(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】推力変換機構
(51)【国際特許分類】
F16H 25/14 20060101AFI20230926BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20230926BHJP
F16H 25/02 20060101ALI20230926BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230926BHJP
A45C 13/28 20060101ALI20230926BHJP
A45C 13/26 20060101ALI20230926BHJP
A45C 13/10 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
F16H25/14
F16H25/20 Z
F16H25/02
G06F1/16 312F
A45C13/28
A45C13/26 P
A45C13/10 Z
(21)【出願番号】P 2020048301
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 大祐
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-19711(JP,U)
【文献】国際公開第2012/120670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/14
F16H 25/20
F16H 25/02
G06F 1/16
A45C 13/28
A45C 13/26
A45C 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆向きに形成された螺旋状の被係合部を一対備えるシャフトと、
一対の前記被係合部に夫々係合する係合部を有する一対の直動部材と、
前記一対の直動部材を前記シャフトに沿って移動自在に支持すると共に、前記シャフトに対して回転自在に軸支される筐体と、
前記一対の直動部材の一方に軸支され、前記一対の直動部材の他方に係合して、前記筐体に対する前記シャフトの相対回転によって揺動する揺動部材と、
前記揺動部材に係合して、前記揺動部材の揺動によって前記シャフトと交差する方向に移動する移動部材とを備えることを特徴とする推力変換機構。
【請求項2】
前記シャフトを2本平行に保持する保持部材を備え、
前記シャフトの夫々に回転自在に軸支される一対の筐体が、前記シャフトの回りに少なくとも180°回転することを特徴とする請求項1記載の推力変換機構。
【請求項3】
前記一対の筐体が平面状に位置する際に、一対の前記移動部材に夫々結合される平板部材が隙間無く近接することを特徴とする請求項2記載の推力変換機構。
【請求項4】
前記平板部材がフラットパネルディスプレイであることを特徴とする請求項3記載の推力変換機構。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の推力変換機構を備えるヒンジ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のヒンジ装置を備えた携帯情報端末。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の推力変換機構を備える鞄であって、
前記シャフトが鞄本体に軸支された持ち手に固定されていることを特徴とする鞄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力変換機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外周部にねじを形成したねじ軸と、このねじ軸に螺合するナットとにより、回転運動を直線運動に変換する運動方向変換機構が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような機構は、ねじ軸の回転が所定の角度範囲に制限されている場合、ナットの移動量を増加させるためには、ねじのリードを大きく設定する必要がある。しかしながら、ねじのリードを大きくすると、ナットを直進させる際の負荷が増加することになるので、ねじ軸の回転に高い駆動力が必要になる。また、前述した従来技術によると、ナットの移動方向は、ねじ軸に沿った直線方向に限られることになり、機構の用途が限定されてしまう問題がある。
