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特許7355731脂質ナノ粒子製剤における使用のための脂質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子製剤における使用のための脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/16 20060101AFI20230926BHJP
   C07C 219/06 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C07C229/16 CSP
C07C219/06
A61K47/16
A61K47/38
A61K47/60
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 105
A61K9/14
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020508372
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018000293
(87)【国際公開番号】W WO2019036008
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】62/546,346
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516386834
【氏名又は名称】アクイタス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, シンヤオ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/086373(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/075531(WO,A1)
【文献】特表2017-522376(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200943(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/176330(WO,A1)
【文献】特表2020-500539(JP,A)
【文献】Zhang, Xinfu et al.,Biodegradable Amino-Ester Nanomaterials for Cas9 mRNA Delivery in Vitro and in Vivo,ACS Applied Materials & Interfaces,2017年07月07日,vol.9, no.30,pp.25481-25487
【文献】Chen, Delai et al.,Rapid Discovery of Potent siRNA-Containing Lipid Nanoparticles Enabled by Controlled Microfluidic Formulation,Journal of the American Chemical Society,2012年,vol.134, no.16,pp.6948-6951
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 229/16
C07C 219/06
A61K 47/16
A61K 47/38
A61K 47/60
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 43/00
A61K 9/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造(IA):
【化1】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、もしくは立体異性体であって、
式中、
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NRまたは-NRC(=O)ORであり、
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NR;-NRC(=O)ORまたはRへの直接結合であり、
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~CシクロアルキレンまたはC~Cシクロアルケニレンであり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはC~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり、
およびRは、それぞれ独立して、C~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり、
およびRは、それぞれ独立して、分岐状C~C24アルキルまたは分岐状C~C24アルケニルであり、
は-N(R)Rであり、
はC~C12アルキルであり、
は、-OR 、および-OROHからなる群より選択される1つまたはそれより多くの置換基で置換されているC~C12アルキルであり、
は、出現ごとに独立して、Hであり
は、出現ごとに独立して、C~Cアルキレンであり、
yおよびzは、それぞれ独立して、4~12の範囲の整数であり、
xは、0、1または2であり、
アルキル、アルケニル、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、およびシクロアルケニレンは各々、他に特定されていない限り、独立して置換されているかまたは置換されていない、
化合物またはその薬学的に許容される塩、もしくは立体異性体。
【請求項2】
がC~C12アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がCまたはCアルキレンである、請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
が、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRであり、Lが、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRである、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の構造(IF)、(IG)、(IH)または(IJ):
【化2】
の1つを有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
yおよびzが、それぞれ独立して、4~10の範囲の整数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRが、それぞれ独立して、分岐状C~C24アルキルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが、それぞれ独立して、以下の構造:
【化3】
を有し、
式中、
7aおよびR7bは、出現ごとに独立して、HまたはC~C12アルキルであり、
aは2~12の整数であり、
7a、R7bおよびaは各々、RおよびRがそれぞれ独立して分岐状であり、独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される、
請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
aが8~12の整数である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
もしくはRまたは両方が、独立して、以下の構造:
【化4】
の1つを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
が、置換されているかまたは置換されていない、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が、置換されている、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
が置換されているエチルまたは置換されているプロピルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が置換されていないメチルである、請求項12または13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
がヒドロキシルで置換されている、請求項12から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が、以下の構造:
【化5】
の1つを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
