、除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0034】
この発明の他の実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含む。そして、前記除去対象物が、前記基板の表面の少なくとも一部を覆う除去対象膜を含む。前述したように、たとえば、ドライエッチング後の基板の表面には、基板の表面の少なくとも一部を覆う膜状の残渣(除去対象膜)が生じることがある。この装置とは異なり、溶解成分を有していない処理液から処理膜を形成する場合、基板の表面において除去対象膜に覆われた部分において、除去対象膜と基板の表面との間に処理液が入り込みにくい。
【0035】
そこで、処理液中の溶解成分に、除去対象膜を部分的に溶解させることができれば、除去対象膜と基板の表面との間に処理液を入り込ませ易い。さらに、処理液中の溶解成分によって、除去対象膜を分裂させることができれば、分裂した膜片同士の間の隙間を介して、除去対象膜の膜片と基板の表面との間に処理液を一層効率的に入り込ませることができる。
【0036】
この発明の他の実施形態では、前記溶解対象物が、少なくとも前記除去対象物を含む。前記除去対象物が、CMPによって生じた残渣である。前述したように、CMP後の基板の表面には、溶解成分に対する溶解性が基板の表層と同程度の除去対象物が生じることがある。そこで、溶解成分によって、基板の表層を溶解させることができれば、除去対象物と基板の表面との間に処理液を入り込ませ易い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図5A】
図5Aは、前記基板処理の処理液供給工程(ステップS2)の様子を説明するための模式図である。
【
図5B】
図5Bは、前記基板処理の薄膜化工程(ステップS3)の様子を説明するための模式図である。
【
図5C】
図5Cは、前記基板処理の溶媒蒸発工程(ステップS4)の様子を説明するための模式図である。
【
図5D】
図5Dは、前記基板処理の溶媒蒸発工程(ステップS4)の様子を説明するための模式図である。
【
図5E】
図5Eは、前記基板処理の除去工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
【
図5F】
図5Fは、前記基板処理のリンス工程(ステップS6)の様子を説明するための模式図である。
【
図5G】
図5Gは、前記基板処理の処理膜残渣除去工程(ステップS7)の様子を説明するための模式図である。
【
図5H】
図5Hは、前記基板処理のスピンドライ工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置で処理される基板のパターン面の構造の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図7A】
図7Aは、ドライエッチングが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の処理液供給工程前の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図7B】
図7Bは、ドライエッチングが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の処理液供給工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図7C】
図7Cは、ドライエッチングが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の溶媒蒸発工程後の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図7D】
図7Dは、ドライエッチングが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の除去工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図7E】
図7Eは、ドライエッチングが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の除去工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8A】
図8Aは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の処理液供給工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8B】
図8Bは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の処理液供給工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8C】
図8Cは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の溶媒蒸発工程後の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8D】
図8Dは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の溶媒蒸発工程後の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8E】
図8Eは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の除去工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【
図8F】
図8Fは、CMPが施された基板を用いて前記基板処理を行った場合における、前記基板処理の除去工程中の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<基板処理装置の構成>
図1は、この発明の一実施形態にかかる基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0039】
基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。詳しくは後述するが、処理ユニット2内で基板Wに供給される処理流体には、リンス液、処理液、除去液、処理膜残渣除去液、熱媒、不活性ガス等が含まれる。
【0040】
各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0041】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、対向部材6と、処理カップ7と、第1移動ノズル9と、第2移動ノズル10と、中央ノズル11と、下面ノズル12とを含む。
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させる。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0042】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、基板Wの周縁を把持する複数のチャックピン20が、スピンベース21の周方向に間隔を空けて配置されている。スピンベース21および複数のチャックピン20は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットを構成している。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。
【0043】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。スピンモータ23は、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。
【0044】
対向部材6は、スピンチャック5に保持された基板Wに上方から対向する。対向部材6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向部材6は、基板Wの上面(上側の表面)に対向する対向面6aを有する。対向面6aは、スピンチャック5よりも上方でほぼ水平面に沿って配置されている。
対向部材6において対向面6aとは反対側には、中空軸60が固定されている。対向部材6において平面視で回転軸線A1と重なる部分には、対向部材6を上下に貫通し、中空軸60の内部空間60aと連通する連通孔6bが形成されている。
【0045】
対向部材6は、対向面6aと基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する。そのため、対向部材6は、遮断板ともいう。
処理ユニット2は、対向部材6の昇降を駆動する対向部材昇降ユニット61をさらに含む。対向部材昇降ユニット61は、下位置から上位置までの任意の位置(高さ)に対向部材6を位置させることができる。下位置とは、対向部材6の可動範囲において、対向面6aが基板Wに最も近接する位置である。上位置とは、対向部材6の可動範囲において対向面6aが基板Wから最も離間する位置である。
【0046】
対向部材昇降ユニット61は、たとえば、中空軸60を支持する支持部材(図示せず)に結合されたボールねじ機構(図示せず)と、当該ボールねじ機構に駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。対向部材昇降ユニット61は、対向部材リフタ(遮断板リフタ)ともいう。
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72と、複数のガード71と複数のカップ72とを取り囲む円筒状の外壁部材73とを含む。
【0047】
この実施形態では、2つのガード71(第1ガード71Aおよび第2ガード71B)と、2つのカップ72(第1カップ72Aおよび第2カップ72B)とが設けられている例を示している。
第1カップ72Aおよび第2カップ72Bのそれぞれは、上向きに開放された環状溝の形態を有している。
【0048】
第1ガード71Aは、スピンベース21を取り囲むように配置されている。第2ガード71Bは、第1ガード71Aよりも基板Wの回転径方向外方でスピンベース21を取り囲むように配置されている。
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、それぞれ、ほぼ円筒形状を有しており、各ガード71の上端部は、スピンベース21に向かうように内方に傾斜している。
【0049】
第1カップ72Aは、第1ガード71Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ72Bは、第1ガード71Aと一体に形成されており、第2ガード71Bによって下方に案内された液体を受け止める。
処理ユニット2は、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを別々に昇降させるガード昇降ユニット74を含む。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第1ガード71Aを昇降させる。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第2ガード71Bを昇降させる。
【0050】