【0005】
一方、軸の回りに筐体を回転させる軸支機構は、ヒンジ機構などとして一般に採用されている。特に、ノード型のPCや携帯情報端末などは、ディスプレイを搭載した筐体と操作部を備える筐体を折り畳む構成が一般に採用されている。また、ヒンジ機構で結合された2つの筐体の両方にディスプレイを搭載させ、2つの筐体を広げた状態にして広い画面のディスプレイを得るものも開発されている。
【0006】
このような軸支機構は、2つの筐体の端部を軸支して、一方の筐体に対して他方の筐体を180°或いは360°回転させようとすると、筐体の厚みによって端部が互いに干渉して、回転角度が制限されてしまう問題が生じる。これを避けるために、軸支部を筐体の端部から離した位置に設けると、2つの筐体を平面状に開いた状態にしたときに、筐体の端部間に隙間が空いてしまい、2つの筐体にそれぞれ設けたディスプレイを繋げて広い画面にする場合には、画面の連続性が欠如することになる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、軸の回転を直線運動に変換するに際して、軸回転の駆動力を高めること無く、制限された軸の回転に対して直線移動量を増加できるようにすること、軸支機構を構成するに際して、2つの筐体間の端部の干渉を無くしながら、2つの筐体を広げた場合に隙間ができないようにすること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
互いに逆向きに形成された螺旋状の被係合部を一対備えるシャフトと、一対の前記被係合部に夫々係合する係合部を有する一対の直動部材と、前記一対の直動部材を前記シャフトに沿って移動自在に支持すると共に、前記シャフトに対して回転自在に軸支される筐体と、前記一対の直動部材の一方に軸支され、前記一対の直動部材の他方に係合して、前記筐体に対する前記シャフトの相対回転によって揺動する揺動部材と、前記揺動部材に係合して、前記揺動部材の揺動によって前記シャフトと交差する方向に移動する移動部材とを備えることを特徴とする推力変換機構。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る推力変換機構の分解斜視図。
【
図3】ヒンジ装置を示す斜視図(内側折り畳み状態)。
【
図4】ヒンジ装置を示す斜視図(外側折り畳み状態)。
【
図8】フラットパネルディスプレイを備えたヒンジ装置((a)が展開状態、(b)が内側折り畳み状態、(c)が外側折り畳み状態)の説明図。
【
図9】持ち手を備えたヒンジ装置(鞄)の要部拡大図。
【
図10】持ち手を備えたヒンジ装置(鞄)の動作説明図((a)が推力変換機構の動作状態、(b)が持ち手の動作状態)。
【
図11】持ち手を備えたヒンジ装置(鞄)の動作説明図((a)が推力変換機構の動作状態、(b)が持ち手の動作状態)。
【
図12】持ち手を備えたヒンジ装置(鞄)の動作説明図((a)が推力変換機構の動作状態、(b)が持ち手の動作状態)。
【
図13】推力変換機構を備えるヒンジ装置の他の実施形態を示す説明図(筐体角度90°;(a)が側面図、(b)が正面図)。
【
図14】
図13に示した実施形態の筐体角度を180°にした説明図((a)が側面図、(b)が正面図)。
【
図15】
図13に示した実施形態の筐体角度を270°にした説明図((a)が側面図、(b)が正面図)。
【
図16】
図13に示した状態における揺動部材の状態を示した説明図。
【
図17】
図14に示した状態における揺動部材の状態を示した説明図。
【
図18】
図15に示した状態における揺動部材の状態を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1に示すように、推力変換機構1は、シャフト2(2R,2L)、直動部材3(3R,3L)、筐体10、揺動部材4、移動部材5を少なくとも備えている。
【0012】
シャフト2は、ここでは、分割シャフト2R,2Lを直線的に対向配備しているが、これらを繋げて1本のシャフト2にしてもよい。シャフト2には、螺旋方向が互いに逆向きに形成された、螺旋状の被係合部2a,2bが形成されている。被係合部2a,2bは、雄ねじ又は雌ねじによって形成されていてもよいし、図示のような螺旋状のカム溝或いはカム突起によって形成されていてもよい。シャフト2は、図示の例では、保持部材11によって一端側が保持されている。
【0013】
