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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/406 20060101AFI20230926BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G05B19/406 S
G05B19/4063 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019163012
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021043521
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】梁 瑶
(72)【発明者】
【氏名】熊本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 聡史
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103193(JP,A)
【文献】特開2015-041221(JP,A)
【文献】特開平04-340105(JP,A)
【文献】特開2003-022106(JP,A)
【文献】特開平11-296214(JP,A)
【文献】特開2005-166020(JP,A)
【文献】特開平05-177503(JP,A)
【文献】特開昭63-226704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00 - 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械又は産業機械の軸、又は、モータを制御するためのパラメータに関する推奨設定値又は推奨設定範囲のセットとして、前記工作機械又は前記産業機械の軸、又は前記モータのイナーシャに応じて設定内容が切り換わるように設定された複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲を記憶する記憶部と、
イナーシャの大きさの指定及び前記パラメータの入力を受け付けるパラメータ入力部と、
入力された前記パラメータと、複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲のうちの、前記工作機械又は前記産業機械の軸又は前記モータのうちの制御対象についての前記指定されたイナーシャの大きさに対応する前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果として、入力された前記パラメータが前記制御対象についての前記指定されたイナーシャの大きさに対応した前記推奨設定値と異なる又は前記推奨設定範囲を逸脱する場合に警告を提示する比較結果提示部と、を備える制御装置。
【請求項2】
工作機械又は産業機械の軸、又は、モータを制御するためのパラメータに関する推奨設定値又は推奨設定範囲のセットとして、前記工作機械又は前記産業機械の軸、又は前記モータのストロークに応じて設定内容が切り換わるように設定された複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲を記憶する記憶部と、
ストロークの長さの指定及び前記パラメータの入力を受け付けるパラメータ入力部と、
入力された前記パラメータと、複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲のうちの、前記工作機械又は前記産業機械の軸、又は前記モータのうちの制御対象についての前記指定されたストロークの長さに対応する前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果として、入力された前記パラメータが前記制御対象についての前記指定されたストロークの長さに対応した前記推奨設定値と異なる又は前記推奨設定範囲を逸脱する場合に警告を提示する比較結果提示部と、を備える制御装置。
【請求項3】
入力された前記パラメータは、所定の物理量に関するパラメータの組を含み、
前記比較部は、前記パラメータの組から前記所定の物理量を算出し、算出された前記所定の物理量と、前記制御対象の性質に対応した前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲と比較する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、産業機械、又はモータの制御を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)等におけるパラメータ入力を支援するシステムが提案されている。特許文献1は、CNC制御装置のパラメータに関し、「精度優先、速度優先、ショック低減優先等のニーズに応じてそれぞれ構成された複数種類のパラメータからなるパラメータセットの形でCNC1内のメモリに複数組用意してくこととする」ことを記載する(特許文献1、段落0018)。特許文献2は、工作機械の管理手段に関して、「表示出力手段6は、設定手段11の各種の設定項目につき、所定の基準設定状態を定めた基準設定状態記憶部16と、設定手段11の設定状態を基準設定状態記憶部16に記憶された所定の基準設定状態と比較して所定の基準設定状態から逸脱する設定項目につき、変更された設定状態を表示させる比較部17とを有する」ことについて記載する(特許文献2、段落0018)。
