(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】運行管理装置、運行管理方法、および、交通システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/127 20060101AFI20230926BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G08G1/127 B
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2020066598
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健志
(72)【発明者】
【氏名】東出 宇史
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-264210(JP,A)
【文献】特開2001-1904(JP,A)
【文献】特開2018-169984(JP,A)
【文献】特開2017-81271(JP,A)
【文献】特開2015-49629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B61L 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信するとともに前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信する通信装置と、
前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する運行監視部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正
し、
前記計画生成部は、一つの車両が、予め規定された監視期間内に、許容回数を超えて、追い越された場合、前記一つの車両を前記車列から除外するとともに、新たな車両を前記車列に追加するように、前記走行計画を修正する、
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運行管理装置であって、
前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越した車両の修正前の走行計画と、追い越された車両の修正前の走行計画と、を入れ替えるように走行計画を修正する、ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項3】
車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成し、
前記走行計画を対応する車両に送信し、
前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信し、
前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する、
運行管理方法であって、
前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正
し、
一つの車両が、予め規定された監視期間内に、許容回数を超えて、追い越された場合、前記一つの車両を前記車列から除外するとともに、新たな車両を前記車列に追加するように、前記走行計画を修正する、
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項4】
規定の走行経路を自律走行する複数の車両で構成される車列と、
前記複数の車両の運行を管理する運行管理装置と、
を備え、前記運行管理装置が、
前記複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、
前記走行計画を対応する車両に送信するとともに前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信する通信装置と、
前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する運行監視部と、
を備え、
前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正
し、
前記計画生成部は、一つの車両が、予め規定された監視期間内に、許容回数を超えて、追い越された場合、前記一つの車両を前記車列から除外するとともに、新たな車両を前記車列に追加するように、前記走行計画を修正する、
