(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】配線モジュールおよび電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20230926BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20230926BHJP
【FI】
H01M50/591
H01M50/507
H01M50/569
H01M50/55 101
H01M50/209
H01M50/588
H01M50/298
(21)【出願番号】P 2020012502
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 暢之
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】濱本 勇
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004741(JP,A)
【文献】特開2018-142505(JP,A)
【文献】特開2016-085930(JP,A)
【文献】特開2013-054995(JP,A)
【文献】特開2011-018478(JP,A)
【文献】特開平08-128901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/50-50/598
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池が積層されてなる組電池に取り付けられる配線モジュールであって、
一方向に並び、複数の前記単電池間を接続するための複数のバスバーと、
前記組電池の状態を検出するための複数の検出線と、
柔軟性を有し、複数の前記バスバーを保持し、複数の前記バスバーと、複数の前記検出線とを覆うことが可能な樹脂シートとを備え
、
前記樹脂シートは、前記樹脂シートが折り返されることによって、前記樹脂シートの厚み方向に重ね合わされる第1シート層および第2シート層を含み、
前記第1シート層上に、複数の前記バスバーおよび複数の前記検出線が配置され、
複数の前記バスバーは、前記第2シート層に挿通されるとともに、前記第1シート層および前記第2シート層によって挟持され、
前記バスバーは、前記第2シート層上に配置されるバスバー上面を含み、
前記検出線は、前記バスバー上面に接続される接続部と、前記接続部から連なり、複数の前記バスバーの並び方向に沿って延伸する延伸部とを含み、
前記延伸部は、前記第1シート層および前記第2シート層の間に配置され、
前記樹脂シートは、前記樹脂シートが折り返されることによって、前記第1シート層および前記第2シート層と前記樹脂シートの厚み方向に重ね合わされ、前記バスバー上面および前記接続部を覆うことが可能な第3シート層をさらに含む、配線モジュール。
【請求項2】
請求項
1に記載の配線モジュールと、
複数の前記バスバーが接続される複数の電極端子と、複数の前記電極端子が突出する上面とを含む前記組電池とを備え、
前記樹脂シートは、前記上面上において、複数の前記バスバーと、複数の前記検出線とを覆うように設けられる、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュールおよび電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2013-45508号公報(特許文献1)には、複数の単電池が横並びに配置された単電池群に取り付けられ、複数の単電池を接続する電池配線モジュールが開示されている。電池配線モジュールは、複数の単電池間を接続する複数のバスバーと、複数のバスバーが保持される樹脂プロテクタと、樹脂プロテクタに保持されたフレキシブル配線基板とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示される電池配線モジュールでは、フレキシブル配線基板が薄く、破れやすいため、複数のバスバーを保持するために高剛性の樹脂プロテクタを設ける必要がある。また、バスバーを電気的に絶縁し、フレキシブル配線基板を保護するために、絶縁カバーを設ける必要がある。この場合、電池配線モジュールの構造が複雑になることにより、コストの増大を招いたり、単電池群に対する電池配線モジュールの取り付け時の作業性が低下したりする可能性がある。
【0005】
そこで本開示の目的は、上記の課題を解決することであり、低コストで、かつ、組電池に対する取り付け作業性が良好な配線モジュールと、そのような配線モジュールを備える電池パックとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った配線モジュールは、複数の単電池が積層されてなる組電池に取り付けられる配線モジュールである。配線モジュールは、一方向に並び、複数の単電池間を接続するための複数のバスバーと、組電池の状態を検出するための複数の検出線と、柔軟性を有し、複数のバスバーを保持し、複数のバスバーと、複数の検出線とを覆うことが可能な樹脂シートとを備える。
