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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】半導体装置、バスバー及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20230926BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230926BHJP
【FI】
H01L23/48 N
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020084711
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021180252
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠川 順平
(72)【発明者】
【氏名】望月 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】井出 英一
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-37048(JP,A)
【文献】特開2007-299781(JP,A)
【文献】特開2015-149363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0105961(US,A1)
【文献】特開2016-134492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が樹脂封止された封止体と、
前記半導体素子に接続され、前記封止体から所定方向に沿って突出する第1端子と、
前記半導体素子に接続され、前記第1端子と間隔を空けて隣接し、前記封止体から前記所定方向に沿って前記第1端子と同じ向きに突出する第2端子と、を備え、
前記第1端子は、前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第1露出部を有し、
前記第2端子は、前記封止体から突出し前記所定方向に延びて絶縁材に覆われた被覆部と、前記被覆部から突出し前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第2露出部と、を有し、
前記被覆部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離は、前記第1露出部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離よりも長い
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体装置に接続されるバスバーであって、
第1導体板及び第2導体板が樹脂成形された成形体と、
前記第1導体板に接続され、前記成形体から特定方向に沿って突出するバスバー第1端子と、
前記第2導体板に接続され、前記バスバー第1端子と間隔を空けて隣接し、前記成形体から前記特定方向に沿って前記バスバー第1端子と同じ向きに突出するバスバー第2端子と、を備え、
前記バスバー第1端子は、前記特定方向に延びて前記成形体の外部に露出したバスバー第1露出部を有し、
前記バスバー第2端子は、前記成形体から突出し前記特定方向に延びて絶縁性を有する被覆材に覆われたバスバー被覆部と、前記バスバー被覆部から突出し前記特定方向に延びて前記成形体の外部に露出したバスバー第2露出部とを有し、
前記バスバー被覆部の先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った距離は、前記バスバー第1露出部の先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った距離よりも長い
ことを特徴とするバスバー。
【請求項3】
半導体装置と、前記半導体装置に接続されるバスバーとを具備する電力変換装置であって、
前記半導体装置は、
半導体素子が樹脂封止された封止体と、
前記半導体素子に接続され、前記封止体から所定方向に沿って突出する第1端子と、
前記半導体素子に接続され、前記第1端子と間隔を空けて隣接し、前記封止体から前記所定方向に沿って前記第1端子と同じ向きに突出する第2端子と、を備え、
前記第1端子は、前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第1露出部を有し、
前記第2端子は、前記封止体から突出し前記所定方向に延びて絶縁材に覆われた被覆部と、前記被覆部から突出し前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第2露出部と、を有し、
前記被覆部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離は、前記第1露出部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離よりも長く、
前記バスバーは、
第1導体板及び第2導体板が樹脂成形された成形体と、
前記第1導体板に接続され、前記成形体から特定方向に沿って突出するバスバー第1端子と、
前記第2導体板に接続され、前記バスバー第1端子と間隔を空けて隣接し、前記成形体から前記特定方向に沿って前記バスバー第1端子と同じ向きに突出するバスバー第2端子と、を備え、
前記バスバー第1端子は、前記特定方向に延びて前記成形体の外部に露出したバスバー第1露出部を有し、
前記バスバー第2端子は、前記成形体から突出し前記特定方向に延びて絶縁性を有する被覆材に覆われたバスバー被覆部と、前記バスバー被覆部から突出し前記特定方向に延びて前記成形体の外部に露出したバスバー第2露出部と、を有し、
前記バスバー被覆部の先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った距離は、前記バスバー第1露出部の先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った距離よりも長い
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記半導体装置と前記バスバーとは、
前記所定方向と前記特定方向とが同じ方向であり、
前記第1端子と前記バスバー第2端子とが対向し、前記第2端子と前記バスバー第1端子とが対向し、且つ、前記第1端子及び前記第2端子の向きと前記バスバー第1端子及び前記バスバー第2端子の向きとが反対向きとなる姿勢に配置され、
前記第1露出部と前記バスバー第2露出部とが接続され、前記第2露出部と前記バスバー第1露出部とが接続される
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記半導体装置と前記バスバーとは、
前記第1露出部の前記先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った前記距離と、前記バスバー第2露出部の先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った距離との和が、前記第2露出部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離と、前記バスバー第1露出部の前記先端部から前記成形体までの前記特定方向に沿った前記距離との和に等しい
ことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記半導体装置と前記バスバーとは、
前記所定方向と前記特定方向とが同じ方向であり、
前記第1端子と前記バスバー第1端子とが対向し、前記第2端子と前記バスバー第2端子とが対向し、且つ、前記第1端子及び前記第2端子の向きと前記バスバー第1端子及び前記バスバー第2端子の向きとが同じ向きとなる姿勢に配置され、
前記第1露出部と前記バスバー第1露出部とが接続され、前記第2露出部と前記バスバー第2露出部とが接続される
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記成形体は、
前記第1導体板及び前記第2導体板が、絶縁層を介して互いに対向して配置され、
前記第1導体板及び前記第2導体板に沿った主面を有し、前記主面に沿った方向が前記所定方向及び前記特定方向に交差する姿勢に配置され、
前記バスバー第1端子は、
前記バスバー第1露出部が、前記主面に沿った前記方向に交差する前記成形体の側面部から、前記第1導体板よりも前記第2導体板に接近する前記主面を越えて突出し、
前記バスバー第2端子は、
前記バスバー被覆部が、前記バスバー第1露出部に越えられた前記主面から、当該主面と離隔する向きに、前記バスバー第1露出部の前記先端部を越えて突出し、
前記バスバー第2露出部が、前記バスバー被覆部の前記先端部から前記主面に沿って前記側面部に向かう向きに屈曲する屈曲部を有し、前記屈曲部の先端部から、前記バスバー第1露出部の前記先端部から離隔する向きに突出する
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、バスバー及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が封止された樹脂パッケージから突出する端子間の絶縁性能を確保する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
