(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B41J2/175 151
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2019197285
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇修
(72)【発明者】
【氏名】山辺 勝利
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039124(JP,A)
【文献】特開2013-212587(JP,A)
【文献】特開2008-173832(JP,A)
【文献】特開2017-185674(JP,A)
【文献】特開2011-110487(JP,A)
【文献】特開2013-237219(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインクが収容されたインクカートリッジと、前記インクカートリッジに収容された前記インクをインクジェットヘッドに供給するためのインク流路が形成されたインク供給部材と、を具備する印刷装置において、
前記インクカートリッジを載置し、前記インクカートリッジと前記インク供給部材とを連結する連結部材を有する台座部を備え、
前記台座部は、
前記インクカートリッジが前記連結部材に連結された状態で前記インクカートリッジを回動させる回動中心
と、
前記インク供給部材のインク入口が設けられると共に前記インクカートリッジを収納して回動する収納部材と、
前記回動中心となる回動軸を支持する支持部材と、
を有し、
前記収納部材は、前記回動軸に対して直行方向に延設された平面部材を有し、
前記支持部材は、前記平面部材に対向する対向部材を有し、
前記平面部材と前記対向部材とは、前記収納部材が回動する全範囲において対向して配置され、前記インクカートリッジの回動角度を制限する回転角度制限部が形成され、
前記インクは、沈降する成分を含み、
前記インクカートリッジは、前記回動角度内で任意に回動可能とされ、前記インクカートリッジの回動は、前記沈降する成分が均一になるように撹拌するために行われるものである印刷装置。
【請求項2】
前記インク供給部材は、内部に前記インク流路が形成されたチューブであり、
前記回動中心は、前記インクカートリッジの重心位置に対して一方側に偏って設けられ、
前記連結部材は、前記重心位置に対して前記回動中心側に設けられる、
請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記回動中心は、前記重心位置に対して重力方向の下方に偏って設けられる、請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記台座部は、前記インク供給部材のインク入口が設けられると共に前記インクカートリッジを収納して回動する収納部材、及び前記回動中心となる回動軸を支持する支持部材を有する、請求項1から請求項3の何れか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
内部にインクが収容されたインクカートリッジと、前記インクカートリッジに収容された前記インクをインクジェットヘッドに供給するためのインク流路が形成されたインク供給部材と、を具備する印刷装置において、
前記インクカートリッジを載置し、前記インクカートリッジと前記インク供給部材とを連結する連結部材を有する台座部を備え、
前記台座部は、
前記インクカートリッジが前記連結部材に連結された状態で前記インクカートリッジを回動させる回動中心と、
前記インク供給部材のインク入口が設けられると共に前記インクカートリッジを収納して回動する収納部材と、
前記回動中心となる回動軸を支持する支持部材と、
を有し、
前記収納部材は、前記回動軸に対して直行方向に延設された平面部材を有し、
前記支持部材は、前記平面部材に対向する対向部材を有し、
前記平面部材と前記対向部材とは、前記収納部材が回動する全範囲において対向して配置される、
印刷装置。
【請求項6】
前記平面部材及び前記対向部材の一方に溝カムが形成され、前記平面部材及び前記対向部材の他方に前記溝カムに係合する突起部が形成され、
前記溝カムの端部に前記突起部が当接することで前記収納部材の回動が制限される請求項
1から請求項
5の何れか1項記載の印刷装置。
【請求項7】
前記収納部材及び前記支持部材は、前記インクカートリッジ毎に設けられる、請求項
1から請求項
