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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】核酸比の決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20230926BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230926BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019566887
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 AU2018051406
(87)【国際公開番号】W WO2019119072
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】2017905138
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519428030
【氏名又は名称】スピーデックス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】トッド、アリソン ヴェリアン
(72)【発明者】
【氏名】リマ、ニコル エリザベス
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-500706(JP,A)
【文献】国際公開第2012/171997(WO,A1)
【文献】欧州特許第00910666(EP,B1)
【文献】Nucleic Acids Research,2012年,Vol.40, No.7,Article No.e51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞、生物、またはウイルスからの核酸の増幅によって得られた定量的データを正規化する方法であって、前記方法が以下:
(i)
-第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAの増幅からの、および
-細胞、生物、またはウイルスの非転写DNAの配列の増幅からの、
定量的データを取得すること;ならびに
(ii)定量的データを使用して、前記増幅の前に核酸サンプル内に存在する
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
-前記非転写DNAの配列、に対する、
相対量を表す正規化値(nV)を導き出すこと、
を含み、
第1の遺伝子からの前記ゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNA、ならびに前記非転写DNAの配列が、同じ反応で共増幅される、
方法。
【請求項2】
定量的データがアンプリコンコピー数であって、ならびに方法が以下:
(i)
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅から生成された総アンプリコン数を表す値A(vA)、および非転写DNAの配列から生成された総アンプリコン数を表す値B(vB)を取得すること;
-式:
vA/vB=nV
使用して正規化値(nV)を計算すること、ならびに/あるいは
(ii)
-第1の遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅、ならびに少なくとも1つのさらなる遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅から生成された総アンプリコン数を表す値X(vX)を取得すること;
-非転写DNAの配列から生成された総アンプリコン数を表す値B(vB)を取得すること、
-式:
vX/(vB x(X+1))=nV
(式中Xは前記さらなる遺伝子(複数可)の数である)を使用して正規化値(nV)を計算すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
定量的データが閾値(Ct)であり、ならびに方法が以下:
(i)
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅からサイクル閾値CtAを取得すること、
-非転写DNAの配列の増幅からサイクル閾値CtBを取得すること;および
-式:
2CtB - CtA=nV
使用して正規化値(nV)を計算すること、ならびに/あるいは
(ii)
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅、および少なくとも1つのさらなる遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅からのサイクル閾値CtXを取得すること;
-非転写DNAの配列の増幅からサイクル閾値CtBを取得すること;および
-式:
2CtB - CtX/(X+1)=nV
(式中Xは前記さらなる遺伝子(複数可)の数である)を使用して正規化値(nV)を計算すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i)細胞、生物、またはウイルスからの核酸が全核酸の抽出物である、および/あるいは
(ii)正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価することをさらに含む、および/あるいは
(iii)任意の前記増幅が、以下:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、鎖侵入ベース増幅(SIBA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)、またはそれらの任意の組み合わせ:を使用して実施される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i) 正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価すること;ならびに/あるいは
(ii)
-転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された転写陰性の正規化値(nV-)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を、転写陰性の正規化値(nV-)と比較して、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価すること、
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下:
(i)
-転写陰性の正規化値(nV-)が、細胞、生物またはウイルスにおける転写活性の有無を評価するための基本値として使用され;そして
-転写活性の欠如が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陰性の正規化値(nV-)以下である場合に示され;または
-転写活性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陰性の正規化値(nV-)を上回る場合に示される、ならびに/あるいは
(ii) 前記転写陰性の正規化値(nV-)が、以下:
-転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、もしくはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記転写陰性の正規化値(nV-)が、細胞、生物もしくはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下:
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された転写陽性の正規化値(nV+)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を転写陽性の正規化値(nV+)と比較して、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性レベルを評価すること
をさらに含み;
好ましくは、以下:
(i)-転写陽性の正規化値(nV+)は、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性の基本値として使用され;および
-転写活性の欠乏(lack)もしくは欠如(absence)が、細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陽性の正規化値(nV+)を下回る場合に示され;または
-転写活性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陽性の正規化値(nV+)以上の場合に示される;ならびに/あるいは
(ii) 前記転写陽性の正規化値(nV+)が、以下:
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、もしくはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記転写陽性の正規化値(nV+)が、細胞、生物もしくはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下:
-転写活性を有さないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された、転写陰性の正規化値(nV-)を取得すること;
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された、転写陽性の正規化値(nV+)を取得すること;ならびに
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を、以下:
(i)転写陰性の正規化値(nV-)および転写陽性の正規化値(nV+)、または
(ii)転写陰性の正規化値(nV-)および転写陽性の正規化値(nV+)の中間にある合算された転写正規化値(nV±)、
と比較し、
それにより、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価することをさらに含み、好ましくは:
(i) 合算された転写正規化値(nV±)が、
式:
(nV+)+(nV-)/2=(nV±
使用して計算される、ならびに/または
(ii) 前記合算された転写正規化値(nV±)が、以下:
-前記一連の転写陰性の正規化値(nV-)および/または前記転写陽性の正規化値(nV+)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記合算された転写正規化値(nV±)が、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルが、以下
-試験細胞または試験生物の生存率;
-試験細胞、生物またはウイルスの生死;
-試験細胞、生物、またはウイルス内の転写の摂動
のいずれか1以上を決定する目的で評価される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i) 正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価し、以下:
-前記細胞、生物、またはウイルスが、核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されており、および
-前記正規化値(nV)が、以下:
(i)薬剤耐性;または
(ii)薬剤感受性、
であることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成されたコントロールの正規化値(cnV)と比較され、それにより、細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価すること;ならびに/または
(ii) 以下:
-薬剤感受性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された薬剤感受性の正規化値(dsV)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を薬剤感受性の正規化値(dsV)と比較して、それにより薬剤耐性または薬剤感受性の、もしくは細胞、生物、またはウイルスにおけるレベルを評価し、細胞、生物、またはウイルスが、核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていること
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
以下:
(a)-薬剤感受性の正規化値(dsV)が、細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性の有無を評価するための基本値として使用され;および
-薬剤耐性が、細胞、生物もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤感受性の正規化値(dsV)を上回る場合に示され;または
-薬剤感受性が、細胞、生物もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤感受性の正規化値(dsV)以下である場合に示される、ならびに/あるいは;
(b) 前記薬剤感受性の正規化値(dsV)が、以下:
-薬剤感受性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記薬剤感受性の正規化値(dsV)が以下:
(i)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤耐性;または
(ii)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤感受性
の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下:
-薬剤耐性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された薬剤耐性の正規化値(drV)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を薬剤耐性の正規化値(drV)と比較して、それにより薬剤耐性もしくは薬剤感受性、または細胞、生物、もしくはウイルスにおけるレベルを評価し、細胞、生物、またはウイルスが核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていること
をさらに含む、請求項1~4または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
以下:
(a)-薬剤耐性の正規化値(drV)が、細胞、生物、もしくはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性の有無を評価するための基本値として使用され;および
-薬剤耐性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤耐性の正規化値(drV)以上である場合に示され;または
-薬剤感受性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤耐性の正規化値(drV)を下回る場合に示される、ならびに/あるいは
(b) 前記薬剤耐性の正規化値(drV)が、以下:
-薬剤耐性があることが知られている細胞、生物、もしくはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/あるいは
-前記薬剤耐性の正規化値(drV)が以下:
(i)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤耐性;または
(ii)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤感受性
の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価することをさらに含み、以下:
-核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されている前記細胞、生物、またはウイルスの第1の集団を使用して、第1の前記正規化値(nV)を生成し、
-核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていない前記細胞、生物、またはウイルスの第2の集団を使用して、第2の前記正規化値(nV)を生成し、
-前記第1の正規化値(nV)と前記第2の正規化値(nV)を比較して、薬剤処理の有りもしくはなしでの、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価し、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価し、場合により、前記薬剤感受性が、前記第1の正規化値(nV)が前記第2の正規化値(nV)よりも低い場合に示される、
請求項1~4の一項に記載の方法。
【請求項15】
(i)薬剤が、抗菌剤、好ましくはアミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライドペニシリン、モノバクタム、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリンから選択されるクラスの抗菌剤である;および/あるいは
(ii)薬剤が、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、リファンピシン、またはドキシサイクリンである;および/あるいは
(iii)第1の遺伝子が、クラミジア種(例えば、クラミジア・トラコマチス)、ゴノレア種、またはマイコプラズマ種(例えば、マイコプラズマ・ゲニタリウム)由来の遺伝子である;および/あるいは
(iv)細胞が哺乳動物細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、ウイルスに感染した宿主細胞、または細菌に感染した宿主細胞である;および/あるいは
(v)生物が、哺乳動物、ヒト、植物、細菌、ウイルス、真菌、藻類、古細菌または原生動物である、
請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照による組み込み
この出願は、2017年12月21日に出願されたオーストラリアの仮特許出願番号2017905138号から優先権を主張し、その内容全体が相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、定量的データの正規化、および/または細胞、生物、ウイルスなどにおける転写レベルの特定のための方法を提供する。この方法は、転写のアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションの決定、転写の摂動(perturbation)の同定、生存/死の決定、および剤による処理に対する反応の評価(例、薬に対する耐性または感受性)を含むが、これらに限定されない多くの用途で使用できる。
【背景技術】
【0003】
分子生物学の進歩により、細胞を特徴づけ、疾患および/または外部刺激に関連する変化の証拠のためにゲノムおよびトランスクリプトームを得る能力が大幅に向上している。例えば、がんまたは嚢胞性線維症などの後天性疾患または遺伝性疾患に関連して、配列の特定のバリエーションが見られる。遺伝子の発現の変化は、病態および刺激に対する応答の両方に関連している。さらに、外来配列の存在は、細菌またはウイルスなどの感染性因子の存在を示すことができる。核酸増幅技術(NAAT)試験は、基礎研究、臨床研究、および臨床診断のためのすべてのこれらの分野で幅広く応用されている。
【0004】
in vitroでの核酸増幅の方法は、NAAT試験で広く応用されている。そのような方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)が含まれる。定量的リアルタイムPCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、およびデジタルPCRを含む、様々なタイプのPCRが記載されている。これらの各標的増幅戦略には、オリゴヌクレオチドプライマーの使用が必要である。増幅過程により、5'末端にオリゴヌクレオチドプライマーが組み込まれ、プライマー間に位置する配列の新たに合成されたコピーを含む標的配列の指数関数的増幅がもたらされる。EzyAmp、連鎖分岐反応、またはDoCなどのシグナル増幅技術もNAAT試験に使用できる。
【0005】
遺伝子発現(RNAレベル)の正規化は、議論のあるトピックであり、利用可能な各戦略に対して様々な長所および短所が存在する。これらには、サンプルサイズ、全RNAまたはリボソームRNA、ハウスキーピング遺伝子のmRNAおよびゲノムDNAに対する正規化が含まれる。ハウスキーピング遺伝子のmRNAに対する正規化には、安定性および発現レベルが実験条件または環境条件の影響を受ける可能性があるので、標的を慎重に選択する必要がある。さらに、細菌では、発現レベルは細菌の発生サイクル中に変化し得る。リボソームRNA(rRNA)のレベルは豊富であり、より長い半減期を示すが、応答の実験条件または環境条件で発現を変化させる可能性もあり;および細菌におけるレベルは発生サイクル中に変化し得る。さらに、rRNAが全RNA画分の80%を占めるため、rRNAおよびmRNAの間に有意な不均衡があり、後者はわずか2~5%しか構成しない。ゲノムDNAは常に存在し、安定しており、一般に不変であるため、遺伝子発現の正規化の良好な候補と考えられている。ゲノムDNAは、より正確で再現可能な結果を生成することが示されている。
【0006】
しかしながら、ゲノムDNAをRNAレベルの正規化の目的として使用する場合、いくつかの制限がある。ほとんどのプロトコルでは、サンプルからRNAとDNAの両方を同時に抽出することはないため、これらは別々に抽出され、定量化された後、それぞれ、通常逆転写酵素を含むまたは含まない並行反応で別々に増幅される。そのため、これら2つの非常に異なるプロトコルを比較し、(i)1番目のプロトコル(DNA抽出および、例えば、PCRによる増幅)の結果を使用して(ii)2番目のプロトコル(RNA抽出および、例えば、RT-PCRによる増幅)からの結果を正規化する際に、かなりの範囲の誤差がある。さらに、このような並列プロトコルは高くつき、面倒で、時間がかかる。
【0007】
NAATは、高い感受性と特異性、短い所要時間、さまざまな種類のサンプルでの実行能力、および任意の細菌種を標的とする能力により、細菌感染の分析のゴールドスタンダードを提供する。しかしながら、一部の特定の用途では、現在の方法には欠点がある。特に、それらは生存病原体と死んだ病原体を区別するのにあまり適していない。例えば、細菌のDNAが細胞の生存率の良いマーカーではない理由は、このDNAは細胞死が起こってから数週間存在することができるからである。この事実は、定量化方法の情報価値のない使用および感染状態または治療の有効性の非効率的なモニタリングによる、利用可能なアッセイの限界を明らかにしている。陽性の潜在的な過大評価も発生し得る。
【0008】
特に性感染症(STI)に適用する場合、より情報価値があり正確な検出方法の需要が不可避である。特に病原体は存在するが、患者は無症候性である場合、および/または病原体の抗菌薬耐性(AMR)率が高い場合には、新しいツールが緊急に必要である。そのような感染症の場合、クリアランスの成功を確認するために治癒試験(TOC)が必要である。この治癒の確認は、初期感染と相関するさらなる合併症の可能性を減らし、病原体および薬剤耐性株の流行および広がりを制限する。TOCの方法は現在、NAATアッセイに限定されており、治療後の1つの時点で行われ、STIの原因となる種によって最適な時間は変化し得る。陽性の結果は治療の失敗を推測し得るが、非生存のDNAおよび/またはRNA断片の検出を反映する可能性もある。
【0009】
この問題に取り組むためのいくつかの技術が存在する。生存率を決定する方法には、新しい培養法による代謝モニタリング、細菌浸透圧調節の蒸発誘導刺激、スマーティクルズテクノロジーなどの抗生物質感受性試験(AST)、バクテリオファージベースの検出、およびレシオメトリックpre-rRNA分析が含まれる。これらは、生菌および死菌の区別にある程度の成功を示しているが、上記のすべては、結果を得るためにまだ培養手順に依存している。代替の生存技術は、培養方法から遠ざかっている。例えば、エチジウムモノアジド(EMA)およびプロポジウムモノアジド(PMA)といった、DNA抽出過程の前に適用されるインターカレート色素に焦点を当てているものがある。色素は、細胞の外側に存在する、または細胞の破壊された壁を通した色素の浸透後に、二本鎖DNAに結合する。これにより、死んだ細菌のDNAがその後のPCR増幅に対して耐性になる。このアプローチは臨床サンプル、環境および食品由来の病原体検出に広く適用されているが、限界も明らかであり、総説されている。色素はすべての種類のサンプルまたは細菌に適しておらず、インキュベーション条件と必要な濃度の両方にばらつきがある。シグナル阻害は生細胞を透過する色素から発生する可能性があり、高い非生存細菌ロードの結果として偽陽性検出が生じる可能性があることが広く示されている。
【0010】
RNAの検出は、DNAよりも安定性が低く、したがって生存率をより正確に反映するため、細胞生存率を評価できる可能性があるもう1つの方法である。しかしながら、RNA転写産物は、治療または細胞死後も長期間持続することも示されているため、これらの方法にはさらなる改善が必要である。これにより、適切な転写産物とアンプリコンのパラメーターを慎重に選択することが、RNA調製物から混入DNAを完全に除去する能力とともに重要になる。したがって、生存細菌を定量化するための正確なRNAベースの戦略をさらに検討する必要がある。
【0011】
さらに必要な分野は、薬剤耐性または感受性のためのスクリーニングを可能にする方法である。特に、個々の患者の治療に情報を与えて耐性病原体の拡散を防ぐには、迅速な抗菌薬感受性試験が緊急に必要である。さらに、そのような方法は、創薬プログラムのスクリーニング法として使用できる。本明細書に記載の発明は、感染性因子の有無を区別し、およびひいては感染の未除去と感染の除去を区別し、より有益な結果を生成することができる。これには、単一の全核酸(TNA)サンプルに存在するRNAおよびDNAの両方を同時に分析する代替アプローチが含まれる。
【0012】
本明細書に記載されている発明は、これらの分野および他の分野における用途を有する。それは単一の反応で活性転写のレベルを正規化する方法を提供する。RNAレベルをDNAに対して正規化しようとした以前の研究には欠点がある。そのような研究では、研究者は検体からRNAおよびDNAを抽出し、これらを別々の並行RT-PCRおよびPCR反応で増幅し、次いで遺伝子発現レベル(RNA)をDNAから生成されたレベルに対して正規化した。このアプローチには多くの問題がある。まず、RNAとDNAは同じサンプルから由来している可能性があるが、2つの異なる種の核酸(DNA対RNA)を抽出するために異なる方法で処理されるため、抽出の効率が等しくなる可能性は低い。同様に、分析のためにアリコートを別々のチューブに分取すると、これら2つの抽出サンプルのサンプリングバイアスがある可能性がある。さらに、それらは異なるPCR反応ミックス(これは(例えば、少なくとも逆転写酵素の有無によって)組成が異なり、多くの場合サーモサイクリングプロファイルが異なる)で増幅されるため、意味のある比較を行うことは困難である。以下の発明は、これらの制限を克服する。
【0013】
DNAおよびRNAの両方を同時に共抽出することが可能であることは当技術分野で周知であり、これらは一緒に「全核酸」(TNA)と呼ばれる。しかしながら、一般的に文献で議論されていないRT-PCRの1つの側面は、TNAサンプル内の特定のRNA転写産物(RNA-X)を増幅するプロトコルが、特定の標的RNA-Xが転写された遺伝子のDNA(DNA-X)も共増幅することである。その逆も、逆転写酵素反応では、転写されたRNA(RNA-X)も共増幅するため、そのDNAが活発に転写される遺伝子または配列である場合、特定のDNA配列(DNA-X)のみを増幅することはできない点でまたそうである。言い換えると、TNAサンプルからのRT-PCRの増幅産物は、DNA-Xが転写され、RNA-Xを生成する場合、常にRNA-XとDNA-X(RNA-XプラスDNA-X)の両方に由来するアンプリコンの合計である。そのため、特定の無関係なRNA-YをゲノムDNA-X配列で正規化することは、その配列が転写されている場合は不可能である。
【0014】