直動部材3は、左右一対の直動部材3R,3Lを備えており、直動部材3Rは、被係合部2aに係合する係合部3aを備え、直動部材3Lは、被係合部2bに係合する係合部3bを備えている。係合部3a,3bは、被係合部2a,2bがねじの場合には、ナットであり、被係合部2a,2bがカム溝の場合には、それに係合する係合突起などになる。直動部材3(3R,3L)は、シャフト2が相対的に回転することで、シャフト2に沿って直線的に移動する。
【0014】
揺動部材4は、一方の直動部材3Lに設けた軸突起3cに軸支される軸孔4aを有しており、また、他方の直動部材3Rに設けた係合突起3dが係合する係合部4bを備えており、一対の直動部材3(3R,3L)がシャフト2に沿って近接又は離間するように移動することで、軸突起3cの回りに揺動する。
【0015】
移動部材5は、揺動部材4に設けた係合突起4m,4nに係合する係合部5a,5bを有している。図示の例では、揺動部材4が軸突起3cの回りに左回転で揺動すると、係合突起4mが係合部5aに係合し、揺動部材4が軸突起3cの回りに右回転で揺動すると、係合突起4nが係合部5bに係合する。
【0016】
係合突起4m,4nと係合部5a,5bの係合によって、揺動部材4が軸突起3c回りに揺動すると、移動部材5は、シャフト2と交差する方向に移動する。この際、図示の例では、揺動部材4において、軸孔4aから係合突起4mまでの距離と、軸孔4aから係合突起4nまでの距離が異なっており(軸孔4aから係合突起4nまでの距離が軸孔4aから係合突起4mまでの距離より長い)、移動部材5において、係合部5a,5bに段差が設けられているので、揺動部材4が左回転で揺動する場合に比べて、揺動部材4が右回転で揺動する場合の方が、移動部材5の移動量が大きくなっている。
【0017】
筐体10は、シャフト2に軸支されていている。図示の例では、筐体10は、分割シャフト2Rに軸支される軸受部10aを有すると共に、分割シャフト2Lに軸支される軸受部10bを有しており、分割シャフト2R,2Lの先端突起2cが軸支部10cに支持されている。
【0018】
筐体10は、直動部材3(3R,3L)をシャフト2に沿って移動自在に支持しており、また、直動部材3(3R,3L)に支持される揺動部材4を間接的に支持している。図示の例では、直動部材3Lには、シャフト2に沿った長孔3eが設けられており、筐体10に設けた支持突起10dが長孔3eに挿入されている。
【0019】
筐体10は、移動部材5をシャフト2と交差する方向に移動自在に支持している。移動部材5には、移動方向に沿った長孔のガイド孔5cが設けられており、このガイド孔5cに筐体10に設けたガイド突起10eが挿入されている。
【0020】
移動部材5には、掛け部5dが設けられており、この掛け部5dに一端が掛けられたバネ6の他端が、筐体10の掛け部10fに掛けられている。これにより、移動部材5は、筐体10に支持された状態で、シャフト2に向けてバネ付勢されている。このバネ付勢で、移動部材5の係合部5a,5bは、常時揺動部材の係合突起4m,4nの両方又は一方に係合した状態になっている。また、移動部材5には、他の部品と結合するための結合突起5eが設けられている。この結合突起5eは、必要に応じて設けられる仕切り板7の開口7aを貫通するように配備されている。
【0021】
このような推力変換機構1は、2本のシャフト2を保持部材11に平行に保持させることで、
図2~
図4に示すヒンジ装置20を得ることができる。ヒンジ装置20は、夫々が被係合部2a,2bを有する2本のシャフト2が、保持部材11に端部が保持された状態で固定されており、固定された2本のシャフト2の夫々に筐体10(10A,10B)が軸支されている。
【0022】
ヒンジ装置20は、一対の筐体10(10A,10B)が、
図2に示すように、平面状に位置する展開状態と、平面状に位置する状態から矢印T1方向に回転させた内側折り畳み状態(
図3参照)と、平面状に位置する状態から矢印T2方向に回転させた外側折り畳み状態(
図4参照)に変更することができる。
【0023】
このようなヒンジ装置20において、シャフト2に沿って直動部材3(3R,3L)を移動させる推力は、保持部材11に固定されたシャフト2に対する筐体10(10A,10B)の回転によって生じる。すなわち、ヒンジ装置20における筐体10(10A,10B)の折り畳み・展開動作の回転力が変換されて、直動部材3(3R,3L)の直動推力になる。
【0024】
この際、一対の直動部材3(3R,3L)は、
図2に示した展開状態で、中立位置になり、
図3に示した内側折り畳み状態で、互いに最も近接した状態になり、