6の何れか1項記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷物を形成する印刷装置が普及している。印刷装置で用いられるインクには顔料が沈降するものもあり、このようなインクは顔料の沈降を解消させるために定期的(例えば週に1回)に攪拌する必要がある。
【0003】
インクを攪拌するためには、印刷装置に取り付けられているインクパックを取り外し、このインクパックを振ることが一般的に行われている。しかしながら、例えば、印刷装置からインクパックを取り外す際にインクパックからインクが外部に漏れ出る等の不具合が生じる可能性がある。
【0004】
ここで、特許文献1には、インクパックをプリンタに装着したままの状態でインクパック内のインクを攪拌するために、インクパックを収容しているカートリッジホルダーを、支軸を中心に回動させるプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のプリンタでは、支軸がカートリッジホルダーの側面(壁面)等の中心近辺に設けられている。このような支軸の設置位置では、カートリッジを回動させるとしても、その回動量は大きくなく、インクパック内で沈降したインクを十分に攪拌できない可能性もある。特に、インクパックの容量が例えば1Lを超えるような比較的大きなインクパックに対しては、特許文献1に開示されている構成では十分にインクを攪拌できない可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、印刷装置からインクパックを取り外すことなく、インクパック内のインクを十分に攪拌できる、印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印刷装置は、内部にインクが収容されたインクカートリッジと、前記インクカートリッジに収容された前記インクをインクジェットヘッドに供給するためのインク流路が形成されたインク供給部材と、を具備する印刷装置において、前記インクカートリッジを載置し、前記インクカートリッジと前記インク供給部材とを連結する連結部材を有する台座部を備え、前記台座部は、前記インクカートリッジが前記連結部材に連結された状態で前記インクカートリッジを回動させる回動中心を有する。
【0009】
本構成によれば、インクカートリッジはインク供給部材と連結された状態で台座部と共に回動するので、印刷装置からインクカートリッジを取り外すことなく、インクカートリッジ内のインクを十分に攪拌できる。
【0010】
本発明の印刷装置によれば、前記インク供給部材は、内部に前記インク流路が形成されたチューブであり、前記回動中心は、前記インクカートリッジの重心位置に対して一方側に偏って設けられ、前記連結部材は、前記重心位置に対して前記回動中心側に設けられてもよい。本構成によれば、インクをインクジェットヘッドへ供給するチューブの引き回しの長さを短縮できる。
【0011】
本発明の印刷装置によれば、前記回動中心は、前記重心位置に対して重力方向の下方に偏って設けられてもよい。本構成によれば、簡易な構成で、印刷装置からインクカートリッジを取り外すことなく、インクカートリッジ内のインクを十分に攪拌できる。
【0012】
本発明の印刷装置によれば、前記連結部材は、前記インクカートリッジのインク出口と前記インク供給部材のインク入口とを接続するコネクタ部材を有し、前記コネクタ部材は、前記インク出口との接続が解消された場合、前記インク出口を封止してもよい。本構成によれば、インクカートリッジのインク出口からインクが漏れ出ることを防止できる。
【0013】
本発明の印刷装置によれば、前記台座部は、前記インク供給部材のインク入口が設けられると共に前記インクカートリッジを収納して回動する収納部材、及び前記回動中心となる回動軸を支持する支持部材を有してもよい。本構成によれば、インクカートリッジとインク供給部材とを連結した状態で収納部材が回動するので、簡易な構成で、印刷装置からインクカートリッジを取り外すことなく、インクカートリッジ内のインクを十分に攪拌できる。
【0014】
本発明の印刷装置によれば、前記収納部材は、前記回動軸に対して直行方向に延設された平面部材を有し、前記支持部材は、前記平面部材に対向する対向部材を有し、前記平面部材と前記対向部材とは、前記収納部材が回動する全範囲において対向して配置されてもよい。本構成によれば、平面部材はインクカートリッジを収納したまま回動する収納部材を補強する機能を有し、平面部材と対向部材とが収納部材が回動する全範囲において対向するので、対向部材が収納部材の回動をガイドする機能を有することとなる。従って、簡易な構成でインクカートリッジを所望の方向へ回動可能とする。
【0015】
