(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B65D47/06 110
(21)【出願番号】P 2019213753
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05699927(US,A)
【文献】米国特許第04184604(US,A)
【文献】特開2008-308225(JP,A)
【文献】実開平06-032340(JP,U)
【文献】特開2002-028062(JP,A)
【文献】特開2011-152957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0255037(US,A1)
【文献】米国特許第04138033(US,A)
【文献】実開昭62-182245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、
前記容器の内側と連通
して前記容器の内容物を注出可能な飲み口としての連通部
と、前記連通部を連通状態と非連通状態と切り替え可能な開閉栓体と、が形成された天面壁と、
前記天面壁の周縁から軸方向に沿って垂下して前記開口縁に嵌合可能な周状スカート壁と、
前記周状スカート壁における外表面の少なくとも一部から前記容器の径方向の外側に向けて突出すると共に、前記内容物を飲用する飲用者の下唇を上面で支持可能なように前記天面壁の中心に対して前記飲み口と同じ側に配置された鍔部と、を含み、
前記鍔部は、前記周状スカート壁と連続する上側接続部と、前記上側接続部より下方に位置して径方向の外側に張り出した下側張り出し部と、前記上側接続部と前記下側張り出し部との間の湾曲部と、を有し、
前記連通部は、前記容器に前記蓋体が装着されたときに前記開口縁と同じ高さ又は当該開口縁よりも下がるように、前記天面壁のうち前記周状スカート壁との接続位置に近接して設けられてな
り、
前記湾曲部の上面には、前記飲用者の下唇が接触可能ように上方に向けて突出する少なくとも1つの突出部が設けられてなる、蓋体。
【請求項2】
前記天面壁は前記開口縁に近づくにつれて上がるように傾斜する傾斜領域を含み、
前記連通部は前記傾斜領域に配設されてなる、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記天面壁の周縁には、前記周状スカート壁と連続する内側周壁が形成されてなり、
前記周状スカート壁と前記内側周壁とで前記容器の開口縁が嵌合されるとともに、前記内側周壁に前記連通部が近接して配置されてなる、請求項1又は2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記連通部の前記軸方向における大きさh3は、前記鍔部の前記軸方向における大きさh4よりも大きい、請求項
1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項5】
前記天面壁には前記
開閉栓体の一部を収容可能な収容凹部が形成されてなり、
前記収容凹部の底面は、前記周状スカート壁の下端によりも前記軸方向に関して下側に配置される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口縁に装着可能な蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば紙製や樹脂製のカップ容器に内容物を入れた状態で移動する際には、このカップ容器内の内容物がこぼれないようカップ容器の開口縁に蓋体を装着することが行われている。かような蓋体としては、「LID(リッド)」と呼ばれる合成樹脂製の成形蓋が好適に用いられている。
【0003】
上記したカップ容器に保存される内容物としては、例えばホットコーヒーやお茶などホット飲料や、水やアイスコーヒーなどのコールド飲料など様々である。
それゆえ、例えば特許文献1においては、ホットコーヒーなどの熱い内容物であっても、内容物の摂取時において、この内容物の注出タイミングおよび内容物の熱さを確認しつつ口元で内容物を冷ましながら安全に摂取することが可能な蓋体が提案されている。
【0004】
このようにカップ容器に装着される蓋体は上記に例示される利便性を有する一方で、蓋体を介して飲用することから飲み残しなどの課題も存在する。このような課題に対し、例えば特許文献2においては、飲み残しを防ぎつつ現状タイプの蓋に対して見た目を大きく変更することのない蓋体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-308224号公報
【文献】特開2018-65597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献を含む従来構造の蓋体においては未だに改善すべき点が次のとおり存在する。すなわち上記したカップ容器はその優れた利便性から様々な場所に提供されることが想定できる。そしてかようなカップ容器をカバーする蓋体を用いることで、一度の多量の内容物が流れ出ずに火傷などを抑制できる。
【0007】
