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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】留置カテーテル及びカテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230926BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61M25/00 542
A61M25/06 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020032528
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021132976
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮司
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-268753(JP,A)
【文献】特開2003-190298(JP,A)
【文献】特開2012-200304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に留置される管状のカテーテルシャフトを備えた留置カテーテルであって、
前記カテーテルシャフトには、
当該カテーテルシャフトの先端面に開口した先端開口と、
前記先端開口を開閉する開閉部と、が設けられ、
前記開閉部は、
前記カテーテルシャフトの前記先端面に接触して前記先端開口を閉塞する閉位置と前記カテーテルシャフトの前記先端面から離間して前記先端開口を開放する開位置とに変位可能な弁体と、
前記弁体と前記カテーテルシャフトの先端部とを互いに連結する弾性変形可能な連結部と、を有し、
前記弁体は、当該弁体に先端方向の圧力が作用した際に、前記連結部を弾性変形させながら前記カテーテルシャフトに対して先端方向に傾動することにより前記閉位置から前記開位置に変位し、前記弁体に先端方向の圧力が作用していない状態で前記連結部の復元力により前記開位置から前記閉位置に復帰する、留置カテーテル。
【請求項2】
請求項1記載の留置カテーテルであって、
前記連結部は、前記カテーテルシャフトの前記先端面の一部にのみ設けられている、留置カテーテル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の留置カテーテルであって、
前記開閉部及び前記カテーテルシャフトは、一体成形品である、留置カテーテル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の留置カテーテルであって、
前記カテーテルシャフトの先端周壁部には、開閉可能なスリットが形成され、
前記スリットは、前記カテーテルシャフトの内腔に負圧が作用した際に開放する、留置カテーテル。
【請求項5】
請求項4記載の留置カテーテルであって、
前記カテーテルシャフトの内周面には、前記スリットを覆うためのカバー部が設けられ、
前記カバー部は、前記カテーテルシャフトの前記内腔に負圧が作用した際に前記スリットが前記カテーテルシャフトの前記内腔に露出するように変位する、留置カテーテル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の留置カテーテルであって、
前記留置カテーテルは、前記カテーテルシャフトの基端部に設けられたカテーテルハブを備える、留置カテーテル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の留置カテーテルと、
前記カテーテルシャフトの内腔に挿通された針体と、
前記針体の基端部に設けられた針ハブと、を備えたカテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置カテーテル及びカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薬剤投与に用いられる留置カテーテルは、血管内にカテーテルシャフトを留置した状態で薬剤投与を停止すると、カテーテルシャフトの先端開口からカテーテルシャフトの内腔に血液が流入することがある。このような状態が長時間続くと、カテーテルシャフトの内腔の血液が凝固して血栓となりカテーテルシャフトの内腔が閉塞する可能性がある。
【0003】
特許文献1には、カテーテルシャフトの先端開口を閉塞部材で閉塞し、カテーテルシャフトの周壁部に開閉可能なスリットを形成することにより、薬剤投与停止中でのカテーテルシャフトの内腔への血液の流入を抑えた留置カテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5896101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような留置カテーテルでは、カテーテルシャフトの先端開口を閉塞部材で閉塞しているため、カテーテルシャフトの先端開口を介してカテーテルシャフトの内腔に医療部材(針体、ガイドワイヤ等)を挿通させることができない。