(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】複合成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230926BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2020027771
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591008199
【氏名又は名称】ビューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】坂東 隆
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 寛
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知人
(72)【発明者】
【氏名】リージージャンバ バトバートル
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0023725(US,A1)
【文献】特開2009-006610(JP,A)
【文献】特開2019-142078(JP,A)
【文献】特開平11-314554(JP,A)
【文献】特開2017-065025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0082712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱軟化する平板状の第一部材からなる第一成形部と溶融樹脂が硬化した第二成形部とが一体成形されている複合成形品の製造方法であって、
型閉じにより成形空間が形成されると共に該成形空間に突出する堰部を有する成形型を型開きして、前記成形空間が形成される部位の一部に加熱軟化させた平板状の前記第一部材を配置し、型閉じに伴って立体的な前記第一成形部を形成すると同時に、前記堰部が前記第一成形部の周縁に設けられている厚さの薄い薄肉部に当接している状態にし、更に、前記堰部よりも外側で前記第一部材の周囲に形成されている前記成形空間の残りの部位に、射出された前記溶融樹脂を充填して、前記第一成形部と接する部位に接触させた後に硬化させて該第一成形部と接合している前記第二成形部を形成
し、
前記成形型は、複合成形品の表面を形成する表型と裏面を形成する裏型とを有しており、
前記第一部材は、前記第二成形部が形成される領域へ延出する複数のタブを有しており、
該タブと前記表型との間に前記成形空間の一部が形成されるように、前記タブを前記裏型に位置決めした状態で型閉じする
ことを特徴とする複合成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる材料を使用して一体成形した複合成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアトリムのような車両用の内装材として、内装材本体に木目込み溝を形成し、その木目込み溝に不織布のような表皮材の周縁部を嵌め込んで取り付けることで、装飾性を高めたものが提案されている(特許文献1)。特許文献1の技術では、内装材本体の木目込み溝の底部に挿通孔を設けると共に、表皮材に挿通孔に挿通される延設部を設け、挿通孔を通して内装材本体の裏側に突出した延設部を、内装材本体の裏面に取り付けている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、内装材の製造において、作業者が、表皮材の延設部を木目込み溝の挿通孔に挿通した上で、その延設部を内装材本体の裏側に取り付けていた。また、延設部や挿通孔などが木目込み溝に沿って複数設けられているため、それぞれの延設部において取付作業を行う必要があり、手間や時間がかかることでコストが増加する問題があった。また、特許文献1の技術では、表皮材の裏側にも内装材本体が存在しているため、内装材が重くなる問題があった。
【0004】
一方、車両用の内装材として、予め別工程で外周が成形トリムされた表皮材を成形型内にセットし、溶融樹脂を表皮材の裏面にも充填して一体成形(所謂インサート成形)する方法が知られている。しかしながら、このようなインサート成形では、表皮材の裏面に射出された溶融樹脂の熱により、表皮材が熱的ダメージを受けてしまうため、熱的ダメージを受けないように、表皮材に使用する材料が耐熱性のあるものに限られてしまう問題があった。
【0005】
そこで、表面に表皮材が設けられている積層構造体と、樹脂単体品とを一体成形したものが提案されている(特許文献2)。特許文献2の技術では、発泡樹脂シートの表面に断熱層を間にして表皮材を貼り付けたものを射出成形型にセットし、発泡樹脂シートの裏面に射出成形すると共に、樹脂単体品を射出成形している。これにより、溶融樹脂の裏面への射出による表皮材の熱的ダメージを、断熱層により回避させるようにしている。
【0006】
しかしながら、上記のインサート成形や特許文献2の技術では、表皮材の裏面に樹脂を設けているため、当該樹脂の存在により十分な軽量化ができなかった。また、上記のインサート成形や特許文献2の技術において、例えば、発泡樹脂シートや表皮材を不織布に置き換えた場合、不織布の裏面に溶融樹脂を射出すると、その射出圧力により溶融樹脂が不織布を通して表面へ漏出してしまい、見栄えが悪くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-111371号公報
