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  • 特許-積層体および積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20230926BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B32B15/082 B
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019550870
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034082
(87)【国際公開番号】W WO2020066457
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018178660
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391057421
【氏名又は名称】東レKPフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】山田 絵美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】都地 輝明
(72)【発明者】
【氏名】藤 信男
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223799(JP,A)
【文献】特開2004-031370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021666(WO,A1)
【文献】特開平03-260056(JP,A)
【文献】特開平01-214095(JP,A)
【文献】特開2005-007668(JP,A)
【文献】特開平09-055575(JP,A)
【文献】特開平11-222666(JP,A)
【文献】特開2018-135561(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素フィルムの少なくとも片面に、1層または2層以上の金属層を積層した金属膜を有する積層体であって、
前記金属膜は、金属層として銅を主成分とする層(以下、銅層1という)を含み、
前記フッ素フィルムと前記金属膜の密着力が0.5N/mm以上であり、
前記フッ素フィルムと前記金属膜との界面で金属膜を剥離し、前記金属膜側の剥離面のX線光電子分光法(XPS)による分析で検出されるフッ素原子が50atomic%以上であり、金属原子が4atomic%以下である、積層体。
【請求項2】
前記フッ素フィルムと前記金属膜との界面で金属膜を剥離し、前記金属膜側の剥離面のX線光電子分光法(XPS)による分析で検出される酸素原子が0.1atomic%以上3atomic%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記フッ素フィルムと前記金属膜との界面で金属膜を剥離し、前記金属膜側の剥離面のX線光電子分光法(XPS)による分析で検出されるC1sに帰属されるピークを100%とすると、結合状態がCFとなる割合が2.5%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記銅層1は、平均結晶粒径が50nm以上200nm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記金属膜は、前記フッ素フィルムの側から下地金属層、および、前記銅層1の順に積層され、前記下地金属層と前記銅層1とが接している、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記下地金属層は、銅、ニッケル、チタン、およびそれらの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記下地金属層は、厚みが1nm以上50nm以下である請求項5または6に記載の積層体。
【請求項8】
前記金属膜は、厚みが0.05μm以上20μm以下である、請求項1から7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記銅層1は、厚みが0.05μm以上3.0μm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記金属膜は、フッ素フィルムと接していない面の表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下である、請求項1から9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記金属膜は、3層以上の金属層を積層した金属膜である、請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記金属膜は、金属層として銅を主成分とする層(以下、銅層2という)を含み、
前記銅層2は、一方の面が前記銅層1と接する、請求項1~11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
