(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】合成樹脂製ボトルをブロー成形するための成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20230926BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/48
(21)【出願番号】P 2019128066
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】風間 淳史
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁
(72)【発明者】
【氏名】浅井 隼人
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-300460(JP,A)
【文献】特開2018-138330(JP,A)
【文献】特開2014-208434(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159745(WO,A1)
【文献】特開平11-170354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部、該胴部の上方に位置する口部、該胴部と該口部との間に介在する首部、及び該胴部の下方に位置する底部を有する合成樹脂製ボトルをブロー成形するための成形装置であって、
横方向に開閉動自在である少なくとも2個の胴部金型部材を含み、閉状態において該胴部の外形を規定する胴部金型と、
該底部の外形を規定する底部金型と、
横方向に開閉動自在な少なくとも2個の首部金型部材を含み、閉状態において該首部の外形に合致する空間を規定する首部金型と、
を備えた成形装置にして、
横方向に開閉動自在な少なくとも2個の首部金型支持部材を備え、該首部金型部材の各々は、夫々、該首部金型支持部材の各々に着脱自在に装着されてい
て、
該首部金型支持部材の各々には冷却手段が配設されているが、該首部金型には冷却手段は配設されていない、
ことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
該冷却手段は該首部金型支持部材に形成された冷却液流路を含む、請求項
1記載の成形装置。
【請求項3】
該胴部金型部材には温度調節手段が配設されていない、請求項1
又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
該首部金型部材と該胴部金型部材との間には断熱手段が配設されている、請求項1から
3までのいずれかに記載の成形装置。
【請求項5】
該断熱手段は該首部金型部材と該胴部金型部材との間に形成された空間を含む、請求項
4記載の成形装置。
【請求項6】
横方向に開閉動自在な少なくとも2個の胴部金型支持部材を備え、該胴部金型部材の各々は、夫々、該胴部金型支持部材の各々に着脱自在に装着されている、請求項1から
5までのいずれかに記載の成形装置。
【請求項7】
該首部金型支持部材と該胴部金型支持部材との間には断熱手段が配設されている、請求項
6記載の成形装置。
【請求項8】
該断熱手段は相互に当接する該首部金型支持部材の下面と該胴部金型支持部材の上面との少なくとも一方に形成された凹部によって規定された空間を含む、請求項
7記載の成形装置。
【請求項9】
該断熱手段は該首部金型支持部材と該胴部金型支持部材との間に介在された断熱部材を含む、請求項
7記載の成形装置。
【請求項10】
該胴部金型支持部材には温度調節手段が配設されている、請求項
6から
9までのいずれかに記載の成形装置。
【請求項11】
底部金型支持部材を備え、該底部金型は該底部金型支持部材に装着されており、該底部金型支持部材には温度調節手段が配設されている、請求項1から1
0までのいずれかに記載の成形装置。
【請求項12】
該首部金型部材の各々、該首部金型支持部材の各々、該胴部金型部材の各々、及び該胴部金型支持部材の各々は何れも横方向に相互に対向して配置され、該首部金型部材の各々、該首部金型支持部材の各々、該胴部金型部材の各々、及び該胴部金型支持部材の各々は何れも相互に離隔する方向に移動自在である、請求項6から1