【文献】特開2006-159872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、コストの増加を抑制しつつ軽量且つ装飾性の高い複合成形品の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる複合成形品の製造方法は、
「加熱軟化する平板状の第一部材からなる第一成形部と溶融樹脂が硬化した第二成形部とが一体成形されている複合成形品の製造方法であって、
型閉じにより成形空間が形成されると共に該成形空間に突出する堰部を有する成形型を型開きして、前記成形空間が形成される部位の一部に加熱軟化させた平板状の前記第一部材を配置し、型閉じに伴って立体的な前記第一成形部を形成すると同時に、前記堰部が前記第一成形部の周縁に設けられている厚さの薄い薄肉部に当接している状態にし、更に、前記堰部よりも外側で前記第一部材の周囲に形成されている前記成形空間の残りの部位に、射出された前記溶融樹脂を充填して、前記第一成形部と接する部位に接触させた後に硬化させて該第一成形部と接合している前記第二成形部を形成する」ことを特徴とする。
【0010】
ここで、加熱軟化する「第一部材」としては、熱可塑性繊維を含んでいる不織布、熱可塑性樹脂が含浸されている不織布、ウレタンフォームのような発泡樹脂、前記の不織布や発泡樹脂の表面に木目や革柄が施されている樹脂シートが貼り付けられているもの、を例示することができる。
【0011】
また、「薄肉部」としては、第一成形部の周端辺から一定の幅で形成されていても良いし、第一成形部の周端辺から第一成形部の中央側へ一定の距離の部位で溝状に形成されていても良い。また、「薄肉部」は、成形型の堰部により形成されるものであっても良いし、第一部材に予め形成されているものであっても良い。
【0012】
また、溶融樹脂の射出は、成形型の型閉じの途中であっても良いし、成形型が完全に型閉じした後であっても良い。
【0013】
本構成の複合成形品の製造方法は、型開きした成形型における成形空間が形成される部位の一部に加熱軟化させた平板状の第一部材を配置して型閉じすると、第一部材を立体的な第一成形部に成形することができる。また、第一成形部の成形と同時に、第一成形部(第一部材)の周囲に形成されている成形空間の残りの部位に射出された溶融樹脂が、成形空間を流動して第一成形部の周縁に接触する。この際に、第一成形部の周縁には第一部材を圧縮した薄肉部が形成されており、密度が高くなっていると共に、当該薄肉部に成形型の堰部が当接しているため、溶融樹脂や溶融樹脂の熱が薄肉部や堰部を越えて第一成形部の中央側へ遷移することはない。そして、成形空間における堰部よりも外側の部位に充填された溶融樹脂が冷えて硬化することで第二成形部が形成され、第一成形部と第二成形部とが一体成形された複合成形品が製造される。
【0014】
このように、本構成によれば、加熱軟化する第一部材からなる第一成形部と、溶融する樹脂からなる第二成形部とを、一つの成形型において同時に一体成形しているため、作業者が別々に成形した第一成形部と第二成形部とを組み付ける必要はなく、製造にかかる時間を短縮することができると共に、製造にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0015】
また、本構成によれば、薄肉部や堰部により溶融樹脂や溶融樹脂の熱が第一成形部へ影響を及ぼすことを防止できるため、第一成形部の表面に第二成形部の樹脂が現れたり溶融樹脂の熱により第一成形部が変化したりして、見栄えが悪くなることを回避させることができ、装飾性の高い複合成形品を製造することができる。
【0016】
更に、本構成によれば、第二成形部を第一成形部と接している部位で接合していることから、当該接している部位の全長に亘って第一成形部と第二成形部とを接合している。これにより、特許文献1のような延設部により表皮材を所々の部位で内装材本体に取り付ける場合と比較して、第一成形部と第二成形部とを強固に接合することができ、強度や剛性の高い複合成形品を製造することができる。
【0017】
また、本構成によれば、加熱軟化させた第一部材を型閉じにより第一成形部を形成すると共に、溶融樹脂の硬化により第二成形部を形成しており、液状化させていない第一部材の温度よりも溶融樹脂の温度の方が高いため、溶融樹脂の硬化には時間がかかり、第一成形部よりも第二成形部の方が遅れて形成されることとなる。そのため、溶融樹脂の硬化による第二成形部の収縮によって、先に形成された第一成形部に対して周囲から圧縮応力が作用することとなり、第一成形部に残留応力が生じる。これにより、複合成形品に力が作用しても、第一成形部の残留応力によってある程度打ち消すことが可能となるため、破損し難い複合成形品を製造することができる。
【0018】
また、本構成によれば、第一成形部の周囲に溶融樹脂を射出して第二成形部を成形しており、第一成形部の裏面に第二成形部が存在していない。従って、第一部材に相当する表皮材や加飾材の裏面に樹脂が存在している従来品と比較して、より軽量な複合成形品を製造することができると共に、複合成形品の大きさに対して使用する樹脂の量を少なくすることができ、複合成形品の製造にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0019】
本発明にかかる複合成形品の製造方法は、上記の構成に加えて、
「前記成形型は、複合成形品の表面を形成する表型と裏面を形成する裏型とを有しており、
前記第一部材は、前記第二成形部が形成される領域へ延出する複数のタブを有しており、
該タブと前記表型との間に前記成形空間の一部が形成されるように、前記タブを前記裏型に位置決めした状態で型閉じする」ことを特徴とする。