ことを特徴とする交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、規定の走行経路を自律走行する複数の車両の運行を管理する運行管理装置、運行管理方法、および当該運行管理装置を有する交通システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律走行可能な車両を用いた交通システムが提案されている。例えば、特許文献1には、専用路線に沿って自律走行可能な車両を用いた車両交通システムが開示されている。この車両交通システムは、専用路線に沿って走行する複数の車両と、当該複数の車両を運行させる管制制御システムと、を備える。管制制御システムは、運行計画に従い、車両に出発指令や進路指令を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両は、様々な原因で、運行計画に対して遅延する場合がある。そして、遅延した結果、遅延車両が、他の車両に追い越されてしまい、車列内における車両の順序が入れ替わる場合がある。このとき、運行計画を満たすためには、追い越された遅延車両が、追い越した車両を、追い越し、車両の順序を元の状態に戻す必要がある。しかし、こうした頻繁な追い越しは、車両の安定した走行を妨げやすい。そこで、車両の順序が入れ替わった場合には、元の運行計画を遵守するのではなく、運行計画を変更することが求められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、車両を運行計画通りに走行させることを前提としており、車両の実際の順序が入れ替わった場合について何ら検討されていない。そのため、特許文献1では、車両の実際の順序の入れ替わりが発生した際に、追い越しが頻繁に発生し、車両の安定した走行が妨げられるおそれがあった。
【0006】
そこで、本明細書では、車両がより安定して走行できる運行管理装置、運行管理方法、および交通システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する運行管理装置は、車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、前記走行計画を対応する車両に送信するとともに前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信する通信装置と、前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する運行監視部と、を備え、前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正する、ことを特徴とする。
【0008】
かかる構成とすることで、頻繁な追い越しが抑制されるため、車両がより安定して走行できる。
【0009】
この場合、前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越した車両の修正前の走行計画と、追い越された車両の修正前の走行計画と、を入れ替えるように走行計画を修正してもよい。
【0010】
かかる構成とした場合、二つの車両の走行計画を入れ替えるだけのため、走行計画の修正処理を簡易化できる。
【0011】
また、前記計画生成部は、一つの車両が、予め規定された監視期間内に、許容回数を超えて、追い越された場合、前記一つの車両を前記車列から除外するとともに、新たな車両を前記車列に追加するように、前記走行計画を修正してもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、何らかのトラブルを有した車両を、別の車両52に取り替えることができ、交通システム10としての安定性をより向上できる。
【0013】
本明細書で開示する運行管理方法は、車列を構成するとともに規定の走行経路を自律走行する複数の車両それぞれについて走行計画を生成し、前記走行計画を対応する車両に送信し、前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信し、前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する、運行管理方法であって、前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正する、ことを特徴とする。
【0014】
本明細書で開示する交通システムは、規定の走行経路を自律走行する複数の車両で構成される車列と、前記複数の車両52の運行を管理する運行管理装置と、を備え、前記運行管理装置12が、前記複数の車両それぞれについて走行計画を生成する計画生成部と、前記走行計画を対応する車両に送信するとともに前記車両からその走行状況を示す走行情報を受信する通信装置と、前記走行情報に基づいて、車両の追い越しの有無を検出する運行監視部と、を備え、前記計画生成部は、前記追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように前記走行計画を修正する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する技術によれば、車両がより安定して走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】運行管理装置の物理構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の交通システムで用いられる走行計画の一例を示す図である。
【
図5】
図4の走行計画に従って自律走行する各車両の運行タイミングチャートである。
【
図6】追い越しが発生した様子を示すイメージ図である。
【
図7】追い越しに伴い修正された走行計画の一例を示す図である。
【
図8】追い越しが生じた場合の車両52の運行タイムスケジュールを示す図である。
【
図9】追い越しに伴い修正された走行計画の他の一例を示す図である。
【