特許文献1には、互いに隣り合う第1のリード端子と第2のリード端子とを封止する封止部と、封止部の端部から延在し、第2のリード端子のアウターリードをその先端が露出するように被覆する絶縁性のリード被覆部を備える半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6345608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体装置では、第2のリード端子にリード被覆部を設けることによって、第1のリード端子と第2のリード端子との間における沿面距離を確保している。しかし、特許文献1に記載の半導体装置では、第1のリード端子と第2のリード端子との間における空間距離は、単に、第1のリード端子と第2のリード端子との間隔を拡大することによって確保しているに過ぎない。第1のリード端子と第2のリード端子との間隔を拡大すると、装置の大型化やインダクタンスの増加を招いてしまう。このような問題は、半導体装置の端子と接続される端子を備えるバスバーや、半導体装置の端子とバスバーの端子とを接続して主回路部を構成する電力変換装置についても同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、端子間の絶縁性能を確保しつつ、装置の大型化やインダクタンスの増加を抑制することが可能な半導体装置、バスバー及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、半導体素子が樹脂封止された封止体と、前記半導体素子に接続され、前記封止体から所定方向に沿って突出する第1端子と、前記半導体素子に接続され、前記第1端子と間隔を空けて隣接し、前記封止体から前記所定方向に沿って前記第1端子と同じ向きに突出する第2端子と、を備え、前記第1端子は、前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第1露出部を有し、前記第2端子は、前記封止体から突出し前記所定方向に延びて絶縁材に覆われた被覆部と、前記被覆部から突出し前記所定方向に延びて前記封止体の外部に露出した第2露出部と、を有し、前記被覆部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離は、前記第1露出部の先端部から前記封止体までの前記所定方向に沿った距離よりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端子間の絶縁性能を確保しつつ、装置の大型化やインダクタンスの増加を抑制することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1の半導体装置の外観を示す図。
図2図1に示すA-A線にて半導体装置を切断した断面図。
図3図1に示す半導体装置の比較例を示す図。
図4】実施形態1のバスバーの外観を示す図。
図5図4に示すB-B線にてバスバーを切断した断面図。
図6図4に示すバスバーの比較例を示す図。
図7】実施形態1の電力変換装置の外観を示す図。
図8図7に示す電力変換装置の比較例を示す図。
図9】実施形態2の半導体装置の外観を示す図。
図10図9に示すC-C線にて半導体装置を切断した断面図。
図11】実施形態2のバスバーの上面図。
図12図11に示す矢印Eの向きからバスバーを視た側面図。
図13図11に示すF-F線にてバスバーを切断した断面図。
図14】実施形態2の電力変換装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有するので、その説明を省略する。また、必要な図面には、各部の位置の説明を明確にするべく、x軸、y軸及びz軸から成る直交座標軸を記載している。
【0011】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の半導体装置1の外観を示す図である。図2は、図1に示すA-A線にて半導体装置1を切断した断面図である。図3は、図1に示す半導体装置1の比較例を示す図である。
【0012】
半導体装置1は、インバータ等の電力変換装置3に用いられるパワー半導体モジュールである。半導体装置1は、民生用、車載用、鉄道用、産業用、インフラ用などの分野に幅広く利用されるパワー半導体モジュールである。図1に示す半導体装置1は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車又は燃料電池車等の電動車両に搭載されるパワー半導体モジュールである。半導体装置1は、半導体素子のスイッチング動作によって、バッテリーから入力される直流電圧を擬似的な交流電圧に変換して出力する。半導体装置1には、後述の図4に示すバスバー2が接続される(図7を参照)。半導体装置1及びバスバー2は、不図示のコンデンサモジュールと併せて電力変換装置3の主回路部を構成する。
【0013】
半導体装置1は、図1に示すように、封止体100と、第1端子110と、第2端子120と、出力端子130と、制御端子140とを備える。
【0014】
封止体100は、第1半導体素子151等の半導体装置1の各構成要素が樹脂封止された構造体である。封止体100は、エポキシ樹脂等の樹脂材101を用いたトランスファーモールド等によって半導体装置1の各構成要素を封止した構造体である。封止体100は、所定の板厚を有する矩形の平板状に成形される。封止体100は、半導体装置1の樹脂パッケージを構成する。
【0015】
封止体100は、図2に示すように、第1半導体素子151と、第2半導体素子152と、第1回路導体154と、第2回路導体155と、第1絶縁層156と、第2絶縁層157と、第1放熱導体158と、第2放熱導体159とを備える。
【0016】
第1半導体素子151は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)等のパワー半導体素子によって構成される。第2半導体素子152は、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードによって構成される。図1に示す半導体装置1では、上アーム回路を構成する第1半導体素子151及び第2半導体素子152と、下アーム回路を構成する第1半導体素子151及び第2半導体素子152とが設けられる。図1に示す半導体装置1は、2in1パワーモジュールである。
【0017】
第1半導体素子151及び第2半導体素子152は、矩形のチップ状を成す。第1半導体素子151は、面積が広く電極面が形成された一対の主面151a,151bを有する。第2半導体素子152は、面積が広く電極面が形成された一対の主面152a,152bを有する。第1半導体素子151の一方の主面151aと第2半導体素子152の一方の主面152aとは、はんだ等の接合材153を介して、第1回路導体154に接合される。第1半導体素子151の他方の主面151bと第2半導体素子152の他方の主面152bとは、接合材153を介して、第2回路導体155に接合される。
【0018】
第1回路導体154及び第2回路導体155は、銅又はアルミ等の導電性及び熱伝導性に優れた金属材料を用いて板状に形成される。第1回路導体154及び第2回路導体155は、エッチング等によって電気回路の回路パターンが形成される。第1回路導体154及び第2回路導体155は、接合材153を介して、第1端子110、第2端子120、出力端子130及び制御端子140と接合される。第1回路導体154は、第1半導体素子151の他方の主面151bに形成された制御電極と、ワイヤ160にて接続される。第1回路導体154は、第1半導体素子151及び第2半導体素子152に接合された面の反対側の面が、第1絶縁層156と接合される。第2回路導体155は、第1半導体素子151及び第2半導体素子152に接合された面の反対側の面が、第2絶縁層157と接合される。
【0019】
第1絶縁層156及び第2絶縁層157は、窒化ケイ素又は窒化アルミ等の絶縁性、熱伝導性及び靱性に優れたセラミックス材料を用いて板状に形成される。第1絶縁層156は、第1回路導体154に接合された面の反対側の面が、第1放熱導体158と接合される。第2絶縁層157は、第2回路導体155に接合された面の反対側の面が、第2放熱導体159と接合される。
【0020】
第1放熱導体158及び第2放熱導体159は、銅又はアルミ等の熱伝導性及び強度に優れた金属材料を用いて板状に形成される。第1放熱導体158は、第1絶縁層156に接合された面の反対側の面158aが、樹脂材101から露出するように成形される。第2放熱導体159は、第2絶縁層157に接合された面の反対側の面159aが、樹脂材101から露出するように成形される。面158aと面159aとは、互いに平行となるように設けられる。面158aと面159aとは、封止体100の主面100aの大部分を構成する。
【0021】
なお、第1放熱導体158、第1絶縁層156及び第1回路導体154は、拡散接合等によって予め一体的に接合された絶縁回路基板によって構成されてもよい。第2放熱導体159、第2絶縁層157及び第2回路導体155は、拡散接合等によって予め一体的に接合された絶縁回路基板によって構成されてもよい。
【0022】
第1端子110及び第2端子120のそれぞれは、銅又はアルミ等の導電性に優れた金属材料を用いて平棒状に形成される。第1端子110及び第2端子120のそれぞれは、第1回路導体154及び第2回路導体155並びに接合材153を介して、第1半導体素子151及び第2半導体素子152に接続される。第1端子110及び第2端子120のそれぞれは、直流正極端子、直流負極端子、交流出力端子又は制御端子の何れかであってもよい。本実施形態では、第1端子110は直流負極端子であり、第2端子120は直流正極端子であり、出力端子130は交流出力端子であり、制御端子140は制御端子であるものとして説明する。
【0023】
