(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】天井構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
E04B9/22 C
E04B9/22 E
(21)【出願番号】P 2019144327
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 正道
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023786(JP,A)
【文献】実開昭58-041833(JP,U)
【文献】実開昭51-137907(JP,U)
【文献】実開平01-171826(JP,U)
【文献】特開昭53-082020(JP,A)
【文献】特開平01-021162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材と、前記下地材の下側に固定される天井板と、を有する天井構造において、
前記天井板は、上側に開口し前記下地材が嵌合する溝部を有し、
前記溝部の両側面は、下側から上側に向かって互いに近接する側
に向かって傾斜する傾斜面であり、
前記下地材は、前記溝部に嵌合し、前記溝部の両側面と面接触する一対の下地材側面を備える溝部嵌合下地材を有し、
前記一対の下地材側面は、下側から上側に向かって互いに近接する側に向かって傾斜する傾斜面であ
り、
前記下地材は、野縁に固定されており、
前記下地材と前記野縁とは、ボルトおよびナットを用いて固定されていることを特徴とする天井構造。
【請求項2】
前記天井板は、前記溝部嵌合下地材を前記溝部が延びる方向から前記溝部に挿入させて前記溝部嵌合下地材と嵌合することを特徴とする請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記天井板は、前記溝部が延びる方向に複数配列されて、
配列された複数の前記天井板それぞれの前記溝部は、前記溝部が延びる方向に連続して配列され、同一の前記溝部嵌合下地材が嵌合していることを特徴とする請求項1または2に記載の天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井や軒天の仕上げ材として木製の天井板を設ける場合、天井板は野縁などの下地材の下側に隠釘やネジなどの固定具で固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木製の天井板を施工してから長期間が経過すると、天井板に乾燥収縮や経年劣化が生じるとともに、天井板を下地材に固定する固定具にも劣化が生じるため、天井板が下地材から落下しないように対策が必要となる。
特に、屋外の軒天などの場合、屋内の天井と比べて雨風にあたり、天井板や固定具の劣化が早くなるため、天井板の落下防止対策がより一層必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、天井板の経年劣化にほとんど影響することなく、天井板が下地材から落下することを防止できる天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る天井構造は、下地材と、前記下地材の下側に固定される天井板と、を有する天井構造において、前記天井板は、上側に開口し前記下地材が嵌合する溝部を有し、前記溝部の両側面は、下側から上側に向かって互いに近接する側に向かって傾斜する傾斜面であり、前記下地材は、前記溝部に嵌合し、前記溝部の両側面と面接触する一対の下地材側面を備える溝部嵌合下地材を有し、前記一対の下地材側面は、下側から上側に向かって互いに近接する側に向かって傾斜する傾斜面であり、前記下地材は、野縁に固定されており、前記下地材と前記野縁とは、ボルトおよびナットを用いて固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、天井板の溝部の両側面が、下側から上側に向かって互いに近接する側向かって傾斜する傾斜面である。これにより、天井板の溝部に溝部嵌合下地材が嵌合すると、天井板が溝部嵌合下地材に対して上側から引っかかった状態となり、天井板の溝部の両側面が溝部嵌合下地材の下地材側面と当接するため、天井板が下地材から落下することを防止できる。
また、軒天などの屋外の天井構造の場合、溝部嵌合下地材と天井板とが嵌合している部分は、直接雨風が当たらないため、雨風が当たることによる経年劣化が少ない。
【0008】
