(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】燃料電池用ガスケット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0284 20160101AFI20230926BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20230926BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20230926BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230926BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230926BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20230926BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230926BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230926BHJP
【FI】
H01M8/0284
C08K3/011
C08K3/11
C08K5/5415
C08L23/08
C08L101/02
F16J15/10 H
F16J15/10 Y
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2019146672
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達弥
(72)【発明者】
【氏名】猪股 清秀
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵弘
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124223(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122495(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/129168(WO,A1)
【文献】特開2015-134937(JP,A)
【文献】特開2005-255857(JP,A)
【文献】特開2009-040827(JP,A)
【文献】国際公開第2009/020040(WO,A1)
【文献】特開2017-014499(JP,A)
【文献】特開2013-226744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0271-8/0286
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端二重結合を有する共重合体、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、反応抑制剤、およびブローンアスファルトからなる共重合体組成物を含
み、
末端二重結合を有する前記共重合体が、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、
下記(i)~(v)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体であり、
前記共重合体組成物が、末端二重結合を有する前記共重合体、該共重合体100質量部に対して、ヒドロシリル基含有化合物を0.1~100質量部、白金系触媒を0.1~100000重量ppm、反応抑制剤を0.05~5質量部、およびブローンアスファルトを1~50質量部含むことを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40… 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(
ω
=0.1)
(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(
ω
=100)
(Pa・sec)との比P(η
*
(
ω
=0.1)
/η
*
(
ω
=100)
)と、極限粘度[η]と、上記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9
)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C
)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C
≦1-0.07×Ln(Mw) … 式(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工時には、ミキシングロールへの粘着性が極めて良好で、且つ架橋して得られる架橋体の粘着性は低減されている共重合体組成物を用いてなる燃料電池ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(以下、EPDMと略す場合がある)をヒドロシリコーン架橋して得られる共重合体組成物(特許文献1)は、イオウ加硫や過酸化物架橋と比較して機械的強度、耐熱老化性、圧縮永久歪み、ブルーム性に優れ、連続架橋が可能であることなどの特徴を有し、パッキン、ガスケット等シール部品への応用が期待される。
【0003】
EPDMからなる共重合体組成物は、EPDMにさまざまな架橋剤、触媒、充填剤、配合剤を段階的に加えながら所定の温度条件下で段階的に混練して得られる。当該組成物を調整する際には、ミキシングロールが使用されるが、ヒドロシリコーン架橋に用いるヒドロシリル基含有化合物は、滑剤のようにも機能するので、ロール加工時のバキングを誘発する場合がある。
【0004】
ロール加工時のバキングの誘発を防ぐ方法としては、粘着付与剤を添加する方法があるが、粘着付与剤によってはヒドロシリコーン架橋で使用する白金触媒を被毒し、共重合体組成物の架橋反応を阻害する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、燃料電池用ガスケットの成形加工時にはミキシングロールへの粘着性が極めて良好で、且つ、組成物の架橋反応を阻害せず、しかも、得られる燃料電池用ガスケットの粘着性は過度でない燃料電池用ガスケットを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、種々検討した結果、ヒドロシリコーン架橋用の組成物に、粘着性を付与する目的でブローンアスファルトを配合した場合は、被毒が起こりにくい傾向があることが分かった。
【0008】
すなわち、本発明は、末端二重結合を有する共重合体、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、反応抑制剤、およびブローンアスファルトからなる共重合体組成物を含むことを特徴とする燃料電池用ガスケットに係る。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる共重合体組成物は、成形加工時にはミキシングロールへの粘着性が極めて良好で、且つ架橋して得られる架橋体の粘着性は低減されているので、当該組成物からなる燃料電池用ガスケットは機械的強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<末端二重結合を有する共重合体>
本発明の燃料電池用ガスケットを得るに好適な共重合体組成物を構成する成分の一つである末端二重結合を有する共重合体は、末端二重結合を有する共重合体であり、末端二重結合を有する限り制限なく用いることができるが、特には以下に記載するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(以下、併せて「共重合体」と略称する場合がある。)が好ましい。
【0011】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体>
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有する。
【0012】
【0013】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記(A)、(B)、(C)に由来する構造単位に加えて、さらに上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0014】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った燃料電池用ガスケットを得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0015】
