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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】非常報知灯用回線確認装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/21 20200101AFI20230926BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H05B47/21
B61L23/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020026699
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021131981
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391054464
【氏名又は名称】株式会社てつでん
(73)【特許権者】
【識別番号】520060014
【氏名又は名称】シナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 真琴
(72)【発明者】
【氏名】宮永 一樹
(72)【発明者】
【氏名】細川 友樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋三
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼下 康夫
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-71907(JP,A)
【文献】特開2016-149237(JP,A)
【文献】特開2008-44681(JP,A)
【文献】特開昭63-133822(JP,A)
【文献】特開平8-99636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅に設けられた非常報知灯とそれに点灯用交流を供給する点灯装置との間の回線の異常の有無を確認するための非常報知灯用回線確認装置であって、
前記回線に測定用交流を出力する測定状態と、
前記回線から遮断された遮断状態と、
前記回線に前記非常報知灯の内部のトランスを消磁するための消磁用交流を出力する消磁状態とを有し、
前記測定状態において、前記回線に流れる前記測定用交流に基づいて前記回線の異常を検知し、
前記回線に前記点灯用交流を感知したとき、前記遮断状態に遷移し、
前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、前記消磁状態に遷移し、
前記消磁状態が所定時間経過したとき、前記測定状態に遷移し、
前記測定用交流及び消磁用交流は、前記非常報知灯を点灯しない電圧に設定されることを特徴とする非常報知灯用回線確認装置。
【請求項2】
最初の前記測定状態の前に、前記消磁状態をさらに有し、その消磁状態が所定時間経過したとき、前記測定状態に遷移することを特徴とする請求項1に記載の非常報知灯用回線確認装置。
【請求項3】
前記測定用交流及び消磁用交流を発生する電源部と、
前記測定状態及び消磁状態にかかわる処理を行う検知処理部と、
前記回線の前記点灯用交流を感知する保護リレーとを備え、
前記測定状態において、前記電源部は、前記回線に前記測定用交流を出力し、前記検知処理部は、前記回線に流れる前記測定用交流の大きさを所定の閾値と比較することによって前記回線の異常を検知し、
前記保護リレーは、前記回線に前記点灯用交流を感知したとき、前記電源部及び検知処理部を前記回線から遮断し、前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、その遮断を解除し、
前記検知処理部は、前記保護リレーが前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、前記電源部に前記消磁用交流を出力させ、前記消磁状態が所定時間経過したとき、状態を前記測定状態に遷移させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非常報知灯用回線確認装置。
【請求項4】
前記電源部は、外部電源を降圧して前記測定用交流及び消磁用交流を発生する変圧器を有し、
前記閾値は、前記変圧器を用いて前記外部電源から生成されることを特徴とする請求項3に記載の非常報知灯用回線確認装置。
【請求項5】