以下の化合物から選択される化合物。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物と治療剤とを含む、組成物。
【請求項19】
前記治療剤が核酸を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記核酸が、アンチセンスおよびメッセンジャーRNAから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記治療剤を必要とする患者に投与するための医薬組成物の製造のための、請求項18から20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項23】
請求項22に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される希釈剤または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、中性脂質、コレステロールおよびポリマーコンジュゲート脂質などの他の脂質成分と組み合わせて使用することによって、in vitroとin vivoの両方で、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA)等の治療剤の送達のための脂質ナノ粒子を形成することができる新規の脂質に一般的に関する。
【背景技術】
【0002】
生体系内で所望の応答に影響を及ぼす核酸の送達に関連して、多くの難題が存在する。核酸をベースとする治療薬は、莫大な可能性を有するが、この可能性を実現するためには、細胞または生物内の適当な部位への核酸のより有効な送達の必要性が依然としてある。治療用核酸として、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、プラスミド、免疫刺激核酸、アンタゴミール(antagomir)、抗mir、模倣体(mimic)、スーパーmir、およびアプタマーが挙げられる。mRNAまたはプラスミドなどの一部の核酸は、例えば、タンパク質または酵素の欠乏に関係した疾患の処置に有用となるような、特定の細胞産物の発現を生じさせるために使用することができる。その系に常在性であるかどうかに関わらず、構築物を合成することによって、任意の選択されたタンパク質配列を生成することができるので、翻訳可能なヌクレオチド送達の治療適用は極めて幅広い。核酸の発現産物は、細胞または生物内で、タンパク質の既存レベルを増大させるか、欠損したもしくは非機能的バージョンのタンパク質を置き換えるか、または新規タンパク質および関連する機能性を導入することができる。
【0003】
miRNA阻害剤などの一部の核酸は、例えば、タンパク質または酵素の欠乏に関係した疾患の処置に有用となるような、miRNAにより調節される特定の細胞産物の発現を生じさせるために使用することができる。構築物を合成することによって、1つまたは複数のmiRNAを阻害することができ、これがひいてはmRNA産物の発現を調節することになるので、miRNA阻害の治療適用は極めて幅広い。内因性miRNAの阻害は、特定のmiRNAまたはmiRNAの群に関連する疾患を処置するための手段として、細胞または生物内で、その下流の標的内因性タンパク質の発現を増大させ、適切な機能を回復することができる。
【0004】
他の核酸は、特定のmRNAの細胞内レベルを下方制御することができ、その結果、RNA干渉(RNAi)またはアンチセンスRNAの相補的結合などのプロセスを介して対応するタンパク質の合成を下方制御することができる。オリゴヌクレオチド構築物は、標的mRNAに向けられた任意のヌクレオチド配列を用いて合成することができるので、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNAiの治療適用もまた極めて幅広い。標的として、正常細胞由来のmRNA、がんなどの疾患状態に関連するmRNA、およびウイルスなどの感染物質のmRNAを挙げることができる。今日までに、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物は、in vitroとin vivoの両モデルにおいて、同族mRNAの分解を介して標的タンパク質を特異的に下方制御する能力を示している。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物は、臨床研究において現在評価されている。
【0005】
しかし、治療的状況におけるオリゴヌクレオチドの使用は、現在2つの問題に直面している。第1に、遊離RNAは、血漿中のヌクレアーゼ消化の影響を受けやすい。第2に、遊離RNAは、関連する翻訳機構が存在する細胞内区画へのアクセス取得能力が限られている。中性脂質、コレステロール、PEG、ペグ化脂質、およびオリゴヌクレオチドなどの他の脂質成分と製剤化した脂質から形成された脂質ナノ粒子は、血漿中でのRNAの分解を遮断し、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを促進するために使用されてきた。
【0006】
オリゴヌクレオチド送達のための改善された脂質および脂質ナノ粒子に対する必要性が依然として存在する。好ましくは、これらの脂質ナノ粒子は、薬物:脂質の最適比を提供し、血清中の分解およびクリアランスから核酸を保護し、全身または局所送達に対して適切であり、核酸の細胞内送達を提供する。加えて、これらの脂質-核酸粒子は、核酸の有効用量での患者の処置が、許容不可能な毒性および/または患者に対してリスクを伴わないよう、良好な耐容性を示し、十分な治療指数を提供するべきである。本発明の実施形態は、これらの、および関係する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
手短に言えば、本発明の実施形態は、単独で、あるいは他の脂質成分、例えば、中性脂質、荷電脂質、ステロイド(例えば、すべてのステロールを含む)および/もしくはこれらのアナログ、ならびに/またはポリマーコンジュゲート脂質などと組み合わせて使用することによって、治療剤の送達のための脂質ナノ粒子を形成することができる、その立体異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは互変異性体を含めた、脂質化合物を提供する。ある場合には、脂質ナノ粒子を使用して、アンチセンスおよび/またはメッセンジャーRNAなどの核酸を送達する。様々な疾患または状態、例えば、感染性の実体および/またはタンパク質の不全により引き起こされるものなどの処置のためにこのような脂質ナノ粒子を使用する方法もまた提供される。
【0008】
一実施形態では、以下の構造(I):
【化1】
(式中、R、L、L、G、GおよびGは本明細書で定義されるとおりである)
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体が提供される。
【0009】
前述の構造(I)の化合物の1つまたは複数と、治療剤とを含む医薬組成物もまた提供される。構造(I)の1つまたは複数の化合物を含む脂質ナノ粒子(LNP)もまた提供される。一部の実施形態では、医薬組成物および/またはLNPは、中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質から選択される1つまたは複数の構成成分をさらに含む。開示された組成物は、治療剤の送達のための脂質ナノ粒子の形成に有用である。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者に治療剤を投与するための方法であって、構造(I)の化合物および治療剤を含む脂質ナノ粒子の組成物を調製することと、患者に組成物を送達することとを含む方法を提供する。一部の実施形態では、それを必要とする患者に治療剤を投与するための方法は、構造(I)の1つまたは複数の化合物および治療剤を含むLNPを患者に投与することを含む。
【0011】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳述された説明を参照して明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、本発明の様々な実施形態の十分な理解が得られるよう、ある特定の詳細が記載されている。しかし、当業者であれば、これらの詳細なしに本発明の実施形態は実施され得ることを理解するであろう。
【0013】