【0007】
このように構成された配線モジュールによれば、柔軟性を有する樹脂シートによって、複数のバスバーを保持しつつ、複数のバスバーの電気的な絶縁と、複数の検出線の保護とを成立させることができる。これにより、配線モジュールの構造が簡易となるため、低コストで、かつ、取り付け作業性が良好な配線モジュールを実現することができる。
【0008】
また好ましくは、樹脂シートは、樹脂シートが折り返されることによって、樹脂シートの厚み方向に重ね合わされる第1シート層および第2シート層を含む。第1シート層上に、複数のバスバーおよび複数の検出線が配置される。複数のバスバーは、第2シート層に挿通されるとともに、第1シート層および第2シート層によって挟持される。バスバーは、第2シート層上に配置されるバスバー上面を含む。検出線は、バスバー上面に接続される接続部と、接続部から連なり、複数のバスバーの並び方向に沿って延伸する延伸部とを含む。延伸部は、第1シート層および第2シート層の間に配置される。樹脂シートは、樹脂シートが折り返されることによって、第1シート層および第2シート層と樹脂シートの厚み方向に重ね合わされ、バスバー上面および接続部を覆うことが可能な第3シート層をさらに含む。
【0009】
このように構成された配線モジュールによれば、樹脂シートが折り曲げられ、その厚み方向に重ね合わされた第1シート層、第2シート層および第3シート層からなる3層構造によって、複数のバスバーを保持しつつ、複数のバスバーの電気的な絶縁と、複数の検出線の保護とを成立させる構造を実現することができる。これにより、配線モジュールの構造をさらに簡易にできる。
【0010】
本開示に従った電池パックは、上述のいずれかに記載の配線モジュールと、複数のバスバーが接続される複数の電極端子と、複数の電極端子が突出する上面とを含む組電池とを備える。樹脂シートは、上面上において、複数のバスバーと、複数の検出線とを覆うように設けられる。
【0011】
このように構成された電池パックによれば、低コストで、かつ、組電池に対する組み立て作業性が良好な配線モジュールを備える電池パックを実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本開示に従えば、低コストで、かつ、組電池に対する組み立て作業性が良好な配線モジュールと、そのような配線モジュールを備える電池パックとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態における電池パックを示す分解組み立て図である。
【
図3】本実施の形態における配線モジュールを示す上面図である。
【
図4】
図3中の配線モジュールを示す分解組み立て図である。
【
図6】
図3中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の配線モジュールを示す上面図である。
【
図7】
図3中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の配線モジュールを示す下面図である。
【
図8】
図6中のVIII-VIII線上の矢視方向に見た配線モジュールを示す断面図である。
【
図9】
図2中の電池パックにおける配線モジュールの取り付け構造を示す断面図である。
【
図10】
図9中の配線モジュールの第1変形例を示す断面図である。
【
図11】
図9中の配線モジュールの第2変形例を示す断面図である。
【
図12】
図9中の配線モジュールの第3変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、本実施の形態における電池パックを示す分解組み立て図である。
図2は、
図1中の電池パックを示す断面図である。
【0016】
図1および
図2を参照して、電池パック100は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリから電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車、外部充電が可能なプラグインハイブリッド自動車、もしくは、電気自動車などに搭載されている。電池パック100は、これら車両の駆動用電源として設けられている。
【0017】
電池パック100は、複数の単電池26が積層されてなる組電池20を有する。単電池26は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等のバッテリ(二次電池)から構成されている。
【0018】
複数の単電池26は、一方向(
図1中の矢印101に示す方向。以下、「単電池26の積層方向」ともいう。)に積層されている。