本発明の印刷装置によれば、前記平面部材及び前記対向部材の一方に溝カムが形成され、前記平面部材及び前記対向部材の他方に前記溝カムに係合する突起部が形成され、前記溝カムの端部に前記突起部が当接することで前記収納部材の回動が制限されてもよい。本構成によれば、台座部は溝カムによってその回動が制限されるため、インクカートリッジの回動量を容易に調整できる。
【0016】
本発明の印刷装置によれば、前記収納部材及び前記支持部材は、前記インクカートリッジ毎に設けられてもよい。本構成によれば、インクカートリッジ毎に回動可能となるので、容量の大きいインクカートリッジであっても大きな力を必要とせずに回動可能となる。
【0017】
本発明の印刷装置によれば、前記インクカートリッジは、前記台座部と共に回動させる持ち手部材が設けられてもよい。本構成によれば、手動によってインクカートリッジが容易に回動可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の印刷装置組立方法は、印刷装置からインクパックを取り外すことなく、インクパック内のインクを十分に攪拌できる、という効果を備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本実施形態のインク貯蔵部の外観斜視図である。
【
図3】本実施形態のインクカートリッジが通常位置とされているインク貯蔵部の側面図である。
【
図4】本実施形態のインクカートリッジが通常位置とされているインク貯蔵部の側面図であり、台座部下方の構成を示す図である。
【
図5】本実施形態のインクカートリッジが回動位置とされているインク貯蔵部の側面図である。
【
図6】本実施形態のインクカートリッジが回動位置とされているインク貯蔵部の側面図であり、台座部下方の構成を示す図である。
【
図7】本実施形態の台座部の下面及び本体部の上面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の印刷装置組立方法について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の印刷装置10の概略全体図である。なお、本実施形態の印刷装置10は、下記に説明する構成のようにいわゆるインクジェットプリンタである。
【0022】
図1に示すように、印刷装置10は、床に設置される脚部12と、脚部12の上側(z方向)に配置される本体部14とを備えている。本体部14は、ガイドレール16、キャリッジ18、及びプラテン20等を備える。
【0023】
ガイドレール16は、印刷装置10の左右方向(Y方向)に延在し、キャリッジ18の走査方向への移動を誘導するものである。キャリッジ18は、記録媒体(以下「メディア」という。)22へインクを吐出するインクジェットヘッド24が複数搭載されており、ガイドレール16に沿って主走査方向であるY方向に移動する。
【0024】
プラテン20は、メディア22が載置される載置台である。プラテン20に載置されているメディア22は、搬送機構によってキャリッジ18の走査方向に直交する副走査方向(印刷装置10の正面方向)であるX方向に搬送される。なお、メディア22は、紙、塩化ビニールフィルム、ラバーシート、又は布等のシート状の記録媒体が適用可能である。
【0025】
このような構成の印刷装置10は、メディア22に対してキャリッジ18を主走査方向Yへ移動させ、キャリッジ18に搭載されたインクジェットヘッド24のノズルからインクをメディア22に向けて吐出することによって主走査方向Yの印刷を実行する。そして、印刷装置10は、主走査方向Yの印刷が終了する毎に、搬送機構によって副走査方向Xにメディア22を搬送する。すなわち、印刷装置10は、インクジェットヘッド24による主走査方向Yへのインクの吐出とメディア22の副走査方向Xへの搬送を繰り返すことで、メディア22に対する印刷を行う。なお、X方向及びY方向と直交する方向であり、重量方向と平行な方向をZ方向とする。
【0026】
また、本実施形態の印刷装置10は、インク貯蔵部30を備える。インク貯蔵部30は、内部にインクが収容された複数のインクカートリッジ32を収納することでインクを貯蔵する。インク貯蔵部30は、一例として、印刷装置10の上面に配置される。インク貯蔵部30は、インクカートリッジ32から水頭差によってインクジェットヘッド24へインクを供給する。
【0027】
図2は、本実施形態のインク貯蔵部30の外観斜視図である。インク貯蔵部30は、台座部34と本体部36とで構成される。台座部34は、インクカートリッジ32が載置される。本体部36は、正面部材38、側面部材40、及び背面部材42等により、箱状に形成され、その上面に複数の台座部34が配置される。本実施形態の本体部36は、一例として、7つの台座部34を備え、複数の台座部34の各々にインクカートリッジ32が載置される。