本発明の実施形態は、哺乳動物の細胞への、核酸などの活性薬剤または治療剤のin vivo送達のために脂質ナノ粒子において使用した場合に利点をもたらす新規の脂質の発見に部分的に基づく。特に、本発明の実施形態は、in vivoにおいて、核酸の活性の増加および組成物の耐容性の改善を提供し、以前記載された核酸-脂質ナノ粒子組成物と比較した場合、治療指数の顕著な増加をもたらす、本明細書に記載の新規の脂質の1つまたは複数を含む核酸-脂質ナノ粒子組成物を提供する。例えば、実施形態は、構造(I)の1つまたは複数の化合物を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、mRNAおよび/または他のオリゴヌクレオチドのin vitroおよびin vivo送達のための改善された組成物の製剤化を可能にする新規の脂質を提供する。一部の実施形態では、これらの改善された脂質ナノ粒子組成物は、mRNAによってコードされているタンパク質の発現に有用である。他の実施形態では、これらの改善された脂質ナノ粒子組成物は、1つの標的mRNAまたはいくつかのmRNAを調節する1つの特定のmiRNAまたはmiRNAの群を標的とするmiRNA阻害剤を送達することによって、内因性タンパク質の発現を上方制御するのに有用である。他の実施形態では、これらの改善された脂質ナノ粒子組成物は、標的遺伝子のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベルを下方制御(例えば、サイレンシング)するのに有用である。いくつかの他の実施形態では、脂質ナノ粒子はまた、導入遺伝子の発現のためのmRNAおよびプラスミドの送達にも有用である。さらなる他の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、タンパク質の発現に起因する薬理効果、例えば、適切なエリスロポエチンmRNAの送達を介した赤血球産生の増加、または適切な抗原もしくは抗体をコードしているmRNAの送達を介した感染からの保護などを誘発するのに有用である。
【0015】
本発明の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物は、in vitroとin vivoの両方で、封入されたまたは付随する(例えば、複合体形成された)治療剤、例えば、核酸を細胞に送達することを含めて、様々な目的に使用することができる。したがって、本発明の実施形態は、被験体を適切な治療剤を封入または付随している脂質ナノ粒子と接触させることによって、それを必要とする被験体において、疾患または障害を処置または予防する方法であって、脂質ナノ粒子が、本明細書に記載の新規の脂質の1つまたは複数を含む方法を提供する。
【0016】
本明細書に記載されているように、本発明の脂質ナノ粒子の実施形態は、例えば、mRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミドDNA、マイクロRNA(miRNA)、miRNA阻害剤(アンタゴミール/抗mir)、メッセンジャー-RNA-干渉性相補性RNA(micRNA)、DNA、多価RNA、ダイサー基質RNA、相補DNA(cDNA)などを含めた、核酸の送達に特に有用である。したがって、本発明の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物は、細胞を、本明細書に記載の1つまたは複数の新規の脂質を含む脂質ナノ粒子と接触させることによって、in vitroとin vivoの両方で所望のタンパク質の発現を誘発させるために使用することができ、脂質ナノ粒子は、所望のタンパク質を生成する(例えば、所望のタンパク質をコードしているメッセンジャーRNAまたはプラスミド)、またはmRNAの発現を終結させるプロセスを阻害する(例えば、miRNA阻害剤)ために発現される核酸を封入もしくは付随している。代わりに、本発明の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物は、細胞を、本明細書に記載の1つまたは複数の新規の脂質(例えば、構造(I)の化合物)を含む脂質ナノ粒子と接触させることによって、in vitroとin vivoの両方で標的遺伝子およびタンパク質の発現を低減するために使用することができ、脂質ナノ粒子は、標的遺伝子の発現を減少させる核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは小分子干渉RNA(siRNA))を封入または付随している。本発明の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物はまた、異なる核酸(例えば、適切な遺伝子修飾酵素をコードするmRNAおよび宿主ゲノムへの組込みのためのDNAセグメント(複数可))の共局在化を必要とする作用を提供するために有用であり得るなど、異なる核酸(例えば、mRNAおよびプラスミドDNA)を別々にまたは組み合わせて共送達(co-delivery)するために使用することができる。
【0017】
本発明の実施形態での使用のための核酸は、任意の利用可能な技術に従い調製することができる。mRNAに関して、調製の主要な方法は、これに限定されないが、長い配列に特異的なmRNAを生成する最も効率的な方法を現在代表する酵素合成(in vitro転写とも呼ばれる)である。in vitro転写は、目的の遺伝子をコードしている下流の配列に連結している上流バクテリオファージプロモーター配列(例えば、T7、T3およびSP6大腸菌ファージからのものを含むが、これらに限定されない)で構成される操作されたDNAテンプレートからのRNA分子のテンプレート指示合成のプロセスを記載する。テンプレートDNAは、これらに限定されないが、プラスミドDNAおよびポリメラーゼ連鎖反応増幅を含めた当技術分野で周知である適当な技術を用いて、いくつかの供給源からin vitro転写のために調製することができる(Linpinsel, J. LおよびConn, G. L.、General protocols for preparation of plasmid DNA template、ならびにBowman, J.C.、Azizi, B.、Lenz, T.K.、Ray, P.およびWilliams, L.D.、RNA in vitro transcription and RNA purification by denaturing PAGE in Recombinant and in vitro RNA syntheses Methods、941巻、Conn G.L.(編)、New York、N.Y. Humana Press、2012年を参照されたい)。
【0018】
RNAの転写は、生じたmRNA転写物の起こり得る分解を最小限に抑えながら、ポリメラーゼ活性を支持する条件下で、対応するRNAポリメラーゼならびにアデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのリボヌクレオシド三リン酸(rNTP)の存在下で線状化DNAテンプレートを使用して、in vitroで起こる。in vitro転写は、これらに限定されないが、RiboMax Large Scale RNA Production System(Promega)、MegaScript Transcriptionキット(Life Technologies)を含めた様々な市販のキットを使用して、ならびにRNAポリメラーゼおよびrNTPを含めた市販の試薬を用いて実施することができる。mRNAのin vitro転写のための方法は当技術分野で周知である。(例えば、これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれている、Losick, R.、1972年、In vitro transcription, Ann Rev Biochem、41巻、409~46頁;Kamakaka, R. T.およびKraus, W. L.、2001年、In Vitro Transcription. Current Protocols in Cell Biology.2:11.6:11.6.1~11.6.17;Beckert, B.およびMasquida, B.、(2010年)Synthesis of RNA by In Vitro Transcription in RNA in Methods in Molecular Biology、703巻(Neilson, H.編)、New York、N.Y. Humana Press、2010年;Brunelle, J.L.およびGreen, R.、2013年、第5章In vitro transcription from plasmid or PCR-amplified DNA, Methods in Enzymology、530巻、101~114頁を参照されたい)。
【0019】