第1端子110は、封止体100から所定方向に沿って突出する。第1端子110は、封止体100の短手方向の側面部100bから、封止体100の主面100aに沿って突出する。図1の例では、第1端子110の突出する向きは、+x軸方向である。第1端子110は、封止体100から突出し所定方向に延びて絶縁材に覆われた第1被覆部111と、第1被覆部111から突出し所定方向に延びて封止体100の外部に露出した第1露出部112とを有する。第1被覆部111を形成する絶縁材は、樹脂材101と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材101と異なる樹脂材によって構成されてもよい。第1被覆部111の基端部は、第1端子110の基端部に相当し、封止体100に連接する。第1被覆部111の先端部111aは、第1露出部112の基端部に連接する。第1露出部112の先端部112aは、第1端子110の先端部に相当する。
【0024】
第2端子120は、封止体100から所定方向に沿って第1端子110と同じ向きに突出する。第2端子120は、第1端子110と間隔を空けて第1端子110に隣接する。第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向は、第1端子110及び第2端子120の突出方向である所定方向に対して垂直な方向であり、且つ、封止体100の主面100aに沿った方向に対して垂直な方向である。図1の例では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向は、y軸方向である。第2端子120は、封止体100から突出し所定方向に延びて絶縁材に覆われた第2被覆部121と、第2被覆部121から突出し所定方向に延びて封止体100の外部に露出した第2露出部122とを有する。第2被覆部121を形成する絶縁材は、樹脂材101と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材101と異なる樹脂材によって構成されてもよい。第2被覆部121の基端部は、第2端子120の基端部に相当し、封止体100に連接する。第2被覆部121の先端部121aは、第2露出部122の基端部に連接する。第2露出部122の先端部122aは、第2端子120の先端部に相当する。なお、第2被覆部121は、特許請求の範囲に記載された「被覆部」の一例に該当する。
【0025】
半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った一端部から他端部に向かって、第1端子110と第2端子120とが交互に配列される。図1の例では、-y軸方向に向かって、2組の第1端子110及び第2端子120のそれぞれが交互に配列される。すなわち、図1の例では、-y軸方向に向かって、1組目の第1端子110、1組目の第2端子120、2組目の第1端子110、2組目の第2端子120が、この順に配列される。
【0026】
出力端子130は、第1端子110及び第2端子120が設けられた封止体100の側面部100bとは反対側の側面部100bから封止体100の主面100aに沿って、第1端子110及び第2端子120とは反対向きに突出する。出力端子130は、封止体100から突出し所定方向に延びて絶縁材に覆われた第3被覆部131と、第3被覆部131から突出し所定方向に延びて封止体100の外部に露出した第3露出部132とを有する。第3被覆部131を形成する絶縁材は、樹脂材101と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材101と異なる樹脂材によって構成されてもよい。
【0027】
制御端子140は、第1端子110及び第2端子120が設けられた封止体100の側面部100bと、出力端子130が設けられた封止体100の側面部100bとの両方に設けられる。すなわち、一方の制御端子140は、第1端子110及び第2端子120が設けられた封止体100の側面部100bから封止体100の主面100aに沿って、第1端子110及び第2端子120と同じ向きに突出する。一方の制御端子140は、第2端子120と間隔を空けて第2端子120に隣接する。一方の制御端子140の封止体100からの突出長さは、第2端子120における第2被覆部121の封止体100からの突出長さよりも短い。他方の制御端子140は、出力端子130が設けられた封止体100の側面部100bから封止体100の主面100aに沿って、第1端子110及び第2端子120とは反対向きに突出する。他方の制御端子140は、出力端子130と間隔を空けて出力端子130に隣接する。
【0028】
ところで、半導体装置1及びバスバー2によって構成される電力変換装置3には、取り扱い可能な電力を大きくすることが求められている。取り扱い可能な電力を大きくするための手法として、電力変換装置3に流れる電流を大きくすることが考えられる。電流を大きくすると電力変換装置3の発熱量が増加する。電力変換装置3の発熱量を低減するために、電流経路の導体量を増加することが考えられるが、電力変換装置3の重量及び体積が増加してしまい、問題となる。特に、電力変換装置3が電動車両に用いられる場合には、電力変換装置3の重量及び体積が増加すると、車両の走行性能や電費性能が低下してしまう。よって、電力変換装置3にて取り扱い可能な電力を大きくするための手法として、取り扱い可能な電圧を高くすることが有効である。例えば、現在普及しているハイブリッド自動車や電気自動車に搭載された電力変換装置3では、取り扱い可能な電圧が、主に200V~400Vであるが、近い将来には600V~800Vに引き上げられる。電力変換装置3の高電圧化は、導体量を増加させることなく大電力化が可能であるので有効である。また、電動車両のバッテリーの充電時間においても、一般的な急速充電設備において取り扱い可能な電圧が、現在の400Vから800Vに引き上げられれば、同じ充電量であっても半分の充電時間で足りる。
【0029】
上記のように、電力変換装置3の高電圧化は、電力変換装置3の大電力化の手法として有効であるが、電力変換装置3は、高電圧化に対応可能な絶縁性能を確保する必要がある。電力変換装置3が高電圧化に対応可能な絶縁性能を確保するための手法として、絶縁距離を確保することが挙げられる。半導体装置1やバスバー2や電力変換装置3のような機器では、機器の絶縁距離として、国際規格IEC 60664-1(日本産業規格ではJIS C60664-1)によって定められた空間距離P及び沿面距離Qを満たす必要がある。この規格では、半導体装置1等が使用される電圧や環境(汚損度など)に応じて、必要な空間距離P及び沿面距離Qが定められている。空間距離Pとは、2導電部間の空間における最小の距離のことである。沿面距離Qとは、2導電部間の絶縁物の表面沿いの最小の距離のことである。空間距離P及び沿面距離Qが大きくなる程、2導電部間の電気的短絡(絶縁破壊)が発生し難くなるので、機器の絶縁性能が確保され易くなり、機器の信頼性が確保され易くなり得る。
【0030】
ここで、図1及び図3に示すように、第1端子110の第1露出部112の先端部112aから封止体100までの所定方向に沿った距離を、距離D1とする。第2端子120の第2被覆部121の先端部121aから封止体100までの所定方向に沿った距離を、距離D2とする。第2端子120の第2露出部122の先端部122aから封止体100までの所定方向に沿った距離を、距離D3とする。図1及び図3の例では、距離D1は、第1端子110の封止体100からの突出長さに相当する。距離D2は、第2端子120における第2被覆部121の封止体100からの突出長さに相当する。距離D3は、第2端子120の封止体100からの突出長さに相当する。
【0031】
図3に示す比較例では、第2端子120の封止体100からの突出長さと、第1端子110の封止体100からの突出長さとが等しい。加えて、第2端子120における第2被覆部121の封止体100からの突出長さと、第1端子110における第1被覆部111の封止体100からの突出長さとが等しい。当然ながら、第2端子120における第2露出部122の封止体100からの突出長さと、第1端子110における第1露出部112の封止体100からの突出長さとが等しい。すなわち、図3に示す比較例では、距離D3と距離D1とが等しく、距離D2が距離D1より短くなる。
【0032】
図3に示す比較例では、第1端子110及び第2端子120の空間距離Pは、第1端子110の第1露出部112と、第2端子120の第2露出部122との距離になる。第1端子110及び第2端子120の沿面距離Qは、第1被覆部111の先端部111aから、第1被覆部111の基端部、封止体100、及び、第2被覆部121の基端部の各表面を沿って第2被覆部121の先端部121aに到達するまでの距離となる。図3に示す比較例では、第1端子110及び第2端子120の空間距離Pの延びる方向は、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向(y軸方向)と平行である。第1端子110及び第2端子120の沿面距離Qは、第2端子120の第2被覆部121の表面を沿う部分と、第1端子110の第1被覆部111の表面を沿う部分とが同じ長さになり得る。
【0033】
これに対し、図1に示す半導体装置1では、距離D2が距離D1より長くなるように構成される。すなわち、図1に示す半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向において、第1端子110の第1露出部112に隣接する第2端子120には第2被覆部121が配置される。図1に示す半導体装置1では、距離D2を距離D1より長くするべく、距離D3が距離D1より長くなるように構成される。すなわち、図1に示す半導体装置1では、第2端子120における第2被覆部121の封止体100からの突出長さが、第1端子110における第1露出部112の封止体100からの突出長さよりも長い。当然ながら、第2端子120の封止体100からの突出長さが、第1端子110の封止体100からの突出長さよりも長い。
【0034】