本発明は、DNAおよびRNAの両方(例えばTNA)を含む核酸サンプルを調製し、転写されない無関係な領域のDNA(DNA-N)と共に、(i)1つの遺伝子(DNA-X)およびその関連RNA転写産物(RNA-X)を共増幅することにより、先行技術に存在する困難の1以上を克服しようとする。次に、DNA-Nが使用され得、DNA-XプラスRNA-Xのレベルを正規化する。さらに、複数の転写された遺伝子または領域およびそれらに関連する転写産物を標的とする複数のプライマーセットを使用することができ、例えば、DNA-XプラスRNA-XおよびDNA-YプラスRNA-Yは、非転写DNA-Nに対して正規化され得る。必要に応じて、便宜上、複数の転写されたDNA/RNA標的の分析からのデータを単一の非転写DNA-Nからのデータで除算することによって得られた比率は、再び転写されたDNA/RNA種のセットを標的とするプライマーセットの数で割ることができる。以下の実施例により、本発明をさらに明確にする。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、(例えば、全核酸(TNA)のサンプルの)DNAおよびRNAの両方を含むサンプルにおける3つの核酸種の共増幅(例えば、同時)を含み得る。これらの種は、(i)遺伝子(複数可)、(ii)それらの遺伝子(複数可)から発現される転写産物、および(iii)非発現(すなわち、非転写)DNA配列である。遺伝子およびその対応する転写産物を共に組み合わせた測定値を、本明細書ではよく、GAT(Gene And Transcript)と呼び、ならびに非転写DNAの測定値を本明細書ではよくNED(Non-Expressed DNA)と呼ぶ。本発明の方法は、これらの種を一緒にまたは別々に共増幅し、ならびにGATおよびNEDの推定値の比を転写能力のインデックスとして使用することを含み、それはひいては、細胞の生存、細胞死、外部刺激または病態から生じる細胞の機能的摂動などの特性を評価するために使用できる。
【0016】
本発明は、少なくとも部分的には、以下に列挙する実施態様1~48に関する。
実施態様1.細胞、生物、またはウイルスからの核酸の増幅によって得られた定量的データを正規化する方法であって、前記方法が以下:
(i)
-第1の遺伝子のゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAの増幅からの、および
-細胞、生物、またはウイルスの非転写DNAの配列の増幅からの、
定量的データを取得すること;ならびに
(ii)定量的データを使用して、前記増幅の前に核酸サンプル内に存在する
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
-転写されていない前記ゲノムDNA、に対する、
相対量を表す正規化値(nV)を導き出すこと、
を含む、方法。
実施態様2.定量的データがアンプリコンコピー数であって、ならびに方法が以下:
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅から生成された総アンプリコン数を表す値A(vA)、および非転写DNAの配列から生成された総アンプリコン数を表す値B(vB)を取得すること;
-式:
vA/vB=nV
またはその等価形を使用して正規化値(nV)を計算すること、
を含む、実施態様1に記載の方法。
実施態様3.定量的データがアンプリコンコピー数であり、方法が以下:
-第1の遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅、および少なくとも1つのさらなる遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅
から生成された総アンプリコン数を表す値X(vX)を取得すること;
-非転写DNAの配列から生成された総アンプリコン数を表す値B(vB)を取得すること、
-式:
vX/(vB x(X+1))=nV
(式中Xは前記さらなる遺伝子(複数可)の数である)またはその等価形を使用して正規化値(nV)を計算すること
を含む、
実施態様1に記載の方法。
実施態様4.増幅がデジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)である、実施態様2または実施態様3に記載の方法。
実施態様5.定量的データが閾値(Ct)であり、ならびに方法が以下:
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅からサイクル閾値CtAを取得すること、
-非転写DNAの配列の増幅からサイクル閾値CtBを取得すること;および
-式:
2CtB - CtA=nV
またはその等価形を使用して正規化値(nV)を計算すること
を含む、実施態様1に記載の方法。
実施態様6.定量的データが閾値(Ct)であり、ならびに方法が以下:
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅、および少なくとも1つのさらなる遺伝子からのゲノムDNAおよびRNA転写産物の増幅
からのサイクル閾値CtXを取得すること;
-非転写DNAの配列の増幅からサイクル閾値CtBを取得すること;および
-式:
2CtB - CtX/(X+1)=nV
(式中Xは前記さらなる遺伝子(複数可)の数である)またはその等価形を使用して正規化値(nV)を計算すること
を含む、実施態様1に記載の方法。
実施態様7.増幅が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)である、実施態様5または実施態様6に記載の方法。
実施態様8.非転写DNAの配列がゲノムDNAである、実施態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
実施態様9.細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅を実施することをさらに含む、実施態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施態様10.細胞、生物、またはウイルスからの核酸が全核酸の抽出物である、実施態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
実施態様11.前記増幅が、以下:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、鎖侵入ベース増幅(SIBA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、またはそれらの任意の組み合わせ:を使用して実施される、実施態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
実施態様12.正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価することをさらに含む、実施態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
実施態様13.以下:
-転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された転写陰性の正規化値(nV-)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を、転写陰性の正規化値(nV-)と比較して、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価すること、
をさらに含む、実施態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施態様14.転写陰性の正規化値(nV-)が、前記一連の前記正規化値(nV)から生成された平均値である、実施態様13に記載の方法。
実施態様15.以下:
-転写陰性の正規化値(nV-)が、細胞、生物またはウイルスにおける転写活性の有無を評価するための基本値として使用され;そして
-転写活性の欠如が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陰性の正規化値(nV-)以下である場合に示され;または
-転写活性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陰性の正規化値(nV-)を上回る場合に示される、
実施態様13および14に記載の方法。
実施態様16.前記転写陰性の正規化値(nV-)が、以下:
-転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、もしくはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記転写陰性の正規化値(nV-)が、細胞、生物もしくはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
実施態様13~15のいずれか1つに記載の方法。
実施態様17.信頼区間が90%を超える、または95%を超える、実施態様16に記載の方法。
実施態様18.以下:
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された転写陽性の正規化値(nV+)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を転写陽性の正規化値(nV+)と比較して、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性レベルを評価すること
をさらに含む、実施態様13~17のいずれか1つに記載の方法。
実施態様19.転写陽性の正規化値(nV+)は、前記一連の前記正規化値(nV)から生成された平均値である、実施態様18に記載の方法。
実施態様20.以下:
-転写陽性の正規化値(nV+)は、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性の基本値として使用され;および
-転写活性の欠乏(lack)もしくは欠如(absence)が、細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陽性の正規化値(nV+)を下回る場合に示され;または
-転写活性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が転写陽性の正規化値(nV+)以上の場合に示される、
実施態様18または実施態様19に記載の方法。
実施態様21.前記転写陽性の正規化値(nV+)が、以下:
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、もしくはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記転写陽性の正規化値(nV+)が、細胞、生物もしくはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
実施態様18~20のいずれか1つに記載の方法。
実施態様22.信頼区間が90%を超える、または95%を超える、実施態様21に記載の方法。
実施態様23.以下:
-転写活性を有さないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された、転写陰性の正規化値(nV-)を取得すること;
-転写活性を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された、転写陽性の正規化値(nV+)を取得すること;ならびに
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を、以下:
(i)転写陰性の正規化値(nV-)および転写陽性の正規化値(nV+)、または
(ii)転写陰性の正規化値(nV-)および転写陽性の正規化値(nV+)の中間にある合算された転写正規化値(nV±)、
と比較し、
それにより、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価すること
をさらに含む、実施態様13に記載の方法。
実施態様24.合算された転写正規化値(nV±)が、
式:
(nV+)+(nV-)/2=(nV±
またはその等価形
を使用して計算される、
実施態様23に記載の方法。
実施態様25.前記合算された転写正規化値(nV±)が、以下:
-前記一連の転写陰性の正規化値(nV-)および/または前記転写陽性の正規化値(nV+)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記合算された転写正規化値(nV+)が、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性の有無を予測する信頼区間を伴い提供される
実施態様24に記載の方法。
実施態様26.信頼区間が90%を超える、または95%を超える、実施態様25に記載の方法。
実施態様27.細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルが、以下
-試験細胞または試験生物の生存率;
-試験細胞、生物またはウイルスの生死;
-試験細胞、生物、またはウイルス内の転写の摂動
のいずれか1以上を決定する目的で評価される、実施態様12~26のいずれか1つに記載の方法。
実施態様28.正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価することをさらに含み、以下:
-前記細胞、生物、またはウイルスが、核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されており、および
-前記正規化値(nV)が、以下:
(i)薬剤耐性;または
(ii)薬剤感受性、
であることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成されたコントロールの正規化値(cnV)と比較され、
それにより、細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価する、
実施態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
実施態様29.以下:
-薬剤感受性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された薬剤感受性の正規化値(dsV)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を薬剤感受性の正規化値(dsV)と比較して、それにより薬剤耐性または薬剤感受性の、もしくは細胞、生物、またはウイルスにおけるレベルを評価し、細胞、生物、またはウイルスが、核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていること
をさらに含む、実施態様1~11または28のいずれか1つに記載の方法。
実施態様30.薬剤感受性の正規化値(dsV)が、前記一連の前記正規化値(nV)から生成された平均値である、実施態様29に記載の方法。
実施態様31.以下:
-薬剤感受性の正規化値(dsV)が、細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性の有無を評価するための基本値として使用され;および
-薬剤耐性が、細胞、生物もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤感受性の正規化値(dsV)を上回る場合に示され;または
-薬剤感受性が、細胞、生物もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤感受性の正規化値(dsV)以下である場合に示される、
実施態様29または実施態様30に記載の方法。
実施態様32.前記薬剤感受性の正規化値(dsV)が、以下:
-薬剤感受性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/または
-前記薬剤感受性の正規化値(dsV)が以下:
(i)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤耐性;または
(ii)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤感受性
の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
実施態様29~31のいずれか1つに記載の方法。
実施態様33.信頼区間が90%を超える、または95%を超える、実施態様32に記載の方法。
実施態様34.以下:
-薬剤耐性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた一連の前記正規化値(nV)を使用して生成された薬剤耐性の正規化値(drV)を取得すること;および
-細胞、生物、またはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)を薬剤耐性の正規化値(drV)と比較して、それにより薬剤耐性もしくは薬剤感受性、または細胞、生物、もしくはウイルスにおけるレベルを評価し、細胞、生物、またはウイルスが核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていることをさらに含む、実施態様1~11または28のいずれか1つに記載の方法。
実施態様35.薬剤耐性の正規化値(drV)が、前記一連の前記正規化値(nV)から生成された平均値である、実施態様34に記載の方法。
実施態様36.以下:
-薬剤耐性の正規化値(drV)が、細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性の有無を評価するための基本値として使用され;および
-薬剤耐性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤耐性の正規化値(drV)以上である場合に示され;または
-薬剤感受性が、細胞、生物、もしくはウイルスからの核酸の前記増幅によって得られた正規化値(nV)が薬剤耐性の正規化値(drV)を下回る場合に示される、
実施態様34または実施態様35に記載の方法。
実施態様37.前記薬剤耐性の正規化値(drV)が、以下:
-薬剤耐性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々からの前記一連の正規化値(nV)に統計的変動を組み込む;および/あるいは
-前記薬剤耐性の正規化値(drV)が以下:
(i)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤耐性;または
(ii)細胞、生物もしくはウイルスにおける薬剤感受性
の有無を予測する信頼区間を伴い提供される、
実施態様34~36のいずれか1つに記載の方法。
実施態様38.信頼区間が90%を超える、または95%を超える、実施態様37に記載の方法。
実施態様39.正規化値(nV)を使用して細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価することをさらに含み、以下:
-核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されている前記細胞、生物、またはウイルスの第1の集団を使用して、第1の前記正規化値(nV)を生成し、
-核酸の前記増幅の前に薬剤で処理されていない前記細胞、生物、またはウイルスの第2の集団を使用して、第2の前記正規化値(nV)を生成し、
-前記第1の正規化値(nV)と前記第2の正規化値(nV)を比較して、薬剤処理の有りもしくはなしでの、細胞、生物、またはウイルスにおける転写活性のレベルを評価し、それにより細胞、生物、またはウイルスにおける薬剤耐性または薬剤感受性のレベルを評価する、
実施態様1~11のうちの1つに記載の方法。
実施態様40.前記薬剤感受性が、前記第1の正規化値(nV)が前記第2の正規化値(nV)よりも低い場合に示される、実施態様39に記載の方法。
実施態様41.薬剤が抗菌剤である、実施態様27~40のいずれか1つに記載の方法。
実施態様42.薬剤が、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライドペニシリン、モノバクタム、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリンから選択されるクラスの抗菌剤である、実施態様27~41のいずれか1つに記載の方法。
実施態様43.薬剤が、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、リファンピシン、またはドキシサイクリンである、実施態様27~42のいずれか1つに記載の方法。
実施態様44.第1の遺伝子が、クラミジア種(例えば、クラミジア・トラコマチス)、ゴノレア種、またはマイコプラズマ種(例えば、マイコプラズマ・ゲニトラリウム(Mycoplasma genitralium))由来の遺伝子である、実施態様27~43のいずれか1つに記載の方法。
実施態様45.第1の遺伝子からの前記ゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNA、ならびに前記非転写DNAの配列が、同じ反応で共増幅される、実施態様1~44のいずれか1つに記載の方法。
実施態様46.前記反応が逆転写酵素の使用を含む、実施態様45に記載の方法。
実施態様47.細胞が哺乳動物細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、ウイルスに感染した宿主細胞、または細菌に感染した宿主細胞である、実施態様1~46のいずれか1つに記載の方法。
実施態様48.生物が、哺乳動物、ヒト、植物、細菌、ウイルス、真菌、藻類、古細菌または原生動物である、実施態様1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
本発明はまた、少なくとも部分的に、以下に列挙される実施態様1~23に関する:
実施態様1.細胞または生物の転写活性を評価する方法であって、
以下:
-細胞または生物からの全核酸に対して核酸増幅反応を行い、核酸増幅が以下:
全核酸サンプルを、第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAを増幅できる1つまたは複数のプライマーと接触させること、
全核酸サンプルを、細胞または生物で転写されない非コードゲノムDNAの領域を増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させること;
を含み:
-核酸増幅反応の速度論を分析して、以下:
(i)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
(ii)非コードDNAの前記領域、に対する
比率を導き出し、
比率が、核酸増幅反応を行う前の全核酸サンプル内に存在する(i)および(ii)の相対量を表すこと;ならびに
-比率を分析して、細胞または生物の転写活性を評価し、以下:
1の比率は、細胞または生物に転写活性がないことを示し、
および
1を超える比率は、細胞もしくは生物に転写活性が存在するか、または存在し得ることを示すこと
を含む方法。
実施態様2.1.5、1.7、1.9、2、2.2、2.4、2.5、2.7、2.9または3を超える比が、細胞または生物における転写活性を示す、実施態様1に記載の方法。
実施態様3.1.5、1.4、1.3、1.2または1.1未満の比が細胞または生物における転写活性の欠如を示す、実施態様1に記載の方法。
実施態様4.細胞または生物の生存を評価する方法であって、
以下:
-細胞または生物の全核酸(total nucleic acid the cell or organism)に対して核酸増幅反応を行い、核酸増幅が以下:
全核酸サンプルを、第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAを増幅できる1つまたは複数のプライマーと接触させること、
全核酸サンプルを、細胞または生物で転写されない非コードゲノムDNAの領域を増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させること;
を含み:
-核酸増幅反応の速度論を分析して、以下:
(i)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
(ii)非コードDNAの前記領域、に対する
比率を導き出し、
比率が、核酸増幅反応を行う前の全核酸サンプル内に存在する(i)および(ii)の相対量を表すこと;ならびに
-比率を分析して、細胞または生物の転写活性を評価し、以下:
1の比率は、細胞または生物が生存していないことを示し、および
1を超える比率は、細胞または生物が生存している、または生存し得ることを示すこと
を含む方法。
実施態様5.1.5、1.7、1.9、2、2.2、2.4、2.5、2.7、2.9または3を超える比が、細胞または生物が生存していることを示す、実施態様4に記載の方法。
実施態様6.1.5、1.4、1.3、1.2または1.1未満の比が、細胞または生物が生存していないことを示す、実施態様4に記載の方法。
実施態様7.細胞または生物が死んでいるかを決定する方法であって、
以下:
-細胞または生物からの全核酸に対して核酸増幅反応を行い、核酸増幅が以下:
全核酸サンプルを、第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAを増幅できる1つまたは複数のプライマーと接触させること、
全核酸サンプルを、細胞または生物で転写されない非コードゲノムDNAの領域を増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させること;
を含むこと:
-核酸増幅反応の速度論を分析して、以下:
(i)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
(ii)非コードDNAの前記領域、に対する
の比率を導き出し、
比率が、核酸増幅反応を行う前の全核酸サンプル内に存在する(i)および(ii)の相対量を表すこと;ならびに
-比率を分析して、細胞または生物の転写活性を評価し、以下:
1の比率は、細胞または生物が死んでいることを示し、および
1を超える比率は、細胞または生物が生きている、または生きている可能性があることを示すこと
を含む方法。
実施態様8.1.5、1.7、1.9、2、2.2、2.4、2.5、2.7、2.9または3を超える比が、細胞または生物が生きていることを示す、実施態様7に記載の方法。
実施態様9.1.5、1.4、1.3、1.2または1.1未満の比が、細胞または生物が生きていないことを示す、実施態様7に記載の方法。
実施態様10.細胞内の転写の摂動を検出するための方法であって、
以下:
-細胞または生物からの全核酸に対して核酸増幅反応を行い、核酸増幅が以下:
全核酸サンプルを、第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1の遺伝子から転写されたRNAを増幅できる1つまたは複数のプライマーと接触させること、
全核酸サンプルを、細胞または生物で転写されない非コードゲノムDNAの領域を増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させること;
を含むこと:
-核酸増幅反応の速度論を分析して、以下:
(i)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
(ii)非コードDNAの前記領域、に対する
の比率を導き出し、
比率が、核酸増幅反応を行う前の全核酸サンプル内に存在する(i)および(ii)の相対量を表すこと;ならびに
-比率を分析して、細胞または生物の転写活性を評価し、以下:
1の比率は、細胞または生物の完全な転写の摂動を示し、
および
1を超える比率は、細胞または生物における転写の摂動の欠如を示すこと
を含む方法。
実施態様11.1.5、1.7、1.9、2、2.2、2.4、2.5、2.7、2.9または3を超える比が、細胞または生物における転写の摂動の欠如を示す、実施態様10に記載の方法。
実施態様12.1.5、1.4、1.3、1.2または1.1未満の比が、細胞または生物における部分的または完全な転写の摂動を示す、実施態様10に記載の方法。
実施態様13.前記核酸増幅反応中に、以下:
(i)非コードDNAの前記領域、および
(ii)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAとRNA転写産物;
のサイクル閾値(Ct)の値を生成すること、ならびに前記値を比較することにより比率を得ることを含む、
実施態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施態様14.以下:
-第1の遺伝子の前記ゲノムDNAとRNA転写産物のサイクル閾値ctAを生成し、および、核酸増幅反応の開始後に、非コードDNAの前記領域のサイクル閾値CtBを生成すること;
-式:
2CtB-CtA=2ΔCt
を使用して、CtB値およびctA値の間の倍数変化を計算すること;ならびに
-式:
2ΔCt/TR
を使用して比率を生成し
TRが、細胞の全核酸サンプル中の非コードゲノムDNAの領域のコピーに対する第1の遺伝子のゲノムDNAのコピーの比率であること
を含む、実施態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