図4に示した外側折り畳み状態で、互いに最も離間した状態になる。ここで、シャフト2に対する直動部材3(3R,3L)の相対的な回転は、
図3に示した内側折り畳み状態から、
図4に示した外側折り畳み状態に至る360°の回転に制限されてしまうが、一対の被係合部2a,2bに係合した直動部材3の係合部3a,3bは、それぞれが単独で移動する場合と比較して、2倍の相対移動量になっている。
【0025】
そして、直動部材3(3R,3L)のシャフト2に沿った移動を、揺動部材4の揺動に変換し、更に揺動部材4の揺動を移動部材5におけるシャフト2と交差する方向の移動に変換しているので、制限されたシャフト2の回転に対して、大きな移動量を確保しながら、移動方向をシャフト2に沿った方向とは異なる方向に変換することができる。これにより、ヒンジ装置20の用途を拡張することができる。
【0026】
図5~
図7は、前述したヒンジ装置20を携帯情報端末に用いる場合の動作例を示している。この例では、ヒンジ装置20によって筐体10(10A,10B)をシャフト2に対して回転させる折り畳み操作を行う際に、移動部材5に結合した平板部材であるフラットパネルディスプレイ(以下、単にディスプレイ)FPをシャフト2と交差する方向に移動させる。
【0027】
図5に示す展開状態では、筐体10A,10Bは平面状に位置し、移動部材5に結合したディスプレイFPは、接合部Sにて対向する端部が隙間無く互いに突き合った状態になっている。この際のヒンジ装置20の状態は、直動部材3(3R,3L)がシャフト2に対して中立位置にあり、揺動部材4の係合突起4m,4nが共に移動部材5の係合部5a,5bに係合していて、移動部材5は、最もシャフト2に近い状態になっている。
【0028】
これに対して、
図6に示す内側折り畳み状態では、ヒンジ装置20の状態は、直動部材3(3R,3L)がシャフト2に沿って最も近接した状態になり、揺動部材4は軸突起3cの回りに右回転して、揺動部材4の係合突起4mが移動部材5の係合部5bを押し上げることで、移動部材5は、シャフト2から離間した状態に移動する。これによって、移動部材5に結合しているディスプレイFPは、その端部が接合部Sから離間した状態になる。
【0029】
また、
図7に示す外側折り畳み状態では、ヒンジ装置20の状態は、直動部材3(3R,3L)がシャフト2に沿って最も離間した状態になり、揺動部材4は軸突起3cの回りに左回転して、揺動部材4の係合突起4nが移動部材5の係合部5aを押し上げることで、移動部材5は、シャフト2から離間した状態に移動する。これによって、移動部材5に結合しているディスプレイFPは、その端部が接合部Sから離間した状態になるが、
図6に示す状態よりもディスプレイFPの端部は、接合部Sに近くなる。
【0030】
このようなヒンジ装置20によると、筐体10(10A,10B)の展開状態では、
図8(a)に示すように、一対のディスプレイFPの端部が隙間無く突き合わされた状態になる。また、筐体10(10A,10B)の内側折り畳み状態では、
図8(b)に示すように、一対のディスプレイFPは、保持部材11の内側に収納された状態になる。そして、筐体10(10A,10B)の外側折り畳み状態では、
図8(c)に示すように、一対のディスプレイFPは保持部材11を覆うが保持部材11からは突出しない位置に配置された状態になる。
【0031】
また、ヒンジ装置20は、それぞれの筐体10A,10Bを軸支するシャフト2を離間して配備しているので、一対の筐体10(10A,10B)を展開状態・折り畳み状態に回転するに際して、筐体10(10A,10B)の端部が互いに干渉すること無く、筐体10(10A,10B)をシャフト2回りに180°回転させることができる。
【0032】
また、ヒンジ装置20には、筐体10(10A,10B)と移動部材5にそれぞれマグネットMが取り付けられている。両者に取り付けられたマグネットMは、筐体10(10A,10B)で近接し、筐体10(10A,10B)の折り畳み状態で離間する位置にある。両者に取り付けられたマグネットMが互いに吸引する場合には、吸引力で筐体10(10A,10B)の展開状態が保持され、両者の取り付けられたマグネットMが反発する場合には、折り畳み状態が反発力で保持されることになる。
【0033】
図9~
図12は、推力変換機構1を鞄の持ち手Hによって動作させる例を示している。この鞄は、鞄本体Kに設けたヒンジ部Jに持ち手Hを回転自在に設けており、持ち手Hの回転によって推力変換機構1のシャフト2を回転させる。
【0034】