フッ素フィルムの少なくとも片面にスパッタリング法にて下地金属層を形成し、前記下地金属層上に真空蒸着法にて銅層1を形成する、積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の積層体を用いたフッ素樹脂回路基板の製造方法であって、
積層体の銅層1上に電解めっきを用いて銅層2を形成して配線回路を形成する、フッ素樹脂回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板用途、回路材料用途等に好適に用いることが可能な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術、情報処理技術の発達に伴って、情報通信分野で扱う電気信号は、近年ますます高速化・大容量化している。通信の高速・大容量化を達成するために電気信号は高周波化が進行しているが、高周波の電気信号は伝送損失が大きくなりやすいため、高周波の電気信号に対応した回路基板が求められている。伝送損失は導体損失と誘電体損失に分離でき、それぞれの損失低減が必要となる。電気信号が高周波になると、導体に流れる電流が導体の表面に集中する表皮効果の影響が大きくなることが知られている。したがって、導体表面に凹凸が存在する場合は伝送経路長が変化して損失が増大するため、導体表面は平滑である方が導体損失は小さくなる。一方、誘電体損失は、回路基板の絶縁体層に由来するもので、絶縁体層の誘電率と誘電正接が小さい方が、誘電体損失は小さくなることが知られている。
【0003】
誘電率と誘電正接が小さい代表的な材料としてはフッ素樹脂が挙げられ、高周波でも伝送損失が小さい回路基板として、フッ素フィルムを使用した回路基板が開発されている(特許文献1)。
【0004】
導体層については、絶縁体に金属箔を貼り合わせる方法の他に、平滑な樹脂にスパッタリングによって薄い金属層を形成して回路基板の導体層とする方法も知られている。スパッタリングで形成される導体層は数百nm以下と非常に薄いため、スパッタリング層の上に電解銅めっきするなどして導体を厚くして配線加工し、回路基板としている(特許文献2)。配線加工の代表的な方法としては、サブトラクティブ法とセミアディティブ法がある。サブトラクティブ法とは、薄い金属層の全面を電解銅めっきによって厚くした後、配線にしたいパターンのみレジストを塗布して金属層が残るようにして、不要な領域を薬液でエッチングする方法である。セミアディティブ法は、薄い金属膜上に、加工したい配線パターンの金属部分を露出させて、それ以外の領域をレジストで覆い、配線パターン部分に電解めっきを施して導体層を厚く形成した後、レジストで覆っていた配線以外の領域の薄い金属層をソフトエッチングで除去する方法である。いずれの方法においても配線形成にはエッチングが不可欠で、これらの方法で微細なパターンを正確に形成しようとすると、配線部のエッチングばらつきが課題になる点からも、導体層表面は平滑性を要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-6668号公報
【文献】特許第4646580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高周波対応の回路基板で伝送損失を小さくするためには、誘電率と誘電損失が小さいフッ素フィルムが適するが、フッ素フィルムは離型性が高く、導体との密着が悪いという課題があった。特許文献1では、フッ素系樹脂電気絶縁層と伝導性金属箔を十分な密着力で直接接着するために、フッ素系樹脂電気絶縁層の表面に微細突起を形成し、伝導性金属箔の一面を粗面化して積層体を作製している。しかしながら、前述の通り、高周波対応の回路基板においては、伝送損失を小さくしたり、微細パターンを正確に形成したりするために、表面平滑性が求められており、微細突起や粗面の存在は課題である。
【0007】
一方で、特許文献2でも議論されている通り、スパッタリングで金属層を形成しようとすると樹脂へのダメージにより、フッ素フィルムと金属層の密着を十分に確保できない課題がある。特にフッ素フィルムの場合、離型性が高く密着が悪い特性があるため、表面平滑なまま金属層との密着を向上させる技術が必要とされ、これまでにもコロナ処理やグロー放電処理、プラズマ処理などさまざまな手法が検討されている。しかしながら、化学的に安定なフッ素フィルムを表面処理して密着を向上させると、フッ素フィルム表層がダメージを受けてかえって密着が悪くなったり、フィルムにクラックが発生したり、さらには処理によって生成するフッ素原子が金属層と反応して密着を低下させたりする課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を達成するために鋭意検討した結果、金属膜と接するフッ素フィルム表層のダメージを小さくするように表面処理したり、金属層の構成を設計したりすることで、フッ素フィルム上に、微細配線に適した平滑な金属膜を有する積層体を得るに至った。
【0009】
本発明の積層体は、フッ素フィルムの少なくとも片面に、1層または2層以上の金属層を積層した金属膜を有する積層体であって、前記金属膜は、金属層として銅を主成分とする層(以下、銅層1という)を含み、前記フッ素フィルムと前記金属膜との界面で金属膜を剥離し、前記金属膜側の剥離面のX線光電子分光法(XPS)による分析で検出されるフッ素原子が50atomic%以上であり、金属原子が4atomic%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フッ素フィルム上に密着良好かつ平滑な金属膜を有する積層体とすることができ、それによって高速・大容量の通信に有用な回路基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】積層体の構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面等を参照しながら、本発明の積層体について、さらに詳しく説明する。
