(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】六角形セグメントの接合構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/08 20060101AFI20230926BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 Z
(21)【出願番号】P 2020038275
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】杉村 晋之介
(72)【発明者】
【氏名】川内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大川 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】浅野 裕輔
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-059397(JP,A)
【文献】特開2007-197958(JP,A)
【文献】特開2004-137874(JP,A)
【文献】特開平07-252998(JP,A)
【文献】特開平05-179897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備える六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する際に、隣接する六角形セグメントの接合部に設けられる六角形セグメントの接合構造であって、
隣接する六角形セグメントの各接合面の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続してシール材が挟み込まれていると共に、隣接する六角形セグメントの各接合面のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って、圧縮された状態又は水分を吸収して膨潤可能な状態でコーキング材が挟み込まれており、且つ隣接する六角形セグメントの各接合面の外周面側の縁部分の間に介在して、圧縮された状態又は膨張変形可能な状態の前記コーキング材によってトンネル内周面側の縁部を押し広げるような反力が作用した際に、これらの反力による作用を吸収する緩衝材が、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれており、
前記コーキング材と前記緩衝材との間の領域において、前記シール材が、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続し
て設けられている六角形セグメントの接合構造。
【請求項2】
前記緩衝材は、各々の六角形セグメントにおいて、前記坑口側接合面及び両側の前記坑口側斜め接合面の前記外周面側の縁部分に予め取り付けられており、これらの六角形セグメントがトンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けられることによって、前記緩衝材は、隣接する六角形セグメントの各接合面の前記外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっている請求項1記載の六角形セグメントの接合構造。
【請求項3】
前記コーキング材は、各々の六角形セグメントにおいて、前記坑口側接合面及び両側の前記坑口側斜め接合面の前記トンネル内周面側の縁部分に予め取り付けられており、これらの六角形セグメントがトンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けられることによって、前記コーキング材は、隣接する六角形セグメントの各接合面のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっている請求項1又は2記載の六角形セグメントの接合構造。
【請求項4】
隣接する六角形セグメントの各接合面の前記トンネル内周面側の縁部分に沿って、切欠き取付け部が形成されており、前記コーキング材は、これらの切欠き取付け部の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっている請求項1~3のいずれか1項記載の六角形セグメントの接合構造。
【請求項5】
前記シール材は、前記コーキング材と前記緩衝材との間の領域において、トンネル内周面側シール材及び外周面側シール材として、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続して2条設けられている請求項1~4のいずれか1項記載の六角形セグメントの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六角形セグメントの接合構造に関し、特に、六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する際に、隣接する六角形セグメントの接合部に設けられる六角形セグメントの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部や平野部において各種のトンネルを構築する方法として、シールド掘進機によるシールド工法が広く採用されている。シールド工法は、シールド掘進機の先端の切羽面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方に、トンネルの軸方向及び周方向に連設してセグメントを順次組み付けることによって、トンネルの内周面を覆う覆工体を形成し、組み付けられた覆工体の前端部に、シールドジャッキを押し付けることにより反力を得ながら、発進立坑から到達立坑に向けて、トンネルを地中に構築してゆく工法である。
【0003】