また、本発明に係る天井構造では、前記天井板は、前記溝部嵌合下地材を前記溝部が延びる方向から前記溝部に挿入させて前記溝部嵌合下地材と嵌合していてもよい。
このような構成とすることにより、溝部嵌合下地材に対して天井板を容易に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明に係る天井構造では、前記天井板は、前記溝部が延びる方向に複数配列されて、配列された複数の前記天井板それぞれの前記溝部は、前記溝部が延びる方向に連続して配列され、同一の前記溝部嵌合下地材が嵌合していてもよい。
このような構成とすることにより、同一の溝部嵌合下地材に対して複数の天井板を固定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井板の経年劣化にほとんど影響することなく、天井板が下地材から落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による天井構造の一例を示す断面図で、
図2のA-A線断面に対応する図である。
【
図2】本発明の実施形態による天井構造の一例を示す断面図で、
図1のB-B線断面に対応する図である。
【
図3】天井板が下地材に固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による天井構造1について、
図1-
図3に基づいて説明する。
図1および
図2に示す本実施形態による天井構造1は、建物の外部の軒天の構造で、仕上げ材に木製の天井板2が使用されている。
本実施形態では、軒天の仕上げ面は、略水平面となっている。
天井構造1は、建物の躯体に固定された吊り材3(
図1参照)と、吊り材3に支持された下地材4と、下地材4の下側に固定された天井板2と、を有している。
下地材4は、吊り材3の下端部に固定された野縁受け41と、野縁受け41の下側に固定された野縁42と、野縁42の下側に固定された溝部嵌合下地材5と、溝部嵌合下地材5の側方で野縁42の下側に固定されたベニヤ板43と、を有している。
【0013】
吊り材3は、例えば、吊りボルトなどの長尺の部材で、鉛直方向に延びる向きに配置されている。吊り材3は、複数設けられていて、それぞれの下端部に野縁受け41が固定されている。
野縁受け41は、例えば、チャンネル材などの長尺の部材で、水平方向に延びる向きに配置されている。野縁受け41は、複数設けられていて、それぞれ同じ方向に延びる向きに配置されている。野縁受け41が延びる水平方向(
図1の紙面に直交する方向、
図2の左右方向)を第1水平方向とし、第1水平方向に直交する水平方向(
図1の左右方向、
図2の紙面に直交する方向)を第2水平方向とする。
複数の野縁受け41は、第2水平方向に間隔をあけて配列されている。
【0014】
野縁42は、例えばMバーなどの長尺の部材で、第2水平方向に延びる向きに配置されている。野縁42は、複数設けられていて、それぞれ同じ方向に延びる向きに配置されている。複数の野縁42は、第1水平方向に間隔をあけて配列されている。
ベニヤ板43は、板面が水平面となる向きで野縁42に下側から固定されている。
【0015】
溝部嵌合下地材5は、長尺の木製の部材で、第1水平方向に延びる向きで野縁42の下側に固定されている。ベニヤ板43は、溝部嵌合下地材5と干渉しないように溝部嵌合下地材5に隣接して設けられている。溝部嵌合下地材5は、ネジなどの固定具57で野縁42に固定されている。
溝部嵌合下地材5は、複数設けられていて、それぞれ同じ方向に延びる向きに配置されている。複数の溝部嵌合下地材5は、第2水平方向に間隔をあけて配列されている。以下の溝部嵌合下地材5の説明では、溝部嵌合下地材5が野縁42に固定された姿勢であるものとする。
【0016】
図1に示すように、溝部嵌合下地材5は、長さ方向(第1水平方向)に直交する断面形状が台形となっている。溝部嵌合下地材5の断面形状の台形は、幅方向(第2水平方向)に対称で、上辺5aよりも下辺5bが長い台形となっている。
溝部嵌合下地材5は、上面51および下面52が略水平面となり、第2水平方向の両側の面53,54(側面)が下側から上側に向かって互いに近接するように傾斜している。
溝部嵌合下地材5における第2水平方向の一方側の側面53を第1下地材側面53(下地材側面)とし、第2水平方向の他方側の側面54を第2下地材側面54(下地材側面)とする。
