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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】病棟
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/08 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
E04H3/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019148075
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028451
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】杉山 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】榎並 和人
(72)【発明者】
【氏名】端野 亮一
(72)【発明者】
【氏名】中田 康将
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031704(JP,A)
【文献】特開2018-074288(JP,A)
【文献】特開2006-283532(JP,A)
【文献】辻 吉隆,超高齢社会における病院建築のあり方,月刊新医療 2月号 ,第41巻,日本,中島 雄志 (株)エム・イー振興協会,2014年01月28日,第117頁-第121頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/08
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病棟外周に沿って複数の病室が配置された2つの病棟領域と、該病棟領域に囲まれた病棟中央に矩形状に配置された看護スタッフ専用の看護スタッフ専用領域と、を有する病棟であって、
前記2つの病棟領域には、それぞれ前記病室に面する十字形状に配置されたクロス型病室廊下が設けられ、
前記クロス型病室廊下の中央交差部より突出する二方向の第1廊下部及び第2廊下部がそれぞれ前記看護スタッフ専用領域の二方向の外周縁に面して配置され、
前記看護スタッフ専用領域には、中央に看護スタッフ専用の十字形状に配置されたクロス型スタッフ通路と、前記クロス型病室廊下の中央交差部の内側に張り出したステーション張出部を備え、前記看護スタッフ専用領域において看護スタッフの拠点となるスタッフステーションと、を有していることを特徴とする病棟。
【請求項2】
前記クロス型病室廊下の中央交差部には、前記スタッフステーションの前記ステーション張出部を含む内側と外側とを区画する第1防火区画部を有し、
前記クロス型スタッフ通路の入口には、前記クロス型病室廊下と区画する第2防火区画部を有していることを特徴とする請求項1に記載の病棟。
【請求項3】
前記スタッフステーションのうち前記ステーション張出部でない部分は、前記クロス型病室廊下を挟んで対向する位置に最も看護観察の必要な重症室が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の病棟。
【請求項4】
前記クロス型病室廊下の中央交差部の近傍に汚物処理室が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の病棟。
【請求項5】
前記病棟領域のうち前記中央交差部から外側に突出するウィング部には、前記病室前にアルコーブが配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の病棟。
【請求項6】
前記病室は個室であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の病棟。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病棟に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の人口は、高齢化がさらに進み、働き手世代が激減していくと予想されている。病院の病棟では、高齢化、重症度、及び医療や看護の必要度が高い患者が増えている現状がある。一方で、看護師の配員を増加することも難しくなっている。
ここで、従来の病棟としては、例えば特許文献1に示されるように、外壁の長さ方向に平行に廊下が設けられ、廊下と外壁との間に接するように病室が配列される配置プランが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-283532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の病棟では、以下のような問題があった。
