(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両用フード構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20230926BHJP
B62D 25/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B62D25/10 D
B62D25/12 N
(21)【出願番号】P 2020217203
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-075141(JP,A)
【文献】特開2020-199904(JP,A)
【文献】特開2007-145109(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111845951(CN,A)
【文献】特開2019-084993(JP,A)
【文献】特開2018-167665(JP,A)
【文献】特開2011-131702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面の一部を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの下側に配置されたインナパネルと、
車幅方向の両側に設けられ、前記インナパネルにそれぞれ接合された一対のベースプレートと、
前記一対のベースプレートにそれぞれ支持された一対のストライカと、
前記インナパネルと前記一対のベースプレートとがそれぞれ接合された一対の接合部と、
前記車両の前側において前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に設けられ、前記一対の接合部の間を車幅方向に延び
、単一の部品で構成された補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
前記一対の接合部の間において車幅方向に延び、前記アウタパネルと対向して
配置された上面部を有する、前記アウタパネルを支持するための第1補強部と、
前記上面部の車幅方向の両端部にそれぞれ
連なって配置され、前記一対の接合部にそれぞれ接合された一対の第2補強部と
を備える、車両用フード構造。
【請求項2】
前記インナパネルは、前記一対の接合部において、前記第2補強部と、前記一対のベースプレートとの間に挟まれている、請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記第1補強部の前側の端部に連なって設けられ、前記インナパネル側に向けて延びた前面部を備える、請求項1又は2に記載の車両用フード構造。
【請求項4】
前記インナパネルは、
車幅方向に延び、前記一対の接合部が設けられた底面と、
車幅方向に延び、前記底面も後側の端部に連なって設けられ、後側に向かって上側に傾斜して延びた傾斜面と
を備え、
車幅方向に直交する断面において前記傾斜面が後方向に対してなす角度は、110°以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項5】
前記インナパネルは、前記一対の接合部を接続するように車幅方向に延びたビードを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両前部構造では、車体の剛性の向上を図るために、フードインナの車幅方向の左右両側にそれぞれ設けられた一対のストライカを、車体の車幅方向の左右両側にそれぞれ設けられた一対のフードロック装置により保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ストライカが設けられる車両用フード構造の前端側では、高い耐デント性及び高い張り剛性が要求される。しかし、特許文献1では、車両用フード構造の前端側、特に一対のストライカの間における耐デント性及び張り剛性については検討されていない。
【0005】
本発明は、車幅方向の両側で車体に固定される車両用フード構造において、耐デント性及び張り剛性、更に車体との接合部近傍のインナパネルの剛性を向上可能とし、フード前端部の剛性の向上により、車両用フード構造が固定される車体の剛性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の外面の一部を構成するアウタパネルと、前記アウタパネルの下側に配置されたインナパネルと、車幅方向の両側に設けられ、前記インナパネルにそれぞれ接合された一対のベースプレートと、前記一対のベースプレートにそれぞれ支持された一対のストライカと、前記インナパネルと前記一対のベースプレートとがそれぞれ接合された一対の接合部と、前記車両の前側において前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に設けられ、前記一対の接合部の間を車幅方向に延びた補強部材と、を備え、前記補強部材は、前記アウタパネルと対向して設けられ、前記アウタパネルを支持するための第1補強部と、車幅方向の両端部にそれぞれ配置され、前記一対の接合部にそれぞれ接合された一対の第2補強部とを備える、車両用フード構造を提供する
【0007】
この構成によれば、補強部材は、インナパネルと一対のベースプレートとがそれぞれ接合された一対の接合部の間を車幅方向に延びている。また、補強部材がアウタパネルを支持するための第1補強部を備える。このため、一対の接合部の間、つまり一対のストライカの間において耐デント性及び張り剛性を向上できる。