図1に示す半導体装置1では、第1端子110及び第2端子120の空間距離Pは、第1端子110の第1露出部112の先端部112aと、第2端子120の第2被覆部121の先端部121aに連接する第2露出部122の基端部との距離になる。第1端子110及び第2端子120の沿面距離Qは、第1端子110の第1被覆部111の先端部111aから、第1被覆部111の基端部、封止体100、及び、第2端子120の第2被覆部121の基端部の各表面を沿って第2被覆部121の先端部121aに到達するまでの距離となる。図1に示す半導体装置1では、距離D2が距離D1より長いので、空間距離Pの方向が、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向(y軸方向)に対して傾斜し得る。図1に示す半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔が図3に示す比較例より短くても、必要な空間距離Pを確保することができる。図1に示す半導体装置1では、距離D2が距離D1より長いので、第1端子110及び第2端子120の沿面距離Qのうちの第2端子120の第2被覆部121の表面を沿う部分が、図3に示す比較例よりも長くなり得る。図1に示す半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔が図3に示す比較例より短くても、必要な沿面距離Qを確保することができる。
【0035】
実施形態1の半導体装置1は、距離D2が距離D1より長いので、必要な空間距離P及び沿面距離Qを確保しつつ、第1端子110と第2端子120との間隔を短くすることができる。半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向の寸法を短くすることができ、半導体装置1を小型化することができる。半導体装置1は、半導体装置1の小型化により、半導体装置1に接続されるバスバー2を小型化することができ、バスバー2との接続によって構成される電力変換装置3を小型化することができる。
【0036】
更に、実施形態1の半導体装置1は、距離D2が距離D1より長いので、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向において、第1端子110の第1露出部112に隣接する第2端子120には第2被覆部121が配置される。すなわち、半導体装置1では、互いに隣接する第1端子110と第2端子120との間において最短距離を成す部分には、絶縁材にて覆われた被覆部が配置される。半導体装置1は、第1端子110及び第2端子120の間に対してターンオン・オフ時等に過電圧が生じた場合でも、第1端子110及び第2端子120の間において電気的短絡(絶縁破壊)が発生することを抑制することができる。半導体装置1は、絶縁性能を向上させることができ、信頼性を向上させることができる。半導体装置1は、半導体装置1の信頼性向上により、バスバー2との接続によって構成される電力変換装置3の信頼性を向上させることができる。
【0037】
更に、実施形態1の半導体装置1は、直流負極端子の第1端子110と直流正極端子の第2端子120との間隔を短くすることにより、直流負極端子の第1端子110と直流正極端子の第2端子120との相互インダクタンスを増加させることができる。これにより、半導体装置1は、電力変換装置3を構成する半導体装置1とバスバー2との間における全体の合成インダクタンスを低減することができ、ターンオン・オフ時等の過電圧やノイズを低減することができる。
【0038】
なお、半導体装置1では、距離D2が距離D1より長ければ、必要な絶縁距離を確保しつつ、第1端子110と第2端子120との間隔を短くすることができるので、第1端子110が第1被覆部111を備えることは必須ではない。しかし、半導体装置1では、第1端子110が第1被覆部111を有することにより、第1被覆部111を有しない場合よりも、必要な沿面距離Qを確保し易くなるので、第1端子110と第2端子120との間隔を更に短くすることができる。よって、第1端子110が第1被覆部111を有することは、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができるので、好適である。
【0039】
また、上記の実施形態では、第1端子110が直流負極端子であり、第2端子120が直流正極端子である場合について説明した。半導体装置1は、第1端子110が直流正極端子であり、第2端子120が直流負極端子であってもよく、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
図4は、実施形態1のバスバー2の外観を示す図である。図5は、図4に示すB-B線にてバスバー2を切断した断面図である。図6は、図4に示すバスバー2の比較例を示す図である。
【0041】
バスバー2は、半導体装置1に接続され、電力変換装置3の主回路部を構成する。バスバー2は、半導体装置1の第1端子110及び第2端子120に接続される。バスバー2は、複数の半導体装置1のそれぞれの第1端子110及び第2端子120に接続される。図4に示すバスバー2は、2in1パワーモジュールの半導体装置1を3台並列に接続するバスバー2である。
【0042】
バスバー2は、図4に示すように、成形体200と、バスバー第1端子210と、バスバー第2端子220とを備える。
【0043】
成形体200は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂等の樹脂材201を用いた射出成形等によってバスバー2の各構成要素を樹脂成形した構造体である。成形体200は、所定の板厚を有する矩形の平板状に成形される。成形体200は、図5に示すように、第1導体板251と、第2導体板252と、絶縁層253とを備える。
【0044】
第1導体板251及び第2導体板252のそれぞれは、銅又はアルミ等の導電性及び熱伝導性に優れた金属材料を用いて板状に形成される。第1導体板251及び第2導体板252は、それぞれ、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220に接続される。絶縁層253は、PPS樹脂等の絶縁性に優れた樹脂材料を用いて板状に成形される。第1導体板251及び第2導体板252は、絶縁層253を介して互いに対向して配置される。第2導体板252、絶縁層253及び第1導体板251は、この順に積層され、樹脂材201を用いて樹脂成形される。図4に示す成形体200では、第1導体板251及び第2導体板252並びに絶縁層253は、樹脂材201を用いて封止される。成形体200の主面200aは、第1導体板251及び第2導体板252に沿った面である。
【0045】
バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220のそれぞれは、銅又はアルミ等の導電性に優れた金属材料を用いて平棒状に形成される。バスバー第1端子210は、半導体装置1の第2端子120に接続される。バスバー第2端子220は、半導体装置1の第1端子110に接続される。
【0046】
バスバー第1端子210は、成形体200から特定方向に沿って突出する。バスバー第1端子210は、成形体200の短手方向の側面部200bから、成形体200の主面200aに沿って突出する。図4の例では、バスバー第1端子210の突出する向きは、-x軸方向である。バスバー第1端子210は、成形体200から突出し特定方向に延びて絶縁性を有する被覆材に覆われたバスバー第1被覆部211と、バスバー第1被覆部211から突出し特定方向に延びて成形体200の外部に露出したバスバー第1露出部212とを有する。バスバー第1被覆部211を形成する被覆材は、樹脂材201と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材201と異なる樹脂材によって構成されてもよい。バスバー第1被覆部211の基端部は、バスバー第1端子210の基端部に相当し、成形体200に連接する。バスバー第1被覆部211の先端部211aは、バスバー第1露出部212の基端部に連接する。バスバー第1露出部212の先端部212aは、バスバー第1端子210の先端部に相当する。
【0047】
バスバー第2端子220は、成形体200から特定方向に沿ってバスバー第1端子210と同じ向きに突出する。バスバー第2端子220は、バスバー第1端子210と間隔を空けてバスバー第1端子210に隣接する。バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向は、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の突出方向である特定方向に対して垂直な方向であり、且つ、成形体200の主面200aに沿った方向に対して垂直な方向である。図4の例では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向は、y軸方向である。バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向は、半導体装置1の第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向と平行である。バスバー第2端子220は、成形体200から突出し特定方向に延びて絶縁性を有する被覆材に覆われたバスバー第2被覆部221と、バスバー第2被覆部221から突出し特定方向に延びて成形体200の外部に露出したバスバー第2露出部222とを有する。バスバー第2被覆部221を形成する被覆材は、樹脂材201と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材201と異なる樹脂材によって構成されてもよい。バスバー第2被覆部221の基端部は、バスバー第2端子220の基端部に相当し、成形体200に連接する。バスバー第2被覆部221の先端部221aは、バスバー第2露出部222の基端部に連接する。バスバー第2露出部222の先端部222aは、バスバー第2端子220の先端部に相当する。なお、バスバー第2被覆部221は、特許請求の範囲に記載された「バスバー被覆部」の一例に該当する。