【0020】
ところで、複合成形品を製造する際に、成形型に配置した第一部材の位置がズレてしまう恐れがある。そこで、複合成形品における第一成形部に、他の部品を取り付けるための取付孔や開口部を有している場合は、その取付孔などを利用して第一部材を成形型に位置決めすることが可能である。しかしながら、第一成形部に取付孔や開口部を有していないような場合では、第一部材を成形型に位置決めすることが困難となる。
【0021】
本構成によれば、第一部材に複数のタブを設け、それらタブを裏型に位置決めしているため、複数のタブにより第一部材を成形型に対して確実に位置決めすることができる。また、第二成形部へ延出するタブを裏型に位置決めして、タブと表型との間に成形空間の一部を形成するようにしているため、当該成形空間に溶融樹脂が充填されることで、タブが第二成形部の表面に現れることはなく、複合成形品の見栄えが悪くなることはない。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の効果として、コストの増加を抑制しつつ軽量且つ装飾性の高い複合成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は本発明の
製造方法により製造された複合成形品の全体を概略で示す説明図であり、(b)は複合成形品の断面図であり、(c)は複合成形品における第一成形部と第二成形部との接合部の拡大断面図であり、(d)は複合成形品における第一成形部と第二成形部との接合部においてタブの部位の拡大断面図である。
【
図2】外周をトリムした第一部材を示す説明図である。
【
図3】(a)~(c)は
図1の複合成形品の製造工程を概略で示す説明図である。
【
図4】(a)~(c)は
図3の製造工程における第一成形部と第二成形部との接合部の部位を拡大して示す説明図である。
【
図5】(a)位置決めブッシュを示す斜視図であり、(b)~(e)は
図3の製造工程において第一成形部と第二成形部との接合部におけるタブでの位置決めを拡大して示す説明図である。
【
図6】(a)~(c)は
図1とは異なる形態の接合部を製造工程と共に示す説明図である。
【
図7】(a)~(e)は
図1とは異なる形態のタブの位置決めを製造工程と共に示す説明図である。
【
図8】(a)~(d)は更に異なる形態のタブの位置決めを製造工程と共に示す説明図である。
【
図9】(a)は
図1とは異なる形態のタブを示す説明図であり、(b)~(g)は(a)のタブの位置決めを製造工程と共に示す説明図である。
【
図10】(a)~(c)は更に異なる形態の接合部を製造工程と共に示す説明図である。
【
図11】(a)~(c)は更に異なる形態の接合部を製造工程と共に示す説明図である。
【
図12】
図1とは異なる複合成形品を製造工程と共に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施形態である複合成形品1について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の複合成形品1は、建物や車両などの内装材として使用されるものである。なお、ここでは、複合成形品1を取付対象物に取り付けた時に、外部から見える面を表面と称し、反対側を裏面と称する。
【0027】
複合成形品1は、
図1に示すように、加熱軟化する板状の第一部材2からなる第一成形部3と、溶融樹脂が硬化した第二成形部4と、を備えている。複合成形品1は、第一成形部3の周囲を囲むように第二成形部4が設けられている。第一成形部3と第二成形部4は、それぞれが一定の厚さの板材状で、立体に形成されている。第一成形部3と第二成形部4とは、互いに接する接合部5において一体に接合されている。
【0028】
本実施形態の複合成形品1は、第一成形部3を構成している第一部材2が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、のような熱可塑性繊維を含む加熱軟化する平板状の不織布である。また、第二成形部4は、ポリプロピレンのような熱可塑性の合成樹脂である。
【0029】
第一成形部3および第二成形部4は、接合部5においてそれぞれが裏面側へ屈曲している第一接合片3aおよび第二接合片4aを有しており、第一接合片3aおよび第二接合片4aの途中から先端までの間が互いに接した状態で接合されている。この接合部5では、不織布からなる第一成形部3に、第二成形部4を構成している合成樹脂が滲み込んでおり、第一成形部3と第二成形部4とが強固に固着されている。
【0030】
第一接合片3aおよび第二接合片4aは、表面から接合されている部位までの間では、互いに離隔しており、第一接合片3aと第二接合片4aとの間に溝6を形成している。つまり、第一成形部3と第二成形部4は、溝6の底よりも深い(表面から遠い)部位で互いに接合されている。この溝6は、第一成形部3の周縁の全長に亘って延びている。これにより、複合成形品1は、第一成形部3の周縁が木目込み溝に嵌め込まれているような外観を呈している。
【0031】
第一成形部3は、周縁に厚さの薄い薄肉部3bを有している。詳述すると、薄肉部3bは、第一接合片3aにおける裏面側へ屈曲して、表面と裏面とを結ぶ軸線方向へ向いた根元の部位に設けられている。この薄肉部3bは、第一部材2が圧縮されることで形成されており、他の部位よりも密度が高い。第一成形部3は、第一接合片3aにおける薄肉部3bよりも外側の部位で、第二成形部4の第二接合片4aと接合されている(
図1(c)を参照)。
【0032】
