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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
H01R13/187 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019179432
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057194
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隼人
(72)【発明者】
【氏名】野村 章一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187164(JP,A)
【文献】実開平02-029161(JP,U)
【文献】実開平01-099210(JP,U)
【文献】特開2015-122175(JP,A)
【文献】特開平11-154551(JP,A)
【文献】特開2017-183074(JP,A)
【文献】国際公開第2007/019885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/15-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子を有する第1コネクタと、
前記第1コネクタに嵌合されることにより前記第1端子に接続される第2端子を有する第2コネクタと、
を備えたコネクタ構造であって、
前記第1端子には、外周側に複数の接点が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子が嵌装され、
前記第2端子は、前記第1端子が嵌合されることにより、前記環状接触子の前記接点が内周面に接触される筒状に形成されており
前記第1端子は、前記第2端子との接続側の端部に、外周へ張り出す張り出し部を有し、
前記第2端子は、周方向に複数分割された分割体とされているとともに、前記第1端子との接続側の縁部に、内周側へ突出する突条接点を有し、
前記環状接触子は、前記第1端子における前記張り出し部の根元部分に装着され、
前記第2端子は、前記第1端子が嵌合されることにより、前記張り出し部を超えた前記突条接点が前記張り出し部に係止されて前記環状接触子の前記接点に接触される、
ことを特徴とするコネクタ構造。
【請求項2】
前記環状接触子は、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部が連結されて環状とされることにより、螺旋状に形成した前記線材の外周側に張り出す部分が前記接点とされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記環状接触子は、導電性金属材料からなる板材を環状に形成した筒状部材に、外周側へ突出する複数の突出部分が周方向に間隔をあけて設けられることにより、前記接点が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記第1端子及び前記第2端子は、互いに近接する方向へ膨出する凸状部を有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されることにより、前記凸状部同士が当接される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ構造。
【請求項5】
前記第1コネクタは、第1ケースに固定され、
前記第2コネクタは、前記第1ケースに組付けられる第2ケースに固定され、
前記第1ケースに前記第2ケースが組付けられることにより、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが互いに嵌合される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド車等の車両は、駆動モータへ電力を供給するインバータを備えており、このインバータはワイヤハーネスを介して駆動モータに電気的に接続されている。
【0003】
近年では、省スペース化や組付け性の向上等の目的のために、駆動モータとインバータとを組付けることによって互いに嵌合して電気的に直接接続されるコネクタ構造が採用されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-9092号公報
【文献】特開2011-23290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコネクタ構造では、一方のコネクタに設けられた板状のオス端子と、他方のコネクタに設けられてオス端子の側面に摺接して導通する付勢バネを有する筒状のメス端子と、を備えている。