図10】追い越しに伴う走行計画の修正の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、交通システム10の構成について説明する。
図1は、交通システム10のイメージ図であり、
図2は、交通システム10のブロック図である。さらに、
図3は、運行管理装置12の物理構成を示すブロック図である。
【0018】
この交通システム10は、予め規定された走行経路50に沿って、不特定多数の利用者を輸送するためのシステムである。交通システム10は、走行経路50に沿って自律走行可能な複数の車両52A~52Dを有している。また、走行経路50には、複数の駅54a~54dが設定されている。なお、以下では、複数の車両52A~52Dを区別しない場合は、添え字アルファベットを省略し、「車両52」と表記する。同様に、複数の駅54a~54dも、区別の必要がない場合は、「駅54」と表記する。
【0019】
走行経路50は、特定の敷地内に設けられた経路でもよいし、一般公道でもよい。いずれの場合でも、走行経路50および駅54の少なくとも一方には、一つの車両52が、先行する車両52を追い越し可能なスペースが存在する。複数の車両52は、走行経路50に沿って一方向に周回走行し、一つの車列を構成する。車両52は、各駅54において、一時的に停車する。利用者は、車両52が一時停車するタイミングを利用して、車両52に乗車、または、車両52から降車する。したがって、本例において、各車両52は、一つの駅54から他の駅54まで不特定多数の利用者を輸送する乗り合いバスとして機能する。運行管理装置12(
図1では図示せず、
図2、
図3参照)は、こうした複数の車両52の運行を管理する。本例において、運行管理装置12は、複数の車両52が、等間隔運行となるように、その運行を制御している。等間隔運行とは、各駅54における車両52の発車間隔が均等となるような運行形態である。したがって、等間隔運行は、例えば、駅54aにおける発車間隔が5分の場合、他の駅54b,54c,54dにおける発車間隔も5分となるような運行形態である。
【0020】
こうした交通システム10を構成する各要素について、より具体的に説明する。車両52は、運行管理装置12から提供される走行計画80に従って自律走行する。走行計画80は、車両52の走行スケジュールを定めたものである。本例では、後に詳説するが、走行計画80には、各駅54a~54dにおける車両52の発車タイミングが規定されている。車両52は、この走行計画80で定められた発車タイミングで発車できるように自律走行する。換言すれば、駅間での走行速度や、信号等での停車、他の車両の追い越し要否等の判断は、全て、車両52側で行う。
【0021】
図2に示すように、車両52は、自動運転ユニット56を有している。自動運転ユニット56は、駆動ユニット58と、自動運転コントローラ60と、に大別される。駆動ユニット58は、車両52を走行させるための基本的なユニットであり、例えば、原動機、動力伝達装置、ブレーキ装置、走行装置、懸架装置、かじ取り装置等を含む。自動運転コントローラ60は、この駆動ユニット58の駆動を制御し、車両52を自律走行させる。自動運転コントローラ60は、例えば、プロセッサとメモリを有するコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0022】
自律走行を可能にするために、車両52には、さらに、環境センサ62および位置センサ66が搭載されている。環境センサ62は、車両52の周辺環境を検知するもので、例えば、カメラ、Lidar、ミリ波レーダ、ソナー、磁気センサ等を含む。自動運転コントローラ60は、この環境センサ62での検知結果に基づいて、車両52の周辺の物体の種類、当該物体との距離、走行経路50上の路面表示(例えば白線等)、および、交通標識等を認識する。また、位置センサ66は、車両52の現在位置を検出するもので、例えば、GPSである。位置センサ66での検出結果も、自動運転コントローラ60に送られる。自動運転コントローラ60は、環境センサ62および位置センサ66の検出結果に基づいて、車両52の加減速および操舵を制御する。こうした自動運転コントローラ60による制御状況は、走行情報82として運行管理装置12に送信される。走行情報82には、車両52の現在の位置等が含まれる。
【0023】
車両52には、さらに、通信装置68が設けられている。通信装置68は、運行管理装置12と無線通信する装置である。通信装置68は、例えば、WiFi(登録商標)等の無線LANや、携帯電話会社等がサービス提供するモバイルデータ通信を介して、インターネット通信できる。通信装置68は、運行管理装置12から走行計画80を受信するとともに、走行情報82を運行管理装置12に送信する。
【0024】
運行管理装置12は、車両52の運行状況を監視し、その運行状況に応じて、車両52の運行を制御する。この運行管理装置12は、物理的には、
図3に示すように、プロセッサ22と、記憶装置20と、入出力デバイス24と、通信I/F26と、を有したコンピュータである。プロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU)や、専用のプロセッサ(例えばGPU、ASIC、FPGA、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、記憶装置20は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。なお、