次いで、所望の、in vitro転写されたmRNAは、転写または関連する反応の所望しない構成成分(取り込まれなかったrNTP、タンパク質酵素、塩、短いRNAオリゴなどを含む)から精製される。mRNA転写物の単離のための技術は当技術分野で周知である。周知の手順として、一価カチオンまたは塩化リチウムの存在下での、いずれかのアルコール(エタノール、イソプロパノール)によるフェノール/クロロホルム抽出または沈殿が挙げられる。使用することができる精製手順の追加の、非限定的例として、サイズ排除クロマトグラフィー(Lukavsky, P.J.およびPuglisi, J.D.、2004年、Large-scale preparation and purification of polyacrylamide-free RNA oligonucleotides、RNA、10巻、889~893頁)、シリカベースの親和性クロマトグラフィーおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動(Bowman, J.C.、Azizi, B.、Lenz, T.K.、Ray, P.およびWilliams, L.D.、RNA in vitro transcription and RNA purification by denaturing PAGE in Recombinant and in vitro RNA syntheses Methods、941巻、Conn G.L.(編)、New York、N.Y. Humana Press、2012年)が挙げられる。精製は、これらに限定されないが、SV Total Isolation System(Promega)およびin Vitro Transcription Cleanup and Concentration Kit(Norgen Biotek)を含めた、様々な市販のキットを使用して実施することができる。
【0020】
さらに、逆転写は多量のmRNAを産生することができるが、その産物は、全長mRNAの調製物から除去する必要があり得る所望しないポリメラーゼ活性と関連するいくつかの異常なRNA不純物を含有する可能性がある。これらは、不完全な転写開始ならびにRNA依存性RNAポリメラーゼ活性、RNAテンプレートからの、RNAにプライミングされた転写、および自己相補性3’伸長により生成される二本鎖RNA(dsRNA)から生じる短いRNAを含む。dsRNA構造を有するこれらの混入物は、特定の核酸構造を認識し、強力な免疫応答を誘発するように機能する真核細胞内の様々な生得的免疫センサーとの相互作用を介して所望しない免疫刺激活性をもたらす可能性があることが実証されている。ひいてはこれによって、細胞の生得的免疫応答の間、タンパク質合成は減少するため、mRNA翻訳が劇的に減少する可能性がある。したがって、これに限定されないが、拡張可能なHPLC精製を含めた、これらのdsRNA混入物を除去するための追加的技術が開発され、当技術分野で公知である(例えば、Kariko, K.、Muramatsu, H.、Ludwig, J.およびWeissman, D.、2011年、Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA、Nucl Acid Res、39巻、el42;Weissman, D.、Pardi, N.、Muramatsu, H.およびKariko, K.、HPLC Purification of in vitro transcribed long RNA in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology、969巻(Rabinovich, P.H.編)、2013年を参照されたい)。HPLC精製されたmRNAは、特に初代細胞およびin vivoではるかにより高いレベルで翻訳されることが報告されている。
【0021】
in vitroで転写されたmRNAの特定の特性を変化させ、その有用性を改善するために使用されるかなり様々な修飾が当技術分野で記載されている。これらは、mRNAの5’および3’末端に対する修飾を含むが、これらに限定されない。内因性真核生物のmRNAは通常、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)の結合の媒介に重要な役割を果たす(これが、ひいては、細胞内のRNA安定性およびmRNA翻訳の効率の増強に関与する)成熟分子の5’-末端上にキャップ構造を含有する。したがって、最高レベルのタンパク質発現が、キャッピングされたmRNA転写物を用いて達成される。5’-キャップは、最も5’側のヌクレオチドとグアニンヌクレオチドとの間の5’-5’-トリホスフェート結合を含有する。コンジュゲートグアニンヌクレオチドはN7位でメチル化されている。追加的修飾は、2’-ヒドロキシル基上の最も5’側のヌクレオチドおよび最も5’側から2番目のヌクレオチドのメチル化を含む。
【0022】
in vitroで転写された合成mRNAの5’-キャップを生成するために、複数の異なるキャップ構造を使用することができる。合成mRNAの5’-キャッピングは、化学キャップアナログとの共転写により実施することができる(すなわち、in vitro転写中のキャッピング)。例えば、アンチリバースキャップアナログ(Anti-Reverse Cap Analog)(ARCA)キャップは、1つのグアニンがN7メチル基ならびに3’-O-メチル基を含有する5’-5’-トリホスフェートグアニン-グアニン結合を含有する。しかし、転写物の20%までが、この共転写プロセス中にキャッピングされないまま残り、合成キャップアナログは真正の細胞mRNAの5’-キャップ構造と同一ではなくなり、翻訳可能性および細胞安定性を潜在的に減少させる。代わりに、合成mRNA分子はまた、転写後に酵素によりキャッピングされてもよい。これらは、キャップ結合タンパク質の結合が増強し、半減期が増加し、5’エンドヌクレアーゼに対する感受性が減少し、および/または5’キャップ除去が減少した内因性5’-キャップを構造的または機能的にさらに厳密に模倣するより真正の5’-キャップ構造を生成することができる。mRNA安定性および翻訳可能性を増強するために、多くの合成5’-キャップアナログが開発され、当技術分野で公知である(例えば、Grudzien-Nogalska, E.、Kowalska, J.、Su, W.、Kuhn, A.N.、Slepenkov, S.V.、Darynkiewicz, E.、Sahin, U.、Jemielity, J.およびRhoads, R.E.、Synthetic mRNAs with superior translation and stability properties in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology、969巻(Rabinovich, P.H.編)、2013年を参照されたい)。
【0023】
3’-末端において、アデニンヌクレオチドの長鎖(ポリAテール)は通常、RNAプロセシング中にmRNA分子に付加される。転写直後に、転写物の3’末端は切断されて、3’ヒドロキシルを解放し、これに対して、ポリアデニル化と呼ばれるプロセスにおいて、ポリAポリメラーゼはアデニンヌクレオチド鎖をRNAに付加する。ポリAテールは、mRNAの翻訳効率と安定性の両方を増強することが広く示されている(Bernstein, P.およびRoss, J.、1989年、Poly (A)、poly (A) binding protein and the regulation of mRNA stability、Trends Bio Sci、14巻、373~377頁;Guhaniyogi, J.およびBrewer, G.、2001年、Regulation of mRNA stability in mammalian cells、Gene、265巻、11~23頁;Dreyfus, M.およびRegnier, P.、2002年、The poly (A) tail of mRNAs: Bodyguard in eukaryotes, scavenger in bacteria、Cell、111巻、611~613頁を参照されたい)。
【0024】
in vitroで転写されたmRNAのポリ(A)テーリングは、これらに限定されないが、ポリ(T)トラクト(tract)のDNAテンプレートへのクローニングまたはポリ(A)ポリメラーゼを使用した転写後の付加を含めた様々な手法を使用して達成することができる。最初のケースは、ポリ(T)トラクトの大きさに応じて、定義された長さのポリ(A)テールを有するmRNAのin vitro転写を可能にするが、テンプレートの追加操作を必要とする。後者のケースは、アデニン残基の、RNAの3’末端への組込みを触媒するポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ポリ(A)テールをin vitroで転写したmRNAに酵素的に付加することを含み、DNAテンプレートの追加操作は必要ないが、不均一な長さのポリ(A)テールを有するmRNAが結果として生じる。5’-キャッピングおよび3’-ポリ(A)テーリングは、これらに限定されないが、ポリ(A)ポリメラーゼテーリングキット(EpiCenter)、mMESSAGE mMACHINE T7 Ultraキットおよびポリ(A)テーリングキット(Life Technologies)を含めた様々な市販のキットを使用して、ならびに市販の試薬、様々なARCAキャップ、ポリ(A)ポリメラーゼなどを用いて実施することができる。