0までのいずれかに記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部、この胴部の上方に位置する口部、胴部と口部との間に介在する首部、及び胴部の下方に位置する底部を有する合成樹脂製ボトルをブロー成形するための成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用ボトルとして、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から成形された合成樹脂製ボトルが広く実用に供されている。かような合成樹脂製ボトルは、当業者には周知のとおり、口部及び首部と共にブロー成形されて胴部及び底部にせしめられる有底円筒形状のブロー成形部とから構成されたプリフォーム(前成形体)を射出成形或いは圧縮成形によって形成し、次いでプリフォームのブロー成形部をブロー成形して胴部及び底部を成形することによって形成される。プリフォームのブロー成形部をブロー成形するための成形装置は、下記特許文献1に開示されているとおり、横方向に開閉動自在である2個の胴部金型部材を含み、閉状態において胴部の外形を規定する胴部金型と、底部の外形を規定する底部金型と共に、横方向に開閉動自在である2個の首部金型部材を含み、閉状態において首部の外形に合致する空間を規定する首部金型とを備えている。首部金型部材を閉じてプリフォームの首部を固定し、そして胴部金型部材を閉じ胴部金型と底部金型によってブロー成形空間を規定してプリフォームのブロー成形部をブロー成形する。
【0003】
下記特許文献1に開示されている成形装置は、更に、横方向に開閉動自在な2個の胴部金型支持部材を備え、胴部金型部材の各々は、夫々、胴部金型支持部材の各々に着脱自在に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおりの従来の成形装置においては、ブロー成形するボトルの胴部の形状を変更する場合には、首部金型及び底部金型を変更する必要なく、胴部金型支持部材に着脱自在に装着されている胴部金型部材を離脱し、変更後の胴部の形状に対応した別個の胴部金型部材を新たに胴部金型支持部材に着脱自在に装着することによって対処することができる。しかしながら、首部の形状が異なったプリフォームを使用してボトルをブロー成形することが必要な場合には、これに適切に対処することができない。この点について更に詳述すると、特に耐熱性に優れた合成樹脂製ボトルを形成する場合には、プリフォームのプリフォーム成形部は加熱することが必要であるが、プリフォームの首部はかかる部位の変形を防止する観点から適切に冷却することが重要である。然るに、従来の成形装置においては、プリフォームの首部の適切な冷却のための比較的高価な冷却手段の主要部が首部金型部材に配設されており、それ故に首部金型部材の交換に要する費用が相当高価になってしまう。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、首部の形状が異なったプリフォームを使用してボトルをブロー成形することが必要な場合にも、必要な費用を充分に抑制してこれに対処することができる、新規且つ改良された成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、首部金型に関連して横方向に開閉動自在である少なくとも2個の首部金型支持部材を配設し、横方向に開閉動自在な少なくとも2個の首部金型部材の各々を、夫々、首部金型支持部材の各々に着脱自在に装着することによって、上記主たる技術的課題を達成することを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する成形装置として、
胴部、該胴部の上方に位置する口部、該胴部と該口部との間に介在する首部、及び該胴部の下方に位置する底部を有する合成樹脂製ボトルをブロー成形するための成形装置であって、
横方向に開閉動自在である少なくとも2個の胴部金型部材を含み、閉状態において該胴部の外形を規定する胴部金型と、
該底部の外形を規定する底部金型と、
横方向に開閉動自在な少なくとも2個の首部金型部材を含み、閉状態において該首部の外形に合致する空間を規定する首部金型と、
を備えた成形装置にして、
横方向に開閉動自在な少なくとも2個の首部金型支持部材を備え、該首部金型部材の各々は、夫々、該首部金型支持部材の各々に着脱自在に装着されていて、
該首部金型支持部材の各々には冷却手段が配設されているが、該首部金型には冷却手段は配設されていない、
ことを特徴とする成形装置が提供される。
