(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20230926BHJP
B60C 9/08 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
B29D30/30
B60C9/08 J
(21)【出願番号】P 2019225698
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-067612(JP,A)
【文献】特開昭60-041229(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054584(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/054597(WO,A1)
【文献】特開2002-067613(JP,A)
【文献】特許第5629356(JP,B2)
【文献】米国特許第04185675(US,A)
【文献】特開2012-240373(JP,A)
【文献】特表2001-513039(JP,A)
【文献】特開2014-125005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/30
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向両側に配置される一対のビードコアに掛け渡されるカーカスプライを備え、前記カーカスプライは、タイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備えた空気入りタイヤの製造装置であって、
成型ドラムと、
前記成型ドラムを回転駆動させるドラム駆動装置と、
前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち一方のプライ片を供給する第1供給装置と、
前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち他方のプライ片を供給する第2供給装置と、
前記成型ドラムを回転駆動させつつ前記成型ドラムに前記一方及び他方のプライ片を同時に供給し、前記一方及び他方のプライ片のそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられるように前記ドラム駆動装置、前記第1供給装置及び前記第2供給装置の作動を制御する制御装置とを備える、空気入りタイヤの製造装置。
【請求項2】
前記カーカスプライは、トレッド部のタイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを備える第1プライと、前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置されて前記トレッド部に位置する内端部と、前記内端部からタイヤ径方向内側に延びるサイド部とをそれぞれ備える前記一対のプライ片を有する第2プライとを備え、
前記制御装置は、前記成型ドラムに巻き付けられた前記第1プライ上に前記一方及び他方のプライ片を供給するように前記第1供給装置及び前記第2供給装置の作動を制御する、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【請求項3】
前記第1供給装置は、前記第1プライと接合する接合テープが取り付けられた前記一方のプライ片を供給し、
前記第2供給装置は、前記第1プライと接合する接合テープが取り付けられた前記他方のプライ片を供給する、請求項2に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【請求項4】
前記第1供給装置は、前記成型ドラムに上側から前記一方のプライ片を供給し、
前記第2供給装置は、前記成型ドラムに下側から前記他方のプライ片を供給し、
前記制御装置は、前記一方及び他方のプライ片の2つのジョイント部がタイヤ周方向に180度異なる位置に設けられるように前記ドラム駆動装置、前記第1供給装置及び前記第2供給装置の作動を制御する、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【請求項5】
前記第2供給装置は、
前記成型ドラムの下方に配置されて前記他方のプライ片を保持する保持部と、
前記保持部を上下方向に移動させる保持部移動機構と、を備え、
前記他方のプライ片を保持した保持部が前記保持部移動機構によって上側に移動されることにより前記成型ドラムに前記他方のプライ片を供給する、請求項4に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【請求項6】
タイヤ幅方向両側に配置される一対のビードコアに掛け渡されるカーカスプライを備え、前記カーカスプライは、タイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備えた空気入りタイヤの製造方法であって、
成型ドラムを回転駆動させ、
前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち一方のプライ片を供給し、
前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち他方のプライ片を供給し、
前記一方及び他方のプライ片は、前記一方及び他方のプライ片のそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられるように前記成型ドラムを回転駆動させつつ前記成型ドラムに同時に供給される、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのカーカスプライは、一対のビード部間で連続する第1プライと、この第1プライのタイヤ径方向外側に配置された不連続な第2プライとを備える。第2プライは、トレッド部から一対のビード部のいずれかにそれぞれ延びる一対のプライ片を備える。トレッド部の中央には、2枚のプライ片がいずれも存在しない領域、つまり中抜き部が設けられている。第2プライの中抜き部は、基本的に相反する2種類の性能の両立を意図している。一方の種類の性能は、剛性(操縦安定性向上に寄与する)と耐カット性であり、他方の種類の性能は、軽量化とそれによる転がり抵抗低減である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造は、剛性と耐カット性を確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることができるものの、タイヤ周方向におけるユニフォミティ(均一性)について言及されておらず、タイヤ周方向における均一性の向上について改善の余地がある。また、空気入りタイヤを製造する際には、生産性良く製造することが望まれる。