【0008】
また、この構成によれば、補強部材の第2補強部が接合部に接合されているので、接合部周辺のインナパネルの剛性を向上できる。
【0009】
更に、補強部材が一対の接合部の間を車幅方向に延びているので、一対の接合部の間のインナパネルの剛性が向上し、その結果、車両用フード構造が固定される車体の剛性を向上できる。
【0010】
前記インナパネルは、前記一対の接合部において、前記第2補強部と、前記一対のベースプレートとの間に挟まれていてもよい。
【0011】
仮に、ストライカを支持するベースプレートをインナパネルの上側に配置すると、ストライカをインナパネルの下側に露出させるための穴をインナパネルに設ける必要があり、接合部周辺でのインナパネルの剛性が低下する。これに対して、この構成によれば、補強部材の第2補強部がインナパネルの上側に配置され、ベースプレートがインナパネルの下側に配置される。このため、インナパネルにストライカを挿通させる穴を設ける必要がなく、接合部周辺でのインナパネルの剛性の低下を抑制できる。
【0012】
前記補強部材は、前記第1補強部の前端部に連なって設けられ、前記インナパネル側に向けて延びた前面部を備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、補強部材が、第1補強部と、第1補強部の前側の端部に連なって設けられ、インナパネルに向けて延びた前面部とを備えるので、前面部を備えない場合と比較して、補強部材の曲げ剛性及びねじり剛性が向上する。その結果、一対のストライカから補強部材に荷重が加わったときの補強部材の変形が抑制され、車体の剛性向上にも寄与する。
【0014】
前記インナパネルは、車幅方向に延び、前記一対の接合部が設けられた底面と、車幅方向に延び、前記底面も後側の端部に連なって設けられ、後側に向かって上側に傾斜して延びた傾斜面とを備え、車幅方向に直交する断面において前記傾斜面が後方向に対してなす角度は、110°以上であってもよい。
【0015】
一般に、歩行者の頭部が車両用フード構造に衝突する場合、その衝突方向は、地面に対して50°程度である。この構成によれば、傾斜面が衝突方向に対して60°傾斜しているので、歩行者の頭部が車両用フード構造に衝突した場合であっても、傾斜面が倒れ変形し易い。このため、歩行者の頭部が車両用フード構造に衝突した場合の頭部傷害値が低減し、歩行者保護性能を向上できる。
【0016】
前記インナパネルは、前記一対の接合部を接続するように車幅方向に延びたビードを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、一対の接合部の間にビードが設けられているので、インナパネル底面の曲げ剛性及びねじり剛性を向上できる。また、一方のストライカに荷重が加わった場合に、荷重の一部がビードを介して他方のストライカに伝達し、接合部の変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐デント性及び張り剛性、更に車体との接合部近傍のインナパネルの剛性を向上可能とでき、フード前端部の剛性の向上により、車両用フード構造が固定される車体の剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフード構造が装着された車両の斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る補強部材の端部周辺の斜視図。
【
図6】第1実施形態の変形例の
図5と同様の斜視図。
【
図7】第1実施形態の他の変形例の
図5と同様の斜視図。
【
図8】第2実施形態に係るフード構造の
図3と同様の断面図。
【
図9】第2実施形態に係るフード構造の
図4と同様の断面図。
【
図10】第2実施形態に係る補強部材の端部周辺の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るフード構造1が装着された車両Vの斜視図である。以下の説明において、車両Vの車幅方向を単に車幅方向といい、車両Vの前後方向を単に前後方向といい、車両Vの上下方向を単に上下方向という場合がある。また、図面において、車幅方向の右向きを+Xで示し、左向きを-Xで示す場合がある。同様に、前後方向の前向きを+Yで示し、後向きを-Yで示すことがある。上下方向の上向きを+Zで示し、下向きを-Zで示す場合がある。
【0022】
図1を参照すると、フード構造1は、車両Vの車体2の前部に設けられている。フード構造1は、車両Vの外表面の一部を構成するアウタパネル10を備える。本実施形態のフード構造1は、本発明に係る車両用フード構造の一例である。
【0023】
図2は、フード構造1の上面図である。
図2では、アウタパネル10の図示を省略している。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。また、
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【0024】
図2から
図4を参照すると、フード構造1は、アウタパネル10に固定されたインナパネル20と、車幅方向の両側においてインナパネル20に接合された一対のベースプレート30A,30Bと、一対のベースプレート30A,30Bのそれぞれに支持された一対のストライカ40A,40Bとを備える。