前記閾値は、断線検知用閾値と短絡検知用閾値とがあり、
前記測定状態において、前記検知処理部は、前記回線に流れる前記測定用交流の電流の大きさが前記断線検知用閾値未満であるとき、その回線が断線していると検知し、前記測定用交流の電流の大きさが前記短絡検知用閾値を超えているとき、その回線が短絡していると検知することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の非常報知灯用回線確認装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅に設けられた非常報知灯と点灯装置との間の回線の異常の有無を確認するための非常報知灯用回線確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、列車を緊急に止めるための非常ボタンが設けられた駅がある(例えば、特許文献1参照)。非常ボタンは、非常時に駅員又は旅客によって押されるものであり、駅のプラットホームの各番線の上屋柱及び照明柱等に設置される。特許文献1に記載されている非常ボタン(列車非常停止スイッチ)は、ATC(自動列車制御装置)に信号を送り、ATCの停止信号によって列車のブレーキをかける。
【0003】
ATCが導入されていない線区の駅に非常ボタンを設ける場合、図5に示すように、非常ボタン5の操作によって点灯する非常報知灯2が設けられる。非常報知灯2は、駅構内における場内信号機の信号柱及びプラットホームの手前等に設置される。列車乗務員は、非常報知灯2の点灯を視認したとき、非常ブレーキをかける。
【0004】
駅のプラットホームに複数の非常ボタン5が設けられる。非常ボタン回路51は、それら複数の非常ボタン5が直列接続され、常時通電されている。各非常ボタン5は、筐体の前面にボタンが配置され、筐体内に電気接点を有する。いずれかの非常ボタンが押された場合、電気接点が開き、非常ボタン回路51の電流が遮断される。非常ボタン回路51の電流が遮断されると、点灯装置3は、内部の継電器(リレー)のコイルがOffされて、b接点が閉じ、非常報知灯2との間の回線4に点灯用交流を供給する。非常報知灯2は、点灯用交流を供給されて点灯する。なお、点灯用交流の電圧は、商用電源電圧と同じ約100Vであり、周波数は、駅が属する地域の商用電源周波数と同じ50Hz又は60Hzである。
【0005】
上述したように、非常ボタン回路51は、常時通電され、継電器を用いてフェールセーフに構成される。
【0006】
非常報知灯2と点灯装置3との間の回線4は、通常時に無加圧であるので、断線や短絡の異常が生じても、異常が分かり難い。このため、メンテナンスにおいて、回線4を加圧して異常の有無を確認する必要がある。しかし、非常ボタン5を押して回線4を加圧する検査は、非常報知灯2を点灯し、列車の運転に影響を与えるおそれがあるので実施が容易ではない。
【0007】
非常報知灯2を点灯しない検定信号を非常報知灯2の回線4(報知灯回路)に出力して、その回線4の断線(開放)や短絡の故障を検知する非常報知灯故障検知装置が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この非常報知灯故障検知装置は、検知結果が実際の異常の有無と一致しないことがあり、検知結果が不安定であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-297106号公報
【文献】特開2016-149237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するものであり、非常報知灯を点灯せずに、非常報知灯と点灯装置との間の回線の異常の有無を安定的に確認できる非常報知灯用回線確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非常報知灯用回線確認装置は、駅に設けられた非常報知灯とそれに点灯用交流を供給する点灯装置との間の回線の異常の有無を確認するための装置であって、前記回線に測定用交流を出力する測定状態と、前記回線から遮断された遮断状態と、前記回線に前記非常報知灯の内部のトランスを消磁するための消磁用交流を出力する消磁状態とを有し、前記測定状態において、前記回線に流れる前記測定用交流に基づいて前記回線の異常を検知し、前記回線に前記点灯用交流を感知したとき、前記遮断状態に遷移し、前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、前記消磁状態に遷移し、前記消磁状態が所定時間経過したとき、前記測定状態に遷移し、前記測定用交流及び消磁用交流は、前記非常報知灯を点灯しない電圧に設定されることを特徴とする。