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aが下位置に位置し、第2ガード71Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード71Bによって受けられる。
ガード昇降ユニット74は、たとえば、第1ガード71Aに結合された第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじ機構に駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード71Bに結合された第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
【0051】
第1移動ノズル9は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて処理液を供給(吐出)する処理液ノズル(処理液供給ユニット)の一例である。
第1移動ノズル9は、第1ノズル移動ユニット36によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル9は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第1移動ノズル9は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。第1移動ノズル9は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第1移動ノズル9は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0052】
第1ノズル移動ユニット36は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル9はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル9が水平方向および鉛直方向に移動する。
【0053】
第1移動ノズル9は、処理液を案内する処理液配管40に接続されている。処理液配管40に介装された処理液バルブ50が開かれると、処理液が、第1移動ノズル9から下方に連続流で吐出される。
第1移動ノズル9から吐出される処理液は、溶質および溶媒を含んでいる。この処理液は、溶媒の少なくとも一部が揮発(蒸発)することによって固化または硬化する。この処理液は、基板W上で固化または硬化することによって、基板W上に存在するパーティクル等の除去対象物を保持する処理膜を形成する。除去対象物は、たとえば、ドライエッチング後またはCMP後において、基板Wの表面に付着する異物である。
【0054】
ここで、「固化」とは、たとえば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、たとえば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。
第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶質は、溶解成分と、低溶解性成分と、高溶解性成分と、腐食防止成分とを含む。
【0055】
溶解成分は、基板Wの表層および除去対象物の少なくとも一方を溶解対象物として溶解させる成分である。基板Wの表層とは、基板Wの表面近傍の部分である。ドライエッチング後の基板Wの表層は、たとえば、Low-k膜、TiN、SiO2、Si、SiN、SiC、Poly-Siによって形成されている。CMP後の基板Wの表層は、たとえば、金属、Si、SiO2、SiC、GaN等によって形成されている。CMP後の基板Wの表層を形成する金属としては、アルミニウム、タングステン、銅、コバルト、ルテニウム、モリブデン等が挙げられる。溶解成分は、たとえば、除去対象物を溶解させる酸またはアルカリである。基板Wの表層は、自然酸化膜を含んでいてもよい。
【0056】
腐食防止成分は、金属の腐食を防止するための成分である。そのため、基板Wの表層に金属層が含まれる場合には、第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶質に腐食防止成分が含まれていることが好ましい。詳しくは後述するが、腐食防止成分は、たとえば、BTA(ベンゾトリアゾール)である。
低溶解性成分および高溶解性成分は、除去液に対する溶解性が互いに異なる物質を用いることができる。第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる低溶解性成分は、たとえば、ノボラックである。第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる高溶解性成分は、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0057】
第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶媒は、低溶解性成分、高溶解性成分、溶解成分および腐食防止成分を溶解させる液体であればよい。処理液に含まれる溶媒は、除去液と相溶性を有する(混和可能である)液体であることが好ましい。
第1移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶媒、低溶解性成分、高溶解性成分、溶解成分および腐食防止成分の詳細については後述する。
【0058】
第2移動ノズル10は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて純水等の除去液を連続流で供給(吐出)する除去液ノズル(除去液供給ユニット)の一例である。除去液は、除去対象物を保持した状態の処理膜を、基板Wの上面から除去するための液体である。
第2移動ノズル10は、第2ノズル移動ユニット37によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2移動ノズル10は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
【0059】
第2移動ノズル10は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第2移動ノズル10は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第2移動ノズル10は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第2ノズル移動ユニット37は、第1ノズル移動ユニット36と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット37は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸および第2移動ノズル10に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0060】
第2移動ノズル10から吐出される除去液は、処理液の溶質に含まれる低溶解性成分よりも処理液の溶質に含まれる高溶解成分を溶解させやすい液体が用いられる。第2移動ノズル10から吐出される除去液は、たとえば、純水(好ましくはDIW)である。除去液は、純水に限られず、アルカリ性水溶液(アルカリ性液体)、中性および酸性のいずれかの水溶液(非アルカリ性水溶液)であってもよい。アルカリ性水溶液の具体例として、アンモニア水、SC1液、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液、および、コリン水溶液、ならびにこれらのいずれかの組合せが挙げられる。
【0061】
第2移動ノズル10は、第2移動ノズル10に除去液を案内する上側除去液配管41に接続されている。上側除去液配管41に介装された上側除去液バルブ51が開かれると、除去液が、第2移動ノズル10の吐出口から下方に連続流で吐出される。
中央ノズル11は、対向部材6の中空軸60の内部空間60aに収容されている。中央ノズル11の先端に設けられた吐出口11aは、基板Wの上面の中央領域に上方から対向する。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面において基板Wの回転中心およびその周囲を含む領域のことである。
【0062】
中央ノズル11は、流体を下方に吐出する複数のチューブ(第1チューブ31、第2チューブ32および第3チューブ33)と、複数のチューブを取り囲む筒状のケーシング30とを含む。複数のチューブおよびケーシング30は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。中央ノズル11の吐出口11aは、第1チューブ31の吐出口でもあり、第2チューブ32の吐出口でもあり、第3チューブ33の吐出口でもある。
【0063】
第1チューブ31(中央ノズル11)は、DIW等のリンス液を基板Wの上面に供給するリンス液供給ユニットの一例である。第2チューブ32(中央ノズル11)は、IPA等の処理膜残渣除去液を基板Wの上面に供給する有機溶剤供給ユニットの一例である。第3チューブ33(中央ノズル11)は、窒素ガス等の気体を基板Wの上面と対向部材6の対向面6aとの間に供給する気体供給ユニットの一例である。
【0064】
第1チューブ31は、リンス液を第1チューブ31に案内する上側リンス液配管42に接続されている。上側リンス液配管42に介装された上側リンス液バルブ52が開かれると、リンス液が、第1チューブ31(中央ノズル11)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
リンス液としては、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)のアンモニア水、還元水(水素水)等が挙げられる。
【0065】
第2チューブ32は、処理膜残渣除去液を第2チューブ32に案内する処理膜残渣除去液配管43に接続されている。処理膜残渣除去液配管43に介装された処理膜残渣除去液バルブ53が開かれると、処理膜残渣除去液が、第2チューブ32(中央ノズル11)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
第2チューブ32から吐出される処理膜残渣除去液は、除去液によって基板Wの上面から除去された処理膜の残渣を除去するための液体である。処理膜残渣除去液は、リンス液よりも揮発性が高い液体であることが好ましい。第2チューブ32から吐出される処理膜残渣除去液は、リンス液と相溶性を有することが好ましい。
【0066】
第2チューブ32から吐出される処理膜残渣除去液は、たとえば、有機溶剤である。第2チューブ32から吐出される有機溶剤としては、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトン、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)およびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液等が挙げられる。
【0067】
また、第2チューブ32から吐出される有機溶剤は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPAとDIWとの混合液であってもよいし、IPAとHFEとの混合液であってもよい。