【0019】
単電池26は、略直方体形状の薄板形状を有する。複数の単電池26は、その積層方向に隣り合う単電池26間において、単電池26の外観をなす複数の側面のうち最も大きい面積を有する側面同士が向かい合わせとなるように積層されている。複数の単電池26は、各単電池26の厚み方向が単電池26の積層方向と平行となるように積層されている。
【0020】
組電池20は、直方体形状の外観をなしている。組電池20を上面視した場合に、組電池20の長辺が延びる方向と、単電池26の積層方向とが平行関係となり、組電池20の短辺が延びる方向(
図1中の矢印102に示す方向。以下、「左右方向」ともいう。)と、単電池26の積層方向とが、直交関係となる。
【0021】
組電池20は、上面21と、複数の電極端子27とを有する。上面21は、組電池20の上部をなす平面である。複数の電極端子27は、上面21から突出している。複数の電極端子27は、単電池26の積層方向に2列に並んで設けられている。
【0022】
より具体的には、単電池26は、電極端子27を構成する正極端子27Pおよび負極端子27Nを有する。各単電池26において、正極端子27Pおよび負極端子27Nは、左右方向に離れて配置されている。組電池20において、正極端子27Pおよび負極端子27Nは、単電池26の積層方向において交互に並んで設けられている。単電池26の積層方向において隣り合う正極端子27Pおよび負極端子27Nは、後述するバスバー31により接続されている。複数の単電池26は、電気的に直列に接続されている。
【0023】
単電池26は、開放弁29をさらに有する。開放弁29は、上面21において、正極端子27Pおよび負極端子27Nの間に設けられている。開放弁29は、単電池26内部の圧力が上昇した場合に開弁し、内部圧力を解放させる。
【0024】
電池パック100は、エンドプレート22およびエンドプレート23と、ケース体12とをさらに有する。
【0025】
エンドプレート22およびエンドプレート23は、積層された複数の単電池26の両端に配置されている。エンドプレート22およびエンドプレート23は、単電池26の積層方向における組電池20の両端に配置されている。組電池20は、エンドプレート22およびエンドプレート23とともにケース体12に収容されている。エンドプレート22およびエンドプレート23の間に配置された組電池20には、単電池26の積層方向における拘束力が作用されている。
【0026】
図3は、本実施の形態における配線モジュールを示す上面図である。
図3には、
図1中の組電池20に取り付けられる前の配線モジュール10の状態が示されている。
【0027】
図1から
図3を参照して、電池パック100は、配線モジュール10をさらに有する。配線モジュール10は、組電池20に取り付けられている。配線モジュール10は、組電池20の上面21に取り付けられている。
【0028】
配線モジュール10は、複数のバスバー31(31A,31B)を有する。複数のバスバー31は、複数の電極端子27に接続されている。
【0029】
複数のバスバー31Aは、矢印101に示す一方向に並んで設けられている。複数のバスバー31Aの並び方向は、単電池26の積層方向と平行である。複数のバスバー31Bは、複数のバスバー31Aから左右方向に離れた位置において、矢印101に示す一方向に並んで設けられている。複数のバスバー31Bの並び方向は、単電池26の積層方向と平行である。
【0030】
バスバー31Aは、単電池26の積層方向において隣り合う正極端子27Pおよび負極端子27Nに接続されている。バスバー31Bは、単電池26の積層方向において隣り合う正極端子27Pおよび負極端子27Nに接続されている。バスバー31Aおよびバスバー31Bは、単電池26の積層方向に沿って千鳥状に並んで設けられている。
【0031】
配線モジュール10は、複数の検出線51(51A,51B)をさらに有する。検出線51は、組電池20の状態を検出するための電線である。検出線51は、組電池20の電圧を検出する。複数の検出線51は、それぞれ、複数のバスバー31に接続されている。
【0032】
複数の検出線51Aは、それぞれ、複数のバスバー31Aに接続されている。複数の検出線51Bは、それぞれ、複数のバスバー31Bに接続されている。複数の検出線51は、ワイヤーハーネス56により一体に束ねられ、コネクタ66を介して電圧検出モジュール14に接続されている。
【0033】
配線モジュール10は、樹脂シート41(41A,41B)をさらに有する。樹脂シート41は、複数のバスバー31を保持している。樹脂シート41は、組電池20の上面21上において、複数のバスバー31と、複数の検出線51とを覆うように設けられている。
【0034】