【0005】
本発明は、空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる空気入りタイヤの製造装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤ幅方向両側に配置される一対のビードコアに掛け渡されるカーカスプライを備え、前記カーカスプライは、タイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備えた空気入りタイヤの製造装置であって、成型ドラムと、前記成型ドラムを回転駆動させるドラム駆動装置と、前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち一方のプライ片を供給する第1供給装置と、前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち他方のプライ片を供給する第2供給装置と、前記成型ドラムを回転駆動させつつ前記成型ドラムに前記一方及び他方のプライ片を同時に供給し、前記一方及び他方のプライ片のそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられるように前記ドラム駆動装置、前記第1供給装置及び前記第2供給装置の作動を制御する制御装置とを備える、空気入りタイヤの製造装置を提供する。
【0007】
本構成により、空気入りタイヤは、カーカスプライがタイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備える場合に、一対のプライ片の2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられる。このため、2つのジョイント部がタイヤ周方向の同じ位置に設けられる場合に比してジョイント部をタイヤ周方向に分散させ、空気入りタイヤにおいてタイヤ周方向における均一性の向上を図ることができる。
【0008】
プライ片のジョイント部は、プライ片の非ジョイント部に比して剛性が増大する。そのため、プライ片のジョイント部は、タイヤが内圧充填され膨出変形されるときに非ジョイント部に比して膨出変形しにくくなる。従って、プライ片のジョイント部は、空気入りタイヤにおいて凹みとなって現れるおそれがある。
【0009】
一対のプライ片の2つのジョイント部をタイヤ周方向の異なる位置に設けることで、2つのジョイント部をタイヤ周方向の同じ位置に設ける場合に比して2つのジョイント部に起因する凹みをタイヤ周方向に分散させ、タイヤ周方向における均一性の向上を図ることができる。
【0010】
空気入りタイヤの製造において、成型ドラムを回転駆動させつつ成型ドラムに一方及び他方のプライ片が同時に供給されるので、成型ドラムに一方及び他方のプライ片が順に供給される場合に比して、成型ドラムに一方及び他方のプライ片を供給する供給時間を短縮し、生産性良く製造することができる。したがって、空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0011】
前記カーカスプライは、トレッド部のタイヤ径方向内側に位置する中央部と、中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを備える第1プライと、第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置されてトレッド部に位置する内端部と、内端部からタイヤ径方向内側に延びるサイド部とをそれぞれ備える一対のプライ片を有する第2プライとを備える。第2プライの一方及び他方のプライ片は、成型ドラムに巻き付けられた第1プライ上に供給される。
【0012】
第1プライ上の第2プライは、一対のプライ片を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片の内端部の間には、プライが存在しない中抜き部がある。かかる中抜き部のある第2プライを採用したことにより、第2プライが1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。また、軽量化によって転がり抵抗を低減させることができる。
【0013】
サイドウォール部において、2層のプライ、つまり第1プライのサイド部と第2プライのプライ片のサイド部とが配置されている。このようにサイドウォール部において、プライが2層設けられていることにより、必要な耐カット性が確保される。また、プライが2層設けられていることで、サイドウォール部における必要な剛性が確保される。
【0014】
したがって、剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることができ、加えて空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0015】
前記第1供給装置は、第1プライと接合する接合テープが取り付けられた一方のプライ片を供給し、前記第2供給装置は、第1プライと接合する接合テープが取り付けられた他方のプライ片を供給することが好ましい。
【0016】
本構成により、第1プライ上に接合テープが取り付けられた第2プライの一方及び他方のプライ片が供給されるので、接合テープによって第1プライと第2プライとを強固に接合させることができる。
【0017】
前記第1供給装置及び前記第2供給装置は、成型ドラムに上側及び下側からそれぞれ一方及び他方のプライ片を供給し、前記制御装置は、一方及び他方のプライ片の2つのジョイント部がタイヤ周方向に180度異なる位置に設けられるようにドラム駆動装置、第1供給装置及び第2供給装置の作動を制御する。
【0018】
本構成により、成型ドラムに上側及び下側からそれぞれ一方及び他方のプライ片が供給され、2つのジョイント部がタイヤ周方向に180度異なる位置に設けられるので、2つのジョイント部をタイヤ周方向に効果的に分散させ、空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0019】
前記第2供給装置は、成型ドラムの下方に配置されて他方のプライ片を保持する保持部と、保持部を上下方向に移動させる保持部移動機構とを備え、他方のプライ片を保持した保持部が保持部移動機構によって上側に移動されることにより成型ドラムに他方のプライ片を供給し得る。
【0020】
本構成により、成型ドラムに下側から第2プライの他方のプライ片が供給される場合に、他方のプライ片が保持部に保持された状態で上側に移動されて成型ドラムに供給されるので、成型ドラムに他方のプライ片を安定して供給することができる。
【0021】