【0048】
バスバー2では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った一端部から他端部に向かって、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220が交互に配列される。バスバー2では、バスバー第1端子210が半導体装置1の第2端子120に接続され、バスバー第2端子220が半導体装置1の第1端子110に接続される。そこで、バスバー2では、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の配列順が、半導体装置1の第1端子110及び第2端子120と反対の配列順となるように構成される。図4の例では、バスバー2が、2in1パワーモジュールの半導体装置1を3台並列に接続するバスバー2であるので、-y軸方向に向かって、6組のバスバー第1端子210及びバスバー第2端子220のそれぞれが交互に配列される。すなわち、図4の例では、-y軸方向に向かって、1組目のバスバー第2端子220、1組目のバスバー第1端子210、2組目のバスバー第2端子220、2組目のバスバー第1端子210、3組目のバスバー第2端子220、3組目のバスバー第1端子210、4組目のバスバー第2端子220、4組目のバスバー第1端子210、5組目のバスバー第2端子220、5組目のバスバー第1端子210、6組目のバスバー第2端子220、6組目のバスバー第1端子210が、この順に配列される。
【0049】
ここで、図4及び図6に示すように、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212の先端部212aから成形体200までの特定方向に沿った距離を、距離L1とする。バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221の先端部221aから成形体200までの特定方向に沿った距離を、距離L2とする。バスバー第2端子220のバスバー第2露出部222の先端部222aから成形体200までの所定方向に沿った距離を、距離L3とする。図4及び図6の例では、距離L1は、バスバー第1端子210の成形体200からの突出長さに相当する。距離L2は、バスバー第2端子220におけるバスバー第2被覆部221の成形体200からの突出長さに相当する。距離L3は、バスバー第2端子220の成形体200からの突出長さに相当する。
【0050】
図6に示す比較例では、バスバー第2端子220の成形体200からの突出長さと、バスバー第1端子210の成形体200からの突出長さとが等しい。加えて、バスバー第2端子220におけるバスバー第2被覆部221の成形体200からの突出長さと、バスバー第1端子210におけるバスバー第1被覆部211の成形体200からの突出長さとが等しい。当然ながら、バスバー第2端子220におけるバスバー第2露出部222の成形体200からの突出長さと、バスバー第1端子210におけるバスバー第1露出部212の成形体200からの突出長さとが等しい。すなわち、図6に示す比較例では、距離L3と距離L1とが等しく、距離L2が距離L1より短くなる。
【0051】
図6に示す比較例では、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の空間距離Pは、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212と、バスバー第2端子220のバスバー第2露出部222との距離になる。バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の沿面距離Qは、バスバー第1被覆部211の先端部211aから、バスバー第1被覆部211の基端部、成形体200、及び、バスバー第2被覆部221の基端部の各表面を沿ってバスバー第2被覆部221の先端部221aに到達するまでの距離となる。図6に示す比較例では、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の空間距離Pの延びる方向は、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向(y軸方向)と平行である。バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の沿面距離Qは、バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221の表面を沿う部分と、バスバー第1端子210のバスバー第1被覆部211の表面を沿う部分とが同じ長さになり得る。
【0052】
これに対し、図4に示すバスバー2では、距離L2が距離L1より長くなるように構成される。すなわち、図4に示すバスバー2では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向において、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212に隣接するバスバー第2端子220にはバスバー第2被覆部221が配置される。図4に示すバスバー2では、距離L2を距離L1より長くするべく、距離L3が距離L1より長くなるように構成される。すなわち、図4に示すバスバー2では、バスバー第2端子220におけるバスバー第2被覆部221の成形体200からの突出長さが、バスバー第1端子210におけるバスバー第1露出部212の成形体200からの突出長さよりも長い。当然ながら、バスバー第2端子220の成形体200からの突出長さが、バスバー第1端子210の成形体200からの突出長さよりも長い。
【0053】
図4に示すバスバー2では、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の空間距離Pは、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212の先端部212aと、バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221の先端部221aに連接するバスバー第2露出部222の基端部との距離になる。バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の沿面距離Qは、バスバー第1端子210のバスバー第1被覆部211の先端部211aから、バスバー第1被覆部211の基端部、成形体200、及び、バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221の基端部の各表面を沿ってバスバー第2被覆部221の先端部221aに到達するまでの距離となる。図4に示すバスバー2では、距離L2が距離L1より長いので、空間距離Pの方向が、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向(y軸方向)に対して傾斜し得る。図4に示すバスバー2では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔が図6に示す比較例より短くても、必要な空間距離Pを確保することができる。図4に示すバスバー2では、距離L2が距離L1より長いので、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の沿面距離Qのうちのバスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221の表面を沿う部分が、図6に示す比較例よりも長くなり得る。図4に示すバスバー2では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔が図6に示す比較例より短くても、必要な沿面距離Qを確保することができる。
【0054】
実施形態1のバスバー2は、距離L2が距離L1より長いので、必要な空間距離P及び沿面距離Qを確保しつつ、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔を短くすることができる。バスバー2では、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向の寸法を短くすることができ、バスバー2を小型化することができる。バスバー2は、バスバー2の小型化により、バスバー2に接続される半導体装置1を小型化することができ、半導体装置1との接続によって構成される電力変換装置3を小型化することができる。
【0055】
更に、実施形態1のバスバー2は、距離L2が距離L1より長いので、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向において、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212に隣接するバスバー第2端子220にはバスバー第2被覆部221が配置される。すなわち、バスバー2では、互いに隣接するバスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間において最短距離を成す部分には、絶縁性を有する被覆材にて覆われた被覆部が配置される。バスバー2は、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の間に対してターンオン・オフ時等に過電圧が生じた場合でも、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の間において電気的短絡が発生することを抑制することができる。バスバー2は、絶縁性能を向上させることができ、信頼性を向上させることができる。バスバー2は、バスバー2の信頼性向上により、半導体装置1との接続によって構成される電力変換装置3の信頼性を向上させることができる。