第一成形部3は、第一接合片3aの先端から第二成形部4の裏面へ延出している平板状のタブ3cと、タブ3cを貫通している貫通孔3dと、を有している。タブ3cは、周縁に沿って間隔をあけて複数設けられており、それぞれに円形に打ち抜いた形態の貫通孔3dが設けられている(
図2を参照)。タブ3cは、溝6の底部において第一接合片3aから第二成形部4の裏面へ屈曲している。
【0033】
タブ3cの貫通孔3dには、位置決めブッシュ7が嵌め込まれている。位置決めブッシュ7は、円筒状の筒部7aと、筒部7aの軸方向の一方の端部に外方へ延出しているフランジ部7bとを有している(
図5(a)を参照)。この位置決めブッシュ7は、フランジ部7bがタブ3cの表面に当接した状態で、貫通孔3dに嵌め込まれている。本実施形態の位置決めブッシュ7は、合成樹脂により形成されている。
【0034】
タブ3c及び位置決めブッシュ7は、表面が第二成形部4の裏面と接した状態で、第二成形部4に接合されている(
図1(d)を参照)。これにより、タブ3cや位置決めブッシュ7は、表側から見えることはない。また、貫通孔3dから位置決めブッシュ7が裏側へ抜けることはない。この第一成形部3は、図示するように、第一接合片3aおよびタブ3cの厚さが、圧縮されて他の部位よりも薄く形成されている。
【0035】
第二成形部4は、上述したように、第一成形部3の周囲を囲むように設けられており、合成樹脂により形成されている。なお、図示は省略するが、第二成形部4の裏面に、補強用のリブを一体に設けても良い。
【0036】
次に、複合成形品1の製造方法について説明する。複合成形品1は、
図3などに示すような成形型10を使用して製造する。成形型10は、製品の表面を形成する表型11と、裏面を形成する裏型12と、から構成されている。成形型10は、型閉じにより複合成形品1を形成するための成形空間13が形成される。本実施形態では、表型11を上型とし、裏型12を下型としている。
【0037】
成形型10の裏型12には、第一成形部3の周縁と対応する部位に、接合部形成溝14が形成されている。また、表型11には、裏型12の接合部形成溝14に挿入されるように突出している堰部15が形成されている。本実施形態では、接合部形成溝14と堰部15が、環状に設けられている。
【0038】
また、裏型12には、接合部形成溝14から外方へ延出しているタブ収容溝16と、タブ収容溝16の底部から上方へ突出している位置決めピン17と、が設けられている(
図5を参照)。タブ収容溝16は、第一成形部3のタブ3cを収容可能な大きさに形成されている。タブ収容溝16および位置決めピン17は、接合部形成溝14に沿って間隔をあけて複数設けられている。なお、タブ収容溝16の深さは、接合部形成溝14の深さに対して、同じであっても良いし、浅くても良いし、深くても良い。
【0039】
また、図示は省略するが、成形型10(裏型12)には、成形空間13を形成する部位における接合部形成溝14よりも外側の部位に、成形空間13に溶融樹脂を射出(吐出)するためのゲートが設けられている。この成形型10は、複合成形品1の成形時に、所定温度(例えば、35℃~45℃)で使用される。
【0040】
複合成形品1の製造は、まず、
図2に示すように、加熱軟化する平板状の母材(ここでは不織布)を、第一成形部3の外形と対応する形状に切断して第一部材2を形成する。この際に、第一成形部3が、立体形状であるため、第一部材2を、立体的な第一成形部3を平面に展開した形状に形成する。また、更に、第一部材2に、周縁から外方へ延出するタブ3cと貫通孔3dとを形成する。タブ3cと貫通孔3dは、裏型12のタブ収容溝16および位置決めピン17と対応する位置に設ける。
【0041】
そして、成形型10を型開きした状態で、所定温度(例えば、160℃~230℃)のヒーターで加熱軟化させた平板状の第一部材2を、表型11と裏型12との間に位置させ、成形空間13が形成される部位の一部に配置する。詳しくは、成形型10における成形空間13が形成される領域のうち、第一成形部3を形成するための領域であり、裏型12における接合部形成溝14により囲まれている領域に載置する。この際に、第一部材2の各タブ3cを、対応するタブ収容溝16に挿入すると共に、貫通孔3dに位置決めピン17を挿通させる。また、タブ3cの上方から、フランジ部7bを上に向けた位置決めブッシュ7を、貫通孔3dおよび位置決めピン17に嵌め合わせ、フランジ部7bによりタブ3cをタブ収容溝16の底部に押し付けて固定する(
図5(b)および(c)を参照)。この際に、タブ3cが圧縮されて他の部位よりも薄くなる。
【0042】
このようにして、各タブ3cを、タブ収容溝16に挿入して位置決めブッシュ7により固定することで、第一部材2が裏型12の定位置に位置決めされた状態となる。この状態では、第一部材2の周縁が接合部形成溝14の上方に位置している。そして、表型11を下降させて型閉じを開始した後に、成形空間13における接合部形成溝14よりも外側の残りの部位に、ゲートから第一部材2よりも温度の高い(例えば、180℃~300℃)溶融樹脂の射出を開始する。
【0043】
これにより、型閉じに伴って表型11により第一部材2が裏型12に押し付けられ、第一部材2が成形空間13と同じ形状となり、立体的な第一成形部3が形成される。この際に、成形型10の使用温度を、35℃~45℃としているため、第一部材2が冷却されて固化する。また、型閉じにより表型11の堰部15が第一部材2に当接すると、第一部材2の周縁を下方の接合部形成溝14へ屈曲させて第一接合片3aが形成されると共に、第一接合片3aの根元の部位を他の部位よりも圧縮させて薄肉部3bが形成される。これにより、堰部15が薄肉部3bに当接している状態となる。なお、第一部材2の周縁が堰部15により接合部形成溝14へ押し込まれる際に、第一部材2の周縁が圧縮されて第一接合片3aが他の部位よりも薄くなる。