【0011】
この非常報知灯用回線確認装置において、最初の前記測定状態の前に、前記消磁状態をさらに有し、その消磁状態が所定時間経過したとき、前記測定状態に遷移してもよい。
【0012】
この非常報知灯用回線確認装置において、前記測定用交流及び消磁用交流を発生する電源部と、前記測定状態及び消磁状態にかかわる処理を行う検知処理部と、前記回線の前記点灯用交流を感知する保護リレーとを備え、前記測定状態において、前記電源部は、前記回線に前記測定用交流を出力し、前記検知処理部は、前記回線に流れる前記測定用交流の大きさを所定の閾値と比較することによって前記回線の異常を検知し、前記保護リレーは、前記回線に前記点灯用交流を感知したとき、前記電源部及び検知処理部を前記回線から遮断し、前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、その遮断を解除し、前記検知処理部は、前記保護リレーが前記回線に前記点灯用交流を感知しなくなったとき、前記電源部に前記消磁用交流を出力させ、前記消磁状態が所定時間経過したとき、状態を前記測定状態に遷移させることが好ましい。
【0013】
この非常報知灯用回線確認装置において、前記電源部は、外部電源を降圧して前記測定用交流及び消磁用交流を発生する変圧器を有し、前記閾値は、前記変圧器を用いて前記外部電源から生成されることが好ましい。
【0014】
この非常報知灯用回線確認装置において、前記閾値は、断線検知用閾値と短絡検知用閾値とがあり、前記測定状態において、前記検知処理部は、前記回線に流れる前記測定用交流の電流の大きさが前記断線検知用閾値未満であるとき、その回線が断線していると検知し、前記測定用交流の電流の大きさが前記短絡検知用閾値を超えているとき、その回線が短絡していると検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非常報知灯用回線確認装置によれば、回線に点灯用交流を感知した後、回線の異常の有無を確認する前に消磁用交流を回線に出力するので、非常報知灯の内部のトランスが消磁され、回線の異常の有無を安定的に確認することができる。また、測定用交流及び消磁用交流は、前記非常報知灯を点灯しない電圧に設定されるので、非常報知灯を点灯せずに回線の異常の有無を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置を接続した非常報知灯を点灯する回路の構成図。
図2】同非常報知灯用回線確認装置の状態遷移図。
図3】同非常報知灯用回線確認装置の構成図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置の状態遷移図。
図5】非常報知灯を点灯する回路の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の発明者は、非常報知灯の回線の異常の検知結果が不安定になる原因を究明するための試験を行った。その試験結果では、同じ検定信号を同じ回線に出力しても、それに対して測定される応答信号が毎回同じとは限らず、測定の再現性が良くない。このため、非常報知灯の回線の異常の検知結果が不安定になる。このような測定の再現性の低さは、高周波帯だけでなく、商用電源周波数においても生じる。本願の発明者は、多数の試験を行い、測定の再現性の低さが非常報知灯の内部構成に起因することを突きとめた。
【0018】
非常報知灯には、赤色のLEDが用いられている。回線から非常報知灯に供給される点灯用交流は、約100Vであり、それが内部のトランス(LED用トランス)で降圧され、整流されてLEDに供給される。そのトランスは、点灯用交流が供給されると、鉄心が励磁される。点灯用交流が切られると、トランスの鉄心に残留磁束が生じる。その残留磁束がまだ残っている時に検定信号を回線からトランスに入力すると、応答信号が残留磁束に影響される。鉄心の残留磁束の大きさは、点灯用交流が切られたタイミング(位相)によって異なるので、測定の再現性が低くなり、非常報知灯の回線の異常の検知結果が不安定になる。本願の発明者は、このような原因究明に基づいて、本願の非常報知灯用回線確認装置を開発した。