すなわち、近年ではとくに全個室病棟のように病室数が多い病棟が増えてきており、このような病棟にあっては病室数に応じて病室に面する廊下も長くなるというプランになる。そのため、看護動線が長くなることから、各病室の患者の観察のための移動時間が増え、迅速な看護ができなく、看護師の負担が増大するうえ、患者に対する直接看護の時間を十分に確保することができないという問題があった。
また、病室に面する廊下長が長くなると、看護師管理者によって看護師の作業状況をよく観察することができなく、看護に関わる管理が低下するおそれがあり、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる病棟を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる病棟を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る病棟は、病棟外周に沿って複数の病室が配置された2つの病棟領域と、該病棟領域に囲まれた病棟中央に矩形状に配置された看護スタッフ専用の看護スタッフ専用領域と、を有する病棟であって、前記2つの病棟領域には、それぞれ前記病室に面する十字形状に配置されたクロス型病室廊下が設けられ、前記クロス型病室廊下の中央交差部より突出する二方向の第1廊下部及び第2廊下部がそれぞれ前記看護スタッフ専用領域の二方向の外周縁に面して配置され、前記看護スタッフ専用領域には、中央に看護スタッフ専用の十字形状に配置されたクロス型スタッフ通路と、前記クロス型病室廊下の中央交差部の内側に張り出したステーション張出部を備え、前記看護スタッフ専用領域において看護スタッフの拠点となるスタッフステーションと、を有していることを特徴としている。
【0007】
本発明では、看護スタッフ専用領域に隣接する2つの病棟領域が十字形状に形成されたクロス型病室廊下を有し、このクロス型病室廊下に面して各病室が配置されている。そのため、クロス型病室廊下の中心に位置する中央交差部から各廊下部の病室への移動時間を短縮することができ、直接看護の時間を長く確保することができる。このように、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくすることができる。しかも、看護スタッフ専用領域の中央には看護スタッフ専用の十字形状に配置されたクロス型スタッフ通路が設けられているので、クロス型病室廊下の中央交差部へのアクセスもし易くなり、看護動線をより短縮することができる。
【0008】
また、クロス型病室廊下の中央交差部に看護スタッフ専用領域に設けられるスタッフステーションのステーション張出部が張り出した状態で配置されているので、クロス型病室廊下の中央交差部から各廊下部を見通すことができる。そのため、十字状の4つの方向の廊下をステーション張出部にいる看護師が見通して、病室周りの患者を観察することができるうえ、看護師管理者から看護師の状況も見やすくなることから看護管理を向上でき、例えば看護師が適正な処置をしている様子を監視したり、指導を行うことができ、看護の不具合を未然に防ぐことも可能である。
さらに、本発明では、病室を利用する患者が使用する2つの病棟領域のクロス型病室廊下と、看護スタッフのみが使用するクロス型スタッフ通路とがそれぞれ別々に設けられているので、ベッド等搬送時等、効率よく搬送することができる。
【0009】
さらにまた、本発明に係る病棟では、クロス型病室廊下の中央交差部より突出する二方向の第1廊下部及び第2廊下部がそれぞれ看護スタッフ専用領域の二方向の外周縁に面して配置されているので、各病室の窓側に他の病室が向かい合うことがなく、全病室において眺望を確保することができる。
【0010】
また、本発明に係る病棟は、前記クロス型病室廊下の中央交差部には、前記スタッフステーションの前記ステーション張出部を含む内側と外側とを区画する第1防火区画部を有し、前記クロス型スタッフ通路の入口には、前記クロス型病室廊下と区画する第2防火区画部を有していることを特徴としてもよい。
【0011】
この場合には、看護スタッフ専用領域と病棟領域とを区画する第2防火区画部と、各病棟領域のそれぞれにおいて2つの第1防火区画部とが設けられ、4つの防火区画が形成されている。そのため、各防火区画同士が隣接または近接した位置に配置されるので、患者の避難や誘導を効率よく行うことができる。
また、クロス型病室廊下の外側に張り出した先端部に非常階段を設置することにより、すべての病室から非常階段側と看護スタッフ専用領域側の二方向への避難ができる。
【0012】
また、本発明に係る病棟は、前記スタッフステーションのうち前記ステーション張出部でない部分は、前記クロス型病室廊下を挟んで対向する位置に最も看護観察の必要な重症室が配置されていることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、スタッフステーションから重症室の重症な患者を常時観察でき、速やかな対応が可能である。
【0014】
また、本発明に係る病棟は、前記クロス型病室廊下の中央交差部の近傍に汚物処理室が配置されていることを特徴としてもよい。
【0015】
この場合には、汚物処理室が病棟の中央部に配置されるので、比較的、看護師の移動が多い病室と汚物処理室との移動を軽減することができ、看護動線を短くすることができる。