【0028】
台座部34とインクカートリッジ32は、連結部材52(
図3参照)によって連結される。より具体的には、台座部34の上方からインクカートリッジ32を差し入れることで、台座部34とインクカートリッジ32は連結される。一方、台座部34の正面に設けられているレバー44が操作されることで、台座部34とインクカートリッジ32との連結が解除、すなわち、台座部34からインクカートリッジ32が取り外される。
【0029】
ここで、インクカートリッジ32に収容されるインクには、沈降する成分を含むものがある。このようなインクを収容するインクカートリッジ32は、沈降した成分が均一になるように定期的(例えば週に1回)に攪拌される必要がある。そこで、本実施形態のインク貯蔵部30は、
図2に示されるように、インクカートリッジ32を載置している台座部34を上下方向に回動させることでインクカートリッジ32内のインクを攪拌する。
【0030】
以下、
図3~
図7を参照して、本実施形態のインク貯蔵部30の構成及びインクの攪拌について説明する。
【0031】
図3,4は、本実施形態のインクカートリッジ32が通常位置とされているインク貯蔵部30の側面図である。
図4は、
図3において支持部材62が取り外された状態を示す構成図である。通常位置は、インクカートリッジ32が垂直状態とされる位置であり、印刷装置10が稼働している場合には、インクカートリッジ32及び台座部34は、
図3,4で示される通常位置とされる。なお、
図3の破線は、インクパック46やインク供給部材50等の概略構成を示し、
図3の破線で示される構成は他の図では省略されている。
【0032】
図5,6は、本実施形態のインクカートリッジ32が回動位置とされているインク貯蔵部30の側面図である。
図6は、
図5において支持部材62が取り外された状態を示す構成図である。インクカートリッジ32及び台座部34の回動は、印刷装置10が稼働していない場合に行われる。
【0033】
また、
図7は、本実施形態の台座部34の下面及び本体部36の上面の構成を示す図である。
【0034】
図3に示されるように、本実施形態の印刷装置10は、インクカートリッジ32に収容されたインクをインクジェットヘッド24に供給するためのインク流路が形成されたインク供給部材50と、インクカートリッジ32を載置し、インクカートリッジ32とインク供給部材50とを連結する連結部材52を有する台座部34とを備える。本実施形態の台座部34は、インクカートリッジ32が連結部材52に連結された状態でインクカートリッジ32を回動させる回動中心C1を有する。なお、本実施形態の回動中心C1は、Y方向に延在する軸(以下「回動軸」という。)54に相当する。
【0035】
このような構成によって、本実施形態のインクカートリッジ32はインク供給部材50と連結された状態で台座部34と共に回動するので、印刷装置10からインクカートリッジ32を取り外すことなく、インクカートリッジ32内のインクを十分に攪拌できる。また、詳細を後述するように、回動中心C1は、インクカートリッジ32上ではなく、インクカートリッジ32から離れた位置に存在するので、インクカートリッジ32全体を大きく回動させることができ、その結果、インクカートリッジ32内のインクを十分に攪拌できる。
【0036】
図3に示されるように、本実施形態のインク供給部材50は、内部にインク流路が形成されたチューブであり、回動中心C1は、インクカートリッジ32の重心位置C2に対して一方側に偏って設けられ、連結部材52は、重心位置C2に対して回動中心C1側、例えばインクカートリッジ32の下側に設けられる。これにより、インクをインクジェットヘッド24へ供給するチューブの引き回しの長さを短縮でき、チューブ内でインクが沈降することを抑制し、チューブの収納領域の削減が可能となる。なお、
図3に示されるチューブの引き回しは一例であり、これに限られない。
【0037】
なお、本実施形態の回動中心C1は、一例として、重心位置C2に対して重力方向の下方に偏って設けられる。より具体的には、回動中心C1はインクカートリッジ32の下方であって、印刷装置10の正面側(
図3等の紙面左側)とされる。
【0038】
すなわち、本実施形態では、台座部34に載置されたインクカートリッジ32よりも下方かつ水平方向に設けられた回動軸54を中心として台座部34が回動される。これにより、インクカートリッジ32は、
図2や
図5に示されるように、インクカートリッジ32の上方が上下動してその全体が回動するので、より確実にインクカートリッジ32内のインクが攪拌される。