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置を図1乃至図3を参照して説明する。図1に示すように、非常報知灯用回線確認装置1は、非常報知灯2と点灯装置3との間の回線4の異常の有無を確認するための装置である。非常報知灯2は、鉄道の駅に設けられる。点灯装置3は、非常報知灯2に点灯用交流を供給する装置である。通常は、回線4は無加圧である。駅のホームに設置された非常ボタン5が押されたとき、点灯装置3は回線4を通して非常報知灯2に点灯用交流を供給し、非常報知灯2が点灯する。点灯用交流の電圧は、約100Vであり、周波数は、駅が属する地域の商用電源周波数と同じ50Hz又は60Hzである。本実施形態では、複数の非常ボタン5が非常ボタン回路51に直列接続され、複数の非常報知灯2が回線4に並列接続されている。
【0020】
図2の状態遷移図に示すように、非常報知灯用回線確認装置1は、複数の状態s0~s3を有する。初期状態s0において、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に何も出力していない。
【0021】
非常報知灯用回線確認装置1がユーザによって起動されると、非常報知灯用回線確認装置1は、測定状態s1に遷移する(イベントe01)。
【0022】
測定状態s1は、非常報知灯用回線確認装置1が回線4に測定用交流を出力する状態である。測定状態s1において、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に流れる測定用交流に基づいて回線4の異常を検知する(回線4の測定)。
【0023】
回線4の測定が完了すると、非常報知灯用回線確認装置1がユーザによって停止され、初期状態s0に戻る(イベントe10)。そして、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4から取り外される。
【0024】
測定中に非常ボタン5が押されることがありうる。その場合、点灯装置3から回線4に点灯用交流が供給される。非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に点灯用交流を感知したとき、遮断状態s2に遷移する(イベントe12)。この遷移は、非常報知灯用回線確認装置1の保護動作である。
【0025】
遮断状態s2は、非常報知灯用回線確認装置1が回線4から遮断された状態である。遮断状態s2において、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4から遮断されているので、回線4に何も出力せず、回線4の測定を行わない。非常報知灯用回線確認装置1が回線4から遮断されるので、回線4から非常報知灯用回線確認装置1への点灯用交流の逆加圧が防がれるとともに、回線4における点灯用交流と測定用交流の混触が防がれる。
【0026】
非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に点灯用交流を感知している間、遮断状態s2を保持する(イベントe22)。
【0027】
非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に点灯用交流を感知しなくなったとき、消磁状態s3に遷移する(イベントe23)。
【0028】
消磁状態s3は、回線4に消磁用交流を出力する状態である。消磁用交流は、非常報知灯2の内部のトランスを消磁するための交流である。
【0029】
消磁状態s3において、非常報知灯用回線確認装置1は、消磁用交流は、非常報知灯2の内部のトランスを消磁する。非常報知灯用回線確認装置1は、回線4の測定を行わない。
【0030】
もし、消磁状態s3において、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に点灯用交流を感知すると、遮断状態s2に遷移する(イベントe32)。この遷移は、非常報知灯用回線確認装置1の保護動作である。
【0031】
非常報知灯用回線確認装置1は、消磁状態s3が所定時間経過したとき、測定状態s1に遷移する(イベントe31)。所定時間は、非常報知灯2の内部のトランスを消磁するために必要な時間に設定される。
【0032】
そして、測定状態s1において、非常報知灯用回線確認装置1は、回線4に流れる測定用交流に基づいて回線4の異常を検知する。
【0033】
非常報知灯用回線確認装置1において、測定用交流及び消磁用交流は、非常報知灯2を点灯しない電圧に設定される。本実施形態では、測定用交流及び消磁用交流の電圧は24Vであり、周波数は、駅が属する地域の商用電源周波数と同じ50Hz又は60Hzである。なお、測定用交流及び消磁用交流の24Vは一例であり、この電圧に限定されない。
【0034】