【0009】
該冷却手段は該首部金型支持部材に形成された冷却液流路を含むのが好適である。該首部金型部材と該胴部金型部材との間には断熱手段が配設されているのが好適であり、該断熱手段は該首部金型部材と該胴部金型部材との間に形成された空間を含むのが好都合である。好ましくは、胴部金型部材には温度調節手段が配設されていない。横方向に開閉動自在な少なくとも2個の胴部金型支持部材を備え、該胴部金型部材の各々は、夫々、該胴部金型支持部材の各々に着脱自在に装着されているのが好都合である。該首部金型支持部材と該胴部金型支持部材との間には断熱手段が配設されているのが好適であり、該断熱手段は相互に当接する該首部金型支持部材の下面と該胴部金型支持部材の上面との少なくとも一方に形成された凹部によって規定された空間を含む、或いは該断熱手段は該首部金型支持部材と該胴部金型支持部材との間に介在された断熱部材を含むのが望ましい。該胴部金型支持部材には温度調節手段が配設されているのが好都合である。底部金型支持部材を備え、該底部金型は該底部金型支持部材に装着されており、該底部金型支持部材には温度調節手段が配設されているのが好都合である。好適には、該首部金型部材の各々、該首部金型支持部材の各々、該胴部金型部材の各々、及び胴部金型支持部材の各々は何れも横方向に相互に対向して配置され、該首部金型部材の各々、該首部金型支持部材の各々、該胴部金型部材の各々、及び胴部金型支持部材の各々は何れも相互に離隔する方向に移動自在である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って構成された成形装置において、首部の形状が異なったプリフォームを使用してボトルを成形することが必要になった場合には、首部金型支持部材に装着されている首部金型部材を離脱し、首部の形状が異なったプリフォームに対応して首部金型部材を首部金型支持部材に装着することによって、必要費用を充分に抑制して適切に対処することができる。首部の冷却は、冷却手段の少なくとも主要部を首部金型ではなく首部金型支持部材に配設し、そしてまた首部金型と胴部金型との間に適宜の断熱手段を配設することによって、所要とおりに遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の成形装置によって成形されるボトルの典型例の正面図。
【
図2】本発明に従って構成された成形装置の好適実施形態の閉状態の平面図。
【
図5】
図2に示す成形装置の胴部金型部材を単体で示す図。
【
図6】
図2に示す成形装置の胴部金型支持部材を単体で示す図。
【
図7】
図2に示す成形装置の首部金型部材を単体で示す図。
【
図8】
図2に示す成形装置の首部金型支持部材を単体で示す図。
【
図9】
図3においてCで示される部分の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された成形装置の好適実施形態について、更に詳述する。
【0013】
図1は、本発明の成形装置によって、成形されるボトルの典型例を示している。全体を符号102で示すボトルは、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂からなるプリフォームをブロー成形することによって形成され、胴部104、この胴部104の上方に位置する口部106、胴部104と口部106との間に介在する首部108、及び胴部104の下方に位置する底部110を有する。胴部104の主部は円筒形状であるが、上端部は円錐台形状にせしめられている。口部106は円筒形状であって、その外周面には雄螺条112が形成されている。底部110の縦断面は上方に向かって膨出した形状であり、底部110の下面114も上方に膨出している。
【0014】
図2乃至
図4は、本発明の成形装置の好適実施形態を示し、全体を符号2で示す成形装置は、閉状態においてボトル102の胴部104の外形を規定する胴部金型4と、ボトル102の底部110の外形を規定する底部金型6と、閉状態においてボトル102の首部108の外形に合致する空間を規定する首部金型8とを備えている。
【0015】
図3を参照して説明すると、胴部金型4は横方向に相互に対向する2個の胴部金型部材10を含んでいる。
図3と共に