図3では、運行管理装置12を単一のコンピュータとして図示しているが、運行管理装置12は、物理的に分離された複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0025】
運行管理装置12は、機能的には、
図2に示すように、計画生成部14と、通信装置16と、運行監視部18と、記憶装置20と、を有している。計画生成部14は、複数の車両52それぞれに対して走行計画80を生成する。また、計画生成部14は、走行経路50において、車両52の追い越しが発生した場合には、追い越し後の順序を維持するように走行計画80を修正するが、これについては後述する。
【0026】
通信装置16は、車両52と無線通信するための装置であり、例えば、WiFiまたはモバイルデータ通信を利用してインターネット通信が可能である。通信装置16は、計画生成部14で生成および再生成された走行計画80を車両52に送信するとともに、走行情報82を車両52から受信する。
【0027】
運行監視部18は、各車両52から送信された走行情報82に基づいて、車両52の運行状況を取得する。走行情報82には、上述した通り、車両52の現在の位置が含まれる。運行監視部18は、この各車両52の位置に基づいて、車両52の走行計画80に対する遅延や走行経路50における車両の追い越しの有無等を検出する。
【0028】
次に、こうした運行管理装置12における走行計画80の生成について詳説する。
図4は、
図1の交通システム10で用いられる走行計画80の一例を示す図である。
図1の例では、車列は、四つの車両52A~52Dで構成されており、走行経路50には、四つの駅54a~54dが等間隔に配置されている。また、本例において、各車両52が、走行経路50を1周するのに要する時間、すなわち、周回時間TCは、20分であるとする。
【0029】
この場合、運行管理装置12は、各駅54における車両52の発車間隔が、周回時間TCを車両52の個数Nで除した時間、20/4=5分となるように、走行計画80を生成する。走行計画80は、
図4に示すように、各駅54における発車タイミングのみが記録されている。例えば、車両52Dに送信される走行計画80Dには、当該車両52Dが、駅54a~54dそれぞれを発車する目標時刻が記録されている。
【0030】
また、走行計画80には、通常、1周分のタイムスケジュールのみが記録されており、各車両52が、特定の駅、例えば、駅54aに到達したタイミングで、運行管理装置12から車両52に送信される。例えば、車両52Cは、駅54aに到達したタイミング(例えば、6:49)に、1周分の走行計画80Cを運行管理装置12から受け取り、車両52Dは、駅54aに到達したタイミング(例えば、6:39)に、1周分の走行計画80Dを運行管理装置12から受け取る。ただし、車両52の遅延や追い越し等に起因して、走行計画80が修正された場合には、車両52が駅54aに到達していなくても、新たな走行計画80が運行管理装置12から車両52に送信される。各車両52は、新たな走行計画80を受信した場合、それ以前の走行計画80を破棄し、新たな走行計画80に従って自律走行する。
【0031】
各車両52は、受け取った走行計画80に従って自律走行する。
図5は、
図4の走行計画80に従って自律走行する各車両52A~52Dの運行タイミングチャートである。
図5において、横軸は、時刻を、縦軸は、車両52の位置を、それぞれ示している。各車両52の走行の様子について説明する前に、以下の説明で用いる各種パラメータの意味について簡単に説明する。
【0032】
以下の説明では、一つの駅54から次の駅54までの距離を「駅間距離DS」と呼ぶ。また、車両52が、一つの駅54を発車してから次の駅54を発車するまでの時間を「駅間所要時間TT」、利用者の乗降のために車両52が駅54で停車する時間を「停車時間TS」と呼ぶ。さらに、一つの駅54を発車してから次の駅54に到達するまでの時間、すなわち、駅間所要時間TTから停車時間TSを減算した時間を「駅間走行時間TR」と呼ぶ。なお、
図4において丸で囲った数字は、駅間所要時間TTを示しており、四角で囲った数字は、駅54における車両52の発車間隔を示している。
【0033】
さらに、移動距離を停車時間TSも含めた移動時間で除した値を「表定速度VS」と呼び、移動距離を停車時間TSも含めない移動時間で除した値を「平均走行速度VA」と呼ぶ。
図5のラインM1の傾きは、平均走行速度VAを表しており、
図5のラインM2の傾きは、表定速度VSを表している。表定速度VSは、駅間所要時間TTに反比例する。
【0034】
次に、
図5を参照して、車両52の運行について説明する。
図4の走行計画80に従えば、車両52Aは、7:00に駅54aを発車した後、5分後の7:05に駅54bを発車しなければならない。車両52Aは、この5分の間に、駅54aから駅54bへの移動と、利用者の乗降と、を完了するように、その平均走行速度VAを制御する。
【0035】