実施態様15.以下:
-全核酸サンプルを、第2の遺伝子からのゲノムDNAおよび第2の遺伝子から転写されたRNAを増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させることをさらに含む核酸増幅反応を行うこと、ならびに
-核酸増幅反応の速度論を分析して、以下:
(i)非コードDNAの前記領域の、
(ii)核酸増幅反応を行う前に、全核酸サンプル内に存在する第1および第2の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物に対する
相対量を表す比率を導き出すことの、
実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
実施態様16.以下:
-第1および第2の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物のサイクル閾値ctAを生成し、および、核酸増幅反応の開始後に、非コードDNAの前記領域のサイクル閾値CtBを生成すること;
-式:
2CtB-CtA=2ΔCt
を使用して、CtB値およびctA値の間の倍数変化を計算すること
-式
2ΔCt/TR
を使用して比率を生成し
TRは、第1および第2の遺伝子のゲノムDNAのコピーの、細胞の全核酸サンプル中の非コードゲノムDNAの領域のコピーに対する比であること
を含む、実施態様15に記載の方法。
実施態様17.比の前記分析が、一連の陰性または陽性のコントロール細胞または生物での方法を行うことから得られた比と閾値の比を比較すること、および表現型を示す平均閾値の比の値を得ることを含む、実施態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
実施態様18.細胞または生物の薬剤耐性または薬剤感受性を検出するための方法であって、以下:
-薬剤で処理されていない細胞または生物の第1のサンプルから得られた全核酸に対して第1の核酸増幅反応を行うこと;ならびに
-薬剤で処理されている細胞または生物の第2のサンプルから得られた全核酸に対して第2の核酸増幅反応を行い;
各前記核酸増幅反応は別々に行われ、および以下:
全核酸サンプルを、第1の遺伝子からのゲノムDNAおよび第1遺伝子から転写されたRNAを増幅できる1つまたは複数のプライマーと接触させること、
全核酸サンプルを、細胞または生物で転写されない非コードゲノムDNAの領域を増幅することができる1つまたは複数のプライマーと接触させること
を含むこと;
-以下:
(i)第1の遺伝子の前記ゲノムDNAおよびRNA転写産物、の
(ii)非コードDNAの前記領域、に対する
第1および第2の比率を得るために、前記各核酸増幅反応の速度論を分析し、
比率が、核酸増幅反応を行う前の全核酸サンプルに存在する(i)および(ii)の相対量を表すこと;ならびに
-比率を比較して、細胞または生物が薬剤に耐性を有するか否かを評価し、以下:
第1と第2の比率が等しい場合、細胞または生物における完全な薬剤耐性が示され、および
第2の比率が第1の比率より低い場合、薬剤に対する細胞または生物の感受性が示されること
を含む、方法。
実施態様19.第2の比の値が、以下:1%、2%、5%、7.5%、10%、12%、15%または20%以下;第1の比率の値よりも低い場合、細胞または生物が薬剤耐性を有するとみなされる、実施態様18に記載の方法。
実施態様20.第2の比の値が、第1の比率より少なくとも:10%、20%、30%、40%または50%である場合、細胞または生物が薬剤感受性があるとみなされる、実施態様18に記載の方法。
実施態様21.増幅方法が、以下:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)、自立式配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される、
実施態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
実施態様22.細胞が、哺乳動物細胞、ヒト細胞、植物細胞、細菌細胞、ウイルスに感染した宿主細胞、または細菌に感染した宿主細胞である、実施態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
実施態様23.生物が、細菌、ウイルス、真菌、藻類、古細菌または原生動物である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
本発明は、概ね研究または診断研究所で使用される現在の手順と適合性があり、同じサンプルタイプ、抽出方法、および増幅方法を使用することができる。分析される核酸(例えばTNA)は、例えば原核細胞もしくは真核細胞、またはウイルスに由来するなどの任意の適切な供給源由来であり得る。本発明は、活性転写の有無、RNA発現レベルの増加もしくは減少、または変化しないRNA発現レベルを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
次に本発明の実施態様を、非限定的な例としてのみ、以下に示される添付の図1~12を参照して記載する。
図1】VITA PCRの手順を示す概略図。鋳型として全核酸を使用して、逆転写酵素PCR(RT-PCR)を行う。このVITA PCRアッセイには、特定の遺伝子のDNA(DNA-X)をこの遺伝子から転写されたRNA(RNA-X)と一緒に共増幅できる少なくとも1組のプライマーがある。また、RNAに転写されないDNA領域(DNA-N)を標的とするプライマーセットも含まれている。逆転写酵素のステップ中、RNA-XはcDNA-Xにコピーされ、次いでPCR熱サイクリング中にDNA-X、cDNA-XおよびDNA-Nはすべて増幅される。DNA-XプラスRNA-Xに由来するアンプリコンの合計を測定するGAT(Gene And Transcript)からのシグナルは、単一の蛍光色素チャネル Aを介して読み取ることができ、一方DNA-Nからのアンプリコンの測定であるNED(Non-Expressed DNA)からのシグナルは、2番目の蛍光色素チャネル Bを介して読み取ることができる。検体のGATおよびNEDのサイクル閾値(Ct)の値の違いにより、これらの標的で観察される検体の倍数変化(FC)の推定が可能になり、FC=2Ct NED-Ct GAT=2ΔCtである。VITAインデックスは、遺伝子とNED遺伝子座が同じコピー数で存在すると仮定して、サンプルで観察された倍数変化を、活性転写がない場合に予測される理論比(TR)で割ることによって計算できる。1つの転写産物と遺伝子を使用してGATを測定し、1つのDNA配列を使用してNEDを測定する場合、TR=(1 x DNA-X)/(1 x DNA-Y)=1である。2つの転写産物と遺伝子(XおよびZ)を使用してGATを測定し、1つのDNA配列(X)を使用してNEDを測定する場合、TR =(1 x DNA-X + 1 x DNA-Z)/(1 x DNA-Y)= 2である。複数の遺伝子とその転写産物を使用してGATを測定する能力により、細胞周期内の様々な時点で発現され得る一連の転写産物をとらえる試験を構築できる。VITAインデックスは、分析されたサンプルの量に関係なく、サンプル間で比較できる転写活性の正規化測定を提供する。死んでいて残留RNAが検出されない細胞は、VITAインデックスが1に近いと予想され;活性転写のレベルが上がると、それに応じてVITAインデックスも上がる。
図2A】本発明の実施態様によるアッセイの概略図。図2A:本明細書に記載の方法は、細胞または病原体が死んでいるか生きているかを判断するために使用できる。死んだまたは生きている病原体の存在の証拠は、次に、治癒試験(TOC)の方法を提供できる。このプロトコルでは、TNAからGATおよびNEDを増幅するVITA PCRを行うこと、次いで得られたCt値を使用してサンプルのVITAインデックスを計算することを含む。仮想増幅プロットが描かれる。活性転写がないサンプル(死細胞)は、VITAインデックスが1または1に近いと予想される。閾値の値は、特定の細胞タイプおよび/または特定の病原体内に存在する、特定のGAT(複数可)およびNEDの組み合わせを増幅する、特定のVITA PCRアッセイの経験データを使用して設定できる。生きているおよび活性転写が起きている細胞は、閾値を超えるVITAインデックスを有するであろう。
図2B】本発明の実施態様によるアッセイの概略図。図2B:本明細書に記載の方法は、薬剤感受性または薬剤耐性を決定するために使用できる。サンプルを分割し、1つ以上の薬剤の存在下または非存在下でインキュベートできる。インキュベーション後に抽出されたTNAは、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを得るために、VITA PCRで分析され得、およびVITAインデックス間の比率は、薬剤感受性または耐性を示す。仮想増幅プロットが描かれている。サンプルが薬剤に感受性があるならば、薬剤の存在下でのサンプルのVITAインデックスは、薬剤の非存在下よりも低くなると予想されるだろう。対照的に、サンプルに薬剤耐性があるならば、薬剤の存在下でのサンプルのVITAインデックスは、薬剤の非存在下よりも低くなるとは予想されず、同様であり得る。
図3】細胞の免疫蛍光染色およびPCRによる分析。HEp-2細胞で増殖したクラミジア・トラコマチス(血清型D)サンプルを、実施例1、処理プロトコルA(1.2.1)に記載されているように、異なる濃度のアジスロマイシンで処理した。具体的には、細胞が、i)抗生物質なし、またはii)MIC未満(<MIC、0.008μg/mL)、iii)MIC(0.064μg/mL)、またはiv)MIC超(>MIC 0.512μg/mL)、で処理された。パネルiは、未処理の細胞および各抗生物質の用量で処理した細胞の生存を決定するための代表的な画像を示している。これらの画像は、感染したHEp-2細胞の免疫蛍光染色により得られ、および蛍光顕微鏡IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare Life Sciences)で100倍の倍率で分析された。パネルiiは、MIC未満(<MIC)、MIC(MIC)、またはMIC超(>MIC)の濃度で、各抗生物質の用量での処理に対して、1 mLあたりの封入体形成単位(IFU/mL)として測定された感染後(PI)の定量化された生存を示し、および未処理の細胞(抗生物質なし)については、パネルiで得られた画像から計算された。結果は、MICを超える抗生物質濃度で処理したサンプルで得られた値に対して正規化された。パネルiiiは、クラミジアに感染した、これらの細胞からの、主要外膜ポリン(omp1)DNAおよびomp1 RNAの両方を増幅できる1組のプライマーによって増幅された、TNAの分析を示した。TNAはRT-PCR(omp1 DNAおよびRNAを増幅)およびPCR(omp1 DNAのみを増幅する)によって増幅された。パネルiiiは、MIC未満(<MIC)、MIC(MIC)、またはMIC超(>MIC)の濃度で、各抗生物質処理の用量および未処理の細胞(抗生物質なし)について、2ΔCtとして計算された、PCRにおけるomp1 DNAのCtとRT-PCRにおけるomp1 RNAプラスomp1 DNAのCtとの差(ΔCt)である倍数変化を示す。
図4】本発明の実施態様によるアッセイの分析。RNAまたはTNAサンプルの増幅による候補GATおよびNED標的の分析、およびPCR(DNAのみを増幅)とRT-PCR(DNAおよびRNAを増幅)の結果間の比較。パネルiおよびiiは、鋳型がRNAのみ(パネルi)またはTNA(パネルii)であった、潜在的なGATプライマー(omp1)を使用して生成された増幅プロットを示す。PCRのみによるomp1 DNA検出のCt(点線)、およびRT-PCRによるomp1 DNAプラスomp1 RNA検出のCt(実線)の差(ΔCt)が示される。パネルiiiおよびivは、鋳型がRNAのみ(パネルiii)またはTNA(パネルiv)である、潜在的なNEDプライマー(InfAIGR)を使用した増幅プロットを示す。PCRのみによるInfAIGR DNA検出のCt(点線)と、RT-PCRによるInfAIGR DNAプラスInfAIGR 1 RNA(存在する場合)の検出(実線)の差(ΔCt)が示される。
図5】本発明の実施態様によるアッセイの分析。VITA PCRによるクラミジアの分析。パネルiは、未処理の細胞(抗生物質なし)および実施例1に記載の、図3パネルiおよびiiに示す各抗生物質処理の用量のVITAインデックスを示す。このVITA PCRは単一のRT-PCR反応で、TNAから増幅され、ならびに1つの遺伝子およびその転写産物を使用してGATを測定し、1つの非転写DNA領域を使用してNEDを測定した。パネルiは、図3のパネルiおよびiiにそれぞれ画像化、定量化、および描画されたサンプルのRT-PCRデータを示す。パネルiiは、VITA PCRによるクラミジアの分析を示す。未処理の細胞(抗生物質なし)および各抗生物質処理の用量のVITAインデックス。このVITA PCRは、同じRT-PCRで遺伝子の2つのアンプリコンおよびその転写産物(2 GAT)ならびに1つの非転写NEDを増幅したため、TRは2(2 GATを1 NEDで割った値)である。
図6】本発明の実施態様によるアッセイおよび分析。患者の尿サンプルからのクラミジアVITA PCRの分析。パネルiは、サンプル調製の過程を概略的に描く。パネルiiは、培養法で得られた陽性(生存)および陰性(非生存)クラミジア参照サンプルと比較した、患者の尿サンプルからのクラミジア発現の分析を示す。
図7】本発明の実施態様によるアッセイおよび分析。抗生物質との短いインキュベーションに応じたVITA PCRによるクラミジア発現の分析。パネルiは、サンプル調製の過程を概略的に示し、試験サンプルは未処理(薬剤なし)またはさまざまな抗生物質(プラス薬剤)で処理するかのいずれかで、次いで、5%CO2で室温または37℃のいずれかで様々な時間間隔でインキュベートした。次いで、TNAはすべてのサンプルおよび時点から抽出され、ならびにVITA PCRによって増幅される。パネルiiは、アジスロマイシンを含む(濃い灰色)および含まない(薄い灰色)のいずれかの各処理群のTNAの分析によって得られたVITAインデックスを示す。プラスとマイナスのアジスロマイシンのVITAインデックスの比(ΔVITA)は、バーの上に示されている。VITAインデックスは、37℃で1時間または6時間のいずれかで薬剤とのインキュベーション後、サンプルがアジスロマイシンに感受性があり、転写レベルが低下したことを示し、有意に低下した。ΔVITA比の大きさは、特定の時間および特定の条件下でのインキュベーション後の致死の程度を反映し得る。パネルiiiは、各処理群のTNAの分析によって得られたVITAインデックスを示し、VITAインデックスの比(ΔVITA)はバーの上に示される。0.128 μg/mLのアジスロマイシンを37℃で30分および1時間処理した後のVITAインデックスの低下は、サンプルがこの抗生物質に感受性があり、これが転写レベルの低下として反映されることを示した。パネルivは、0.256 μg/mLのリファンピシンで処理した場合の、感受性および耐性株の各処理群のTNAの分析によって得られたVITAインデックスを示す。37℃で5分間インキュベートした後の感受性株の抗生物質処理後のVITAインデックスの低下は、サンプルが抗生物質に感受性があることを示した。これに加えて、同じ条件下での耐性株のVITAインデックスは、いずれの時点でもリファンピシンの存在下で有意に変化せず、サンプルは実際に抗生物質に耐性を示した。パネルvは、室温で15分間0.256 μg/mLのリファンピシンで処理した場合に、感受性および耐性であることが知られている株の各処理群のTNAの分析によって得られたVITAインデックスを示している。感受性株のVITAインデックスは、薬剤の存在下でVITAインデックスの有意な減少を示し、リファンピシンに対する感受性と一致し、一方、耐性株のVITAインデックスは、同じ条件下で、リファンピシンに対する耐性を反映して、VITAインデックスの有意な増加を示した。
図8】本発明の実施態様によるアッセイおよび分析。抗生物質の漸増増量に応じたVITA PCRによるクラミジアの分析。パネルiは、サンプル調製、様々な濃度の同じ抗生物質(アジスロマイシン)の有無による処理、5%CO2供給で37℃で1時間のインキュベーション、未処理サンプルおよびさまざまな抗生物質の濃度で処理したサンプルからのTNAの抽出の過程を概略的に描く。パネルiiは、抗生物質の各用量についての、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用して抽出されたTNAの分析によって得られたVITAインデックスを表示する。処理サンプルおよび未処理サンプル間の統計的差異は、群と比較して上に表される。抗生物質処理後のVITAインデックスの減少は、サンプルが使用した抗生物質に感受性があることを示した。VITAインデックスは、アジスロマイシンの濃度の増加(それぞれ0.128 μg/mL、0.192 μg/mL、および0.256 μg/mL)に伴って減少を示し、この相関によりR2=0.98がもたらされた。パネルiiiは、抗生物質の各用量の、カラムベースの抽出キットを使用して抽出されたTNAの分析によって得られ、VITAインデックスを示す。処理サンプルと未処理サンプル間の統計的差異は、処理群の上に示される。抗生物質処理後のVITAインデックスの減少は、サンプルがアジスロマイシンに感受性があり、VITAインデックスがそれぞれ0.128 μg/mL、0.192 μg/mL、0.256 μg/mLおよび0.512 μg/mLで使用される抗生物質の用量に相関することを示し、R2=0.83をもたらした。
図9】本発明の実施態様によるアッセイの分析。特定の抗生物質に対して感受性および耐性のいずれかであると以前に特徴づけられた一連の株から抽出されたTNAを用いる、様々な抗生物質との短いインキュベーションに応答したクラミジアのVITA PCRによる分析。パネルiは、各処理群のVITA PCRによるTNAの分析の後に、試験された各株(株1~3および5)について得られたVITAインデックスを示す。アジスロマイシン(0.256 μg/mL)で処理した後のVITAインデックスの減少は、すべての株が抗生物質の影響を受けやすく、転写が破壊されることを示した。処理サンプルおよび未処理サンプル間の統計的差異は、比較されたサンプルの上に表示される。パネルiiは、各処理群のTNAの分析の後に、試験された各株(1~3および5株)について得られたVITAインデックスを示した。ドキシサイクリン(0.256 μg/mL)で処理した後のVITAインデックスの減少は、すべての株の転写活性が破壊され、抗生物質に感受性があることを示している。処理サンプルおよび未処理サンプルの統計的差異は、比較されたサンプルの上に表示される。パネルiiiは、抗生物質リファンピシン(0.256 μg/mL)を使用して、各処理群のTNAを分析した後、試験した各株(株1~5)について得られたVITAインデックスを示す。処理後のVITAインデックスの減少は、株1~4の転写活性が破壊され、抗生物質に感受性があることを示した。処理サンプルおよび未処理サンプル間の統計的差異は、比較された群の上に表示される。未処理サンプルと処理サンプルの両方で、株5で得られたVITAインデックスは、有意な差はなく、リファンピシンに対するこの特定の株の耐性を反映した。パネルivは、パネルiiiに示されているリファンピシンで処理された各株について試験された各レプリケートから計算されたΔVITA比を示している。細胞はその感受性プロファイルにしたがって群分けされ、感受性細胞は耐性細胞と比較してより大きなΔVITA比を生成した。
図10】本発明の実施態様によるアッセイの概略図。薬剤なし、またはアジスロマイシン、セフトリアキソン、およびドキシサイクリンの存在下のいずれかでインキュベーションし、臨床検体から直接抗生物質感受性試験の過程を示す仮想実施例、ならびにクラミジア・トラコマチス(CT)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae(GC))およびマイコプラズマ・ゲニタリウム(MG)のさらなる試験でGC-dualは、二重抗生物質療法に関連している。
図11】本発明の実施態様によるアッセイの分析。生物の異なる生存ロード(viable load)を含むクラミジアTNAサンプルのVITA PCR分析。パネルiは、非生存クラミジアのバックグラウンドに決定された割合の生存クラミジアを含む各サンプルから得られたVITAインデックスを示す。非生存サンプルおよび生存サンプル間の統計的差異を示す。パネルiiは、試験した各サンプルのGAT1/2およびNEDの平均Ct値を示す。
図12】本発明の実施態様によるアッセイの分析。GAT1およびGAT2のより長い領域を標的とする代替VITA PCRシステムによるTNAサンプル中のクラミジアの分析。それぞれ実施例1および図3のパネルiおよびiiのように、未処理の細胞(処理なし)および各抗生物質処理の用量のVITAインデックスが表示される。このVITA PCRは、同じ反応で遺伝子の2つの長いアンプリコンとその転写産物(2 GAT)および1つの非転写NEDを増幅したため、TRは2である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数の参照が含まれる。例えば、句「ポリヌクレオチド」には、複数のポリヌクレオチドも含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味する。「含む(comprise)」や「含む(comprises)」などの、「含む」という単語のバリエーションは、それに応じて様々な意味を有する。したがって、例えば、ヌクレオチドの配列を「含む」ポリヌクレオチドは、そのヌクレオチドの配列のみで構成され得、または1以上の追加のヌクレオチドを含み得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「サイクル閾値」、「サイクル閾値の値」、「閾値サイクル」、「閾値サイクル値」、「Ct」および「Ct値」は交換可能に使用され、同じ意味を有し、核酸増幅反応中に検出可能な量のアンプリコンを生成するのに必要な増幅サイクルの数である。
【0023】
本明細書で使用される場合、核酸の文脈で使用される場合の用語「増幅」は、特に明記しない限り、もう1つ以上の核酸鋳型配列(複数可)のコピーを生成できる任意の反応を包含すると理解されるであろう。適当な反応の非限定的な実施例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、および核酸配列ベース増幅(NASBA)が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「定量的値(quantitative value)」は、例えば増幅反応生成物の定量的測定(例えば、Ct値、アンプリコンコピー数など)を含む量により与えられた因子の任意の測定を包含することを意図している。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「複数」は、1超を意味する。ある特定の態様または実施態様において、複数とは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、またはそれ以上、およびその中で導出可能な任意の整数、ならびにその中で導出可能な任意の範囲を意味し得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類、鳥類、およびげっ歯類の種を含む、経済的、社会的、または研究的に重要な任意の動物を含む。したがって、「対象」は、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物などの哺乳動物であり得る。また、細菌、ウイルス、真菌/酵母、原生生物および線虫を含むがこれらに限定されない微生物対象も包含される。本発明による「対象」には、プリオンなどの感染性病原体も含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は互換的に使用され得、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマー、もしくはその類似体、誘導体、変異体、断片またはそれらの組み合わせを指し、DNA、メチル化DNA、アルキル化DNA、RNA、メチル化RNA、マイクロRNA、siRNA、shRNA、mRNA、tRNA、snoRNA、stRNA、smRNA、プレおよびプリmicroRNA、その他の非コーディングRNA、リボソームRNA、それらの誘導体それらのアンプリコンまたはそれらの任意の組み合わせを含むがそれらに限定されるものではない。非限定的な例として、核酸の供給源は、合成、哺乳動物、ヒト、動物、植物、真菌、細菌、ウイルス、古細菌またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され得る。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」「オリゴヌクレオチド」は、特に明記しない限り、任意の特定の配列、およびそれに相補的な配列への参照を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「全核酸」は、RNAおよびDNAの両方を含むサンプルを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「GAT」は「遺伝子および転写産物(Gene And Transcript)」の頭字語であり、1つの遺伝子からのDNAおよびその遺伝子から転写されたRNA、または一群の遺伝子およびそれらの遺伝子から転写されたRNAの組み合わされた測定を指す。本明細書で使用される場合、用語「NED」は、「非発現DNA(Non-expressed DNA)」の頭字語であり、RNAに転写されない領域に由来するDNAの測定を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、DNAのセグメントもしくはDNA含有核酸分子、またはRNAもしくはRNA含有分子、あるいはそれらの組み合わせを指す。オリゴヌクレオチドの実施例には、核酸標的;基質、例えば、MNAzymeによって修飾され得る基質;PCRなどの方法によるin vitro標的増幅に使用されるもののようなプライマー;およびMNAzymeの成分が含まれる。用語「オリゴヌクレオチド」は、特に明記しない限り、任意の特定の配列、およびそれに相補的な配列への言及を含む。オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの付加または置換を含む場合があり得、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2'-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチルチオウリジン、ジヒドロウリジン、2'-O-メチルプソイドウリジン、ベータD-ガラクトシルキューオシン、2'-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、ベータD-マンノシルメチルウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-ベータ-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-ベータ-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチル-カルバモイル)スレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、2'-O-メチル-5-メチルウリジン、2'-O-メチルウリジン、ワイブトシン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン、ベータD-アラビノシルウリジン、ベータD-アラビノシルチミジンを含む群を含むが、これに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」、および「相補性」は、ワトソン-クリック塩基対またはゆらぎ塩基対のいずれかを介して互いにハイブリダイズするヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそれらの組み合わせ)の能力を指す。結合は、アデニン(A)塩基およびウラシル(U)塩基間、アデニン(A)塩基およびチミン(T)塩基間、シトシン(C)塩基およびグアニン(G)塩基間のWatson-Crick塩基対形成によって形成され得る。ゆらぎ塩基対は、ポリヌクレオチド二重鎖の2つのヌクレオチド間の非ワトソン-クリック塩基対である(たとえば、グアニン-ウラシル、イノシン-ウラシル、イノシン-アデニン、およびイノシン-シトシン)。