したがって、オス端子とメス端子との接触面積を増やすためには、互いに摺接する嵌合方向の長さを長くしなければならず、このため、全体の高さ寸法が嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、嵌合方向の寸法の嵩張りを抑えて省スペース化を図ることが可能なコネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1端子を有する第1コネクタと、前記第1コネクタに嵌合されることにより前記第1端子に接続される第2端子を有する第2コネクタと、を備えたコネクタ構造であって、前記第1端子には、外周側に複数の接点が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子が嵌装され、前記第2端子は、前記第1端子が嵌合されることにより、前記環状接触子の前記接点が内周面に接触される筒状に形成されており前記第1端子は、前記第2端子との接続側の端部に、外周へ張り出す張り出し部を有し、前記第2端子は、周方向に複数分割された分割体とされているとともに、前記第1端子との接続側の縁部に、内周側へ突出する突条接点を有し、前記環状接触子は、前記第1端子における前記張り出し部の根元部分に装着され、前記第2端子は、前記第1端子が嵌合されることにより、前記張り出し部を超えた前記突条接点が前記張り出し部に係止されて前記環状接触子の前記接点に接触される、ことを特徴とするコネクタ構造。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタ構造によれば、第1コネクタの第1端子には、外周側に複数の接点が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子が嵌装され、第2コネクタの第2端子は、第1端子が嵌合されることにより、環状接触子の接点が内周面に接触される筒状に形成されている。これにより、嵌合方向に沿って延びるオス端子と、オス端子が挿抜されるメス端子とを有するコネクタ構造と比較し、嵌合方向の寸法の嵩張りを抑えて省スペース化を図りつつ、端子同士の十分な接触面積を確保することができる。
更に、上記(1)の構成のコネクタ構造によれば、第1コネクタと第2コネクタとを嵌合させることにより、第1端子の張り出し部を超えた第2端子の突条接点が張り出し部に係止される。これにより、第1端子と第2端子との接続状態を維持させることができ、また、嵌合方向と直交する方向へのがたつきを抑えることができる。
【0009】
(2) 前記環状接触子は、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部が連結されて環状とされることにより、螺旋状に形成した前記線材の外周側に張り出す部分が前記接点とされている、ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ構造。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタ構造によれば、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部を連結して環状とすることにより、外周側に複数の接点が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子を容易に得ることができる。
【0011】
(3) 前記環状接触子は、導電性金属材料からなる板材を環状に形成した筒状部材に、外周側へ突出する複数の突出部分が周方向に間隔をあけて設けられることにより、前記接点が形成されている、ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ構造。
【0012】
上記(3)の構成のコネクタ構造によれば、例えば、プレス加工等によって複数の突出部分が間隔をあけて形成された導電性金属材料からなる板材を環状に形成して筒部材とすることにより、外周側に複数の接点が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子を容易に得ることができる。
【0015】
) 前記第1端子及び前記第2端子は、互いに近接する方向へ膨出する凸状部を有し、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されることにより、前記凸状部同士が当接される、ことを特徴とする上記(1)~()のいずれか一つに記載のコネクタ構造。
【0016】
上記()の構成のコネクタ構造によれば、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合されることにより、第1端子及び第2端子の凸状部同士が当接される。これにより、嵌合方向へのがたつきを抑えることができる。
【0017】
) 前記第1コネクタは、第1ケースに固定され、前記第2コネクタは、前記第1ケースに組付けられる第2ケースに固定され、前記第1ケースに前記第2ケースが組付けられることにより、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが互いに嵌合される、ことを特徴とする上記(1)~()のいずれか一つに記載のコネクタ構造。
【0018】
上記()の構成のコネクタ構造によれば、第1ケースに第2ケースを組付けることにより、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合されるので、ワイヤハーネス等の配線を不要にできる。しかも、嵌合方向の寸法の嵩張りが抑えられるので、第1ケース及び第2ケースを有する装置全体の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、嵌合方向の寸法の嵩張りを抑えて省スペース化を図ることが可能なコネクタ構造を提供できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタ構造を説明する嵌合方向に沿う断面図である。