本発明はまた、タイヤ幅方向両側に配置される一対のビードコアに掛け渡されるカーカスプライを備え、前記カーカスプライは、タイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備えた空気入りタイヤの製造方法であって、成型ドラムを回転駆動させ、前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち一方のプライ片を供給し、前記成型ドラムに前記一対のプライ片のうち他方のプライ片を供給し、前記一方及び他方のプライ片は、前記一方及び他方のプライ片のそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられるように前記成型ドラムを回転駆動させつつ前記成型ドラムに同時に供給される、空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0022】
本構成により、空気入りタイヤは、カーカスプライがタイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片を備える場合に、一対のプライ片の2つのジョイント部がタイヤ周方向の異なる位置に設けられる。このため、2つのジョイント部がタイヤ周方向の同じ位置に設けられる場合に比してジョイント部をタイヤ周方向に分散させ、空気入りタイヤにおいてタイヤ周方向における均一性の向上を図ることができる。
【0023】
プライ片のジョイント部は、プライ片の非ジョイント部に比して剛性が増大する。そのため、プライ片のジョイント部は、タイヤが内圧充填され膨出変形されるときに非ジョイント部に比して膨出変形しにくくなる。従って、プライ片のジョイント部は、空気入りタイヤにおいて凹みとなって現れるおそれがある。
【0024】
一対のプライ片の2つのジョイント部をタイヤ周方向の異なる位置に設けることで、2つのジョイント部をタイヤ周方向の同じ位置に設ける場合に比して2つのジョイント部に起因する凹みをタイヤ周方向に分散させ、タイヤ周方向における均一性の向上を図ることができる。
【0025】
空気入りタイヤの製造において、成型ドラムを回転駆動させつつ成型ドラムに一方及び他方のプライ片が同時に供給されるので、成型ドラムに一方及び他方のプライ片が順に供給される場合に比して、成型ドラムに一方及び他方のプライ片を供給する供給時間を短縮し、生産性良く製造することができる。したがって、空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る空気入りタイヤの製造装置及び製造方法によれば、空気入りタイヤをタイヤ周方向における均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部及びその周辺の子午線断面図。
【
図5】
図2のV-V線に沿ったカーカスプライの第1プライの断面図。
【
図6】
図2のVIa-VIa線及びVIb-VIb線に沿ったカーカスプライの第2プライの断面図。
【
図7】カーカスプライのジョイント部を説明するための空気入りタイヤの概略側面図。
【
図8】空気入りタイヤの製造方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から
図4は、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ1を示す。
【0029】
空気入りタイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、及びリング状の一対のビード部4を備える。
【0030】
トレッド部2は、タイヤ幅方向(
図1において符号TWで示す)に延びている。トレッド部2の表面、つまり踏面には溝2aが設けられている。
【0031】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両端からタイヤ径方向(
図1において符号TR)の内側にそれぞれ延びている。
【0032】
一対のビード部4は、タイヤ幅方向両側に配置され、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6を備える。ビードコア5は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー6は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー6は、ビードコア5のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端6aと、基端6aとは反対側の先端6bとを備え、基端6aから先端6bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6とを包むように設けられたストリップゴム7を備える。
【0033】
空気入りタイヤは、ビード部4間にトロイダル状に掛け渡されるカーカスプライ10を備える。本実施形態では、カーカスプライ10は、第1カーカスプライ(以下、「第1プライ」と呼ぶ)11と、第2カーカスプライ(以下、「第2プライ」と呼ぶ)12とを備える。第2プライ12は中抜き部13cを有するプライであるが、第1プライ11は中抜き部を有しない通常のプライである。第1及び第2プライ11,12については後に詳述する。カーカスプライ10の内側、つまり空気入りタイヤの最内周面には、インナーライナ8が設けられている。
【0034】
図2及び
図3を参照すると、トレッド部2、より具体的にはカーカスプライ10とトレッド部2との間に、無端状のベルト層20が設けられている。本実施形態では、ベルト層20は、2枚のベルト21,22を備える。ベルト21は、カーカスプライ10のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト22は、ベルト21のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。また、本実施形態では、下層のベルト21のタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト22のタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト21の端部21aは、ベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト21,22は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルト層20は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトを備えてもよい。
【0035】