近年、工事の効率化等を図る観点から、トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、一般に用いられる矩形状の正面形状を備えるセグメントに換えて、六角形状の平面形状を備える六角形セグメントを用いたシールド工法が採用される場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。六角形セグメントは、平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えている(
図1参照)。六角形セグメントは、トンネルの掘進方向後方側に先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側接合面及び切羽側斜め接合面に、トンネルの掘進方向前方側に後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側接合面及び坑口側斜め接合面を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメントにおける、トンネルの掘進方向前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、交互に突出させながら、トンネルの軸方向及び周方向にハニカム状に配置されて順次組み付けられてゆくことになる(例えば、特許文献3、
図4参照)。
【0004】
また、六角形セグメントを用いたシールド工法では、六角形セグメントの交互に突出する等脚台形状部分の切羽側接合面にシールドジャッキを押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキを押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメントを組み付ける作業を行うことができるので(例えば、特許文献3、
図4参照)、矩形状の平面形状を備えるセグメントを用いたシールド工法のように、シールド掘進機を掘進させる工程を一リング毎に中断してセグメントの組み立てる作業を行うことなく、六角形セグメントを組み付けながら、シールド掘進機の掘進を連続して行うことで、効率良くシールド工事を行ってゆくことが可能になる。
【0005】
さらに、六角形セグメントを用いたシールド工法では、隣接する六角形セグメントの間の連結は、切羽側接合面や、坑口側接合面や、切羽側斜め接合面や、坑口側斜め接合面による接合面の間を貫通して取り付けられる、連結ボルトを用いて行なうになっているので(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、矩形状の平面形状を備えるセグメントによる覆工体の内周面に現れるような、連結ボルトの締結作業を行うためのボルトボックス等による凹凸が、六角形セグメントによる覆工体の内周面には形成されないようにすることが可能になる。またこれによって、覆工体の内周面を平滑な状態に保持することができるので、好ましくは内側面に防食層を施した六角形セグメントによる覆工体の内側に、さらに二次覆工を施工する必要がなく、六角形セグメントによる覆工体の内周面をそのままトンネルの内周面として用いて、構築したシールドトンネルを、例えば水を流通させる、下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯水池用のトンネルとして有効に活用することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2596666号公報
【文献】特開平9-273395号公報
【文献】特許第3253870号公報
【文献】特許第4646501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、六角形セグメントを用いて構築したシールドトンネルを、例えば下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯水池用のトンネル等の水を流通させるトンネルとして用いる場合、トンネルの周囲の地盤から地下水がトンネルの内部に侵入するのを防止することに加えて、トンネルの内部を流通する水が、隣接する六角形セグメントの間の接合部を介してトンネルの外部に漏出するのを防止する必要がある。
【0008】
これに対して、好ましくは内側面に防食層を施した、矩形状の正面形状を有する2次覆工一体型のコンクリート製のセグメントを用いて、2次覆工を省略することが可能な例えば下水道用の管渠をシールド工法によって形成する場合に、地下水のトンネル内部への侵入を阻止(止水)することに加えて、トンネル内部を流れる下水などが外部へ漏出するのを阻止できるようにした、シールドセグメント用コーキング材が開発されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
特許文献4のシールドセグメント用コーキング材によれば、隣接するセグメントの接合部において、接合面のトンネル外部側の部分に、シール凹部が設けられていて、水膨張性シール材が挟み込まれていると共に、接合面のトンネル内周面側の縁部に目地部が設けられていて、シールドセグメント用コーキング材が挟み込まれており、シール凹部に挟み込まれた水膨張性シール材によって、トンネルの外部からの地下水の侵入を防止すると共に、目地部に挟み込まれたコーキング材によって、トンネルの内部の水(下水など)が、セグメントの接合部からトンネルの外部に漏出するのを防止できるようになっている。
【0010】