【0016】
また、本発明に係る病棟は、前記病棟領域のうち前記中央交差部から外側に突出するウィング部には、前記病室前にアルコーブが配置されていることを特徴としてもよい。
【0017】
この場合には、病室前に配置されるアルコーブにナースカートやパソコンを置いて、看護拠点とすることができる。また、日中の看護師が多い時間帯において、患者を直接担当する看護師は、アルコーブを拠点としつつ病室内のベッドサイドへのアクセスを基本として活動することができる。
【0018】
また、本発明に係る病棟は、前記病室は個室であることを特徴としてもよい。
【0019】
この場合には、クロス型病室廊下に面する病室が個室であるので、他患者からの感染リスクを低減し、音や臭い等などプライバシーを確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の病棟によれば、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる。
また、本発明の病棟によれば、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による病棟の平面図である。
図2図1に示す病棟のクロス型病室廊下における中央交差部の拡大平面図である。
図3図1に示す病棟の防火区画を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による病棟について、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示す本実施形態による病棟1は、鉄筋コンクリート造(RC造)により構築され、建物中央に配置され平面視で矩形状(ここでは正方形)に形成された中央構造部11と、平面視で中央構造部11の対角線上の二つの角部のそれぞれから外側に突出する一対のウィング部12と、を備えている。一対のウィング部12は、それぞれ中央構造部11の各辺の延長線上に延在している。
【0024】
病棟1に配置される病室21のすべては、中央構造部11及びウィング部12の外周側に配置され、各病室21の窓側が建物の外周壁に位置している。それぞれの病室21の窓側において他の病室が向かい合わせにならないような配置プランになっている。
【0025】
中央構造部11及びウィング部12は、複数の柱と梁等とを剛接合したラーメン構造により剛構造に構成され、柱と梁等と一体に打設されたコンクリートスラブにより構成されている。ここで、図1乃至図3に示す黒塗り四角は、柱を示している。
【0026】
病棟1は、複数の病室21が配置された2つの病棟領域2A,2Bと、病棟領域2A、2Bに囲まれ病棟中央で矩形状に配置された看護スタッフ専用の看護スタッフ専用領域3と、を有する。図1における、病棟1の中央に斜めに記載される二点鎖線Fは病棟分割ラインであって、この病棟分割ラインFを挟んで2つの病棟領域2A、2Bに分割されている。病棟分割ラインFは、中央構造部11の対角線上に位置している。
【0027】
2つの病棟領域2A、2Bには、それぞれ病室21に面する十字形状に配置されたクロス型病室廊下20(20A、20B)が設けられている。そして、2つの病棟領域2A、2Bは、看護スタッフ専用領域3の対角線上の一対の角部に面して、クロス型病室廊下20A、20Bの第1中央交差部22が位置するように配置されている。
【0028】
病棟領域2A、2Bには、複数の個室の病室21と、クロス型病室廊下20に面する共有スペース23と、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22の近傍に配置された汚物処理室24と、が設けられている。病室21のうち一部(後述するスタッフステーション31に対向する位置の一部)には、最も看護観察の必要な重症室(符号21A)が配置されている。
【0029】
また、各病棟領域2A、2Bには、主に病室21を利用する患者や、患者の関係者等が利用する第1エレベータ28がクロス型病室廊下20に面して配置されている。なお、本実施形態では、配置プラン上、看護スタッフ専用領域3側に第1エレベータ28が配置された一例を示している。第1エレベータ28は患者等の上下動線となる。
さらに病棟領域2A、2B同士の境界部分には、例えばリハビリ室や食堂などの共用スペース29が設けられている。
【0030】
クロス型病室廊下20の第1中央交差部22より中央構造部11内に配置される二方向の第1廊下部25及び第2廊下部26は、それぞれ看護スタッフ専用領域3の二方向の外周縁3aに面して配置されている。すなわち、看護スタッフ専用領域3は、一対の病棟領域2A、2Bのそれぞれの第1廊下部25及び第2廊下部26によって四方から囲まれた状態で配置されている。病棟領域2におけるウィング部12に位置する病室21はクロス型病室廊下20を挟んだ両側に複数配列されている。
【0031】
病棟領域2A、2Bでは、クロス型病室廊下20において看護師が第1中央交差部22から各方向に延びる廊下部の先端まで見渡すことができる。図1に示す矢印E1、E2は、第1中央交差部22からの看護師の視野領域を示している。