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、カテーテルシャフトの先端開口を介してカテーテルシャフトの内腔に医療部材を挿通させることができ、且つカテーテルシャフトの内腔での血栓の発生を抑えることができる留置カテーテル及びカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、血管内に留置される管状のカテーテルシャフトを備えた留置カテーテルであって、前記カテーテルシャフトには、当該カテーテルシャフトの先端面に開口した先端開口と、前記先端開口を開閉する開閉部と、が設けられ、前記開閉部は、前記カテーテルシャフトの前記先端面に接触して前記先端開口を閉塞する閉位置と前記カテーテルシャフトの前記先端面から離間して前記先端開口を開放する開位置とに変位可能な弁体と、前記弁体と前記カテーテルシャフトの先端部とを互いに連結する弾性変形可能な連結部と、を有し、前記弁体は、当該弁体に先端方向の圧力が作用した際に、前記連結部を弾性変形させながら前記カテーテルシャフトに対して先端方向に傾動することにより前記閉位置から前記開位置に変位し、前記弁体に先端方向の圧力が作用していない状態で前記連結部の復元力により前記開位置から前記閉位置に復帰する、留置カテーテルである。
【0008】
本発明の他の態様は、上述した留置カテーテルと、前記カテーテルシャフトの内腔に挿通された針体と、前記針体の基端部に設けられた針ハブと、を備えたカテーテル組立体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医療部材をカテーテルシャフトの内腔に基端側から挿通して弁体に先端方向の圧力を作用させることにより、弁体を閉位置から開位置に変位させてカテーテルシャフトの先端開口を開放させることができる。これにより、カテーテルシャフトの先端開口を介してカテーテルシャフトの内腔に医療部材を挿通させることができる。また、医療部材をカテーテルシャフトの先端開口よりも基端側に後退又は抜去して弁体に作用していた圧力を除去することにより、弁体を連結部の復元力により閉位置に位置させることができる。これにより、血管内の血液がカテーテルシャフトの先端開口を介してカテーテルシャフトの内腔に流入することを抑えることができる。よって、カテーテルシャフトの内腔での血栓の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
図2図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
図3図2の留置カテーテルを先端方向から見た正面図である。
図4図4Aは、図3のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4Bは、図4AのIVB-IVB線に沿った断面図であり、図4Cは、図4AのIVC-IVC線に沿った断面図である。
図5図5Aは、カテーテル組立体を用いた薬剤投与手技の第1の説明図であり、図5Bは、薬剤投与手技の第2の説明図である。
図6図6Aは、薬液投与手技の第3の説明図であり、図6Bは、図6AのVIB-VIB線に沿った断面説明図である。
図7図7Aは、薬剤投与手技の第4の説明図であり、図7Bは、薬剤投与手技の第5の説明図である。
図8図8Aは、変形例に係るスリットの説明図であり、図8Bは、図8AのVIIIB-VIIIB線に沿った断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る留置カテーテル及びカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体10は、患者(生体)の血管内に薬剤(輸液)を投与するための留置針(末梢静脈留置カテーテル)として構成されている。図1及び図2に示すように、カテーテル組立体10は、留置カテーテル12及び穿刺針14を有する。留置カテーテル12は、カテーテルシャフト16と、カテーテルシャフト16の基端部に設けられたカテーテルハブ18とを有する。
【0013】
カテーテルシャフト16は、可撓性を有し患者の血管内に持続的に挿入可能な管状部材である。カテーテルシャフト16は、その全長に亘って軸線方向に沿って延在した内腔16aを有する。カテーテルシャフト16の先端面15には、内腔16aに連通する先端開口16bが形成されている(図4A参照)。
【0014】
カテーテルシャフト16の構成材料は、特に限定されるものではないが、透明性を有する樹脂材料、特に軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。
【0015】
カテーテルハブ18は、中空状(円筒状)に形成されている。カテーテルハブ18は、カテーテルシャフト16よりも硬い材料によって構成されることが好ましい。カテーテルハブ18の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体、ポリウレタン、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0016】
穿刺針14は、針体20と、針体20の基端部に設けられた針ハブ22とを備える。針体20は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材である。針体20は、軸線方向に沿って延在した内腔20aを有する(図2参照)。針体20は、カテーテル組立体10の初期状態(組立状態)で、カテーテルシャフト16の内腔16a及びカテーテルハブ18の内腔18aに挿通される(図1及び図2参照)。
【0017】
針体20の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金のような金属材料が挙げられる。針体20は、カテーテルシャフト16に比べて充分に長く形成され、カテーテル組立体10の初期状態においてカテーテルシャフト16の先端開口16bから突出している(図1参照)。