【0025】
以下の説明において、一対のベースプレート30A,30Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単にベースプレート30という場合がある。同様に、一対のストライカ40A,40Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単にストライカ40という場合がある。
【0026】
また、本実施形態のフード構造1は、一対のベースプレート30A,30Bに対応して車幅方向の両側にそれぞれ設けられ、インナパネル20とベースプレート30とが接合された一対の接合部50A,50Bを備える。さらに、フード構造1は、フード構造1の前端部においてアウタパネル10とインナパネル20との間に設けられ、一対の接合部50A,50Bの間を車幅方向に延びた補強部材60を備える。
【0027】
以下の説明において、一対の接合部50A,50Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に接合部50という場合がある。
【0028】
図2に示すように、インナパネル20は、インナパネル20の外縁部においてアウタパネル10と接合される第1接合面21と、第1接合面21よりも内側においてアウタパネル10と接合される第2接合面22とを備える。第2接合面22は、アウタパネル10とマスチック接合されている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、インナパネル20は、全周にわたって第1接合面21の上側に重ね合わされたアウタパネル10が折り返されヘム加工されることで、アウタパネル10と接合されている。また、
図3及び
図4に示す断面において、インナパネル20とアウタパネル10とは、閉断面を構成している。
【0030】
図2及び
図4に示すように、インナパネル20は、第2接合面22に設けられ、アウタパネル10と反対側に窪んだ複数(本実施形態では4つ)の第1ビード23と、第1接合面21と第2接合面22との間に設けられ、アウタパネル10と反対側に窪んだ第2ビード24とを備える。
【0031】
第1ビード23は、車幅方向に延びて形成されている。複数の第1ビード23は、前後方向に間隔を開けて配置されている。
図4に示す断面において、アウタパネル10と、第1ビード23とは、閉断面を構成している。なお、第1ビード23は、本実施形態の構造に限定されず、目標性能に応じて適宜選択してよく、例えば、前後方向に延びて形成されていてもよい。
【0032】
図2に示すように、第2ビード24は、第2接合面22を取り囲むように設けられている。また、
図4に明瞭に示すように、第2ビード24は、ベースプレート30が接合される底面24aと、底面24aの後端部に連なって後側に延びる第1傾斜面24bと、底面24aの前端部に連なって前側に延びる第2傾斜面24cとによって画定されている。底面24aと、第1傾斜面24bと、第2傾斜面24cとは、フード構造1の前側に設けられている。
【0033】
第1傾斜面24bは、底面24aと第2接合面22とを接続するように延びている。第1傾斜面24bは、底面24aの後端部から、後側に向かって上側(アウタパネル10側)に傾斜して延びている。また、本実施形態では、
図4に示す断面において第1傾斜面24bと前後方向がなす角度θは、110°である。上記角度θは、好ましくは、110°以上である。上記角度θは、さらに好ましくは、130°以上である。本実施形態の第1傾斜面24bは、本発明に係る傾斜面の一例である。
【0034】
第2傾斜面24cは、底面24aの前端部から、前側に向かって上側(アウタパネル10側)に傾斜して延びている。また、第2傾斜面24cは、第2傾斜面24cよりも前側に配置された第3接合面25に連なって設けられている。
【0035】
本実施形態の第1傾斜面24b及び第2傾斜面24cは、底面24aから第2接合面22あるいは第3接合面25に向けて直線的に形成されているが、例えば、第1傾斜面24b又は第2傾斜面24cの途中に折れ線を設けてもよいし、底面24aの近くに棚を設けてもよい。つまり、第1傾斜面24b及び第2傾斜面24cは、上記折れ線で屈曲していてもよく、上記棚により段状に形成されてもよい。この場合の上記角度θは、上記折れ線又は上記棚よりも上方側領域の角度に対応する。
【0036】
本実施形態のベースプレート30は、鋼鉄からなる板状の部材である。一対のベースプレート30A,30Bは、フード構造1の車幅方向の両側においてそれぞれ設けられている。ベースプレート30は、インナパネル20の底面24aの下側に接合されている。また、ベースプレート30には、ストライカ40が固定されている。
【0037】
ストライカ40は、フード構造1を車両Vの車体2に固定するための部材である。ストライカ40は、ベースプレート30に支持されている。つまり、一対のストライカ40A,40Bは、車両Vの車幅方向の両側においてそれぞれ設けられている。
【0038】
図3に示すように、接合部50では、インナパネル20がベースプレート30と補強部材60とに挟まれた状態で、インナパネル20とベースプレート30と補強部材60とが互いに接合されている。本実施形態では、補強部材60がインナパネル20の上側に配置され、ベースプレート30がインナパネル20の下側に配置されている。また、接合部50では、インナパネル20とベースプレート30と補強部材60とは、図示しないボルトにより共締めされている。なお、本実施形態では、インナパネル20とベースプレート30と補強部材60とは、ボルトにより接合されていたが、これに限定されず、異種金属接合が可能なブラインドリベット、セルフピアシングリベット、メカニカルクリンチなどで接合されてもよく、接合方法は必要な接合強度に応じて適宜選択可能である。