「相補的(complementary)」と呼ばれるか、または互いに「相補体(complement)」であるヌクレオチドは、ワトソン-クリック塩基対によってか、またはそれぞれの塩基間のゆらぎ塩基対によってかのいずれかでハイブリダイズして一体化する能力を有するヌクレオチドである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「酵素」は、化学反応(例えば、ポリヌクレオチドの増幅、ポリヌクレオチドの切断など)を触媒することができる任意の分子を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「標的増幅」は、標的核酸を増幅する任意の方法を指し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)が含まれるが、それらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アンプリコン」は、天然または人工の、PCR、RT-PCR、SDA、HDA、RPA、LAMP、RCA、TMA、3SRまたはNASBAを含むがこれらに限定されない、核酸増幅または複製イベントの産物である核酸(例えば、DNAもしくはRNA、またはその組み合わせ)を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「核酸酵素」、「触媒核酸」、「触媒活性を有する核酸」、および「触媒核酸酵素」は、本明細書では互換的に使用され、DNAもしくはDNA含有分子または複合体、RNAもしくはRNA含有分子または複合体、あるいはそれらの組み合わせ(すなわちDNA-RNAハイブリッド分子または複合体)を意味するものとし、少なくとも1つの基質を認識し、少なくとも1つの基質の修飾(ライゲーションまたは切断など)を触媒し得る。触媒核酸中のヌクレオチド残基には、塩基A、C、G、T、およびU、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれ得る。上記の用語には、単一のDNAまたはDNA含有分子(当技術分野では「DNA酵素」、「デオキシリボザイム」もしくは「DNAzyme」としても知られる)またはRNAもしくはRNA含有分子(当技術分野では「リボザイム」としても知られる)あるいはそれらの組み合わせを含み得る、単分子核酸酵素が含まれ、少なくとも1つの基質を認識し、および少なくとも1つの基質の修飾(ライゲーションまたは切断など)を触媒し得るDNA-RNAハイブリッド分子である。上記の用語には、DNAもしくはDNA含有複合体、またはRNAもしくはRNA含有複合体、あるいはそれらの組み合わせを含む核酸酵素が含まれ、少なくとも1つの基質を認識し、少なくとも1つの基質の修飾(例えば、ライゲーションまたは切断)を触媒し得るDNA-RNAハイブリッド複合体である。用語「核酸酵素」、「触媒核酸」、「触媒活性を有する核酸」、および「触媒核酸酵素」は、それらの意味の中にMNAzymeを含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「MNAzyme」および「多成分核酸酵素」は、本明細書で使用される場合、同じ意味を有し、および2つ以上のオリゴヌクレオチド配列(例えば、パートザイム)を指し、MNAzyme組織化助長因子(例えば、標的)の存在下でのみ、基質を触媒的に修飾することができる活性核酸酵素を形成する。MNAzymeは、基質の切断、基質のライゲーション、および基質(substrate)または基質(substrates)のその他の酵素的修飾を含む一連の反応を触媒できる。MNAzymeは、「PlexZyme」としても当技術分野で知られている。MNAzymeは、パートザイムAおよびBのセンサーアームが組織化助長因子上で互いに隣接してハイブリダイズする場合にのみ形成される。MNAzymeの基質アームは基質をはめ込み、その修飾(例えば切断)は、パートザイムAおよびBの触媒ドメインの相互作用によって形成される、MNAzymeの触媒中心によって触媒される。DNA/RNAキメラレポーター基質の切断。MNAzymeは、フルオロフォアおよびクエンチャー色素のペアの間で基質を切断し得、したがってシグナルを生成する。用語「多成分核酸酵素」および「MNAzyme」は、2つの分子で構成される2部構造、または3つの核酸分子で構成される3部構造、または他の多部構造、例えば4つ以上の核酸分子によって形成されるものを含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「MNAzyme」および「多成分核酸酵素」は、PCT特許公開番号WO/2007/041774、WO/2008/040095、WO2008/122084、および関連する米国特許公開番号第2007-0231810号、第2010-0136536号、および第2011-0143338号(これらの各文書の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)のいずれか1以上に開示されているものを含むすべての既知のMNAzymeおよび修飾されたMNAzymeを包含することが理解されるであろう。用語「MNAzyme」および「多成分核酸酵素」に含まれるMNAzymeおよび修飾されたMNAzymeの非限定的な例には、切断触媒活性を有するMNAzyme(本明細書に例示)、1以上の集合阻害剤を含む分解または部分的に集合したMNAzyme、1以上のアプタマーを含むMNAzyme(「apta-MNAzyme」)、1以上のトランケートセンサーアームおよび任意で1以上の安定化オリゴヌクレオチドを含むMNAzyme、1以上の活性阻害剤を含むMNAzyme、多成分核酸不活性プロ酵素(MNAi)、およびリガーゼ触媒活性のあるMNAzyme(「MNAzymeリガーゼ」)が含まれ、そのそれぞれは、WO/2007/041774、WO/2008/040095、WO2008/122084、米国第2007-0231810号、米国第2010-0136536号、および/または米国第2011-0143338号の1以上に詳細に記載されている。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「パートザイム」、「成分パートザイム」および「パートザイム成分」は、DNA含有もしくはRNA含有、またはDNA-RNA含有オリゴヌクレオチドを指し、それらの2つ以上は、本明細書で定義されるMNAzyme組織化助長因子の存在下でのみ、一緒に「MNAzyme」を形成することができる。特定の好ましい実施態様では、1以上の成分パートザイム、および好ましくは少なくとも2つは、3つの領域またはドメイン:「触媒」ドメイン(修飾を触媒する触媒中心の一部を形成する);「センサーアーム」ドメイン(組織化助長因子に結合(associate with)および/または結合し(bind to)得る;ならびに「基質アーム」ドメイン、(基質と結合および/または結合し得る)を含み得る。パートザイムは、本明細書で「apta-パートザイム」と呼ばれる、アプタマーを含むがこれに限定されない、少なくとも1つの追加の成分を含み得る。パートザイムは、切断センサーアームを有するパートザイム成分および組織化助長因子または基質のいずれかと相互作用することによりMNAzyme構造を安定化する安定化アーム成分を含むが、これらに限定されない複数の成分を含み得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「組織化助長因子」および「MNAzyme組織化助長因子」は、MNAzymeのセンサーアームとの相互作用により触媒活性のMNAzymeを形成する成分パートザイムの自己組織化を促進できる物を指す。本明細書で使用される場合、組織化助長因子は、切断、リガーゼまたは他の酵素活性を有するMNAzymeの組織化を促進し得る。好ましい実施形態では、MNAzymeの自己組織化には組織化助長因子が必要である。組織化助長因子は、1つの分子で構成されてもよく、または1以上のオリゴヌクレオチド「パートザイム」のセンサーアームと、ペア形成、もしくは結合し得る2以上の「組織化助長因子成分」で構成され得る。組織化助長因子は、MNAzymeのセンサーアーム(複数可)と配列相補性を共有しない1以上のヌクレオチド成分(複数可)を含み得る。組織化助長因子は標的になり得る。標的は、DNA、メチル化DNA、アルキル化DNA、RNA、メチル化RNA、microRNA、siRNA、shRNA、tRNA、mRNA、snoRNA、stRNA、smRNA、pre-およびpri-microRNA、その他非コードRNA、リボソームRNA、それらの誘導体、アンプリコン、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される核酸であり得る。核酸は「アンプリコン」であり得、増幅は、PCR、RT-PCR、SDA、HDA、RPA、LAMP、RCA、TMA、3SR、NASBA、またはリガーゼ連鎖反応の1以上を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「検出可能な効果」は、基質(複数可)の修飾が起きていることを示すものとして検出または定量化できる効果である。効果の大きさは、組織化助長因子(例えば、標的)などのインプットの量を示し得る。検出可能な効果は、蛍光分光法、表面プラズモン共鳴、質量分析、NMR、電子スピン共鳴、偏光蛍光分光法、円偏光二色性、イムノアッセイ、クロマトグラフィー、放射測定、測光、シンチグラフィー、電子法、電気化学的方法、UV、可視光または赤外線分光法、酵素法またはそれらの任意の組み合わせを含む、様々な方法により検出され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「基質」は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド塩基、またはそれらの類似体、誘導体、変異体、断片または組み合わせの任意の一本鎖または二本鎖ポリマーを含み、DNA、メチル化DNA、アルキル化DNA、RNA、メチル化RNA、microRNA、siRNA、shRNA、mRNA、tRNA、snoRNA、stRNA、smRNA、pre-およびpri-microRNA、他の非コードRNA、リボソームRNA、それらの誘導体、そのアンプリコンまたはそれらの任意の組み合わせ(デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド塩基の混合されたポリマーを含む)を含むがこれらに限定されず、これらは、触媒核酸酵素を含む酵素によって認識、作用、または修飾することができる。「基質」は、切断またはライゲーションを含むがこれらに限定されない様々な酵素活性により修飾され得る。「ポリヌクレオチド基質」または「基質」の修飾は、酵素の触媒活性をモニタリングするための「検出可能な効果」を提供し得る。
【0042】
本明細書で使用される場合「レポーター基質」は、触媒反応に関連して基質の消失または生成物の出現のいずれかの測定を容易にするように特に適合された基質である。レポーター基質は、溶液中に遊離していても、または例えば表面、または別の分子に結合して(または「つながれて」)いてもよい。レポーター基質は、例えば、フルオロフォア(消光剤などの、1以上の追加成分を含むまたは含まない)、放射性標識、ビオチン(例えばビオチン化)または化学発光標識を含む多種多様な手段のいずれかによって標識され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「プローブ」は、標的核酸の検出に使用されるオリゴヌクレオチドを指す。プローブの非限定的な実施例には、TaqManプローブ;分子ビーコンプローブ;および核酸酵素による触媒修飾が可能な核酸酵素基質が含まれる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「塩基」は、用語「ヌクレオチド」と同じ意味を有すると理解されるであろう。
【0045】
本明細書の先行技術文書の記載、またはそれらの文書から派生した、もしくは、に基づいた本明細書の記述は、文書または派生した記述が、関連技術の共通の一般常識の一部であることを認めるものではない。
【0046】
説明のために、本明細書で参照されるすべての文書は、特に明記しない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
略語
以下の略語は、本明細書および明細書全体で使用される:
GAT:遺伝子および転写
NED:非発現DNA
FC:倍数変化
TR:理論比
Ct:閾値サイクル/サイクル閾値
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
LLE:液液抽出
MOI:感染の多重度
PI:感染後
PT:処理後
TNA:全核酸
IF:免疫蛍光
IFU:封入体形成単位
MIC:最小阻止濃度
TOC:治癒試験
NAAT:核酸増幅技術
STI:性感染症
AMR:抗菌剤耐性
EMA:エチジウムモノアジド
PMA:プロポジウムモノアジド
MNAzyme:多成分核酸酵素、または多分割核酸酵素;
パートザイム(Partzyme):オリゴヌクレオチドを含む部分酵素;
ave;平均
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応;
gDNA:ゲノムDNA
dsDNA:二本鎖DNA
rc:逆相補体
NTC:鋳型なしコントロール
qPCR:リアルタイム定量PCR
R2;相関係数
nM;ナノモラー
mM;ミリモラー
μL;マイクロリットル
dNTP;デオキシリボヌクレオチド三リン酸
NF-H2O:ヌクレアーゼフリー水;
F:フルオロフォア;
Q:クエンチャー;
N = A、C、T、G、またはその任意の類似体;
N’= N に相補的な、またはNと塩基対となり得る任意のヌクレオチド;
W:AまたはT;
R:A、G、またはAA;
rN:任意のリボヌクレオチド塩基;
rR:AまたはG;
rY:CまたはU;
M:AまたはC;
H:A、C、またはT;
D:G、A、またはT;
JOEまたは6-JOE:6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2'、7'-ジメトキシフルオレセイン;
FAMまたは6-FAM:6-カルボキシフルオレセイン。
BHQ1:ブラックホールクエンチャー1
BHQ2:ブラックホールクエンチャー2
RT-PCR:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SDA:鎖置換増幅
HDA:ヘリカーゼ依存性増幅
RPA:リコンビナーゼポリメラーゼ増幅
LAMP:ループ媒介等温増幅
RCA:ローリングサークル増幅
TMA:転写媒介増幅
3SR:自家持続配列複製
NASBA:核酸配列ベース増幅
IB:アイオワブラック(登録商標)FQ
IBR:アイオワブラック(登録商標)RQ
mRNA:メッセンジャーRNA
tRNA:トランスファーRNA
rRNA:リボソームRNA
【0048】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施できるように、本発明の例示的な実施態様を十分詳細に伝える。説明した様々な実施態様の特徴または限定は、必ずしも本発明の他の実施態様または本発明全体を限定するものではない。したがって、以下の詳細な説明は、本発明の範囲を限定するものではなく、それは特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0049】
本発明は、細胞、生物、ウイルスなどにおける転写の存在、非存在および/または摂動を検出することができる方法を提供する。この方法は、例えば、活性転写の有無を検出するため;剤に対する応答または病態での転写レベルの摂動または変化を検出するため;死細胞および関連する細胞破片を含むサンプル中の活性転写の欠如を検出するため;および/または生細胞と死細胞間を区別するために使用され得る。非限定的な実施例として、対象が細菌に感染している場合、感染を解消する目的で抗生物質を投与され得る。そのような感染症の場合、細菌のクリアランスが成功したことを確認するために、治癒試験(TOC)が望ましい。細菌の生存率を測定するために以前に報告された方法には、細菌のRNAまたは細菌のDNAを測定するためのプロトコルが含まれる。これらのアプローチの問題は、死細胞または細胞破片に結合する残留RNAおよびまたはDNAが、細胞死および治癒後かなりの期間持続する可能性があり得ることである。さらに、例えばASTといった、DNAを使用してRNAのレベルを正規化しようとする方法では、抽出された核酸を正確に定量する必要がある。
【0050】
本発明は、特に、活性転写が起きている生細胞または生病原体を含む検体と死細胞または核酸の破片を含む検体との間を区別するための改善された方法を提供する。さらに、本発明は、発現RNAの測定に関するデータを正規化する改善された方法を提供し、これは各サンプルに存在する全TNAの濃度を定量化する必要なくサンプル間比較を可能にする。この方法は、サンプル間比較およびアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションの解明を可能にし、本発明を使用して生成されたデータは、ヒートマップの形式で表すことができる。
【0051】
VITAインデックス
この戦略には、特定の遺伝子およびそれらのRNA転写産物の増幅が含まれ、そして転写されないことが知られている特定のDNA配列に対して正規化される。RT-PCR中、特定の転写産物を標的とするプライマーは、それが転写された遺伝子も増幅する。遺伝子およびその関連転写産物の測定は、本明細書ではGAT(Gene And Transcript)と呼ばれる。さらに、RT-PCR中に、RNAに転写されないDNA領域のためにプライマーが存在する場合、このDNAのみを増幅することもできる。これはNED(Non-Expressed DNA)と呼ばれる。GATおよびNEDを同時に推定するための標的増幅プロトコルはVITA(Viable Transcript Analysis)試験と呼ばれ、したがって増幅がPCRによる場合、この方法はVITA PCRと呼ばれる。
【0052】
VITA PCRの分析により、様々な方法で計算できる活性転写レベルを測定できる。例として、データを使用して、2ΔCtを活性転写の非存在下で予想される理論比(TR)で割って計算された検体の倍数変化(FC)に等しいVITAインデックスを取得できる(残存DNAのみ)。例えば、検体のGATおよびNED間のCt値の違いにより、GAT(DNAプラスRNA)対DNAのみ(NED)で観察されるFCの推定が可能になり、FC=2ΔCt= 2(Ct NED - Ct GAT)である。GATからの活性転写がない場合に予測されるTRは、GATを計算するときに増幅される遺伝子の数を、NEDを計算するために増幅される配列の数で割ったものに等しい。NEDが単一のDNA配列について測定されると仮定すると、GATが単一の遺伝子の増幅を測定する場合、TR=GATのプライマーセットの数をNEDのプライマーセットの数で割った値=1/1=1;GATが2つの遺伝子(または領域)の増幅を測定する場合、TR=2/1=2であり、GATが3つの遺伝子の増幅を測定する場合、TRは3/1=3などである。例えば、Ct(GAT)が10およびCt(NED)が13の検体のVITAインデックスのFC値=2ΔCt=23=8となり、8の VITAインデックス(TR=1の場合)または4のVITAインデックス(TR=2の場合)となる。
【0053】
VITAインデックスは、細胞が(i)生存か、(ii)死(残存物の全クリアランスの有無にかかわらず、検出された、低レベルの核酸)か、または(iii)外部刺激の存在、例えば化合物または薬剤の存在に起因するあるレベルの代謝ストレス下にあるかどうかに関係なく有効な、細胞集団を用いる転写活性の測定を提供する。
【0054】
このアプローチは、RNAまたはDNAのいずれかを生細胞の存在のマーカーとして使用しようとした以前の研究者が直面した問題を克服する。これらの研究は、場合によってはRNAおよび/またはDNAが細胞死後数週間持続し得ることを示している。VITAインデックスは、生きている生物の存在を確認する方法として、遺伝子コピーごとのアクティブな転写レベルの測定を提供する。例として、このプロトコルは、細菌感染を治療するために抗生物質を投与された患者の治癒試験(TOC)を評価するために使用できる。
【0055】
さらに、この方法は、転写活性のより微妙な摂動を測定できる。例えば、細胞の生存率および活力に有害な影響を与える化合物の存在下で細胞をインキュベートする場合、この化合物の影響はVITAインデックスを使用して定量化できる。この測定が役立つ応用の例は、感染性細菌を含む検体を抗生物質の存在下でインキュベートし、VITA PCRを使用して分析する場合である。細菌が抗生物質に感受性がある場合、VITAインデックスは低下する。逆に、細菌が抗生物質に耐性がある場合、インデックスは有意に変化しない。
【0056】
増幅反応
本発明の方法は、核酸増幅反応から生じる産物の量的測定に適用することができる。標的DNAおよび/または標的RNA(例えば、mRNA)配列からアンプリコンを生成することができる任意の核酸増幅反応を使用できる。例えば、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量的PCR(qPCR)、および/またはデジタルPCR(dPCR)などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を使用し得る。適切な増幅反応の他の非限定的な例には、鎖置換増幅(SDA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、鎖侵入ベース増幅(SIBA)、転写媒介増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
増幅反応から生じる産物の量的測定は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用してなされ得る。これらの方法は、例えば、アンプリコンコピー数、サイクル閾値(Ct)などに基づき得、例えば、蛍光の測定を伴い得る。
【0058】
試験対象
本発明の方法は、転写の程度に着目した任意の適切な対象に適用することができる(例えば、転写レベル、転写の摂動、生存、死、薬剤および他の化合物などの剤への応答、などのいずれか1以上の測定として)。
【0059】
いくつかの実施態様では、対象は細胞、または細胞の集団である。細胞は単細胞生物(例えば、細菌、古細菌、原生動物、単細胞藻類、単細胞真菌、単細胞アメーバ)であり得る。他の実施態様では、対象はウイルスである。
【0060】
本発明の方法により分析される細胞およびウイルスは、生物学的サンプルの成分であり得る。生物学的サンプルの非限定的な例には、全血またはその成分(例えば血液細胞、血漿、血清)、尿、唾液、リンパ液、胆汁の分泌液、唾液、涙、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、滑液、精液、腹水腫瘍液、母乳および膿が含まれる(include include)。
【0061】
例示的な実施態様
いくつかの実施態様において、本発明は、細胞、生物またはウイルス(など)における転写活性の有無を予測する、合算された転写正規化値(nV±)を決定する方法を提供する。同様の方法は、(i)薬剤に耐性があり、(ii)薬剤に感受性があることが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団など、サンプルの2つの集団間の転写活性の差を決定するために適用され得る。
【0062】
非限定的な例としてのみ:
nV±は、nV +の下位検定の臨界点、および上位検定nV-の臨界点の中間点として計算でき、どちらも95%の信頼レベルである。
nV±=((nV+ - 1.645*δ+) + (nV- + 1.645*δ-)) / 2
式中:
nV+は、転写活性を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られたnV値の平均である。
nV-は、転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られたnV値の平均である。
δ+は、転写活性および臨界点を有することが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られたnV値の標準偏差である。
δ-は、転写活性を有しないことが知られている細胞、生物、またはウイルスの集団の個々から得られた標準偏差nV値である。
【0063】
実施例
これより、以下の特定の実施例を参照して本発明を説明するが、これは決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0064】
実施例1:抗生物質の有無でのクラミジアサンプルのIn vitro生成、免疫蛍光を使用した生存の分析、およびサンプルからのTNAの抽出方法。
【0065】
1.1 培養
クラミジア・トラコマチス(血清型D、実験室株UW-3/Cx)サンプルをHEp-2細胞で増殖させ、処理せず(抗生物質アジスロマイシンとインキュベートせず)、「生きた細菌」のポジティブコントロールを再現するか、または異なる濃度のアジスロマイシンとでインキュベートし、死んだ細菌をシミュレートするサンプルを作製するかのいずれかにした(アジスロマイシンはクラミジア性器感染症の第一選択治療である)。条件は次の通りであった。
【0066】
ヒト上皮細胞株(HEp-2)(ATCC(登録商標)CCL-23(商標))は、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)(Sigma-Aldrich)、100 mg/mLストレプトマイシン(Invitrogen社)、50 mg/mLゲンタマイシン(Life Technologies)および20 mMグルタミン(Sigma Aldrich)、を添加したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(Sigma-Aldrich)中で、37℃、5%CO2でインキュベートし、増殖させた。クラミジア・トラコマチス(血清型D)は、平底6ウェルプレート(サーモフィッシャー)に存在する、HEp-2単層に1の感染の多重度(MOI)で接種した。感染は、28℃の温度で30分間、500 gでの遠心分離のアシストによる接種により完了し、その後、上記の条件下でインキュベートした。
【0067】
1.1.1 処理プロトコルA
感染後(PI)4時間に、DMEMを交換し、抗生物質アジスロマイシン(Sigma Aldrich)を様々な用量で添加し、回収するまで5%CO2、37℃で再度インキュベートした。使用した異なる抗生物質濃度は、i)抗生物質なし(0 μg/mL)、ii)<MIC(0.008 μg/mL)、iii)MIC(0.064 μg/mL)、およびiv)>MIC(0.512 μg/mL)であった。これらの実験のために選択された「MIC用量」は、この現在の株を使用した実験室で観察されたものよりわずかに多い;しかしながら、再現性のあるバクテリアの死滅を保証するために特に選択された。使用される用量は、文献に記載されているMIC分析とも一致する。PI44時間で、ショ糖-リン酸-グルタミン酸(SPG)緩衝液(250 mMのショ糖、10 nMのリン酸ナトリウムおよび5 mMのL-グルタミン酸)を使用して細胞を回収した。体積の半分は、免疫蛍光染色による生存率の計数のために保存され(1.2生存率/免疫蛍光染色を参照);他の半分は、TNAおよび/またはRNAの抽出用に保持された。サンプルは、さらに処理するまで-80℃で保存した。各条件でトリプリケートで培養した。
【0068】
1.1.2 処理プロトコルB
PI4時間に、DMEMを交換し、シクロヘキシミドを添加して、インキュベーションを続けた。指数関数成長期において一度、PI24時間で、処理を行った。これは、各感染のDMEMを交換し、i)抗生物質なし、またはii)アジスロマイシン(0.128 μg/mL)のMICよりも高いレベルの抗生物質を添加することで達成された。その後、SPGバッファーを使用して処理後(PT)30分、1時間、または6時間でサンプルを回収し、さらに処理するまで-80℃で保存した。
【0069】
1.1.3 処理プロトコルC
感染後、4時間の時点で培地の交換はなく、本質的に非同調的な集団が作製され、これは、in vivo条件により似ている。指数関数成長期において一度、PI20時間で、処理を行った。これは、各ウェルのDMEMを交換し、i)抗生物質なし、またはii)抗生物質(0.256 μg/mLリファンピシン)を添加することのいずれかで達成された。次に、サンプルを5%CO2、37℃でインキュベートし、PT 5分後に回収した;または室温でインキュベートし、PT 15分後に回収した。回収にはSPGバッファーを使用し、直後にTNAを抽出した。この処理プロトコルに使用された株は、1)リファンピシンに感受性の血清型D 実験室株(UW-3/Cx)、および5)リファンピシンに耐性の、血清型L2 実験室作製変異株であった。
【0070】
1.1.4 処理プロトコルD
感染後、4時間の時点で培地の交換はなかった。指数関数的増殖期において一度、PIの20時間または24時間のいずれかで、各ウェルのDMEMを交換し、望ましい量の抗生物質を添加することにより達成されるアジスロマイシンの様々な用量で細胞を処理した。感染に対して加えた抗生物質処理の用量は、i)抗生物質なし、ii)0.128 μg/mL、iii)0.192 μg/mL、iv)0.256 μg/mL、およびv)0.512 μg/mLであった。次に、サンプルを5%CO2、37℃でインキュベートし、SPGバッファーを使用してPT 1時間で回収し、さらに処理するまで-80℃で保存するか、または回収直後に抽出した。