図2図1に示した第1コネクタ及び第2コネクタが互いに離脱した状態における嵌合方向に沿う断面図である。
図3】第1コネクタ及び第2コネクタの嵌合方向に沿って断面視した分解斜視図である。
図4図3に示した第1コネクタの第1端子及び環状接触子の側面図である。
図5】環状接触子が装着された第1端子を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるA-A断面図及び一部の拡大図である。
図6図2に示した第1コネクタと第2コネクタとの嵌合途中の状態を示す嵌合方向に沿う断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るコネクタ構造における環状接触子の斜視図である。
図8図7に示した環状接触子が装着された第1端子を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB-B断面図及び一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ構造10を説明する嵌合方向に沿う断面図である。図2は、図1に示した第1コネクタ20及び第2コネクタ70が互いに離脱した状態における嵌合方向に沿う断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本第1実施形態に係るコネクタ構造10は、第1コネクタ20と、第2コネクタ70とから構成されている。コネクタ構造10は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の車両において、駆動モータと、駆動モータに電力を供給するインバータを電気的に接続するコネクタである。このコネクタ構造10は、ワイヤハーネスを用いることなく、駆動モータとインバータとを直接接続することで、省スペース化及び組付け作業性の向上が図られる。
【0024】
第1コネクタ20は、駆動モータのモータケース(第1ケース)21に組付けられるモータ側コネクタである。モータケース21は、嵌合凹部22を有しており、この嵌合凹部22には、その底部に収容凹部23が形成されている。第1コネクタ20は、モータケース21の嵌合凹部22の底部に形成された収容凹部23に収容されている。また、収容凹部23の底部には、孔部24が形成されている。
【0025】
第2コネクタ70は、インバータのインバータケース(第2ケース)71に組付けられるインバータ側コネクタである。インバータケース71には、嵌合凸部72が形成されており、この嵌合凸部72には、嵌合孔73が形成されている。第2コネクタ70は、インバータケース71の嵌合凸部72に形成された嵌合孔73に嵌め込まれた状態で組付けられている。
【0026】
モータケース21の嵌合凹部22には、インバータケース71の嵌合凸部72が上方から嵌合される。これにより、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが互いに接合される。
【0027】
図3は、第1コネクタ20及び第2コネクタ70の嵌合方向に沿って断面視した分解斜視図である。
図3に示すように、第1コネクタ20は、ハウジング30と、第1端子40と、環状接触子50とを有している。
【0028】
ハウジング30は、電気絶縁性を有する樹脂材料から形成されている。ハウジング30は、円筒状の周壁31と、周壁31の一端側に設けられた底壁32とを有する有底円筒状に形成されている。このハウジング30は、その周壁31の上縁に、側方へ張り出す固定片33を有しており、固定片33には、挿通孔34が形成されている。ハウジング30は、その底壁32に、係合孔35が形成されている。
【0029】
第1端子40は、オス端子であり、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料から形成されている。この第1端子40は、係合部41と膨出部43とを有している。
【0030】
図4は、図3に示した第1コネクタ20の第1端子40及び環状接触子50の側面図である。
図4に示すように、係合部41は、下方が開放された凹部44を有する円筒状に形成されている。この係合部41の凹部44には、その底部にバスバー45が接続されており、このバスバー45が下方へ延在されている。係合部41は、その膨出部43側に保持部46が設けられている。この保持部46には、複数の係止穴47が形成されている。これらの係止穴47は、周方向に沿って互いに間隔をあけて形成されている。膨出部43は、外周側へ張り出すように膨出する張り出し部48と、上方へ膨らむように膨出する凸状部49とを有している。
【0031】
環状接触子50は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部が連結されて環状とされたものである。なお、この環状接触子50は、例えば、ステンレス鋼等のバネ性を有する導電性金属材料から形成してもよい。この環状接触子50は、内周側における螺旋のピッチが、第1端子40の保持部46に形成された係止穴47の周方向へのピッチと略同一とされている。
【0032】
図5は、環状接触子50が装着された第1端子40を示す図であって、図5の(a)は側面図、図5の(b)は図5の(a)におけるA-A断面図及び一部の拡大図である。
【0033】