【0013】
本発明の積層体は、フッ素フィルムの少なくとも片面に、1層または2層以上の金属層を積層した金属膜を有する積層体である。
【0014】
本発明にかかるフッ素フィルムは特に限定されるものではなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、高度の耐熱性を有する点で、ETFE、PFA、FEPが好ましい。フッ素フィルムは上記フィルム単独であっても、フッ素樹脂以外のフィルムを複合したものであってもよい。また、フィルム表面に樹脂や粘着剤等をコーティングしたり、離型層を積層したりしてもよいし、フッ素フィルムの保護や搬送性向上のために、ポリエチレンテレフタレート(PETと略すことがある)フィルム等をフッ素樹脂フィルムの金属膜が積層されない面に貼り合せてもよい。
【0015】
フッ素フィルムの厚みは、4μm以上100μm以下であることが好ましく、6μm以上75μm以下であることがより好ましい。フィルムの厚みが4μm未満の場合、フィルムが変形したり破れたりするおそれがある。一方、100μmを超えると、フィルムそのものの厚みムラが大きくなって基板としての性能が悪くなったり、加工性が低下したりする場合がある。
【0016】
本発明にかかる金属膜は、図1に示すように、金属を主成分とする層(以下、金属層という)を1層または2層以上積層した金属層の集合体全体のことである。金属膜に含まれる金属層は、1層であっても2層以上であってもよいが、銅を主成分とする層(以下、銅層1という)を含む。金属を主成分とするとは、金属元素を95質量%以上含むことをいう。金属膜は、厚みが0.05μm以上、20μm以下であることが好ましく、0.1μm以上18μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上18μm以下であることがさらに好ましい。金属膜の厚みが0.05μm未満の場合は、金属膜に欠点が生じたり断線したりして、回路配線として機能しない場合がある。金属膜の厚みが20μmを超えると、エッチングで配線パターンを形成する際に、線幅の減少が大きくなり、加工精度が低下する。
【0017】
本発明にかかる金属膜は、フッ素フィルムと接していない面の表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.08μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.06μm以下であることがさらに好ましい。表面粗さRaは、JIS B 0601-2001で定義される算術平均粗さである。表面粗さが0.10μmよりも大きくなると回路基板の配線として使用するとき、特に高周波帯では表皮効果によって、伝達する信号の伝送損失が大きくなる場合がある。
【0018】
本発明にかかる銅層1は、平均結晶粒径が50nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上150nm以下であることがより好ましい。銅層1の平均結晶粒径は、積層体の金属膜断面について、透過EBSD(Electron Backscattered Diffraction)法を用いて調べることができる。まず、積層体の金属膜断面を薄く切り出し、回折パターンを取り込む。得られた回折パターンで、方位角差5°以内の測定点が2点以上連続して存在する場合を同一粒として結晶粒子を識別し、その個々の結晶粒について、その円相当径(同一面積の円の直径)を算出する。こうして得られた結晶粒径を下記式に従って平均した値を平均結晶粒径とする。なお、双晶は粒界として扱うものとする。式中、dは平均結晶粒径、Nは粒子の総数、Aiは個々の粒子の面積比、diは個々の粒子粒径(円相当径)を示す。
【0019】
【数1】
【0020】
平均結晶粒径が50nm未満の場合、結晶粒界が多く存在することになるため、不純物が増加したり、腐食が進行しやすくなったりするおそれがあり、200nmより大きい場合は、製膜時の金属層内の応力が分散できず、剥離の原因となる場合がある。
【0021】
本発明にかかる銅層1は、厚みが0.05μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。銅層1の厚みが0.05μm未満では、金属膜に欠点が生じたり、膜厚がばらついたりする場合がある。一方、銅層1の厚みが3.0μmを超える場合は、生産性が悪くなったり、配線パターンを加工する際のエッチング工程で線幅がばらついたりして回路の性能が低下するおそれがある。
【0022】