第3チューブ33は、気体を第3チューブ33に案内する気体配管44に接続されている。気体配管44に介装された気体バルブ54が開かれると、気体が、第3チューブ33(中央ノズル11)から下方に連続流で吐出される。
【0068】
第3チューブ33から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N2)等の不活性ガスである。第3チューブ33から吐出される気体は、空気であってもよい。不活性ガスとは、窒素ガスに限られず、基板Wの上面や、基板Wの上面に形成されたパターンに対して不活性なガスのことである。不活性ガスの例としては、窒素ガスの他に、アルゴン等の希ガス類が挙げられる。
【0069】
下面ノズル12は、スピンベース21の上面中央部で開口する貫通孔21aに挿入されている。下面ノズル12の吐出口12aは、スピンベース21の上面から露出されている。下面ノズル12の吐出口12aは、基板Wの下面(下側の表面)の中央領域に下方から対向する。基板Wの下面の中央領域とは、基板Wの下面において基板Wの回転中心を含む領域のことである。
【0070】
下面ノズル12には、リンス液、除去液、および熱媒を下面ノズル12に共通に案内する共通配管80の一端が接続されている。共通配管80の他端には、共通配管80にリンス液を案内する下側リンス液配管81と、共通配管80に除去液を案内する下側除去液配管82と、共通配管80に熱媒を案内する熱媒配管83とが接続されている。
下側リンス液配管81に介装された下側リンス液バルブ86が開かれると、リンス液が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続流で吐出される。下側除去液配管82に介装された下側除去液バルブ87が開かれると、除去液が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続流で吐出される。熱媒配管83に介装された熱媒バルブ88が開かれると、熱媒が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
【0071】
下面ノズル12は、基板Wの下面にリンス液を供給する下側リンス液供給ユニットの一例である。また、下面ノズル12は、基板Wの下面に除去液を供給する下側除去液供給ユニットの一例である。また、下面ノズル12は、基板Wを加熱するための熱媒を基板Wに供給する熱媒供給ユニットの一例である。下面ノズル12は、基板Wを加熱する基板加熱ユニットでもある。
【0072】
下面ノズル12から吐出される熱媒は、たとえば、室温よりも高く、処理液に含まれる溶媒の沸点よりも低い温度の高温DIWである。処理液に含まれる溶媒がIPAである場合、熱媒としては、たとえば、60℃~80℃のDIWが用いられる。下面ノズル12から吐出される熱媒は、高温DIWには限られず、室温よりも高く、処理液に含有される溶媒の沸点よりも低い温度の高温不活性ガスや高温空気等の高温気体であってもよい。
【0073】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0074】
とくに、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、第1ノズル移動ユニット36、第2ノズル移動ユニット37、対向部材昇降ユニット61、ガード昇降ユニット74、処理液バルブ50、上側除去液バルブ51、上側リンス液バルブ52、処理膜残渣除去液バルブ53、気体バルブ54、下側リンス液バルブ86、下側除去液バルブ87および熱媒バルブ88を制御するようにプログラムされている。コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの処理流体の吐出の有無や、対応するノズルからの処理流体の吐出流量が制御される。
【0075】
<基板処理の一例>
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図4には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図5A~
図5Hは、前記基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
【0076】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図4に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、処理液供給工程(ステップS2)、薄膜化工程(ステップS3)、溶媒蒸発工程(ステップS4)、除去工程(ステップS5)、リンス工程(ステップS6)、処理膜残渣除去工程(ステップS7)、スピンドライ工程(ステップS8)および基板搬出工程(ステップS9)がこの順番で実行される。
【0077】
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図1参照)によってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。基板Wの搬入時には、対向部材6は、上位置に退避している。
スピンチャック5による基板Wの保持は、スピンドライ工程(ステップS8)が終了するまで継続される。ガード昇降ユニット74は、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS8)が終了するまでの間、少なくとも一つのガード71が上位置に位置するように、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bの高さ位置を調整する。
【0078】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、処理液供給工程(ステップS2)が開始される。処理液供給工程では、まず、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。
対向部材6が上位置に位置する状態で、第1ノズル移動ユニット36が、第1移動ノズル9を処理位置に移動させる。第1移動ノズル9の処理位置は、たとえば、中央位置である。そして、処理液バルブ50が開かれる。これにより、
図5Aに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第1移動ノズル9から処理液が供給(吐出)される(処理液供給工程、処理液吐出工程)。これにより、基板W上に処理液の液膜101(処理液膜)が形成される(処理液膜形成工程)。処理液中に含まれる溶解成分によって基板Wの上面に存在する除去対象物および基板Wの表層の少なくとも一方が部分的に溶解される(溶解工程)。
【0079】
第1移動ノズル9からの処理液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。処理液供給工程において、基板Wは、所定の処理液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。
次に、処理膜形成工程(ステップS3およびステップS4)が実行される。処理膜形成工程では、基板W上の処理液が固化または硬化されて、基板W上に存在する除去対象物を保持する処理膜100(
図5Dを参照)が基板Wの上面に形成される。
【0080】
処理膜形成工程では、まず、基板W上の処理液の液膜101の厚さを薄くする薄膜化工程(スピンオフ工程)(ステップS3)が実行される。具体的には、処理液バルブ50が閉じられる。これにより、基板Wに対する処理液の供給が停止される。そして、第1ノズル移動ユニット36によって第1移動ノズル9がホーム位置に移動される。
図5Bに示すように、薄膜化工程では、基板W上の液膜101の厚さが適切な厚さになるように、基板Wの上面への処理液の供給が停止された状態で遠心力によって基板Wの上面から処理液の一部が排除される。
【0081】
第1移動ノズル9がホーム位置に移動した後も、対向部材6は、上位置に維持される。
薄膜化工程では、スピンモータ23が、基板Wの回転速度を所定の薄膜化速度に変更する。薄膜化速度は、たとえば、300rpm~1500rpmである。基板Wの回転速度は、300rpm~1500rpmの範囲内で一定に保たれてもよいし、薄膜化工程の途中で300rpm~1500rpmの範囲内で適宜変更されてもよい。薄膜化工程は、所定時間、たとえば、30秒間実行される。
【0082】
処理膜形成工程では、薄膜化工程後に、処理液の液膜101から溶媒の一部を蒸発(揮発)させる溶媒蒸発工程(ステップS4)が実行される。溶媒蒸発工程では、基板W上の処理液の溶媒の一部を蒸発させるために、基板W上の液膜101を加熱する。
具体的には、
図5Cに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を、上位置と下位置との間の近接位置に移動させる。近接位置は、下位置であってもよい。近接位置は、基板Wの上面から対向面6aまでの距離がたとえば1mmの位置である。
【0083】
そして、気体バルブ54が開かれる。これにより、基板Wの上面(液膜101の上面)と、対向部材6の対向面6aとの間の空間に気体が供給される(気体供給工程)。
基板W上の液膜101に気体が吹き付けられることによって、液膜101中の溶媒の蒸発(揮発)が促進される(溶媒蒸発工程、溶媒蒸発促進工程)。そのため、処理膜100の形成に必要な時間を短縮することができる。中央ノズル11は、処理液中の溶媒の蒸発させる蒸発ユニット(蒸発促進ユニット)として機能する。
【0084】
また、熱媒バルブ88が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12から熱媒が供給(吐出)される(熱媒供給工程、熱媒吐出工程)。下面ノズル12から基板Wの下面に供給された熱媒は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの下面の全体に行き渡る。基板Wに対する熱媒の供給は、所定時間、たとえば、60秒間継続される。溶媒蒸発工程において、基板Wは、所定の蒸発回転速度、たとえば、1000rpmで回転される。
【0085】
基板Wの下面に熱媒が供給されることによって、基板Wを介して、基板W上の液膜101が加熱される。これにより、液膜101中の溶媒の蒸発(揮発)が促進される(溶媒蒸発工程、溶媒蒸発促進工程)。そのため、処理膜100の形成に必要な時間を短縮することができる。下面ノズル12は、処理液中の溶媒の蒸発(揮発)させる蒸発ユニット(蒸発促進ユニット)として機能する。
【0086】
薄膜化工程および溶媒蒸発工程が実行されることによって、処理液が固化または硬化されて、
図5Dに示すように、基板W上に処理膜100が形成される。このように、基板回転ユニット(スピンモータ23)、中央ノズル11および下面ノズル12は、処理液を固化または硬化させて固体(処理膜100)を形成する固体形成ユニット(処理膜形成ユニット)を構成している。
【0087】
溶媒蒸発工程では、基板W上の処理液の温度が溶媒の沸点未満となるように、基板Wが加熱されることが好ましい。処理液を、溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、処理膜100中に溶媒を適度に残留させることができる。これにより、処理膜100内に溶媒が残留していない場合と比較して、その後の除去工程において、処理膜100中に残留した溶媒と、除去液との相互作用によって、除去液を処理膜100になじませやすい。