【0003】
特許文献3は、「電動機駆動装置の複数の制御パラメータをコンピュータの表示装置及び入力装置を用いて設定する制御パラメータ設定方法であって、(a)あらかじめ用意した複数の電動機の用途を前記表示装置に表示し、操作者に用途の選択入力を促すステップと、(b)前記用途とそれに対応して設定すべき制御パラメータ及びその推奨値との対応関係を規定したテーブルをあらかじめ備え、前記操作者の用途選択入力にしたがって前記テーブルを参照することにより、設定すべき制御パラメータとその推奨値とを求めるステップとを備えたことを特徴とする電動機駆動装置の制御パラメータ設定方法。」を記載する(特許文献3、請求項4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-058218号公報
【文献】特開2007-280190号公報
【文献】特開2002-171780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CNC制御装置等におけるパラメータの設定は、高度な知識を要し、難易度の高い作業である。ユーザによるパラメータ設定をいっそう容易化できると共に、的確なパラメータ設定を可能とすることができる制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、工作機械又は産業機械の軸、又は、モータを制御するためのパラメータに関する推奨設定値又は推奨設定範囲のセットとして、前記工作機械又は前記産業機械の軸、又は前記モータのイナーシャに応じて設定内容が切り換わるように設定された複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲を記憶する記憶部と、イナーシャの大きさの指定及び前記パラメータの入力を受け付けるパラメータ入力部と、入力された前記パラメータと、複数セットの前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲のうちの、前記工作機械又は前記産業機械の軸又は前記モータのうちの制御対象についての前記指定されたイナーシャの大きさに対応する前記推奨設定値又は前記推奨設定範囲とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果として、入力された前記パラメータが前記制御対象についての前記指定されたイナーシャの大きさに対応した前記推奨設定値と異なる又は前記推奨設定範囲を逸脱する場合に警告を提示する比較結果提示部と、を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、ユーザによるパラメータ設定をいっそう容易化できると共に、的確なパラメータ設定が可能となる。
【0008】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る制御装置50の要部構成を表すブロック図である。
図2】制御装置50により実行されるパラメータ検証処理を表すフローチャートである。
図3】指定される制御対象の性質がイナーシャである場合における、制御装置における記憶部からの推奨パラメータセットの読み出し処理を表す動作フローである。
図4】指定される制御対象の性質がストロークである場合における、制御装置における記憶部からの推奨パラメータセットの読み出し処理を表す動作フローである。
図5】指定される制御対象の性質が工具のサイズである場合における、制御装置における記憶部からの推奨パラメータセットの読み出し処理を表す動作フローである。
図6】比較部による、ユーザにより入力されたパラメータと、推奨設定値又は推奨設定範囲との比較に関する他の例を表す動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は一実施形態に係る制御装置50の要部構成を表すブロック図である。制御装置50は、一例として、工作機械を制御するCNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)であるものとするが、本発明はこのような例に限られない。制御装置50は、工作機械、産業機械の軸(主軸、送り軸等)を制御するCNC制御装置、モータを制御するモータ制御装置等の各種制御装置として構成し得る。図1に示すように、制御装置50は、要部構成要素として、記憶部5、パラメータ入力部20、比較部11、比較結果提示部12、及びディスプレイ30を有する。記憶部5には、工作機械を制御するためのパラメータの推奨設定値及び推奨設定範囲が予め記憶されている。パラメータ入力部20は、操作パネル等の操作装置により構成され、ユーザからのパラメータの入力・設定の操作を受け付ける。比較部11は、入力されたパラメータと、記憶部5に記憶された推奨設定値又は推奨設定範囲とを比較する。比較結果提示部12は、比較部11による比較結果として、入力されたパラメータと推奨設定値又は推奨設定範囲とが異なる場合に警告を提示する。なお、制御装置50は、主軸制御部、送り軸制御部、入出力インタフェース等のCNCとしての構成要素を有するが、図1では説明の便宜のためそれらを省略している。