すなわち、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0016】
上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋が良好で、重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0017】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)および上記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位に加えて、さらに、上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。このような非共役ポリエン(D)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(D)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0018】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0019】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上述の通り、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、上記非共役ポリエン(C)と、必要に応じて上記非共役ポリエン(D)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記(i)~(v)の要件を満たす。
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、上記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ‥ 式(3)
【0020】
本明細書において、上記(i)~(v)をそれぞれ、要件(i)~(v)とも記す。また、本明細書において、「炭素原子数3~20のα-オレフィン」を単に「α-オレフィン」とも記す。
【0021】
〈要件(i)〉
要件(i)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体中のエチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ヒドロシリコーン架橋して得られる燃料電池用ガスケットが優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0022】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体中のエチレン量(エチレン(A)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(B)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0023】
〈要件(ii)〉
要件(ii)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体中において、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%であることが望ましい。非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の量が、上記範囲よりも少なすぎる場合には、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られない場合があり、上記範囲より多すぎる場合にはヒドロキシ架橋が過剰となり得られる燃料電池用ガスケットの機械物性が悪化する場合がある他、耐熱老化性が悪化する場合がある。
【0024】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、要件(ii)を満たすと、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、ヒドロシリコーン架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、燃料電池用ガスケットの製造に好適なものとなるため好ましい。
【0025】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体中の非共役ポリエン(C)量(非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0026】
〈要件(iii)〉
要件(iii)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体において、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、次の関係式(1)を満たすことを特定するものである。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
【0027】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、要件(iii)を満たす場合、VNBなどの非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量が適切であって、十分なヒドロシリコーン架橋性能を示すとともに、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を用いて架橋成形体を製造した場合には、架橋速度に優れ、架橋後の燃料電池用ガスケットが優れた機械特性を示すものとなるため好ましい。
【0028】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、より好ましくは、下記関係式(1')を満たすことが望ましい。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦35 … 式(1')
【0029】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値として求めることができる。
【0030】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が上記式(1)あるいは(1')を満たす場合には架橋程度が適切となり、これを用いることにより機械的物性と耐熱老化性とにバランスよく優れた成形品を製造することができる。「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が少なすぎる場合には、ヒドロシリコーン架橋する際に架橋性が不足して架橋速度が遅くなることなることがあり、また多すぎる場合には過度に架橋を生じて燃料電池用ガスケットの機械的物性が悪化する場合がある。
【0031】
〈要件(iv)〉
要件(iv)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、上記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定するものである。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
【0032】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0033】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、好ましくは、下記式(2')を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×5.7 … 式(2')
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0034】
〈要件(v)〉
要件(v)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定するものである。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ‥ 式(3)
上記式(3)により、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
【0035】
このようなエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、ヒドロシリコーン架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、これを用いて得られる燃料電池用ガスケットが耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0036】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、好ましくは、下記式(3')を満たす。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw) ‥ 式(3')
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0037】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
【0038】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを式(v-1)から算出した。
【0039】
【0040】
ここで、[η]=KMv;v=0.725の関係式を適用した。
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0041】
【0042】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0043】
【0044】
λ=BrNo/M …(V-6)
LCB1000C=λ×14000 …(V-7)
*式(V-7)中、14000はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0045】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、極限粘度[η]が好ましくは0.1~5dl/g、より好ましくは0.5~5.0dl/g、さらに好ましくは0.9~4.0dl/gであることが望ましい。
【0046】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000~600,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~400,000であることが望ましい。
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
【0047】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、VNBであることがより好ましい。すなわち上述した式(1)、式(2)ならびに後述する式(4)等において、「(C)の重量分率」が「VNBの重量分率」(重量%)であることが好ましい。
【0048】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上述したように、上記(A)、(B)および(C)に由来する構造単位に加えて、さらに、上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。この場合には、下記(vi)の要件を満たすことが好ましい。
【0049】
(要件(vi))
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45 … 式(4)
式(4)では、共重合体1分子中の非共役ジエン((C)と(D)の合計)の含量を特定している。
【0050】
上記(D)に由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が式(4)を満たす場合、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の組成物から得られる燃料電池用ガスケットは機械物性と耐熱老化性を示すものとなるため好ましい。
【0051】
要件(vi)を満たさず、式(4)中の「Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}」が少なすぎる場合、すなわち非共役ジエンの含量が少なすぎる場合には、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られない場合があり、多すぎる場合にはヒドロキシ架橋が過剰となり得られる燃料電池用ガスケットの機械物性が悪化する場合がある他、耐熱老化性が悪化する場合がある。
【0052】
〈要件(vii)〉
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、特に限定されるものではないが、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*
(ω=10)(Pa・sec)と、非共役ポリエン(c)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
Log{η*
(ω=0.01)}/Log{η*
(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 … 式(5)
ここで、複素粘度η*
(ω=0.01)および複素粘度η*
(ω=10)は、要件(vi)における複素粘度η*
(ω=0.1)および複素粘度η*
(ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0053】
また、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の重量分率×253.81/(C)の分子量
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。要件(vii)を満たし、上記式(5)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。一方上記式(5)を満たさない場合には、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いこと分かる。
【0054】
また、さらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を十分量含有することが好ましく、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の重量分率≦10 …式(6)
【0055】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)が、好ましくは6個以上、より好ましくは6個以上40個以下、さらに好ましくは7個以上39個以下、またさらに好ましくは10個以上38個以下であることが望ましい。
【0056】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、VNBなどの非共役ポリエン(C)から導かれる構成単位を十分量含有し、かつ、長鎖分岐含有量が少なく、架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、得られる燃料電池用ガスケットは、機械的特性などの物性バランスに優れる。
【0057】
さらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(D)に由来する構成単位の数(nD)が、好ましくは29個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは1個未満であることが望ましい。
【0058】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、ENBなどの非共役ポリエン(D)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有するため好ましい。
【0059】
ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)あるいは非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nD)は、非共役ポリエン(C)または(D)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(C)または(D)に由来する構成単位の重量分率((C)または(D)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
(nC)=(Mw)×{(C)の重量分率/100}/非共役ポリエン(C)の分子量
(nD)=(Mw)×{(D)の重量分率/100}/非共役ポリエン(D)の分子量