【0088】
次に、基板Wの上面から処理膜100を剥離して除去する除去工程(ステップS5)が実行される。具体的には、熱媒バルブ88が閉じられる。これにより、基板Wの下面に対する熱媒の供給が停止される。また、気体バルブ54が閉じられる。これにより、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間への気体の供給が停止される。
そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置に移動させる。対向部材6が上位置に位置する状態で、第2ノズル移動ユニット37が、第2移動ノズル10を処理位置に移動させる。第2移動ノズル10の処理位置は、たとえば、中央位置である。
【0089】
そして、第2移動ノズル10が処理位置に位置する状態で、上側除去液バルブ51が開かれる。これにより、
図5Eに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第2移動ノズル10から除去液が供給(吐出)される(上側除去液供給工程、上側除去液吐出工程)。基板Wの上面に供給された除去液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。除去工程において、基板Wは、所定の除去回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
【0090】
上側除去液バルブ51が開かれると同時に、下側除去液バルブ87が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12から除去液が供給(吐出)される(下側除去液供給工程、下側除去液吐出工程)。基板Wの下面に供給された除去液は、遠心力により、基板Wの下面の全体に広がる。
基板Wの上面に除去液が供給されることによって、処理膜100が、除去液の剥離作用によって、除去対象物とともに基板Wの上面から剥離される(剥離工程)。処理膜100は、基板Wの上面から剥離される際に分裂して膜片となる。そして、処理膜100の剥離後、基板Wの上面への除去液の供給が継続されることによって、分裂した処理膜100の膜片は、除去液とともに基板W外へ排除される。これにより、除去対象物を保持した状態の処理膜100の膜片が、基板Wの上面から除去される(除去工程)。
【0091】
ここで、
図5Aに示す処理液供給工程(ステップS2)で基板Wの上面に供給された処理液は、基板Wの周縁を伝って基板Wの下面に回り込むことがある。また、基板Wから飛散した処理液が、ガード71から跳ね返って基板Wの下面に付着することがある。このような場合であっても、
図5Dに示すように、処理膜形成工程において基板Wの下面に熱媒が供給される。そのため、その熱媒の流れによって、基板Wの下面から処理液を排除することができる。
【0092】
さらに、処理液供給工程(ステップS2)に起因して基板Wの下面に付着した処理液が固化または硬化して固体を形成することがある。このような場合であっても、
図5Eに示すように、除去工程(ステップS5)において基板Wの上面に除去液が供給されている間、下面ノズル12から基板Wの下面に除去液が供給(吐出)される。これによって、その固体を基板Wの下面から剥離し除去することができる。
【0093】
除去工程(ステップS5)の後、リンス工程(ステップS6)が実行される。具体的には、上側除去液バルブ51および下側除去液バルブ87が閉じられる。これにより、基板Wの上面および下面に対する除去液の供給が停止される。そして、第2ノズル移動ユニット37が、第2移動ノズル10をホーム位置に移動させる。そして、
図5Fに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を処理位置に移動させる。リンス工程において、基板Wは、所定のリンス回転速度、たとえば、800rpmで回転される。処理位置は、近接位置よりも基板Wの上面から上方に離間した位置である。
【0094】
そして、対向部材6が処理位置に位置する状態で、上側リンス液バルブ52が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(上側リンス液供給工程、上側リンス液吐出工程)。基板Wの上面に供給されたリンス液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面に付着していた除去液がリンス液で洗い流される。
【0095】
また、上側リンス液バルブ52が開かれると同時に、下側リンス液バルブ86が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12からリンス液が供給(吐出)される(下側リンス液供給工程、下側リンス液吐出工程)。これにより、基板Wの下面に付着していた除去液がリンス液で洗い流される。基板Wの上面および下面へのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、35秒間継続される。
【0096】
次に、処理膜残渣除去工程(ステップS7)が実行される。具体的には、上側リンス液バルブ52および下側リンス液バルブ86が閉じられる。これにより、基板Wの上面および下面に対するリンス液の供給が停止される。
そして、対向部材6が処理位置に位置する状態で、処理膜残渣除去液バルブ53が開かれる。これにより、
図5Gに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11から処理膜残渣除去液が供給(吐出)される(処理膜残渣除去液供給工程、処理膜残渣除去液吐出工程)。基板Wの上面への処理膜残渣除去液の供給は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。処理膜残渣除去工程において、基板Wは、所定の残渣除去回転速度、たとえば、300rpmで回転される。
【0097】
基板Wの上面に供給された処理膜残渣除去液は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面のリンス液が処理膜残渣除去液で置換される。基板Wの上面に供給された処理膜残渣除去液は、基板Wの上面に残る処理膜100の残渣(処理膜残渣)を溶解したのち、基板Wの上面の周縁から排出される(処理膜残渣除去工程)。
【0098】
次に、スピンドライ工程(ステップS8)が実行される。具体的には、処理膜残渣除去液バルブ53が閉じられる。これにより、基板Wの上面への処理膜残渣除去液の供給が停止される。そして、
図5Hに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を処理位置よりも下方の乾燥位置に移動させる。対向部材6が乾燥位置に位置するとき、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離は、たとえば、1.5mmである。そして、気体バルブ54が開かれる。これにより、基板Wの上面と、対向部材6の対向面6aとの間の空間に気体が供給される。
【0099】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。スピンドライ工程における基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。スピンドライ工程は、所定時間、たとえば、30秒間の間実行される。それによって、大きな遠心力が基板W上の処理膜残渣除去液に作用し、基板W上の処理膜残渣除去液が基板Wの周囲に振り切られる。スピンドライ工程では、基板Wの上面と、対向部材6の対向面6aとの間の空間への気体の供給によって処理膜残渣除去液の蒸発が促進される。
【0100】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを下位置に移動させる。気体バルブ54が閉じられる。そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置に移動させる。
搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS9)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0101】
この基板処理のスピンドライ工程では、基板W上のDIW等のリンス液が振り切られることによって、基板Wの上面が乾燥されるのではなく、基板W上のリンス液がIPA等の処理膜残渣除去液によって置換された後に、基板W上の処理液残渣除去液が振り切られることによって基板Wの上面が乾燥される。すなわち、DIWよりも表面張力が低いIPAによって置換されてからスピンドライ工程が実行されるため、基板Wの上面が乾燥される際に基板Wの上面の凹凸パターン160(
図6参照)に作用する表面張力を低減することができる。
【0102】
<基板の凹凸パターンの構成>
図6に示すように、基板処理が実行される基板Wの上面には、微細な凹凸パターン160が形成されている。凹凸パターン160は、基板Wの上面に形成された微細な凸状の構造体161と、隣接する構造体161の間に形成された凹部(溝)162とを含む。
凹凸パターン160の表面、すなわち、構造体161(凸部)および凹部162の表面は、凹凸のあるパターン面165を形成している。パターン面165は、基板Wの上面に含まれる。構造体161の表面161aは、先端面161b(頂部)および側面161cによって構成されており、凹部162の表面は、底面162a(底部)によって構成されている。構造体161が筒状である場合には、その内方に凹部が形成されることになる。
【0103】
基板Wの表層166は、基板Wにおいて、パターン面165の法線方向Nにパターン面165から約1nmまでの部分である。パターン面165の法線方向Nにパターン面165から約1nmまでの部分には、構造体161の先端面161bから基板Wの厚み方向Tに約1nmまでの部分と、凹部162の底面から厚み方向Tに約1nmまでの部分と、構造体161の側面161cから厚み方向Tに対する直交方向Dに約1nmまでの部分とが含まれる。
【0104】
構造体161は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体161は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。
凹凸パターン160は、アスペクト比が3以上の微細パターンである。凹凸パターン160のアスペクト比は、たとえば、10~50である。構造体161の幅L1は5nm~45nm程度、構造体161同士の間隔L2は5nm~数μm程度であってもよい。構造体161の高さ(パターン高さT1)は、たとえば50nm~5μm程度であってもよい。パターン高さT1は、構造体161の先端面161bと凹部162の底面162a(底部)との間の距離である。
【0105】
<処理膜の除去の詳細>
図7A~
図8Fは、前記基板処理中の基板の上面の様子を説明するための模式図である。
除去対象物が基板Wから除去されるときの基板Wの上面の様子は、基板Wの上面に存在する除去対象物の種類によって異なる。基板Wの上面に存在する除去対象物の種類は、この実施形態に係る基板処理が実行される前に基板Wの上面に施された処理の種類によって異なる。
【0106】
具体的には、この実施形態に係る基板処理の前にドライエッチングが実行された場合には、