銅層1の製造方法は、生産性を考慮して適宜形成方法を選択することができるが、結晶粒を本願の好ましい範囲のサイズにするためには、真空蒸着法やスパッタリング法に代表される気相成膜法が好ましく、さらにはフッ素フィルムへのダメージを低減しつつ、銅層を厚くできる点で、真空蒸着法であることがさらに好ましい。真空蒸着法には誘導加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法、レーザービーム蒸着法、電子ビーム蒸着法などがあるが、高い成膜速度を有する観点から電子ビーム蒸着法が好適に用いられる。フィルムへの蒸着は、生産性の観点からロールトゥロールでの加工が好適に用いられるが、蒸着時はフィルムが熱にさらされるため、フィルムの蒸着面の裏面に接した冷却ロールにより冷却しながら蒸着する。フィルムを十分に冷却して銅層1を形成することができれば、蒸着時の熱によるフィルムの変形を抑制し、銅層の膜応力も小さく抑えることができるため、金属膜の剥離抑制に有利になる。
【0023】
本発明にかかる金属膜は、下地金属層を有していてもよい。下地金属層は、フッ素フィルムの側から下地金属層、銅層1の順に積層され、下地金属層と銅層1が接していることが好ましい。下地金属層は、銅、ニッケル、チタン、およびそれらの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。その中でも、金属膜の酸化防止、耐食性からニッケル、チタン、および、ニッケルまたはチタンの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。本発明の積層体を高速信号伝送用の回路基板用途に使用する場合は、磁性体のニッケルは信号を減衰させる効果が大きいため、下地金属層の金属は、チタン、または、チタンを含む合金であることが好ましい。下地金属層の厚みは、1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上20nm以下がより好ましい。下地金属層の厚みが1nm未満では、安定した層とならずに十分な密着力が得られない場合がある。下地金属層の厚みが50nmを超える場合は、下地金属層形成時にフッ素フィルムにダメージを与えてフッ素フィルムの柔軟性を低下させて樹脂自体にもクラックが入りやすくなり、断線の原因となる場合がある。また、特に、下地金属層の金属が銅以外で厚みが50nmを超える場合は、銅層と下地金属層のエッチング速度の違いによって配線パターンの加工性が低下したり、下地金属が磁性体の場合には、高速信号伝送において損失が大きくなって信号が減衰したりする、といった問題も生じ得る。下地金属層の製膜方法は、薄膜の厚さ精度と生産性の観点からスパッタリング法や真空蒸着法に代表される気相成膜法が好ましく、製膜時にごくわずかに表層を変質させる表面処理効果を伴うスパッタリング法であることが密着向上の点でより好ましい。
【0024】
本発明にかかる金属膜は、3層以上の金属層を積層した構造としてもよい。また、本発明にかかる金属膜は、銅層1の他に、銅を主成分とする層(以下、銅層2)を有する構造としてもよい。なお、銅層2を有する場合、基材に近い層から銅層1、2という。銅層2を設けることによって、回路に適した抵抗の導体とすることができる。銅層2は、銅層1等の金属層を給電層として、例えば、電解銅めっきにより形成することができる。銅層1と銅層2の間に他の金属層が存在する場合、層間の抵抗値差から伝送経路が変わって損失が増大する場合があるため、導体の銅層2は、銅層1と接して積層することが好ましい。
【0025】
本発明の積層体は、フッ素フィルムと金属膜の密着力を確保するため、フッ素フィルムの金属膜と接する表面をあらかじめ表面処理することもできる。フッ素フィルムの表面処理としては、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理等、公知のものを用いることができるが、経時変化が小さく、温湿度の影響も受けにくい点からプラズマ処理が好ましい。プラズマ処理とは、高圧印加電極と対向電極の間に直流または交流の高電圧を印加して得られる放電に、被処理体であるフッ素フィルムを曝してフッ素樹脂フィルムの表面を改質することである。放電は大気圧下であっても、減圧下であってもよいが、安定した効率のよい処理が可能な点から、減圧下での処理が好ましい。一般的に減圧下でプラズマ処理する場合、活性種のエネルギーを高く保ち、効率よく表面処理するために、真空度は1×10-2Pa以下とすることが多い。しかしながら、本発明における被処理体のフッ素樹脂は、芳香環などの剛直な構造を持たないため、分子鎖が切断されやすい。分子鎖、特に主鎖が切断された場合は、ダメージとなってフィルム表層で凝集破壊されやすくなり、密着力が低下してしまう。したがって本発明においては、プラズマ処理によるダメージを抑制するため、処理時の圧力は、0.1Pa以上1,000Pa以下が好ましく、5Pa以上100Pa以下がより好ましい。0.1Pa未満では真空排気装置が大型化し、1,000Paより大きい場合は、放電を開始しづらくなる。
【0026】
本発明におけるプラズマ処理は、処理効率を上げたり、特定の官能基を導入したりする目的で、放電空間にガスを導入してプラズマ処理する際の雰囲気を調整してもよい。プラズマ処理の雰囲気は、Ar、N、He、Ne、CO、CO、空気、水蒸気、H、NH、C2n+2(ただしn=1~4の整数)で表される炭化水素などの各種ガスを、単独または混合して使用できるが、雰囲気中に含まれる酸素濃度は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。酸素は、放電によって生成したラジカル等の活性種を失活させる性質があるため、500ppmより濃度が高い場合は、処理効果が小さくなったり、効果が全くなくなったりする場合がある。また、酸素を多く含む場合は、ケミカルエッチングが進みやすく、表面粗さが大きくなる場合がある。一方で、フィルムと金属の密着に関しては、カルボニル基やカルボキシル基が寄与するといわれており、酸素原子を導入するために、使用するガスは、COやCOのようにその構造中に酸素原子を有するものを含むことが好ましい。