特許文献4のシールドセグメント用のコーキング材を、隣接する六角形セグメントの接合部にも用いることで、トンネルの内部の水が、六角形セグメントの接合部からトンネルの外部に漏出するのを防止できると考えられるが、六角形セグメントの場合、軸方向及び周方向に、複数の当該六角形セグメントが掘進方向に半分づつ位置をずらしてハニカム状に配置されていることで、特にV字状の周方向接合面には、応力の方向が定まり難いことから、周囲の地盤からの圧力によって予期しない偏荷重が負荷され易い状態となっている。また六角形セグメントの場合、接合部において、重ね合わされる一対の接合面のトンネル内周面側の縁部に設けられた目地部に、コーキング材が挟み込まれていると、コーキング材は、圧縮された状態で挟み込まれていたり、膨潤性を備えていたりすることで、トンネル内周面側の縁部を押し広げるような反力を作用させることにより偏荷重を助長させて、接合面の外周面側の縁部に過度の偏荷重を生じさせるおそれがあり、これによって六角形セグメントの接合面の外周面側の縁部を破損等させることが予想される。六角形セグメントの接合面の外周面側の縁部が破損等すると、六角形セグメントの外周面は周囲の地盤によって覆われた状態となっているため修復は困難であり、また周囲の地盤からの地下水をトンネルの内部に侵入させ易くなることから、このような、六角形セグメントの接合部にコーキング材を取り付ける際の技術的課題に着目して、解決策を講じることが必要である。
【0011】
本発明は、トンネルの内部の水が隣接する六角形セグメントの接合部からトンネルの外部に漏出するのを、効果的に防止できると共に、六角形セグメントの接合面の外周面側の縁部に破損等が生じるのを、効果的に回避することのできる六角形セグメントの接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、平行に配置された切羽側接合面及び坑口側接合面と、これらの接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備える六角形セグメントを、トンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体を形成する際に、隣接する六角形セグメントの接合部に設けられる六角形セグメントの接合構造であって、隣接する六角形セグメントの各接合面の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続してシール材が挟み込まれていると共に、隣接する六角形セグメントの各接合面のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って、圧縮された状態又は水分を吸収して膨潤可能な状態でコーキング材が挟み込まれており、且つ隣接する六角形セグメントの各接合面の外周面側の縁部分の間に介在して、圧縮された状態又は膨張変形可能な状態の前記コーキング材によってトンネル内周面側の縁部を押し広げるような反力が作用した際に、これらの反力による作用を吸収する緩衝材が、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれており、前記コーキング材と前記緩衝材との間の領域において、前記シール材が、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続して設けられている六角形セグメントの接合構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明の六角形セグメントの接合構造は、前記緩衝材が、各々の六角形セグメントにおいて、前記坑口側接合面及び両側の前記坑口側斜め接合面の前記外周面側の縁部分に予め取り付けられており、これらの六角形セグメントがトンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けられることによって、前記緩衝材は、隣接する六角形セグメントの各接合面の前記外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の六角形セグメントの接合構造は、前記コーキング材が、各々の六角形セグメントにおいて、前記坑口側接合面及び両側の前記坑口側斜め接合面の前記トンネル内周面側の縁部分に予め取り付けられており、これらの六角形セグメントがトンネルの軸方向及び周方向に連設して組み付けられることによって、前記コーキング材は、隣接する六角形セグメントの各接合面のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の六角形セグメントの接合構造は、隣接する六角形セグメントの各接合面の前記トンネル内周面側の縁部分に沿って、切欠き取付け部が形成されており、前記コーキング材は、これらの切欠き取付け部の間に介在して、各々の六角形セグメントの全周に亘って挟み込まれるようになっていることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の六角形セグメントの接合構造は、前記シール材が、前記コーキング材と前記緩衝材との間の領域において、トンネル内周面側シール材及び外周面側シール材として、各々の六角形セグメントの全周に亘って連続して2条設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の六角形セグメントの接合構造によれば、トンネルの内部の水が隣接する六角形セグメントの接合部からトンネルの外部に漏出するのを、効果的に防止できると共に、六角形セグメントの接合面の外周面側の縁部に破損等が生じるのを、効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造を介して接合された、複数の六角形セグメントによる覆工体を説明する部分破断斜視図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造の構成を説明する、(a)は
図1のA-A又はB-Bに沿った断面図、(b)は(a)のC部拡大図、(c)は(a)のD部拡大図である。
【
図3】六角形セグメントの構成を説明する、(a)は正面図、(b)は(a)をE方向から見た側面図、(c)は(a)をF方向から見た側面図、(d)は(a)をG方向から見た周方向端面図である。
【