図7Aに示すように、基板Wの表面には、基板Wの表面の少なくとも一部を覆う膜状の残渣103(除去対象膜)が生じる。つまり、この場合、膜状の残渣103が除去対象物である。一方、この実施形態に係る基板処理の前にCMPが実行された場合には、
図8Aに示すように、基板Wの表面には、球状の残渣113が生じる。つまり、この場合、球状の残渣113が除去対象物である。
【0107】
これらの除去対象物は、基板Wの上面と化学結合している。「除去対象物と基板Wの上面とが化学結合されている」とは、除去対象物を構成する分子または原子と、基板Wの表層166を構成する分子または原子とが、共有結合、イオン結合、金属結合等によって、結合されていることをいう。
まずは、
図7A~
図7Eを用いて、ドライエッチングが行われた後にこの実施形態に係る基板処理が実行された場合の基板の上面の様子を説明する。
【0108】
図7Aに示すように、処理液供給工程の開始前には、基板Wのパターン面165は、膜状の残渣103によって覆われている。この膜状の残渣103は、たとえば、CF
X(Xは1以上の自然数)で表される、フッ素原子を含む炭素系膜や、フッ素樹脂等によって形成されている。炭素系膜中のフッ素原子は、ドライエッチングに用いられるガスに起因している。膜状の残渣103は、均一な厚みの膜ではなく、筋状の溝104が形成されていたり、膜状の残渣103の厚みが部分的に薄くなるように凹部105が形成されていたりする。
【0109】
膜状の残渣103と基板Wの表層166とは、材質が異なる。そのため、処理液に含まれる溶解成分としては、基板Wの表層166を溶解させず、膜状の残渣103を溶解させるものを選択することができる。ここでは、処理液に含まれる溶解成分が、基板Wの表層166を溶解させずに、膜状の残渣103を溶解させるものである例について説明する。つまり、膜状の残渣103(除去対象物)が溶解対象物である。
【0110】
処理液と膜状の残渣103とが接触すると、処理液中の溶解成分によって、膜状の残渣103が溶解され始める。膜状の残渣103において、溝104または凹部105が形成されている部分に亀裂が生じる。処理液が、この亀裂を介して、基板Wのパターン面165に到達する。膜状の残渣103に生じた亀裂を起点として、膜状の残渣103が分裂し、
図7Bに示すように、膜状の残渣103の膜片(残渣膜片106)が形成される。パターン面165に達した処理液によって、残渣膜片106と基板Wのパターン面165のとの接触界面付近において残渣膜片106が溶解される。これにより、基板Wのパターン面165と残渣膜片106との間に隙間G1が形成され、この隙間G1に処理液が入り込む。
【0111】
図7Bでは、全ての残渣膜片106とパターン面165との間に隙間G1が形成されるように図示されている。しかしながら、全ての残渣膜片106とパターン面165との間に隙間G1が形成される必要はない。一部の残渣膜片106とパターン面165との間に隙間G1が形成されてもよい。
また、残渣膜片106とパターン面165との間に隙間G1が形成されている場合であっても、残渣膜片106は、パターン面165から完全に浮いている必要はない。すなわち、残渣膜片106とパターン面165との間に隙間G1が形成されている場合であっても、残渣膜片106とパターン面165とが接触している場合もある。
【0112】
図7Cに示すように、処理膜形成工程では、溶媒の蒸発によって処理液が固化または硬化して、処理膜100が形成される。処理膜100は、基板Wの上面と残渣膜片106との間に処理液が入り込んだ状態で形成される。そのため、形成された処理膜100は、残渣膜片106を取り囲んでおり、強固に保持している。
処理膜100は、高溶解性固体110(固体状態の高溶解性成分)と、低溶解性固体111(固体状態の低溶解性成分)と、溶解成分固体112(固体状態の溶解成分)とを含んでいる。処理膜100は、高溶解性固体110が偏在している部分と、低溶解性固体111が偏在している部分とに分けられる。溶解成分固体112は、処理膜100の全体に万遍なく形成されている。
【0113】
なお、処理膜100は、液体を含まない固体である必要はなく、一定の形状を維持できる程度に固化していれば十分である。つまり、処理膜には、液体状態の各成分(高溶解性成分、低溶解性成分および溶解成分)が含まれていてもよいし、溶媒に溶解した状態の各成分が含まれていてもよい。
処理膜100中の溶解成分は、処理液中の溶解成分よりも、膜状の残渣103を溶解させにくい。そのため、処理液が固化または硬化することによって、溶解成分による膜状の残渣103の溶解の進行が抑制される(溶解抑制工程)。
【0114】
図7Dに示すように、除去工程では、処理膜100が部分的に溶解される。基板Wの上面に除去液が供給されると、低溶解性成分よりも除去液に対して溶解し易い高溶解性成分によって形成されている高溶解性固体110が主に溶解される。つまり、高溶解性固体110が選択的に溶解される。
「高溶解性固体110が選択的に溶解される」とは、高溶解性固体110のみが溶解されるという意味ではない。「高溶解性固体110が選択的に溶解される」とは、低溶解性固体111も僅かに溶解されるが、大部分の高溶解性固体110が溶解されるという意味である。
【0115】
詳しくは、処理膜100において高溶解性固体110が偏在している部分に貫通孔107が形成される(貫通孔形成工程)。貫通孔107は、特に、パターン面165の法線方向Nに高溶解性固体110が延びている部分に形成されやすい。貫通孔107は、平面視で、たとえば、直径数nmの大きさである。
低溶解性固体111も除去液に溶解されてもよい。しかし、除去液に対する低溶解性成分の溶解性は高溶解性成分の溶解性よりも低いため、低溶解性固体111は、除去液によってその表面付近が僅かに溶解されるだけである。そのため、貫通孔107を介して基板Wの上面付近まで到達した除去液は、低溶解性固体111において基板Wの上面付近の部分を僅かに溶解させる。これにより、
図7Dの拡大図に示すように、除去液が、基板Wの上面付近の低溶解性固体111を徐々に溶解させながら、処理膜100と基板Wの上面との間の隙間G2に進入していく(除去液進入工程)。
【0116】
そして、たとえば、貫通孔107の周縁を起点として処理膜100が分裂して膜片となり、
図7Eに示すように、処理膜100の膜片が残渣膜片106(除去対象物)を保持した状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、剥離工程)。そして、残渣膜片106(除去対象物)は、処理膜100によって保持された状態で、処理膜100とともに基板W外に押し出され、基板Wの上面から除去される(除去工程)。
【0117】
なお、除去液は、低溶解性固体111を殆ど溶解させない場合もあり得る。この場合でも、処理膜100と基板Wの上面との間の僅かな隙間G2に入り込むことによって、処理膜100が基板Wから剥離される。
ドライエッチング後にこの実施形態に係る基板処理が行われる構成によれば、処理液に含まれる溶解成分によって、膜状の残渣103(除去対象物)が部分的に溶解される。そのため、処理液供給工程が実行されることによって、膜状の残渣103と基板Wの上面との間に処理液が入り込みやすい。処理膜形成工程において、膜状の残渣103と基板Wの上面との間に処理液が入り込んだ状態で処理液が固化または硬化されれば、処理膜100の一部が、膜状の残渣103と基板Wの表面との間に形成される。そのため、除去工程において、処理膜100は、残渣膜片106(除去対象物)を充分な保持力で保持しながら、除去液によって基板Wの上面から除去される。その結果、膜状の残渣103(除去対象物)を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0118】
ところで、この実施形態に係る基板処理とは異なり、溶解成分を含む溶解液(たとえば、フッ酸)を基板Wの上面に供給した後に、溶解液をリンス液で洗い流し、その後、処理膜を形成するために溶解成分を含まない処理液を基板に供給する方法では、複数の液体が基板Wの上面に順次に供給される。そのため、基板W上での液体の置換が行われる度に膜状の残渣103(除去対象物)の周囲で乱流が発生しやすい。さらに、フッ酸をリンス液で置換する際に膜状の残渣103の周囲の液体が酸性から中性に変化する。乱流の発生や液体の性質の変化によって、溶解液によって基板Wの上面から一度離れた膜状の残渣103が、処理膜100に保持される前に基板Wの上面に再付着するおそれがある。
【0119】
一方、この実施形態に係る基板処理方法であれば、溶解成分を含む処理液が基板Wの上面に供給された後、この処理液が別の液体に置換されることなく処理膜100が形成される。そのため、膜状の残渣103を部分的に溶解させた後、速やかに、処理膜100を形成することができる。したがって、基板Wの上面から残渣膜片106(除去対象物)が離れた状態を維持しながら処理膜100を形成することができる。
【0120】
さらに、基板Wの上面に溶解液を供給する工程、および基板Wの上面にリンス液を供給する工程を省略することができる。したがって、基板処理に要する時間を短縮することができる。
また、この基板処理では、処理液を固化または硬化させることによって、溶解成分による膜状の残渣103の溶解の進行が抑制される(溶解抑制工程)。そのため、溶解成分による膜状の残渣103の過剰な溶解を避けることができる。
【0121】
また、この基板処理では、処理液中の溶質が、溶解成分と、高溶解性成分と、高溶解性成分よりも除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有する。処理膜100は、高溶解性固体110、低溶解性固体111および溶解成分固体112を有する。除去工程において、処理膜100中の高溶解性固体110が除去液に選択的に溶解される。
そのため、高溶解性固体110を除去液に溶解させることによって、処理膜100と基板Wとの接触界面に除去液を作用させることができる。一方、処理膜100中の低溶解性成分は、溶解されずに固体状態で維持される。したがって、低溶解性固体111で除去対象物を保持しながら、低溶解性固体111と基板Wとの接触界面に除去液を作用させることができる。その結果、処理膜100を基板Wの上面から速やかに除去し、処理膜100とともに膜状の残渣103(除去対象物)を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0122】
この基板処理では、膜状の残渣103(除去対象物)が、基板Wの上面と化学結合している。処理膜100に保持された膜状の残渣103(除去対象物)を基板Wの上面から引き離すためには、基板Wの上面への大流量の除去液の供給等によって、除去液から膜状の残渣103に作用する物理力(運動エネルギー)を増大させる手法が考え得る。しかしながら、膜状の残渣103と基板Wの上面とが化学結合されている場合、膜状の残渣103が処理膜100によって保持されることで除去液から受ける物理力を増大させたとしても、除去液の物理力のみによって膜状の残渣103を基板Wの上面から引き離すことは困難である。
【0123】
そこで、この基板処理のように、処理液に含まれる溶解成分で膜状の残渣103を部分的に溶解させれば、膜状の残渣103と基板Wの表面との結合強度に関わらず、膜状の残渣103(残渣膜片106)を基板Wの上面から引き離すことができる。したがって、膜状の残渣103と基板Wの上面とが化学結合している場合であっても、膜状の残渣103を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0124】