【0012】
なお、図1において比較部11及び比較結果提示部12はCPU10がソフトウェアを実行することにより実現される機能ブロックとして記載されているが、本発明はこのような例に限られるものではない。これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated IC)等のハードウェアを主体とした構成により実現されても良い。
【0013】
記憶部5には、工作機械又は産業機械の軸、又は、モータを制御するためのパラメータに関する推奨設定値又は推奨設定範囲として、工作機械、産業機械、又はモータの性質に応じて設定内容が切り換わるように設定された複数セットの推奨設定値又は推奨設定範囲(以下では、推奨パラメータセットとも記載する)が記憶されている。この場合、複数セットの推奨設定値又は推奨設定範囲は、工作機械、産業機械、又はモータの性質(工作機械等の大きさ、種類等)に応じて数値又は数値範囲が段階的に切り換わるように設定されていても良い。以下では、工作機械の性質を表す分類項目として、イナーシャ(例えば、制御対象としての主軸のイナーシャ、モータのイナーシャ)、ストローク(例えば、制御対象としての主軸のストローク)、工具のサイズを指定可能とした場合の例を説明する。
【0014】
例えば、イナーシャに関して、制御装置50は、ユーザから、工作機械の機械的な性質としてイナーシャがどの程度の大きさであるかの指定を受け付け、複数の推奨パラメータセットの中から、指定された性質(例えば、イナーシャが大きい)に対応した推奨パラメータセットを適用することができる。
【0015】
下記表1は、工作機械の機械的な性質の一側面としてイナーシャの観点で段階的に設定された複数の推奨パラメータセットの例を示している。ここでは、一例として、イナーシャを小型、中型、大型の三段階に分けて推奨パラメータセットを作成した場合の例を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1の例では、イナーシャに関して工作機械を小型、中型、大型の3段階に分類している。小型、中型、大型が、イナーシャの範囲として、0.0023-0.0035kgm2、0.011-0.016kgm2、0.84-1.3kgm2にそれぞれ対応する。本例では、パラメータとして、サーボループゲイン、速度フィードフォワード係数機能の有無、速度フィードフォワード係数、加速度、加加速度が含まれる。表1に示されるように、サーボループゲインは、小型、中型、大型の場合それぞれ「推奨設定範囲1」、推奨設定範囲1-α1」、「推奨設定範囲1-β1」に設定され、0<αi<βi(i=1-4)であるため、サーボループゲインは小型の場合の推奨設定範囲を規準とするとき、中型では小型の数値範囲よりも小さく、大型では中型の数値範囲よりも小さく設定される。同様に、速度フィードフォワード係数、加速度、加加速度に関しても、小型の工作機械に対する推奨設定範囲を基準とするとき、中型では小型の数値範囲よりも小さく、大型では中型の数値範囲よりも小さく設定される。なお、表1では、サーボループゲイン、速度フィードフォワード係数、加速度、加加速度の推奨設定として数値範囲を規定する場合の例を記載しているが、これらに代えて推奨値が規定されていても良い。
【0018】
下記表2は、工作機械の機械的な性質の一側面としてのストロークの観点で段階的に準備された複数の推奨パラメータセットの例を表している。ここでは、一例として、ストロークを「短い」、「中」(中くらい)、「長い」の三段階に分けて推奨パラメータセットを作成した場合の例を示す。
【0019】
【表2】
【0020】
上記表2の分類例では、「短い」、「中」、「長い」は、ストロークの範囲又は値として、1.5-2m、4m、8mにそれぞれ対応する。本例では、パラメータとして、サーボループゲイン、速度フィードフォワード係数機能の有無、速度フィードフォワード係数、加速度、加加速度を有する。表2に示されるように、サーボループゲインは、「短い」、「中」、「長い」の場合それぞれ「推奨設定範囲5」、推奨設定範囲5-α5」、「推奨設定範囲5-β5」に設定され、0<αi<βi(i=5-8)であるため、サーボループゲインは「短い」の場合の推奨設定範囲を規準とするとき、「中」では「短い」の数値範囲よりも小さく、「長い」では「中」の数値範囲よりも小さく設定される。同様に、速度フィードフォワード係数、加速度、加加速度に関しても、「短い」の工作機械に対する推奨設定範囲を基準とするとき、「中」では小型の数値範囲よりも小さく、「長い」では「中」の数値範囲よりも小さく設定される。
【0021】
上記のような推奨パラメータセットの分類によれば、ユーザは制御対象となる工作機械の機械的な性質を指定することで、指定された機械的な性質に応じた最適な推奨設定値又は推奨設定範囲のセットを適用することが可能となる。このような制御対象の性質に基づく推奨設定値(設定範囲)の指定は、ユーザにとって分かり易く、入力したパラメータを的確に検証することが可能となる。
【0022】
制御装置50は、以上のように指定された機械的な性質に対応する推奨設定値及び推奨設定範囲を用いて、ユーザにより設定されたパラメータ値との比較を行い、ユーザにより設定されたパラメータが推奨設定値と異なる又は推奨設定範囲を逸脱している場合に警告を表示してパラメータの再入力を促す。
【0023】