しかしながら例えば特許文献1のごとき従来の高蓋構造では、飲み口に至るまでに複数の液溜まり箇所が存在してしまうことから、液残りの問題は依然として存在する。また、容器の開口縁に対して飲み口が相対的に遠ざかるため、容器の傾斜角度と内容物の注出量とが必ずしも符合せず飲みにくさが指摘されることもある。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、開口縁を有する容器に装着可能であって、飲み残しを抑制しつつ飲みやすさも向上させた蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における蓋体は、(1)上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、前記容器の内側と連通して前記容器の内容物を注出可能な飲み口としての連通部と、前記連通部を連通状態と非連通状態と切り替え可能な開閉栓体と、が形成された天面壁と、前記天面壁の周縁から軸方向に沿って垂下して前記開口縁に嵌合可能な周状スカート壁と、前記周状スカート壁における外表面の少なくとも一部から前記容器の径方向の外側に向けて突出すると共に、前記内容物を飲用する飲用者の下唇を上面で支持可能なように前記天面壁の中心に対して前記飲み口と同じ側に配置された鍔部と、を含み、前記鍔部は、前記周状スカート壁と連続する上側接続部と、前記上側接続部より下方に位置して径方向の外側に張り出した下側張り出し部と、前記上側接続部と前記下側張り出し部との間の湾曲部と、を有し、前記連通部は、前記容器に前記蓋体が装着されたときに前記開口縁と同じ高さ又は当該開口縁よりも下がるように、前記天面壁のうち前記周状スカート壁との接続位置に近接して設けられてなり、前記湾曲部の上面には、前記飲用者の下唇が接触可能ように上方に向けて突出する少なくとも1つの突出部が設けられてなる。
【0010】
また、上記(1)に記載の蓋体においては、(2)前記天面壁は前記開口縁に近づくにつれて上がるように傾斜する傾斜領域を含み、前記連通部は前記傾斜領域に配設されてなることが好ましい。
【0011】
また、上記(1)又は(2)に記載の蓋体においては、(3)前記天面壁の周縁には、前記周状スカート壁と連続する内側周壁が形成されてなり、前記周状スカート壁と前記内側周壁とで前記容器の開口縁が嵌合されるとともに、前記内側周壁に前記連通部が近接して配置されてなることが好ましい。
【0014】
また、上記(4)又は(5)に記載の蓋体においては、(6)前記連通部の前記軸方向における大きさh3は、前記鍔部の前記軸方向における大きさh4よりも大きいことが好ましい。
【0015】
また、上記(1)~(6)のいずれかに記載の蓋体においては、(7)前記天面壁には前記開閉栓体の一部を収容可能な収容凹部が形成されてなり、前記収容凹部の底面は、前記周状スカート壁の下端によりも前記軸方向に関して下側に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、飲み残しを抑制しつつ飲みやすさも向上させた蓋体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】合成樹脂製蓋体を斜め上方から見た外観斜視図である。
【
図2】合成樹脂製蓋体が装着可能な容器の外観斜視図である。
【
図3】合成樹脂製蓋体を側方から見た外観側面図である。
【
図4】
図1における合成樹脂製蓋体のA-A断面を示す模式図である。
【
図5】容器に合成樹脂製蓋体が装着された状態を説明するための断面図である。
【
図6】合成樹脂製蓋体を上方から俯瞰した外観図である。
【
図7】合成樹脂製蓋体を斜め下方から見た外観斜視図である。
【
図8】合成樹脂製蓋体の製造装置を模式的に示した図である。
【
図9】合成樹脂製蓋体の製造方法における状態遷移を模式的に示した状態遷移図(その1)である。
【
図10】合成樹脂製蓋体の製造方法における状態遷移を模式的に示した状態遷移図(その2)である。
【
図11】合成樹脂製蓋体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の合成樹脂製蓋体及びその製造方法について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、他の公知の構成を適宜補完してもよい。また、以下では鍔部30が合成樹脂製蓋体100の中心C(
図6参照)から延びる方向をX方向、合成樹脂製蓋体100の軸方向をZ方向、およびこれらX方向とZ方向に直交する方向をY方向として便宜的に設定する。
【0019】
<容器200>
まず
図2を参照しつつ、本実施形態における容器200について説明する。同図に示されるとおり、本実施形態の容器200としては、上面が開口した有底形状(一例としてカップ状)の容器が例示できる。また、この容器200の材質としては、特に制限はないが、例えば公知の紙材や樹脂材などを適用できる。
この容器200は、使用者が把持可能な側壁201、この側壁201の頂部に位置して合成樹脂製蓋体100が装着可能な開口縁202、および側壁201と協働して内容物を貯留する底部203を含んで構成されている。
【0020】
かような容器200は、例えばコーヒーやお茶など公知のホット飲料あるいは清涼飲料水など公知のコールド飲料を貯留する飲料用容器として適用可能であるが、飲料以外にも米飯や総菜など公知の食品を貯蔵する食品用容器や常備薬など公知の薬剤を保存する薬剤用容器として適用してもよい。
【0021】
このように本実施形態の容器200に貯留または保存可能な内容物としても、保存温度を特に限定せず、上記した各種飲料、食料および薬品などが一例として挙げられる。