【0056】
更に、実施形態1のバスバー2は、直流正極端子に接続されるバスバー第1端子210と直流負極端子に接続されるバスバー第2端子220との間隔を短くすることにより、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との相互インダクタンスを増加させることができる。これにより、バスバー2は、電力変換装置3を構成する半導体装置1とバスバー2との間における全体の合成インダクタンスを低減することができ、ターンオン・オフ時等の過電圧やノイズを低減することができる。
【0057】
なお、バスバー2では、距離L2が距離L1より長ければ、必要な絶縁距離を確保しつつ、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔を短くすることができるので、バスバー第1端子210がバスバー第1被覆部211を備えることは必須ではない。しかし、バスバー2では、バスバー第1端子210がバスバー第1被覆部211を有することにより、バスバー第1被覆部211を有しない場合よりも、必要な沿面距離Qを確保し易くなるので、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔を更に短くすることができる。よって、バスバー第1端子210がバスバー第1被覆部211を有することは、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができるので、好適である。
【0058】
図7は、実施形態1の電力変換装置3の外観を示す図である。図8は、図7に示す電力変換装置3の比較例を示す図である。
【0059】
電力変換装置3は、半導体装置1と、半導体装置1に接続されるバスバー2とを具備する。図7に示す電力変換装置3では、図1に示す2in1パワーモジュールの半導体装置1が、図4に示すバスバー2に対して3台並列に接続される。図7に示す電力変換装置3では、図4に示すバスバー2に対して不図示のコンデンサモジュールが接続される。
【0060】
電力変換装置3では、図7に示すように、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110及び第2端子120の突出方向である所定方向と、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の突出方向である特定方向とが同じ方向となる姿勢に配置される。電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110とバスバー第2端子220とが対向し、第2端子120とバスバー第1端子210とが対向する姿勢に配置される。加えて、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110及び第2端子120の突出する向き(+x軸方向)と、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の突出する向き(-x軸方向)とが反対向きとなる姿勢に配置される。
【0061】
そして、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110の第1露出部112とバスバー第2端子220のバスバー第2露出部222とが接続され、第2端子120の第2露出部122とバスバー第1端子210のバスバー第1露出部212とが接続される。具体的には、図7の例では、電力変換装置3は、第1露出部112とバスバー第2露出部222とをz軸方向から重ね合わせ、第2露出部122とバスバー第1露出部212とをz軸方向から重ね合わせて、それぞれの重ね合わせた部分を溶接等によって接続する。これにより、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、距離D2が距離D1より長くなり、距離L2が距離L1より長くなる。加えて、図7の例では、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、距離D1と距離L2との和が、距離D2と距離L1との和と等しくなる。
【0062】
第1露出部112とバスバー第2露出部222との接続、及び、第2露出部122とバスバー第1露出部212との接続は、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接によって行われることが好適である。しかしながら、これらの接続は、レーザ溶接や抵抗溶接等のTIG溶接以外の他の溶接によって行われてもよいし、超音波接合や、ネジ締め等の機械的な接続によって行われてもよい。
【0063】
実施形態1の電力変換装置3では、図1に示す半導体装置1及び図4に示すバスバー2についての上記の説明のように、距離D2が距離D1より長くなり、距離L2が距離L1より長くなる。一方、図8に示す比較例では、図3に示す比較例の半導体装置1及び図6に示す比較例のバスバー2についての上記の説明のように、距離D2が距離D1より短くなり、距離L2が距離L1より短くなる。
【0064】
実施形態1の電力変換装置3では、第1端子110及びバスバー第2端子220と、第2端子120及びバスバー第1端子210との間隔において、必要な空間距離P及び沿面距離Qを確保しつつ、当該間隔を短くすることができる。電力変換装置3は、当該間隔に沿った半導体装置1及びバスバー2の寸法を短くすることができ、電力変換装置3を小型化することができる。
【0065】
更に、実施形態1の電力変換装置3は、互いに隣接する第1端子110及びバスバー第2端子220と、第2端子120及びバスバー第1端子210との間において最短距離を成す部分には、絶縁性を有する被覆部が配置される。電力変換装置3は、第1端子110及びバスバー第2端子220と、第2端子120及びバスバー第1端子210との間隔において、ターンオン・オフ時等に過電圧が生じた場合でも、当該間隔において電気的短絡が発生することを抑制することができる。電力変換装置3は、絶縁性能を向上させることができ、信頼性を向上させることができる。
【0066】
更に、実施形態1の電力変換装置3は、第1端子110及びバスバー第2端子220と、第2端子120及びバスバー第1端子210との相互インダクタンスを増加させることができる。電力変換装置3は、半導体装置1とバスバー2との間における全体の合成インダクタンスを低減することができ、ターンオン・オフ時等の過電圧やノイズを低減することができる。
【0067】
また、実施形態1の電力変換装置3は、半導体装置1及びバスバー2が、第1端子110とバスバー第2端子220とが対向し、第2端子120とバスバー第1端子210とが対向する姿勢に配置される。加えて、半導体装置1及びバスバー2が、第1端子110及び第2端子120の向きと、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の向きとが反対向きとなる姿勢に配置される。これにより、電力変換装置3は、第1端子110及びバスバー第2端子220の接続箇所と、第2端子120及びバスバー第1端子210の接続箇所とが、封止体100及び成形体200の中間線よりも封止体100側又は成形体200側に交互に偏移して配置される。電力変換装置3は、第1端子110及びバスバー第2端子220と、第2端子120及びバスバー第1端子210との間隔において、必要な空間距離P及び沿面距離Qを確保しつつ、当該間隔を電力変換装置3全体に亘って更に短くすることができる。電力変換装置3は、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができる。
【0068】
また、実施形態1の電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、距離D1と距離L3との和が、距離D3と距離L1との和に等しい。電力変換装置3は、封止体100と成形体200との間に突出する各端子110,120,210,220の突出長さが、電力変換装置3全体において等しくなる。電力変換装置3は、封止体100と成形体200との間に突出する各端子110,120,210,220の突出長さを電力変換装置3全体として短くすることができる。電力変換装置3は、封止体100と成形体200との間に突出する各端子110,120,210,220の自己インダクタンスを低減することができ、電力変換装置3全体における合成インダクタンスを更に低減することができる。電力変換装置3は、封止体100と成形体200との間隔に沿った方向の寸法を短くすることができ、電力変換装置3を更に小型化することができる。
【0069】
[実施形態2]
図9図14を用いて、実施形態2の半導体装置1、バスバー2及び電力変換装置3について説明する。実施形態2の説明において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0070】
実施形態2の半導体装置1は、後述する図14に示されるように、第1端子110及び第2端子120の突出方向である所定方向が上下方向に沿うような姿勢に配置される。本実施形態では、上下方向のうち、半導体装置1のケース170の底部170bに接近する方を「下方」とも称し、ケース170の底部170bから離隔する方を「上方」とも称する。
【0071】
図9は、実施形態2の半導体装置1の外観を示す図である。図10は、図9に示すC-C線にて半導体装置1を切断した断面図である。
【0072】