【0071】
1.1.5 処理プロトコルE
感染後、4時間の時点で培地の交換はなかった。指数関数的増殖期において一度、PI20時間で、細胞を異なる抗生物質の単一の用量で処理した。使用した抗生物質は、i)アジスロマイシン、ii)ドキシサイクリン、およびiii)リファンピシンで、それぞれ0.256 μg/mLの用量であった。この処理プロトコルに使用された株は、株 1)血清型D 実験室株(UW-3/Cx)、株 2)血清型L2野生型実験室株(434/Bu)、株 3)血清型L2実験室作製変異株、トリメトプリム耐性、株 4)血清型L2実験室作製変異株、スペクチノマイシン耐性、および株 5)血清型L2実験室作製変異株、リファンピシン耐性、であった。すべての血清型および各抗生物質のMICは、文献に記載された標準手順を使用して、事前に決定され、以下の表にリストした。MIC分析(表1)によると、使用されたすべての株は、抗生物質アジスロマイシンおよびドキシサイクリンに感受性があった。株1、2、3、および4はリファンピシンにも感受性があり、株5はその同じ抗生物質に耐性がある。次に、サンプルを5%CO2、37℃でインキュベートし、SPGバッファーを使用して、PT 1時間で回収し、すぐに抽出した。各条件について2つの生物学的レプリケートを得た。
【0072】
【表1】
【0073】
1.1.6 処理プロトコルF
PI 4時間で、DMEMを交換し、シクロヘキシミド(1 μg/mL)を添加して、感染を同調させ、宿主細胞によるタンパク質の産生を停止した。この時点で、抗生物質の添加も行われ、半分の数のウェルが未処理のままにし、他の半分は高用量の抗生物質のアジスロマイシンで処理した。回収するまで、細胞を再度5%CO2、37℃でインキュベートした。使用された異なる条件は、i)「Alive CT」を表す抗生物質なし、またはii)「Dead CT」を表す-抗生物質プラス(0.512 μg/mL)であった。PI 44時間で、SPGバッファーを使用して細胞を回収し、および様々な比率で混合して、以下の表に示すように、生細胞および非生細胞の割合を変えたサンプルを作製した。体積の半分は、免疫蛍光染色による生存率のカウントのために保存され(1.2生存率/免疫蛍光染色を参照;データは含まれていない);他の半分はTNAの抽出のために保持された。これらは、次いで、さらに処理されるまで-80℃で保存された。
【0074】
【表2】
【0075】
1.2 生存/免疫蛍光染色
生存を測定するために回収したサンプルを連続希釈し、平底96ウェルプレート(Nunc(商標)、Thermo Fisher)上にある、新鮮なHEp-2単層上で培養した。感染は、28℃の温度で30分間、500 gでの遠心分離のアシストによる接種により完了し、その後5%CO2、37℃でインキュベートした。各サンプルをトリプリケートで培養した。PI 38時間で、培養物をメタノールで固定し、および顕微鏡検査のために染色した。
【0076】
CtHtrA、MOMP(Biodesign)に対する抗体、およびAlexa fluor色素に結合した二次抗体(Invitrogen)を使用して、直接免疫蛍光(IF)染色を行った。DAPI(4'、6-Diamidino-2-Phenylindole、Dilactate)(Invitrogen)も宿主細胞染色のために添加された。検体は、蛍光顕微鏡IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare Life Sciences)で100 xの倍率で検査された。HEp-2細胞は青色を示し、一方クラミジア封入体は緑色で提示された。封入体形成単位(IFU mL-1)は、各ウェルおよび各連続希釈について、代表的な10の視野から封入体を数えることで決定した。視野のサイズのウェルのサイズへの外挿が行われ、ある特定のウェルにおける封入体の総数を計算した。追加された希釈および体積も考慮された。
【0077】
処理プロトコルA(1.1.1)で説明したように処理した細胞の免疫蛍光イメージングを図3パネルiに示し、これらの画像からIFU/mlをカウントすることで得られた結果を図3パネルiiに示し;結果は、上記MIC超(>MIC)処理した細胞で得られた値に対して正規化された。未処理の細胞、および様々な用量の抗生物質で処理された細胞は、それぞれクラミジアの感染単位の数が異なっていた。
【0078】
1.3 全核酸(TNA)抽出
1.3.1 抽出プロトコルA
TNA抽出のために回収したサンプルを氷上で解凍し、細胞破片を4℃で10分間800 gでペレット化し、その後4℃で20分間14000 rpmで上清を遠心分離した。ペレットをプロテイナーゼK消化ミックス(10 mg/mL プロテイナーゼK(Ambion)、1mM Tris pH7.5、0.5M EDTA、5M NaCl、10%SDSおよびヌクレアーゼフリー水(Ambion)に再懸濁し、56℃で60分インキュベートした。消化後、フェノール:クロロホルム:イソアミル(25:24:1、pH 6.5~6.9、Sigma Aldrich)を混合物に添加し、激しくボルテックスし、最大速度で5分間遠心分離した。酢酸ナトリウム(3M、pH5.2、Sigma Aldrich)および100%エタノール(Sigma Aldrich)を添加して上相を維持した。これを再びボルテックスし、20分間(室温で10分間、-20℃で10分間)インキュベートした。次に、TNAを10分間高速(14000 rpm)でペレット化し、その後70%エタノールを使用した洗浄ステップを2回行った。次に、ペレットを15分間風乾し、その後50 μLの水で溶出した。溶出液を定量し、-80℃で保存した。
【0079】
1.3.2 抽出プロトコルB
回収したサンプルを氷上で解凍した後、4℃で20分間、14000rpmで細胞をペレット化した。このステップの後、PuriSpin FireMonkey抽出キット(RevoluGen)を使用して、DNAおよびRNAを同時に抽出するために製造業者の指示に従った。
【0080】
1.3.3 抽出プロトコルC
回収したサンプルを氷上で解凍した後、4℃で20分間、14000rpmで細胞をペレット化した。このステップに続いて、追加のオンカラムDNase消化を伴う、動物細胞からの全RNAの精製のための製造業者の指示に従った。抽出はRNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して行った。
【0081】
実施例2:2ウェルアッセイにおける未処理および処理された細胞の遺伝子およびその転写産物の分析
以下の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出したTNAサンプルのDNAおよびGATのレベルを推定する。TNAは、実施例1(1.1.1処理プロトコルA)で記載したように、抗生物質とインキュベートしていない細胞(未処理、生細胞)、およびMICの8分の1(<MIC)、MIC(MIC)またはMICの8倍(>MIC)の濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出した。omp1遺伝子およびその転写産物を標的とするプライマーを使用して、クラミジアDNAおよびRNAを増幅した。GATのレベルは、omp1遺伝子およびその転写産物(DNAプラスRNA)の両方が増幅されたRT-PCRによって推定された。omp1遺伝子のみ(DNAのみ)のレベルは、逆転写酵素を含まない別個のPCRで測定した。
【0082】
2.1 パートザイム オリゴヌクレオチド
パートザイムは、omp1遺伝子またはomp1転写産物の両方の増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、活性のMNAzymeに集合するように設計された。一旦集合すると、MNAzymeはレポーター基質Sub2-FBを切断できる。パートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で、以下にリストした。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒中心の一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0083】
【表3】
【0084】
2.2 レポーター基質
本実施例では、基質は5'末端の6-FAM部分(以下基質名の「F」で示される)および3'末端のIABkFQクエンチャー部分(以下基質名の「IB」で示される)で末端標識された。492 nm(FAM励起波長)で励起しながら、516 nm(FAM蛍光波長)で基質の切断をモニターした。この実施例のレポーター基質は、5'から3'の順で、配列が以下に示されている。小文字の塩基はRNAを表しおよび大文字の塩基はDNAを表す。
【0085】
【表4】
【0086】
2.3 omp1遺伝子および転写産物の増幅用PCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNA鋳型のin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行われた。フォワードプライマーとリバースプライマーは、PCRでomp1遺伝子内のDNAを増幅するために使用され、ならびにomp-1遺伝子および転写産物内の、DNAおよびRNAの両方をRT-PCRにより増幅するために使用された。すべての配列は5'から3'の順で記入する。
【0087】
【表5】
【0088】
2.4 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1 培養および1.1.1 処理プロトコルA)にしたがってHEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)にも記載されている液-液抽出(LLE)技術として行われた。
【0089】
2.5 PCRおよびRT-PCRミックス
PCRおよびRT-PCRミックスの両方には、全体積20 μLに、40 nMの5'プライマー、200 nMの3'プライマー、200 nMのパートザイムA、200 nMのパートザイムB、200 nMのSub2-FB、1xSensiFASTプローブNo-ROXミックス(Bioline)、8 mM MgCl2(Bioline)、およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)が含まれていた。さらに、RT-PCRミックスには、0.2 U/μL RiboSafe RNase 阻害剤(Bioline)と0.2 μLの逆転写酵素(Bioline)が含まれていた。反応は、BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーで同じサイクリングパラメータを使用してトリプリケートで:48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間(サイクルあたりマイナス0.5℃)を10サイクル、および95℃で5秒間、52℃で50秒間を30サイクル、で行った。RT-PCRおよびPCRミックスは、5 μLのTNA鋳型(1/100希釈)が含まれていたか、または鋳型なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0090】
2.6 結果
クラミジアDNAおよびRNA(GAT)、またはDNAのみ、をそれぞれRT-PCRおよびPCRにより、未処理の生細胞および、MIC未満(<MIC)、MIC(MIC)、またはMIC超(>MIC)濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出したTNAをそれぞれ使用して増幅した。表2は、各反応タイプおよびサンプルについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、増幅プロットから得られたPCR(DNAのみ)およびRT-PCR(GAT)のCt値間の差として計算された。次に、倍数変化(RNAプラスDNA(GAT)対DNAのみのコピー数の比で、理論的にはそれらのΔCt値につながる)は、2ΔCtと推定され、図3パネルiiiにプロットされた。次に、結果を各細胞集団の生存率と比較した(図3パネルii)。
【0091】
【表6】
【0092】
理論的には、細胞がもはやクラミジアに感染していなくなった場合、転写産物が検出されないか、または転写産物もしくはその断片の非常に低い残留レベルのみが検出される。同様に、ほんのわずかのゲノムDNAまたはその断片の残留レベルが検出可能であるが、DNAは本質的にRNAよりも安定しているため、検出されるDNAの量は、RNAの量よりも多いと予測され得る。
【0093】
結果の分析により、未処理サンプルまたはMIC未満での処理サンプルから抽出されたTNAサンプルが増幅された場合、観察されたRT-PCRのCt値はPCRで観察されたCt値よりも低く(表2)、これらのサンプルの活性転写と一致した。MICレベルまたはそれより上のレベルで処理された培養からのTNAを使用した反応では、ΔCt値は低く(表2)、転写がほとんどまたはまったくないことと一致した。
【0094】
以前の研究では、1秒あたりのDNAまたはRNAのいずれかの検出は、クラミジア・トラコマチスのクリアランスの信頼できる測定ではないことが示されている。本実施例のデータは、DNA(PCRにより測定)およびGAT(DNAプラスRNA、RT-PCRにより測定)の間の倍数変化の比が、図3パネルiiおよびiiiのグラフの比較から明らかなように、未処理および処理細胞の生存(PI)の測定と同様の傾向があることを示している。本実施例はRNAとDNAの比を調べることの有用性を示しているが、DNAのみの標的が両方の反応でまだ発現しているため、この実験は本発明を例示していない。そのため、DNA/RNA対DNAのみの決定には、逆転写酵素有りと無しで行う2つの並行反応が必要であった。これは、直接の結果比較をより難しくする。そのため、より好ましいアプローチでは、単一のVITA RT-PCRで異なる核酸亜集団(DNAのみ対DNAプラスRNA)を共増幅できる本発明のような方法を使用するであろう。
【0095】
実施例3:GATおよびNED標的のスクリーニング
次の実施例は、GATおよびNEDアッセイの適切な標的をスクリーニングする方法を示す。クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から核酸を抽出した。TNAおよびRNAは、PI 24時間で回収された生細胞から抽出された。次に、選択した遺伝子とその転写産物(GAT)、または非転写遺伝子のみ(NED)を標的とするプライマーペアを使用して、核酸を増幅した。各標的の適切性は、(i)遺伝子およびその転写産物の両方が検出される、全RNAでのRT-PCRによるRNAの検出と、ならびに(ii)遺伝子DNAのみが検出されるPCRによるDNAの検出の比較により決定された。これらの実験では、GATのCtが両方の反応間の違いを示すと予測されるが、NEDのCtは違いを示さないはずである。
【0096】
3.1 パートザイム オリゴヌクレオチド
パートザイムは、それらがomp1遺伝子またはomp1転写産物のいずれかの増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、活性のMNAzymeに集合するように設計された。一度集合すると、MNAzymeはレポーター基質Sub102(20)-FBを切断できる。パートザイムの2番目のペアは、infA_IGRと呼ばれる非転写DNAの領域の増幅により生成されたアンプリコンに結合すると、活性のMNAzymeに集合し、NEDの測定を提供するように設計された。一度集合すると、このMNAzymeはレポーター基質Sub72-A1Bを切断できる。各MNAzymeのパートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で以下にリストする。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒中心の一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0097】
【表7】
【0098】
3.2 レポーター基質
本実施例では、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質を使用した。Sub102(20)-FBは、5'末端を6-FAMおよび3'末端をIABkFQで末端標識され、492 nmで励起しながら516 nmでその切断をモニターした。Sub72-A1Bは、5'末端をATTO(商標)Rho101および3'末端をIAbRQSpで標識され、592 nmで励起しながら609 nmでその切断をモニターした。この実施例のレポーター基質は、5'から3'の順で、配列を伴って以下に示される。小文字の塩基はRNAを表しおよび大文字の塩基はDNAを表す。
【0099】
【表8】
【0100】
3.3 GATおよびNEDを増幅するためのPCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNAおよびRNA鋳型のin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行われた。フォワードおよびリバースプライマーを使用して、PCRおよびRT-PCRによりomp1遺伝子および転写産物(GAT)ならびにinfA_IGR DNA(NED)の領域を増幅した。すべての配列は5'から3'の順に記入する。
【0101】
【表9】
【0102】
3.4 TNAおよびRNAの調製
核酸は、実施例1(1.1培養)に記載されているように、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から抽出された。PI 4時間で、DMEMをシクロヘキシミドに置き換えて、感染を同調させ、宿主によるタンパク質合成を停止した。細菌の指数関数的増殖期の、感染後24時間で回収されるまで、細胞を5%CO2、37℃で再びインキュベートした。
【0103】
TNAの抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)にも記載されているLLE技術として行われた。次の変更を加えられた;細胞片ペレット化ステップは、この実施例ではサンプルの抽出中に行われなかった。
【0104】
RNAの抽出は、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.3抽出プロトコルC)で定義されているように、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用し、および追加のオンカラムDNase消化を伴った動物細胞からの全RNAの精製に関する製造業者の指示にしたがって行った。
【0105】
3.5 PCRおよびRT-PCRミックス
PCRおよびRT-PCRミックスの両方には、全体積20μLに、40 nMの5'プライマー、200 nMの3'プライマー、200 nMのパートザイムA、200nMのパートザイムB、200nMのGATのSub2-FB、200nMのNEDのSub72-A1B、1x SensiFASTプローブNo-ROXミックス(Bioline)、8 mM MgCl2(Bioline)、およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)が含まれていた。さらに、RT-PCRミックスには0.2 U/μL RiboSafe RNase阻害剤(Bioline)および0.2μLの逆転写酵素(Bioline)が含まれていた。反応は、BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーで同じサイクリングパラメータを使用して行われた:48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間を10サイクル(サイクルあたりマイナス0.5℃)、ならびに95℃で5秒間および52℃で50秒間を30サイクル。RT-PCRおよびPCRミックスには、5μLのTNAもしくはRNA鋳型(1/100希釈)が含まれていたか、または鋳型なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0106】
3.6 結果
クラミジアDNAおよびRNA、またはDNAのみを、PI24時間で未処理の生細胞から採取した、RNAおよびTNAサンプルでそれぞれRT-PCRおよびPCRにより増幅した。表3Aは、行われた反応のアンプリコンのタイプおよび由来を示す。表3Bは、各反応タイプおよびサンプルについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、増幅プロットから得られたPCR(DNAのみ)とRT-PCR(DNAおよびRNA)のCt値間の差として計算された(図4)。
【0107】
【表10】
【0108】
【表11】
【0109】
候補GATプライマーおよびTNAを使用した結果(表3B)は、omp1プライマーがomp1 DNAおよびomp1 RNAの両方を増幅できることを示唆しており(図4パネルiおよびii)、したがってGATプライマーとしての適合性の判断基準に適合している。さらに、RT-PCRのCtはPCRのCtより4.92サイクル先であるので、TNAサンプルには、omp1 DNA遺伝子コピーあたりRNAのコピーが多数あることが示唆される。これは、RNAに対してomp1プライマーを使用した結果でもサポートされており(図4パネルi)、RT-PCRおよびPCRの結果の間に11.51の大きなCt差が観察された。このことは、精製RNAサンプルでのomp1 RNAの強力な増幅およびPCRで非常に遅いCtのみが検出されることを反映しこれはおそらくRNA調製物中の少量の混入DNAによるものである。
【0110】
候補NEDプライマーおよびTNAの使用の結果(表3B)は、InfAIGRプライマーがinfA遺伝子間DNA配列を増幅できることを示唆している(図4パネルiv)。さらに、RT-PCRとPCRのCt(Ct for the RT-PCR the PCR)は非常に類似しているため(ΔCt-0.05)、これは、これらのNEDプライマーは、TNAの追加のRNA配列を増幅しないことを示しており、この配列に関連するRNA転写の欠如と整合している。そのため、これらのプライマーは、NEDプライマーとしての適合性の基準に適合する。これは、RNAに対してInfAIGRプライマーを使用した結果(遅いCt値のみが生成され、これはPCRおよびRT-PCRに似ている)によってもサポートされ(図4パネルiii)、および以前のように、RNA調製物中の混入DNAから生成されたアンプリコンを単に表す可能性が高い。
【0111】
この実施例は、GATプライマーとして、またはNEDプライマーとして使用する候補配列をスクリーニングするのに適した方法を提供する。さらに、この実施例は、抽出中に追加のDNase消化手順を行ったにもかかわらず、精製RNA調製物に混入DNAの証拠を示す。観察により、VITA PCRなどの、改善された方法の必要性が強調される。これは、混入DNAが、RNAの増幅が臨床検体を含む、検体の細胞生存率の測定として使用される場合に観察される、少なくともいくつかの偽陽性の原因である可能性が最も高いためである。以前の研究では、1秒あたりのRNA(またはDNA)のいずれかの検出は、クラミジア・トラコマチスのクリアランスの信頼できる測定ではないことが示されている。
【0112】
実施例4:VITA PCRによる未処理および処理された細胞のGATおよびNEDの分析。
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出したTNAサンプルのNEDおよびGATのレベルを推定する。TNAは、実施例1、処理プロトコルA(1.1.1)で説明されているように、抗生物質とインキュベートしていない細胞(未処理、生細胞)、およびMICの8分の1(<MIC)、MIC(MIC)またはMICの8倍(>MIC)の濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出された。クラミジアDNAおよびRNA(GAT)は、omp1遺伝子およびその転写産物を標的とするプライマーを使用したRT-PCRにより増幅された。クラミジアDNAのみ(NED)は、転写されない、infAIGRと呼ばれる、ゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRで共増幅された。GATおよびNEDのCt値が決定された。
【0113】
4.1 パートザイム オリゴヌクレオチド
パートザイムは、omp1遺伝子およびomp1転写産物の両方の増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、活性なMNAzymeに集合するように設計された。集合すると、このMNAzymeはレポーター基質Sub2-FBを切断し得る。パートザイムの2番目のペアは、infA_IGRと示される非転写領域の増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、活性なMNAzymeに集合するように設計された。集合すると、このMNAzymeはレポーター基質Sub72-A1Bを切断し得る。パートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で、以下にリストする。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒コアの一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0114】
【表12】
【0115】
4.2 レポーター基質
本実施例では、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質を使用した。Sub2-FBは5'末端が6-FAMで末端標識され、3'末端がIABkFQであり、492 nmで励起しながら516 nmで切断をモニターした。Sub72-A1Bの5'末端にATTO(商標)Rho101、3'末端にIAbRQSpのラベルを付け、その切断A1Bを592 nmで励起しながら609 nmでモニターした。この例のレポーター基質は、5'から3'の順で、以下に配列と共に示されている。小文字の塩基はRNAを表しおよび大文字の塩基はDNAを表す。
【0116】
【表13】
【0117】
4.3 omp1遺伝子および転写産物の増幅用PCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNA鋳型のin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行われた。フォワードおよびリバースプライマーを使用して、RT-PCRでomp1 RNAおよびDNA(GAT)ならびにinf_AGR DNA(NED)を増幅した。すべての配列は5'から3'の順で記入する。
【0118】
【表14】
【0119】
4.4 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1 培養、1.1.1 処理プロトコルA)の通りにHEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1 抽出プロトコルA)にも記載されているLLE技術として行われた。
【0120】
4.5 反応成分
すべての反応には、全体積20 μLに、40 nMの各フォワードプライマー、200 nMの各リバースプライマー、200 nMの各パートザイム A、200 nMの各パートザイム B、200 nMの各基質、1x SensiFAST Probe No-ROXミックス(Bioline)、2 mM MgCl2(Bioline)、0.2 U/μL RiboSafe RNase 阻害剤(Bioline)、0.2 μLの逆転写酵素(Bioline)、およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)が含まれていた。すべての反応は、BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーでトリプリケートで行った。サイクリングパラメータは、48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間(サイクルあたり温度が0.5℃低下)を10サイクル、ならびに95℃で5秒間および52℃で50秒を30サイクルであった。反応には、5 μLのTNA鋳型(1/100希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0121】
4.6 結果
クラミジアDNAおよびRNA(GAT)、またはDNAのみ(NED)は、生存未処理の細胞から、およびMIC未満(<MIC)、MICまたはMIC超(>MIC)濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出されたTNAの単一のRT-PCRで共増幅した(図5パネルi)。表4は、各サンプルのGATまたはNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDおよびGATシグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GATのNEDに対する比)は2ΔCtと推定され(表4)およびVITAインデックスは図5のパネルiにプロットされた。次に、結果を各細胞集団の生存率と比較した(図3パネルiおよびii)。