また、図示では、開口縁202の内径よりも側壁201の軸方向長さが長くなる形状の容器200が例示されているが、側壁201が相対的に短い形状の容器であってもよい。さらに、容器200の側壁201の表面には、防水機能や耐熱機能を付与するなど使用目的に応じて種々の公知のコーティングや、各種の装飾が施されていてもよい。
【0022】
<合成樹脂製蓋体100>
次に
図1及び3~7も参照しつつ、本実施形態における合成樹脂製蓋体100の詳細構造について説明する。
図1などから理解できるとおり、本実施形態の合成樹脂製蓋体100は、上面が開口した容器200の開口縁202に装着可能であって、天面壁10と、周状スカート壁20と、鍔部30と、を含んで構成されている。なお後述するとおり鍔部30は、必須ではなく天面壁10に形成された連通部11の構成に応じて適宜省略することができる。
【0023】
また、合成樹脂製蓋体100の材質は、特に制限はないが、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレンなど公知の樹脂材を適用してもよい。また、本実施形態では、合成樹脂製蓋体100は、合成樹脂である必要は必ずしもなく、合成樹脂に代えて紙製の蓋体100としたり、紙をベースに樹脂材でコーティングされた蓋体100としてもよい。なお本実施形態では、樹脂製の場合における合成樹脂製蓋体100の材質として、例えば非晶質のポリエチレンテレフタレート樹脂やポリスチレン、ポリプロピレンなどが好適に使用できる。
【0024】
天面壁10は、連通部11、開閉栓体12、収容凹部13、および環状凸部14などを含んで構成されている。
図1及び4などで示すように、本実施形態における天面壁10は、中央付近に配置されて後述する収容凹部13を囲む凹部10aと、連通部11が容器200の開口縁202に近づくにつれて上がるように傾斜する傾斜領域10bと、この傾斜領域10bと連続して天面壁10の周囲を囲う内側周壁10cと、を含んで構成されていることが好ましい。
【0025】
連通部11は、前記した容器200の内側と外側を連通可能にする機能を有している。本実施形態では、容器200として飲料用容器を例示しているため、前記した連通部11は容器200の内容物を注出可能な飲み口であることが好ましい。
また、
図1及び4に示すとおり、本実施形態の連通部11は、容器200に合成樹脂製蓋体100が装着された際に中央側に向けて傾斜するように、前記した傾斜領域10bに配設されてなることが望ましい。この場合には、連通部11のうち径方向(
図4ではX方向)の外側(内側周壁10c側)に位置する部位は、径方向の内側(収容凹部13側)に位置する部位に比して軸方向における高さが高くなるように設定される。
【0026】
また、
図4などに示すとおり、本実施形態の傾斜領域10bは、中心側から径方向外側へ向けて非直線状に湾曲した形状となっていることが望ましい。これにより後述するヒンジ部12cを介した開閉栓体12の開閉性を向上させることができる。なお傾斜領域10bにおける上記「非直線状に湾曲した形状」としては、例えば上に向けて凸となるように湾曲してもよいし、下に凸となるように湾曲してもよいし、あるいは湾曲の度合いが一様でなく多段階で湾曲するようにしてもよい。また、本実施形態において傾斜領域10bは、中心側から径方向外側へ向けて直線状に傾斜した形状でもよい。
【0027】
また、
図4及び5に示すとおり、連通部11は、容器200に合成樹脂製蓋体100が装着されたときに高さ方向(軸方向、Z方向)に関して開口縁202と同じ高さ又は当該開口縁202よりも下がるように、天面壁10のうち後述する周状スカート壁20との接続位置(本実施形態では内側周壁10c)に近接して設けられてなることが望ましい。
より具体的には、本実施形態の内側周壁10cは、天面壁10の周縁で周状スカート壁20と連続するように形成されている。そして容器200に合成樹脂製蓋体100が装着されるときは、周状スカート壁20とこの内側周壁10cとで形成される空間内に容器200の開口縁202が嵌合される。
【0028】
これにより容器200から内容物を経口摂取する際に発生する液溜まり箇所の削減と蓋体と容器との嵌合部に掛かる液圧を抑制することが可能となっている。すなわち従来構造のドリンクリッドでは、飲用時までに少なくとも2箇所(例えば開口縁202における飲み口への立ち上がり付近、飲み口形成部付近)の液溜まり箇所が発生するが、本実施形態では飲み口が開口縁202に対して相対的に径方向および軸方向で近接するため上記した液溜まり箇所を削減して飲み残しを抑制することが可能となっている。更に、従来構造のドリンクリッドでは、上記した液溜まり箇所の発生により、蓋体と容器との嵌合部に液圧が掛かり、これにより嵌合部(周状スカート壁20と内側周壁10cとで形成される空間と開口縁202との隙間)から内容物が伝い漏れてしまうことがあった。これに対して本実施形態では、このような液溜まり箇所を削減し、上記した嵌合部に掛かる液圧を抑制しているので、この嵌合部からの内容物の伝い漏れを抑制することも可能となっている。
【0029】
また、従来構造のリッドでは、上記液溜まりとなる段差が存在しているため、飲用時に容器を傾けた際に開口縁付近から内容物が漏れ出してしまう恐れがある。これに対して本実施形態によれば、連通部11が開口縁202と同じ高さ又は当該開口縁202よりも下がるように開口縁202と近接して設けられているため、容器を傾斜して飲用する際にあたかも蓋を用いずに飲用しているかのごとく上記した液漏れを抑制できる。