【0018】
図1において、針体20の先端部には、針体20の軸線に対して傾斜した刃面23が形成されている。刃面23には、針体20の内腔20aに連通する先端開口20bが形成されている。
【0019】
針ハブ22は、中空状(筒状)に形成されている。針ハブ22の構成材料は、上述したカテーテルハブ18の構成材料と同様のものが挙げられる。針ハブ22の先端部には、針体20の基端部が固着されている。針ハブ22は、カテーテル組立体10の操作部として機能する。
【0020】
図1図4Bに示すように、カテーテルシャフト16には、カテーテルシャフト16の先端開口16bを開閉する開閉部24が設けられている。開閉部24は、カテーテルシャフト16と同じ材料で構成されている。開閉部24及びカテーテルシャフト16は、一体成形品である。ただし、開閉部24は、カテーテルシャフト16の先端部に対して接合されてもよい。
【0021】
開閉部24は、弁体26と連結部28とを有する。弁体26は、カテーテルシャフト16の先端面15に接触して先端開口16bを閉塞する閉位置(図2の位置)と先端面15から離間して先端開口16bを開放する開位置(図1の位置)とに変位可能である。図1図3に示すように、弁体26は、四角平板状に形成されている。ただし、弁体26は、円形状であってもよいし多角形状(四角形状以外)であってもよい。連結部28は、弁体26とカテーテルシャフト16の先端部とを互いに連結する。具体的に、連結部28は、カテーテルシャフト16の先端面15の一部にのみ設けられている。連結部28は、弾性変形可能である。
【0022】
図3において、連結部28は、カテーテルシャフト16の周方向に所定角度θだけ延在している。所定角度θは、例えば、10°以上45°以下の範囲に設定するのが好ましい。所定角度θが10°以上であると、弁体26の開閉動作の際に連結部28が破断することを効果的に抑えられる。所定角度θが45°以下であると、開閉部24の開閉動作を円滑に行うことができる。ただし、所定角度θは、カテーテルシャフト16のサイズや材質等に応じて適宜設定可能である。
【0023】
図4Aに示すように、弁体26は、弁体26に先端方向の圧力が作用した際に連結部28を弾性変形させながら弁体26がカテーテルシャフト16に対して先端方向に傾動することにより閉位置から開位置に変位する。弁体26は、カテーテル組立体10の初期状態で、カテーテルシャフト16の内腔16aに針体20(医療部材)によって先端方向に押圧されて開状態に位置している(図1参照)。
【0024】
また、弁体26は、弁体26に先端方向の圧力が作用していない状態(例えば、カテーテルシャフト16の内腔16aから針体20が抜去された状態)で連結部28の復元力により閉位置に位置する(図2参照)。弁体26は、閉位置に位置した状態で、カテーテルシャフト16の先端開口16bの全体を先端方向から覆うとともにカテーテルシャフト16の先端面15の全体に接触している。弁体26は、カテーテルシャフト16の先端の外形よりも一回り大きく形成されている。
【0025】
図4A及び図4Bにおいて、カテーテルシャフト16の先端周壁部には、カテーテルシャフト16の軸線方向に沿って直線状に延在したスリット30が設けられている。換言すれば、スリット30は、カテーテルシャフト16の周壁部の一部を形成する一対のリップ部32の端面によって形成されている(図4A及び図4C参照)。
【0026】
図4A図4Cに示すように、カテーテルシャフト16の内周面には、スリット30を覆うカバー部34が設けられている。カバー部34は、四角形状に形成されている。カバー部34は、その一辺のみがカテーテルシャフト16の内周面に設けられている。
【0027】
カバー部34は、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用していない状態でスリット30の全体を覆うように一対のリップ部32に接触又は近接している。カバー部34は、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用した際に、スリット30がカテーテルシャフト16の内腔16aに露出するように変位する。なお、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用した状態とは、カテーテルシャフト16の内圧が外圧よりも低い状態をいう。
【0028】
次に、カテーテル組立体10を用いた薬剤投与の手技について説明する。
【0029】
図1に示すように、カテーテル組立体10の初期状態で、針体20がカテーテルシャフト16の内腔16aを基端側から挿通するとともに開閉部24が開位置にある。つまり、刃面23は、上方に向いた状態でカテーテルシャフト16の先端開口16bから先端方向に突出している。また、スリット30は閉塞している。
【0030】
図5Aに示すように、ユーザは、カテーテル組立体10を初期状態のまま皮膚100を介して血管102に穿刺する。これにより、針体20の先端開口20b、カテーテルシャフト16の先端開口16b及びスリット30が血管102内に位置する。その後、図5Bにおいて、ユーザは、カテーテルシャフト16の先端部を血管102内に留置した状態で穿刺針14を留置カテーテル12から抜去する。そうすると、弁体26は、連結部28の復元力により開位置から閉位置に変位する。これにより、カテーテルシャフト16の先端開口16bが弁体26によって閉塞される。この際、弁体26は、血液によりカテーテルシャフト16の先端面15に押圧される。