具体的に説明すると、車両52は、利用者の乗降のために必要な標準的な停車時間TSを、計画停車時間TSpとして予め記憶している。そして、車両52は、走行計画80で定められた駅54の発車時刻から、この計画停車時間TSpを引いた時刻を、当該駅54への到達目標時刻として算出する。例えば、計画停車時間TSpが1分の場合、車両52Aの駅54bへの到達目標時刻は、7:04となる。車両52は、こうして算出された到達目標時刻までに、次の駅54に到達できるように、その走行速度を制御する。
【0036】
ところで、走行経路50の渋滞状況や利用者数の増加等に起因して、一部または全ての車両が走行計画80に対して遅延する場合がある。また、何らかのトラブルにより、一部の車両52の表定速度VSが大幅に低下し、当該車両52が後続の車両52に追い越される場合もある。こうした車両52の遅延や追い越しが生じた場合、一部の車両52の間隔が大幅に変化し、当初予定した間隔での運行、すなわち、等間隔運行が損なわれる。そこで、遅延や追い越しが生じた場合、計画生成部14は、当初予定した間隔での運行に早期にかつ安定して復帰できるように、走行計画80を修正する。例えば、遅延が生じた場合、計画生成部14は、遅延車両52を一時的に加速または他の車両を一時的に減速することで、等間隔運行への復帰を図るが、これについての詳説は省略する。また、追い越しが生じた場合、計画生成部14が、追い越し後の順序を維持できるように、走行計画80を修正する。以下、この追い越し時の走行計画80の修正について詳説する。
【0037】
図6は、追い越しが生じた様子を示すイメージ図である。
図6では、駅54bと駅54cとの間で、車両52Bの表定速度VSが大幅に低下した結果、後続の車両52Aに追い越されている。その結果、車列内における車両Aと車両52Bの順序が、走行計画80における順序と入れ替わっている。また、車両52Bの速度が大幅に低下することで、車両52Bが走行計画80に対して大幅に遅延し、先行する車両52Cとの間隔が、走行計画80で予定されていた間隔に比べて大幅に増加する。
【0038】
かかる状況において、走行計画80を修正しない場合、車両52Bは、走行計画80に対する遅延を解消するために、大幅に加速し、車両52Aを追い越し返す必要がある。しかし、この場合、頻繁に追い越しが生じることになり、車両52の安定した走行が損なわれるおそれがある。また、そもそも、走行経路50の渋滞状況や利用者数(ひいては駅での乗降時間)によっては、表定速度VSの大幅な向上が難しい場合があった。また、表定速度VSを大幅に向上できたとしても、後続車両52Aに追い越されるまで遅延した車両52Bが当該遅延を解消するには、長い時間がかかる。
【0039】
そこで、本例では、走行経路50において追い越しが生じた場合には、当該追い越し後の順序を維持するように走行計画80を修正する。
図7は、追い越しに伴い修正された走行計画80の一例を示す図である。また、
図8は、追い越しが生じた場合の車両52の運行タイムスケジュールを示す図である。なお、
図8では、表定速度VSを把握しやすくするために、各駅54における停車時間をゼロとして図示している。また、白抜きのピン状マークは、走行計画80および修正走行計画80で定められた車両52Aの発車タイミングを示しており、黒塗りのピン状マークは、走行計画80および修正走行計画80で定められた車両52Bの発車タイミングを示している。
【0040】
図8に示すように、車両52Bが、駅54bを計画通りに発車した後、何らかのトラブルで、7分間停車したとする。その結果、7:06に、計画通りに走行する後続車両52Aが、車両52Bを追い越す。この追い越しは、運行監視部18によって検出される。追い越しが検出された場合、計画生成部14は、追い越し後の順序を維持するように、走行計画80を修正する。
【0041】
すなわち、追い越し前の走行計画80では、走行計画80上での順序は、車両52D、車両52C、車両52B、車両52Aの順序であったが、追い越しが検出された場合、走行計画80上での順序が、車両52D、車両52C、車両52A、車両52Bになるように、走行計画80を修正する。
【0042】
この修正方法としては、いくつかの形態が考えられるが、最も簡単な方法は、追い越しが検知された場合に、
図7に示すように、追い越した車両52の走行計画80と、追い越された車両52の走行計画80と、を入れ替えることである。すなわち、追い越しが検知され前の走行計画80(すなわち
図4の走行計画80)では、7:10に、車両52Aが駅54cを、車両52Bが駅54dを、それぞれ発車するように定められている。追い越しが検知された場合には、この二つの車両52のスケジュールを入れ替え、7:10に、車両52Aが駅54dを、車両52Bが駅54cを、それぞれ発車するように走行計画80を修正してもよい。
【0043】
図8の例では、追い越しが発生した直後の7:06に、
図7の走行計画80が、車両52Aおよび車両52Bに送付されている。この場合、車両52Aおよび車両52Bは、修正後の走行計画80で定められたスケジュールを満たすように、その表定速度VSを調整する。その結果、走行計画80との乖離が徐々に解消され、7:15には、全ての車両52が走行計画80で定められたスケジュールを満たす。
【0044】
なお、ここでは、追い越した車両52の走行計画80と、追い越された車両52の走行計画80と、を入れ替えているが、追い越し後の車両52順序が維持されるのであれば、他の形態で走行計画80を修正してもよい。例えば、