このような鞄は、持ち手Hを手で持つ際には、
図10(b)に示すように、持ち手Hが90°立った状態になり、持ち手Hから手を離した場合には、
図11(b)又は
図12(b)に示すように、持ち手Hが0°又は180°に倒れた状態になる。この際、持ち手Hが鞄本体Hに対して0°から180°まで回転すると、鞄本体Hに固定されている筐体10に対して、シャフト2が0°から180°まで相対的に回転する。
【0035】
この際、推力変換機構1は、
図9に示すように、前述した構成を備えており、持ち手Hが90°立った状態で、
図10(a)に示すように、直動部材3(3R,3L)が中立位置になって、移動部材5がシャフト2に最も近接した状態に移動し、持ち手Hが0°又は180°倒れた状態で、
図11(a)又は
図12(a)に示すように、直動部材3(3R,3L)が最も離間するか又は最も近接した状態になって、移動部材5がシャフト2から最も離れた状態に移動する。
図9~
図12に示した例では、揺動部材4の係合突起4m,4nは、軸孔4aから等距離に設けられている。
【0036】
このような持ち手Hを備えた鞄は、推力変換機構1における移動部材5の移動に連動して、鞄のロック機構を作動させることなどが可能になる。例えば、
図9に示すように、持ち手Hが90°立った状態になっている場合には、ロック解除レバーPの進入が、移動部材5に設けた突起5Pによって阻止されており、持ち手Hが0°又は180°倒れた状態になっている場合には、移動部材5に設けた突起5Pが移動することで、ロック解除レバーPの進入が許容されるようになっている。
【0037】
これによると、持ち手Hが90°立った状態、すなわち持ち手Hが持たれている状態では、意図しないロック解除レバーPの進入で、ロックが解除されて鞄が開いてしまう不具合を排除することできる。また、持ち手Hが0°又は180°倒れた状態、すなわち持ち手Hから手が離れた状態では、ロック解除レバーPの進入を別の操作を行うことなく許容することができるので、速やかに鞄を開放することが可能になる。
【0038】
なお、図示の例では、推力変換機構1において、筐体10と移動部材5にそれぞれマグネットMを設けており、マグネットM同士の反発力で、持ち手Hから手を離したときには、持ち手Hが0°又は180°倒れた状態になるようにしている。これによると、持ち手Hから手を離しているにも拘わらず、持ち手Hが立ったままになって、ロック解除レバーPの進入が許容されないという状況を排除できる。
【0039】
上述した2つの実施の形態 では、「シャフト2と交差する方向」は、シャフト2が伸びる方向と直交する方向が図示されていたが、他の方向であってもよい。たとえば、他の実施の形態の「シャフト2と交差する方向」は、シャフト2が伸びる方向に対して90°以外の傾きをもって交差してもよい。
【0040】
図13~
図18は、他の実施形態に係る推力変換機構1Aとそれを備えるヒンジ装置21を示している。推力変換機構1Aは、前述した例と同様に、シャフト2(2R,2L)、直動部材3(3R,3L)、筐体10、揺動部材4、移動部材5を少なくとも備えている。
【0041】
筐体10は、軸受部10a,10bでシャフト2を回転自在に支持しており、軸支部10cでシャフト2R,2Lの先端部を支持している。また、筐体10は、ヒンジ枠30にヒンジ結合されており、ヒンジ枠30に対して、
図13(a)に示すように、90°の筐体角度、
図14(a)に示すように、180°の筐体角度、
図15(a)に示すように、270°の筐体角度に回転自在になっている。
【0042】
ヒンジ枠30には、筐体10と同様の筐体が軸対称に取り付け可能であり、一対の筐体10がヒンジ枠30にヒンジ結合した場合には、それぞれの筐体10がヒンジ枠30に対して180°回転自在に支持される。
【0043】
シャフト2(2R,2L)は、ヒンジ枠30に対して連結されており、筐体10をヒンジ枠30に対して回転させると、シャフト2は、筐体10に対して相対的に回転するようになっている。
【0044】
推力変換機構1Aは、前述した例と同様に、筐体10に対してシャフト2が相対回転すると、シャフト2に係合された直動部材3(3R,3L)は、シャフト2に沿って直線的に移動する。
【0045】
そして、一対の直動部材3R,3Lは、前述した例と同様に、シャフト2の一方向の回転で、一対の直動部材3R,3Lが
図13(
図16)に示すように、互いに近接するように移動し、シャフト2の逆方向の回転で、一対の直動部材3R,3Lが
図15(