【0031】
続いて、ユーザは、カテーテルハブ18の基端部に図示しない吸引具(例えば、シリンジ等)を連結して吸引する。そうすると、カテーテルシャフト16の内腔16aが負圧になる。これにより、図6A及び図6Bに示すように、カバー部34がカテーテルシャフト16の内方に引っ張られるため、スリット30がカテーテルシャフト16の内腔16aに露出する。
【0032】
そして、一対のリップ部32がカテーテルシャフト16の内方に倒れこむように変形することによりスリット30が開放する。従って、血管102内の血液がスリット30からカテーテルシャフト16の内腔16aを介してカテーテルハブ18に導かれる。よって、ユーザは、カテーテルハブ18に導かれた血液を視認することにより、カテーテルシャフト16の先端部が血管102内に位置していること(カテーテルシャフト16の血管確保状態)を確認することができる。
【0033】
次いで、カテーテルハブ18の基端部に図示しない薬剤供給装置(輸液装置)を連結し、カテーテルシャフト16の内腔16aに薬剤を供給する。そうすると、弁体26は、薬剤により先端方向に押圧される。そのため、図7Aに示すように、弁体26は、連結部28を弾性変形させながらカテーテルシャフト16に対して先端方向に傾動することにより閉位置から開位置に変位する。すなわち、カテーテルシャフト16の先端開口16bは、開放する。よって、薬剤は、カテーテルシャフト16の先端開口16bを介して血管102内に導出される。
【0034】
なお、カバー部34は、薬剤によってスリット30を覆うように一対のリップ部32に押し付けられる。すなわち、カバー部34は、スリット30を介したカテーテルシャフト16の内腔16aと血管102内との連通を遮断する。そのため、カテーテルシャフト16の内腔16aからスリット30を介して血管102内に薬剤が導出されることが抑えられる。
【0035】
そして、薬剤投与を一時停止すると、図7Bに示すように、薬剤による弁体26の先端方向の圧力が解除されるため、弁体26は、連結部28の復元力により開位置から閉位置に変位する。つまり、カテーテルシャフト16の先端開口16bは、弁体26によって閉塞される。この際、弁体26は、血液によりカテーテルシャフト16の先端面15に押圧される。これにより、薬剤投与を一時停止している際に、血液がカテーテルシャフト16の先端開口16bを介して内腔16aに流入することが抑えられる。よって、カテーテルシャフト16の内腔16aでの血栓の発生が抑えられる。なお、カテーテルシャフト16の内腔16aが負圧でないため、スリット30は閉塞している。薬剤投与の終了後、カテーテルシャフト16は、血管102から抜去される。
【0036】
本実施形態に係る留置カテーテル12及びカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
【0037】
留置カテーテル12において、開閉部24は、カテーテルシャフト16の先端面15に接触して先端開口16bを閉塞する閉位置とカテーテルシャフト16の先端面15から離間して先端開口16bを開放する開位置とに変位可能な弁体26と、弁体26とカテーテルシャフト16の先端部とを互いに連結する弾性変形可能な連結部28と、を有する。弁体26は、弁体26に先端方向の圧力が作用した際に、連結部28を弾性変形させながらカテーテルシャフト16に対して先端方向に傾動することにより閉位置から開位置に変位する。弁体26は、弁体26に先端方向の圧力が作用していない状態で連結部28の復元力により開位置から閉位置に復帰する。
【0038】
このような構成によれば、針体20をカテーテルシャフト16の内腔16aに基端側から挿入して弁体26に先端方向の圧力を作用させることにより、弁体26を閉位置から開位置に変位させてカテーテルシャフト16の先端開口16bを開放させることができる。これにより、カテーテルシャフト16の先端開口16bを介してカテーテルシャフト16の内腔16aに針体20を挿通させることができる。
【0039】
また、針体20をカテーテルシャフト16の先端開口16bよりも基端側に後退又は抜去して弁体26に作用していた圧力を除去することにより、弁体26を連結部28の復元力により閉位置に位置させることができる。これにより、血管102内の血液がカテーテルシャフト16の先端開口16bを介してカテーテルシャフト16の内腔16aに流入することを抑えることができる。よって、カテーテルシャフト16の内腔16aでの血栓の発生を抑えることができる。
【0040】
連結部28は、カテーテルシャフト16の先端面15の一部にのみ設けられている。
【0041】
このような構成によれば、連結部28を弾性変形させてカテーテルシャフト16に対して弁体26を効果的に傾動させることができる。
【0042】
開閉部24及びカテーテルシャフト16は、一体成形品である。
【0043】
このような構成によれば、留置カテーテル12を簡単に成形することができる。
【0044】
カテーテルシャフト16の先端周壁部には、開閉可能なスリット30が形成され、スリット30は、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用した際に開放する。
【0045】
このような構成によれば、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧を作用させることにより、血管102内の血液をスリット30からカテーテルシャフト16の内腔16aに導入させることができる。これにより、ユーザは、カテーテルシャフト16の内腔16aへの血液の流入を視認することにより、カテーテルシャフト16の血管確保を確認することができる。