【0027】
高圧印加電極の形状は任意のものを用いることができるが、例えば、フィルムを搬送しながら連続的に処理することができる点で棒状のものが好ましい。対向電極は、フィルムを密着させて処理できるものであれば特に限定されないが、フィルム搬送を支持できるドラム状電極が好ましい。ドラム状電極の場合は、例えば前記棒状高圧印加電極の直径の2倍以上の直径を持つようにすることが好ましい。高圧印加電極と、対向電極は同数である必要はなく、対向電極1個に対して高圧印加電極を2個以上にすると、省スペースで処理効率を高めることができ好ましい。電極間の距離は、ガスの圧力条件、処理強度に応じて適切に設定すればよく、例えば0.05~10cmの範囲である。
【0028】
処理強度は、処理電力密度で10W・min/m以上2,000W・min/m以下であることが好ましく、50W・min/m以上1,000W・min/m以下であることがより好ましい。ここで処理電力密度とは、放電に投入した電力と時間の積を放電面積で割った値であり、長尺フィルムの処理の場合は投入電力を放電部分の幅とフィルムの処理速度で割った値である。処理電力密度が10W・min/m未満の場合は、十分なエネルギーを与えられずに処理効果が得られない場合があり、2,000W・min/mより大きい場合は、フィルムがダメージを受けて損傷する場合がある。
【0029】
本発明の積層体は、フッ素フィルムと前記金属膜との界面で金属膜を剥離し、前記金属膜側の剥離面のX線光電子分光法(XPS)による分析で検出されるフッ素原子が50atomic%以上であり、金属原子が4atomic%以下であることを特徴とする。また、前記剥離面のXPS分析で検出される酸素原子は0.1atomic%以上3atomic%以下であることが好ましい。さらに、前記剥離面のXPS分析で検出されるC1sに帰属されるピークを100%とすると、結合状態がCFとなる割合が2.5%以下であることが好ましい。
【0030】
XPSは、超高真空中で試料表面に軟X線を照射して表面から放出される光電子をアナライザーで検出し、物質中の束縛電子の結合エネルギー値から表面の元素情報を得たり、各ピークのエネルギーシフトから結合状態に関する情報を得たり、さらにはピーク面積比を用いて定量したりできる分析手法である。XPSは、光電子が物質中を進むことができる長さ(平均自由行程)に対応する深さ領域の分析となるため、測定面の表面情報を得ることができる。
【0031】
金属膜の剥離面は、温度23℃湿度50%に調整された雰囲気で、10mm幅の短冊状の積層体から、剥離速度100mm/minで180°の角度で金属膜とフッ素フィルムとの界面で剥離して作製する。フッ素フィルムと金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面のXPSによる分析で検出されるフッ素原子は、50atomic%以上が好ましく、60atomic%以上がより好ましく、65atomic%以上が最も好ましい。フッ素原子が50atomic%未満の場合、フィルムの誘電率や誘電正接が大きくなり、積層体を回路基板として使用する際の伝送損失が大きくなって信号の伝達効率を低下させる場合がある。
【0032】
金属膜をフッ素フィルムから剥離すると、フッ素フィルムの深さ方向で強度が弱い位置が剥離界面となるため、金属膜の剥離面にはフッ素フィルムの表層の一部が薄く付着する。積層体の製造において、金属膜の密着を向上させるための表面処理や、スパッタリング、蒸着の工程で、フッ素フィルムはダメージを受けたり、熱を受けて酸化したりして表層が変質して脆弱になる場合がある。フッ素フィルムの金属膜近傍が脆弱になった場合、フッ素フィルムは金属膜にごく近い深さで剥離するため、金属膜に付着するフッ素フィルムは薄くなり、XPSで分析した際に金属膜の元素まで検出されることになる。一方、フッ素フィルムの金属膜近傍がダメージを受けていない場合は、剥離した金属膜に付着するフッ素フィルムが厚くなり、金属膜の元素まで検出されなくなる。フッ素フィルムと金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面のXPSによる分析で検出される金属原子は4atomic%以下が好ましく、3atomic%であることがより好ましい。2種類以上の金属元素が検出される場合は、その合計を金属原子の量とする。検出される金属原子は、積層体の構成に依存する。例えば、積層体がフッ素フィルム上に銅層1のみの金属膜を有する場合は検出される金属原子は銅となる。また、例えば金属膜がフッ素フィルムに接する側から順にチタンを含む下地金属層と銅層1を積層したものである場合は、金属原子としてチタンと銅が検出される場合がある。フッ素フィルムと金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面のXPSによる分析で検出される金属原子が4atomic%より多い場合は、フッ素フィルム表層と金属膜の結合が悪く、密着が低下している場合がある。
【0033】