図4】(a)~(c)は、複数の六角形セグメントを組み付けて覆工体を形成する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの接合構造10(
図2(a)~(c)参照)は、例えば
図1に示すように、複数の六角形セグメント12をトンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることによって、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を形成する際に、各隣接する六角形セグメント12を接合するための接合構造として用いられる。本実施形態の六角形セグメントの接合構造10は、トンネルの内部の水が隣接する六角形セグメント12の接合部50からトンネルの外部に漏出するのを防止できるようにすると共に、六角形セグメント12の接合面13,14,15,16の外周面側の縁部に、破損等が生じるのを回避できるようにする機能を備えている。
【0020】
そして、本実施形態の六角形セグメントの接合構造10は、
図1~
図3に示すように、平行に配置された切羽側接合面13及び坑口側接合面14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える六角形セグメント12(
図3(a)~(d)参照)を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに連設して組み付けることによってシールドトンネルの覆工体11を形成する際に(
図1参照)、隣接する六角形セグメント12の接合部50に設けられる接合構造であって、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続してシール材18が挟み込まれていると共に(
図2(a)~(c)参照)、隣接する六角形セグメントの各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘ってコーキング材19が挟み込まれており(
図2(a)、(b)参照)、且つ隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘って緩衝材20が挟み込まれている(
図2(a)、(c)参照)。
【0021】
また、本実施形態では、
図3(a)~(d)に示すように、緩衝材20は、各々の六角形セグメント12において、好ましくは坑口側接合面14及び両側の坑口側斜め接合面16の外周面側の縁部分に予め取り付けられている。これらの六角形セグメント12がトンネルの軸方向X及び周方向Yに連設して組み付けられることによって(
図1参照)、緩衝材20は、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの12の全周に亘って挟み込まれるようになっている。
【0022】
コーキング材19もまた、
図3(a)~(d)に示すように、各々の六角形セグメント12において、好ましくは坑口側接合面14及び両側の坑口側斜め接合面16のトンネル内周面側の縁部分に予め取り付けられている。これらの六角形セグメント12がトンネルの軸方向X及び周方向Yに連設して組み付けられることによって(
図1参照)、コーキング材19は、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの12の全周に亘って挟み込まれるようになっている。
【0023】
本実施形態では、
図1に示す六角形セグメント12による覆工体11は、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルとして、例えば内径が6400mm程度の大きさのトンネルを形成するものとなっている。また覆工体11は、後述する六角形セグメント12が、好ましくは内側面に防食層を施した、二次覆工一体型のコンクリート製のセグメントとなっていることで、内周面を平滑な状態に保持して、内周面をそのまま、雨水を流通させるトンネルの内周面として用いることができるようになっている。
【0024】
覆工体11を形成する各々の六角形セグメント12は、
図3(a)~(d)に示すように、平行に配置された切羽側接合面13及び坑口側接合面14と、これらの接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える、六角形の平面形状を有する鉄筋コンクリート製のセグメントとなっている(
図3(a)参照)。六角形セグメント12は、例えば600mm程度の厚さを有すると共に、切羽側接合面13及び坑口側接合面14に沿った方向の断面が、覆工体11の例えば6400mmの内径に対応する曲率半径で、円弧状に湾曲する形状を備えている(
図3(b)、(c)参照)。六角形セグメント12は、切羽側接合面13及び坑口側接合面14の間の幅が2000mm程度、一対のV字状周方向接合面17の先端部の間の長さが4000mm程度の大さとなるように形成されている。各々のV字状周方向接合面17における、切羽側斜め接合面15と坑口側斜め接合面16との間の角度θは、120°となっている(
図3(a)参照)。これによって、複数の六角形セグメント12を、先行する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び切羽側接合面13に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16及び坑口側接合面14を、順次ビッタリと重ね合わせた状態で、軸方向及び周方向にハニカム状に配置してゆくことができるようになっている(
図1参照)。
【0025】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、
図2及び