また、この基板処理では、膜状の残渣103が、前記基板の上面の少なくとも一部を覆う。この基板処理とは異なり、溶解成分を有していない処理液から処理膜100を形成する場合、膜状の残渣103と基板Wのパターン面165との間に処理液が入り込みにくい。
しかしながら、この基板処理では、処理液中の溶解成分に、膜状の残渣103が部分的に溶解される。これにより、膜状の残渣103と基板Wのパターン面165との間の隙間G1が形成される。そのため、膜状の残渣103と基板Wのパターン面165との間に処理液を入り込ませることができる。
【0125】
さらに、膜状の残渣103は、処理液中の溶解成分によって、分裂される。そのため、分裂した膜片同士の間の隙間を介して、残渣膜片106と基板Wのパターン面165との間に処理液を一層効率的に入り込ませることができる。
次に、
図8A~
図8Fを用いて、CMPが行われた後にこの実施形態に係る基板処理が実行された場合の基板Wの上面の様子を説明する。
【0126】
図8Aに示すように、処理液供給工程の開始前には、基板Wのパターン面165には、たとえば、球状の残渣113が付着している。残渣113は、球状に限られず、たとえば、楕円体状等の他の形状であってもよい。
球状の残渣113は、たとえば、CMPで用いた研磨剤である。球状の残渣113の材質と基板Wの表層166の材質とが異なっていても、基板Wの表層166は、球状の残渣113と同程度に溶解成分によって溶解される。球状の残渣113の材質は、基板Wの表層166と同じ材質の場合もある。したがって、CMP後にこの基板処理を行う場合には、基板Wの表層166、および、球状の残渣113(除去対象物)が溶解対象物である。
【0127】
図8Bに示すように、処理液と基板Wのパターン面165とが接触すると、処理液中の溶解成分によって、基板Wの表層166が部分的に溶解される。球状の残渣113において表面付近の部分も、処理液との接触によって部分的に溶解される。そのため、基板Wのパターン面165と、球状の残渣113との間に隙間G3が形成され、この隙間G3に処理液が入り込む。
【0128】
図8Cに示すように、処理膜形成工程では、溶媒の蒸発によって処理液が固化または硬化して、処理膜100が形成される。基板Wのパターン面165と球状の残渣113との間の隙間G3に処理液が入り込んだ状態で処理膜100が形成される。そのため、形成された処理膜100は、球状の残渣113を取り囲んでおり、強固に保持している。
処理膜100は、高溶解性固体110(固体状態の高溶解性成分)と、低溶解性固体111(固体状態の低溶解性成分)と、溶解成分固体112(固体状態の溶解成分)とを含んでいる。処理膜100は、高溶解性固体110が偏在している部分と、低溶解性固体111が偏在している部分とに分けられる。溶解成分固体112は、処理膜100の全体に万遍なく形成されている。
【0129】
なお、処理膜100は、液体を含まない固体である必要はなく、一定の形状を維持できる程度に固化していれば十分である。つまり、処理膜には、液体状態の各成分(高溶解性成分、低溶解性成分および溶解成分)が含まれていてもよいし、溶媒に溶解した状態の各成分が含まれていてもよい。
処理膜100中の溶解成分は、処理液中の溶解成分よりも、球状の残渣113および基板Wの表層166を溶解させにくい。そのため、処理液が固化または硬化することによって、溶解成分による球状の残渣113および基板Wの表層166の溶解の進行が抑制される(溶解抑制工程)。
【0130】
処理膜100が形成された後も、処理膜100とパターン面165とは、接触している。処理膜100中には、溶媒が僅かに残っている。そのため、処理膜100中には、溶媒に溶解した溶解成分も存在している。そのため、
図8Dに示すように、処理膜100と基板Wとの接触界面付近における処理膜100中の溶解成分によって基板Wの表層166が溶解される。そのため、処理膜100と基板Wとの接触界面付近における処理膜100中の溶解成分が消費される。
【0131】
処理膜100は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理膜100中において溶解成分は拡散しにくい。したがって、処理膜100と基板Wのパターン面165との接触界面付近における処理膜100中の溶解成分の消費に伴って、処理膜100中の溶解成分による基板Wの表層166の溶解が抑制される。
処理膜100中の溶解成分による基板Wの表層166の溶解が抑制されることによって、処理膜100と基板Wのパターン面165との間に隙間G4が形成される。これにより、処理膜100とパターン面165との接触面積が低減されるので、溶解成分による基板Wの表層166の溶解の進行が抑制される。
【0132】
図8Eに示すように、除去工程では、処理膜100が部分的に溶解される。基板Wのパターン面165に除去液が供給されると、低溶解性成分よりも除去液に対して溶解し易い高溶解成分によって形成されている高溶解性固体110が主に溶解される。つまり、高溶解性固体110が選択的に溶解される。
詳しくは、処理膜100において高溶解性固体110が偏在している部分に貫通孔107が形成される(貫通孔形成工程)。貫通孔107は、特に、パターン面165の法線方向Nに高溶解性固体110が延びている部分に形成されやすい。貫通孔107は、平面視で、たとえば、直径数nmの大きさである。
【0133】
低溶解性固体111も除去液に溶解されてもよい。しかし、低溶解性固体111は、高溶解性固体110よりも除去液によって溶解されにくい。低溶解性固体111は、除去液によってそのパターン面165付近が僅かに溶解されるだけである。そのため、貫通孔107を介して基板Wのパターン面165付近まで到達した除去液は、低溶解性固体111において基板Wのパターン面165付近の部分を僅かに溶解させる。これにより、除去液が、基板Wのパターン面165付近の低溶解性固体111を徐々に溶解させながら、処理膜100と基板Wのパターン面165との間の隙間G4に進入していく(除去液進入工程)。
【0134】
そして、たとえば、貫通孔107の周縁を起点として処理膜100が分裂して膜片となり、
図8Fに示すように、処理膜100の膜片が球状の残渣113(除去対象物)を保持した状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、剥離工程)。そして、球状の残渣113は、処理膜100によって保持された状態で、処理膜100とともに基板W外に押し出され、基板Wのパターン面165から除去される(除去工程)。
【0135】
CMP後にこの実施形態に係る基板処理が行われる構成によれば、処理液に含まれる溶解成分によって、球状の残渣113(除去対象物)が部分的に溶解される。そのため、処理液供給工程が実行されることによって、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との間に処理液が入り込みやすい。処理膜形成工程において、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との間に処理液が入り込んだ状態で処理液が固化または硬化されれば、処理膜100の一部が、球状の残渣113と基板Wの表面との間に形成される。そのため、除去工程において、処理膜100は、球状の残渣113(除去対象物)を充分な保持力で保持しながら、除去液によって基板Wのパターン面165から除去される。その結果、球状の残渣113(除去対象物)を基板Wのパターン面165から効率良く除去することができる。
【0136】
ところで、この実施形態に係る基板処理とは異なり、溶解成分を含む溶解液(たとえば、フッ酸)を基板Wのパターン面165に供給した後に、溶解液をリンス液で洗い流し、その後、処理膜を形成するために溶解成分を含まない処理液を基板に供給する方法では、複数の液体が基板Wのパターン面165に順次に供給される。そのため、基板W上での液体の置換が行われる度に球状の残渣113(除去対象物)の周囲で乱流が発生しやすい。さらに、フッ酸をリンス液で置換する際に膜状の残渣103の周囲の液体が酸性から中性に変化する。乱流の発生や液体の性質の変化によって、溶解液によって基板Wのパターン面165から一度離れた球状の残渣113が、処理膜100に保持される前に基板Wのパターン面165に再付着するおそれがある。
【0137】
一方、この実施形態に係る基板処理方法であれば、溶解成分を含む処理液が基板Wのパターン面165に供給された後、この処理液が別の液体に置換されることなく処理膜100が形成される。そのため、溶解対象物を溶解させた後、速やかに、処理膜100を形成することができる。したがって、基板Wのパターン面165から球状の残渣113(除去対象物)が離れた状態を維持しながら処理膜100を形成することができる。
【0138】
さらに、基板Wの上面に溶解液を供給する工程、および基板Wの上面にリンス液を供給する工程を省略することができる。したがって、基板処理に要する時間を短縮することができる。
また、この基板処理では、処理液を固化または硬化させることによって、溶解成分による球状の残渣113の溶解の進行が抑制される(溶解抑制工程)。そのため、溶解成分による球状の残渣113の過剰な溶解を避けることができる。
【0139】
また、この基板処理では、処理液中の溶質が、溶解成分と、高溶解性成分と、高溶解性成分よりも除去液に溶解しにくい低溶解性成分とを有する。処理膜100は、高溶解性固体110、低溶解性固体111および溶解成分固体112を有する。除去工程において、処理膜100中の高溶解性固体110が除去液に選択的に溶解される。そのため、高溶解性固体110を除去液に溶解させることによって、処理膜100と基板Wとの接触界面に除去液を作用させることができる。一方、処理膜100中の低溶解性成分は、溶解されずに固体状態で維持される。したがって、低溶解性固体111で除去対象物を保持しながら、低溶解性固体111と基板Wとの接触界面に除去液を作用させることができる。その結果、処理膜100を基板Wのパターン面165から速やかに除去し、処理膜100とともに球状の残渣113(除去対象物)を基板Wのパターン面165から効率良く除去することができる。
【0140】
この基板処理では、球状の残渣113(除去対象物)が、基板Wのパターン面165と化学結合している。処理膜100に保持された球状の残渣113(除去対象物)を基板Wのパターン面165から引き離すためには、基板Wのパターン面165への大流量の除去液の供給等によって、除去液から球状の残渣113に作用する物理力(運動エネルギー)を増大させる手法が考え得る。
【0141】
しかしながら、球状の残渣113と基板Wのパターン面165とが化学結合されている場合、球状の残渣113が処理膜100によって保持されることで除去液から受ける物理力を増大させたとしても、除去液の物理力のみによって球状の残渣113を基板Wのパターン面165から引き離すことは困難である。
そこで、この基板処理のように、処理液に含まれる溶解成分で基板Wの表層166および球状の残渣113の両方を部分的に溶解させれば、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との結合強度に関わらず、球状の残渣113を基板Wのパターン面165から引き離すことができる。したがって、球状の残渣113と基板Wのパターン面165とが化学結合している場合であっても、球状の残渣113を基板Wのパターン面165から効率良く除去することができる。
【0142】