【0025】
5’キャップおよび3’ポリアデニル化に加えて、in vitro転写物の他の修飾が、翻訳の効率および安定性に関係するような利益を提供することが報告されている。病原性DNAおよびRNAは、真核細胞内の様々なセンサーにより認識され、強力な生得的免疫応答を引き起こすことができることが当技術分野で周知されている。天然の供給源由来の大部分の核酸は修飾ヌクレオシドを含有するので、病原性DNAおよびRNAと、自己DNAおよびRNAとを判別する能力は、少なくとも部分的に構造およびヌクレオシド修飾に基づくことが示されている。対照的に、in vitroで合成したRNAは、これらの修飾を欠き、したがって免疫刺激性になり、これが、ひいては、上記に概説されているように有効なmRNA翻訳を阻害する可能性がある。in vitroで転写されたmRNAへの修飾ヌクレオシドの導入を使用して、RNAセンサーの認識および活性化を防止し、したがってこの所望しない免疫刺激活性を軽減し、翻訳能力を増強することができる(例えば、Kariko, K.およびWeissman, D.、2007年、Naturally occurring nucleoside modifications suppress the immunostimulatory activity of RNA: implication for therapeutic RNA development、Curr Opin Drug Discov Devel、10巻、523~532頁;Pardi, N.、Muramatsu, H.、Weissman, D.、Kariko, K.、In vitro transcription of long RNA containing modified nucleosides in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology、969巻(Rabinovich, P.H.編)、2013年;Kariko, K.、Muramatsu, H.、Welsh, F.A.、Ludwig, J.、Kato, H.、Akira, S.、Weissman, D.、2008年、Incorporation of Pseudouridine Into mRNA Yields Superior Nonimmunogenic Vector With Increased Translational Capacity and Biological Stability、Mol Ther、16巻、1833~1840頁を参照されたい)。修飾RNAの合成に使用される修飾ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、当技術分野で公知の一般的方法および手順を使用して、調製、モニタリングおよび利用することができる。単独でまたは他の修飾ヌクレオシドと組み合わせて、ある程度in vitroで転写されたmRNAに取り込むことができる多種多様のヌクレオシド修飾が利用可能である(例えば、US2012/0251618を参照されたい)。ヌクレオシド修飾されたmRNAのin vitro合成は、同時に翻訳能力を増強しながら、免疫センサーを活性化する能力を減少させることが報告されている。
【0026】
翻訳可能性および安定性に関する利益を提供するために修飾することができるmRNAの他の構成成分として、5’および3’の非翻訳領域(UTR)が挙げられる。両方ともまたは独立して、UTR(好ましい5’および3’UTRは細胞またはウイルスRNAから得ることができる)を最適化することは、in vitroで転写されたmRNAのmRNA安定性および翻訳効率を増加させることが示されている(例えば、Pardi, N.、Muramatsu, H.、Weissman, D.、Kariko, K.、In vitro transcription of long RNA containing modified nucleosides in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology、969巻(Rabinovich, P.H.編)、2013年を参照されたい)。
【0027】
mRNAに加えて、他の核酸ペイロードを本発明の実施形態に使用することができる。オリゴヌクレオチドに対して、調製の方法として、これらに限定されないが、長い前駆体の化学合成および酵素的、化学的切断、上記のようなin vitro転写などが挙げられる。DNAおよびRNAヌクレオチドを合成する方法は、当技術分野で広く使用され、周知である(例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれている、Gait, M. J.(編)Oligonucleotide synthesis: a practical approach, Oxford [Oxfordshire]、Washington、D.C.: IRL Press、1984年;およびHerdewijn, P.(編)Oligonucleotide synthesis: methods and applications、Methods in Molecular Biology、288巻(Clifton, N.J.)Totowa, N.J.: Humana Press、2005年を参照されたい)。
【0028】
プラスミドDNAに関して、本発明の実施形態での使用のための調製は、これらに限定されないが、目的のプラスミドを含有する細菌の液体培養物中のin vitroでのプラスミドDNAの増大および単離を一般的に利用する。特定の抗生剤(ペニシリン、カナマイシンなど。)に対する耐性をコードする目的のプラスミドに遺伝子が存在することにより、目的のプラスミドを含有する細菌を、抗生剤を含有する培養物中で選択的に増殖させることが可能となる。プラスミドDNAを単離する方法は当技術分野で広く使用され、周知である(例えば、Heilig, J.、Elbing, K. L.およびBrent, R(2001年)Large-Scale Preparation of Plasmid DNA. Current Protocols in Molecular Biology.、41巻:II号:1.7:1.7.1~1.7.16頁;Rozkov, A.、Larsson, B.、Gillstrom, S.、Bjornestedt, R.、およびSchmidt, S. R.(2008年)、Large-scale production of endotoxin-free plasmids for transient expression in mammalian cell culture. Biotechnol. Bioeng.、99巻:557~566頁;およびUS6197553B1を参照されたい)。プラスミド単離は、これらに限定されないが、Plasmid Plus(Qiagen)、GenJET プラスミドMaxiPrep(Thermo)およびPure Yield MaxiPrep(Promega)キットを含めた様々な市販のキットを使用して、ならびに市販の試薬を用いて実施することができる。
【0029】
遺伝子およびタンパク質発現をモジュレートする核酸などの活性物質(例えば、治療剤)を送達するための、本発明の脂質、これを含む脂質ナノ粒子および組成物、ならびにこれらの使用の様々な例示的な実施形態が、以下にさらに詳細に記載されている。
【0030】
本明細書で使用される場合、他に特定されていない限り、以下の用語は、これらに属する意味を有する。
【0031】
特に文脈上異なって理解されることを要しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通して、単語「含む」およびその変形形態、例えば、「含む(comprises)」および「含むこと」などは、開かれた、包括的な意味、すなわち、「~を含むが、これらに限定されない」と解釈されるものとする。
【0032】
本明細書全体にわたり「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、この実施形態に関連して記載されている特定の特色、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体にわたり様々な箇所における「一実施形態では」または「ある実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態について言及しているわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方式で組み合わせてもよい。
【0033】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、特に文脈上そうではないことが明確に指示されていない限り、複数の言及を含む。
【0034】