【0030】
開閉栓体12は、上記した連通部11を連通状態と非連通状態とに切り替える機能を有して構成されている。かような開閉栓体12は、
図1及び7などに示すように、蓋部12a、フック部12bおよびヒンジ部12cを含んで構成されている。したがって、使用者は、例えばフック部12bに指などを引っ掛けることで容易に開閉栓体12を開くことができる。このとき、天面壁10に形成されたヒンジ部12cを介して連通部11(本実施形態では飲み口)が開閉可能に構成される。また、開閉栓体12のフック部12bは、収容凹部13に収容されることで仮留めすることも可能となっており、これにより連通部11を連通状態で維持することが可能となっている。
【0031】
図4及び
図5の対比から明らかなとおり、開閉栓体12は、初期状態(出荷時、未使用時など)においては、連通部11(本実施形態では飲み口)に対してブリッジ部11aを介して接続された状態となっている。このブリッジ部11aは、連通部11の周縁において1又は複数だけ設けられている。したがって
図4に示すとおり、連通部11と開閉栓体12との間は、ブリッジ部11aにより接続された領域か、あるいは間隙11bが設けられた領域となっている。なお、ブリッジ部11aの数としては、合成樹脂製蓋体の材質や開閉栓体12の開閉圧などに応じて任意の数を設定してもよい。
【0032】
なお開閉栓体12による初期開封性などを考慮すると、このブリッジ部11aは、ヒンジ部12cから遠い径方向外側でなく、開閉栓体12のサイド側(例えばフック部12bのサイド側)に位置することが好ましい。これにより、例えば連通部11が飲み口の場合には、開封後でバリなどが生じた場合でも飲用時の影響が少なくなり、さらには初期状態における開閉栓体12の開封性も向上させることができる。
また本実施形態では、上記のとおり、開閉栓体12と連通部11とは、初期状態において1又は複数のブリッジ部11aを介して接続された形態としたがこれに限られない。例えば開閉栓体12と連通部11とは、初期状態において薄肉部(他所に比して厚みが薄く破断し易く形成された部位)を介して接続された状態としてもよい。
【0033】
収容凹部13は、上述のとおりフック部12bを収容する機能を有している。また、収容凹部13の凹部形状は、フック部12bを若干嵌合する程度とされている。
図1から明らかなとおり、本実施形態の収容凹部13は、天面壁10の凹部10a内に配置されるため、収容凹部13の周囲には段部が形成されることとなる。したがって、開閉栓体12によって連通部11が連通状態となるときは、フック部12bが収容凹部13に収容されるとともに蓋部12aはこの段部に配置されることになる。
【0034】
さらに
図4及び5に示すとおり、本実施形態の収容凹部13は、その底面13tが、周状スカート壁20の下端によりも軸方向(Z方向)に関して下側に配置されることが好ましい。
また
図5からも明らかなとおり、本実施形態の収容凹部13は、容器200に合成樹脂製蓋体100が装着されたときに、容器200の開口縁202よりも軸方向における下方(容器200の内側)に配置されるように構成されている。したがって
図3などに示すように、高さ方向(軸方向、Z方向)に関し、周状スカート壁20の長さh1は、周状スカート壁20の上側頂部から収容凹部13の底面13tまでの長さh2よりも短くなるように構成される(底面13tが周状スカート壁20の下端から下方へ突出している)。
【0035】
このように周状スカート壁20の下端よりも下方に収容凹部13が突出することで、容器200に貯留する内容物が液体の場合には液面を整流することが可能となる。これにより、例えば使用者が容器200を把持して移動する際に内容物の液面が不用意に波立つことが抑制される。もちろん容器200に貯留する内容物が細かいな固体(粒状など)や半固体(ゲル状など)の場合であっても、この収容凹部13の上記作用によって安定して保持することが可能となっている。また、収容凹部13が周状スカート壁20の下端よりも下方に突出しているので、容器200が振動等で揺れて内容物が波打っても、連通部11から内容物が噴出することを軽減することができる。
【0036】
環状凸部14は、
図1及び6などに示すとおり、天面壁10の上面から軸方向の上方へ向けて立設された環状の凸部である。この環状凸部14は、合成樹脂製蓋体100が複数重ねて積まれた際に互いの蓋体が密接し過ぎることを抑制する機能を有している。すなわち、環状凸部14には周方向(Z軸周りであるθz方向)に複数の欠き領域が形成されているが、この欠き領域は合成樹脂製蓋体100毎に異なる位置となるように形成されている。
同図に示すとおり、天面壁10は中心側に向かって窪んだ形状となっているため、この天面壁10上に形成された環状凸部14は、過度な製品高さとならない蓋体を実現するのに寄与することもできる。
【0037】
したがって、例えば2つの合成樹脂製蓋体が積層された際には、この互いに相違する形状の環状凸部14によって完全には密接せず嵌り込みが抑制され、比較的容易に両者を分離することが可能となっている。なお本実施形態の環状凸部14は、凹部10aの半分を囲むように天面壁10の中央部に配置されているが、この形態に限られず凹部10aをほぼすべて囲むように天面壁10の上面のうち径方向の外側寄りに配置されていてもよい。
【0038】