また、この基板処理では、球状の残渣113が、前記基板のパターン面165の少なくとも一部を覆う。この基板処理とは異なり、溶解成分を有していない処理液から処理膜100を形成する場合、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との間に処理液が入り込みにくい。
しかしながら、この基板処理では、処理液中の溶解成分に、球状の残渣113および基板Wのパターン面165の両方が部分的に溶解される。これにより、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との間に隙間G3が形成される。そのため、球状の残渣113と基板Wのパターン面165との間に処理液を入り込ませることができる。
【0143】
またこの基板処理では、基板Wのパターン面165に処理液が存在するときだけでなく、処理膜100が形成された後にも、処理膜100中の溶解成分によって基板Wの表層166が溶解される。そのため、処理膜100と基板Wのパターン面165との密着性を低下させることができる。これにより、処理膜形成工程後の除去工程において、基板Wのパターン面165から処理膜100を剥離し易くなる。すなわち、除去対象物(球状の残渣113)を保持した状態の処理膜100を基板Wのパターン面165から効率良く除去することができる。
【0144】
処理膜100は、処理液が固化または硬化されることによって形成されるものであるため、処理液の液膜101と比較して流動性が低い。そのため、処理膜100と基板Wのパターン面165との間に形成された隙間G4は、処理膜100によって埋められることなく維持される。そのため、処理膜形成工程後の除去工程において、処理膜100と基板Wのパターン面165との間の隙間G4に除去液が入り込みやすい。これにより、除去対象物(球状の残渣113)を保持した状態の処理膜100を基板Wのパターン面165から効率良く除去することができる。
【0145】
<処理液の詳細>
以下では、上述の実施形態に用いられる処理液中の各成分について説明する。
以下では、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
【0146】
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
<低溶解性成分>
(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む。好ましくは、(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに好ましくは、(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロスチレン、ポリカーボネート、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。ノボラックはフェノールノボラックであってもよい。
【0147】
処理液は(A)低溶解性成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。たとえば、(A)低溶解性成分はノボラックとポリヒドロキシスチレンの双方を含んでもよい。
(A)低溶解性成分は乾燥されることで膜化し、前記膜は除去液で大部分が溶解されることなく除去対象物を保持したまま剥がされることが、好適な一態様である。なお、除去液によって(A)低溶解性成分のごく一部が溶解される態様は許容される。
【0148】
好ましくは、(A)低溶解性成分はフッ素および/またはケイ素を含有せず、より好ましくは双方を含有しない。
前記共重合はランダム共重合、ブロック共重合が好ましい。
権利範囲を限定する意図はないが、(A)低溶解性成分の具体例として、下記化学式1~化学式7に示す各化合物が挙げられる。
【0149】
【0150】
【0151】
【化3】
(アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
【0152】
【化4】
(RはC
1~4アルキル等の置換基を意味する。アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
(A)低溶解性成分の重量平均分子量(Mw)は好ましくは150~500,000であり、より好ましくは300~300,000であり、さらに好ましくは500~100,000であり、よりさらに好ましくは1,000~50,000である。
(A)低溶解性成分は合成することで入手可能である。また、購入することもできる。購入する場合、例として供給先は以下が挙げられる。供給先が(A)ポリマーを合成することも可能である。
ノボラック:昭和化成(株)、旭有機材(株)、群栄化学工業(株)、住友ベークライト(株)
ポリヒドロキシスチレン:日本曹達(株)、丸善石油化学(株)、東邦化学工業(株)
ポリアクリル酸誘導体:(株)日本触媒
ポリカーボネート:シグマアルドリッチ
ポリメタクリル酸誘導体:シグマアルドリッチ
処理液の全質量と比較して、(A)低溶解性成分が0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。つまり、処理液の全質量を100質量%とし、これを基準として(A)低溶解性成分が0.1~50質量%である。すなわち、「と比較して」は「を基準として」と言い換えることが可能である。特に言及しない限り、以下においても同様である。
【0157】
溶解性は公知の方法で評価することができる。例えば、20℃~35℃(さらに好ましくは25±2℃)の条件において、フラスコに前記(A)または後述の(B)を5.0質量%アンモニア水に100ppm添加し、蓋をし、振とう器で3時間振とうすることで、(A)または(B)が溶解したかで求めることができる。振とうは攪拌であっても良い。溶解は目視で判断することもできる。溶解しなければ溶解性100ppm未満、溶解すれば溶解性100ppm以上とする。溶解性が100ppm未満は不溶または難溶、溶解性が100ppm以上は可溶とする。広義には、可溶は微溶を含む。不溶、難溶、可溶の順で溶解性が低い。狭義には、微溶は可溶よりも溶解性が低く、難溶よりも溶解性が高い。
【0158】
<高溶解性成分>
(B)高溶解性成分は(B’)クラック促進成分である。(B’)クラック促進成分は、炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基(-OH)および/またはカルボニル基(-C(=O)-)を含んでいる。(B’)クラック促進成分がポリマーである場合、構成単位の1種が1単位ごとに炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を有する。カルボニル基とは、カルボン酸(-COOH)、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、エノンが挙げられ、カルボン酸が好ましい。
【0159】
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、処理液が乾燥され基板上に処理膜を形成し、除去液が処理膜を剥離する際に(B)高溶解性成分が、処理膜が剥がれるきっかけとなる部分を生むと考えられる。このために、(B)高溶解性成分は除去液に対する溶解性が、(A)低溶解性成分よりも高いものであることが好ましい。(B’)クラック促進成分がカルボニル基としてケトンを含む態様として環形の炭化水素が挙げられる。具体例として、1,2-シクロヘキサンジオンや1,3-シクロヘキサンジオンが挙げられる。
【0160】
より具体的な態様として、(B)高溶解性成分は、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は下記化学式8を構成単位として1~6つ含んでなり(好適には1~4つ)、各構成単位が連結基(リンカー)L1で結合される化合物である。ここで、リンカーL1は、単結合であってもよいし、C1~6アルキレンであってもよい。前記C1~6アルキレンはリンカーとして構成単位を連結し、2価の基に限定されない。好ましくは2~4価である。前記C1~6アルキレンは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0161】
【0162】
Cy1はC5~30の炭化水素環であり、好ましくはフェニル、シクロヘキサンまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。好適な態様として、リンカーL1は複数のCy1を連結する。
R1はそれぞれ独立にC1~5アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルである。前記C1~5アルキルは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0163】
nb1は1、2または3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。nb1’は0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
下記化学式9は、化学式8に記載の構成単位を、リンカーL9を用いて表した化学式である。リンカーL9は単結合、メチレン、エチレン、またはプロピレンであることが好ましい。
【0164】
【0165】
権利範囲を限定する意図はないが、(B-1)の好適例として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジオール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、が挙げられる。これらは、重合や縮合によって得てもよい。
【0166】
一例として下記化学式10に示す2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールを取り上げ説明する。同化合物は(B-1)において、化学式8の構成単位を3つ有し、構成単位はリンカーL1(メチレン)で結合される。nb1=nb1’=1であり、R1はメチルである。
【0167】
【化10】
(B-2)は下記化学式11で表される。
【0168】
【0169】
R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルである。
リンカーL21およびリンカーL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はC1~5のアルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。リンカーL21およびリンカーL22は、好ましくはC2~4のアルキレン、アセチレン(C2のアルキニレン)またはフェニレンであり、より好ましくはC2~4のアルキレンまたはアセチレンであり、さらに好ましくはアセチレンである。
【0170】
nb2は0、1または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-2)の好適例として、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、が挙げられる。別の一形態として、3-ヘキシン-2,5-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノールも(B-2)の好適例として挙げられる。
【0171】