【0039】
ここで、本実施形態の連結部材52は、インクカートリッジ32のインク出口32Aとインク供給部材50のインク入口50Bとを接続するコネクタ部材56を有し、コネクタ部材56は、インク出口32Aとの接続が解消された場合、インクカートリッジ32のインク出口32Aを封止する。
【0040】
本実施形態では、一例として、インクカートリッジ32のインク出口32Aとインクパック46のインク出口は共通とされており、インクパック46のインク出口32Aには封止部材であるバルブ(弁)が設けられている。コネクタ部材56は、インク出口32Aと接続されるとインクパック46のバルブを押し上げ、インクパック46からインク供給部材50にインクを供給可能とする。一方で、コネクタ部材56とインク出口32Aとの接続が解消される場合は、コネクタ部材56が押し上げていたインクパック46のバルブが下がるので、インク出口32Aが封止される。これにより、インクカートリッジ32(インクパック46)のインク出口32Aからインクが漏れ出ることを防止できる。
【0041】
このように、本実施形態では、コネクタ部材56がバルブを開閉することによって、インクカートリッジ32(インクパック46)からのインクの流通が制御される。なお、これに限らず、インク出口32Aとの接続が解消された場合にインクカートリッジ32のインク出口32Aを封止できれば、コネクタ部材56及びインクカートリッジ32(インクパック46)の構造は限定されない。
【0042】
また、インクカートリッジ32には、台座部34と共にインクカートリッジ32を回動可能とする持ち手部材58が設けられる。これにより、印刷装置10の管理者等が、持ち手部材58を把持して台座部34に載置されたインクカートリッジ32を上下方向に移動させることで、手動によってインクカートリッジ32を容易に回動させることができる。
【0043】
次に、台座部34の構造について詳述する。
【0044】
本実施形態の台座部34は、インク供給部材50のインク入口50Bが設けられると共にインクカートリッジ32を収納して回動する収納部材60、及び回動中心C1となる回動軸54を支持する支持部材62を有する。これにより、インクカートリッジ32とインク供給部材50とを連結した状態で収納部材60が回動する。
【0045】
本実施形態の収納部材60は、回動軸54に対して直行方向(XZ平面方向)に延設された平面部材64(
図4,6参照)を有する。なお平面部材64の上部であり印刷装置10の正面側には、支持部材62によって支持されている回動軸54が挿入される孔が形成される。また、本実施形態の支持部材62は、平面部材64に対向する対向部材62Aを有する。この平面部材64と対向部材62Aとは、収納部材60が回動する全範囲において対向して配置される。
【0046】
このような構成により、平面部材64は、インクカートリッジ32を収納したまま回動する収納部材60を補強する機能を有し、平面部材64と対向部材62Aとが収納部材60が回動する全範囲において対向するので、対向部材62Aが収納部材60の回動をガイドする機能を有することになる。
【0047】
より具体的には、収納部材60の下方の両側面に平面部材64が設けられ、平面部材64の外側に対向部材62Aが設けられる(
図7参照)。対向部材62Aの正面側は本体部36を形成する正面部材38と接合され、対向部材62Aの下端は底板部材66が接合される。なお、対向部材62Aは、支持部材62がXZ平面に延伸することで形成されており、支持部材62と対向部材62Aとは実質的に同一の部材として形成される。
【0048】
これら支持部材62(対向部材62A)及び底板部材66は板状の部材であり、本体部36に設けられている。すなわち、台座部34は、支持部材62(対向部材62A)によって支持される回動軸54を介して、本体部36と連結されている。そして、収納部材60の下方に設けられる平面部材64は、台座部34が通常位置とされている場合には本体部36に入り込み(
図4参照)、台座部34が回動位置となる場合には、台座部34の回動に応じて本体部36から引き出される(
図5,6参照)。
【0049】
そして、収納部材60の回動が対向部材62Aによってガイドされるので、台座部34はY方向に傾くことなく、インクカートリッジ32を所望の方向である正面方向への回動が可能となる。
【0050】
また、平面部材64及び対向部材62Aの一方に溝カム70が形成され、平面部材64及び対向部材62Aの他方に溝カム70に係合する突起部72が形成され、溝カム70の端部に突起部72が当接することで収納部材60の回動が制限される。本実施形態では、一例として、対向部材62Aに溝カム70が形成され、平面部材64に突起部72が形成される。