【0122】
【表15】
【0123】
理論的には、細胞がクラミジアに感染しなくなった場合、非常に低い残存レベルの転写産物またはその断片しか検出できない。同様に、ゲノムDNA、またはその断片、の低い残留レベルのみが、検出可能である。DNAは本質的にRNAよりも安定しているので、検出されるDNAの量は、RNAの量よりも多いと予測され得る。結果の分析により、未処理またはMIC未満で処理サンプルから抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GATのCt値は、NEDよりも低く(表4)、活性転写と一致している。MICレベルの、またはそれ超で処理されたTNAのGATおよびNEDの場合、Ct値の差は小さく(表4)、転写がほとんどないかまたはないことを示している。4種類のサンプルタイプについて、倍数変化とVITAインデックスを計算した。GATの計算には単一の遺伝子およびその転写産物のみを使用し、NEDの計算には単一の非転写領域のみを使用したため、倍数変化とVITAインデックスは等しい(表4)。
【0124】
以前の研究では、1秒あたりのDNAまたはRNAのいずれかの検出は、クラミジア・トラコマチスのクリアランスの信頼できる測定ではないことが示されている。この実施例のデータは、図5パネルiならびに図3パネルiおよびiiのグラフの比較から明らかなように、VITAインデックスが未処理および処理された細胞の生存(PI)の測定と相関することを示す。この例は、GATおよびNEDを単一の反応で測定でき、その結果を使用して、観察された細胞の生存および抗生物質の存在に対する反応と相関するVITAインデックスを計算できることを示す。この実施例は、生存、この場合はクラミジアの生存の検出に有用で迅速な方法を提供する。さらに、感染が解消されたかどうかを判断することにより、患者の検体の治癒試験(TOC)の基礎を提供できる。
【0125】
実施例5-未処理および処理された細胞由来のTNAを使用するVITA PCRによりGATを測定するための遺伝子および対応する転写産物内の2つの領域の使用。
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出したTNAサンプルのNEDおよびGATのレベルを推定する。TNAは、抗生物質とインキュベートしていない細胞(未処理、生細胞)、およびMICの8分の1(<MIC)、MIC(MIC)またはMICの8倍(>MIC)の濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から、実施例1、処理プロトコルA(1.2.1)に記載されたように抽出された。クラミジアDNAおよびRNA(GAT)は、omp1遺伝子およびその転写産物(GAT1/2)の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。クラミジアDNAのみ(NED)は、転写されない、infAIGR(infA遺伝子間領域)と呼ばれる、ゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRで共増幅された。GAT1/2およびNEDのCt値が得られた。
【0126】
5.1 パートザイム オリゴヌクレオチド
パートザイムは、omp1遺伝子またはomp1転写産物のいずれかの増幅によって生成されたアンプリコンに結合した場合に、2つの活性のMNAzymeに集合するように設計された。これらの2つのMNAzymeは、omp1の2つの別個の領域(GAT1およびGAT2領域)の増幅により誘導される2つの異なるアンプリコンに結合することができた。一度集合すると、両方のMNAzymeは、同じレポーター基質Sub2-FBを切断できる。パートザイムの3番目のペアは、infA_IGRで示される非転写DNA領域の増幅によって生成されたアンプリコンに結合する場合、活性のMNAzymeに集合し、NEDの測定を提供するように設計された。一度集合すると、このMNAzymeは、レポーター基質Sub72-A1Bを切断できる。各MNAzymeのパートザイムAおよびパートザイムBの配列は、5'から3'の順で、以下にリストする。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒コアの一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0127】
【表16】
【0128】
5.2 レポーター基質
本実施例では、実施例4(4.2レポーター基質)のように、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質を使用した。
【0129】
5.3 GAT1、GAT2およびNEDの増幅用PCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNA鋳型のin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行われた。フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用して、RT-PCRによりomp1遺伝子および転写産物の2つの領域(GAT1とGAT2)ならびにinfA_IGR DNA(NED)を増幅した。すべての配列は5'から3'の順で記入する。
【0130】
【表17】
【0131】
5.4 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.1 処理プロトコルA)に記載されているように、HEp-2細胞で培養して、in vitroの方法で得られているクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1 抽出プロトコルA)にも記載されているLLE技術として行った。
【0132】
5.5 反応成分
すべての反応には、全体積20 μLに、40 nMの各フォワードプライマー、200 nMの各リバースプライマー、200 nMの各パートザイム A、200 nMの各パートザイム B、400 nMの各基質配列番号3および200 nMの基質配列番号11、1x SensiFAST Probe No-ROXミックス(Bioline)、2 mM MgCl2(Bioline)、0.2 U/μL RiboSafe RNase 阻害剤(Bioline)、0.2 μLの逆転写酵素(Bioline)およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)を含んだ。BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーですべての反応をトリプリケートで行った。サイクリングパラメータは、48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間を10サイクル(サイクルあたり温度において0.5℃の減少を伴う)、および95℃で5秒間および52℃で50秒間を30サイクルであった。反応には、5 μLのTNA鋳型(1/100希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0133】
5.6 結果
omp1遺伝子および転写産物内の2つの領域(GAT1およびGAT2)から、および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAを、生存未処理の細胞およびMIC未満(<MIC)、MIC、またはMIC超(>MIC)濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出したTNAからの単一のRT-PCRで共増幅した(図5パネルii)。表5に、各サンプルで、NED、ならびにGAT1およびGAT2(GAT1/2)からの合算されたシグナルについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDおよびGAT1/2のCt値間の差として計算された。次に、それらのΔCt値に論理的に導く倍数変化(GATのNEDに対する比)は2ΔCtと推定され、および表5に示された。VITAインデックスは、FCをTRで割ることによって計算された(この場合は2)。次に結果が、各細胞集団の生存と比較された。
【0134】
【表18】
【0135】
結果の分析により、未処理またはMIC未満の処理サンプルから抽出された、TNAサンプルが増幅された場合に、GAT1/2のCt値は、NEDよりも低いことが示され(表5)、活性転写と一致する。MICレベルまたはMIC超レベルで処理したTNAのGAT1/2およびNEDの場合、Ct値の差は小さく(表5)、転写がほとんどまたはまったくないことを示す。4種類のサンプルタイプについて、倍数変化およびVITAインデックスを計算した。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用してGAT1/2を計算し、および単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化をTRで除算してVITAインデックスを計算する(表5)。
特定の遺伝子は、たとえば細菌の発生サイクルの特定の段階の間でのみ発現される可能性があるので、DNAおよびその関連RNA転写産物の両方を増幅できる複数のプライマーセットを組み込む能力は、実際非常に望ましい。(好ましくは異なる条件下で高レベルに)発現した複数の遺伝子を含むアッセイは、ほとんど見込みのない条件(desperate conditions)下で一貫して検出される発現を確保できる。
【0136】
実施例6 -臨床検体でのVITA PCRの使用
下記の実施例では、臨床サンプルのNEDに対するGATのレベルを推定する。尿サンプルは、第一選択の抗生物質アジスロマイシンに対して、連続して治療が失敗した、症状のある患者から得られた。サンプルからTNAを抽出し、生/生存(陽性参照)または死(陰性参照)であることが確認されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出した参照の材料と一緒に試験した。GATを測定するために、omp1遺伝子とその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRにより、クラミジアDNAおよびRNAを増幅した。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルが決定され、およびVITAインデックスの計算に使用された。
【0137】
6.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイム オリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例5(それぞれ5.1、5.2および5.3)の通りであった。
【0138】
6.2 TNAの調製
臨床サンプル:
RNAとDNA(TNA)は、尿の臨床検体から共抽出され、これは、第一選択の抗生物質処理に対して、連続して治療が失敗した患者から得られている。合計8mLの尿をペレット化し、その後に核酸を抽出し、DNAおよびRNAの両方を同時に抽出するために製造元の指示にしたがって、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)に記載されているように行った。
参照の材料:
RNAおよびDNA(TNA)は、in vitroの方法で得られた、HEp-2細胞で培養され、実施例1で記載されているように、高用量のアジスロマイシン抗生物質(0.512 μL/mL)で処理され「死」と確認されたか、または処理されず「生」と確認されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。これらの参照サンプルの生存の状態は、免疫蛍光染色によって確認された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用して、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)にも記載されている液液抽出(LLE)技術として行った。
【0139】
6.3 反応成分
使用したRT-PCR条件は、実施例5(5.5)に記載の通りであり、以下の修正を加えた:0.1μLの逆転写酵素(Bioline)を10μLの全反応量で添加し、これには、臨床サンプルから抽出した2.5μLのTNA(原液)、または2.5μLの各参照のTNAサンプル(1/100希釈)が含まれたか、標的なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0140】
6.4 結果
omp1遺伝子および転写産物(GAT1およびGAT2)の2つの領域、および1つのNED領域、からのクラミジアDNAおよびRNAが、共増幅され、尿の臨床サンプルから抽出されたTNAからの単一のRT-PCRで検出された(図6パネルi)。臨床サンプルの増幅は、「生の(Alive) CT」(未処理サンプル)または「死の(Dead) CT」(高用量のアジスロマイシンで処理)のいずれかの、クラミジア培養物由来の参照サンプルと比較された(図6パネルii)。ΔCtは、NEDおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表6に示した。
【0141】
症状のある患者由来の、臨床サンプルには、生存細菌が含まれると予測される。次に、これにより、臨床サンプルおよび生のCT参照(陽性)間で同様のVITAインデックスとなることが予期され、これは両方が、より高いレベルの、存在する転写産物を含むためである。
【0142】
結果の分析により、尿から抽出された、臨床サンプルが増幅された場合、GAT1/2のCt値が、NEDよりも低かったことを示している(表6)。これは活性転写と一致しており、参照サンプルである、生のCT(陽性)で観察されたものと同様である(表6)。すべての3つの死のCT参照サンプル(陰性1-3)について、GAT1/2およびNEDのCt値は、より近かった(表6)。すべてのサンプルについて、ΔCt、倍数変化、VITAインデックスを計算した(表6)。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化は、VITAインデックスの2倍である(表6)。臨床サンプルおよび生のCTのVITAインデックスの比較は、生存集団の検出と相関して、差がないことを示した(図6パネルii)。反対に、臨床サンプルおよび死のCTサンプルのVITAインデックスの比較は、VITAインデックスの差を示した。これらは、高用量のアジスロマイシンで処理され、生存してないことが確認された死のCTサンプルの転写活性の低下または非存在と一致して、臨床サンプルの方が死のCTサンプルよりも高かった(図6パネルii)。
【0143】
この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDが単一の反応で測定可能であり、この結果をVITAインデックスの計算に使用できることを示している。臨床サンプルのVITAインデックスおよび参照の材料のVITAインデックス間の比較は、臨床サンプルの細胞の生存における正確なコールを示した。これは、臨床検体に対する技術のポジティブな成績、および臨床環境での適用性を示している。死細胞と生細胞間を区別する能力は、抗生物質による処理後に患者が感染をうまく解消したかどうかを決定する際に応用できる。試験は、初期診断または「治癒試験」を提供できる。
【0144】
【表19】
【0145】
実施例7 -VITA PCRを使用した抗生物質感受性試験
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出した、TNAサンプルのGATレベルの変化を推定する。TNAを細胞から抽出し、指数関数成長期に、感染後24時間で、実施例1、処理B(1.1.2)で記載したように、MICで抗生物質で処理したか、または処理しなかった(コントロール)。omp1遺伝子とその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRにより、クラミジアDNAおよびRNAを増幅し、GATを測定した。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、VITAインデックスの計算に使用した。
【0146】
7.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイム オリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例5(それぞれ5.1、5.2および5.3)の通りであった。使用したRT-PCR反応条件は、実施例5(5.5)に記載された通りであった。これらの反応には、5μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0147】
7.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.2処理プロトコルB)に記載された通り、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用して、下記の修正を伴い、実施例1(1.3全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)にも記載されているLLE技術として行った;細胞片ペレット化ステップは、この実施例ではサンプルの抽出中に行われなかった。
【0148】
7.3 結果
omp1遺伝子および転写産物内の2つの領域(GAT1およびGAT2)、および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAからの単一のRT-PCRで検出された。これらの培養物は、指数関数成長期に、抗生物質で処理または未処理のまま(コントロール)にし、処理後1および6時間で回収した(図7パネルi)。表4に、各サンプルのGAT1/2およびNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2とNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表7に示した。その後、各時点で、処理反応なし(コントロール)および抗生物質で処理したものとの間で結果を比較した(図7パネルii)。
【0149】
抗生物質の存在は細胞の正常な機能を破壊すると予測されるため、抗生物質の処理の影響を受けやすい細胞は転写レベルが低下すると予測される。ひいては、これにより、これらの細胞のVITAインデックスは、コントロール(未処理の細胞)と比較して減少する。
【0150】
結果の分析により、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2のCt値がNEDよりも低かったことが示されている(表7)。これは、すべての4つのサンプルの活性転写と一致している。倍数変化およびVITAインデックスを、サンプルおよび処理後の異なる時点で計算した(表7)。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化は、VITAインデックスの2倍である(表7)。未処理サンプルおよび処理サンプルのVITAインデックスの比較は、両方の時点での、処理サンプルが、未処理サンプルよりも低いVITAインデックスの差を示しており(図7パネルii)、抗生物質の存在下での転写活性の低下と一致する。ΔVITA比は、VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質を含むVITAインデックスで除算して計算される。
【0151】
この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDが1回の反応で測定可能であり、この結果がVITAインデックスの計算に使用できることを示している。ΔVITA比として計算された、処理された細胞および未処理の細胞のVITAインデックス間の比較は、抗生物質の存在に対する応答を示した。これは、細胞の抗生物質感受性を示している。さらに、処理後1時間または6時間を含む種々の時点で、この感受性が特定できることを示している。
【0152】
【表20】
【0153】
実施例8 -インキュベーション時間のより短いVITA PCRを使用したアジスロマイシンによる抗生物質感受性試験
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出したTNAサンプルのGATの、NEDに対するレベルの変化を推定する。TNAは、指数関数成長期の間の感染後24時間で、MICで、抗生物質で処理された細胞、または処理されなかった細胞(コントロール)から抽出された。処理は、アジスロマイシン(0.128 μg/mL)を使用した実施例1、処理B(1.1.2)に記載した通りであった。GATの測定を得るために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、およびVITAインデックスの計算に使用した。さらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITA比を計算した。
【0154】
8.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイムオリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例5(それぞれ5.1、5.2および5.3)の通りであった。使用したRT-PCR条件は、実施例5(5.5)で説明した通りで、そして反応には5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0155】
8.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.2処理プロトコルB)に記載されているように、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、下記の修正を伴い、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用して、実施例1(1.3全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)に記載されているように、LLE技術として行われた;細胞片ペレット化ステップは、この実施例ではサンプルの抽出中に行われなかった。
【0156】
8.3 結果
omp遺伝子および転写産物(GAT1とGAT2)内の2つの領域、ならびに1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが、共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAから単一RT-PCRで検出された。これらの培養物は、指数関数成長期に抗生物質で処理または未処理のまま(コントロール)にし、0.128 μg/mLのアジスロマイシン処理後30分または1時間で回収した(図7パネルi)。表8に、各サンプルのGAT1/2およびNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、それらのΔCt値に理論的につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は2ΔCtと推定され、表8に示された。その後、処理反応なし(コントール)および各時点で抗生物質で処理したものとの間で結果を比較した(図7パネルiii)。
【0157】
【表21】
【0158】
結果の分析により、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2のCt値がNED(表8)よりも低く、すべてのサンプルに活性転写があったことを示す。処理後のすべての時点で、すべてのサンプルについて倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表8)。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化は、VITAインデックスの2倍である(表8)。各時点での未処理サンプルおよび処理サンプル間の、VITAインデックスの比較により、VITAインデックスの差を示した(図7パネルiii)。これは、抗生物質の存在下での細胞の転写活性の破壊と一致している。ΔVITA比は、VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質ありのVITAインデックスで除算して計算される。
【0159】
実施例7のように、この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDを単一の反応で測定でき、その結果をVITAインデックスの計算に使用できることを示している。抗生物質の存在に対する応答は、処理された細胞および未処理の細胞のVITAインデックス間の比較を通して、検出され、ΔVITA比として計算された。これは、細胞の抗生物質感受性を反映している。さらに、アジスロマイシンによる抗生物質処理の30分後または1時間後を含む、種々の時点で感受性が確立できることを示している。
【0160】
実施例9 -リファンピシンVITA PCRおよびより短いインキュベーション時間による抗生物質感受性試験
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス株1および株5(それぞれリファンピシン耐性の血清型D 実験室株および血清型L2株)に感染したHEp-2細胞から抽出したTNAサンプルのGATの、NEDに対するレベルの変化を推定する。TNAは、指数関数成長期にある感染後20時間で、濃度0.256 μg/mLの抗生物質リファンピシンで処理された細胞、または処理されなかった細胞(コントロール)のいずれかから抽出された。処理は、実施例1、処理C(1.1.3)に記載された通りであった。GATの測定を得るために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、VITAインデックスの計算に使用した。これに対してさらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITA比を計算した。
【0161】
9.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
パートザイムは、omp1遺伝子またはomp1転写産物のいずれか増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、2つの活性のあるMNAzymeに集合するように設計された。これらの2つのMNAzymeは、omp1の2つの別個の領域(GAT1およびGAT2領域)の増幅により誘導される2つの異なるアンプリコンに結合することができた。一度集合すると、両方のMNAzymeは同じレポーター基質Sub102(20)-FBを切断できる。パートザイムの3番目のペアは、infA_IGRで示される非転写DNA領域の増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、活性のあるMNAzymeに集合し、NEDの測定を提供するように設計された。集合すると、このMNAzymeはレポーター基質Sub72-A1Bを切断できる。各MNAzymeのパートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で以下にリストする。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合したMNAzymeの触媒中心の一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0162】
【表22】
【0163】
9.2 レポーター基質
本実施例では、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質を使用した。Sub102(20)-FBは、5'末端を6-FAMおよび3'末端をIABkFQで末端標識され、492 nmで励起しながら516 nmで切断をモニターした。Sub72-A1Bは、5'末端をATTO(商標)Rho101および3'末端をIAbRQSpで標識され、592 nmで励起しながら609 nmで切断をモニターした。この実施例のレポーター基質は、5'から3'の順で、以下に示される。小文字の塩基はRNAを表しおよび大文字の塩基はDNAを表す。
【0164】
【表23】
【0165】
9.3 GAT1、GAT2およびNEDの増幅のためのPCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNAテンプレートのin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行った。フォワードおよびリバースプライマーを使用して、RT-PCRで、omp1遺伝子および転写産物(GAT1およびGAT2)の2つの領域ならびにinfA_IGR DNA(NED)の領域を増幅した。すべての配列は5'から3'の順に書き込まれる。