「所望のタンパク質の発現を誘発する」という句は、所望のタンパク質の発現を増加させる核酸の能力を指す。タンパク質発現の程度を調査するため、試験試料(例えば、所望のタンパク質を発現する培養中の細胞試料)または試験哺乳動物(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトなどまたは動物モデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)などまたはヒト以外の霊長類(例えば、サル)モデル)を核酸(例えば、本発明の脂質と組み合わせた核酸)と接触させる。試験試料または試験動物における所望のタンパク質の発現を、核酸と接触させていない、または核酸が投与されていない対照試料(例えば、所望のタンパク質を発現する培養中の細胞試料)または対照哺乳動物(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトなどまたは動物モデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)などまたはヒト以外の霊長類(例えば、サル)モデル)中の所望のタンパク質の発現と比較する。所望のタンパク質が対照試料または対照哺乳動物に存在する場合、対照試料または対照哺乳動物中の所望のタンパク質の発現に1.0の値を割り当てることができる。特定の実施形態では、所望のタンパク質の発現の誘発は、試験試料または試験哺乳動物中の所望のタンパク質発現の、対照試料または対照哺乳動物中の所望のタンパク質発現のレベルに対する比が1を超えた場合、例えば、約1.1、1.5、2.0、5.0または10.0である場合達成される。所望のタンパク質が対照試料にも対照哺乳動物にも存在しない場合、所望のタンパク質の発現の誘発は、試験試料または試験哺乳動物中で、任意の測定可能なレベルの所望のタンパク質が検出された場合達成される。当業者であれば、試料中のタンパク質発現レベルを決定するのに適当なアッセイ、例えばドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、および表現型アッセイ、または適当な条件下で蛍光もしくは発光を生成できるリポータータンパク質に基づくアッセイを理解している。
【0035】
「標的遺伝子の発現を阻害する」という句は、標的遺伝子の発現をサイレンシングさせる、減少させる、または阻害する核酸の能力を指す。遺伝子サイレンシングの程度を調査するために、試験試料(例えば、標的遺伝子を発現する培養中の細胞試料)または試験哺乳動物(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトなどまたは動物モデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)などまたはヒト以外の霊長類(例えば、サル)モデル)を、標的遺伝子の発現をサイレンシングさせる、減少させる、または阻害する核酸と接触させる。試験試料または試験動物中の標的遺伝子の発現を、核酸と接触させていない、または核酸が投与されていない対照試料(例えば、標的遺伝子を発現する培養中の細胞試料)または対照哺乳動物(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトなどまたは動物モデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)などまたはヒト以外の霊長類(例えば、サル)モデル)中の標的遺伝子の発現と比較する。対照試料または対照哺乳動物中の標的遺伝子の発現に、100%の値を割り当てることができる。特定の実施形態では、標的遺伝子の発現のサイレンシング、阻害、または減少は、対照試料または対照哺乳動物中の標的遺伝子発現のレベルに対する、試験試料または試験哺乳動物中の標的遺伝子の発現レベルが約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%である場合達成される。言い換えると、核酸は、核酸と接触させていない、または核酸が投与されていない対照試料または対照哺乳動物中の標的遺伝子の発現レベルに対して、試験試料または試験哺乳動物中で標的遺伝子の発現を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%サイレンシング、減少させる、または阻害することが可能である。標的遺伝子の発現レベルを決定するのに適切なアッセイとして、限定されないが、当業者に公知の技術、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に公知の表現型アッセイなどを使用したタンパク質またはmRNAレベルの調査が挙げられる。
【0036】
活性薬剤または治療剤、例えば、治療用核酸などの「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果、例えば、核酸の不在下で検出された通常の発現レベルと比較して、標的配列の発現の増加または阻害を生じるのに十分な量である。標的配列の発現の増加は、核酸の不在下では存在しない発現産物のケースでは、任意の測定可能なレベルが検出された場合達成される。核酸との接触より前に発現産物があるレベルで存在するケースでは、発現の増加は、mRNAなどの核酸を用いて得た値の倍数増加(fold increase)が、対照に対して、約1.05、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、750、1000、5000、10000倍またはそれを超える場合達成される。標的遺伝子または標的配列の発現の阻害は、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸を用いて得た値が、対照に対して、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%である場合達成される。標的遺伝子または標的配列の発現を測定するのに適切なアッセイとして、例えば、当業者に公知の技術、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、適切なリポータータンパク質の蛍光または発光、ならびに当業者に公知の表現型アッセイなどを使用したタンパク質またはRNAレベルの調査が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態で少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有するポリマーを指し、DNA、RNA、およびそのハイブリッドを含む。DNAは、アンチセンス分子、プラスミドDNA、cDNA、PCR産物、またはベクターの形態であってよい。RNAは、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA、miRNA、micRNA、多価RNA、ダイサー基質RNAまたはウイルスRNA(vRNA)、およびこれらの組合せの形態であってよい。核酸は、合成、天然に存在する、および天然に存在しないものであり、基準核酸と同様の結合特性を有する、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基または結合を含有する核酸を含む。このようなアナログの例として、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、およびペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。具体的に限定されない限り、用語は、基準核酸と同様の結合特性を有する天然のヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を包含する。他に指示されていない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそのバリアント(例えば、縮退コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、一塩基多型、および相補性配列ならびに明示的に示された配列も暗示的に包含する。具体的には、縮退コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの三番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.、19巻:5081頁(1991年);Ohtsukaら、J. Biol. Chem.、260巻:2605~2608頁(1985年);Rossoliniら、Mol. Cell. Probes、8巻:91~98頁(1994年))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を介して一緒に連結している。「塩基」は、プリンおよびピリミジンを含み、このプリンおよびピリミジンは、天然の化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、および天然のアナログ、ならびにプリンおよびピリミジンの合成誘導体をさらに含み、このプリンおよびピリミジンの合成誘導体は、例えば、これらに限定されないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、およびアルキルハロゲン化物などの新規反応性基を配置する修飾を含むが、これに限定されない。