【0051】
本実施形態の溝カム70は、回動中心C1を中心とした円弧状に形成され、一例として、台座部34が最大で40°傾くように形成される。なお、台座部34の回動角度は、インクカートリッジ32が台座部34から外れず、かつインクを十分に攪拌可能な角度とされる。
【0052】
本実施形態の突起部72は、左右の対向部材62Aの溝カム70に係合する軸(以下「ガイド軸」という。)74として形成される。ガイド軸74は、回動軸54に対して平行、すなわち、Y軸方向に延伸する軸であり、台座部34毎に設けられる。なお、ガイド軸74が設けられる替わりに、左右の平面部材64に突起部72となる突形状が形成されてもよい。
【0053】
このような構成によれば、台座部34は溝カム70によってその回動が制限されるため、インクカートリッジ32の回動量を容易に調整できる。
【0054】
また、本実施形態の収納部材60及び支持部材62は、インクカートリッジ32毎に設けられる。すなわち、台座部34は、インクカートリッジ32毎に回動可能なように設けられる。これに伴い、平面部材64、対向部材62A、及びガイド軸74も台座部34毎に設けられる。これにより、インクカートリッジ32毎に回動可能となるので、容量の大きいインクカートリッジ32であっても大きな力を必要とせずに回動可能となる。なお、回動軸54は、台座部34毎に別体として設けられてもよいが、本実施形態の回動軸54は、Y方向に延伸した一本の軸として設けられ、複数の台座部34で共有とされる。
【0055】
また、本体部36を形成する正面部材38の上方は折り返されて折返部76が形成され、台座部34の正面側下方にはパッド78が設けられる。これにより、
図5,6に示されるように、台座部34が最大角度で回動した場合に、パッド78が折返部76に当接し、最大角度で回動したときの衝撃を緩和する。
【0056】
また、
図7に示されるように、回動軸54の両端には、ねじりコイルばね80が設けられており、手動によるインクカートリッジ32の回動を行い易くしている。また、インク供給部材50であるチューブは、台座部34の底面部82から正面部材38、底板部材66に沿うように留め具84で固定されて配設され、インクジェットヘッド24に接続される。このようなチューブの配設により、台座部34が通常位置及び回転位置の何れであっても、チューブが折れる等することを防止できる。
【0057】
さらに、台座部34の背面には本体部36と磁力により接続及び離間を可能とする磁石が設けられてもよい。これにより、何らかの理由によって、台座部34が不要に回動することを抑制できる。
【0058】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、台座部34に載置されたインクカートリッジ32を手動によって回動させる形態について説明したが、本発明はこれに限らず、電動によって回動させる形態としてもよい。この形態では、例えば、回動軸54を台座部34に固定し、当該回動軸54とモータの回転軸とが連結され、当該モータが回転駆動することで、台座部34に載置されたインクカートリッジ32が回動する。
【0060】
また、上記実施形態では、インクカートリッジ32がインクパック46を収容し、このインクパック46内のインクを攪拌する形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばインクカートリッジ32が直接、インクを収容する形態としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、インクカートリッジ32毎に台座部34が回動する形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば台座部34は複数のインクカートリッジ32を載置可能な一つの部材とされ、台座部34を回動することで複数のインクカートリッジ32がまとめて回動さする形態としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、印刷装置10を平面状のメディア22に対して画像を印刷する装置とする形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば沈降するインクを用いる印刷装置であれば、3Dプリンタのような立体物を造形する印刷装置に適用されてもよい。
【0063】
(実施形態の効果)