周状スカート壁20は、前記した天面壁10の周縁から垂下するとともに、少なくともその一部が容器200の開口縁202に嵌合可能なように構成されている。より具体的には、
図4などに示されるとおり、周状スカート壁20の内側のうち上端部付近は上記した内側周壁10cと対向しており、これら周状スカート壁20と内側周壁10cとで囲まれた空間に容器200の開口縁202が挿入可能とされている。このとき開口縁202は上記空間内において緩やかに嵌合されることで、不用意に容器200から合成樹脂製蓋体100が離脱されるのが抑制されている。
【0039】
より具体的には、
図1及び7から明らかなとおり、本実施形態の周状スカート壁20には、周方向(θz方向)に渡って所定の間隔ごとに設けられた柱部21の間に、それぞれ中心側へ向かって突出する嵌合凸部22が形成されている。この複数の嵌合凸部22によって、周状スカート壁20と内側周壁10cとで囲まれた空間から、容器200の開口縁202が離脱することが抑制される。なお、嵌合凸部22の数や周方向における長さに関しては、どの程度の嵌合力を設定するかによって適宜調整される。
【0040】
なお本実施形態では上記周方向に沿って同じ長さの嵌合凸部22が形成されているが、この形態に限られない。すなわち、例えば連通部11に近づくにつれて嵌合凸部22の周方向長さを短くするなど、周方向における嵌合凸部22の長さを互いに異ならせてもよい。また、柱部21の周方向における長さについても、例えば連通部11に近づくにつれて長くするように構成してもよい。これにより、周方向における容器200に対する合成樹脂製蓋体100の嵌合力を変化させることができ、例えば後述する鍔部30の付近で相対的に上記嵌合力を弱めることで容器200から合成樹脂製蓋体100を離脱させ易くすることができる。
【0041】
鍔部30は、
図1、3及び6などに示すとおり、前記した周状スカート壁20における外表面の少なくとも一部から容器200の径方向に向けて突出するように構成されている。
より具体的に本実施形態の鍔部30は、周状スカート壁20と連続する上側接続部31と、この上側接続部31より下方に位置して径方向に張り出した下側張り出し部32と、上側接続部31と下側張り出し部32との間の湾曲部33と、を含んで構成されている。
【0042】
湾曲部33は、下側張り出し部32から上側接続部31まで湾曲する部位である。本実施形態の湾曲部33は、下側張り出し部32から上側接続部31までで上に凸となるように湾曲されている。しかしながら上記した湾曲部33の湾曲形態は一例であり、例えば下側張り出し部32から上側接続部31までで下に凸(換言すれば凹状)となるように湾曲部33が湾曲されていてもよい。
【0043】
上述したとおり、本実施形態の容器200は飲料用容器が例示されていることから、鍔部30は、容器200内の内容物を飲用する飲用者の下唇と接触可能なように、天面壁10の中心Cに対して連通部11(飲み口)と同じ側に配置されてなることが好ましい。これにより、鍔部30が下唇を支えながら容器200を傾けることができ、飲み易さがより一層向上することとなる。
【0044】
なお
図4及び5などに示すとおり、鍔部30の上側接続部31と周状スカート壁20との境界は厳密に管理される必要は必ずしもなく、鍔部30はこの周状スカート壁20の一部が径方向に延在した部位であるとも言える。また、周状スカート壁20に対する上側接続部31の軸方向における接続位置は、任意に設定可能であり、例えば上記した飲用時の下唇への接触圧など各種パラメータを鑑みて適宜調整することができる。
【0045】
また、鍔部30の下側張り出し部32に関しても、径方向への張り出し度合いは任意に設定可能であり、上記した容器200に対する合成樹脂製蓋体100の取り外し易さなど各種パラメータを鑑みて適宜調整することができる。
なお
図5などに示すごとく、本実施形態の下側張り出し部32は、周状スカート壁20の下端と同じ高さとなるように形成されてなることが好ましい。また、
図5に示すとおり、本実施形態の鍔部30の軸方向における長さh4は、連通部11の軸方向における長さh3よりも短くなるように設定されている。しかしながら本実施形態では上記例に限られず、例えばh4=h3もしくはh4>h3となるように設定されていてもよい。
【0046】
また、
図1に示すように、本実施形態の下側張り出し部32には、所定の間隙を隔てて周方向に沿って複数のリブ36aが形成されていてもよい。このとき、複数のリブ36aは、連通部11に近づくにつれて間隙が狭くなるようにそれぞれ形成されてなることが好ましい。これにより、使用者(飲用者)が例えば暗所などにおいて手触りで連通部11(飲み口)の位置を大まかに把握することや、鍔部30の端面で指を切ってしまうことを防止することが可能となっている。
【0047】
なお本実施形態では、同じ形状のリブ36aが周方向に沿って所定の間隙を有して配設されている例を示したが、周方向に関して互いに異なる長さ/大きさのリブ36aを形成してもよい。この場合、複数のリブ36aは、例えば連通部11に近づくにつれてリブ36aの上記した長さ又は大きさが大きくなるなど、周方向の位置に応じて変化するように構成してもよい。
【0048】
また、
図3及び4に示すとおり、湾曲部33の上面(上記した飲用者の下唇が接触可能な側)には、上に向けて突出する少なくとも1つの突出部34aが形成されていてもよい。本実施形態では、この突出部34aは、湾曲部33の中央に位置する凹部35内に配置されている。なお凹部35は、必須ではなく、凹部35を形成せずに突出部34aを湾曲部33上に形成してもよい。この突出部34aは、上記した周方向に沿って延びるように、且つ、互いに間隙を隔てて複数形成されてなることが好ましい。