図3(a)~(d)に示すように、外周面から60mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の外側シール溝21aが、全周に亘って連続して形成されており、内周面から60mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の内側シール溝21bが、全周に亘って連続して形成されている。外側シール溝21aには、好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材18が、外周面側シール材18aとして、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられており、内側シール溝21bには、同様に好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材18が、内周面側シール材18bとして、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられている。すなわち、本実施形態では、後述するコーキング材19と緩衝材20との間の領域において、シール材18が、トンネル内周面側シール材18b及び外周面側シール材18aとして、各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続して2条設けられている。
【0026】
さらに、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、トンネル内周面側の縁部分に沿って、30mm程度の幅の切欠き取付け部22が、全周に亘って連続して形成されている。坑口側接合面14及び一対の坑口側斜め接合面16の3面の接合面14,16に形成された部分の切欠き取付け部22には、コーキング材19として、公知の帯状コーキング材が、例えば接着剤を介して連続して取り付けられている。帯状コーキング材としては、例えば特許第4646501号公報に記載のシールドセグメント用コーキング材と、同様の構成を備えるものを使用することができる。より具体的には、好ましくは商品名「シーコーク」(積水化学工業株式会社製)を用いることができる。
【0027】
このような帯状コーキング材によるコーキング材19は、複数の六角形セグメント12が組み付けられて覆工体11が形成された際に、隣接する六角形セグメント12の接合部50において対向する切欠き取付け部22による目地部に、圧縮された状態で挟み込まれたり、水分を吸収して膨潤可能な状態で挟み込まれたりすることで、当該目地部に隙間なく充填されて、トンネルの内部の水が、接合部50からトンネルの外部に漏出するのを、強固に防止することが可能になる(
図2(a)、(b)参照)。
【0028】
また、コーキング材19は、坑口側接合面14及び一対の坑口側斜め接合面16の3面の接合面14,16に形成された部分の切欠き取付け部22に取り付けられており、切羽側接合面13及び一対の切羽側斜め接合面15の切欠き取付け部22には取り付けられていないので、当該六角形セグメント12が組み付けられた後に、これの切羽側に後続する次の六角形セグメント12が組み付けられるまでの間、コーキング材19が露出した状態となって、例えば掘進作業中に損傷したり破損したりするのを、回避することが可能になる。
【0029】
コーキング材19が取り付けられていない切羽側接合面13及び一対の切羽側斜め接合面15の切欠き取付け部22には、切羽側に後続する次の六角形セグメント12が組み付けられる際に、当該次の六角形セグメント12の坑口側接合面14や坑口側斜め接合面16の切欠き取付け部22に取り付けられたコーキング材19が挟み込まれることで、コーキング材19は、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの12の全周に亘って挟み込まれることになる。
【0030】
さらにまた、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の坑口側接合面14及び一対の坑口側斜め接合面16には、緩衝材20として、公知の材料からなる例えば20mm程度の幅の帯状緩衝材が、外周面側の縁部に沿って、例えば接着剤を介して連続して取り付けられている。緩衝材20は、例えば緩衝性、柔軟性、軽量性を有する、好ましくは発泡ポリエチレンシートを用いて形成することができる。より具体的には、好ましくは商品名「ミラマット(登録商標)」(株式会社JSP製)を、所定の幅及び長さとなるように裁断して用いることができる。
【0031】
このような帯状緩衝材による緩衝材20は、複数の六角形セグメント12が組み付けられて覆工体11が形成された際に、隣接する六角形セグメント12の接合部50において、対向する各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分に挟み込まれることになる(
図2(a)、(c)参照)。緩衝材20は、坑口側接合面14及び一対の坑口側斜め接合面16の外周面側の縁部分に取り付けられており、切羽側接合面13及び一対の切羽側斜め接合面15には取り付けられていないので、当該六角形セグメント12が組み付けられた後に、これの切羽側に後続する次の六角形セグメント12が組み付けられるまでの間、緩衝材20が露出した状態となって、例えば掘進作業中に損傷したり破損したりすることのなるのを、回避することが可能になる。緩衝材20が取り付けられていない切羽側接合面13及び一対の切羽側斜め接合面15には、後続する次の六角形セグメント12が組み付けられる際に、当該次の六角形セグメント12の坑口側接合面14や坑口側斜め接合面16に取り付けられた緩衝材20が挟み込まれることで、緩衝材20は、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメントの12の全周に亘って挟み込まれることになる。
【0032】