非常報知灯用回線確認装置1の構成を説明する。図3に示すように、非常報知灯用回線確認装置1は、筐体に収容される。その筐体の表面には、外部と接続するコネクタ端子、電源スイッチ、検知した異常を表示するLED、その表示をリセットするスイッチ等が配置される。
【0035】
非常報知灯用回線確認装置1は、電源部6と、検知処理部7と、保護リレー8を備える。電源部6は、測定用交流及び消磁用交流を発生する。検知処理部7は、測定状態及び消磁状態にかかわる処理を行う。保護リレー8は、回線4の点灯用交流を感知する。
【0036】
非常報知灯用回線確認装置1の測定状態s1において、電源部6は、回線4に測定用交流を出力し、検知処理部7は、回線4に流れる測定用交流の大きさを所定の閾値と比較することによって回線4の異常を検知する。
【0037】
保護リレー8は、回線4に点灯用交流を感知したとき、電源部6及び検知処理部7を回線4から遮断する(イベントe12、e22、e32)。保護リレー8は、回線4に点灯用交流を感知しなくなったとき、その遮断を解除する。
【0038】
検知処理部7は、保護リレー8が回線4に点灯用交流を感知しなくなったとき、電源部6に消磁用交流を出力させる。検知処理部7は、消磁状態s3が所定時間経過したとき、状態を測定状態s1に遷移させる。
【0039】
電源部6は、変圧器61を有する。変圧器61は、外部電源9を降圧して測定用交流及び消磁用交流を発生する。本実施形態では、変圧器61は、外部電源9の交流を測定用交流及び消磁用交流に降圧する。回線4に流れる測定用交流の大きさと比較される閾値は、変圧器61を用いて同じ外部電源9から生成される。また、電源部6は、AC/DCコンバータ62を有し、検知処理部7及び保護リレー8等の動作に必要な直流を供給する。
【0040】
回線4に流れる測定用交流の大きさと比較される閾値は、断線検知用閾値と短絡検知用閾値とがある。非常報知灯用回線確認装置1の測定状態s1において、検知処理部7は、回線4に流れる測定用交流の電流の大きさが断線検知用閾値未満であるとき、その回線4が断線していると検知する。検知処理部7は、測定用交流の電流の大きさが短絡検知用閾値を超えているとき、その回線4が短絡していると検知する。
【0041】
非常報知灯用回線確認装置1の各構成をさらに詳述する。電源スイッチSWのオンによって電源部6が外部電源に電気的に接続され、非常報知灯用回線確認装置1が起動する(イベントe01)。外部電源は、電力会社から供給される交流の商用電源である。外部電源は、非常用発電機や可搬型発電機等の出力であってもよい。
【0042】
検知処理部7は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、断線検知用比較器及び短絡検知用比較器等を有する。各比較器は、2つの電圧値をアナログで比較する回路であり、オペアンプを用いて構成される。非常報知灯用回線確認装置1の測定状態s1において、測定用交流の電流の大きさは、電流検知用抵抗器71によって電圧に変換され、整流器で直流電圧にされ、断線検知用比較器及び短絡検知用比較器に入力される。また、変圧器61の出力が整流され、断線検知用閾値を設定する可変抵抗器で分圧され、断線検知用閾値の電圧値として断線検知用比較器に入力される。断線検知用比較器は、入力された2つの電圧値を比較し、比較結果をPLCに出力する。変圧器61の同じ出力が、整流され、短絡検知用閾値を設定する可変抵抗器で分圧され、短絡検知用閾値の電圧値として短絡検知用比較器に入力される。短絡検知用比較器は、入力された2つの電圧値を比較し、比較結果をPLCに出力する。なお、測定用交流の電流の大きさと閾値との比較は、上述したアナログの比較に限定されず、例えば、電流検知用抵抗器71の電圧を整流し、ディジタルに変換してPLCに入力し、PLCで閾値と比較してもよい。
【0043】
回線4が断線し、1灯の非常報知灯2が通電しなくなると、測定用電流の大きさが正常時よりも小さくなる。回線4が断線し、複数灯の非常報知灯2が通電しなくなると、測定用電流の大きさがさらに小さくなる。断線検知用閾値は、1灯の非常報知灯2が通電しないときの電流値を検知する値に設定される。また、回線4が短絡すると、測定用電流の大きさが正常時よりも大きくなる。短絡検知用閾値は、短絡時の電流値(短絡電流)を検知する値に設定される。したがって、回線4の断線及び短絡の検知は、高周波を用いる必要が無く、商用電源周波数(50Hz/60Hz)の測定用交流を用いて行われる。
【0044】