図5の(a)に示すように、環状接触子50は、第1端子40の係合部41に対して、下端側から嵌装されて互いに導通される。そして、この環状接触子50は、係合部41の保持部46に配置された状態に嵌装される。図5の(b)に示すように、第1端子40の係合部41に装着された環状接触子50は、その内周側が保持部46の係止穴47に入り込む。これにより、環状接触子50は、周方向及び軸方向に対して保持される。この環状接触子50は、螺旋状に形成された線材の外周側に張り出す部分が接点52とされている。
【0034】
図1及び図2に示すように、環状接触子50が嵌装された第1端子40は、ハウジング30内に収容され、係合部41が係合孔35に嵌め込まれる。これにより、ハウジング30に第1端子40が保持された第1コネクタ20とされる。
【0035】
第1コネクタ20は、そのハウジング30がモータケース21の収容凹部23に嵌め込まれて収容される。この状態で、ハウジング30の固定片33に形成された挿通孔34へ挿し込んだネジ25をモータケース21に形成されたネジ孔へねじ込むことにより、第1コネクタ20がモータケース21に固定される。このモータケース21に固定された第1コネクタ20は、第1端子40に接続されたバスバー45がモータケース21内の駆動モータの配線であるバスバー26に接続される。
【0036】
図3に示すように、第2コネクタ70は、ハウジング80と、第2端子90とを有している。
【0037】
ハウジング80は、電気絶縁性を有する樹脂材料から形成されている。ハウジング80は、略円筒状に形成されている。ハウジング80は、その上縁に、側方へ張り出す固定片82を有しており、固定片82には、挿通孔83が形成されている。ハウジング80には、第1コネクタ20との嵌合側の縁部に、周方向に沿って支持板部85が形成されている。また、ハウジング80には、その内周面に、複数の係止部86が設けられている。これらの係止部86は、内方へ突出する係止爪87を有している。
【0038】
第2端子90は、メス端子であり、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料から形成されている。この第2端子90は、円筒状に形成された周壁91と、周壁91の一端側に設けられた上壁92とを有する有底円筒状に形成されている。上壁92には、バスバー93が接続されており、このバスバー93が上方へ延在されている。第2端子90の周壁91には、上壁92と反対側の下縁部に、内周側へ突出する突条接点95が周方向に沿って形成されている。周壁91には、下縁部から軸方向に沿って複数のスリット96が形成されており、これにより、周壁91は、周方向に複数の分割体97とされている。具体的には、周壁91には、4つのスリット96が形成され、これにより、周壁91は、周方向に4等分されて4つの分割体97とされている。また、第2端子90は、その上壁92の内面に、下方へ膨らむように膨出する凸状部99を有している。
【0039】
図1及び図2に示すように、第2端子90は、ハウジング80に対して、上方側から組付けられる。すると、第2端子90は、周壁91の下縁部がハウジング80の支持板部85に当接されて支持される。また、ハウジング80に第2端子90を組付けると、ハウジングの係止部86に形成された係止爪87が上壁92の縁部を係止する。これにより、第2端子90がハウジング80に組付けられた状態に保持された第2コネクタ70とされる。
【0040】
第2コネクタ70は、そのハウジング80がインバータケース71の嵌合孔73に内側から嵌合される。この状態で、ハウジング80の固定片82に形成された挿通孔83へ挿し込んだネジ75をインバータケース71に形成されたネジ孔へねじ込むことにより、第2コネクタ70がインバータケース71に固定される。このインバータケース71に固定された第2コネクタ70は、第2端子90に接続されたバスバー93がインバータケース71内のインバータの配線であるバスバー76に接続される。
【0041】
上記のコネクタ構造10では、第1コネクタ20を上方へ向けた駆動モータに対して、その上方側から第2コネクタ70を下方に向けたインバータを載せて組付ける。これにより、第1コネクタ20に対して第2コネクタ70がインバータの自重によって容易に嵌合される。
【0042】
以下、第1コネクタ20に対して第2コネクタ70を嵌合させる場合について詳述する。
図6は、図2に示した第1コネクタ20と第2コネクタ70との嵌合途中の状態を示す嵌合方向に沿う断面図である。
【0043】
第1コネクタ20に第2コネクタ70を嵌合させるには、第1コネクタ20を上方へ向けた駆動モータに対して、その上方側から第2コネクタ70を下方に向けたインバータを近付ける。そして、モータケース21の嵌合凹部22に、インバータケース71の嵌合凸部72を嵌め込む。
【0044】
すると、図6に示すように、第1コネクタ20のハウジング30に第2コネクタ70のハウジング80が嵌め込まれる。このとき、第2コネクタ70の第2端子90に形成された分割体97の下縁部の突条接点95が第1コネクタ20の第1端子40の膨出部43における張り出し部48に当接される。これにより、突条接点95が張り出し部48の外周面に摺接し、分割体97の下縁部が径方向外方へ押し出されるように弾性変形する。
【0045】
その後、駆動モータの上部にインバータを載置させて組付けると、モータケース21の嵌合凹部22に、インバータケース71の嵌合凸部72が完全に嵌合され、第1コネクタ20のハウジング30に第2コネクタ70のハウジング80が完全に嵌合される。これにより、分割体97の突条接点95が膨出部43の張り出し部48よりも嵌合方向前方側へ移動することにより、弾性変形されていた分割体97が復元する。