本実施形態では、さらに、各々の六角形セグメント12には、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側接合面13の両側の側部領域から各々坑口側斜め接合面16の中央部に向けて、切羽側斜め接合面15と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔23が設けられている。各々の斜めボルト挿通孔23の切羽側接合面13側の端部には、連結ボルト部材24(
図4(c)参照)の頭部を締着させる締着凹部23aが、開口面を切羽側接合面13に開口させて形成されている。切羽側接合面13における各々の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部13aが設けられている。これらの位置決め用の凹部13aには、トンネルの掘進方向Xに後続して設置される六角形セグメント12の坑口側接合面14に設けられた一対の位置決め用の凸部14aが、嵌め込まれるようにして装着される。これによって、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側接合面14の全体が、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側接合面13の全体に、精度良く重ね合わされるように、トンネルの掘進方向Xに隣接する六角形セグメント12を、位置決めできるようになっている。すなわち、各々の六角形セグメント12の坑口側接合面14には、これの両側の側部領域に、位置決め用の凸部14aが各々設けられている。
【0033】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の一対の切羽側斜め接合面15には、これらの中央部に、雌ネジ孔15aが、例えば雌ネジアンカーを埋込むことによって設けられている。雌ネジ孔15aは、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16が重ね合わされた際に、後続する六角形セグメント12に設けられたボルト挿通孔23の、締着凹部23aとは反対側の端部と直線状に連通するようになっている。これによって、連通したボルト挿通孔23及び雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、ハニカム状に配置された各々の隣接する六角形セグメント12を、強固に一体として連結することが可能になる(
図4(c)参照)。
【0034】
さらに、本実施形態では、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、各々の六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bが各々設けられている。これらの位置決め用のガイド凸部25a及びガイド凹部25bは、先行して設置された六角形セグメント12に後続して、次の六角形セグメント12を設置する際に、ガイド凸部25aやガイド凹部25bにガイド凹部25bやガイド凸部25aを装着方向にスライド可能に係止させることで、先行して設置された六角形セグメント12による、周方向Yに間隔をおいて掘進方向X前方側に突出する各一対の等脚台形状部分の間の、各々の間隔部分に(
図4(a)参照)、後続する六角形セグメント12が配置されるように案内して、精度良く位置決めできるようにすると共に、組み付けられた六角形セグメント12に位置ずれが生じるのを、防止できるようにする機能を備えている。
【0035】
さらにまた、本実施形態では、各々の六角形セグメント12には、これらの六角形セグメント12を組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔26が、例えば内側面の中央部分に設けられていると共に、六角形セグメント12を吊り上げ可能とする吊上げ用インサート金具27が、例えば坑口側接合面14の両側の側部領域に配置されて、一対設けられている。
【0036】
上述の構成を備える複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設して、ハニカム状に組み付けることによって、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を形成するには、例えば
図4(a)~(c)に示すように、トンネルの掘進方向Xの後方側に先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、トンネルの掘進方向Xの前方側に後続して組み付けられる六角形セグメント12の坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメント12における、トンネルの掘進方向Xの前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、交互に突出させながら、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置して順次組み付けてゆく。
【0037】
また、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに順次組み付けてゆく際に、先行して組み付けられた六角形セグメント12による、交互に突出する、当該六角形セグメント12を掘進方向Xに二等分割した形状の等脚台形状部分における先端の切羽側接合面13に、シールドジャッキ60を押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ60を押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメント12を組み付ける作業を行うようになっている。
【0038】
すなわち、切羽側接合面13にシールドジャッキ60を押し当てた隣接する等脚台形状部分の間の領域において、