【0032】
看護スタッフ専用領域3には、中央に看護スタッフ専用の十字形状に配置されたクロス型スタッフ通路30と、看護スタッフ専用領域3において看護スタッフの拠点となるスタッフステーション31と、を有している。
【0033】
クロス型スタッフ通路30は、4つの入口30aがクロス型病室廊下20に連絡している。クロス型スタッフ通路30はスタッフ専用であり、患者が自由に通行できないようにスタッフ等のみが出入り可能な扉が設けられている。
看護スタッフ専用領域3では、クロス型スタッフ通路30において看護師が第2中央交差部32から各方向に延びる通路部の先端まで見渡すことができる。図1に示す矢印E3は、第2中央交差部32からの看護師の視野領域を示している。
このように十字形状のクロス型スタッフ通路30を設けることで、例えば一方の病棟領域2のスタッフステーション31の看護師が他方の病棟領域2への移動距離も短くなり、看護動線を短くすることができる。
【0034】
スタッフステーション31は、図2に示すように、看護スタッフ専用領域3におけるクロス型病室廊下20の第1中央交差部22に面する角部に配置され、クロス型病室廊下20の中央交差部22の内側に張り出したステーション張出部31Aを備えている。
スタッフステーション31のうちステーション張出部31Aでない部分(符号31Bのステーションメイン部)は、クロス型病室廊下20を挟んで対向する位置に前述した重症室21Aが配置されている。
【0035】
看護スタッフ専用領域3には、クロス型スタッフ通路30に面する位置、あるいはクロス型病室廊下20に面する位置には、スタッフ専用の第2エレベータ33の他に例えば看護師の休憩室、器材庫等が適宜な位置に配置されている。このスタッフ専用の第2エレベータ33は患者とは別でスタッフの上下動線となる。
【0036】
図3に示すように、クロス型病室廊下20の第2中央交差部22には、スタッフステーション31のステーション張出部31Aを含む内側と外側とを区画する第1防火区画部41を有している。また、クロス型スタッフ通路30の4つの入口には、クロス型病室廊下20と区画する第2防火区画部42を有している。看護スタッフ専用領域3と2つの病棟領域2A、2Bとを区画する第2防火区画部41と、各病棟領域2A、2Bのそれぞれにおいて2つの第1防火区画部41とが設けられている。すなわち、本実施形態では、クロス型病室廊下20において、第1防火区画部41の外側に区画された第1防火区画4A、及び第2防火区画4Bと、第1防火区画部41の内側に区画され看護スタッフ専用領域3に沿って配置される第3防火区画4Cと、クロス型スタッフ通路30を区画する第4防火区画4Dと、の4つの防火区画が形成されている。
【0037】
図2に示すように、病棟領域2A、2Bのうち第1中央交差部22から外側に突出するウィング部12には、病室21前にアルコーブ13が配置されている。
【0038】
次に、上述した病棟1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による病棟1では、図1に示すように、看護スタッフ専用領域3に隣接する2つの病棟領域2A、2Bが十字形状に形成されたクロス型病室廊下20を有し、このクロス型病室廊下20に面して各病室21が配置されている。そのため、クロス型病室廊下20の中心に位置する第1中央交差部22から各廊下部の病室21への移動時間を短縮することができ、直接看護の時間を長く確保することができる。
このように、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくすることができる。しかも、看護スタッフ専用領域3の中央には看護スタッフ専用の十字形状に配置されたクロス型スタッフ通路30が設けられているので、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22へのアクセスもし易くなり、看護動線をより短縮することができる。
【0039】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22に看護スタッフ専用領域3に設けられるスタッフステーション31のステーション張出部31Aが張り出した状態で配置されているので、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22から各廊下部を見通すことができる。そのため、十字状の4つの方向の廊下をステーション張出部31Aにいる看護師が見通して、病室21周りの患者を観察することができるうえ、看護師管理者から看護師の状況も見やすくなることから看護管理を向上でき、例えば看護師が適正な処置をしている様子を監視したり、指導を行うことができ、看護の不具合を未然に防ぐことも可能である。
【0040】
例えば、看護師の少ない夜勤帯においては、ステーション張出部31Aから一目で病室前にあるトイレなどへの患者出入り状況が見えるとともに、看護師が看護をする上で大切にしているとされる「患者の気配」を感じることができる。