実施形態2の半導体装置1は、封止体100を収容するケース170を備える。ケース170は、銅又はアルミ等の熱伝導性に優れた金属材料を用いて扁平形の筒状に形成される。ケース170は、一対の第1放熱板171及び第2放熱板172と、枠体173とを備える。第1放熱板171及び第2放熱板172は、封止体100の主面100aに垂直な方向において互いに間隔を空けて対向し、且つ、それぞれが封止体100の主面100aに沿って配置される。第1放熱板171と第2放熱板172との間は、ケース170の内部空間を形成する。第1放熱板171及び第2放熱板172のそれぞれの外表面には、複数のフィン174が外側に向けて延びるように設けられる。枠体173は、第1放熱板171及び第2放熱板172を固定する。枠体173は、レーザ溶接等によって、第1放熱板171及び第2放熱板172と接続される。ケース170は、一端部に設けられた開口部170aと、他端部に設けられた底部170bとを有する。
【0073】
実施形態2の封止体100は、第1端子110、第2端子120、出力端子130及び制御端子140の全てが、封止体100の一方の側面部100bから所定方向に沿って同じ向きに突出する。ケース170に収容された封止体100は、所定方向に沿って延びる各端子110~140が、開口部170aからケース170の外部に向けて突出するように配置される。
【0074】
実施形態2の封止体100では、第1回路導体154及び第2回路導体155が、リードフレーム構造を有する。第1回路導体154及び第2回路導体155は、リード部154b及びリード部155bを有する。第1回路導体154及び第2回路導体155のリード部154b及びリード部155bは、第1端子110、第2端子120及び出力端子130と一体的に形成される。実施形態2の封止体100では、第1放熱板171及び第2放熱板172を備えるケース170に収容されるので、第1放熱導体158及び第2放熱導体159が省略される。第1回路導体154及び第2回路導体155は、第1半導体素子151及び第2半導体素子152に接合された面の反対側の面154a及び面155aが、樹脂材101から露出するように成形される。
【0075】
実施形態2の封止体100は、第1回路導体154及び第2回路導体155の樹脂材101から露出した面154a及び面155aに対して第1絶縁層156及び第2絶縁層157が配置される。封止体100は、第1回路導体154及び第2回路導体155の樹脂材101から露出した面154a及び面155aに対して第1絶縁層156及び第2絶縁層157が配置された状態にて、ケース170に収容される。すなわち、実施形態2の第1絶縁層156及び第2絶縁層157は、封止体100に後付けされる。そして、ケース170に収容された封止体100並びに第1絶縁層156及び第2絶縁層157には、ケース170の第1放熱板171及び第2放熱板172を介して圧力が加えられる。これにより、第1絶縁層156及び第2絶縁層157は、封止体100の樹脂材101から露出した面154a及び面155aとそれぞれ接合すると共に、第1絶縁層156及び第2絶縁層157とそれぞれ接合する。封止体100並びに第1絶縁層156及び第2絶縁層157が収容されたケース170には、ポッティングによって樹脂材102が充填される。
【0076】
実施形態2の制御端子140は、封止体100から突出し所定方向に延びて絶縁材に覆われた第4被覆部141と、第4被覆部141から突出し所定方向に延びて封止体100の外部に露出した第4露出部142とを有する。第4被覆部141を形成する絶縁材は、樹脂材101と同じ材料によって構成されてもよいし、樹脂材101と異なる樹脂材によって構成されてもよい。制御端子140は、封止体100の側面部100bの両端部のそれぞれに分かれて設けられる。
【0077】
図9の例では、半導体装置1は、-y軸方向に向かって、一方の制御端子140、1組目の第1端子110、1組目の第2端子120、2組目の第1端子110、2組目の第2端子120、出力端子130、他方の制御端子140が、この順に配列される。実施形態2の半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向において、第1端子110の第1露出部112に隣接する第2端子120には第2被覆部121が配置され、第1端子110の第1露出部112に隣接する制御端子140には第4被覆部141が配置される。実施形態2の半導体装置1では、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向において、出力端子130に隣接する第2端子120には第2被覆部121が配置され、出力端子130に隣接する制御端子140には第4被覆部141が配置される。
【0078】
実施形態2の半導体装置1では、図9に示すように、実施形態1と同様に、距離D2が距離D1より長い。実施形態2の半導体装置1では、実施形態1と同様に、第1端子110と第2端子120との間隔に沿った方向において、第1端子110の第1露出部112に隣接する第2端子120には第2被覆部121が配置される。これにより、実施形態2の半導体装置1では、実施形態1と同様に、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができる。
【0079】
図11は、実施形態2のバスバー2の上面図である。図12は、図11に示す矢印Eの向きからバスバー2を視た側面図である。図13は、図11に示すF-F線にてバスバー2を切断した断面図である。
【0080】
実施形態2のバスバー2に備えられた成形体200は、図13に示すように、第1導体板251、絶縁層253及び第2導体板252が、この順に積層され、樹脂材201を用いた射出成形等によって樹脂成形される。成形体200は、第1導体板251及び第2導体板252に沿った主面200aを有する。成形体200は、主面200aに沿った方向が所定方向及び特定方向に交差する姿勢に配置される。
【0081】
成形体200は、図11に示すように、一方の主面200aである上面200cにおいて、第2導体板252が樹脂材201から露出するように成形される。樹脂材201から露出した第2導体板252の上面252aは、ポッティング等によって、樹脂材201とは異なる樹脂によって覆われる。成形体200の上面200cは、バスバー第1端子210に接続された第1導体板251よりも、バスバー第2端子220に接続された第2導体板252に接近する方の主面200aである。言い換えると、成形体200の上面200cは、バスバー第2端子220に接続された第2導体板252よりも、バスバー第1端子210に接続された第1導体板251から離隔した方の主面200aである。
【0082】
実施形態2のバスバー第1端子210は、図12及び図13に示すように、成形体200の側面部200bから、第1導体板251及び第2導体板252に沿った方向に垂直な方向に沿って延び、成形体200の一方の主面200aである上面200cを越えて突出する。すなわち、バスバー第1端子210は、成形体200の一方の主面200aである上面200cに沿った方向に交差する成形体200の側面部200bから、第1導体板251よりも第2導体板252に接近する主面200aである上面200cを越えて突出する。バスバー第1端子210の突出方向である特定方向は、第1導体板251及び第2導体板252に沿った上面200cに垂直な方向である。バスバー第1端子210の突出する向きは、第1導体板251から第2導体板252へ向かう向きである。図13の例では、バスバー第1端子210の突出する向きは、+x軸方向である。
【0083】
バスバー第1端子210は、特定方向に延びて成形体200の外部に露出したバスバー第1露出部212を有するが、バスバー第1被覆部211を有していなくてもよい。すなわち、実施形態2のバスバー第1端子210は、バスバー第1露出部212だけで構成されていてもよい。バスバー第1露出部212の先端部212aは、バスバー第1端子210の先端部に相当し、成形体200の一方の主面200aである上面200cを越えて突出する。成形体200の一方の主面200aである上面200cは、他方の主面200aよりも、バスバー第1露出部212の先端部212aに接近する。
【0084】
実施形態2のバスバー第2端子220は、図12及び図13に示すように、バスバー第1端子210が設けられた側面部200b付近に位置する成形体200の上面200cから、特定方向に沿ってバスバー第1端子210と同じ向きに突出する。バスバー第2端子220は、成形体200の上面200cから突出し特定方向に延びて絶縁性を有する被覆材に覆われたバスバー第2被覆部221と、バスバー第2被覆部221から突出し特定方向に延びて成形体200の外部に露出したバスバー第2露出部222とを有する。
【0085】
バスバー第2被覆部221は、バスバー第1露出部212に越えられた方の主面200aである上面200cから、当該上面200cと離隔する向きに、バスバー第1露出部212の先端部212aを越えて突出する。図13の例では、バスバー第2被覆部221は、上面200cから、バスバー第1露出部212が延びる方向である特定方向に沿って、バスバー第1露出部212が突出する向きと同じ向きに、バスバー第1露出部212の先端部212aを越えて突出する。図13の例では、バスバー第1露出部212が突出する向きは、+x軸方向である。
【0086】
バスバー第2露出部222は、バスバー第2被覆部221の先端部221aから、上面200cに沿って、バスバー第1端子210が設けられた側面部200bに向かう向きに屈曲する屈曲部223を有する。図13の例では、側面部200bに向かう向きは、-z軸方向である。そして、バスバー第2露出部222は、屈曲部223の先端部223aから、バスバー第1露出部212の先端部212aから離隔する向きに突出する。図13の例では、バスバー第2露出部222は、屈曲部223の先端部223aから、バスバー第1露出部212の延びる方向である特定方向に沿って、バスバー第1露出部212の突出する向きと同じ向きに突出する。