図4(a)に示すように、当該間の領域のシールドジャッキ60を収縮した状態として、当該間の領域の等脚台形状の間隔部分に、後続して組み付けられる六角形セグメント12の後側半分の等脚台形状部分を差し込むようにして、これの坑口側接合面14及び坑口側斜め接合面16を、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側接合面13及び切羽側斜め接合面15に、各々密着させる(
図4(b)参照)。しかる後に、隣接する等脚台形状部分の間の領域に配置された、例えば3本のシールドジャッキ60のうち、中央の1本のシールドジャッキ60を伸長させて、後続する六角形セグメント12を先行して組み付けられた六角形セグメント12に押し付けた状態で、
図4(c)に示すように、連通した後続する六角形セグメント12のボルト挿通孔23及び先行して設置された六角形セグメント12の雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、これらの六角形セグメント12を一体として連結する。
【0039】
これらの作業を、周方向に複数形成された、隣接する突出した等脚台形状部分の間の各々の領域において行うと共に、このようにして新たに設置された六角形セグメント12を、先行して組み付けられた既存の六角形セグメント12として、これらの切羽側接合面13にシールドジャッキ26を押し当てて反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ26を押し当てたこれらの六角形セグメント12の間の領域において、さらに後続する六角形セグメントを組み付ける作業を繰り返してゆくことによって、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置された複数の六角形セグメント12による、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を、容易に形成することが可能になる。
【0040】
そして、上述の構成を備える本実施形態の六角形セグメントの接合構造10によれば、トンネルの内部の水が隣接する六角形セグメント12の接合部50からトンネルの外部に漏出するのを、効果的に防止できると共に、六角形セグメント12の切羽側接合面13、坑口側接合面14、切羽側斜め接合面15、及び坑口側斜め接合面16による各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部に破損等が生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0041】
すなわち、本実施形態の六角形セグメントの接合構造10によれば、隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続して、好ましくは2条のシール材18が挟み込まれていると共に(
図2(a)~(c)参照)、隣接する六角形セグメントの各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘ってコーキング材19が挟み込まれており(
図2(a)、(b)参照)、且つ隣接する六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分の間に介在して、各々の六角形セグメント12の全周に亘って緩衝材20が挟み込まれている(
図2(a)、(c)参照)。
【0042】
これらによって、本実施形態によれば、トンネルの周囲の地盤から地下水がトンネルの内部に侵入しようとするのを、各接合面13,14,15,16の間に介在して各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続して挟み込まれたシール材18によって、効果的に阻止することが可能になると共に、トンネルの内部を流通する水がトンネルの外部に漏出しようとするのを、各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部分の間に介在して各々の六角形セグメント12の全周に亘って挟み込まれたコーキング材19によって、効果的に阻止することが可能になり、且つ特にV字状の周方向接合面17において、各接合面13,14,15,16のトンネル内周面側の縁部に挟み込まれた圧縮された状態のコーキング材や膨張変形可能な状態のコーキング材によって、トンネル内周面側の縁部を押し広げるような反力が作用しても、これらの反力による作用を、各接合面13,14,15,16の外周面側の縁部分に挟み込まれた緩衝材20によって吸収することで、当該外周面側の縁部分に過度の偏荷重が負荷されないようにして、六角形セグメント12の各接合面13,14,15,16における外周面側の縁部に破損等が生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、シール材は、コーキング材と緩衝材との間の領域において、2条設けられている必要は必ずしもなく、1条のみ設けられていても良い。緩衝材は、発泡ポリエチレンシートを用いて形成されたものである必要は必ずしも無く、緩衝性を備えるその他の種々のシート材料等を用いて形成することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 六角形セグメントの接合構造
11 覆工体
12 六角形セグメント
13 切羽側接合面
13a 位置決め用の凹部
14 坑口側接合面
14a 位置決め用の凸部
15 切羽側斜め接合面
15a 雌ネジ孔
16 坑口側斜め接合面
17 V字状周方向接合面
18 シール材
18a 外周面側シール材
18b 内周面側シール材
19 コーキング材
20 緩衝材
21a 外側シール溝
21b 内側シール溝
22 切欠き取付け部
23 斜めボルト挿通孔
23a 締着凹部
24 連結ボルト部材
25a 位置決め用のガイド凸部
25b 位置決め用のガイド凹部
26 把持孔
27 吊上げ用インサート金具
50 接合部
60 シールドジャッキ
X トンネルの掘進方向(軸方向)
Y トンネルの周方向