【0046】
すると、図1に示すように、復元した分割体97の突条接点95が、第1端子40の係合部41の保持部46に保持されている環状接触子50を外周側から押圧する。これにより、環状接触子50が第1端子40の係合部41と突条接点95とで挟持される。したがって、突条接点95に環状接触子50の複数の接点52が満遍なく接触され、第1コネクタ20の第1端子40と第2コネクタ70の第2端子90とが、環状接触子50を介して導通される。これにより、駆動モータ側のバスバー26とインバータ側のバスバー76とが電気的に接続される。
【0047】
また、この状態において、第1コネクタ20の第1端子40に形成された膨出部43の張り出し部48が第2コネクタ70の第2端子90の各分割体97の内周面に接触される。さらに、第1コネクタ20の第1端子40に形成された膨出部43の凸状部49が第2コネクタ70の第2端子90の上壁92の凸状部99に接触される。
【0048】
第1コネクタ20と第2コネクタ70との嵌合状態を解除させるには、駆動モータに組付けたインバータを取り外して駆動モータに対して上方へ持ち上げる。すると、図2に示すように、第1コネクタ20のハウジング30から第2コネクタ70のハウジング80が抜き出され、第2コネクタ70の第2端子90に嵌め込まれていた第1コネクタ20の第1端子40が抜き抜かれる。これにより、第1端子40と第2端子90とが分離され、駆動モータ側のバスバー26とインバータ側のバスバー76との電気的な接続状態が解除される。
【0049】
以上、説明したように、本第1実施形態に係るコネクタ構造10によれば、第1コネクタ20の第1端子40には、外周側に複数の接点52が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子50が嵌装され、第2コネクタ70の第2端子90は、第1端子40が嵌合されることにより、環状接触子50の接点52が内周面に接触される筒状に形成されている。これにより、嵌合方向に沿って延びるオス端子と、オス端子が挿抜されるメス端子とを有するコネクタ構造と比較し、嵌合方向の寸法の嵩張りを抑えて省スペース化を図りつつ、端子同士の十分な接触面積を確保することができる。
【0050】
しかも、環状接触子50は、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部が連結されて環状とされることにより、螺旋状に形成した線材の外周側に張り出す部分が接点52とされている。したがって、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部を連結して環状とすることにより、外周側に複数の接点52が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子50を容易に得ることができる。
【0051】
また、第1コネクタ20と第2コネクタ70とを嵌合させることにより、第1端子40の張り出し部48を超えた第2端子90の突条接点95が張り出し部48に係止される。これにより、第1端子40と第2端子90との接続状態を維持させることができ、また、嵌合方向と直交する方向へのがたつきを抑えることができる。
【0052】
さらに、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが嵌合されることにより、第1端子40及び第2端子90の凸状部49,99同士が当接される。これにより、嵌合方向へのがたつきを抑えることができる。
【0053】
そして、本第1実施形態のコネクタ構造10では、モータケース21にインバータケース71を組付けることにより、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが嵌合されるので、ワイヤハーネス等の配線を不要にできる。しかも、嵌合方向の寸法の嵩張りが抑えられるので、モータケース21及びインバータケース71を有する車両の駆動装置等の全体の小型化を図ることができる。
【0054】
図7は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ構造における環状接触子100の斜視図である。図8は、図7に示した環状接触子100が装着された第1端子40を示す図であって、図8の(a)は側面図、図8の(b)は図8の(a)におけるB-B断面図及び一部の拡大図である。
【0055】
図7に示すように、本発明の第2実施形態に係るコネクタ構造における環状接触子100は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料からなる板材を環状に形成した筒部材とされている。この環状接触子100は、内周側に突出する複数の係止突起101が形成されている。これらの係止突起101は、その周方向の配列のピッチが、第1端子40の保持部46に形成された係止穴47の周方向へのピッチと略同一とされている。また、環状接触子100には、外周側に突出する突出部分である複数の接点102が形成されている。これらの接点102は、それぞれ係止突起101の間に形成されている。環状接触子100は、例えば、板材に対してプレス加工等によって係止突起101及び接点102が形成されている。
【0056】