図2は、制御装置50により実行されるパラメータ設定及び検証処理を表すフローチャートである。パラメータ設定及び検証処理は、制御装置50のCPU10による制御の下で実行される。はじめに、制御装置50は、ユーザから工作機械の機械的な性質の指定を受け付ける(ステップS1、S2)。具体的には、ユーザは、指定する性質がイナーシャ、ストローク、工具のサイズ等のいずれであるか(分類項目)を指定すると共に(ステップS1)、イナーシャであれば大きさ、ストロークであれば長さ、工具のサイズであれば工具の種類(分類項目)を指定する(ステップS2)。図3図4図5は、それぞれ、指定される性質が、イナーシャ、ストローク、工具のサイズである場合における、制御装置50における記憶部5からの推奨パラメータセットの読み出し処理を表す動作フローである。図3図5の各処理はステップS2において実行される。
【0024】
図3に示すように、制御装置50は、ユーザにより指定された性質がイナーシャである場合には、指定された大きさを確認する(ステップS201a)。その結果、イナーシャについて小型が指定されている場合(ステップS202a)、制御装置50は、表1に示した推奨パラメータセット(以下、パラメータセットAと記す)についての小型の場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS203a)。
【0025】
イナーシャについて中型が指定されている場合(ステップS204a)、制御装置50は、パラメータセットAについての中型の場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS205a)。
【0026】
イナーシャについて大型が指定されている場合(ステップS206a)、制御装置50は、パラメータセットAについての大型の場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS207a)。
【0027】
図4に示すように、制御装置50は、ユーザにより指定された性質がストロークである場合には、指定された長さを確認する(ステップS201b)。その結果、ストロークについて「短い」が指定されている場合(ステップS202b)、制御装置50は、表2に示した推奨パラメータセット(以下、パラメータセットBと記す)について「短い」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS203b)。
【0028】
ストロークについて「中」が指定されている場合(ステップS204b)、制御装置50は、パラメータセットBについての「中」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS205b)。
【0029】
ストロークについて「長い」が指定されている場合(ステップS206b)、制御装置50は、パラメータセットBについて「長い」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲を記憶部5から取得する(ステップS207b)。
【0030】
図5に示すように、制御装置50は、ユーザにより指定された性質が工具のサイズである場合には、指定された工具の種類を確認する(ステップS201c)。その結果、工具の種類について「BT30」が指定されている場合(ステップS202c)、制御装置50は、工具の種類が「BT30」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲として記憶部5に記憶された推奨パラメータセット(以下、パラメータセットC)の推奨設定値及び推奨設定範囲)を取得する(ステップS203c)。
【0031】
工具の種類について「BT40」が指定されている場合(ステップS204c)、制御装置50は、工具の種類が「BT40」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲として記憶部5に記憶されたパラメータセットCの推奨設定値及び推奨設定範囲を取得する(ステップS205c)。
【0032】
工具の種類ついて「BT50」が指定されている場合(ステップS206c)、制御装置50は、工具の種類が「BT50」である場合の推奨設定値及び推奨設定範囲として記憶部5に記憶されたパラメータセットCの推奨設定値及び推奨設定範囲を取得する(ステップS207c)。なお、パラメータセットCについても、パラメータセットAと同様なパラメータの種類を含み、工具が大きくなるのに応じて、サーボループゲイン等のパラメータの推奨数値範囲が小さくなるように設定されていても良い。
【0033】
次に、ユーザはパラメータの入力を行う(ステップS3)。パラメータの入力は、パラメータ入力部20を介して行われる。次に、制御装置50は、ユーザにより入力されたパラメータと、上述の図3図5の処理により記憶部5から読み出された推奨設定値及び推奨設定範囲とを比較する(ステップS4)。比較の結果、ユーザにより設定されたパラメータが推奨設定値と一致する、又は推奨設定範囲内である場合には(S5:YES)、ユーザにより設定されたパラメータに問題はないものとして本処理を終了する。
【0034】