樹脂シート41Aは、複数のバスバー31Aを保持している。樹脂シート41Bは、複数のバスバー31Bを保持している。樹脂シート41Aは、複数のバスバー31Aと、複数の検出線51Aとを覆うように設けられている。樹脂シート41Bは、複数のバスバー31Bと、複数の検出線51Bとを覆うように設けられている。
【0035】
樹脂シート41は、柔軟性を有する。樹脂シート41は、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)から形成されている。樹脂シート41の厚みは、たとえば、0.4mmである。
【0036】
続いて、配線モジュール10の構造についてより具体的に説明する。
図4は、
図3中の配線モジュールを示す分解組み立て図である。
図5は、バスバーを示す斜視図である。
図6は、
図3中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の配線モジュールを示す上面図である。
図7は、
図3中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の配線モジュールを示す下面図である。
図8は、
図6中のVIII-VIII線上の矢視方向に見た配線モジュールを示す断面図である。
【0037】
図2から
図5を参照して、バスバー31は、折り曲げ加工された金属板から形成されている。バスバー31は、バスバー上面32を有する。バスバー上面32は、上方を向く平面からなる。バスバー31は、その上面視において矩形形状を有する。
【0038】
バスバー31は、一対の脚部34と、頂部33とを有する。バスバー上面32は、頂部33に設けられている。一対の脚部34は、矢印101に示す方向における頂部33の両端部から下方に向けて延出し、頂部33と平行に延在している。バスバー31は、積層方向において隣り合う単電池26間を跨ぐように配置されている。一方の脚部34は、片方の単電池26の正極端子27Pに接続され、他方の脚部34は、残る片方の単電池26の負極端子27Nに接続されている。
【0039】
図2から
図6を参照して、検出線51は、接続部52と、延伸部53とを有する。接続部52は、バスバー上面32に接続されている。延伸部53は、接続部52から連なり、バスバー31の並び方向(矢印101に示す方向)に沿って延伸している。複数のバスバー31の延伸部53は、バスバー31の並び方向における端部において、ワイヤーハーネス56により一体に束ねられている。
【0040】
図2から
図8を参照して、樹脂シート41は、第1シート層42および第2シート層43を有する。第1シート層42および第2シート層43は、樹脂シート41が折り曲げられることによって、樹脂シート41の厚み方向に重ね合わされている。
【0041】
より具体的には、
図4に示されるように、第1シート層42および第2シート層43は、第1折り曲げ部110を境界に矢印102に示す方向に並んでいる。
図3に示されるように、樹脂シート41が第1折り曲げ部110で折り曲がられることによって、第2シート層43が第1シート層42上に重ね合わされている。
【0042】
樹脂シート41には、複数の第1開口部47が設けられている。複数の第1開口部47は、矢印101に示す方向に並んでいる。複数の第1開口部47は、第1シート層42に設けられている。第1開口部47は、第1シート層42をその厚み方向に貫通する貫通孔からなる。第1開口部47は、矩形形状の開口面を形成している。
【0043】
樹脂シート41には、複数の第2開口部46がさらに設けられている。複数の第2開口部46は、矢印101に示す方向に並んでいる。複数の第2開口部46は、第2シート層43に設けられている。第2開口部46は、第2シート層43をその厚み方向に貫通する貫通孔からなる。第2開口部46は、多角形(8角形)の開口面を形成している。
【0044】
複数の第1開口部47は、第1シート層42および第2シート層43の積層方向において複数の第2開口部46とそれぞれ重なり合っている。
【0045】
図2に示されるように、第1シート層42上には、複数のバスバー31が配置されている。第1シート層42上には、複数の検出線51がさらに配置されている。第1シート層42上には、複数の検出線51の延伸部53が配置されている。
【0046】
図7および
図8に示されるように、バスバー31の一部は、第1シート層42の厚み方向において第1開口部47の開口面と重なり合い、バスバー31の残りの部分は、第1シート層42の厚み方向において第1シート層42と重なり合っている。
【0047】
バスバー31は、第2シート層43に挿通されるとともに、第1シート層42および第2シート層43によって挟持されている。
図6および