ベルト層20のタイヤ径方向外側に隣接して、無端状のキャップ層30が設けられている。本実施形態のキャップ層30は、ベルト21,22の両方の端部21a,22aのいずれかをそれぞれ直接的に覆う幅狭の一対のエッジプライ31を備える。また、本実施形態のキャップ層30は、エッジプライ31のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、端部21a,22aを含むベルト21,22全体を1枚で覆う幅広のキャッププライ32を備える。キャップ層30は、1枚又は3枚以上のプライを備えてもよい。また、キャップ層30をなくしてもよい。
【0036】
ベルト層20のタイヤ幅方向外側の両端の部分とカーカスプライ10との間には、ゴム製で無端状の一対のパッド40がそれぞれ配置されている。パッド40の断面形状は偏平な三角形状である。ベルト21,22の端部21a,22a、エッジプライ31のタイヤ幅方向外側の端部31a、及びキャッププライ32の端部32aのタイヤ幅方向の位置は、パッド40のタイヤ幅方向の外側の端部40aと内側の端部40bとの間の領域、つまりパッド40が存在する領域に設定されている。パッド40をなくしてもよい。
【0037】
カーカスプライ10を構成する第1及び第2プライ11,12について説明する。
【0038】
第1プライ11は単一のプライであるが、第2プライ12は前述のように中抜き部13cを有する不連続なプライであり、一対のプライ片13から構成されている。後述するように、第1プライ11と一対のプライ片13とは接合テープ(接合部材)14によって接合されている。第1プライ11と第2プライ12のプライ片13はいずれも、間隔をあけて並設した複数本のコードをゴムで被覆した帯状のシートである。
【0039】
第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、モジュラス(一定のひずみを与えたときに生じる応力)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、破断強度(破断が生じる引張荷重)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
第1プライ11は、トレッド部2のタイヤ径方向内側に位置する中央部11aと、中央部11aのタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部11bとを備える。一対のサイド部11bは同様に構成されている。サイド部11bはサイドウォール部3に配置されている。第1プライ11の個々のサイド部11bは、ビードコア5よりもタイヤ径方向外側で終端する端部11cを備える。換言すれば、第1プライ11はビードコア5に対して巻き上げられていない。
【0041】
本実施形態では、第1プライ11のサイド部11bの端部11cは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向内側であってビードフィラー6の基端6aよりもタイヤ径方向外側に位置する。つまり、第1プライ11のサイド部11bはビードフィラー6に重なっている。
【0042】
第2プライ12は、第1プライ11に対してタイヤ径方向外側に隣接して配置されており、タイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片13により構成された不連続なプライである。一対のプライ片13は後述するジョイント部J2,J3の位置を除いて同様に構成されている。プライ片13は、ベルト層20と第1プライ11の中央部11aとの間に配置された内端部13aを有する。内端部13aとベルト層20との間にはパッド40が介在している。プライ片13の内端部13aのタイヤ幅方向の位置は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向外側の領域に、より具体的にはベルト層20を構成するベルト21,22の端部21a,22aのいずれよりもタイヤ幅方向内側の領域に設定されている。トレッド部2におけるタイヤ幅方向中央の領域、より具体的には一対のプライ片13の内端部13a間の領域に、中抜き部13cが設けられている。この中抜き部13cでは、第2プライ12は存在せず、第1プライ11の中央部11aのみが存在する。
【0043】
プライ片13は、内端部13aからタイヤ径方向内側に延びるサイド部13bを備える。サイド部13bは、第1プライ11のサイド部11bのタイヤ幅方向外側に隣接して配置されている。
【0044】
プライ片13は、サイド部13bと連続して設けられ、ビードコア5に対してタイヤ幅方向において内側から外側に巻き上げられた巻上部13dを備える。巻上部13dはサイドウォール部3で終端している。
【0045】
プライ片13の巻上部13dは、ビード部4、つまりビードコア5とビードフィラー6よりもタイヤ幅方向内側に配置された内側部13eを備える。また、巻上部13dは、内側部13eと連続して設けられてビードコア5に巻き掛けられた巻掛部13fを備える。さらに、巻上部13dは、巻掛部13fと連続して設けられ、ビード部4よりもタイヤ幅方向外側に配置された外側部13gを備える。外側部13gはサイド部13bのタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。この外側部13gの端部がプライ片13の外端部13hを構成している。外端部13hは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2よりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0046】
空気入りタイヤ1は、第1プライ11の一対のサイド部11bのいずれかと、一対のプライ片13のいずれかの巻上部13d、より具体的には内側部13eとを、それぞれ接合する一対の接合テープ14を備える。
図4に最も明瞭に示すように、接合テープ14は、第1プライ11のサイド部11bのうち端部11cを含む部分と、プライ片13の巻上部13dの内側部13eとを接合している。
【0047】
接合テープ14は、ゴム製であって、第1プライ11の第2プライ12への接合強度を確保する上で、500gf以上の粘着力を有することが好ましい。
【0048】
接合テープ14のタイヤ径方向外側の端部14aは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側に位置している。接合テープ14のタイヤ径方向内側の端部14bのタイヤ径方向の位置は、ビードフィラー6の基端6aと先端6bの間に設定されている。
【0049】
第1プライ11の端部11cは、接合テープ14のタイヤ幅方向における内側の端部14bと外側の端部14bとの間に位置している。
【0050】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1について、