【0060】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)および(D)に由来するそれぞれの構成単位の数(nc)および(nD)が、いずれも上記の範囲を満たす場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を含む組成物をヒドロキシ架橋を行う場合の架橋速度が速く、得られる燃料電池用ガスケットの機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0061】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造>
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)と、必要に応じて上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ2含む非共役ポリエン(D)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0062】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、上記の要件(i)~(v)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0063】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒に記載の方法を採用することにより製造することができる。
【0064】
<ヒドロシリル基含有化合物>
本発明に係わる共重合体組成物を構成する成分の一つであるヒドロシリル基含有化合物は、本発明に係わる上記共重合体と反応して架橋剤として作用する。このヒドロシリル基含有化合物は、従来から製造・市販されている、例えば、線状、環状、分岐状の各構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物など、その構造においていずれでも使用可能であるが、本発明で用いるヒドロシリル基含有化合物は、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含んでいなければならない。
【0065】
このようなヒドロシリル基含有化合物は、通常、下記の一般組成式
R4
bHcSiO(4-b-c)/2
で表わされる化合物を使用することができる。
【0066】
上記一般組成式において、R4は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~8の置換または非置換の1価炭化水素基であり、このような1価炭化水素基としては、メチル基やエチル基からはじまりノニル基やデシル基に至る、n-、iso-、sec-、tert-などの異性体を含むアルキル基、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基、例えばトリフロロプロピル基を例示することができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0067】
上記一般組成式において、bは、1≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、1<c≦3、好ましくは1≦c<2であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0068】
本発明に係るヒドロシリル基含有化合物は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2~1000個、特に好ましくは2~300個、最も好ましくは4~200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R2
2(H)SiO1/2 単位とSiO4/2単位とからなり、任意にR2
3SiO1/2 単位、R2
2SiO2/2 単位、R2(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2 またはR2SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンなどを挙げることができる。
【0069】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CH3)3SiO-(-SiH(CH3)-O-)d-Si(CH3)3
(式中のdは2以上の整数である。)
【0070】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CH3)3SiO-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH3)3
(式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。)
【0071】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-Si(CH3)2H
(式中のeは1以上の整数である。)
【0072】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-SiH(CH3)-O-)e-Si(CH3)2H
(式中のeは1以上の整数である。)
【0073】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)h-Si(CH3)2H
(式中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。)
【0074】
以上のような化合物は、公知の方法により製造することができ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3-ジハイドロ-1,1,3,3- テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、-10℃~+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0075】
<白金系触媒>
本発明に係わる共重合体組成物を構成する成分の一つであるヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒は、付加反応触媒であり、本発明に係わる上記共重合体が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。
【0076】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
【0077】
より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0078】
<反応抑制剤>
本発明に係わる上記共重合体を構成する成分の一つである反応抑制剤は、本発明に係わる上記共重合体が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する。この架橋反応の抑制は、混練時および成形時での加工性を安定にする点で必要である。
【0079】
本発明で用いる反応抑制剤は、ベンゾトリアゾール、エチニル基含有アルコール(たとえばエチニルシクロヘキサノール等)、アクリロニトリル、アミド化合物(たとえばN,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなど)、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0080】
<ブローンアスファルト>
本発明の共重合体組成物を構成する成分の一つであるブローンアスファルトは、石油精製時にできる減圧残油(ストレート・アスファルト)に重質油を混ぜたものを加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって固さを増した改質アスファルトの一種である。
本発明に係わるブローンアスファルトは、例えば、昭和シェル石油(株)から商品名 ブローンアスファルト10-20として製造、販売されている。
【0081】
<共重合体組成物>