図8に示されるように、バスバー31の頂部33は、第2シート層43に設けられた第2開口部46に挿通されている。バスバー上面32と、バスバー上面32に接続された検出線51の接続部52とは、第2シート層43上に配置されている。第2シート層43における第2開口部46の開口面の周縁領域は、第2シート層43の厚み方向において、バスバー31の一対の脚部34と重なり合っている。このような構成により、各バスバー31の一対の脚部34が第1シート層42および第2シート層43により挟持されており、その結果、複数のバスバー31が、樹脂シート41によって一体に保持されている。
【0048】
なお、
図3および
図6に示されるように、検出線51は、接続部52が接続されるバスバー上面32から、第2開口部46を通って、延伸部53が配置される第1シート層42および第2シート層43の間に進入している。
【0049】
樹脂シート41は、第3シート層44をさらに有する。第3シート層44は、樹脂シート41が折り返されることによって、第1シート層42および第2シート層43と樹脂シート41の厚み方向に重ね合わされている。
【0050】
より具体的には、
図4に示されるように、第3シート層44は、第1シート層42と第2折り曲げ部120を境界に矢印102に示す方向に並んでいる。第1シート層42は、矢印102に示す方向において、第2シート層43および第3シート層44の間に位置している。
図2および
図3に示されるように、樹脂シート41が第2折り曲げ部120で折り曲がられることによって、第3シート層44が第2シート層43上に重ね合わされている。
【0051】
第3シート層44は、バスバー31のバスバー上面32と、検出線51の接続部52とを覆うように設けられている。第3シート層44は、第2シート層43上において、バスバー31のバスバー上面32と、検出線51の接続部52とを覆っている。
【0052】
第1折り曲げ部110は、第1シート層42と第2シート層43との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。第2折り曲げ部120は、第1シート層42と第3シート層44との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。
図2に示されるように、本実施の形態では、樹脂シート41Aの第1折り曲げ部110と、樹脂シート41Bの第1折り曲げ部110とが、左右方向における配線モジュール10の内側に配置され、樹脂シート41Aの第2折り曲げ部120と、樹脂シート41Bの第2折り曲げ部120とが、左右方向における配線モジュール10の外側に配置されている。
【0053】
第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44から選択される少なくとも2枚のシート層は、シート同士が溶着された溶着部210,220,230において、互いに接合されている。第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44の溶着位置は、特に限定されない。第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44の溶着には、たとえば、超音波溶着が用いられてもよい。
【0054】
なお、樹脂シート41に単電池26の温度を検出するためのサーミスタが搭載され、そのサーミスタから延びる配線が、樹脂シート41により覆われる構成であってもよい。
【0055】
図3および
図4に示されるように、配線モジュール10は、検出線保護シート61をさらに有する。検出線保護シート61は、柔軟性を有する。検出線保護シート61は、樹脂シート41と同様の樹脂材料から形成されている。
【0056】
検出線保護シート61は、基部63と、分岐部62(62A,62B)とを有する。基部63は、矢印101に示す方向に帯状に延びている。分岐部62は、基部63の端部から分岐し、矢印102に示す方向に延びている。分岐部62Aおよび分岐部62Bは、矢印102に示す方向に沿って互いに反対方向に延びている。分岐部62Aは、樹脂シート41Aに接合されている。分岐部62Bは、樹脂シート41Bに接合されている。
【0057】
樹脂シート41Aおよび樹脂シート41Bは、検出線保護シート61によって一体とされている。
【0058】
検出線51Aは、延伸部53からコネクタ66までの区間において、分岐部62Aおよび基部63に沿って配索されている。検出線51Bは、延伸部53からコネクタ66までの区間において、分岐部62Bおよび基部63に沿って配索されている。検出線51を覆うワイヤーハーネス56は、基部63に巻回されることによって保護される。
【0059】
なお、ワイヤーハーネス56の保護手段として、上記の検出線保護シート61に替えて、コルゲートチューブが用いられてもよい。
【0060】
続いて、配線モジュール10を組電池20に取り付ける工程の流れについて説明する。
図9は、
図2中の電池パックにおける配線モジュールの取り付け構造を示す断面図である。
【0061】
図3を参照して、まずは、第3シート層44が第1シート層42および第2シート層43から展開された状態の配線モジュール10を製造する。本実施の形態における配線モジュール10は、