【0044】
また、接合部形成溝14よりも外側の成形空間13では、ゲートから射出された溶融樹脂が成形空間13内を流動しながら広がる。そして、接合部形成溝14に到達した溶融樹脂は、第一部材2の第一接合片3aにおける薄肉部3bよりも先端側の部位に接触する。一方、第一部材2における薄肉部3bよりも中央側の部位に対しては、薄肉部3bに当接している表型11の堰部15の存在により、溶融樹脂が接触することはない。
【0045】
そして、第一接合片3aにおける薄肉部3bよりも先端側の部位に接触した溶融樹脂は、当該部位の内部に滲み込むこととなる。この際に、薄肉部3bは、第一部材2が圧縮されて形成されていることから密度が高くなっているため、溶融樹脂が薄肉部3bを越えて第一部材2の中央側へ滲み込むことはない。従って、溶融樹脂が第一部材2の表面に滲み出ることはない。
【0046】
また、第一部材2におけるタブ3cの部位でも、表型11の堰部15がタブ3cの根元よりも第一部材2の中央側の部位に当接し、第一接合片3aの一部が形成されると共に薄肉部3bが形成される。そして、成形空間13におけるタブ3cの上方の部位に溶融樹脂が到達すると、当該溶融樹脂がタブ3cの表面に接触すると共に、タブ3cに滲み込むこことなる。また、上記と同様に、薄肉部3bと堰部15とによって、第一部材2における薄肉部3bよりも中央側へ溶融樹脂が滲み込むことはない。
【0047】
この際に、タブ3cの表面には、貫通孔3dを通して筒部7aが位置決めピン17に嵌めこまれている位置決めブッシュ7のフランジ部7bが当接しているため、タブ3cがタブ収容溝16の底部から浮き上がることはない。従って、タブ3cが第二成形部4の表面に現れることはない。
【0048】
その後、成形型10が完全に型閉じされ、成形空間13に充填された溶融樹脂の温度が低下してある程度硬化したら、成形型10を型開きして脱型させた後に第二成形部4を完全に硬化させることで複合成形品1が完成する。
【0049】
この際に、第一成形部3よりも第二成形部4の方が遅れて形成されるため、溶融樹脂の硬化による第二成形部4の収縮によって、先に形成された第一成形部3に対して周囲から圧縮応力が作用することとなり、第一成形部3に残留応力が生じた状態となる。
【0050】
このように、本実施形態の複合成形品1の製造方法は、第一成形部3をコールドプレス成形により形成していると共に、第二成形部4を射出成形により形成しており、異なる成形方法を組み合わせたこれまでにない製造方法である。
【0051】
なお、上記では、成形型10を完全に型閉じする前に溶融樹脂を射出する例を示したが、成形型10を完全に型閉じした後に溶融樹脂を射出しても良い。
【0052】
本実施形態によれば、加熱軟化する第一部材2からなる第一成形部3と、溶融する樹脂からなる第二成形部4とを、一つの成形型10において同時に一体成形しているため、作業者が別々に成形した第一成形部3と第二成形部4とを組み付ける必要はなく、製造にかかる時間を短縮することができると共に、製造にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、薄肉部3bや堰部15により溶融樹脂や溶融樹脂の熱が第一成形部3へ影響を及ぼすことを防止できるため、第一成形部3の表面に第二成形部4の樹脂が現れたり、溶融樹脂の熱により第一成形部3が変化したりして、見栄えが悪くなることを回避させることができ、装飾性の高い複合成形品1を提供することができる。
【0054】
更に、本実施形態によれば、表型11の堰部15と裏型12の接合部形成溝14とを、第一成形部3の周縁に沿って環状に設けていることから、第一成形部3と第二成形部4とが接合されている接合部5が環状に形成されている。つまり、第一成形部3と第二成形部4とが接している部位の全長に亘って第一成形部3と第二成形部4とを接合している。これにより、従来品のような延設部により表皮材を所々の部位で内装材本体に取り付ける場合と比較して、第一成形部3と第二成形部4とを強固に接合することができ、強度や剛性の高い複合成形品1を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、製造の際に、第二成形部4の収縮によって、第一成形部3に残留応力が生じるようにしているため、複合成形品1に力が作用しても、第一成形部3の残留応力によってある程度打ち消すことが可能となり、破損し難い複合成形品1を提供することができる。
【0056】
更に、本実施形態によれば、第一成形部3の周囲に溶融樹脂を射出して第二成形部4を成形しており、第一成形部3の裏面に第二成形部4が存在していないため、第一部材2に相当する表皮材や加飾材の裏面に樹脂が存在している従来品と比較して、より軽量な複合成形品1とすることができると共に、複合成形品1の大きさに対して使用する樹脂の量を少なくすることができ、複合成形品1にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、裏面に第二成形部4が存在しない第一成形部3を不織布としているため、この複合成形品1を車両の内装材に使用した場合、第一成形部3を通して車内の音を車体側へ逃がすことができ、車内の騒音を低減させることができる。
【0058】