図9に示すように、追い越し発生後の車両52A、52Bの表定速度VSが過度に高速にならないように、その発車タイミングを改めて、作成しなおしてもよい。
【0045】
また、一つの車両52、例えば、車両52Bが、所定の監視期間内(例えば1週間以内等)に、予め規定された許容回数以上、他の車両52A,52C,52Dに追い越された場合には、当該一つの車両52Bを、車列から除外するとともに、新たな車両52Eを車列に追加してもよい。すなわち、車両52Bが、一定期間内に、複数回、他の車両52A,52C,52Dに追い越された場合、当該車両52Bには、何らかのトラブルが発生しており、安定した走行が難しくなっている可能性が高い。そこで、こうした場合、計画生成部14は、車両52Bを、車列から除外するとともに、新たな車両52Eを車列に追加する走行計画80を生成する。
【0046】
なお、監視期間および許容回数は、特に限定されず、車両52の性能や交通システム10の仕様に基づいて、適宜、決定されればよい。また、車列からの除外が決定した場合、車両52Bは、乗車している利用者を目的の駅54まで輸送するために、駅54での降車を許容する一方で乗車を禁止した状態で、走行経路50を一周分だけ走行する。また、トラブルにより、こうした1周分の走行も難しい場合には、他の車両52を車両52Bの近くまで移動させ、車両52Bの乗員を他の車両52に乗せ換える。
【0047】
次に、こうした追い越しに伴う走行計画80の修正の流れについて
図10を参照して説明する。計画生成部14は、各車両52の追い越された回数を管理するためのパラメータPp(p=A,B,C,D)を記憶している。また、計画生成部14は、時間の経過を計測するためのカウンタを有している。
【0048】
計画生成部14は、まず、パラメータPpを初期化する(S10)。具体的には、PA=0,PB=0,PC=0,PD=0とする。また、カウンタでのカウントを開始する(S12)。
【0049】
続いて、計画生成部14は、追い越しの有無を判断する(S14)。判断の結果、いずれの車両52も追い越されていない場合(S14でNo)、計画生成部14は、通常の走行計画80を生成し(S16)、その後、ステップS24に進む。
【0050】
一方、一つの車両52pが追い越された場合(S14でYes)、計画生成部14は、当該車両52pのパラメータPpをインクリメントする(S18)。続いて、パラメータPpを、規定の許容回数Pdefと比較する(S20)。比較の結果、Pp≦Pdefの場合、計画生成部14は、追い越した車両52と追い越された車両52との走行計画80上での順序を入れ替えたうえで、走行計画80を修正する(S22)。例えば、追い越した車両52の修正前の走行計画80と追い越された車両52の修正前の走行計画80と、を入れ替える。走行計画80を修正すれば、ステップS24に進む。
【0051】
ステップS24において、計画生成部14は、カウンタの値を確認し、規定の監視期間が経過したか否かを確認する。確認の結果、監視期間が経過していない場合(S24でNo)、ステップS14に戻り、ステップS14以降の処理を繰り返す。一方、監視期間が経過した場合(S24でYes)、ステップS10に戻り、パラメータPpの初期化、カウンタの再スタートを行ったうえで、ステップS14以降の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS20において、パラメータPpが、許容回数超過の場合、計画生成部14は、順序の入れ替えを行ったうえで、追い越された車両52を新たな車両52に交換する走行計画80を生成する(S26)。その後、ステップS10に戻り、パラメータPpの初期化、カウンタの再スタートを行ったうえで、ステップS14以降の処理を繰り返す。
【0053】
以上の説明から明らかな通り、本明細書で開示の技術によれば、一つの車両52が他の車両に追い越された場合、追い越した車両52と追い越された車両52との走行計画80上での順序を入れ替えている。これにより、追い越しの頻繁な発生を抑制でき、車両52を安定して走行させることができる。
【0054】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、追い越しが発生した場合に、追い越し後の順序を維持するように走行計画80を修正するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、駅54および車両52の個数や間隔等は、適宜変更されてもよい。また、これまで説明した走行計画80は、駅54での発車タイミングのみを規定しているが、走行計画80は、他の形態でもよい。例えば、走行計画80には、駅54での発車タイミングに替えて、または、加えて、駅54への到着タイミングや、車両52の平均走行速度VA等も規定されてよい。
【符号の説明】
【0055】
10 交通システム、12 運行管理装置、14 計画生成部、16 通信装置、18 運行監視部、20 ステップ、20 記憶装置、22 プロセッサ、24 入出力デバイス、26 通信I/F、50 走行経路、52 車両、54 駅、56 自動運転ユニット、58 駆動ユニット、60 自動運転コントローラ、62 環境センサ、66 位置センサ、68 通信装置、80 走行計画、82 走行情報。