【0038】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドの産生に必要な部分的長さまたは全長のコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。
【0039】
「遺伝子産物」とは、本明細書で使用される場合、RNA転写物またはポリペプチドなどの遺伝子の産物を指す。
【0040】
「脂質」という用語は、これらに限定されないが、脂肪酸のエステルを含み、水中では難溶性であるが、多くの有機溶媒中では可溶性であることを一般的に特徴とする有機化合物の群を指す。脂質は、少なくとも3つのクラスに通常分けられる:(1)「単純脂質」、これは脂肪および油ならびに蝋を含む、(2)「複合脂質」、これは、リン脂質および糖脂質を含む、ならびに(3)「誘導脂質」、例えば、ステロイドなど。
【0041】
「ステロイド」は、以下の炭素骨格:
【化2】
を含む化合物である。ステロイドの非限定的例は、コレステロールなどを含む。
【0042】
「カチオン性脂質」とは、正に帯電することが可能な脂質を指す。例示的なカチオン性脂質は、正電荷を保持する1つまたは複数のアミン基を含む。好ましいカチオン性脂質は、これらが、pHに応じて、正に帯電しているか、または中性の形態で存在できるようにイオン化できる。カチオン性脂質のイオン化は、異なるpH条件下での脂質ナノ粒子の表面電荷に影響を及ぼす。この電荷状態は、血漿タンパク質吸収、血液クリアランスおよび組織分布(Semple, S.C.ら、Adv. Drug Deliv Rev、32巻:3~17頁(1998年))ならびに核酸の細胞内送達に重要な意味を持つエンドソーム溶解性の非二重層構造を形成する能力(Hafez, I.M.ら、Gene Ther 8巻:1188~1196頁(2001年))に影響を及ぼし得る。
【0043】
「ポリマーコンジュゲート脂質」という用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を指す。ポリマーコンジュゲート脂質の例はペグ化脂質である。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で公知であり、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などを含む。
【0044】
「中性脂質」という用語は、選択されたpHにおいて、帯電していないか、または中性の双性イオン形態のいずれかで存在するいくつかの脂質種のいずれかを指す。生理学的pHでのこのような脂質として、これらに限定されないが、ホスホチジルコリン、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ホスファチジルエタノールアミン(phophatidylethanolamines)例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミドなど、ステロイド、例えば、ステロールなどおよびこれらの誘導体が挙げられる。中性脂質は、合成でも、または天然由来でもよい。
【0045】
「荷電脂質」という用語は、有用な生理学的な範囲内のpH、例えばpH約3~pH約9であるかに関係なく、正に帯電または負に帯電した形態で存在するいくつかの脂質種のいずれかを指す。荷電脂質は合成でもまたは天然由来でもよい。荷電脂質の例として、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ステロールヘミスクシネート、ジアルキルトリメチルアンモニウム-プロパン、(例えばDOTAP、DOTMA)、ジアルキルジメチルアミノプロパン、エチルホスホコリン、ジメチルアミノエタンカルバモイルステロール(例えばDC-Chol)が挙げられる。
【0046】
「脂質ナノ粒子」という用語は、構造(I)の化合物または他の特定されたカチオン性脂質の1つまたは複数を含む、少なくとも1つのナノメートル程度の(例えば、1~1,000nm)寸法を有する粒子を指す。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官、腫瘍など)に活性薬剤または治療剤、例えば、核酸(例えば、mRNA)などを送達するために使用することができる製剤に含まれている。一部の実施形態では、本発明の脂質ナノ粒子は核酸を含む。このような脂質ナノ粒子は通常、構造(I)の化合物と、中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤とを含む。一部の実施形態では、活性薬剤または治療剤、例えば、核酸などは、脂質ナノ粒子の脂質部分または脂質ナノ粒子の脂質部分の一部もしくはすべてにより包まれた水性空間に封入され、これによって、宿主生物または細胞の機構、例えば、有害な免疫応答により誘発される酵素的分解または他の望ましくない作用からこれを保護することができる。
【0047】
様々な実施形態では、脂質ナノ粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、または150nmの平均直径を有し、実質的に無毒性である。ある特定の実施形態では、核酸は、脂質ナノ粒子中に存在する場合、水溶液中で、ヌクレアーゼによる分解に対して耐性がある。核酸を含む脂質ナノ粒子およびこれらの調製方法は、例えば、すべての目的のために、これら全体においてその完全な開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2004/0142025号、第2007/0042031号およびPCT公開WO2017/004143、WO2015/199952、WO2013/016058およびWO2013/086373に開示されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「~が封入された脂質」とは、完全な封入、部分的な封入、または両方を用いて、活性薬剤または治療剤、例えば、核酸(例えば、mRNA)などを提供する脂質ナノ粒子を指す。ある実施形態では、核酸(例えば、mRNA)は脂質ナノ粒子内に完全に封入されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語は、水を含む組成物を指す。
【0050】
核酸脂質ナノ粒子に関連して「血清に安定な」とは、遊離DNAまたはRNAを有意に分解する、血清またはヌクレアーゼアッセイへの曝露後、ヌクレオチドが有意に分解しないことを意味する。適切なアッセイとして、例えば、標準血清アッセイ、DNAseアッセイ、またはRNAseアッセイが挙げられる。
【0051】
「全身送達」は、本明細書で使用される場合、生物内で活性薬剤の広範囲な曝露をもたらすことができる治療用製品の送達を指す。一部の投与技術は、ある特定の薬剤の全身送達をもたらすことができるが、他の薬剤はできない。全身送達とは、薬剤の有用な、好ましくは治療用の量が身体の大部分に曝露されることを意味する。脂質ナノ粒子の全身送達は、例えば、静脈内、動脈内、皮下、および腹腔内送達を含めた当技術分野で公知の任意の手段によることができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子の全身送達は静脈内送達による。
【0052】
「局所送達」とは、本明細書で使用される場合、生物内の標的部位に直接活性薬剤を送達することを指す。例えば、薬剤は、疾患部位、例えば、腫瘍など、他の標的部位、例えば、炎症部位など、または標的器官、例えば、肝臓、心臓、膵臓、腎臓などに直接注射することにより局所的に送達できる。局所送達はまた、局所的適用または局在化注射の技術、例えば、筋肉内、皮下または皮内注射などを含むことができる。局所送達は、全身性薬理効果を妨げない。
【0053】
「アルキル」とは、例えば、1~24個の炭素原子(C~C24アルキル)、4~20個の炭素原子(C~C20アルキル)、6~16個の炭素原子(C~C16アルキル)、6~9個の炭素原子(C~Cアルキル)、1~15個の炭素原子(C~C15アルキル)、1~12個の炭素原子(C~C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C~Cアルキル)または1~6個の炭素原子(C~Cアルキル)を有し、分子の残りに単結合で結合している、飽和の、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖状または分岐状の炭化水素鎖ラジカル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(tブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなど)を指す。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アルキル基は必要に応じて置換されている。