他方、ユーザにより設定されたパラメータが推奨設定値と異なる、或いは推奨設定範囲を逸脱している場合には、比較結果提示部12は警告を提示する(ステップS6)。この場合の警告は、設定されたパラメータに問題があることをユーザに知らせるあらゆる形式での提示方法をとることができる。例えば、ディスプレイ30上に、設定されたパラメータが推奨設定値と異なること(或いは推奨設定範囲から逸脱していること)を通知する警告メッセージを表示する、問題のあるパラメータをハイライト表示する等の提示方法をとることができる。また、比較結果提示部12は、警告メッセージと共に、設定されたパラメータが推奨設定値(推奨設定範囲)からどれくらいずれているかを示す情報、或いは推奨設定値(推奨設定範囲)そのものを提示しても良い。
【0035】
このようなパラメータ設定及び検証処理によれば、ユーザはイナーシャの大きさ等の制御対象の性質を指定することで、最適な推奨パラメータセットを読み出して、パラメータの検証に適用させることができる。したがって、ユーザによるパラメータ設定における作業が容易化されると共に、的確なパラメータ設定が可能となる。
【0036】
図6は、比較部11による、ユーザにより入力されたパラメータと、推奨設定値又は推奨設定範囲との比較に関する他の例を表す動作フローである。なお、図6の処理を実行するにあたり、図2のステップS1からS3における制御対象の機械的な性質の指定及びパラメータの入力はなされているものとする。本例では、図6に示すように、比較部11は、入力された複数のパラメータのうち所定の物理量に関するパラメータの組(パラメータa1-an)に基づいて物理量を算出し(ステップS11)、算出された物理量と推奨推定値又は推奨設定範囲とを比較する(ステップS12)。比較の結果、算出された物理量が、推奨設定値と一致する、又は、推奨設定範囲内である場合(S12:YES)、ユーザにより入力されたパラメータa1-anに問題はないものとして本処理を終了する。
【0037】
他方、算出された物理量が、推奨設定値と一致しない、或いは、推奨設定範囲を逸脱している場合(S12:NO)、比較結果提示部12は、物理量を規定するパラメータa1-anに問題があることについて、ステップS6の場合と同様なやり方で警告を提示することができる(ステップS13)。パラメータの組み合わせとして算出される物理量として、例えば、下記のような、加速度、最大加加速度が有り得る。

物理量の例1:加速度
パラメータa1:送り速度
パラメータa2:時定数
加速度:送り速度/時定数

物理量の例2:最大加加速度
パラメータa1:最大加速度
パラメータa2:時定数
最大加加速度:最大加速度/時定数

上記のように、物理量が加速度である場合、比較部11は、入力された2つのパラメータa1(送り速度)、a2(時定数)から加速度を計算し(送り速度/時定数)、算出された加速度と、推奨設定値又は推奨設定範囲として設定されている加速度の値とを比較する。また、物理量が最大加加速度である場合、比較部11は、入力された2つのパラメータa1(最大加速度)、a2(時定数)から最大加加速度を計算し(最大加速度/時定数)、算出された最大加加速度と、推奨設定値又は推奨設定範囲として設定されている最大加加速度の値とを比較する。
【0038】
このように、ユーザにより入力されたパラメータの組み合わせとしての所定の物理量を制御装置50側で算出し、算出された所定の物理量と推奨設定値又は推奨設定範囲とを比較することで、ユーザによるパラメータ入力の負担を軽減しつつより効率的なパラメータ検証を行うことが可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザによるパラメータ設定をいっそう容易化できると共に、的確なパラメータ設定が可能となる。
【0040】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0041】
上述の実施形態では、パラメータの入力や、制御対象の性質の指定は、パラメータ入力部20を介してユーザによりなされる場合の例を説明したが、パラメータや制御対象の性質は、例えばネットワークを介して外部装置より制御装置に入力される構成であっても良い。
【0042】
上述の実施形態では、制御対象の性質としてのイナーシャ、ストロークの指定はユーザによりなされる場合の例を説明したが、イナーシャやストロークとしては、制御装置50において推定された値を用いても良い。一例として、制御装置50は、センサにより検出された主軸モータの負荷トルク及び主軸の回転角加速度に基づいて、主軸のイナーシャを推定することができる。また、制御装置50は、位置センサにより検出される制御対象の軸の位置情報に基づいてストロークを推定することができる。
【0043】
上述の実施形態では、工作機械等の性質に応じて3つの段階に切り換えることのできる推奨パラメータセット(例えば、イナーシャについて小型、中型、大型)の例を記載したが、例えばイナーシャをいっそう細かい段階で分類し、それに応じた多数の推奨パラメータセットを準備しても良い。
【0044】
上述した実施形態に示したパラメータ設定及び検証処理を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
【符号の説明】
【0045】
5 記憶部
10 CPU
11 比較部
12 比較結果提示部
20 パラメータ入力部
30 ディスプレイ
50 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6