図8の(a)に示すように、環状接触子100は、第1端子40の係合部41に対して、下端側から嵌装されて互いに導通される。そして、この環状接触子100は、係合部41の保持部46に配置された状態に装着される。図8の(b)に示すように、第1端子40の係合部41に装着された環状接触子100は、その内周側の係止突起101が保持部46の係止穴47に入り込む。これにより、環状接触子100は、周方向及び軸方向に対して保持される。
【0057】
本第2実施形態に係るコネクタ構造では、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが嵌合され、第2コネクタ70の第2端子90の分割体97に第1コネクタ20の第1端子40が嵌め込まれると、分割体97の突条接点95が環状接触子100の外周側に突出する複数の接点102に満遍なく接触する。これにより、第1コネクタ20の第1端子40と第2コネクタ70の第2端子90とが、環状接触子100を介して導通され、駆動モータ側のバスバー26とインバータ側のバスバー76とが電気的に接続される。
【0058】
そして、本第2実施形態に係るコネクタ構造では、外周側に複数の接点102が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子100は、例えば、プレス加工等によって複数の突出部分である接点102と係止突起101とが交互に間隔をあけて形成された導電性金属材料からなる板材を環状に形成して筒部材とすることにより容易に得ることができる。
【0059】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0060】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1端子(40)を有する第1コネクタ(20)と、
前記第1コネクタ(20)に嵌合されることにより前記第1端子(40)に接続される第2端子(90)を有する第2コネクタ(70)と、
を備えたコネクタ構造(10)であって、
前記第1端子(40)には、外周側に複数の接点(52,102)が周方向に間隔をあけて設けられた環状接触子(50,100)が嵌装され、
前記第2端子(90)は、前記第1端子(40)が嵌合されることにより、前記環状接触子(50,100)の前記接点(52,102)が内周面に接触される筒状に形成されている、
ことを特徴とするコネクタ構造。
[2] 前記環状接触子(50)は、導電性金属材料からなる線材を螺旋状に形成した後に両端部が連結されることにより、螺旋状に形成した前記線材の外周側に張り出す部分が前記接点(52)とされている、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ構造。
[3] 前記環状接触子(100)は、導電性金属材料からなる板材を環状に形成した筒状部材に、外周側へ突出する複数の突出部分が周方向に間隔をあけて設けられることにより、前記接点(102)が形成されている、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ構造。
[4] 前記第1端子(40)は、前記第2端子(90)との接続側の端部に、外周へ張り出す張り出し部(48)を有し、
前記第2端子(90)は、周方向に複数分割された分割体(97)とされているとともに、前記第1端子(40)との接続側の縁部に、内周側へ突出する突条接点(95)を有し、
前記環状接触子(50,100)は、前記第1端子(40)における前記張り出し部(48)の根元部分に装着され、
前記第2端子(90)は、前記第1端子(40)が嵌合されることにより、前記張り出し部(48)を超えた前記突条接点(95)が前記張り出し部(48)に係止されて前記環状接触子(50,100)の前記接点(52,102)に接触される、
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のコネクタ構造。
[5] 前記第1端子(40)及び前記第2端子(90)は、互いに近接する方向へ膨出する凸状部(49,99)を有し、
前記第1コネクタ(20)と前記第2コネクタ(70)とが嵌合されることにより、前記凸状部(49,99)同士が当接される、
ことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のコネクタ構造。
[6] 前記第1コネクタ(20)は、第1ケース(モータケース21)に固定され、
前記第2コネクタ(70)は、前記第1ケース(モータケース21)に組付けられる第2ケース(インバータケース71)に固定され、
前記第1ケース(モータケース21)に前記第2ケース(インバータケース71)が組付けられることにより、前記第1コネクタ(20)と前記第2コネクタ(70)とが互いに嵌合される、
ことを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のコネクタ構造。
【符号の説明】
【0061】
10…コネクタ構造
20…第1コネクタ
21…モータケース(第1ケース)
40…第1端子
48…張り出し部
49,99…凸状部
50,100…環状接触子
52,102…接点
70…第2コネクタ
71…インバータケース(第2ケース)
90…第2端子
95…突条接点
97…分割体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8