【0166】
【表24】
【0167】
9.4 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.3処理プロトコルC)に記載されているように、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して行い、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)で定義されているように、またDNAおよびRNAを同時に抽出するために製造元の指示にしたがって行った。
【0168】
9.5 反応成分
すべての反応物は、全体積20 μLに、40 nMの各フォワードプライマー、200 nMの各リバースプライマー、200 nMの各パートザイムA、200 nMの各パートザイムB、400 nMの基質配列番号10および200 nmの基質配列番号11、1x SensiFASTプローブNo-ROXミックス(Bioline)、2 mM MgCl2(Bioline)、0.2 U/μL RiboSafe RNase 阻害剤(Bioline)、0.2 μLの逆転写酵素(Bioline)およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)を含んだ。BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーですべての反応をトリプリケートで行った。サイクリングパラメータは、48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間を10サイクル(サイクルあたり温度が0.5℃低下)、ならびに95℃で5秒間および52℃で50秒間を30サイクル。反応には5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0169】
9.6 結果
omp1遺伝子および転写産物(GAT1とGAT2)内の2つの領域、ならびに1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAからの単一のRT-PCRで検出された。これらの培養物は、指数関数成長期に抗生物質で処理されたか、または未処理のまま(コントロール)であった。それらを37℃で5分間(図7パネルiv)または室温で15分間(図7パネルv)のいずれかでインキュベートした。処理に使用された抗生物質は、リファンピシンで、濃度が0.256 μg/mLで、感受性株のMICの32倍、および耐性株のMICの32分の1と等価であった。表9に、各サンプルのGAT1/2およびNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDシグナルおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表9に示した。その後、処理反応なし(コントロール)および各時点で、抗生物質で処理したものとの間で結果を比較した(図7パネルivおよびv)。
【0170】
【表25】
【0171】
結果の分析により、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2はNED(表9)よりCt値が低く、すべてのサンプルに活性転写があったことを示す。処理後のすべての時点で、すべてのサンプルについて倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表9)。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化は、VITAインデックスの2倍である(表9)。未処理サンプルおよび処理サンプル間の、VITAインデックスの減少を、各時点およびインキュベーション条件で、対応のないt検定を使用して分析した。
【0172】
結果は、37℃でリファンピシンと5分間インキュベーションした後、感受性株1のVITAインデックスの有意な減少(表9、p<0.0001)を示した(図7パネルiv)。これは、抗生物質の存在下での細胞の転写活性の破壊と一致しており、この特定の血清型の感受性プロファイルを確認する。対照的に、耐性株(株5)のVITAインデックスは、これらの同じ条件下(表9、図7、パネルiv)で処理サンプルと未処理サンプル間の有意差を示さず、この特定の血清型の耐性プロファイルを確認した。並行実験では、室温でのリファンピシンとの15分間のインキュベーション後に、感受性株1のレプリケートでのVITAインデックスの減少(表9、p<0.0001)が観察された(図7パネルv)。耐性株5のVITAインデックスは、同じ条件下でリファマイシンの存在下では減少せず、実際にはわずかな増加を示した。
【0173】
この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDが、単一の反応で測定可能であり、この結果が、VITAインデックスの計算に使用できることを示している。抗生物質の存在に対する応答は、処理された細胞および未処理の細胞の間のVITAインデックスを比較して検出され、ΔVITA比として計算された。これは、細胞の抗生物質感受性または耐性プロファイルを正確に反映するために使用でき、さらに短いインキュベーション時間後に感受性が証明できることを示す。抗生物質に対する感受性と耐性の区別は、抗生物質処理の5分後に早くも検出できる。また、室温でのインキュベーションは、感受性および耐性の生物を正しく区別し、安定した37℃でのインキュベーションの必要はないことが示された。
【0174】
実施例10:VITA PCRを使用した抗生物質感受性試験 -抽出プロトコルAを使用した用量依存的応答
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出した、TNAサンプルのGATの、NEDに対する変化を推定する。TNAは、未処理(コントロール)かまたは様々な用量の抗生物質(アジスロマイシン);具体的には、MICの4倍(0.128 μg/mL)、MICの6倍(0.192 μg/mL)、MICの8倍(0.256 μg/mL)の濃度で処理されたかのいずれかの細胞から抽出された。抗生物質は、実施例1、処理D(1.1.4)に記載されている通り、細胞が指数関数成長期にある感染後24時間で添加した。GATを測定するために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、クラミジアDNAの別の領域を、転写されていないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRで共増幅した。GATおよびNEDのレベルが推定され、VITAインデックスの計算に使用された。これに対してさらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITA比を計算した。
【0175】
10.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイムオリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例5(それぞれ5.1、5.2および5.3)の通りであった。使用したRT-PCR条件は、実施例5(5.5)に記載した通りで、反応には、5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0176】
10.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.4処理プロトコルD)に記載されている通り、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、下記の修正(;細胞片ペレット化ステップは、この実施例ではサンプルの抽出中に行われなかった)を伴った、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.1抽出プロトコルA)にも記載されているLLE技術として行われた。
【0177】
10.3 結果
omp1遺伝子および転写産物内の2つの領域(GAT1およびGAT2)、および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAを使用した単一のRT-PCRで検出された。これらの培養物を、指数関数成長期に抗生物質の一連の用量で処理するか、未処理(コントロール)のままにして、1時間のインキュベーション後に回収した(図8パネルi)。表10は、各サンプルのGAT1/2およびNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示している。ΔCtは、NEDシグナルとGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表10に示されている。その後、処理反応なし(コントロール)および、異なる用量の抗生物質で処理したものとの間で結果を比較した(図8パネルii)
【0178】
【表26】
【0179】
細胞の正常な機能を破壊すると予測されるので、抗生物質処理に感受性のある細胞は、抗生物質の存在下で転写レベルが低下することが予測された。さらに、抗生物質の用量を増やすと、正常な機能が大幅に破壊され、およびその結果、転写レベルが崩れることが予測された。この実施例は、これを示し、および処理された細胞のVITAインデックスの減少が、使用される抗生物質の用量と相関するかどうかを証明するために行われた。
【0180】
結果の分析により、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2はNED(表10)よりもCt値が低く、4つすべてのサンプルにおいて活性転写と一致した。各サンプルの倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表10)。2つの遺伝子および転写産物の領域を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化は、VITAインデックスのそれの2倍である(表10)。未処理サンプルおよび処理サンプルのVITAインデックスの比較により、差を示した(図8パネルii)。この差は、未処理(薬剤なし)および処理済み(プラス薬剤用量1)で有意であった(p=0.0005、対応のないt検定を使用)。すべての処理サンプルについて、未処理サンプルよりも低いだけでなく、インキュベーション中に使用される抗生物質の用量が多くなると、それらも順次低くなった(図8パネルii)。この実験では、用量およびVITAインデックスの減少との間に相関があった(R2=0.9775、図8パネルii)。これは、抗生物質の存在下での転写活性の低下と一致しており、および与えられた抗生物質の用量が多いほど、転写活性の破壊が大きく観察された。ΔVITA比は、VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質の各用量で処理したサンプルのVITAインデックス(抗生物質プラス用量1、用量2および用量3、表10、図8パネルii)で除算して計算される。
【0181】
この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDが、単一の反応で測定可能であり、その結果が、VITAインデックスの計算に使用できることを示している。ΔVITA比として計算された、処理された細胞および未処理の細胞のVITAインデックス間の比較は、抗生物質の存在に対する応答を示した。抗生物質に対するその応答は、一連の高用量の抗生物質が使用された場合もより大きく、用量依存的な応答を示した。これはさらに、細胞が抗生物質に感受性があるかどうかを検査するためにVITAインデックスを使用する能力、および1時間のインキュベーションでこれを決定するのに十分であり得ることを示した。用量依存的な薬剤に対する反応は、創薬または薬剤スクリーニングプログラムに応用される可能性があり得る。
【0182】
実施例11 -VITA PCRを使用した抗生物質感受性試験-抽出プロトコルBを使用した用量依存的応答
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出した、TNAサンプルのGATの、NEDに対する変化を推定する。TNAは、未処理(コントロール)かまたは抗生物質アジスロマイシンを様々な用量;具体的には、MICの4倍(0.128 μg/mL)、MICの6倍(0.192 μg/mL)、MICの8倍(0.256 μg/mL)、MICの16倍(0.512 μg/mL)の濃度で処理したかのいずれかの細胞から抽出された。抗生物質を、実施例1、処理D(1.1.4)に記載されている通り、細胞が指数関数成長期にある感染後20時間で添加した。GATを測定するために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、クラミジアDNAの別の領域を、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRで共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、VITAインデックスの計算に使用した。これに対してさらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITA比を計算した。
【0183】
11.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイムオリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例9(それぞれ9.1、9.2および9.3)の通りであった。使用されたRT-PCR条件は、実施例9(9.5)で記載された通りで、反応には5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0184】
11.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.4処理プロトコルD)に記載されている通り、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して行い、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)で定義されているように、DNAおよびRNAの同時抽出のために製造元の指示にしたがって行った。
【0185】
11.3 結果
2つの領域(GAT1およびGAT2)、および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAの共増幅は、クラミジア培養物から抽出されたTNAを使用した単一のRT-PCRでモニターされた。これらの培養物を、指数関数成長期に一連の用量の抗生物質で処理するか、または未処理(コントロール)のままにして、処理後1時間で回収した(図8パネルi)。表11に、各サンプルのGAT1/2およびNEDについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDシグナルおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表11に示した。次に、処理反応なし(コントロール)および、異なる用量の抗生物質で処理したものとの間で結果を比較した(図8パネルiii)。
【0186】
【表27】
【0187】
実施例10で記載されたのと同じ方法で、抗生物質の存在が細胞の正常な機能を破壊すると予測されるため、抗生物質処理に感受性のある細胞は、転写レベルが低下すると予想される。引き起こされる破壊は、抗生物質の用量と相関する可能性が高いと予測され、そのため、抗生物質の用量が多いほど、正常な機能、転写レベル、および結果としてVITAインデックスの破壊が大きくなる可能性がある。
【0188】
結果の分析は、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2のCt値がNEDよりも低かったことを示す(表11)。これは、すべてのサンプルにおける活性転写と一致する。サンプルの倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表11)。2つの遺伝子および対応する転写領域を使用してGAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用してNEDを計算したので、倍数変化はVITAインデックスの2倍である(表11)。未処理(薬物なし)および処理サンプル(プラス薬剤用量1)の、VITAインデックスの比較は、有意差を示した(図8、パネルiii、対応のないt検定を使用して生成されたp<0.05)。残りのすべての処理サンプルも、未処理のものとは異なった(図8、パネルiii)。処理サンプルは、未処理サンプルよりも低いVITAインデックスを表示した。さらに、処理用量が増加するにつれ、VITAインデックスは減少した(図8パネルiii)。これは、抗生物質の存在下での転写活性の低下と一致しており、使用する抗生物質が多いほど大きな転写活性の破壊が観察されたことがさらに明らかである。またこの傾向により、VITAインデックスおよび抗生物質の用量の間に直線の相関(R2=0.8325)が生じた(図8パネルiii、表11)。ΔVITA比は、VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質の各用量(プラス抗生物質用量1、用量2、用量3および用量4)で処理したサンプルのVITAインデックスで割ることによって計算される。ΔVITA比は、抗生物質の用量の増加と相関して値の増加を示した(表11)。
【0189】
この実施例のデータは、GAT1/2およびNEDが単一の反応で測定可能であり、この結果をVITAインデックスの計算に使用できることをさらに明らかにしている。ΔVITA比として計算された、処理された細胞および未処理の細胞のVITAインデックス間の比較は、抗生物質の存在に対する応答を示した。抗生物質に対する応答は、処理に使用した用量と直線的に相関しており、用量依存的な応答を示した。これは、TNAサンプルの取得に使用された抽出方法とは無関係であった。これにより、実施例10に見られるように、VITAインデックスを使用して、細胞が抗生物質に対して感受性または耐性であるかどうか、および1時間のインキュベーションで十分なことを検査する能力をさらに証明した。用量依存的に薬剤への反応をモニターするVITA PCRの能力は、創薬または薬剤スクリーニングプログラムにおける用途が見出され得る。
【0190】
実施例12 -VITA PCRを使用したアジスロマイシンおよびドキシサイクリンによる抗生物質感受性試験
下記の実施例では、TNAサンプルのNEDに対するGATレベルの変化を評価することにより、ある特定の薬物に対する細菌の感受性を分析している。これらは次に、抗生物質で処理されたサンプルおよび処理されていないサンプル(コントロール)の間で比較された。サンプルは、試験されたアジスロマイシンおよびドキシサイクリンの両方の薬剤に感受性があることが知られている、異なるクラミジア・トラコマチス株に感染したHEp-2細胞から得られた。TNAは、指数関数成長期にある細胞で、感染後20時間でいずれかの抗生物質(0.256 μg/mL)の単一の用量で処理された細胞であるか、または処理されていない細胞(コントロール)のいずれかで、処理後1時間インキュベートされた細胞から抽出された。処理は、実施例1、処理E(1.1.5)に記載されている通りであった。GATの測定を得るために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、およびVITAインデックスの計算に使用した。さらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITA比を計算した。
【0191】
12.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイムオリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは実施例9(それぞれ9.1、9.2および9.3)の通りであった。使用したRT-PCR条件は、実施例9(9.5)で記載した通りで、反応には5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0192】
12.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.5処理プロトコルE)に記載されているように、HEp-2細胞で培養された、クラミジア・トラコマチスの異なる株から共抽出された。抽出は、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して行い、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)で定義されているように、DNAおよびRNAを同時に抽出するために製造元の指示にしたがって行った。
【0193】
12.3 結果
2つのGAT領域および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが、共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAからの単一RT-PCRで検出された。これらの培養物を、指数関数成長期に抗生物質で処理するまたは未処理のまま(コントロール)にして、処理1時間後に回収した。表12aおよび12bは、各個々の株および処理に使用される抗生物質、すなわちそれぞれアジスロマイシンおよびドキシサイクリンの各サンプル(処理または未処理)の閾値サイクル(Ct)値を示している。ΔCtは、NEDシグナルおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定されて、表12aおよび12bに示される。次に、各株について、処理反応なし(コントロール)および抗生物質で処理したものとの間で、結果を比較した。試験した抗生物質は、アジスロマイシン(表12a、図9パネルi)およびドキシサイクリン(表12b、図9パネルii)であった。
【0194】
試験したすべての株は、この実施例で使用した両方の抗生物質に感受性があると以前に特徴付けられていたので、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックス間の差が予想される。抗生物質が存在すると細胞の正常な転写活性が破壊されるので、処理サンプルのVITAインデックスは、未処理サンプルよりも低いと予測される。その後、すべてのサンプルは、処理に関係なく、生存しおよび活発に転写していることを示した。これは、未処理および処理群から抽出された、TNAサンプルの増幅から観察され、使用された抗生物質と無関係に、NEDよりもGAT1/2のCt値が低いことを示した(表12aおよび12b)。
【0195】
使用した薬剤のそれぞれについて、処理後のすべての時点で、すべてのサンプルについて倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表12aおよび12b)。各時点での未処理サンプルおよび処理サンプル間の、VITAインデックスの比較は、テストしたすべての株および抗生物質について有意差を示し、処理サンプルのVITAインデックスが未処理よりも低かった(各群の対応のないt検定を使用してp<0.01;表12aおよび12b、図9、パネルiおよびii)。これは予測された結果と一致しており、処理に使用される薬剤に対する株の感受性を証明し、転写活性の破壊をもたらす。VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質を含むVITAインデックスで除算して計算された、ΔVITA比もまた、同じ抗生物質で試験した各株間、および抗生物質間でも同様の結果を表示した(表12aおよび12b)。
【0196】
この実験は、得られた結果により、GAT1/2およびNEDが、単一の反応で測定でき、この結果がVITAインデックスおよびΔVITA比の計算に使用できることを示している。試験された各株から得られた個々の応答は、使用された両方の抗生物質に対する予測された感受性と一致し、処理対非処理のVITAインデックスの分析を通じて得られた。これはさらに、VITAインデックスを利用して、着目した薬剤の存在下および非存在下において、短時間のインキュベーションで細胞の抗生物質感受性を検査する能力を強調した。
【0197】
【表28】
【0198】
【表29】
【0199】
実施例13:耐性株および感受性株を使用したVITA PCRを使用したリファンピシンによる抗生物質感受性試験
以下の実施例では、TNAサンプルのNEDに対するGATレベルの変化を評価することにより、ある特定の薬剤に対する細菌の感受性を分析している。これらは次に、抗生物質で処理されたサンプルおよび処理されていないサンプル(コントロール)の間で比較された。サンプルは、培養において、以前に薬剤のリファンピシンに感受性がある(合計4つの株:血清型D、実験室株(株1)、血清型L2、野生タイプ実験室株(株2)、血清型L2、トリメトプリム耐性株(株3)および血清型L2、スペクチノマイシン耐性株(株4));またはリファンピシン耐性(血清型L2、リファンピシン耐性株(株5))のいずれかと特徴付けられた、異なるクラミジア・トラコマチス株に感染したHEp-2細胞から得られた。TNAは、指数関数成長期にある感染20時間後に、高い用量の抗生物質で処理された細胞であるか、または処理されなかった細胞(コントロール)のいずれかから抽出された。処理は、実施例1、処理E(1.1.5)に記載されている通りであり、単一の濃度のリファンピシン(0.256 μg/mL)を使用し、これは、感受性株のMICの32倍、および耐性株のMICの32分の1と等価である。GATの測定を得るために、クラミジアDNAおよびRNAは、omp1遺伝子およびその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRによって増幅された。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、VITAインデックスの計算に使用した。これに対してさらに、処理サンプルおよび未処理サンプルのVITAインデックスを使用して、ΔVITAを計算した。
【0200】
13.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイムオリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例9(それぞれ9.1、9.2および9.3)の通りであった。使用したRT-PCR条件は、実施例9(9.5)で説明した通りで、そして反応には5 μLのTNAテンプレート(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0201】
13.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.5処理プロトコルE)に記載されているように、HEp-2細胞で培養されたすべての異なるクラミジア・トラコマチス株(1、2、3、4、および5株)から共抽出された。抽出は、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して行い、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)で定義されているように、DNAおよびRNAを同時に抽出するために製造元の指示にしたがって行った。
【0202】
13.3 結果
2つのGAT領域および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAが、共増幅され、クラミジア培養物から抽出されたTNAからの単一RT-PCRで検出された。これらの培養物は、指数関数成長期に抗生物質(リファンピシン)、または未処理のまま(コントロール)で処理し、そして処理後1時間で回収した。表13に、個々の株ごとの、各サンプルの成分の閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDシグナルおよびGAT1/2シグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GAT1/2およびNED間の差)は、2ΔCtと推定され、表13に示した。結果は、各株について、処理反応なし(コントロール)および抗生物質で処理したものの間で比較した(図9パネルiii);そして結果は、感受性株対耐性株で比較した。倍数変化およびVITAインデックスは、処理後1時間ですべてのサンプルについて計算された(表13)。
【0203】