図18)に示すように、互いに離間するように移動する。この際、直動部材3R,3Lは、それぞれ、シャフト2に沿った方向に延びる長孔3fを有しており、この長孔3fが筐体10に設けられたガイド突起10fに係合して、直動部材3R,3Lの直線的な移動がガイドされている。
【0046】
これに対して、揺動部材4は、
図16~
図18に示すように、中央部が一方の直動部材3Lに設けられた軸突起3gに軸支されて、一端側に、他方の直動部材3Rの係合突起3hに係合する長孔4cが設けられ、他端側に係合突起4pが設けられたレバー部材になっており、直動部材3R,3Lの近接又は離間するシャフト2に沿った移動によって、
図16~
図18に示すように、軸突起3gの回りに揺動する機構になっている。
【0047】
そして、移動部材5は、シャフト2に対して交差する方向に長孔状のガイド孔5fが設けられており、このガイド孔5fが、一方の直動部材3Lに設けられている2つの係合突起3j,3kに係合している。係合突起3j,3kは、シャフト2に対して交差する方向に離間した位置に配置されているので、この係合突起3j,3kにガイド孔5fが係合していることで、移動部材5は、先ず、直動部材3Rの移動に従って、シャフト2に沿った方向に移動する。
【0048】
また、移動部材5は、カム孔5gを有しており、このカム孔5gに揺動部材4の係合突起4pが係合している。カム孔5gは、揺動部材4が揺動する際における係合突起4pのシャフト2に沿った動きに対応するように、シャフト2に沿った方向に延びるカム面を有している。また、カム孔5gは、揺動部材4が揺動する際における係合突起4pのシャフト2に交差する方向の動きを利用して、移動部材5をシャフト2に交差する方向に移動させためのカム面を有している。
【0049】
このような機構によると、ヒンジ枠30に対して筐体10が回転すると、筐体10に対してシャフト2が回転して、一対の直動部材3R,3Lが近接又は離間するようにシャフト2に沿って移動し、この直動部材3R,3Lの移動によって、揺動部材4が軸突起3g回りに揺動する。そして、揺動部材4の揺動に対して、移動部材5のカム孔5gが機能することで、移動部材5がシャフト2に交差する方向に移動する。
【0050】
移動部材5には、連結部5qが設けられており、この連結部5qに移動対象物の被連結部Wが連結する。前述の説明から分かるように、移動部材5は、シャフト2に交差する方向に移動するだけでなく、直動部材3Rの移動に従ってシャフト2に沿った方向にも移動するので、連結部5qは、この移動部材5のシャフト2に沿った移動を逃がして、シャフト2に交差する方向の移動のみを被連結部Wに伝えるように逃がしガイドが設けられている。
【0051】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る推力変換機構1,1Aは、シャフト2の回転を直線運動に変換するに際して、互いに近接又は離間する直動部材3(3R,3L)を備えることで、シャフト2の回転の駆動力を高めること無く、制限されたシャフト2の回転に対して直線移動量を増加させることができる。また、ヒンジ装置20,21を構成するに際して、2つの筐体10間の端部の干渉を無くしながら、2つの筐体10が備える移動部材5にディスプレイなどを連結することで、2つの筐体10を広げた場合に、ディスプレイなどをシャフト2に交差する方向に移動させて、隙間ができないようにすることができる。
【0052】
このような推力変換機構1,1A及びヒンジ装置20,21は、各種の用途に用いることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A:推力変換機構,2:シャフト,2R,2L:分割シャフト,
2a,2b:被係合部,2c:先端突起,
3,3R,3L:直動部材,3a,3b,:係合部,
3c,3g:軸突起,3d,3h,3j,3k:係合突起,3e,3f:長孔,
4:揺動部材,4a:軸孔,4b:係合部,
4c:長孔,4m,4n,4p:係合突起,
5:移動部材,5a,5b:係合部,5c,5f:ガイド孔,
5d:掛け部,5e:結合突起,5g:カム孔,5p:突起,5q:連結部,
6:バネ,7:仕切り板,7a:開口,
10,10A,10B:筐体,
10a,10b:軸受部,10c:軸支部,10d:支持突起,
10e,10f:ガイド突起,10f:掛け部,
11:保持部材,20,21:ヒンジ装置,30:ヒンジ枠,
FP:フラットパネルディスプレイ,
K:鞄本体,J:ヒンジ部,H:持ち手,P:ロック解除レバー,
M:マグネット,W:被連結部