フッ素フィルムは主骨格として、連続したCFまたは-CFCF(-R)-といった構造を有する。官能基Rは水素、塩素の他、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アルキルエステル基などが例として挙げられ、各官能基はCFなどのハロゲン化アルキル基のように元素が置換されてもよい。フッ素フィルムは、金属膜の形成や熱処理によるダメージ、表面処理や酸化などによって樹脂表面が変質すると、酸素が導入されたり、フッ素が脱離したりすることが知られている。フッ素フィルムと金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面のXPSによる分析で検出される酸素原子は0.1atomic%以上3atomic%以下であることが好ましく、0.3atomic%以上2atomic%以下であることがより好ましい。酸素原子が0.1atomic%未満のときは、フッ素フィルムの密着に寄与する官能基が少なく、金属膜との十分な密着力を得られない場合がある。酸素原子が3atomic%を超える場合は、金属膜付近のフッ素樹脂が酸化されて脆弱化し、密着力を低下させるため、回路加工が困難になる場合がある。
【0034】
フッ素フィルムがダメージを受けると、フッ素フィルムを構成するCFの構造からフッ素原子が脱離する場合がある。フッ素の脱離は元素組成比率でのフッ素比率低下からも確認することができるが、本発明のように元素組成比率に占めるフッ素比率が高い場合は、ごくわずかなフッ素量の変化は検出しづらいので、元素同士の結合状態で確認することができる。フッ素フィルムの骨格として存在するCFに着目すると、XPS分析によって検出される296~283eVの領域にピークをもつシグナルがC1sに帰属される。このピークは比較的ブロードになるため、結合状態に対応するピークに分離することができる。スペクトル分離するシグナルのピーク位置と対応する構造を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
このようにして分離したC1sスペクトルの全体を100%としたとき、CFからFが脱離したCFに対応する289.7eVの面積比率が、C1sに帰属されるピークを100%とすると結合状態がCFとなる割合、である。
【0037】
フッ素フィルムと金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面のXPSによる分析で検出されるC1sに帰属されるピークを100%とすると、結合状態がCFとなる割合が2.5%以下であることが好ましい。結合状態がCFとなる割合が2.5%を超える場合は、金属膜近傍のフッ素フィルムが分解などによって変質していることで密着力を低下させて、回路加工が困難になる場合がある。
【0038】
本発明の積層体は、フッ素フィルムの少なくとも片面にスパッタリング法にて下地金属を形成し、前記下地金属層に真空蒸着法にて銅層1を形成して製造することができる。銅層1は、下地金属上に形成することによって、平均結晶粒径を安定させられるため、下地金属層上に形成することが好ましい。下地金属層と銅層1はいずれも気相成長法で製膜されるため、これらの層は1層ずつ2度に分けて製膜することもできるし、2層を連続して製膜することもできる。
【0039】
本発明の積層体は、金属膜をパターニングして配線回路を形成し、フッ素樹脂回路基板とすることができる。積層体の配線回路は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法など公知の方法で形成することができるが、回路の配線幅が狭い場合は、エッチングによる配線幅の減少が少ないセミアディティブ法がより好まれる。配線回路は、適切なインピーダンスに制御するため、銅層1上に、電解めっきで銅層2を形成して配線回路を形成することができる。
【0040】
本発明の積層体は、回路材料用途、タッチパネルなどに好適に用いることができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)X線光電子分光法(XPS)による金属膜剥離面の分析
積層体のフッ素フィルムと金属膜との界面で金属膜を剥離し、金属膜側の剥離面を分析した。剥離時の金属膜の厚みは10μmに統一した。積層体の金属膜の厚みが10μmに満たない場合は、厚さが10μmになるように電解銅めっきした。電解銅めっき液は、硫酸銅五水和塩50g/L、硫酸200g/L、塩素50ppm、メルテックス(株)の添加剤“カパーグリーム”ST-901A 2ml/L、“カパーグリーム”ST-901B 20ml/Lの液とした。めっき条件は噴流方式、電流密度1.0A/dm2とした。
【0042】
金属膜の剥離は、10mm幅の短冊状の積層体を平板に固定して、室温23℃湿度50%の環境下で、金属膜を剥離速度100mm/min、180°の角度でフッ素フィルムから剥離した。積層体の金属膜が片面の場合は、金属膜を把持して剥離した。
XPS法による分析は、以下の測定条件、データ処理条件で行った。
【0043】
測定装置:ESCALAB220iXL(VG社製)
励起X線:monochromatic Al Kα1,2線 (1486.6eV)
X線経:1mm
光電子脱出角度:90°
スムージング:11-point smoothing
横軸補正:C1sメインピークを291.8eVとした。
【0044】
(2)EBSDによる平均結晶粒径の算出