【0039】
補強部材60は、一対の接合部50A,50Bの間を車幅方向に延びている。補強部材60は、車幅方向に延びる補強部材本体70と、補強部材本体70の車幅方向の両側に配置された一対の端部80A,80Bとを備える。また、本実施形態の補強部材60は、アルミニウム合金からなる。
【0040】
以下の説明において、一対の端部80A,80Bのそれぞれのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に端部80という場合がある。
【0041】
図5は、本実施形態の補強部材60の端部80周辺を示す斜視図である。
【0042】
図3から
図5を参照すると、補強部材本体70は、第1補強部71と、前面部72と、複数のフロント側接合脚73と、複数のリア側接合脚74とを備える。また、
図4に明瞭に示すように、
図4が示す断面において、インナパネル20と補強部材本体70とで、閉断面を構成している。
【0043】
第1補強部71は、矩形板状である。
図4に明瞭に示すように、第1補強部71は、その上面部がアウタパネル10に対向するように配置されている。また、第1補強部71には、アウタパネル10とは反対側に窪んだ凹ビード75が設けられている。
【0044】
凹ビード75は、
図4に示す断面において、アウタパネル10とともに閉断面を構成している。また、
図5に示すように、凹ビード75は、第1補強部71から下方に向けて延び、互いに対向した一対の縦壁部75aと、一対の縦壁部75aの下端を接続した底壁部75bとにより画定されている。
【0045】
前面部72は、第1補強部71の前端部から前側に向かって下側(インナパネル20側)に傾斜して延びている。
【0046】
図2に示すように、複数のフロント側接合脚73は、車幅方向に間隔を開けて配置されている。また、
図4及び
図5に示すように、フロント側接合脚73は、前面部72の下端部から前側に向けて延びた板状である。フロント側接合脚73は、インナパネル20の第3接合面25に接合されている。
【0047】
図2に示すように、複数のリア側接合脚74は、車幅方向に間隔を開けて配置されている。また、
図4及び
図5に示すようにリア側接合脚74は、第1補強部71の後端部から後側に延びた板状である。リア側接合脚74は、インナパネル20の第1接合面21に接合されている。
【0048】
また、
図3に示すように、補強部材本体70の車幅方向の両端部には、一対の側面部76A,76Bが設けられている。以下の説明において、一対の側面部76A,76Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に側面部76という場合がある。
【0049】
図3及び
図5に示すように、側面部76は、車幅方向の外側に向かって下方に傾斜した複数の面から構成されている。
【0050】
本実施形態の端部80は、側面部76の下端部に連なって設けられている。一対の端部80A,80Bは、一対の第2補強部81A,81Bと、第2補強部81A,81Bの周縁部からそれぞれ立ち上がった一対の立上部82A,82Bとをそれぞれ備える。
【0051】
以下の説明において、一対の第2補強部81A,81Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に第2補強部81という場合がある。同様に、一対の立上部82A,82Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に立上部82という場合がある。
【0052】
第2補強部81は、矩形板状であり、接合部50に接続されている。接合部50では、インナパネル20と、ベースプレート30と、第2補強部81とが図示しないボルトにより締結されている。第2補強部81には、上記ボルトを挿通するための挿通穴が形成されている。
【0053】
立上部82は、第2補強部81を三方向から取り囲むように設けられている。具体的には、第2補強部81の前後方向の両端部と車幅方向の外側の端部とには、立上部82が連なって設けられている。一方で、第2補強部81の車幅方向の内側の端部には、側面部76が連なって設けられている。
【0054】
また、
図5に示すように、立上部82の上端部には、側方(上下方向に交差する方向)に延びたフランジ部83が設けられている。フランジ部83は、第2補強部81を三方向から取り囲むように設けられている。具体的には、フランジ部83は、第2補強部81を前後方向の両側及び車幅方向の外側から取り囲むように設けられている。フランジ部83の車幅方向の内側の端部は、側面部76を介して第1補強部71に接続されている。
【0055】
本実施形態のフード構造1は、以下の機能を有する。
【0056】
補強部材60は、インナパネル20と一対のベースプレート30,30Bとがそれぞれ接合された一対の接合部50A,50Bの間を車幅方向に延びている。また、補強部材60がアウタパネル10を支持するための第1補強部71を備える。このため、一対の接合部50A,50Bの間、つまり一対のストライカ40A,40Bの間において耐デント性及び張り剛性を向上できる。
【0057】