検知処理部7は、回線4の断線を検知したとき、断線表示LED72を点灯し、断線アラームを端子73に出力する。その端子73において、正常時に共通端子Cが定位端子Nに接続され、断線を検出したときは共通端子Cが反位端子Rに接続される。同様に、検知処理部7は、回線4の短絡を検知したとき、短絡表示LED74を点灯し、短絡アラームを端子75に出力する。その端子75において、正常時に共通端子Cが定位端子Nに接続され、断線を検出したときは共通端子Cが反位端子Rに接続される。断線表示LED72及び短絡表示LED74の点灯、並びに端子73及び端子75によるアラームの出力は保持される。ユーザが表示リセットスイッチ76を扱うことによって、断線表示LED72及び短絡表示LED74が消灯する。外部リセット端子77にリセット信号を外部から入力することにより、端子73及び端子75のアラームの出力が停止する。
【0045】
保護リレー8は、過電圧リレーであり、測定用交流及び消磁用交流よりも点灯用交流の電圧が高いことにより、回線4の点灯用交流を感知する。保護リレー8が点灯用交流を感知すると、保護動作として、保護リレー8の接点が開き、電源部6及び検知処理部7を回線4から遮断する。保護リレー8は、回線4に点灯用交流を感知しなくなったとき、その遮断を解除する。すなわち、保護リレー8は、回線4に点灯用交流を感知しないとき、保護リレー8の接点が閉じ、電源部6及び検知処理部7を回線4に接続する。
【0046】
そして、検知処理部7は、消磁接点78を閉じ、電源部6に消磁用交流を出力させる。検知処理部7は、タイマー機能を有し、所定時間経過したとき、消磁接点78を開く。これにより、電源部6は測定用交流を回線4に出力するとともに、消磁接点78に並列の電流検知用抵抗器71が使用可能になる。
【0047】
以上、本実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置1によれば、回線4に点灯用交流を感知した後、回線4の異常の有無を確認する前に消磁用交流を回線4に出力するので、非常報知灯2の内部のトランスが消磁され、回線4の異常の有無を安定的に確認することができる。また、測定用交流及び消磁用交流は、前記非常報知灯を点灯しない電圧に設定されるので、非常報知灯を点灯せずに、回線4の異常の有無を確認し、非常報知灯2の内部のトランスを消磁することができる。
【0048】
保護リレー8が、回線4に点灯用交流を感知したとき、電源部6及び検知処理部7を回線4から遮断するので、電源部6及び検知処理部7を過電圧から保護することができる。
【0049】
電源部6は、外部電源9を変圧器61で降圧して測定用交流を発生するので、測定用の高周波信号を発生する必要が無く、構成がシンプルである。また、変圧器61を用いて同じ外部電源9から閾値を生成するので、外部電源9の電圧が変動しても、測定用交流と閾値が同じように変化して、測定用交流と閾値との比較が外部電源9の電圧変動の影響を受け難い。
【0050】
閾値に断線検知用閾値と短絡検知用閾値とがあるので、回線4の異常として、回線4の断線と短絡を検知することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置1を図1図3及び図4を参照して説明する。本実施形態の非常報知灯用回線確認装置1は、第1の実施形態と同様の構成を有し(図1図3参照)、初期状態s0からの状態遷移のし方が異なる(図4参照)。本実施形態において、第1の実施形態と同等の箇所には同じ符号を付している。以下の説明において、第1の実施形態と同等の箇所の詳細な説明は省略する。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の非常報知灯用回線確認装置1は、最初の測定状態s1の前に、消磁状態s3をさらに有し、その消磁状態s3が所定時間経過したとき、測定状態s1に遷移する(イベントe31)
【0053】
本実施形態に係る非常報知灯用回線確認装置1によれば、最初の測定状態s1の前に、消磁状態s3をさらに有するので、初期状態s0において非常報知灯2の内部のトランスの鉄心に残留磁束が残っていても、そのトランスが消磁され、回線4の異常の有無を安定的に確認することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、測定用交流と消磁用交流の電圧は、非常報知灯2を点灯しない範囲で異なる電圧としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 非常報知灯用回線確認装置
2 非常報知灯
3 点灯装置
4 回線
6 電源部
61 変圧器
7 検知処理部
8 保護リレー
s1 測定状態
s2 遮断状態
s3 消磁状態
図1
図2
図3
図4
図5