銅層1の平均結晶粒径の算出は、本文中にも記載の以下の条件で算出した。回折パターンを取り込む条件は以下の通りである。
使用装置:
熱電界放射型走査電子顕微鏡(TFE-SEM)JSM-6500F(日本電子社製)
OIM方位解析装置 DigiViewIV スロースキャンCCDカメラ
OIM Data Collection ver.7.x
OIM Analysis ver.7.x
分析条件:加速電圧 30kV
照射電流 30nA
試料傾斜 -30deg(透過EBSD法)
表面測定倍率 20,000倍
領域 3.5×1.0μm
間隔 10nm/step。
【0045】
(3)下地金属層の厚み
下地金属層の厚みは、クライオFIB法によって積層体を断面方向から薄片化し、走査透過電子顕微鏡(STEM)で観察して計測した。
【0046】
測定装置は、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて、加速電圧200kV、2,000,000倍で3点観察した。観察した写真で厚みを計測し、その平均値を膜厚とした。
【0047】
(4)金属膜および金属層の厚み
金属膜および金属層の厚みは、積層体断面を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)で観察して計測した。金属膜または金属層の厚みが0.05μmを超える場合は、SEMを使用し、0.05μm以下の場合はTEMを使用した。TEMを使用する場合は、上記の下地金属層の厚みと同じ方法で測定した。
【0048】
SEMで観察する場合は、積層体を厚み方向に切削して積層体断面を観察した。積層体の切削は、株式会社日本ミクロトーム研究所製のミクロトームRMS型を使用し、SEMは株式会社日立ハイテクノロジーズ製日立走査型電子顕微鏡S-3400Nを使用した。観察倍率は後述の通り膜厚に応じて変更して3点観察してそれぞれ厚み測定し、その平均値を膜厚とした。観察倍率は、膜厚10μm以上の場合2,000倍、膜厚5μm以上10μm未満の場合5,000倍、膜厚1μm以上5μm未満の場合10,000倍、膜厚0.1μm以上1μm未満の場合50,000倍、膜厚0.05μmより厚く0.1μm未満の場合100,000倍とした。
【0049】
(5)金属膜の表面粗さ
金属膜の表面粗さRaは、JIS B 0601-2001で定義される算術平均粗さのことである。測定は、株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡VK9700を用いて、対物レンズ150倍で、金属膜の表面を観察した。
【0050】
(6)密着力
積層体の金属膜厚みを10μmにしたものを用いて、フッ素フィルムと金属膜の密着力を測定した。積層体を幅10mmに切り出し、アクリル板に両面テープで固定して、テンシロン試験機で測定した。積層体の金属膜が片面の場合は、金属膜側を固定してフッ素フィルムを剥離した。剥離角度は180°、剥離速度は50mm/minとした。
【0051】
また、耐熱密着力の評価として、金属厚みを10μmにしたものを150℃で5時間熱処理した後、上記と同じ方法で密着力を測定した。
【0052】
(7)配線パターンの形成(方法(1))
本発明の積層体を用いて実際に配線パターンを加工して、その加工性を評価した。配線パターンの形成できたものを〇、配線パターンの形成できるものの不具合があるものを△、配線パターンの形成できなかったものを×とした。
(方法(1))本発明の積層体の金属膜表面に、東京応化株式会社製“PMER P-LA900PM”を使用して、レジスト厚20μm、L/S=10/10μmの配線パターンのめっきレジストを形成した。その後、金属膜厚みが10μmになるように電解銅めっきした。電解銅めっきは、硫酸銅五水和塩50g/L、硫酸200g/L、塩素50ppm、メルテックス(株)の添加剤“カパーグリーム”ST-901A 2ml/L、“カパーグリーム”ST-901B 20ml/Lの液を使用し、めっき条件は、噴流方式、電流密度1.0A/dmとした。電解銅めっき後、めっきレジストをアルカリ性の剥離液で除去し、過酸化水素―硫酸系のエッチング液を用いて配線間にある給電目的の金属膜を除去して配線パターンを形成した。なお、下地金属膜がニッケルやチタンを含む場合は、下地金属層が過酸化水素―硫酸系のエッチング液で除去しにくいため、銅層1を上記方法でエッチングした後、メック株式会社製“メックリムーバー”を使用して下地金属層を除去した。
(方法(2))本発明の積層体の金属膜の厚みが15μmになるように、方法(1)と同じ条件で電解銅めっきした。次に、電解めっきして厚くなった金属膜表面に、東京応化株式会社製“PMER P-LA900PM”を使用して、レジスト厚20μm、L/S=50/50μmの配線パターンのエッチングレジストを形成した。その後、塩化第二鉄系のエッチング液を用いてシャワー方式で金属膜をエッチングし、エッチングレジストをアルカリ性の剥離液で除去して配線パターンを形成した。
[実施例1]厚さ50μmのダイキン株式会社製フッ素フィルム“ネオフロン”PFAフィルムの片面にプラズマ処理した。処理条件は、Ar/CH/CO混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は500W・min/mとした。フッ素フィルムのプラズマ処理した面に、電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度4.0m/minで0.5μmの厚さに銅層1を積層して、積層体を得た。