本発明に係わる共重合体組成物は、上記末端二重結合を有する共重合体、上記ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、上記ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、上記反応抑制剤、および上記ブローンアスファルトを含む組成物であり、好ましくは、上記共重合体、上記共重合体:100質量部に対し、上記ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物を0.1~100質量部、より好ましくは0.1~75質量部、さらに好ましくは0.1~50質量部、さらには0.2~30質量部、さらには0.2~20質量部、特には0.5~10質量部、最も好ましくは0.5~5質量部、上記ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒を0.1~100000重量ppm、より好ましくは0.1~10000重量ppm、さらに好ましくは1~5000重量ppm、特に好ましくは5~1000重量ppm、上記反応抑制剤を0.05~5質量部、さらに好ましくは0.07~5質量部、より好ましくは0.07~4.5質量部、さらに好ましくは0.1~4.5質量部、特に好ましくは0.1~3.0質量部、最も特に好ましくは0.1~1.0質量部、および上記ブローンアスファルトを1~50質量部、より好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部、最も好ましくは15~25質量部含む組成物である。
上記ヒドロシリル基含有化合物の量が100質量部を超える割合で含む共重合体組成物はコスト的に不利になるので好ましくない。
【0082】
上記白金系触媒の量が0.1重量ppm未満の共重合体組成物は架橋速度が遅くなる傾向にあり、また、100000重量ppmを超える割合で含む共重合体組成物は、コスト的に不利になるので好ましくない。上記範囲内の割合で白金系触媒を用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる架橋成形体を形成できる共重合体組成物が得られる。
【0083】
上記反応抑制剤の量が0.05質量部未満の共重合体組成物は、架橋速度が速すぎる虞があり、また、5質量部を超える割合で含む共重合体組成物は、反応抑制の効果が大きく架橋が起こりにくくなる虞がある。
【0084】
上記ブローンアスファルトの量が1質量部未満の共重合体組成物は、ロール加工時の粘着性付与効果がほとんどなく、50質量部を超える割合で含む共重合体組成物はロール加工時の粘着性が過度になるため好ましくない。
【0085】
<その他の配合剤>
本発明に係る共重合体組成物には、上記の必須の配合剤以外に、必要に応じて、補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、さらには発泡剤、発泡助剤、可塑剤、着色剤、他のゴム配合剤、ゴム、樹脂などを他の成分として配合することができる。それらの配合剤は、用途に応じて、その種類、含有量が適宜選択されるが、これらのうちでも特に補強剤、無機充填剤、軟化剤などを用いることが好ましい。
【0086】
本発明では、必要に応じて用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。また、本発明では、必要に応じて用いられるゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどをブレンドして用いることができる。また、上記共重合体(A)とは異なるが類似するゴム(EPT)、更には、上記共重合体(A)同士であっても、イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η]が異なる上記共重合体(A)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度の混合が挙げられる。
【0087】
<燃料電池用ガスケット>
本発明に係わる共重合体組成物は、燃料電池用ガスケットの成形加工時にはミキシングロールへの粘着性が極めて良好で、且つ、組成物の架橋反応を阻害せず、しかも、得られる燃料電池用ガスケットの粘着性は過度でない燃料電池用ガスケットとなる。
【0088】
本発明に係わる共重合体組成物から燃料電池用ガスケットを製造するには、通常一般のゴムを加硫(架橋)するときと同様に、未架橋の共重合体組成物を一度調製し、次いで、この共重合体組成物を意図する燃料電池用ガスケットに成形した後に架橋を行なえばよい。
【0089】
本発明の燃料電池用ガスケットは、例えば、固体高分子型(固体高分子電解質型)燃料電池用ガスケットであることが好ましい。
共重合体組成物の架橋方法としては、架橋剤(SiH基含有化合物[C])を使用して加熱する方法、または光、γ線、電子線照射による方法のどちらを採用してもよい。
【0090】
まず、本発明に係る共重合体組成物は、たとえば次のような方法で調製される。
すなわち、本発明に係る共重合体組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、末端二重結合を有する共重合体、ブローンアスファルト、補強剤、軟化剤などの添加剤を好ましくは50~180℃の温度で3~10分間混練した後、オープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、および反応抑制剤を追加混合し、ロール温度100℃以下で1~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0091】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、末端二重結合を有する共重合体、ブローンアスファルト、補強剤、軟化剤、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、および反応抑制剤などとともに、老化防止剤、着色剤、分散剤、難燃剤などを同時に混練してもよい。
【0092】
上記のようにして調製された、本発明に係る共重合体組成物は、LIM成形機、インジェクション成形機、トランスファー成形機、プレス成形機、押出成形機、カレンダーロールなどを用いる種々の成形法より、意図する燃料電池用ガスケットに成形され、成形と同時にまたは成型物を加硫槽内に導入し、架橋することができる。
【0093】
これらの中でも、LIM成形機は、厚薄精度、高速成形の点から目的とする燃料電池用ガスケットを製造するに好適である。また、射出成形や圧縮成形も好適である。架橋条件としては、50~270℃の温度で0.5~30分間加熱するか、あるいは前記した方法により光、γ線、電子線を照射することにより燃料電池用ガスケットが得られる。また、常温で架橋することもできる。
【0094】
この架橋の段階は金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0095】
本発明に係る共重合体組成物を特にLIM成形に適用する場合は、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、反応抑制剤とを別々に配合した共重合体組成物を調製することが望ましい。
【0096】
すなわち、材料の粘度により適宜使い分けるが、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類やプラネタリミキサーのような攪拌機により、末端二重結合を有する共重合体、ブローンアスファルト、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物、補強剤、軟化剤などの添加剤3~10分間混練し、液状ゴム組成物(1)を調製する。別途、末端二重結合を有する共重合体、ブローンアスファルト、ヒドロシリコーン架橋用の白金系触媒、および反応抑制剤、補強剤、軟化剤を3~10分混練し、液状ゴム組成物(2)を調製する。続いて、これら液状ゴム組成物(1)と液状ゴム組成物(2)とをLIM成形装置に直接接続可能な専用のペール缶または直接接続可能なカートリッジに入れ、計量、混合装置を経てLIM成形を施すことにより、目的とする燃料電池用ガスケットを得ることができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の物性は、以下の方法で測定した。
【0098】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体>
(1)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の組成
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の、各構成単位の重量分率(重量%)およびエチレンとα-オレフィンのモル比は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0099】
(2)極限粘度[η]
極限粘度[η](dl/g)は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0100】