図5を参照して説明すると、胴部金型部材10は上下方向に長くその横断面は周方向に180度の角度範囲に亘って延在する円弧形状である。胴部金型部材10の内周面には、ボトル102の胴部104を成形するための所要形状を備えた胴部成形内面18が設けられている。胴部金型部材10の上端部には実質上水平な肩面20が形成されており、胴部金型部材10は、肩面20より下方に位置し実質上垂直に上下方向に延びる円筒形状部22と、肩面20よりも上方に位置する円錐台形状部24とを含んでいる。円筒形状部22の外周面の上端部には、実質上水平に周方向に延在する係合溝26が形成されている。係合溝26の断面は矩形である。なお、胴部金型4には、何らの温度調節手段も配設されていない。
【0016】
図3を参照して説明すると、成形装置2は2個の胴部金型部材10の各々が装着される2個の胴部金型支持部材28を備えている。2個の胴部金型支持部材28の各々も横方向に相互に対向する。
図3と共に
図6を参照して説明すると、胴部金型支持部材28は上下方向に長く、その横断面は周方向に180度の角度範囲に亘って延在する円弧形状であって、内周面の曲率は胴部金型部材10の外周面の曲率と対応する(
図4も参照されたい)。胴部金型支持部材28の内周面の上端部には、径方向内方に突出する係合突条30が実質上水平に周方向に延在している。係合突条30の断面は矩形であって、これは胴部金型部材10に形成された係合溝26の断面と対応する。胴部金型支持部材28には、上下方
向に実質上垂直に延びて上下方向に貫通する断面円形の貫通穴38が、周方向に等角度間隔をおいて4個形成されている。夫々の貫通穴38には温度調節手段40が配設される(
図3を参照されたい)。図示の実施形態においては、温度調節手段40は電熱式ヒーターである。所望ならば、温度調節手段40は、温度調節された液体を循環させるようにしてもよい。明確に理解できるよう、
図3では
温度調節手段40に薄墨を付している。
【0017】
図3を参照して説明すると、詳細な図面は省略するが、底部金型6は上方に向かって突出した略円錐台形状であって、ボトル102の下面114と対応した形状の底部成形上面46を備えている。
【0018】
成形装置2は底部金型6が装着される底部金型支持部材48を備えている。底部金型支持部材48は上下方向に長い柱状であって、底部金型6は底部金型支持部材48の上面において適宜の固定手段によって固定されている。底部金型支持部材48には温度調節手段が配設されている。温度調節手段は底部金型支持部材48の内部に設けられた液流路50を含んでいる。
【0019】
図2及び
図3を参照して説明すると、首部金型8は横方向に相互に対向する2個の首部金型部材52を含んでいる。首部金型部材52は熱伝導性の良好な部材から形成されるのが好ましい。
図2及び
図3と共に
図7を参照して説明すると、首部金型部材52は周方向に180度の角度範囲に亘って延在する円弧形状である。首部金型部材52の径方向中央の上側部分には、ボトル102の首部108の外径に合致するための所要形状を備えた首部支持内面54が設けられている。首部金型部材52の下面には、半円形状の空間部56が設けられている。首部金型部材52の外周面の下端部には、径方向外方に突出する係止突条58が周方向に延在している。
【0020】
本発明の成形装置にあっては、少なくとも2個の首部金型支持部材62を備え、首部金型部材52の各々は、夫々、首部金型支持部材62の各々に着脱自在に装着されていることが重要である。
図2及び
図3に示すとおり、図示の実施形態においては、首部金型支持部材62は横方向に相互に対向して2個設けられている。
図2及び
図3と共に
図8を参照して説明すると、首部金型支持部材62は周方向に180度の角度範囲に亘って延在する円弧形状であって、内周面の曲率は首部金型部材52の外周面の曲率と対応する(
図2を参照されたい)。首部金型支持部材62の上端部の径方向内周面には、実質上水平に周方向に延在する係止溝64が形成されている。係止溝64は首部金型部材52の外周面の形状と対応する。首部金型支持部材62の下面の中央部分には、空間部66が設けられている。空間部66は下方に位置する半円形状部分66aとこの部分の上方に位置する円錐台形状部分66bとからなる。首部金型支持部材62の下面の外周縁部には、円弧状の凹部68が3個形成されている。
図8の(a)平面図を参照することによって理解されるとおり、首部金型支持部材62には、冷却液流路70を含む冷却手段が配設されている。首部金型支持部材62の外周面には周方向に隣接して入口72及び出口74が設けられており(