図5から
図7を参照してさらに説明する。
【0051】
図5では、カーカスプライ10の第1プライ11の断面を示している。カーカスプライ10の第1プライ11は、
図5に示すように、円筒状に巻回され、一端部11dと他端部11eとが重ね合わせて接合される。第1プライ11の周方向両端部である一端部11d及び他端部11eが重ね合わせて接合されたジョイント部J1は、第1プライ11のジョイント部J1を除く非ジョイント部11fに比して厚く形成される。
【0052】
カーカスプライ10の第2プライ12の一対のプライ片13についてもそれぞれ、第1プライ11と同様に、円筒状に巻回され、一端部と他端部とが重ね合わせて接合される。プライ片13の周方向両端部である一端部及び他端部が重ね合わせて接合されたジョイント部は、プライ片13のジョイント部を除く非ジョイント部に比して厚く形成される。
【0053】
図6では、カーカスプライ10の第2プライ12の断面を示し、具体的には一対のプライ片13の断面を示している。
図6では、
図2のVIa-VIa線及びVIb-VIb線に沿った一方及び他方のプライ片13の断面を符号13A,13Bで示している。
【0054】
一方のプライ片13Aは、
図6に示すように、円筒状に巻回され、一端部13jと他端部13kとが重ね合わせて接合される。プライ片13Aの周方向両端部である一端部13j及び他端部13kが重ね合わせて接合されたジョイント部J2は、プライ片13Aのジョイント部J2を除く非ジョイント部13mに比して厚く形成される。
【0055】
他方のプライ片13Bについても、
図6に示すように、円筒状に巻回され、一端部13jと他端部13kとが重ね合わせて接合される。プライ片13Bの周方向両端部である一端部13j及び他端部13kが重ね合わせて接合されたジョイント部J3は、プライ片13Bのジョイント部J3を除く非ジョイント部13mに比して厚く形成される。
【0056】
図7では、第1プライ11のジョイント部をJ1として破線で示し、第2プライ12の一方のプライ片13Aのジョイント部をJ2として破線で示し、第2プライ12の他方のプライ片13Bのジョイント部をJ3として破線で示す。
図7に示すように、第2プライ12の一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3は、タイヤ周方向TCの異なる位置に、具体的にはタイヤ周方向反対側であるタイヤ周方向に180度異なる位置に設けられる。
【0057】
第2プライ12の2つのジョイント部J2,J3は、第1プライ11のジョイント部J1ともタイヤ周方向の異なる位置に設けられる。第2プライ12の2つのジョイント部J2,J3はそれぞれ、第1プライ11のジョイント部J1に対してタイヤ周方向に90度異なる位置に設けられる。
【0058】
図7に示すように、空気入りタイヤ1の軸方向を中心として第2プライ12の一方のプライ片13のジョイント部J2のタイヤ周方向の位置を0度とすると、第2プライ12の他方のプライ片13のジョイント部J3は、タイヤ周方向の位置θ1が180度になるように設けられ、第1プライ11のジョイント部J1はタイヤ周方向の位置θ2が270度になるように設けられる。第1プライ11と第2プライ12の一対のプライ片13とは、ジョイント部J1,J2,J3がタイヤ周方向に分散して設けられている。
【0059】
図5に示すように、第1プライ11のジョイント部J1のタイヤ周方向の位置は、ジョイント部J1のタイヤ径方向に延びる中心線L1の角度位置をいい、中心線L1は、タイヤ中心を通ってジョイント部J1をタイヤ周方向に2等分する直線である。第2プライ12の一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3についても、第1プライ11と同様に、タイヤ周方向の位置が設定される。
【0060】
第1プライ11のジョイント部J1は、ジョイント部J1の中心線L1に対してタイヤ周方向の一方側及び他方側にそれぞれ所定角度、例えば2度以内の角度であることが好ましいが、これに限定されるものではない。第2プライ12のジョイント部J2、J3についても、ジョイント部J2、J3の中心線L2,L3に対してタイヤ周方向の一方側及び他方側にそれぞれ所定角度、例えば2度以内の角度であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0061】
第2プライ12の2つのジョイント部J2,J3は、タイヤ周方向に180度異なる位置に設けられてタイヤ周方向に点対称に設けられているが、180度以外の異なる位置に設けるようにしてもよい。また、第2プライ12の2つのジョイント部J2,J3は、第1プライ11のジョイント部J1に対してタイヤ周方向に90度異なる位置に設けられているが、90度以外の異なる位置に設けるようにしてもよい。
【0062】
次に、このようにして構成される空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。
【0063】
空気入りタイヤ1を製造する際には先ず、トレッド部2を形成するトレッドゴム2b及びベルト21,22など、円筒状のトレッドバンドを成型するためのタイヤ構成部材を準備する。一方、第1プライ11と第2プライ12とを備えて一対のビードコア5に掛け渡されるカーカスプライ10及びインナーライナ8など、円筒状のカーカスバンドを成型するためのタイヤ構成部材を準備する。
【0064】
そして、成型ドラムに、インナーライナ8及びカーカスプライ10などのタイヤ構成部材を順に巻き付けて、円筒状のカーカスバンドを成型する。カーカスバンドの成型では、成型ドラムに第1プライ11を供給して第1プライ11を円筒状に巻回すると共に第1プライ11の周方向両端部11d,11eが重ね合わせて接合されたジョイント部J1を形成する。
【0065】
次いで、第2プライ12の一方のプライ片13を成型ドラムに供給して円筒状に巻回すると共に一方のプライ片13の周方向両端部が重ね合わせて接合されたジョイント部J2を形成し、第2プライ12の他方のプライ片13を成型ドラムに供給して円筒状に巻回すると共に他方のプライ片13の周方向両端部が重ね合わせて接合されたジョイント部J3を形成する。タイヤ幅方向に離間して配置される第2プライ12の一方及び他方のプライ片13は、後述する空気入りタイヤの製造装置50を用いて同時に供給されて巻回される。
【0066】
図8に示すように、第2プライ12の一対のプライ片13が巻き付けられる成型ドラム51が回転駆動され、成型ドラム51に上側から一方のプライ片13Aが供給され、成型ドラム51に下側から他方のプライ片13Bが供給される。一方及び他方のプライ片13A,13Bは、それぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向の異なる位置に設けられるように成型ドラム51に同時に供給されて巻回される。