【0049】
このように湾曲部33に少なくとも1つの突出部34aが設けられることで、例えば飲用時に飲用者の下唇が接触して鍔部30が折れ曲がる際に、この突出部34aを起点として折れ曲がることになる。すると、突出部34aを形成しない場合に比して、鍔部30全体が折れ曲がらずに過大な音が発生してしまうことが抑制できる。また、突出部34aが形成されることで、下唇との接触面積を少なくすることができ、例えばリップクリームや口紅など下唇に塗布された化粧材が鍔部30に残留することを抑制できる。
【0050】
なお本実施形態における突出部34aは、上記した周方向に沿って延在する形状としたが、これに限られず例えば周方向に所定の切り欠きを有して断続して形成されていてもよい。また、突出部34aが径方向に並ぶように複数形成される場合には、周方向に関して千鳥配置となるようにそれぞれの突出部34aが断続的に配置されていてもよい。
上記した実施形態の合成樹脂製蓋体100によれば、上述のとおり飲み易さを向上させつつ蓋厚も薄型化することが可能となっており、これにより利便性と分別性に加えて軽量化・低コスト化も実現される。また、本実施形態の合成樹脂製蓋体100は鍔部30を備えるため、この鍔部30の位置を手掛かりとして連通部11(本例では飲み口)の位置を暗所などでも簡易に把握することが可能となっている。
【0051】
<合成樹脂製蓋体の製造装置300>
次に
図1に加えて
図8も参照しつつ、本実施形態における合成樹脂製蓋体の製造装置300について説明する。
同図に示されるように、合成樹脂製蓋体の製造装置300は、上面が開口した容器200の開口縁202に装着可能であって、中心側に向かって下がるように傾斜した天面壁10に容器200の内外を連通する連通部11が設けられた合成樹脂製蓋体100の製造装置であって、第1支持部310、第2支持部320、打ち抜き刃部313、および傾斜手段を少なくとも含んでなる。
【0052】
第1支持部310は、シート状部材に形成された天面壁10の少なくとも一部を支持する機能を有している。このように、本実施形態の合成樹脂製蓋体100は、好ましくは公知のシート成形法によって成形される。例えば矩形状の樹脂製シート状部材に対して数行数列で並ぶように当該シート状部材に複数個の合成樹脂製蓋体が成形される。
より詳細には同図に示すように、第1支持部310は、天面壁10のうち連通部11の側(本例ではシート状部材の進行方向前側)を下方から支持する第1前方ガイド部311と、天面壁10のうち連通部11とは反対側(本例ではシート状部材の進行方向後ろ側)を下方から支持する第1後方ガイド部312と、を含んで構成されている。なお後述するとおり、第1前方ガイド部311は、シート状部材の位置決め機能も有して構成されている。
【0053】
第2支持部320は、前記したシート状部材とも対向可能に配置され、第1支持部310とともにシート状部材を挟んで支持する機能を有している。より詳細には、第2支持部320は、天面壁10のうち連通部11の側を上方から支持する第2前方ガイド部321と、天面壁10のうち連通部11とは反対側を上方から支持する第2後方ガイド部322と、を含んで構成されている。換言すれば、合成樹脂製蓋体の製造装置300においては、第1前方ガイド部311と対向するように第2前方ガイド部321が配置されるとともに、第1後方ガイド部312と対向するように第2後方ガイド部322が配置されている。
【0054】
また、上記した第1支持部310と第2支持部320とは、不図示の駆動機構を介して相対的に近接又は離間が可能となるように構成されている。かような駆動機構の例としては、特に制限はなく、例えば油圧または空圧シリンダ―やボールネジ機構あるいはサーボモータ機構など公知の種々の駆動手段を適用してもよい。
【0055】
また、後述するとおり、第1後方ガイド部312は、不図示の移動機構を介して上下方向(第2後方ガイド部322に向かう方向と平行な方向)に沿って移動が可能となっている。かような移動機構の例としては、特に制限はなく、例えばコイルバネを介して第2後方ガイド部322の近接移動に対して受動的に追従するように構成してもよいし、公知のサーボモータやシリンダ機構などを介して積極的に移動するように構成してもよい。
【0056】
打ち抜き刃部313は、前記した第1支持部310及び第2支持部320の少なくとも一方と近接して配置されて、天面壁10の連通部11における周縁の一部を打ち抜きする機能を有している。すなわち、図示においては本実施形態の打ち抜き刃部313が第1支持部310の側に配置されているが、この形態に限られず第2支持部320の側に配置されていてもよい。
【0057】
また、
図8から明らかなとおり、打ち抜き刃部313の上端側は、連通部11における周縁の一部を打ち抜けるように刃面313cutが配置されている。換言すれば、本実施形態の刃面313cutは、連通部11における周縁に対応した輪郭形状を有している。すなわち、刃面313cutは、合成樹脂製蓋体100における連通部11と開閉栓体12との間に1又は複数のブリッジ部11aが形成可能なように、間隙11bに対応した切断可能部とブリッジ部11aに対応した切断不能部とが並置された構造となっている。
【0058】