【0087】
実施形態2のバスバー2では、図12及び図13に示すように、実施形態1のバスバー2と同様に、距離L2が距離L1より長い。実施形態2のバスバー2では、実施形態1と同様に、バスバー第1端子210とバスバー第2端子220との間隔に沿った方向において、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212に隣接するバスバー第2端子220にはバスバー第2被覆部221が配置される。これにより、実施形態2のバスバー2では、実施形態1と同様に、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができる。
【0088】
また、実施形態2のバスバー2では、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212が、第1導体板251よりも第2導体板252に接近する主面200aである上面200cを越えて成形体200から突出する。バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221が、バスバー第1露出部212に越えられた上面200cから、当該上面200cと離隔する向きに、バスバー第1露出部212の先端部212aを越えて突出する。バスバー第2端子220のバスバー第2露出部222は、バスバー第2被覆部221の先端部221aから側面部200bに向かう向きに屈曲する屈曲部223を有し、屈曲部223の先端部223aから、バスバー第1露出部212の先端部212aから離隔する向きに突出する。これにより、実施形態2のバスバー2は、バスバー第1露出部212が第1導体板251に接近する主面200aを越えて成形体200から突出する場合と比べて、バスバー第2被覆部221の長さを短くすることができる。バスバー2は、バスバー第2被覆部221の長さを過度に長くすることなく、必要な空間距離P及び沿面距離Qを確保することができると共に、バスバー第2端子220の自己インダクタンスを低減することができる。バスバー2は、電力変換装置3を構成する半導体装置1とバスバー2との間における全体の合成インダクタンスを低減することができる。
【0089】
図14は、実施形態2の電力変換装置3の断面図である。図14は、図10に示す実施形態2の半導体装置1と、図13に示す実施形態2のバスバー2とを接続させた状態を示している。
【0090】
実施形態2の電力変換装置3では、図14に示すように、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110及び第2端子120の突出方向である所定方向と、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の突出方向である特定方向とが同じ方向となる姿勢に配置される。電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110とバスバー第1端子210とが対向し、第2端子120とバスバー第2端子220とが対向する姿勢に配置される。加えて、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110及び第2端子120の突出する向き(+x軸方向)と、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の突出する向き(+x軸方向)とが同じ向きとなる姿勢に配置される。すなわち、実施形態2の電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、成形体200の主面200aに沿った方向が、所定方向及び特定方向に交差する姿勢に配置される。図14の例では、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、成形体200の主面200aに沿った方向が、所定方向及び特定方向に垂直となる姿勢に配置される。加えて、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第2導体板252が第1導体板251よりも上側に位置する姿勢に配置される。すなわち、半導体装置1及びバスバー2は、第2導体板252が第1導体板251よりも所定方向及び特定方向に沿って封止体100から離隔する姿勢に配置される。
【0091】
そして、電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110の第1露出部112とバスバー第1端子210のバスバー第1露出部212とが接続され、第2端子120の第2露出部122とバスバー第2端子220のバスバー第2露出部222とが接続される。具体的には、図14の例では、電力変換装置3では、第1露出部112とバスバー第1露出部212とをz軸方向から重ね合わせ、第2露出部122とバスバー第2露出部222とをz軸方向から重ね合わせて、それぞれの重ね合わせた部分を溶接等によって接続する。
【0092】
実施形態2の電力変換装置3では、実施形態1と同様に、距離D2が距離D1より長くなり、距離L2が距離L1より長くなる。実施形態2の電力変換装置3では、実施形態1と同様に、互いに隣接する第1端子110及びバスバー第1端子210と、第2端子120及びバスバー第2端子220との間において最短距離を成す部分には、絶縁性を有する被覆部が配置される。これにより、実施形態2の電力変換装置3では、実施形態1と同様に、装置の小型化、絶縁性能及び信頼性の向上、並びに、合成インダクタンスの低減を図ることができる。
【0093】
また、実施形態2の電力変換装置3では、半導体装置1及びバスバー2は、第1端子110とバスバー第1端子210とが対向し、第2端子120とバスバー第2端子220とが対向する姿勢に配置される。加えて、電力変換装置3では、第1端子110及び第2端子120の向きと、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220の向きとが同じ向きとなる姿勢に配置される。これにより、電力変換装置3は、成形体200の主面200aに沿った方向が所定方向及び特定方向に交差する場合であっても、空間距離P及び沿面距離Qの確保と小型化と合成インダクタンスの低減とを両立できるよう半導体装置1とバスバー2とを接続することができる。
【0094】
また、実施形態2の電力変換装置3では、バスバー第1端子210のバスバー第1露出部212が、第1導体板251よりも第2導体板252に接近する主面200aである上面200cを越えて成形体200から突出する。電力変換装置3では、バスバー第2端子220のバスバー第2被覆部221が、バスバー第1露出部212に越えられた上面200cから、当該上面200cと離隔する向きに、バスバー第1露出部212の先端部212aを越えて突出する。電力変換装置3では、バスバー第2端子220のバスバー第2露出部222は、バスバー第2被覆部221の先端部221aから側面部200bに向かう向きに屈曲する屈曲部223を有し、屈曲部223の先端部223aから、バスバー第1露出部212の先端部212aから離隔する向きに突出する。
【0095】
これにより、実施形態2の電力変換装置3は、バスバー第1露出部212が第1導体板251に接近する主面200aを越えて成形体200から突出する場合と比べて、バスバー第2被覆部221の長さを短くすることができる。電力変換装置3は、バスバー第2端子220の自己インダクタンスを低減することができ、電力変換装置3全体における合成インダクタンスを低減することができる。加えて、電力変換装置3では、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220が、成形体200の上面200cよりも上方に突出することとなる。すなわち、バスバー第1端子210及びバスバー第2端子220が、成形体200の上面200cよりも、封止体100から離隔する向きに突出することとなる。第1端子110及びバスバー第1端子210の接続箇所、並びに、第2端子120及びバスバー第2端子220の接続箇所が、成形体200の上面200cよりも、封止体100から離隔する側に配置されることとなる。よって、電力変換装置3は、半導体装置1及びバスバー2の接続作業を容易に行うことができる。
【0096】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0097】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0098】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1・・・半導体装置 2・・・バスバー
3・・・電力変換装置 100・・・封止体
110・・・第1端子 112・・・第1露出部
112a・・・先端部 120・・・第2端子
121・・・第2被覆部(被覆部) 121a・・・先端部
122・・・第2露出部 122a・・・先端部
151・・・第1半導体素子 152・・・第2半導体素子
200・・・成形体 200a・・・主面
200b・・・側面部 200c・・・上面
210・・・バスバー第1端子 212・・・バスバー第1露出部
212a・・・先端部 220・・・バスバー第2端子
221・・・バスバー第2被覆部(バスバー被覆部)
221a・・・先端部 222・・・バスバー第2露出部
222a・・・先端部 223・・・屈曲部
223a・・・先端部 251・・・第1導体板
252・・・第2導体板 253・・・絶縁層
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