未処理サンプルおよび処理サンプル間の、VITAインデックスの比較は、株1~4のVITAインデックスに有意差を示した(p<0.0001、対応のないt検定を使用、表13)。これは、処理に使用される抗生物質に感受性のある細胞の転写活性の破壊と一致しており、図9パネルiiiで見ることができる。未処理サンプルおよび処理サンプルとの間の、株5のVITAインデックスの比較では、VITAインデックスは同様であり、有意差は示さなかった(図9、パネルiii、表13)。これは、37℃で1時間インキュベートした場合の抗生物質リファンピシンに対する耐性を示しており、この株の転写がほとんどまたはまったく破壊されないことと一致している。
【0204】
ΔVITA比は、VITAインデックス(抗生物質なし)を、抗生物質を含むVITAインデックスで除算して計算される。ΔVITA比は、耐性株である株5で有意に低く(表13)、さらに、処理サンプルおよび未処理サンプル間の差の量が減少していることを示す。すべての他の株のΔVITA比は、すべての場合で>2.93であった(表13)。ΔVITA比のグラフは、感受性株および耐性株のΔVITA比間の違いを視覚的に示している(図9パネルiv)。これらの違いは、統計的に異なるとも決定された(p<0.0001、対応のないウェルチのt検定)。閾値ΔVITA値1.63により、感受性株および耐性株を95%の信頼度で区別できた(図9、パネルiv)。
【0205】
この実施例の結果は、GAT1/2およびNEDが単一の反応で測定可能であり、この結果をVITAインデックスの計算に使用できることを示している。これに加えて、ΔVITA比として計算された、処理細胞および未処理細胞のVITAインデックス間の比較は、抗生物質の存在に対する応答またはその欠乏とさらに相関していた。試験した各株から得られた個々の応答は、使用した抗生物質に対する予測される感受性と一致していたが、応答の欠乏は、試験した株の耐性プロファイルと関連していた。これはさらに、VITAインデックスを利用して、着目した薬剤の存在下および非存在下において、短時間のインキュベーションで細胞の抗生物質感受性または耐性を検査する能力を強調した。
【0206】
【表30】
【0207】
実施例14- VITA PCRを使用した例示的な抗生物質感受性試験
下記の実施例では、図10に示す過程を記載し、この過程は、性感染症およびそれらの抗生物質耐性/感受性の状態を含む、感染症の一般的なスクリーニングとして使用できる。臨床標本は、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhea(GC))、クラミジア・トラコマチス(CT)、またはマイコプラズマ・ゲニタリウム(MG)などの性感染症を有する疑いのある患者から採取することができる。標本をサブサンプルに分割し、一方を一切の抗生物質とインキュベートせず、もう一方を、GC、CT、およびMGの1つ以上の処理に使用される一連の抗生物質の存在下でインキュベートする。インキュベーション後、GCおよび/またはCTおよび/またはMGに特異的な、GATおよびNEDを標的とするプライマーを用いたマルチプレックスVITAPCRアッセイで全核酸を分析し得る。特定の生物に対する陽性のGATおよびNEDシグナルにより、STIの診断が可能になり得、薬剤の存在下または非存在下でのVITAインデックスの比較により、どの治療法(therapy, or therapies,)が患者の治療に使用できるのか明らかになり得る。
【0208】
さらに、多数の一連のサンプルを分析し、アッセイの各生物の閾値VITAインデックスを確立できる。この閾値は次に、これらの性感染症を診断するためのツールとして、および/または適当な抗生物質による治療後の治癒判定のための方法を提供するために使用できる。さらに、各抗生物質の存在下または非存在下での多数の一連のサンプルの分析により、各抗生物質に対する各生物の感受性または耐性を区別できるΔVITA比閾値を決定することができ得る。ΔVITA比閾値は次に、未処理のコントロールコンパレーターとして機能するための標本またはサンプルのサブサンプルをもはや必要としないフォーマットで、特定の抗生物質に対する反応を予想するツールとして使用できる。さらに、実施例7は、わずか5分間のインキュベーション後に感受性および耐性を決定できることを示しているので、インキュベーションを迅速な増幅プロトコルにカップリングすることで、迅速なポイントオブケア試験として適当となり得る。最後に、実施例7では、室温で薬物とのインキュベーションを行うことができることも示されているので、そのような試験では、抽出および増幅に必要なものを超える追加の機器は必要でないはずである。
【0209】
実施例15- 生存材料の異なるロードでのVITA PCRの使用
下記の実施例では、生存から死菌まで様々なロードのサンプルのNEDおよびGATのレベルを推定する。TNAは、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出され、それは未処理(生 CT)または抗生物質アジスロマイシンを40時間の高用量0.512 ug/mlで処理(死 CT)されたかのいずれかであった。回収時に、これらを異なる比で混合して、実施例1、処理F(1.1.6)に記載された通り、0%、0.1%、0.2%、0.5%、1%、10%、20%、50%および100%の異なる生存のロードを取得した。GATを測定するために、omp1遺伝子とその転写産物の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRにより、クラミジアDNAおよびRNAを増幅した。NEDを測定するために、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRでクラミジアDNAの別の領域を共増幅した。GATおよびNEDのレベルを推定し、およびVITAインデックスの計算に使用した。
【0210】
15.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
GAT1、GAT2およびNEDの増幅および検出に使用されるパートザイム オリゴヌクレオチド、レポーター基質およびPCRプライマーは、実施例9(それぞれ9.1、9.2および9.3)の通りであった。この実施例では、NEDのリバースプライマー(配列番号23)を下記に置換した。
【0211】
【表31】

使用したRT-PCR条件は、実施例9(9.5)に記載されている通りで、反応には5 μLのTNAテンプレート(1/100希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)かのいずれかであった。
【0212】
15.2 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.6処理プロトコルF)に記載されている通り、HEp-2細胞で培養されたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、FireMonkey PuriSpin抽出キットを使用して行い、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出、1.3.2抽出プロトコルB)で定義されているように、DNAおよびRNAを同時に抽出するために製造元の指示にしたがって行った。
【0213】
15.3 結果
クラミジアDNAおよびRNA(GAT)、またはDNAのみ(NED)は、生存クラミジアの様々なロードを生成するために、生存の未処理細胞(生 CT)、および高用量の抗生物質での処理細胞(死 CT)の混合物から抽出されたTNAからの単一のRT-PCRで共増幅された。表14に、反応でGAT1またはGAT1/2のいずれかを使用して、各生存ロードに対して測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDシグナルおよびGATシグナルのCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GATのNEDに対する比)は2ΔCtと推定され、表15にプロットされ、VITAインデックスは図11のパネルiにプロットされた。次に、結果を各混合物の生存率と比較した。
【0214】
感染性および免疫蛍光染色による、生存率の分析を行い、各混合サンプルのロードの精度を確認した。これにより、生存率が増加するにつれてクラミジア封入体の増加が視覚的に確認された(データは含まれていない)。
【0215】
理論的には、生細胞のロードが低いと、非生細胞に由来するゲノムDNAのバックグラウンドで検出可能な転写産物のレベルが低くなる。DNAが処理中に分解されない場合、DNAは本質的にRNAよりも安定しているので、検出されるDNAの量は、RNAの量よりも多いと予想され得る。生細胞のロードが高いサンプルでは、より多くの量の転写産物が存在することが予想される。
【0216】
結果の分析は、0%の生存ロードサンプルから抽出されたTNAが増幅された場合、GATおよびNEDのΔCt値が小さいことを示し(表14)、活性転写がほとんどまたはまったくないことを示した。0.2%以上の生存ロードを有するすべてのサンプルで、GATのCt値は、NEDよりも低く(表14)、活性転写と一致した。すべての生存ロードについて、倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表14)。VITAインデックスは、0.2%以上の生存ロードのサンプルと比較して、生存ロードが0%のサンプルで有意差があった(図11パネルi、表14、p<0.05)。0.2%を超える生存ロードを含有する混合物の間では、有意差は観察されなかった(表14、p>0.05)。0.1%の生存ロードも試験し、VITAインデックスは、0%生存ロードのVITAインデックスと有意差があり、しかし0.2%を超える生存ロードとも有意差があった(データは示していない)。
【0217】
予想通り、Ct値は、各混合物のクラミジア・トラコマチスの染色体コピーと相関するので、異なる生存ロードによっても、GAT反応およびNED反応のCt値に差をもたらす。死 CTからの細胞を、40時間薬剤とともにインキュベートしたので、これは、RNAの活性転写だけでなく、細菌の活性複製も停止し得、DNAの濃度に影響を与えたことを示唆する。また、この間にDNAおよびRNAの両方が分解した可能性がある。そのため、生存細菌のより高いロードは、より低い生存ロード(遅いPCRサイクルでの検出)よりも低いCt値(より早い検出)を示した(図11パネルii)。これは、混合物からのクラミジアの生存率の分析とも相関している(図11パネルi)。
【0218】
この実施例のデータは、0.1%の低いロードの生存集団、および非生存集団の間の差により明らかなように、VITAインデックスが、生存集団、および非生存集団の測定と相関することを示している。この実施例は、GATおよびNEDを、単一の反応で測定できること、その結果を使用して、0.1%しかない生存ロードの、観察された生存率と相関するVITAインデックスが計算できること、およびその非生存集団との差異を示している。最終的に、この実施例は、方法が出発材料の量に関係なくGATの、NEDに対する比を決定するので、VITA PCRに添加されるTNAの量を定量化する必要がないという点で、VITA PCRの主な利点を示している。これについての証拠は、この実施例で調査した広範囲にわたって、生存ロードの間に有意差が観察されないという事実である。
【0219】
【表32】
【0220】
実施例16- VITAインデックスにおけるアンプリコンサイズおよび他のRT-PCRパラメーターの影響
下記の実施例では、クラミジア・トラコマチス(血清型D)に感染したHEp-2細胞から抽出されたTNAサンプルのNEDおよびGATのレベルを推定する。TNAは、実施例1、処理プロトコルA(1.2.1)で記載した通り、抗生物質とインキュベートしていない細胞(未処理、生細胞)、およびMICの8分の1(<MIC)、MIC(MIC)またはMICの8倍(>MIC)の濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から抽出された。クラミジアDNAおよびRNA(GAT)は、omp1遺伝子およびその転写産物(GAT1/2)の2つの異なる位置を標的とするプライマーを使用したRT-PCRにより増幅された。この実験で2つのomp1 GAT標的を増幅するために使用された2つのプライマーペア(セクション16.3 配列番号4および24、配列番号16および25)は、実施例5を含む前の実施例で使用された2つのGATプライマーペア(セクション5.3 配列番号4および5、配列番号16および17)を使用して生成されたアンプリコンよりも長いアンプリコンを生成した。得られたアンプリコンは、それぞれGAT1およびGAT2で、215 bpおよび311 bpの長さであった。クラミジアDNAのみ(NED)は、転写されないInfA_IGRと呼ばれるゲノムDNAの領域を標的とするプライマーを使用して、同じRT-PCRミックスで共増幅された。GAT1/2およびNEDのCt値は、すべての処理のRT-PCRで推定された。
【0221】
16.1 GAT1、GAT2およびNEDのVITA PCR分析
パートザイムは、omp1遺伝子またはomp1転写産物のいずれかの増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、2つの活性のMNAzymeに集合するように設計された。これらの2つのMNAzymeは、omp1の2つの別々の領域(GAT1およびGAT2領域)の増幅により得られる2つの異なるアンプリコンに結合することができた。一度集合すると、両方のMNAzymeは同じレポーター基質Sub102(20)-FBを切断できる。パートザイムの3番目のペアは、infA_IGRで示される非転写DNA領域の増幅によって生成されたアンプリコンに結合する場合、活性のMNAzymeに集合し、したがってNEDの測定を提供するように設計された。一度集合すると、このMNAzymeは、レポーター基質Sub72-A1Bを切断できる。各MNAzymeについてパートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で、以下にリストする。太字の塩基は標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒中心の一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0222】
【表33】
【0223】
16.2 レポーター基質
本実施例では、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質を使用した。Sub102(20)-FBは、5'末端を6-FAMおよび3'末端をIABkFQで末端標識され、その切断を492 nmで励起しながら516 nmで切断をモニターした。Sub72-A1Bは、5'末端をATTO(商標)Rho101および3'末端をIAbRQSpで標識され、その切断を592 nmで励起しながら609 nmで切断をモニターした。この実施例のレポーター基質は、5'から3'の順で、以下に配列が示される。小文字の塩基はRNAを表しおよび大文字の塩基はDNAを表す。
【0224】
【表34】
【0225】
16.3 GAT1、GAT2およびNEDの増幅用PCRプライマー
クラミジア・トラコマチスに感染した細胞から抽出されたTNA鋳型のin vitro増幅は、以下にリストされたプライマーを使用して行われた。フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用して、RT-PCRによりomp1遺伝子および転写産物の2つの領域(GAT1とGAT2)ならびにinfA_IGR DNA(NED)を増幅した。すべての配列は、5'から3'の順に記入する。
【0226】
【表35】
【0227】
16.4 TNAの調製
RNAおよびDNA(TNA)は、実施例1(1.1培養、1.1.1 処理プロトコルA)に記載されているように、HEp-2細胞で培養する、in vitroの方法で得られたクラミジア・トラコマチス(血清型D)から共抽出された。抽出は、フェノール:クロロホルム:イソアミルを使用する、実施例1(1.3 全核酸(TNA)抽出)にも記載されているLLE技術として行った。
【0228】
16.5 反応成分
全ての反応には、全体積20 μLに、40 nMの各フォワードプライマー、200 nMの各リバースプライマー、200 nMの各パートザイムA、200 nMの各パートザイムB、400 nmの基質配列番号10、200 nMの基質配列番号11、1xSensiFASTプローブNo-ROXミックスOne-Step(Bioline)、2 mM MgCl2(Bioline)、0.2 U/μL RiboSafe RNase阻害剤(Bioline)、0.2 μLの逆転写酵素(Bioline)およびヌクレアーゼフリー水(Ambion)を含んだ。すべての反応は、BioRad(登録商標)CFX96サーモサイクラーで、トリプリケートで行った。サイクリングパラメータは、48℃で10分間、95℃で2分間、95℃で5秒間および61℃で30秒間(サイクルあたり温度が0.5℃低下)を10サイクル、および95℃で5秒間、52℃で50秒間を30サイクル、であった。反応は、5 μLのTNA鋳型(1/1000希釈)が含まれていたか、または標的なし(dH2O)のいずれかであった。
【0229】
16.6 結果
omp遺伝子および転写産物(GAT1およびGAT2)内の2つの領域、および1つのNED領域からのクラミジアDNAおよびRNAを、生存未処理細胞から、およびMIC未満(<MIC)、MICと同等(MIC)またはMIC超(>MIC)濃度の抗生物質とインキュベートした細胞から、抽出されたTNAの単一のRT-PCRで共増幅した。表15に、各サンプルにおける、NED、ならびにGAT1およびGAT2(GAT1/2)からの結合シグナルについて測定された閾値サイクル(Ct)値を示す。ΔCtは、NEDおよびGAT1/2のCt値間の差として計算された。次に、理論的にそれらのΔCt値につながる倍数変化(GATのNEDに対する比)は2ΔCtと推定され、表15に示された。VITAインデックスは、FCをTRで除算して計算された。次に、結果を各細胞集団の生存率と比較した。
【0230】
この実施例で使用したプライマーペアは、前の実施例で観察されたものよりも長いアンプリコンを生成した。アンプリコンの長さは、GAT1およびGAT2でそれぞれ215 bpおよび311 bpであった。長いアンプリコンを使用すると、問題の生物の生存率のより正確および厳密な推定がもたらされることが期待され得、これは、これらのプライマーセットが、死細胞、または抗生物質の存在によって発現が低下する細胞に関連する、短い残留フラグメントを増幅しないためである。したがって、GATについて短いアンプリコンに対して長いアンプリコンを使用すると、試験した各サンプル(未処理または異なる用量の抗生物質で処理)のVITAインデックスで得られた絶対値が変更されると予想されるが、しかし、免疫蛍光染色で測定した細胞生存率(図3パネルiおよびii)またはVITAインデックスの検査で推測できる情報(表15、図12)の間の相関を変更することは予想されない。
【0231】
【表36】
【0232】
結果の分析により、MIC未満の未処理または処理サンプルから抽出されたTNAサンプルが増幅された場合、GAT1/2のCt値は、NEDよりも低く(表15)、両方のサンプルタイプにおける活性転写と一致した。MICレベル以上で処理されたTNAのGAT1/2およびNEDの場合、Ct値の差は非常に小さく(<1)(表15)、DNAが活性転写されていないことを示した。4種類のサンプルタイプについて、倍数変化およびVITAインデックスを計算した(表15)。2つの遺伝子およびそれらの転写産物を使用して、GAT1/2を計算し、単一の非転写領域のみを使用して、NEDを計算したので、倍数変化をTRで割ってVITAインデックスを計算する(表15)。データは、例5(図5パネルii)に見られるように、長いGATアンプリコンが、検出に使用されたより短いアンプリコンと比較して、より低いVITAインデックスに変換されたことを示している(図12)。これは、より長いアンプリコンを生成するGATプライマーによって検出されている、部分的に分解された転写産物断片がより少ないことを示す。
【0233】
この実施例の結果は、単一の反応でGATおよびNEDを測定できること、および、結果が、観察された細胞の生存率と相関するVITAインデックスの計算に使用できることを示している。それはさらに、生存サンプルおよび非生存サンプル間のVITAインデックスの違いを表示し、VITAインデックスは、GAT1およびGAT2の短いアンプリコンで観察されるものよりも低くなっている。この実施例では異なるパラメーターが使用されたにもかかわらず、GAT1およびGAT2のアンプリコンが短いVITAインデックスと比較して、すべてのサンプルで同様の傾向が観察され、生存細胞と非生存細胞間の最終的な区別が正確にコールされる。
【0234】
実施例17- VITA PCRを使用したナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)の例示的な治癒判定および抗生物質感受性試験
下記の実施例では、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae(GC))のTOCおよびASTで、診断に使用されるGATおよびNEDを標的とするアッセイについて説明する。このアッセイは、TNAサンプルの、GATの、NEDに対する変化を推定する。GATを測定するために、遺伝子およびその転写産物または複数の遺伝子およびそれらの転写産物の位置を標的とするプライマーを使用して、RT-PCRでゴノレア(gonorrhoeae) DNAおよびRNAを増幅する。NEDを測定するために、ゴノレア(gonorrhoeae) DNAの別の領域を、転写されないゲノムDNAの領域を標的とするプライマーペアを使用して、同じRT-PCR反応で共増幅する。潜在的なGATおよびNED標的は、実施例3の通りスクリーニングできる。GATおよびNEDのレベルが推定され、およびVITAインデックスの計算に使用される。生成されたVITAインデックスにより、任意の特定のサンプル(例:尿、膣スワブ、直腸スワブまたは咽頭スワブ)の生物の生存率を決定できる。これに対してさらに、サンプルは、サンプルを分割し、ならびに所望の薬剤または複数の薬剤の存在下および非存在下でインキュベートすることにより、抗生物質感受性試験にも使用できる。GATおよびNEDのレベルが推定され、および各条件のVITAインデックスの計算に使用される。これに対してさらに、処理および未処理サンプルのVITAインデックスを使用してΔVITAを計算し、最終的に生物の感受性または耐性プロファイルを決定する。これは、療法のガイダンスに役立ち、症状を最初に示した時に最良の選択の抗生物質が与えられる。
【0235】
増幅に使用される、可能性のある標的遺伝子、ならびにMNAzyme、レポーター基質、およびプライマーペアの各配列を、下記のセクション(17.1、17.2および17.3)にリストする。レポーター基質は、クラミジア・トラコマチスを標的とするGATおよびNEDアッセイで試験したものとは異なり、実施例14、図10で具体化するように、すべての標的を一体的に多重化する可能性をもたらす。さらなる標的生物も、さらに含め得る(実施例14、図10)。これにより、両方の生物に対する単一の反応で、感染の状態の同定、確認、および抗生物質感受性試験が可能になる。
【0236】
17.1 VITA PCR分析のGAT1、GAT2およびNEDの候補標的
パートザイムは、異なる遺伝子、ompAまたはcysK遺伝子または転写産物の増幅によって生成されたアンプリコンに結合すると、2つの活性のMNAzymeに集合するように設計された。これらの2つのMNAzymeは、それぞれGAT1およびGAT2を表す、2つの別々の遺伝子の増幅によって得られる2つの異なるアンプリコンに結合するように設計されている。一度集合すると、両方のMNAzymeは同じレポーター基質Sub97(20)-JBを切断できる。パートザイムの3番目のペアは、NEDの測定候補であるIGR1109で示される非転写DNA領域の増幅によって生成されたアンプリコンに結合する場合、活性のMNAzymeに集合するように設計されている。一度集合すると、このMNAzymeはレポーター基質Sub84(20)-CBを切断できる。各MNAzymeのパートザイムAおよびパートザイムBの配列を、5'から3'の順で以下にリストする。太字の塩基は、標的とハイブリダイズし、下線が引かれた塩基は、集合されたMNAzymeの触媒中心の一部を形成し、斜体の塩基は基質にハイブリダイズする配列を指す。
【0237】
【表37】
【0238】
17.2 レポーター基質
本実施例では、別個のフルオロフォアで標識された、2つの異なるレポーター基質は、上記にリストしたパートザイム/MNAzymeを組み込んだシステムでの検出に有用である。これらの基質は、5'末端で5-JOENで末端標識され、および3'末端でIABkFQで末端標識されたSub97(20)-JB(その切断は、529 nmで励起しながら555 nmでモニターできる)ならびに、5'末端で5Cy5で、3'末端でIAbRQSpで標識されたSub84(20)-CB(その切断は、648 nmで励起しながら668 nmでモニターできる)である。これらのレポーター基質は、5'から3'の順で、配列が以下に示され、小文字の塩基はRNAを表し、および大文字の塩基はDNAを表す。
【0239】
【表38】
【0240】
17.3 GAT1、GAT2およびNEDの増幅用PCRプライマー
TNAの増幅は、下記のプライマーを使用して行うことができる。フォワードおよびリバースプライマーは、2つの別個の遺伝子および転写産物で、RT-PCRによってIGR1109 DNA(NED)と同様に、ompAおよびcysK(GAT1およびGAT2)、を増幅するように設計されている。すべての配列は5'から3'の順に記入する。
【0241】
【表39】

porBおよびrpmBを含む追加の候補遺伝子のGATのプライマーは、実施例3で概説した方法を使用してスクリーニングできる。
【0242】
実施例18- VITAインデックスに対する、増幅効率、感受性、包括性および特異性の影響
下記の実施例では、特定のマルチプレックスアッセイで得られたVITAインデックスで観察される絶対値にさらに影響を与える可能性のあるパラメーターについて説明する。VITA PCR分析に含まれるGATおよびNEDアッセイの増幅効率は、理想的にはGATおよびNEDに対して高くおよび等しくなければならない。実施例5を含む、いくつかの実施例で使用された、クラミジア・トラコマチスを標的とするGAT1、GAT2、およびNEDの増幅効率は、連続的に希釈された合成標的配列を使用して推定され、およびR2>0.998で、効率が100%に近く、相互に類似することがわかった(データは示していない)。反応のすべての成分が効率的および相互に同等な場合、実施例5(図5パネルii)で証明された通り、得られたVITAインデックスは、生細胞および非生細胞間を正確に区別できることが示されている。
【0243】
もう1つの重要な要因は、GATおよびNEDプライマーによる増幅によって生成されたアンプリコンの長さである。前に示したように(実施例16)、長いアンプリコンを生成するVITA PCRシステムは、より短いアンプリコンを生成するシステムと比較して、VITAインデックスの観察値が低くなり得る。しかしながら、VITAインデックスの絶対値は変化する可能性があるが、観察値および生存率との間の相関関係は維持される。
【0244】
基礎研究および臨床試験のための用途の広いツールを提供するVITA PCRの能力に影響を与える因子には、感受性、包括性、特異性が含まれる。感受性は、具体的には、<10コピーなど、検出の下限で、標的を検出する能力に影響を与える。包括性は、同じ効率で、同じ生物種内で、すべての株および血清型を検出する能力に関する。特異性は、着目した生物にのみ特異的な標的の検出に関する。関連種であるが、「オフターゲット」の検出は、着目した細胞、生物、またはウイルスの生存率を反映しないVITAインデックスの増加を引き起こす可能性がある。
【0245】
GATおよびNEDに使用される標的は、注意深く選択すべきであることも説明されている。実施例3は、特定の配列が、判断基準を満たすかどうかを決定する方法を示し、すなわち、GATは発現されるDNA領域を標的とし、一方NEDプライマーは発現されない領域を標的としなければならない。この明細書の実施例は、特定のVITA PCRで1以上のGATを使用できることを示している。特定の遺伝子は、例えば、細菌の発生サイクルの特定の段階中でのみ発現され得るので、これは実際非常に望ましいことである。好ましくは異なる条件下で、高レベルで、発現される複数の遺伝子を含むアッセイは、発現が種々の条件下で一貫して検出可能であることを保証できる。
【0246】
最後に、GAT標的の選択は、調査中の生物および抗生物質に依存すると予測される。例えば、他のグループによる研究では、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)のporBおよびrpmB転写産物が高度に発現され、抗生物質シプロフロキサシンに応答して発現レベルが変化することが示されている。クラミジア・トラコマチスomp1遺伝子およびその転写産物は、リファンピシンに対する耐性または感受性の区別に適しており、該生物の生存率を反映できることが示されている(実施例9)。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12