【0067】
一方及び他方のプライ片13A,13Bは、成型ドラム51に、具体的には成型ドラム51に巻き付けられた第1プライ11上に同時に供給されて巻回される。一方及び他方のプライ片13A,13Bにはそれぞれ、図示されていないが、第1プライ11と接合する接合テープ14が取り付けられている。一方及び他方のプライ片13A,13Bは、接合テープ14が取り付けられた状態で成型ドラム51に同時に供給されて巻回される。
【0068】
カーカスバンドが成型されると、カーカスバンドが別の成型ドラムに移送され、その後にカーカスバンドの両側部にビードコア5及びビードフィラー6が組み付けられると共にカーカスバンドがビードコア5の周りにドラム幅方向両側に折り返されて、円筒状のグリーンケースが成型される。
【0069】
一方、ベルト及びトレッドゴムなどのタイヤ構成部材を更に別の成型ドラムに順に巻き付けて、円筒状のトレッドバンドを成型する。そして、トレッドバンドをグリーンケースの径方向外側に搬送した後に、グリーンケースが径方向外側へトロイダル状に膨出されて、グリーンケースの外面がトレッドバンドの内面に結合されて、カーカストレッド結合体が成型される。
【0070】
次に、カーカストレッド結合体に一対のサイドウォールゴム9が巻き付けられて、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは、タイヤ加硫金型を備えた加硫成型機(不図示)によって加硫成型され、空気入りタイヤ1が製造される。
【0071】
一対のサイドウォールゴム9は、カーカストレッド結合体が成型された後に巻き付けられて成型されているが、カーカスバンドを成型するときにサイドウォールゴム9を巻き付けて成型することも可能である。
【0072】
本実施形態では、第2プライ12がビードコア5に対して巻き上げられた巻上部13dを備え、第1プライ11はビードコア5に対して巻き上げられていないが、第1プライ11がビードコア5に対して巻き上げられた巻上部を備えることも可能である。また、第1プライ11及び第2プライ12が共にビードコア5に対して巻き上げられた巻上部を備えるようにしてもよい。
【0073】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造装置について、
図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、空気入りタイヤを製造するための空気入りタイヤの製造装置50は、インナーライナ8及びカーカスプライ10などのタイヤ構成部材を順に巻き付けて円筒状のカーカスバンドを成型するものであり、具体的にはカーカスプライ10の第2プライ12を第1プライ11上に巻き付けるものである。
【0074】
製造装置50は、第2プライ12の一対のプライ片13が巻き付けられる成型ドラム51と、成型ドラム51を回転駆動させるドラム駆動装置52と、成型ドラム51に一方のプライ片13を供給する第1供給装置60と、成型ドラム51に他方のプライ片13を供給する第2供給装置70とを備えている。
【0075】
成型ドラム51には、第2プライ12の一対のプライ片13が巻き付けられる前に、第2プライ12のタイヤ径方向内側に配置されるインナーライナ8及びカーカスプライ10の第1プライ11などのタイヤ構成部材が巻き付けられている。
【0076】
ドラム駆動装置52として、成型ドラム51を回転駆動させるモータ52が用いられる。ドラム駆動装置52として、モータに代えて成型ドラム51を回転駆動させる他のドラム駆動装置を用いることも可能である。
【0077】
第1供給装置60は、成型ドラム51に上側から一方のプライ片13Aに供給するサービサ61と、一方のプライ片13Aを案内するガイド部62とを備えている。第1供給装置60は、サービサ61から供給された一方のプライ片13Aをガイド部62によって案内して成型ドラム51に上側から供給するように構成されている。
【0078】
第2供給装置70は、成型ドラム51に下側から他方のプライ片13Bを供給するサービサ71と、他方のプライ片13Bを案内するガイド部72とを備えている。第2供給装置70はまた、サービサ71から供給された他方のプライ片13Bを保持する保持部75と、保持部75を上下方向に移動させる保持部移動機構76とを備えている。
【0079】
保持部移動機構76として、保持部75を上下方向に移動可能に構成されたシリンダ76が用いられる。保持部移動機構76として、シリンダに代えて保持部75を上下方向に移動させる他の保持部移動機構を用いることも可能である。
【0080】
第2供給装置70は、サービサ71から供給された他方のプライ片13Bをガイド部27によって案内して
図9の実線で示す下側位置にある保持部75の上面に供給し、他方のプライ片13Bを保持した保持部75をシリンダ76によって、
図9の二点鎖線で示す上側位置に移動させて他方のプライ片13Bを成型ドラム51に下側から供給するように構成されている。一方及び他方のプライ片13にはそれぞれ、接合テープ14が取り付けられている。
【0081】
製造装置50は、ドラム駆動装置52、第1供給装置60及び第2供給装置70bなどの作動を制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、ドラム駆動装置52としてのモータ52、第1供給装置60のサービサ61、第2供給装置70のサービサ71及びシリンダ76などの作動を制御する。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0082】
制御装置80は、成型ドラム51を回転駆動させつつ成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13A,13Bを同時に供給し、一方及び他方のプライ片13A,13Bのそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの異なる位置に設けられるようにドラム駆動装置52、第1供給装置60及び第2供給装置70の作動を制御する。
【0083】
制御装置80は、第1供給装置60によって成型ドラム51に、具体的には第1プライ12が巻き付けられた成型ドラム51に上側から一方のプライ片13Aを供給させる。制御装置80はまた、第2供給装置70によって成型ドラム51に、具体的には第1プライ12が巻き付けられた成型ドラム51に下側から他方のプライ片13Bを供給させる。一方のプライ片13Aの先端部と他方のプライ片13Bの先端部とは、成型ドラム51において幅方向に離間して周方向に180度異なる位置に供給される。
【0084】
そして、制御装置80は、成型ドラム51を