更に、本実施形態によれば、第一部材2に複数のタブ3cを設け、それらタブ3cを裏型12に位置決めしているため、複数のタブ3cにより第一部材2を成形型10に対して確実に位置決めすることができる。また、第二成形部4側へ延出するタブ3cを裏型12に位置決めして、タブ3cと表型11との間に成形空間13の一部を形成するようにしているため、当該成形空間13に溶融樹脂が充填されることで、タブ3cが第二成形部4の表面に現れることはなく、複合成形品1の見栄えが悪くなることはない。つまり、装飾性の高い見栄えの良い複合成形品1を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、第一部材2のタブ3cを裏型12に位置決めする構成として、裏型12では、タブ収容溝16を設けると共に、その底部から突出している位置決めピン17を設ける構成としており、比較的単純な構成であるため、成形型10にかかるコストの増加を抑制させることができる。また、本実施形態によれば、第一部材2のタブ3cの位置決めとして、合成樹脂からなる位置決めブッシュ7を用いており、当該位置決めブッシュ7は比較的安価なものであるため、製造にかかるコストの増加を抑制させることができる。
【0060】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。以下では、上記と同じ構成については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、第一部材2として、熱可塑性繊維を含んでいる不織布を使用したものを示したが、これに限定するものではなく、熱可塑性樹脂が含浸されている不織布、ウレタンフォームのような発泡樹脂、上記の不織布や発泡樹脂の表面に木目や革柄が施されている樹脂シートが貼り付けられているもの、などを使用しても良い。
【0062】
また、上記の実施形態では、第一成形部3と第二成形部4との接合部5において、それぞれの周縁が裏側へ屈曲し、溝6の底よりも深い位置で互いに接合されているものを示したが、これに限定するものではなく、
図6に示すように、溝6の底よりも浅い位置で接合させても良い。
図6の接合部5は、表型11の堰部15と裏型12の接合部形成溝14とによって、第一成形部3(第一部材2)の周縁に、裏側へU字状に突出するように屈曲した第一接合片3aを形成させ、そのU字状の平行な二辺のうち第一成形部3の中央から遠い先端側に第二成形部4の第二接合片4aを接合させている。
【0063】
図6の実施形態によっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。加えて、溝6の底よりも浅い位置で第一成形部3と第二成形部4とを接合しているため、接合部5における裏側への突出長さを短くすることができる。従って、車体のような取付対象物に対して、接合部5が取り付けの邪魔になり難い複合成形品1を提供することができる。
【0064】
また、上記の実施形態では、位置決めブッシュ7を使用してタブ3cを裏型12のタブ収容溝16に位置決めするものを示したが、これに限定するものではなく、
図7に示すようなファスナ30を使用してタブ3cを位置決めしても良い。
図7の例では、裏型12のタブ収容溝16の底部に、ファスナ30を取り付けるための位置決め孔18を設けている。ファスナ30は、拡開可能な複数の脚部31aを有する筒状のグロメット31と、平板状の押し部32aを有し先端がグロメット31に挿入されているピン32と、で構成されている。この実施形態では、ファスナ30のグロメット31を、タブ3cの貫通孔3dを通して裏型12の位置決め孔18に挿入した上で(
図7(b)を参照)、ピン32の押し部32aを押圧することで、押し部32aによりタブ3cをタブ収容溝16の底部に押し付けて圧縮すると共に、ピン32によりグロメット31の脚部31aを拡開させて脚部31aを位置決め孔18に当接させることで、タブ3cを位置決めすることができる(
図7(c)を参照)。
【0065】
図7の実施形態によっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、この実施形態では、
図7(e)に示すように、ファスナ30が複合成形品1に埋め込まれており、成形型10から脱型した後に、ファスナ30におけるタブ3cから裏側へ突出している部位を削除するようにしても良い。
【0066】
また、上記の実施形態では、位置決めブッシュ7やファスナ30を使用してタブ3cを、裏型12のタブ収容溝16に位置決めするものを示したが、これに限定するものではなく、
図8に示すようなクランプ35を使用してタブ3cを位置決めしても良い。クランプ35は、タブ収容溝16に嵌め込んだ時に、その下面とタブ収容溝16の底部との間に、タブ3cが圧縮された状態で収容される空間を形成可能な大きさに形成されている。クランプ35は、成形型10と同じ金属により形成されている。
【0067】
この実施形態では、タブ収容溝16の底部から突出している位置決めピン17の径が、タブ3cの貫通孔3dの径と同じである。従って、タブ3cの貫通孔3dに位置決めピン17を嵌め合わせると、タブ3c(第一部材2)が位置決めされる。そして、クランプ35を上方からタブ収容溝16に嵌め込み、クランプ35によりタブ3cを押さえ付けて圧縮し、クランプ35の上面を裏型12の上面と一致させる(
図8(b)を参照)。
【0068】
これにより、クランプ35の上方に、第二成形部4の他の部位と同じ厚さの成形空間13が形成される。そして、成形型10の型閉じにより第一成形部3を形成すると共に、溶融樹脂の射出により第二成形部4を形成し、型開きして脱型した後に、クランプ35をタブ3cと第二成形部4との間から取り外すことで、複合成形品1が完成する(
図8(d)を参照)。
【0069】