第1下地材側面53は、下側から上側に向かって漸次第2水平方向の他方側に向かうように傾斜している。第2下地材側面54は、下側から上側に向かって漸次第2水平方向の一方側に向かうように傾斜している。すなわち、第1下地材側面53および第2下地材側面54は、それぞれ下側から上側に向かって互いに近接する方向に向かって傾斜している。
【0017】
図1、
図2に示すように、天井板2は、平板状の長尺の木製の部材で、板面が水平面となり第2水平方向に延びる向きで溝部嵌合下地材5の下側に固定されている。
天井板2は、複数設けられていて、それぞれ同じ向きに配置されている。複数の天井板2は、第1水平方向に隙間なく配列されている。以下の天井板2の説明では、天井板2が溝部嵌合下地材5に固定された姿勢であるものとする。
【0018】
天井板2は、長さ方向(第2水平方向)の中間部に、上側に開口し、幅方向(第1水平方向)に延びる溝部21が形成されている。本実施形態では、「溝部が延びる方向」は、第1水平方向となっている。
溝部21は、底面22が水平面となり、第2水平方向の両側の面(側面)23,24が下側から上側に向かって互いに近接するように傾斜している。
溝部21の側面23,24のうち、第2水平方向の一方側に位置する側面23を第1溝部側面23とし、第2水平方向の他方側に位置する側面24を第2溝部側面24とする。
【0019】
第1溝部側面23は、下側から上側に向かって漸次第2水平方向の他方側に向かうように傾斜している。第2溝部側面24は、下側から上側に向かって漸次第2水平方向の一方側に向かうように傾斜している。すなわち、第1溝部側面23および第2溝部側面24は、それぞれ下側から上側に向かって互いに近接する方向に向かって傾斜している。
溝部21の断面形状は、溝部嵌合下地材5の断面形状の下部側(以下、溝部嵌合下地材下部55とする)に対応している。溝部21には、溝部嵌合下地材下部55が嵌合するように構成されている。
【0020】
図1、
図3に示すように、溝部21の底面22の幅方向(第1水平方向)の寸法、すなわち、第1溝部側面23の下端部23aと第2溝部側面24の下端部24aとの間隔は、溝部嵌合下地材5の下端部の幅方向(第1水平方向)の寸法と略同じ値となっている。
溝部21の上端部21aの幅方向(第1水平方向)の寸法、すなわち、第1溝部側面23の上端部23bと第2溝部側面24の上端部24bとの間隔は、溝部嵌合下地材5の下面52の幅方向(第1水平方向)の寸法よりも小さい値となっている。
これにより、溝部21に対して溝部嵌合下地材5を上側から挿入できないため、溝部嵌合下地材5と天井板2の溝部21とを嵌合させる際には、溝部21に対して溝部嵌合下地材5を第1水平方向から挿入するように構成されている。
【0021】
溝部21に溝部嵌合下地材5が挿入されると、第1溝部側面23が第1下地材側面53に斜め上側から面接触し、第2溝部側面24が第2下地材側面54に斜め上側から面接触する。これにより、天井板2は、溝部嵌合下地材5に物理的に引っ掛かった状態となり、溝部嵌合下地材5から落下することが防止される。
溝部21は、1つの天井板2に対して第2水平方向(長さ方向)に間隔をあけて複数設けられている。
複数配列された天井板2それぞれの溝部21は、第1水平方向に連続するように配列されている。このように配列された複数の天井板2それぞれの溝部21には、同一の溝部嵌合下地材5が嵌合可能となっている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、天井板2の幅方向の一方側の側面25には、長さ方向に延びて幅方向の一方側に凹んだ凹条部251が形成されている。天井板2の幅方向の他方側の側面26には、長さ方向に延びて、幅方向の一方側に突出する凸条部261が形成されている。複数の天井板2が第1水平方向に隣接して配列されると、第1水平方向の他方側に位置する天井板2の凹条部251に第1水平方向の一方側に位置する天井板2の凸条部261が挿入されて嵌合するように構成されている。これにより、複数の天井板2の位置合わせが容易で、複数の天井板2を隙間なく配列することができる。なお、天井板2には、凹条部251および凸条部261が形成されていなくてもよい。
【0023】
ベニヤ板43は、溝部嵌合下地材5における溝部嵌合下地材下部55よりも上側となる溝部嵌合下地材上部56の第2水平方向の側方に位置している。ベニヤ板43は、上面が野縁42と接触した状態でネジなどの固定具(不図示)で野縁42に固定されている。ベニヤ板43の下面は、溝部嵌合下地材下部55と溝部嵌合下地材上部56との境界の高さに位置し、天井板2の上面が面接触するように構成されている。