さらに、クロス型スタッフ通路30においても、十字形状をなしているので、その第2中央交差部32から4方向に延びる各スタッフ通路を見通すことができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、病室21を利用する患者が使用する2つの病棟領域2A、2Bのクロス型病室廊下20と、看護スタッフのみが使用するクロス型スタッフ通路30とがそれぞれ別々に設けられているので、ベッド等搬送時等、効率よく搬送することができる。
【0042】
さらにまた、本実施形態では、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22より突出する二方向の第1廊下部25及び第2廊下部26がそれぞれ看護スタッフ専用領域3の二方向の外周縁3aに面して配置されているので、各病室21の窓側に他の病室が向かい合うことがなく、全病室21において眺望を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態では、看護スタッフ専用領域3と病棟領域2A、2Bとを区画する第2防火区画部42と、各病棟領域2A、2Bのそれぞれにおいて2つの第1防火区画部41とが設けられ、4つの防火区画が形成されている。そのため、各防火区画4A~4D同士が隣接または近接した位置に配置されるので、患者の避難や誘導を効率よく行うことができる。
また、図1に示すように、クロス型病室廊下20の外側に張り出した先端部に非常階段27を設置することにより、すべての病室21から非常階段27側と看護スタッフ専用領域3側の二方向への避難ができる。
【0044】
また、本実施形態では、スタッフステーション31のうちステーションメイン部31Bは、クロス型病室廊下20を挟んで対向する位置に最も看護観察の必要な重症室21Aが配置されているため、スタッフステーション31から重症室21Aの重症な患者を常時観察でき、速やかな対応が可能である。
【0045】
また、本実施形態では、汚物処理室24が病棟1の中央部に配置されるので、比較的、看護師の移動が多い病室21と汚物処理室24との移動を軽減することができ、看護動線を短くすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、病棟領域2A、2Bのうち第1中央交差部22から外側に突出するウィング部12には、病室21前にアルコーブ13が配置されていることから、病室21前に配置されるアルコーブ13にナースカートやパソコンを置いて、看護拠点とすることができる。また、日中の看護師が多い時間帯において、患者を直接担当する看護師は、アルコーブ13を拠点としつつ病室21内のベッドサイドへのアクセスを基本として活動することができる。
【0047】
また、本実施形態では、クロス型病室廊下20に面する病室21が個室であるので、他患者からの感染リスクを低減し、音や臭い等などプライバシーを確保することができる。
【0048】
上述のように本実施形態による病棟1では、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる。
また、本実施形態による病棟1によれば、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる。
【0049】
以上、本発明による病棟の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、本実施形態の病棟1における病棟領域2A、2B内及び看護スタッフ専用領域3内の各病室21等のレイアウト、数量等は一例であって、適宜設定することができる。
例えば、本実施形態では、スタッフステーション31の近傍に重症室21Aを配置したプランとしているが、これに限定されることはない。
さらに、汚物処理室24やアルコーブ13の位置、数量に関しても、上述した位置に限定されることはない。
【0051】
本実施形態では、クロス型病室廊下20の第1中央交差部22にスタッフステーション31のステーション張出部31Aを含む内側と外側とを区画する第1防火区画部41を有し、クロス型スタッフ通路30の入口30aには、クロス型病室廊下20と区画する第2防火区画部42を有する構成としているが、これらの位置に防火区画部を設けることに限定されることはなく、他の位置であってもかまわない。
【0052】
また、病室21として個室に限定されず、複数の患者が利用できる大部屋の病室であってもかまわない。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 病棟
2、2A、2B 病棟領域
3 看護スタッフ領域
3a 外周縁
11 中央構造部
12 ウィング部
13 アルコーブ
21 病室
21A 重症室
22 第1中央交差部(中央交差部)
23 共用スペース
24 汚物処理室
25 第1廊下部
26 第2廊下部
31 スタッフステーション
31A ステーション張出部
32 第2中央交差部
41 第1防火区画部
42 第2防火区画部
図1
図2
図3