【0046】
カテーテルシャフト16の内周面には、スリット30を覆うためのカバー部34が設けられている。カバー部34は、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用した際にスリット30がカテーテルシャフト16の内腔16aに露出するように変位する。
【0047】
このような構成によれば、カテーテルシャフト16の内腔16aに薬剤を導入した際に、スリット30からカテーテルシャフト16の外側に薬剤が導出することをカバー部34によって抑えることができる。また、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧を作用させることにより、スリット30からカテーテルシャフト16の内腔16aに血液を導入させることができる。
【0048】
カテーテル組立体10は、上述した構成に限定されない。図8A及び図8Bに示すように、カテーテルシャフト16の周壁部には、直線状のスリット30に代えてC字状のスリット40を形成してもよい。この場合、カテーテルシャフト16の周壁部には、スリット40の内側にフラップ弁42が形成される。スリット40の少なくとも一部は、カテーテルシャフト16の内周面から外周面に向かってフラップ弁42の内方に傾斜している(図8B参照)。
【0049】
カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用すると、図8Bに示すように、フラップ弁42は、カテーテルシャフト16の内方に倒れこむように弾性変形する。これにより、スリット40が開放される。一方、カテーテルシャフト16の内腔16aに正圧が作用すると、フラップ弁42は、カテーテルシャフト16の周壁面(スリット40を形成する面)に当接する。そのため、スリット40は、閉塞状態を維持する。すなわち、スリット40は、カテーテルシャフト16の内腔16aに負圧が作用した場合にのみ開放される。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。本発明に係る留置カテーテルは、上述した末梢静脈留置カテーテル(PIVC)を構成する留置カテーテル12に限定されず、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)を構成してもよい。末梢挿入中心静脈カテーテルでは、カテーテルシャフトの内腔に医療部材としてのガイドワイヤが挿通される。
【0051】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0052】
上記実施形態は、血管(102)内に留置される管状のカテーテルシャフト(16)を備えた留置カテーテル(12)であって、前記カテーテルシャフトには、当該カテーテルシャフトの先端面(15)に開口した先端開口(16b)と、前記先端開口を開閉する開閉部(24)と、が設けられ、前記開閉部は、前記カテーテルシャフトの前記先端面に接触して前記先端開口を閉塞する閉位置と前記カテーテルシャフトの前記先端面から離間して前記先端開口を開放する開位置とに変位可能な弁体(26)と、前記弁体と前記カテーテルシャフトの先端部とを互いに連結する弾性変形可能な連結部(28)と、を有し、前記弁体は、当該弁体に先端方向の圧力が作用した際に、前記連結部を弾性変形させながら前記カテーテルシャフトに対して先端方向に傾動することにより前記閉位置から前記開位置に変位し、前記弁体に先端方向の圧力が作用していない状態で前記連結部の復元力により前記開位置から前記閉位置に復帰する、留置カテーテルを開示している。
【0053】
上記の留置カテーテルにおいて、前記連結部は、前記カテーテルシャフトの前記先端面の一部にのみ設けられてもよい。
【0054】
上記の留置カテーテルにおいて、前記開閉部及び前記カテーテルシャフトは、一体成形品であってもよい。
【0055】
上記の留置カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトの先端周壁部には、開閉可能なスリット(30、40)が形成され、前記スリットは、前記カテーテルシャフトの内腔(16a)に負圧が作用した際に開放してもよい。
【0056】
上記の留置カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトの内周面には、前記スリットを覆うためのカバー部(34)が設けられ、前記カバー部は、前記カテーテルシャフトの前記内腔に負圧が作用した際に前記スリットが前記カテーテルシャフトの前記内腔に露出するように変位してもよい。
【0057】
上記の留置カテーテルにおいて、前記留置カテーテルは、前記カテーテルシャフトの基端部に設けられたカテーテルハブ(18)を備えてもよい。
【0058】
上記実施形態は、上述した留置カテーテルと、前記カテーテルシャフトの内腔に挿通された針体(20)と、前記針体の基端部に設けられた針ハブ(22)と、を備えたカテーテル組立体(10)を開示している。
【符号の説明】
【0059】
10…カテーテル組立体 12…留置カテーテル
16…カテーテルシャフト 18…カテーテルハブ
20…針体 22…針ハブ
24…開閉部 26…弁体
28…連結部 30、40…スリット
34…カバー部 102…血管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8