図3に示される形態に対応している。
【0062】
図1および
図9を参照して、続いて、配線モジュール10を組電池20に取り付ける。具体的には、組電池20の上面21上に配線モジュール10を配置する。配線モジュール10のバスバー31を組電池20の電極端子27に接続する。
【0063】
次に、樹脂シート41を第2折り曲げ部120において折り曲げ、第3シート層44により、バスバー上面32および接続部52を覆う。第3シート層44を、第1シート層42に溶着する。
【0064】
次に、樹脂シート41Aの第3シート層44の端部と、樹脂シート41Bの第3シート層44の端部とを、樹脂シート41の厚み方向に重ね合わせ、その重ね合わせたシート部分を、組電池20の樹脂枠等から突出する突起部240によって係止する。これにより、組電池20に対する配線モジュール10の取り付けが完了する。
【0065】
このような構成によれば、柔軟性を有する樹脂シート41によって、複数のバスバー31を保持しつつ、複数のバスバー31の電気的な絶縁と、複数の検出線51の保護とを成立させることができる。これにより、配線モジュール10の構造が簡易となるため、配線モジュール10のコストを低減したり、組電池20に対する配線モジュール10の取り付け時の作業性を向上させたりすることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、樹脂シート41が折り曲げられ、互いに重ね合わされた第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44からなる3層構造によって、複数のバスバー31を保持しつつ、複数のバスバー31の電気的な絶縁と、複数の検出線51の保護とを成立させる構造を実現している。これにより、配線モジュール10の構造をさらに簡易にできる。
【0067】
また、本実施の形態では、複数のバスバー31Aを保持しつつ、複数のバスバー31Aと、複数の検出線51Aとを覆う樹脂シート41Aと、複数のバスバー31Bを保持しつつ、複数のバスバー31Bと、複数の検出線51Bとを覆う樹脂シート41Bとが、一体に繋げられている。このため、組電池20が大型化した場合であっても、組電池20に対する配線モジュール10の取り付け作業を良好にできる。
【0068】
また、本実施の形態では、組電池20の電圧を検出するために、フレキシブル配線基板(FPC)ではなく、一般的な自動車用電線である検出線51が用いられている。このため、電圧検出モジュール14の位置に合わせて検出線51の長さを自在に調節することが可能となり、配線モジュール10の共通化を容易にできる。
【0069】
また、本実施の形態では、組電池20の上面21を覆う樹脂シート41が、柔軟性を有する。このため、組電池20の上面21に設けられた開放弁29の動作が、樹脂シート41によって妨げられることがない。また、樹脂シート41を組電池20の上面21から離す必要がないため、電池パック100の全高を低くすることができる。
【0070】
以上に説明した、本実施の形態における配線モジュール10および電池パック100の構造についてまとめると、配線モジュール10は、一方向に並び、複数の単電池26間を接続するための複数のバスバー31と、組電池20の状態を検出するための複数の検出線51と、柔軟性を有し、複数のバスバー31を保持し、複数のバスバー31と、複数の検出線51とを覆うことが可能な樹脂シート41とを備える。
【0071】
電池パック100は、配線モジュール10と、複数のバスバー31が接続される複数の電極端子27と、複数の電極端子27が突出する上面21とを含む組電池20とを備える。樹脂シート41は、上面21上において、複数のバスバー31と、複数の検出線51とを覆うように設けられる。
【0072】
このように構成された、本実施の形態における配線モジュール10および電池パック100によれば、配線モジュール10の構造が簡易となるため、配線モジュール10を低コスト化したり、組電池20に対する配線モジュール10の取り付け時の作業性を向上させたりすることができる。
【0073】
図10は、
図9中の配線モジュールの第1変形例を示す断面図である。
図10を参照して、第1折り曲げ部110は、第1シート層42と第2シート層43との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。第3折り曲げ部130は、第2シート層43と第3シート層44との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。
【0074】