また、この構成によれば、補強部材60の第2補強部81が接合部50に接合されているので、接合部50周辺のインナパネル20の剛性を向上できる。
【0058】
更に、補強部材60が一対の接合部50A,50Bの間を接続しているので、一対の接合部50A,50Bの間のインナパネル20の剛性が向上し、その結果、フード構造1が固定された車体2の剛性を向上できる。
【0059】
補強部材60が、アウタパネル10を支持する機能と、接合部50周辺でのインナパネル20の剛性を向上する機能とを有する。このため、アウタパネル10を支持する機能を有する部材と、接合部50周辺でのインナパネル20の剛性を向上する機能を有する部材とを別個に設ける場合と比較して、
【0060】
仮に、ストライカ40を支持するベースプレート30をインナパネル20の上側に配置すると、ストライカ40をインナパネル20の下側に露出させるための穴をインナパネル20に設ける必要があり、接合部50周辺でのインナパネル20の剛性が低下する。これに対して、本実施形態では、補強部材60の第2補強部81がインナパネル20の上側に配置され、ベースプレート30がインナパネル20の下側に配置される。このため、インナパネル20にストライカ40を挿通させる穴を設ける必要がなく、接合部50周辺でのインナパネル20の剛性の低下を抑制できる。
【0061】
補強部材60が、第1補強部71と、第1補強部71の前端部に連なって設けられ、インナパネル20に向けて延びた前面部72とを備えるので、前面部72を備えない場合と比較して、補強部材60の曲げ剛性及びねじり剛性が向上する。その結果、ストライカ40から補強部材60に荷重が加わったときの補強部材60の変形を抑制できる。
【0062】
一般に、歩行者の頭部が車両用フード構造に衝突する場合、その衝突方向は、地面に対して50°程度である。本実施形態では、第1傾斜面24bが地面に対して110°以上傾斜している、つまり、第1傾斜面24bが衝突方向に対して60°以上傾斜している。これにより、歩行者の頭部がフード構造1に衝突した場合であっても、第1傾斜面24bが倒れ変形し易い。このため、歩行者の頭部がフード構造1に衝突した場合の頭部傷害値が低減し、歩行者保護性能を向上できる。
【0063】
[変形例]
図6は、第1実施形態の変形例に係る補強部材60の
図5と同様の図である。
【0064】
図6に示す変形例では、車幅方向に隣接する2つのフロント側接合脚73を接続する複数の接続面77が設けられている。接続面77は、上側(アウタパネル10側)に膨出している。交互に連続して設けられたフロント側接合脚73と接続面77とは、前面視において波形状である。
【0065】
図7は、第1実施形態の他の変形例に係る補強部材60の
図5と同様の断面図である。
【0066】
図7に示す変形例では、前面部72には、車幅方向に間隔を開けて設けられた複数の開口部78が設けられている。開口部78は、車幅方向に隣接する2つのフロント側接合脚73の間に形成されている。また、開口部78は、前面部72と第1補強部71との境界から下側に離れて形成されている。前面部72の少なくとも一部分は、車幅方向に沿って不連続に形成されている。
【0067】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るフード構造101の
図3と同様の断面図である。
図9は、第2実施形態に係るフード構造101の
図4と同様の断面図である。
図10は、第2実施形態に係る補強部材60の端部80周辺の斜視図である。
【0068】
第2実施形態のフード構造101は、インナパネル120の形状を除いて、第1実施形態のフード構造1と同様の構成を有しており、
図1及び
図2を援用する。また、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。本実施形態のフード構造101は、本発明に係る車両用フード構造の一例である。
【0069】
図8から
図10を参照すると、インナパネル120の底面24aには、一対の接合部50A,50Bを接続するように車幅方向に延びた補強ビード126が設けられている。補強ビード126は、上側(アウタパネル10側)に膨出している。また、
図10に示すように補強ビード126の両端部は、補強部材60の側面部76を貫通して、第2補強部81に至っている。
【0070】
第2実施形態のフード構造101は、第1実施形態のフード構造1と同様の機能を有する。
【0071】
また、一対の接合部50A,50Bを接続するように補強ビード126が設けられているので、インナパネル120の曲げ剛性及びねじり剛性を向上できる。また、一方のストライカ40に荷重が加わった場合に、荷重の一部が補強ビード126を介して他方のストライカ40に伝達し、接合部50の変形を抑制できる。
【0072】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態に係るフード構造201の上面図である。
図11では、アウタパネル10の図示を省略している。
図12は、
図11のXII-XII線に沿った断面図である。また、
図13は、
図11のXIII-XIII線に沿った断面図である。
図14は、第3実施形態に係る補強部材260の斜視図である。
【0073】
第3実施形態のフード構造201は、補強部材260の形状を除いて、第1実施形態のフード構造1と同様の構成を有しており、