[実施例2]厚さ50μmのダイキン株式会社製フッ素フィルム“ネオフロン”PFAフィルムの片面に実施例1と同じ条件でプラズマ処理した。フッ素フィルムのプラズマ処理した面に、下地金属層としてマグネトロンスパッタリング法で銅を20nm形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。続いて、下地金属層の上に実施例1と同じ条件で銅層1を積層して積層体を得た。
[実施例3]下地金属層を、5nmの厚さのニッケルにした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
[実施例4]下地金属層を、10nmの厚さのチタンにした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
[実施例5]厚さ50μmの東レフィルム加工株式会社製フッ素フィルム“トヨフロン”ETFEフィルムの片面にプラズマ処理した。処理条件は、Ar/CH/CO混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は200W・min/mとした。とした。フッ素フィルムのプラズマ処理した表面に、実施例4と同様にして、下地金属層、銅層1を積層して積層体を得た。
[実施例6]厚さ50μmの東レフィルム加工株式会社製フッ素フィルム“トヨフロン”FEPフィルムの片面にプラズマ処理した。処理条件は、Ar/CH/CO混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は300W・min/mとした。とした。フッ素フィルムのプラズマ処理した表面に、実施例4と同様にして、下地金属層、銅層1を積層して積層体を得た。
[実施例7]下地金属層の厚さを1nmの厚さにした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例8]下地金属層の厚さを20nmの厚さにした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例9]下地金属層の厚さを50nmの厚さにした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例10]下地金属層の厚さを1nmの厚さにした以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例11]下地金属層の厚さを50nmの厚さにした以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例12]銅層1の厚さを0.1μmにした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例13]銅層1の厚さを2.0μmにした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例14]プラズマ処理強度を750W・min/mとした以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
[実施例15]プラズマ処理の処理雰囲気をAr/CH/N混合ガス雰囲気下としたこと以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例16]厚さ50μmのダイキン株式会社製フッ素フィルム“ネオフロン”PFAフィルムを、プラズマ処理をせずに使用した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例17]厚さ50μmのダイキン株式会社製フッ素フィルム“ネオフロン”PFAフィルムの片面に実施例1と同じ条件でプラズマ処理した。フッ素フィルムのプラズマ処理した面に、下地金属層として、マグネトロンスパッタリング法でニッケルを5nm形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。続いて、ターゲットを銅に変更して、マグネトロンスパッタリング法で銅を0.1μmの厚さで積層して銅層1とした積層体を得た。
[比較例1]厚さ50μmのダイキン株式会社製フッ素フィルム“ネオフロン”PFAフィルムの片面にプラズマ処理した。処理条件は、Ar/CH/CO混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は5000W・min/mとした。とした。その後、実施例8と同様にして、厚さ20nmのニッケルの下地金属層と、厚さ0.5μmの銅層1を積層して積層体を得た。
[比較例2]下地金属層の厚さを90nmにした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
[比較例3]フッ素フィルムのプラズマ処理条件をAr/CH/CO混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は5000W・min/mとした以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
【0053】
【表2-1】
【0054】
【表2-2】
【符号の説明】
【0055】
1:フッ素フィルム
2:金属膜
3:銅層1
4:下地金属層
5:銅層2
図1