(B-3)は下記化学式12で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量 (Mw)が500~10,000のポリマーである。Mwは、好ましくは600~5,000であり、より好ましくは700~3,000である。
【0172】
【0173】
ここで、R25は-H、-CH3、または-COOHであり、好ましくは-H、または-COOHである。1つの(B-3)ポリマーが、それぞれ化学式8で表される2種以上の構成単位を含んでなることも許容される。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-3)ポリマーの好適例として、アクリル酸、マレイン酸、またはこれらの組合せの重合体が挙げられる。ポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸コポリマーがさらに好適な例である。
【0174】
共重合の場合、好適にはランダム共重合またはブロック共重合であり、より好適にはランダム共重合である。
一例として、下記化学式13に示す、マレイン酸アクリル酸コポリマーを挙げて説明する。同コポリマーは(B-3)に含まれ、化学式8で表される2種の構成単位を有し、1の構成単位においてR25は-Hであり、別の構成単位においてR25は-COOHである。
【0175】
【0176】
言うまでもないが、処理液は(B)高溶解性成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(B)高溶解性成分は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールの双方を含んでも良い。
(B)高溶解性成分は、分子量80~10,000であってもよい。高溶解性成分は、好ましくは分子量90~5000であり、より好ましくは100~3000である。(B)高溶解性成分が樹脂、重合体またはポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す。
【0177】
(B)高溶解性成分は合成しても購入しても入手することが可能である。供給先としては、シグマアルドリッチ、東京化成工業、日本触媒が挙げられる。
処理液中において、(B)高溶解性成分は、(A)低溶解性成分の質量と比較して、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%である。処理液中において、(B)高溶解性成分は、(A)低溶解性成分の質量と比較して、さらに好ましくは1~30質量%である。
【0178】
<溶媒>
(C)溶媒は有機溶媒を含むことが好ましい。(C)溶媒は揮発性を有していてもよい。揮発性を有するとは水と比較して揮発性が高いことを意味する。例えば、(C)1気圧における溶媒の沸点は、50~250℃であることが好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、50~200℃であることがより好ましく、60~170℃であることがさらに好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、70~150℃であることがよりさらに好ましい。(C)溶媒は、少量の純水を含むことも許容される。(C)溶媒に含まれる純水は、(C)溶媒全体と比較して、好ましくは30質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、よりさらに好ましくは5質量%以下である。溶媒が純水を含まない(0質量%)ことも、好適な一形態である。純水とは、好適にはDIWである。
【0179】
有機溶媒としては、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0180】
好ましい一態様として、(C)溶媒が含む有機溶媒は、IPA、PGME、PGEE、EL、PGMEA、これらのいかなる組合せから選ばれる。有機溶媒が2種の組合せである場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30である。
処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、0.1~99.9質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは75~99.5質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、さらに好ましくは80~99質量%であり、よりさらに好ましくは85~99質量%である。
【0181】
<その他の添加物>
本発明の処理液は、(D)その他の添加物をさらに含んでいてもよい。本発明の一態様として、(D)その他の添加物は、界面活性剤、酸、塩基、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、または抗真菌剤を含んでなり(好ましくは、界面活性剤)、これらのいずれの組合せを含んでいてもよい。
【0182】
本発明の一態様として、処理液中の(A)低溶解性成分の質量と比較して、(D)その他の添加物(複数の場合、その和)は、0~100質量(好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~3質量%、よりさらに好ましくは0~1質量%)である。処理液が(D)その他の添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明の態様の一つである。
<溶解成分>
(E)溶解成分は、たとえば、無機酸、有機酸または有機アルカリである。溶解成分として用いられる無機酸としては、HF、HCl、H3PO4、H2SO4等が挙げられる。溶解成分として用いられる有機酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、トリブロモ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロピオン酸、3H-テトラフルオロプロピオン酸、5H-オクタフルオロペンタン酸、7H-ドデカフルオロヘプタン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。
【0183】
溶解成分として用いられる有機酸は、上述のものには限られず、上述のカルボン酸やスルホン酸以外のフッ素化されたカルボン酸やスルホン酸であってもよい。フッ素化されたカルボン酸とは、カルボキシル基に隣接するアルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等)の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置き換えられたカルボン酸のことをいう。
【0184】
同様に、フッ素化されたスルホン酸とは、スルホ基に隣接するアルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等)の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置き換えられたスルホン酸のことをいう。
溶解成分として用いられる有機アルカリとしては、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩およびポリアミン等が挙げられる。
【0185】
<腐食防止成分>
(F)腐食防止成分としては、BTA以外にも、尿酸、カフェイン、ブテリン、アデニン、グリオキシルさん、グルコース、フルクトース、マンノース等が挙げられる。
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0186】
たとえば、上述の実施形態では、処理液に含まれる溶解成分によって、除去対象物(膜状の残渣103)が部分的に溶解される場合(
図7A~
図7Eを参照)と、処理液に含まれる溶解成分によって、除去対象物(球状の残渣113)および基板Wの表層166が部分的に溶解される場合(
図8A~
図8Fを参照)とが説明されている。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、処理液に含まれる溶解成分は、除去対象物を溶解させずに、基板Wの表層166を部分的に溶解させてもよい。
【0187】
また、上述の実施形態では、CMP後に上述の実施形態に係る基板処理を行った場合に、処理膜100が形成されると、処理膜100とパターン面165との間に、隙間G4が形成される。しかしながら、処理膜100とパターン面165との間には、分析機器で確認できるほど隙間G4が明確に形成されなくてもよく、処理膜100中の溶解成分によって、処理膜100とパターン面165との密着性が低下する程度に基板Wの表層166が溶解されればよい。
【0188】
同様に、その他の隙間G1~G3についても、分析機器で確認される分析機器で確認できるほど明確に形成されなくてもよい。すなわち、
図7Bを参照して、処理液中の溶解成分は、残渣膜片106とパターン面165との密着性が低下する程度に残渣膜片106を溶解させればよい。
図7Dを参照して、除去液は、処理膜100とパターン面165との密着性が低下する程度に低溶解性固体111を溶解させればよい。さらに、
図8Bを参照して、処理液中の溶解成分は、残渣膜片106とパターン面165との密着性が低下する程度に残渣113および基板Wの表層166を溶解させればよい。
【0189】
また、上述の実施形態では、処理液の溶質に、溶解成分、高溶解性成分および低溶解性成分が少なくとも含まれている。しかしながら、溶質として、高溶解性成分を含まず低溶解性成分および溶解成分を含む処理液を用いることもできる。この場合、処理膜100は、低溶解性固体111と溶解成分固体112とによって構成される。この場合、除去液が低溶解性固体111の一部を溶解させることによって基板Wの上面から処理膜100が除去される。
【0190】
また、薄膜化工程(ステップS3)において、処理液の液膜101が薄膜化される際に溶媒が蒸発することによって処理膜100が形成される場合がある。このような場合には、溶媒蒸発工程(ステップS4)を省略することができる。その場合、処理膜形成ユニットには、中央ノズル11および下面ノズル12が含まれず、処理膜形成ユニットは、基板回転ユニット(スピンモータ23)および中央ノズル11によって構成される。また、溶媒蒸発工程(ステップS4)において、加熱工程のみを省略することも可能であるし、気体供給工程のみを省略することも可能である。
【0191】
また、上述の基板処理では、除去工程(ステップS5)の後にリンス工程(ステップS6)が実行される。しかしながら、リンス工程を省略することも可能である。詳しくは、除去工程において基板Wに供給される除去液と、リンス工程の後に実行される処理膜残渣除去工程(ステップS7)において基板Wに供給される処理膜残渣除去液とが相溶性を有する場合には、リンス工程を実行する必要がない。
【0192】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0193】
1 :基板処理装置
9 :第1移動ノズル(処理液供給ユニット)
10 :第2移動ノズル(除去液供給ユニット)
11 :中央ノズル(処理膜形成ユニット)
23 :スピンモータ(処理膜形成ユニット)
100 :処理膜
103 :残渣(除去対象物、除去対象膜、溶解対象物)
113 :残渣(除去対象物、溶解対象物)
166 :基板の表層
W :基板