かような刃面313cutの例としては、種々の公知の刃材が適用できるが、本実施形態では刃面313cutとしてトムソン刃が好適である。上述したとおり、本実施形態では連通部11における周縁すべてではなく一部を打ち抜けるように刃面313cutの形状を複雑に加工する必要があることから、刃の形状において比較的自由度の高いトムソン刃が刃材として好ましいと言える。
【0059】
傾斜手段は、第1支持部310と打ち抜き刃部313との少なくとも一方を他方に対して傾斜させる機能を有している。より詳細には、本実施形態における傾斜手段は、第1後方ガイド部312と第2後方ガイド部322とで構成されている。すなわち、第2支持部320が下降して第1支持部310に押し付けられることで、傾斜手段としての第2後方ガイド部322が第1後方ガイド部312を下方に移動させるように構成されている。
【0060】
このように第1前方ガイド部311に対して第1後方ガイド部312が相対的に下降するために、本実施形態の傾斜手段は第1前方ガイド部311と第1後方ガイド部312との相対的な高さ位置を調整する機能を有していると言える。これにより、打ち抜き刃部313に対して連通部11を傾斜させて刃面313cutと連通部とを平行させることが可能となっている。
【0061】
なお本実施形態では、シート状部材(前駆体)自体を傾斜させて、鉛直方向に並んだ打ち抜き刃部313と上部当て板(押圧部材323)によって連通部11における周囲の一部を打ち抜く形態となっている。しかしながら本実施形態は上記に限られず、装置側を傾斜させる形態としてもよい。すなわち、例えば水平状態のシート状部材に対し、鉛直方向に対して斜めに傾斜した方向に沿って打ち抜き刃部313と上部当て板(押圧部材323)とを相対移動させて互いに近接させる形態としてもよい。あるいは、打ち抜き刃部313の刃面313cut自体を、トムソン刃に代えて傾斜した刃材を用いることで、水平でなく傾斜させてもよい。
【0062】
<合成樹脂製蓋体の製造方法>
次に
図9~11もさらに参照しつつ、上記した合成樹脂製蓋体100の製造方法について説明する。
すなわち本実施形態の合成樹脂製蓋体の製造方法は、上面が開口した容器200の開口縁202に装着可能であって中心側に向かって下がるよう傾斜した天面壁10に容器200の内外を連通する連通部11が設けられた合成樹脂製蓋体の製造方法であって、後述する各工程を含んでいてもよい。
【0063】
まず
図11に示すように、シート状部材に対して空圧力(真空又は圧空など)を用いて天面壁10とこの天面壁の周囲から垂下して開口縁202に嵌合可能な周状スカート壁20とを少なくとも含む前駆体110を成形する(ステップ1:成形工程)。
次いでステップ2では、
図9(a)に示すように、前駆体110が成形されたシート状部材を、打ち抜き装置としての合成樹脂製蓋体の製造装置300まで公知の搬送機構(不図示)を介して搬送する(ステップ2:搬送工程その1)。
【0064】
続くステップ3では、シート状部材の前駆体110が前ガイド(第1前方ガイド部311)に接触したか否かが判定される(ステップ3)。このとき、例えばカメラなど公知の撮像手段によって上記の接触判定を行ってもよいし、第1前方ガイド部311やその側方などに不図示のセンサーを配置して上記した接触判定を行ってもよい。
このステップ3でシート状部材の前駆体110が前ガイドに接触した後(ステップ3でYes、
図9(b)も参照)、すなわち前記した成形工程の後で、シート状部材に形成された天面壁10の少なくとも一部が第1支持部310で支持される。
【0065】
そして天面壁10の少なくとも一部が第1支持部310で支持された後、続くステップ4では上部押さえ(第2支持部320)が下降して第1支持部310と第2支持部320とが相対的に近接する。これにより、シート状部材の前駆体110は、天面壁10のうち連通部11の側を前方のガイド部(第1前方ガイド部311、第2前方ガイド部321)で、天面壁10のうち連通部11とは反対側を後方のガイド部(第1後方ガイド部312、第2後方ガイド部322)でそれぞれ挟持される。
【0066】
次いでステップ5では、
図9(c)に示すように、連通部11の周縁のうち少なくとも一部を打ち抜く打ち抜き刃部313と、シート状部材の前駆体110と、の少なくとも一方を傾斜させることで、打ち抜き刃部313の刃面313cutと天面壁10の連通部11とを平行させる(傾斜工程)。
より具体的には、前記した傾斜工程においては、第1支持部310に対して第2支持部320を近接させることで、シート状部材を挟持しつつ第1支持部310の一部(第1後方ガイド部312)が押し出されて打ち抜き刃部313の刃面313cutと連通部11とが平行になる。
【0067】
換言すれば、この傾斜工程においては、第1前方ガイド部311と第1後方ガイド部312との相対的な高さ位置が調整されるとも言える。
なお上記した傾斜度合いの判定に関しては、例えば赤外線センサーなど公知のセンサー(不図示)などを用いることで、打ち抜き刃部313の刃面313cutと連通部11とが平行になったか否かを検出してもよいし、第2後方ガイド部322による第1後方ガイド部312の追従移動量を検出してもよい。
【0068】
そして刃面313cutと連通部11とが平行になった場合(ステップ5でYes)には、次いで