図9の矢印で示す方向に回転駆動させつつ成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13A,13Bを同時に供給させる。一方及び他方のプライ片13A,13Bはそれぞれ、
図9の二点鎖線で示すように成型ドラム51に巻き付けられ、一方及び他方のプライ片13A,13Bのそれぞれのタイヤ周方向両端部が重ね合わせて接合される2つのジョイント部J2,J3がタイヤ幅方向に離間してタイヤ周方向の異なる位置、具体的にはタイヤ周方向に180度異なる位置に設けられる。
【0085】
第1供給装置60では、成型ドラム51に上側から一方のプライ片13Bを供給するサービサ61は、巻き取り装置に巻き取られた帯状のプライ片シートを切断装置によって所定長さに切断して一方のプライ片13Bを供給するように構成されている。サービサ61は、予め所定長さに切断された一方のプライ片13Bを供給するように構成することも可能である。
【0086】
第2供給装置70では、成型ドラム51に下側から他方のプライ片13Bを供給するサービサ71は、巻き取り装置に巻き取られた帯状のプライ片シートを切断装置によって所定長さに切断して他方のプライ片13Bを供給するように構成されている。サービサ71は、予め所定長さに切断された他方のプライ片13Bを供給するように構成することも可能である。
【0087】
第2供給装置70は、サービサ71から供給された他方のプライ片13Bを保持部75に保持させてから成型ドラム51に供給するように構成されているが、保持部に保持させることなく、サービサ71から供給された他方のプライ片13Bを成型ドラム51に下側から供給するように構成してもよい。
【0088】
また、製造装置50では、成型ドラム51に上側及び下側にそれぞれ周方向に180度異なる位置に一方及び他方のプライ片13が供給されるように構成されているが、成型ドラム51に上側及び下側にそれぞれ180度以外の異なる角度位置になるように一方及び他方のプライ片13を供給することも可能である。
【0089】
前述したように、製造装置50において成型ドラム51に第1プライ11上に第2プライ12が巻き付けられ、カーカスバンドが成型されると、カーカスバンドが別の成型ドラムに移送され、円筒状のグリーンケースが成型される。そして、グリーンケースが径方向外側へトロイダル状に膨出されてトレッドバンドの内面に結合され、グリーンタイヤが成型される。成型されたグリーンタイヤは、加硫成型され、空気入りタイヤ1が製造される。
【0090】
空気入りタイヤ1では、第1プライ11と第2プライ12と接合する接合テープ14は、第2プライ12の一対のプライ片13の幅方向中央側に設けられているが、一対のプライ片13の幅方向端部側など他の部分に設けるようにすることも可能である。また、第1プライ11と第2プライ12を接合する接合テープを用いないようにすることも可能である。
【0091】
このように、本実施形態では、カーカスプライ10が一対のプライ片13を備えた空気入りタイヤの製造装置50は、成型ドラム51と、ドラム駆動装置52と、成型ドラム51に一方のプライ片13を供給する第1供給装置60と、成型ドラム51に他方のプライ片13を供給する第2供給装置70と、成型ドラム51を回転駆動させつつ成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13を同時に供給し、一方及び他方のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの異なる位置に設けられるようにドラム駆動装置52、第1及び第2供給装置60,70の作動を制御する制御装置80とを備える。
【0092】
これにより、空気入りタイヤ1は、カーカスプライ10がタイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片13を備える場合に、一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの異なる位置に設けられる。このため、2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの同じ位置に設けられる場合に比してジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCに分散させ、空気入りタイヤ1においてタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図ることができる。
【0093】
プライ片13のジョイント部J2,J3は、プライ片13の非ジョイント部13mに比して剛性が増大する。そのため、プライ片13のジョイント部J2,J3は、タイヤが内圧充填され膨出変形されるときに非ジョイント部13mに比して膨出変形しにくくなる。従って、プライ片13のジョイント部J2,J3は、空気入りタイヤ1において凹みとなって現れるおそれがある。
【0094】
一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCの異なる位置に設けることで、2つのジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCの同じ位置に設ける場合に比して2つのジョイント部J2,J3に起因する凹みをタイヤ周方向TCに分散させ、タイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図ることができる。
【0095】
空気入りタイヤ1の製造において、成型ドラム51を回転駆動させつつ成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13が同時に供給されるので、成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13が順に供給される場合に比して、成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13を供給する供給時間を短縮し、生産性良く製造することができる。したがって、空気入りタイヤ1をタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0096】
また、カーカスプライ10は、トレッド部2のタイヤ径方向内側に位置する中央部11aと、中央部11aの両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部11bとを備える第1プライ11と、第1プライ11に対してタイヤ径方向外側に配置されてトレッド部2に位置する内端部13aと、内端部13aからタイヤ径方向内側に延びるサイド部13bとをそれぞれ備える一対のプライ片13を有する第2プライ12とを備える。第2プライ12の一方及び他方のプライ片13は、成型ドラム51に巻き付けられた第1プライ11上に供給される。