図8(d)背面図を参照されたい)、冷却液流路70は、入口72から直径方向反対側に向かって係止溝64に近接して進んだ後に反転し、直径方向片側に向かって係止溝64から離隔して進んで出口74に到達する。
【0021】
図2乃至
図4を参照して、上述した各構成部品の組み立てについて説明する。胴部金型支持部材28と胴部金型部材10とは、胴部金型支持部材28の係合突条30が胴部金型4の係合溝26に嵌り込むことで位置合わせされ、図示しない固定手段により着脱自在に装着される。胴部金型支持部材28に胴部金型部材10が装着されると、胴部金型支持部材28の内周面は胴部金型部材10の外周面と密着する。一方、首部金型支持部材62と首部金型部材52とは、首部金型支持部材62の
係止溝64と首部金型部材52の
係止突条58との係合によって位置合わせされ、図示しない固定手段により着脱自在に装着され
る。首部金型支持部材62に首部金型部材52が装着されると、首部金型部材52の外周面が首部金型支持部材62の内周面と密着する。そして、首部金型8及び首部金型支持部材62は胴部金型部材10及び胴部金型支持部材28の上面に載置され、胴部金型支持部材28と首部金型支持部材62とがボルトの如き図示しない締結手段により締結される。かくすると、2個の胴部金型部材10の各々の胴部成形内面18が対向すると共に、2個の首部金型部材52の各々の首部支持内面54が対向し、底部金型6は相互に対向する2個の胴部金型部材10の間に配置される。
【0022】
図9を参照して更に説明を続ける。上述したとおりに各構成部品が組み立てられると、首部金型部材52と胴部金型部材10との間には空間76が形成される。つまり、首部金型部材52と胴部金型部材10とは離隔し(胴部金型部材10の円錐台形状部24の上端面と首部金型部材52の下面との間にも僅かな隙間が存在する)、空間76は首部金型部材52と胴部金型部材10との間の断熱手段を構成する。空間76は胴部金型部材10と首部金型支持部材62との間にも延出している。従って、胴部金型部材10と首部金型支持部材62とは離隔し、空間76は胴部金型部材10と首部金型支持部材62との間の断熱手段をも構成している。図示の実施形態においてはさらに、相互に当接する首部金型支持部材62(さらに詳しくはその外周縁部)の下面及び胴部金型支持部材28の上面には凹部68が形成されていることに起因して、首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28との間にも番号78で示される空間が形成されている。かかる空間78は首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28との間の断熱手段を構成する。
【0023】
上述したとおりに組み合わされた各構成部品は、胴部金型部材10、胴部金型支持部材28、首部金型部材52、及び首部金型支持部材62が一体となって、
図2乃至
図4に示す閉状態と、
図10に示す開状態との間を図示しない駆動手段によって横方向に開閉動自在となる。つまり、胴部金型部材10、胴部金型支持部材28、首部金型部材52、及び首部金型支持部材62は何れも横方向に開閉動自在である。図示の実施形態においては、胴部金型部材10の各々、胴部金型支持部材28の各々、首部金型部材52の各々、及び首部金型支持部材62の各々は何れも相互に離隔する方向に移動するが、所望ならば、共通の旋回軸の周りを相互に反対方向に旋回するようにしてもよい。
【0024】
図3に戻って説明を続けると、首部金型支持部材62に配設された冷却液流路70には入口72及び出口74を介して循環式冷却液供給装置80に接続され、冷却液流路70には冷却液が供給される。これにより、首部金型部材52が首部金型支持部材62を介して冷却液流路70によって冷却される。一方、底部金型支持部材48に配設された液流路50は循環式温度調整液供給装置82に接続され、液流路50には温度調節された液体が供給される。これにより、底部金型6が底部金型支持部材48を介して
液流路50によって温度調節される。更に、胴部金型支持部材28の貫通穴38に配設された温度調節手段40(図示の実施形態においては電熱式ヒーター)は電源84に接続されて温度調節される。これにより、胴部金型部材10は胴部金型支持部材28を介して温度調節手段40によって温度調節される。図示の実施形態においては、首部金型部材52と胴部金型部材10との間には断熱手段(空間76)が存在すると共に、首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28との間にも断熱手段(空間78)が存在することに起因して、胴部金型支持部材28に配設された温度調節手段40(及び底部金型支持部材48に配設された液流路50)から首部金型支持部材62への熱の伝達は充分抑制され、首部金型支持部材62が温度調節手段40(及び液流路50)によって加熱されてしまうことが防止される。