本変形例における配線モジュール10Pでは、樹脂シート41Aの第1折り曲げ部110と、樹脂シート41Bの第1折り曲げ部110とが、左右方向における配線モジュール10の外側に配置され、樹脂シート41Aの第3折り曲げ部130と、樹脂シート41Bの第3折り曲げ部130とが、左右方向における配線モジュール10の内側に配置されている。第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44から選択される少なくとも2枚のシート層は、シート同士が溶着された溶着部310,320,330において、互いに接合されている。
【0075】
樹脂シート41Aの第1シート層42の端部と、樹脂シート41Bの第1シート層42の端部とが、樹脂シート41の厚み方向に重ね合わされ、その重ね合わされたシート部分が、組電池20の樹脂枠等から突出する突起部340によって係止されている。
【0076】
図11は、
図9中の配線モジュールの第2変形例を示す断面図である。
図11を参照して、第1折り曲げ部110は、第1シート層42と第2シート層43との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。第3折り曲げ部130は、第2シート層43と第3シート層44との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。
【0077】
本変形例における配線モジュール10Qでは、樹脂シート41Aの第1折り曲げ部110と、樹脂シート41Bの第1折り曲げ部110とが、左右方向における配線モジュール10の外側に配置され、樹脂シート41Aの第3折り曲げ部130と、樹脂シート41Bの第3折り曲げ部130とが、左右方向における配線モジュール10の内側に配置されている。第1シート層42、第2シート層43および第3シート層44から選択される少なくとも2枚のシート層は、シート同士が溶着された溶着部410,420,430において、互いに接合されている。
【0078】
樹脂シート41Aの第1シート層42の端部と、樹脂シート41Bの第1シート層42の端部とが、左右方向における配線モジュール10の中央部で繋がっている。樹脂シート41Aと、樹脂シート41Bとは、一体のシート材から構成されている。
【0079】
図12は、
図9中の配線モジュールの第3変形例を示す断面図である。
図12を参照して、第3折り曲げ部130は、第2シート層43と第3シート層44との境界における樹脂シート41の折り曲げ部分である。
【0080】
本変形例における配線モジュール10Rでは、樹脂シート41Aの第3折り曲げ部130と、樹脂シート41Bの第3折り曲げ部130とが、左右方向における配線モジュール10の外側に配置されている。
【0081】
配線モジュール10Rは、樹脂シート41に第1シート層42が設けられる替わりに、樹脂シート81をさらに有する。樹脂シート81は、組電池20の上面21上に設けられている。樹脂シート81は、左右方向において、バスバー31Aおよびバスバー31Bの間に渡って設けられている。第2シート層43、第3シート層44および樹脂シート81から選択される少なくとも2枚のシートは、シート同士が溶着された溶着部510,520,530において、互いに接合されている。
【0082】
樹脂シート41Aの第3シート層44の端部が、樹脂シート81上に重ね合わされ、その重ね合わされたシート部分が、組電池20の樹脂枠等から突出する突起部540によって係止されている。樹脂シート41Bの第3シート層44の端部が、樹脂シート81上に重ね合わされ、その重ね合わされたシート部分が、組電池20の樹脂枠等から突出する突起部550によって係止されている。
【0083】
これらの変形例における配線モジュール10P,10Q,10Rによっても、配線モジュール10による効果を同様に奏することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示は、たとえば、ハイブリッド自動車、外部充電が可能なプラグインハイブリッド自動車または電気自動車に搭載される電池パックに適用される。
【符号の説明】
【0086】
10,10P,10Q,10R 配線モジュール、12 ケース体、14 電圧検出モジュール、20 組電池、21 上面、22,23 エンドプレート、26 単電池、27 電極端子、27N 負極端子、27P 正極端子、29 開放弁、31,31A,31B バスバー、32 バスバー上面、33 頂部、34 脚部、41,41A,41B,81 樹脂シート、42 第1シート層、43 第2シート層、44 第3シート層、46 第2開口部、47 第1開口部、51,51A,51B 検出線、52 接続部、53 延伸部、56 ワイヤーハーネス、61 検出線保護シート、62,62A,62B 分岐部、63 基部、66 コネクタ、100 電池パック、110 第1折り曲げ部、120 第2折り曲げ部、130 第3折り曲げ部、210,220,230,310,320,330,410,420,430,510,520,530 溶着部、240,340,540,550 突起部。