【0097】
第1プライ11上の第2プライ12は、一対のプライ片13を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片13の内端部13aの間には、プライが存在しない中抜き部13cがある。かかる中抜き部13cのある第2プライ12を採用したことにより、第2プライ12が1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。また、軽量化によって転がり抵抗を低減させることができる。
【0098】
サイドウォール部3において、2層のプライ、つまり第1プライ11のサイド部11bと第2プライ12のプライ片13のサイド部13bとが配置されている。このようにサイドウォール部3において、プライが2層設けられていることにより、必要な耐カット性が確保される。また、プライが2層設けられていることで、サイドウォール部3における必要な剛性が確保される。
【0099】
したがって、剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることができ、加えて空気入りタイヤ1をタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0100】
また、第1供給装置60は、第1プライ11と接合する接合テープ14が取り付けられた一方のプライ片13を供給し、第2供給装置70は、第1プライ11と接合する接合テープ14が取り付けられた他方のプライ片13を供給する。これにより、第1プライ11上に接合テープ14が取り付けられた第2プライ12の一方及び他方のプライ片13が供給されるので、接合テープ14によって第1プライ11と第2プライ12とを強固に接合させることができる。
【0101】
また、第1供給装置60及び第2供給装置70は、成型ドラム51に上側及び下側からそれぞれ一方及び他方のプライ片13を供給し、制御装置80は、一方及び他方のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCに180度異なる位置に設けられるようにドラム駆動装置52、第1供給装置60及び第2供給装置70の作動を制御する。これにより、成型ドラム51に上側及び下側からそれぞれ一方及び他方のプライ片13が供給され、2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCに180度異なる位置に設けられるので、2つのジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCに効果的に分散させ、空気入りタイヤ1をタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0102】
また、第2供給装置70は、成型ドラム51の下方に配置されて他方のプライ片13を保持する保持部75と、保持部75を上下方向に移動させる保持部移動機構76とを備え、他方のプライ片13を保持した保持部75が保持部移動機構76によって上側に移動されることにより成型ドラム51に他方のプライ片13を供給する。これにより、成型ドラム51に下側から第2プライ12の他方のプライ片13が供給される場合に、他方のプライ片13が保持部75に保持された状態で上側に移動されて成型ドラム51に供給されるので、成型ドラム51に他方のプライ片13を安定して供給することができる。
【0103】
本実施形態ではまた、カーカスプライ10が一対のプライ片13を備えた空気入りタイヤ1の製造方法は、成型ドラム51を回転駆動させ、成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13を供給し、一方及び他方のプライ片13は、一方及び他方のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの異なる位置に設けられるように成型ドラム51を回転駆動させつつ成型ドラム51に同時に供給される。
【0104】
これにより、空気入りタイヤ1は、カーカスプライ10がタイヤ幅方向両側に離間して配置される一対のプライ片13を備える場合に、一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの異なる位置に設けられる。このため、2つのジョイント部J2,J3がタイヤ周方向TCの同じ位置に設けられる場合に比してジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCに分散させ、空気入りタイヤ1においてタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図ることができる。
【0105】
プライ片13のジョイント部J2,J3は、プライ片13の非ジョイント部13mに比して剛性が増大する。そのため、プライ片13のジョイント部J2,J3は、タイヤが内圧充填され膨出変形されるときに非ジョイント部13mに比して膨出変形しにくくなる。従って、プライ片13のジョイント部J2,J3は、空気入りタイヤ1において凹みとなって現れるおそれがある。
【0106】
一対のプライ片13の2つのジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCの異なる位置に設けることで、2つのジョイント部J2,J3をタイヤ周方向TCの同じ位置に設ける場合に比して2つのジョイント部J2,J3に起因する凹みをタイヤ周方向TCに分散させ、タイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図ることができる。
【0107】
空気入りタイヤ1の製造において、成型ドラム51を回転駆動させつつ成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13が同時に供給されるので、成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13が順に供給される場合に比して、成型ドラム51に一方及び他方のプライ片13を供給する供給時間を短縮し、生産性良く製造することができる。したがって、空気入りタイヤ1をタイヤ周方向TCにおける均一性の向上を図りつつ生産性良く製造することができる。
【0108】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
5 ビードコア
10 カーカスプライ
11 第1プライ
12 第2プライ
13,13A,13B プライ片
14 接合テープ
50 製造装置
51 成型ドラム
52 ドラム駆動装置
60 第1供給装置
70 第2供給装置
75 保持部
76 保持部移動機構
80 制御装置
J1 第1プライのジョイント部
J2,J3 プライ片のジョイント部