(1)本実施形態の印刷装置10は、内部にインクが収容されたインクカートリッジ32と、インクカートリッジ32に収容されたインクをインクジェットヘッド24に供給するためのインク流路が形成されたインク供給部材50と、を具備する印刷装置10において、インクカートリッジ32を載置し、インクカートリッジ32とインク供給部材50とを連結する連結部材52を有する台座部34を備え、台座部34は、インクカートリッジ32が連結部材52に連結された状態でインクカートリッジ32を回動させる回動中心C1を有する。
【0064】
本実施形態によれば、インクカートリッジ32はインク供給部材50と連結された状態で台座部34と共に回動するので、印刷装置10からインクカートリッジ32を取り外すことなく、インクカートリッジ32内のインクを十分に攪拌できる。
【0065】
(2)本実施形態の印刷装置10は、インク供給部材50が内部にインク流路が形成されたチューブであり、回動中心C1がインクカートリッジ32の重心位置C2に対して一方側に偏って設けられ、連結部材52が重心位置C2に対して回動中心C1側に設けられる。本実施形態によれば、インクをインクジェットヘッド24へ供給するチューブの引き回しの長さを短縮できる。
【0066】
(3)本実施形態の印刷装置10は、回動中心C1が重心位置C2に対して重力方向の下方に偏って設けられる。本実施形態によれば、簡易な構成で、印刷装置10からインクカートリッジ32を取り外すことなく、インクカートリッジ32内のインクを十分に攪拌できる。
【0067】
(4)本実施形態の印刷装置10は、連結部材52がインクカートリッジ32のインク出口32Aとインク供給部材50のインク入口50Bとを接続するコネクタ部材56を有し、コネクタ部材56がインク出口32Aとの接続が解消された場合、インク出口32Aを封止する。本実施形態によれば、インクカートリッジ32のインク出口32Aからインクが漏れ出ることを防止できる。
【0068】
(5)本実施形態の印刷装置10は、台座部34がインク供給部材50のインク入口50Bが設けられると共にインクカートリッジ32を収納して回動する収納部材60、及び回動中心C1となる回動軸54を支持する支持部材62を有する。本実施形態によれば、インクカートリッジ32とインク供給部材50とを連結した状態で収納部材60が回動するので、簡易な構成で、印刷装置10からインクカートリッジ32を取り外すことなく、インクカートリッジ32内のインクを十分に攪拌できる。
【0069】
(6)本実施形態の印刷装置10は、収納部材60が回動軸54に対して直行方向に延設された平面部材64を有し、支持部材62が平面部材64に対向する対向部材62Aを有し、平面部材64と対向部材62Aとは、収納部材60が回動する全範囲において対向して配置される。本実施形態によれば、平面部材64は、インクカートリッジ32を収納したまま回動する収納部材60を補強する機能を有し、平面部材64と対向部材62Aとが収納部材60が回動する全範囲において対向するので、対向部材62Aが収納部材60の回動をガイドする機能を有することとなる。従って、簡易な構成でインクカートリッジ32を所望の方向へ回動可能とする。
【0070】
(7)本実施形態の印刷装置10は、平面部材64及び対向部材62Aの一方に溝カム70が形成され、平面部材64及び対向部材62Aの他方に溝カム70に係合する突起部72が形成され、溝カム70の端部に突起部72が当接することで収納部材60の回動が制限される。本実施形態によれば、台座部34は溝カム70によってその回動が制限されるため、インクカートリッジ32の回動量を容易に調整できる。
【0071】
(8)本実施形態の印刷装置10は、収納部材60及び支持部材62がインクカートリッジ32毎に設けられる。本実施形態によれば、インクカートリッジ32毎に回動可能となるので、容量の大きいインクカートリッジ32であっても大きな力を必要とせずに回可能となる。
【0072】
(9)本実施形態の印刷装置10は、インクカートリッジ32が台座部34と共に回動させる持ち手部材58が設けられる。本実施形態によれば、手動によってインクカートリッジ32が容易に回動可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、インクカートリッジ32内のインクを攪拌可能とする印刷装置として有用である。
【符号の説明】
【0074】
10 印刷装置
24 インクジェットヘッド
32 インクカートリッジ
32A インク出口
34 台座部
50 インク供給部材
50B インク入口
52 連結部材
54 回動軸
56 コネクタ部材
58 持ち手部材
60 収納部材
62 支持部材
62A 対向部材
64 平面部材
70 溝カム
72 突起部
C1 回動中心
C2 重心位置