【0025】
次に、図示の実施形態の成形装置を用いて耐熱ボトルを成形する工程について説明する。
先ず、成形するボトルの外形に応じて適当な胴部成形内面を備えた胴部金型部材10を準備し、かかる胴部金型部材10を胴部金型支持部材28に装着する。同様に、成形するボトルの首部の形状に応じて適当な首部支持内面を備えた首部金型部材52を準備し、かかる首部金型部材52を首部金型支持部材62に装着する。そして、各構成部品を上述したとおりに組み合わせて成形装置2を構成する。次いで、成形装置2を開状態にしてブロー成形部が加熱されたプリフォームをセットした後に閉状態にしてプリフォームの首部を固定する。その後に、胴部金型4と底部金型6によって規定されるブロー成形空間(つまり胴部成形内面18及び底部成形上面46によって規定される空間)においてプリフォームのブロー成形部をブロー成形することで、ボトル102が成形される。このとき、胴部成形内面18及び底部成形上面46が加熱されていることに起因してプリフォームの成形部(つまり成形されたボトル102の胴部104の外面及び底部110の下面114)は加熱される。これにより、耐熱性に優れたボトルが形成されることとなる。一方、首部支持内面54が冷却されていることに起因してプリフォームの首部は冷却される。これにより、成形されたボトルの首部108及びその周辺が変形してしまうことが防止される。上述したとおり、図示の実施形態においては、首部金型部材52と胴部金型部材10との間には断熱手段(空間76)が存在すると共に、首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28との間にも断熱手段(空間78)が存在することに起因して、温度調節手段40(及び液流路50)から首部金型支持部材62への熱の伝達は充分抑制され、首部金型支持部材62が温度調節手段40(及び液流路50)によって加熱されてしまうことは防止される。かくして成形されたボトル102は、成形装置2を閉状態から開状態にすることで成形装置2から取り出される。
【0026】
本発明に従って構成された成形装置において、首部の形状が異なったプリフォームを使用してボトルを成形することが必要になった場合には、首部金型支持部材62に装着されている首部金型部材52を離脱し、首部の形状が異なったプリフォームに対応して首部金型部材を首部金型支持部材62に装着することによって、必要費用を充分に抑制して適切に対処することができる。首部の冷却は、冷却手段の少なくとも主要部を首部金型8ではなく首部金型支持部材62に配設し、そしてまた首部金型8と胴部金型4との間に適宜の断熱手段(空間76)を配設することによって、所要とおりに遂行することができる。
【0027】
以上、本発明の成形装置について添付した図面を参照して詳述したが、本発明の成形装置は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形例が考えられる。例えば、図示の実施形態においては、首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28との間の断熱手段は、相互に当接する首部金型支持部材62の下面に形成された凹部68により規定される空間78によって構成されていたが、これに替えて、首部金型支持部材62と胴部金型支持部材28の間に適宜の断熱部材を介在させるようにしてもよい。また、上記凹部68は首部金型支持部材62の下面に設けられていたが、これに替えて、又はこれと共に胴部金型支持部材28の上面に設けるようにしてもよい。さらに、図示の実施形態においては、ボトル及び成形装置の外形は共に断面円形であったが、所望ならばこれらは角形であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
2:成形装置
4:胴部金型
6:底部金型
8:首部金型
10:胴部金型部材
28:胴部金型支持部材
48:底部金型支持部材
52:首部金型部材
62:首部金型支持部材
76:断熱手段(空間)
78:断熱手段(空間)