図10(d)にも示すとおり、上部当て板(押圧部材323)が下降する。これにより、刃面313cutが連通部11に対して平行を維持した状態で打ち抜き刃部313によって連通部11の周縁のうち少なくとも一部が打ち抜かれる(打ち抜き工程)。
【0069】
より具体的には、前記した打抜工程では、刃面313cutの上に配置された連通部11に対して、当該刃面313cutと対向して配置された上部当て板(押圧部材323)を近接させることで、刃面313cutと押圧部材323とでシート状部材を挟みつつ連通部11の少なくとも一部(後に間隙11bとなる)が打ち抜かれることになる。これにより、シート状部材において間隙11bが形成された前駆蓋体120が形成される。
【0070】
そして連通部11の少なくとも一部が打ち抜かれた後、次いで上記した公知の搬送機構(不図示)を介してシート状部材を搬送(水平移動)させて前駆蓋体120の部位を合成樹脂製蓋体の製造装置300から搬出する(ステップ7)。
次いでステップ8では、公知の切り取り装置(不図示)を介して、このシート状部材から前駆蓋体120(連通部11の周縁の一部が打ち抜かれた前駆体110)を切り取る(切取工程)。
【0071】
シート状部材を水平移動させることで、以降は上記した工程が繰り返され、複数の合成樹脂製蓋体100がシート状部材から形成されることになる。
以上の工程を経ることで、シート状部材から合成樹脂製蓋体100が製造されることになる。なお、上記の説明ではシート状部材から1つの合成樹脂製蓋体100が製造される例を示したが、上記した打ち抜き装置や切り取り装置を搬送方向に対して並列に並べることで複数の合成樹脂製蓋体100を同時に製造してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態は本発明の趣旨を具現化した一例であり、本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてもよい。さらには本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で公知の構造や手法を適宜追加して変形してもよい。
【0073】
例えば、合成樹脂製蓋体の製造方法では、収容凹部13の底面13tが上方を向くよう逆さまにした状態で各種の工程を実行した(
図9など参照)。しかしながら本発明はこの形態に限られず、開閉栓体12のフック部12bが上方を向くようにした状態(
図1参照)で各種の工程を実行してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、ステップ4において、天面壁10のうち連通部11の側を前方のガイド部(第1前方ガイド部311、第2前方ガイド部321)で挟持したが、これに限らず、例えば連通部11の側を後方のガイド部(第1後方ガイド部312、第2後方ガイド部322)で挟持してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、ステップ4において、第2支持部320が下降することで第1支持部310と第2支持部320が相対的に近接するとしたが、これに限らず、例えば第1支持部310が上昇することで、第1支持部310と第2支持部320が相対的に近接するようにしてもよく、あるいは第1支持部310と第2支持部320双方が駆動することで相対的に近接するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、傾斜手段として第1後方ガイド部312を上下方向に沿って移動可能としたが、これに限らず、例えば第1後方ガイド部312の高さを第1前方ガイド部311の高さよりもあらかじめ低くしておく、第1前方ガイド部311を上下方向に沿って移動可能とする、あるいは、第1前方ガイド部311の高さを第1後方ガイド部312の高さよりあらかじめ低くしておくなど、第1前方ガイド部311と第1後方ガイド部312との相対的な高さ位置が調整される方法であれば、どのような手段を選択してもよい。
【0077】
更に、本実施形態では、傾斜手段を第1支持部310側に設けたが、これに限らず、例えば第2支持部320側に傾斜手段を設けてもよい。換言すれば、第2後方ガイド部322を上下方向に沿って移動可能とする、第2後方ガイド部322の高さを第2前方ガイド部321の高さより低くしておく、第2前方ガイド部321を上下方向に沿って移動可能とする、あるいは、第2前方ガイド部321の高さを第2後方ガイド部322の高さより低くしておくなど、第2前方ガイド部321と第2後方ガイド部322との相対的な高さ位置が調整されるようにしてもよい。
このように本実施形態には、第1支持部310及び第2支持部320の少なくとも一方は、天面壁10のうち連通部11の側を支持する前方ガイド部と、天面壁10のうち連通部11とは反対側を支持する後方ガイド部と、を含み、これら第1支持部310及び第2支持部320の少なくとも一方における前方ガイド部と後方ガイド部との相対的な高さ位置を調整する態様も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、飲み易さと分別性とを兼ね備えた合成樹脂製蓋体に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 合成樹脂製蓋体
10 天面壁
20 周状スカート壁
30 鍔部
110 前駆体
120 前駆蓋体
200 容器
201 側壁
202 開口縁
300 合成樹脂製蓋体の製造装置
310 第1支持部
320 第2支持部