図8の実施形態によっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。加えて、第二成形部4におけるタブ3cが設けられている部位の厚さを、他の部位と同じにすることができるため、当該部位の表面に溶融樹脂の硬化によるヒケの発生を抑制することができ、見栄えの良い複合成形品1を提供することができる。なお、この複合成形品1では、タブ3cが第二成形部4と接合されていないため、脱型後にタブ3cを削除しても良い。また、ここでは、クランプ35が成形型10から分離しているものを示したが、これに限定するものではなく、クランプ35を傾斜ピン機構や油圧シリンダーなどにより開閉させるようにしても良い。
【0070】
更に、上記の実施形態では、第一部材2のタブ3cに設けた打抜形態の貫通孔3dを使用してタブ3cを、裏型12のタブ収容溝16に位置決めするものを示したが、これに限定するものではなく、
図9(a)に示すように、タブ3cに切込み3eを設けて位置決めするようにしても良い。具体的には、第一部材2のタブ3cに、第一部材2の周縁と直交する方向へ線状に延びている切込み3eが設けられている。
【0071】
一方、成形型10の裏型12には、タブ収容溝16の部位に、上端に断面形状がL字状の鉤部41を有している可動ピン40が設けられている。この可動ピン40は、図示しない駆動機構により、昇降且つ回転可能に設けられている。なお、図示は省略するが、ここでは可動ピン40を円柱状としている。また、裏型12には、タブ収容溝16における可動ピン40よりも第二成形部4の中央側となる部位の上方に、裏型12の上面と同一面上で可動ピン40へ向かって延出している被覆部19が設けられている。タブ収容溝16の底部と被覆部19との間は、第一部材2(タブ3c)を挿入可能な高さに形成されている。
【0072】
図9の実施形態では、型開きした成形型10に第一部材2を位置決めする際に、
図9(b)に示すように、可動ピン40を上昇させて鉤部41を裏型12の上面(第二成形部4の裏面を形成するための面)よりも上方に位置させると共に、鉤部41の開口を接合部形成溝14から遠ざかる方向へ向けた状態とする。この状態で、タブ3cの切込み3eに可動ピン40を挿通させて、タブ3cを鉤部41に係止させる(
図9(c)を参照)。そして、可動ピン40を下降させて、可動ピン40の上面を被覆部19の上面と一致させる(
図9(d)を参照)。この状態では、タブ3cがタブ収容溝16の底部に当接して圧縮されている。
【0073】
そして、可動ピン40を、その軸芯周りに180度回転させると、鉤部41の開口が接合部形成溝14の方向へ向くと共に、L字状の鉤部41の上下延びている部位により切込み3eを介してタブ3cが接合部形成溝14から遠ざかる方向へ引っ張られ、タブ3cの先端がタブ収容溝16の底部と被覆部19との間に挿入される(
図9(e)を参照)。これにより、タブ3cが位置決めされて、タブ収容溝16の底部から浮き上がり不能な状態となる。
【0074】
その後、成形型10を型閉じして第一成形部3を形成すると共に、成形空間13に溶融樹脂を射出して第二成形部4を形成する。そして、型開きして可動ピン40を上昇させると共に脱型し、鉤部41をタブ3cの切込み3eから取り外すことにより、複合成形品1が完成する(
図9(g)を参照)。なお、脱型の際に、可動ピン40を軸芯周りに180度回転させてから、可動ピン40を上昇させても良い。
【0075】
図9の実施形態によっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。加えて、第二成形部4におけるタブ3cが設けられている部位の厚さを、他の部位と同じにすることができるため、当該部位の表面に溶融樹脂の硬化によるヒケの発生を抑制することができ、見栄えの良い複合成形品1を提供することができる。また、本実施形態でも、
図8の実施形態と同様に、複合成形品1においてタブ3cが第二成形部4と接合されていないため、脱型後にタブ3cを削除しても良い。
【0076】
また、上記の実施形態では、第一成形部3と第二成形部4との接合部5において、それぞれの周縁が裏側へ屈曲している状態で互いに接合されているものを示したが、これに限定するものではなく、
図10及び
図11に示すように、接合部5においてそれぞれが裏側へ屈曲していない状態で互いに接合されているものとしても良い。なお、
図10及び
図11の実施形態では、平板状の母材を切断して第一部材2を形成する際に、複合成形品1において溝6が形成される部位を含む先端側を圧縮して薄板部3fを形成している。
【0077】
まず、
図10の実施形態は、成形型10の表型11において、堰部15よりも第二成形部4の表面を形成する側に、下方へ平板状に延出している補助片20が設けられている。この補助片20は、堰部15に沿って間隔をあけて複数設けられている。ここでは、補助片20が、堰部15よりも短く下方へ延出している。一方、成形型10の裏型12では、第一成形部3の裏面を形成する面が、第二成形部4の裏面を形成する面よりも高くなるように、それらの間に段部21が形成されている。段部21は、堰部15よりも第一成形部3側に設けられている。この実施形態では、裏型12に接合部形成溝14を設けていない。
【0078】