(3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値である。測定装置および条件は、以下のとおりである。また、分子量は、市販の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、換算法に基づいて算出した。
装置:ゲル透過クロマトグラフ Alliance GP2000型(Waters社製)、
解析装置:Empower2(Waters社製)、
カラム:TSKgel GMH6-HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2(7.5mmI.D.×30cm、東ソー社製)、
カラム温度:140℃、
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)、
検出器:示差屈折計(RI)、流速:1.0mL/min、
注入量:400μL、
サンプリング時間間隔:1s、
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)、
分子量換算:旧法EPR換算/粘度を考慮した較正法。
【0101】
(4)複素粘度η*およびP値
レオメーターとして、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%の条件で、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.01)、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*
(ω=10)および周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(いずれも単位はPa・sec)を測定した。
【0102】
また、得られた結果よりη*
(ω=0.1)とη*
(ω=100)との複素粘度の比(η*比)であるP値(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))を算出した。
実施例および比較例で用いた共重合体組成物の評価の測定方法は次の通りである。
【0103】
〔製造例1〕
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて、連続的に、エチレン、ブテン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)の重合反応を95℃にて行った。
【0104】
重合溶媒としてはヘキサン(フィード量:23.6L/h)を用いて、連続的に、エチレンフィード量が4.5kg/h、ブテン量が14.4kg/h、VNBフィード量が420g/hおよび水素フィード量が40.0NL/hとなるように、重合器に連続供給した。
【0105】
重合圧力を1.65MPaG、重合温度を95℃に保ちながら、主触媒としてジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いて、フィード量0.0052mmol/hとなるよう、重合器に連続的に供給した。また、共触媒として(C6H5)3CB(C6F5)4(CB-3)をフィード量0.026mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)をフィード量20mmol/hとなるように、それぞれ重合器に連続的に供給した。
【0106】
このようにして、エチレン、ブテンおよびVNBから形成されたエチレン・ブテン・VNB共重合体を18質量%含む溶液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にてエチレン・ブテン・VNB共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0107】
以上の操作によって、エチレン、ブテンおよびVNBから形成されたエチレン・ブテン・VNB共重合体が、毎時6.0kgの速度で得られた。
得られた共重合体(S-1)の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
《ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)》
未架橋の共重合体組成物の125℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、100℃の条件下で測定した。
【0110】
《粘着性(ブローブタック)》
未架橋の共重合体組成物および架橋成形体の粘着性(ブローブタック)は、RHESCA社製タッキング試験機(TAC-II)により測定した。具体的には、試料として、190℃でプレスした1mm厚のシートから、直径40mm×5mm×2mm厚の短冊状に成形したものを使用し、以下の条件で測定を行った。
温度:50℃
進入速度:120mm/分
加圧力:50gf
加圧時間: 10秒
引き離し速度:120mm/分
【0111】
《架橋物の評価》
配合物に、プレス成形機を用いて180℃で20分間架橋を行って、厚み2mmのシート(加硫物)を調製した。
得られたシートについて、下記方法により硬度試験、引張り試験、架橋密度の算出、耐熱老化性試験を行った。
配合物2に、円柱状の金型がセットされたプレス成形機を用いて180℃で25分間加硫して、厚さ12.7mm、直径29mmの直円柱形の試験片を作成し、圧縮永久歪(CS)試験用試験片(加硫物)を得た。
【0112】
《硬さ試験(デュロ-A硬度)》
JIS K 6253に従い、架橋シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmの架橋シート6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0113】
《引張り試験》
JIS K 6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、シートの破断強度(TB)〔MPa〕および破断伸び(EB)〔%〕を測定した。すなわち、シート状の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(2001年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製した。この試験片を用いて同JIS K 6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0114】
《圧縮永久歪み》
圧縮永久歪(CS)測定用試験片について、JIS K6262(1997)に従って、150℃×72時間及び135℃×270時間処理後の圧縮永久歪を測定した。
【0115】
[実施例1]
第一段階として、Mixtron BB-4型ミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得たエチレン・ブテン・VNB共重合体100質量部を1分間素練りし、次いでこれに、カーボンブラック(商品名 旭#60G、旭カーボン(株)社製)60質量部、パラフィン系プロセスオイル(商品名 ダイアナプロセスPW-380、出光興産(株)製)40質量部、およびブローンアスファルト(商品名 ブローンアスファルト10-20、昭和シェル石油(株)製)20質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
【0116】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、ヒドロシリル基含有化合物(信越化学(株)製:(CH3)3SiO-(SiH(CH3)-O-)6-Si(CH3)2-O-Si(C6H6)2-O-Si(CH3)3)4質量部、白金系触媒(信越化学(株)製:塩化白金酸+[CH2=CH(Me)SiO]4錯体)0.4質量部および反応抑制剤(3,5-ジメチル―1-ヘキシル―3-オール)0.8質量部を加え10分間混練して未架橋の重合体配合物(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物)を得た。この重合体配合物を用いて、物性評価を行った。
【0117】
[比較例1]
実施例1の第一段階において、ブローンアスファルトを配合しない組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、重合体配合物および架橋成形体を得た。結果を表2に示す。
【0118】
[比較例2]
実施例1の第一段階において、ブローンアスファルトに替えて粘着剤として脂環族飽和炭化水素樹脂(商品名 アルコンP‐100 荒川化学工業(株)製)を用いる以外は実施例1と同様に行い、重合体配合物を得たが、得られた重合体配合物は架橋しなかった。結果を表2に示す。
【0119】