天井板2は、溝部嵌合下地材5に嵌合した状態で、隠釘やネジなどの固定具(不図示)でベニヤ板43に固定されている。
【0024】
次に、本実施形態による天井構造1の施工方法について説明する。
まず、下地材4の吊り材3、野縁受け41、および野縁42を設置する。
続いて、野縁42の下側に溝部嵌合下地材5を設置する。
溝部嵌合下地材5は、ネジなどの固定具57で野縁42に固定する。本実施形態では、溝部嵌合下地材5の下面に、溝部嵌合下地材5を下側から貫通するネジの頭部が配置される凹部が形成されている。溝部嵌合下地材5を貫通したネジは、野縁42に下側から挿通させ、野縁42の内部または上部においてナットを締結する。
【0025】
溝部嵌合下地材5の側方にベニヤ板43を設置する。
ベニヤ板43を隣り合う溝部嵌合下地材5の間に設置し、野縁42にネジなどの固定具で固定する。ベニヤ板43の端面は鉛直面となるため、溝部嵌合下地材5の第1下地材側面53および第2下地材側面54との間には隙間が形成される。
【0026】
溝部嵌合下地材5に天井板2を取り付ける。
天井板2を溝部嵌合下地材5に対して第1水平方向から移動させて、天井板2の溝部21に溝部嵌合下地材下部55を挿入する。これにより、天井板2の溝部21に溝部嵌合下地材下部55が嵌合し、天井板2が溝部嵌合下地材5に引っ掛かった状態となる。
天井板2を隠釘やネジなどの固定具でベニヤ板43に固定する。
このようにして、本実施形態による天井構造1が施工される。
【0027】
次に、上述した本実施形態による天井構造1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による天井構造1では、天井板2の溝部21の第1溝部側面23および第2溝部側面24が、下側から上側に向かって互いに近接する側向かって傾斜する傾斜面である。これにより、天井板2の溝部21に溝部嵌合下地材5が嵌合すると、天井板2が溝部嵌合下地材5に対して上側から引っかかった状態となり、天井板2の溝部21の第1溝部側面23および第2溝部側面24が溝部嵌合下地材5の第1下地材側面53または第2下地材側面54と当接するため、天井板2が下地材4から落下することを防止できる。
また、溝部嵌合下地材5と天井板2とが嵌合している部分は、直接雨風が当たらないため、雨風が当たることによる経年劣化が少ない。
【0028】
また、本実施形態による天井構造1では、天井板2を溝部嵌合下地材5に対して第1水平方向から移動させて、天井板2の溝部21に溝部嵌合下地材下部55を挿入して、天井板2と溝部嵌合下地材5とを嵌合させている。
このような構成とすることにより、下地材4に対して天井板2を容易に取り付けることができる。
【0029】
また、本実施形態による天井構造1では、天井板2は、第1水平方向に複数配列されて、配列された複数の天井板2それぞれの溝部21は、第1水平方向に連続して配列され、同一の溝部嵌合下地材5が嵌合するように構成されている。
このような構成とすることにより、同一の溝部嵌合下地材5に対して複数の天井板2を固定することができる。
【0030】
以上、本発明による天井構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、本発明の天井構造1を屋外の軒天の構造に採用しているが、屋内の天井の構造に採用してもよい。
また、上記の実施形態では、天井板2を溝部嵌合下地材5の下部側の溝部嵌合下地材下部55と嵌合させるように構成されているが、溝部嵌合下地材下部55のみでなく全体と嵌合させるように構成されていてもよい。
【0031】
また、上記の実施形態では、天井板2の溝部21に、野縁42の下側に固定された溝部嵌合下地材5を嵌合させ、天井板2を溝部嵌合下地材5に固定するように構成されている。これに対し、天井板2の溝部21に、野縁42を嵌合させ、天井板2を野縁42に固定してもよい。
また、上記の実施形態では、天井板2は、第1水平方向に複数配列されて、配列された複数の天井板2それぞれの溝部21は、第1水平方向に連続して配列され、同一の溝部嵌合下地材5が嵌合するように構成されている。これに対し、配列された複数の天井板2それぞれの溝部21が連続せず、1つの溝部嵌合下地材5に対して1つの天井板2が嵌合するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 天井構造
2 天井板
4 下地材
5 溝部嵌合下地材
21 溝部
23 第1溝部側面(側面)
24 第2溝部側面(側面)
53 第1下地材側面(下地材側面)
54 第2下地材側面(下地材側面)