図10の実施形態では、第一部材2を、薄板部3fの基端が堰部15の下方に位置するように裏型12上に位置決めして、成形型10を型閉じする。この際に、第一部材2が押圧されて、裏面が裏型12の表面に沿った形状に形成されると共に、堰部15が薄板部3fの一部を押圧して薄肉部3bが形成される。また、表型11の複数の補助片20が薄板部3fに当接している。そして、成形空間13に射出された溶融樹脂が、薄板部3fの先端に接触すると共に、補助片20同士の間の空間に浸入し、薄板部3fの表面に接触し、第一成形部3と接合することとなる。この際に、薄板部3fは、上面に複数の補助片20が当接しており、溶融樹脂が接触しても浮き上がることはない。また、薄肉部3bと堰部15とによって、薄肉部3bを越えて第一部材2の表面に溶融樹脂が滲み出ることはない。
【0079】
その後、成形型10を型開きして脱型することで、複合成形品1が完成する。この複合成形品1では、第一成形部3が第二成形部4よりも薄く形成されており、溝6の第二成形部4側に、表型11に設けられている複数の補助片20により見切り部4bが形成されている。
【0080】
なお、
図10の実施形態では、成形型10の裏型12における接合部5の部位に、段部21を設けたものを示したが、これに限定するものではなく、
図11に示すように、裏型12における接合部5の部位において、第一成形部3の裏面を形成する面と、第二成形部4の裏面を形成する面とを、同一面上としても良い。
【0081】
次に、
図11の実施形態は、成形型10の表型11において、堰部15よりも第二成形部4側に、第二成形部4の表面を形成するための面から上方へ平板状に凹んでいる補助溝22が、設けられている。補助溝22は、堰部15に沿って間隔をあけて複数設けられている。補助溝22の深さは、第一部材2の薄板部3fの厚さと同じである。この成形型10の裏型12は、接合部5の部位において、溝や段を有しない連続した同一面上に形成されている。
【0082】
この
図11の実施形態でも、
図10の実施形態と同様に、第一部材2を、薄板部3fの基端が堰部15の下方に位置するように裏型12上に位置決めする。そして、成形型10を型閉じすることで、表型11の堰部15が薄板部3fに当接すると共に、成形空間13に射出された溶融樹脂が、薄板部3fの先端と表面に接触する。この際に、堰部15が薄板部3fを下方へ押圧して薄肉部3bが形成される。これにより、薄肉部3bを越えて第一部材2の表面に溶融樹脂が滲み出ることはない。また、薄板部3fが、第一部材2を圧縮して形成していることから、剛性を有して曲がり難くなっているため、溶融樹脂が接触しても裏型12から浮き上がることはない。成形空間13に射出された溶融樹脂は、表型11における複数の補助溝22内にも浸入する。
【0083】
その後、成形型10を型開きして脱型することで、複合成形品1が完成する。この複合成形品1では、第一成形部3と第二成形部4とが同じ厚さに形成されており、溝6の第二成形部4側に、表型11に設けられている複数の補助溝22により表面から突出している見切り部4cが形成されている。
【0084】
このように、
図10及び
図11の実施形態によれば、上記と同様の作用効果を奏することができる。加えて、接合部5において、第一成形部3および第二成形部4を裏側へ突出するように屈曲させておらず、接合部5の裏面を同一面上に形成しているため、全体的に厚さが均一な複合成形品1を提供することができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、溝6よりも第二成形部4側に、凹凸を有する見切り部4bまたは見切り部4cを設けているため、当該見切り部4bまたは見切り部4cにより複合成形品1の表面にアクセントを付けて装飾性を高めることができると共に、製造の際に第一部材2の周縁の位置がズレても目立たなくすることができ、見栄えの良い複合成形品1を提供することができる。
【0086】
更に、上記の実施形態では、第一成形部3の裏面に何も設けられていない複合成形品1を示したが、これに限定するものではなく、
図12に示すように、第一成形部3の裏面に第三成形部8が設けられている複合成形品50としても良い。この実施形態では、成形型10の裏型12に、第三成形部8を形成するための第三成形面23が形成されている。
【0087】
複合成形品50の第三成形部8は、ウレタンフォームのような発泡樹脂からなる平板状の第三部材8aを、加熱軟化させた上で、型開きした成形型10の裏型12の第三成形面23に配置し、その上から、上記と同様に加熱した第一部材2を配置して、型閉じすることにより、第一成形部3と同時に立体的に形成したものである。
【0088】
図12の実施形態によれば、第三成形部8の厚さや材質を選択することにより、防音性能や断熱性能の異なる複合成形品50を容易に提供することができる。
【0089】
なお、
図12の実施形態では、加熱軟化させた第三部材8aにより第三成形部8を形成するものを示したが、これに限定するものではなく、成形型10の型閉じにより第一成形部3を形成する際に、第一部材2と裏型12との間に発泡樹脂を供給し、その発泡樹脂の圧力により第一部材2を表型11に押し付けて第一成形部3を形成すると共に、発泡樹脂の硬化により第三成形部8を形成するようにしても良い。
【0090】
また、上記の実施形態では、第一成形部3の周囲の全周を囲むように第二成形部4を一体成形した複合成形品1を示したが、これに限定するものではなく、第一成形部3の周囲をコ字状やL字状に囲むように第二成形部4を一体成形した複合成形品としても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 複合成形品
2 第一部材
3 第一成形部
3a 第一接合片
3b 薄肉部
3c タブ
3d 貫通孔
4 第二成形部
4a 第二接合片
5 接合部
6 溝
7 位置決めブッシュ
10 成形型
11 表型
12 裏型
13 成形空間
14 接合部形成溝
15 堰部
16 タブ収容溝
17 位置決めピン