図1を援用する。また、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。本実施形態のフード構造201は、本発明に係る車両用フード構造の一例である。
【0074】
図11から
図14を参照すると、補強部材260は、一対の接合部50A,50Bの間を車幅方向に延びている。補強部材260は、車幅方向の全幅に渡って設けられた第1補強部261と、車幅方向の両側において第1補強部261から窪んで設けられた一対の凹部262A,262Bとを備える。また、本実施形態の補強部材260は、アルミニウム合金からなる。以下の説明において、一対の凹部262A,262Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に凹部262という場合がある。
【0075】
一対の凹部262A,262Bは、一対の底壁部263A,263Bと、一対の側壁部264A,264Bとにより画定されている。本実施形態の一対の底壁部263A,263Bは、本発明に係る一対の第2補強部の一例である。
【0076】
以下の説明において、一対の底壁部263A,263Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に底壁部263という場合がある。同様に、一対の側壁部264A,264Bのそれぞれを特に区別する必要がない場合、これらのうちの1つを単に側壁部264という場合がある。
【0077】
底壁部263は、接合部50に接続されている。具体的には、接合部50では、インナパネル20と、ベースプレート30と、底壁部263とが図示しないボルトにより締結されている。底壁部263には、上記ボルトを挿通するための挿通穴が形成されている。第2補強部81の前後方向の両側の端部と車幅方向の内側の端部とには、側壁部264が連なって設けられている。側壁部264は、第1補強部261と底壁部263とを接続している。
【0078】
第3実施形態のフード構造201は、第1実施形態のフード構造1と同様の機能を有する。
【0079】
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態に係るフード構造301の上面図である。
図15では、アウタパネル10の図示を省略している。
図16は、
図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。また、
図17は、
図15のXVII-XVII線に沿った断面図である。
図18は、第4実施形態に係る補強部材360の斜視図である。
【0080】
第4実施形態のフード構造301は、補強部材360の形状を除いて、第1実施形態のフード構造1と同様の構成を有しており、
図1を援用する。また、第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。本実施形態のフード構造301は、本発明に係る車両用フード構造の一例である。
【0081】
図15から
図18を参照すると、補強部材360は、一対の接合部50A,50Bの間を車幅方向に延びている。補強部材360は、車幅方向の全幅に渡って設けられた第1補強部361と、車幅方向の全幅に渡って第1補強部361から窪んで設けられた一対の凹溝362とを備える。また、本実施形態の補強部材360は、アルミニウム合金からなる。
【0082】
凹溝362は、補強部材360の車幅方向の全幅に渡って延びた底壁部363と、底壁部363の前後方向の両端部から上側にそれぞれ延びた一対の縦壁部364とにより画定されている。
【0083】
底壁部363の車幅方向の両端部は、接合部50に接続されている。具体的には、接合部50では、インナパネル20と、ベースプレート30と、底壁部363とが図示しないボルトにより締結されている。底壁部363の両端部には、上記ボルトを挿通するための挿通穴が形成されている。縦壁部364は、第1補強部361と底壁部363とを接続している。本実施形態の底壁部363の車幅方向の両端部は、本発明に係る一対の第2補強部の一例である。
【0084】
第4実施形態のフード構造301は、第1実施形態のフード構造1と同様の機能を有する。
【0085】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 フード構造(車両用フード構造)
2 車体
10 アウタパネル
20 インナパネル
21 第1接合面
22 第2接合面
23 第1ビード
24 第2ビード
24a 底面
24b 第1傾斜面(傾斜面)
24c 第2傾斜面
25 第3接合面
30,30A,30B ベースプレート
40,40A,40B ストライカ
50,50A,50B 接合部
60 補強部材
70 補強部材本体
71 第1補強部
72 前面部
73 フロント側接合脚
74 リア側接合脚
75 凹ビード
75a 縦壁部
75b 底壁部
76,76A,76B 側面部
77 接続面
78 開口部
80,80A,80B 端部
81,81A,81B 第2補強部
82,82A,82B 立上部
83 フランジ部
101 フード構造(車両用フード構造)
120 インナパネル
126 補強ビード
201 フード構造(車両用フード構造)
260 補強部材
261 第1補強部
262,262A,262B 凹部
263,263A,263B 底壁部(第2補強部)
264,264A,264B 側壁部
301 フード構造(車両用フード構造)
360 補強部材
361 第1補強部
362 凹溝
363 底壁部
364 縦壁部
V 車両