【0054】
「アルケニル」とは、例えば、2~24個の炭素原子(C~C24アルケニル)、4~20個の炭素原子(C~C20アルケニル)、6~16個の炭素原子(C~C16アルケニル)、6~9個の炭素原子(C~Cアルケニル)、2~15個の炭素原子(C~C15アルケニル)、2~12個の炭素原子(C~C12アルケニル)、2~8個の炭素原子(C~Cアルケニル)または2~6個の炭素原子(C~Cアルケニル)を有し、分子の残りに単結合で結合し、1つまたはそれより多くの炭素-炭素二重結合を含有している、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖状または分岐状の炭化水素鎖ラジカル(例えば、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなど)を指す。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アルケニル基は必要に応じて置換されている。
【0055】
「アルキニル」とは、例えば、2~24個の炭素原子(C~C24アルキニル)、4~20個の炭素原子(C~C20アルキニル)、6~16個の炭素原子(C~C16アルキニル)、6~9個の炭素原子(C~Cアルキニル)、2~15個の炭素原子(C~C15アルキニル)、2~12個の炭素原子(C~C12アルキニル)、2~8個の炭素原子(C~Cアルキニル)または2~6個の炭素原子(C~Cアルキニル)を有し、分子の残りに単結合で結合し、1つまたはそれより多くの炭素-炭素三重結合を含有している、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖状または分岐状の炭化水素鎖ラジカル(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなど)を指す。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アルキニル基は必要に応じて置換されている。
【0056】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」とは、例えば、1~24個の炭素原子(C~C24アルキレン)、1~15個の炭素原子(C~C15アルキレン)、1~12個の炭素原子(C~C12アルキレン)、1~8個の炭素原子(C~Cアルキレン)、1~6個の炭素原子(C~Cアルキレン)、2~4個の炭素原子(C~Cアルキレン)、1~2個の炭素原子(C~Cアルキレン)を有し、分子の残りをラジカル基に連結している、飽和の、炭素および水素のみからなる直鎖状または分岐状の二価の炭化水素鎖(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなど)を指す。アルキレン鎖は、分子の残りに単結合を介して結合し、単結合を介してラジカル基に結合している。アルキレン鎖の分子の残りおよびラジカル基への結合点は、鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アルキレン鎖は必要に応じて置換されていてもよい。
【0057】
「アルケニレン」または「アルケニレン鎖」とは、例えば、2~24個の炭素原子(C~C24アルケニレン)、2~15個の炭素原子(C~C15アルケニレン)、2~12個の炭素原子(C~C12アルケニレン)、2~8個の炭素原子(C~Cアルケニレン)、2~6個の炭素原子(C~Cアルケニレン)または2~4個の炭素原子(C~Cアルケニレン)を有し、分子の残りをラジカル基に連結し、炭素および水素のみからなり、1つまたはそれより多くの炭素-炭素二重結合を含有している、直鎖状または分岐状の二価の炭化水素鎖(例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなど)を指す。アルケニレン鎖は、分子の残りに単結合または二重結合を介して結合し、単結合または二重結合を介してラジカル基に結合している。アルケニレン鎖の、分子の残りおよびラジカル基への結合点は、鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アルケニレン鎖は必要に応じて置換されていてもよい。
【0058】
「アリール」とは、水素、6~18個の炭素原子および少なくとも1つの芳香族環を含む炭素環系ラジカルを指す。本発明の目的のため、アリールラジカルは単環式、二環式、三環式または四環式環系であり、縮合環系または架橋環系を含み得る。アリールラジカルとして、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンに由来するアリールラジカルが挙げられる。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、「アリール」という用語または接頭語「ar-」(例えば、「アラルキル」など)は、必要に応じて置換されているアリールラジカルを含むことが意図されている。
【0059】
「アラルキル」とは、式-R-R(式中、Rは上で定義された通りのアルキレンまたはアルケニレンであり、Rは上で定義された通りの1つまたは複数のアリールラジカルである)のラジカル、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどを指す。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、アラルキル基は必要に応じて置換されている。
【0060】
「シクロアルキル」とは、3~15個の炭素原子、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し、飽和しており、分子の残りに単結合で結合している炭素原子および水素原子のみからなる、安定した非芳香族単環式または多環式の炭化水素ラジカル(縮合または架橋した環系を含んでもよい)を指す。単環式シクロアルキルラジカルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。多環式ラジカルは、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどを含む。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、シクロアルキル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0061】
「シクロアルキレン」は二価のシクロアルキル基である。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、シクロアルキレン基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0062】
「シクロアルケニル」とは、3~15個の炭素原子、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し、1つまたはそれより多くの炭素-炭素二重結合を含み、分子の残りに単結合で結合している炭素原子および水素原子のみからなる、安定した非芳香族単環式または多環式の炭化水素ラジカル(縮合または架橋した環系を含んでもよい)を指す。単環式シクロアルケニルラジカルは、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルを含む。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、シクロアルケニル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0063】
「シクロアルケニレン」は二価のシクロアルケニル基である。明細書中でそうではないことが具体的に述べられていない限り、シクロアルケニレン基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0064】
本明細書で使用される「置換されている」という用語は、少なくとも1個の水素原子が、非水素原子、例えば、これらに限定されないが、ハロゲン原子、例えばF、Cl、Br、またはIなど;オキソ基(=O);ヒドロキシル基(-OH);C~C12アルキル基;シクロアルキル基;-(C=O)OR’;-O(C=O)R’;-C(=O)R’;-OR’;-S(O)R’;-S-SR’;-C(=O)SR’;-SC(=O)R’;-NR’R’;-NR’C(=O)R’;-C(=O)NR’R’;-NR’C(=O)NR’R’;-OC(=O)NR’R’;-NR’C(=O)OR’;-NR’S(O)NR’R’;-NR’S(O)R’;および-S(O)NR’R’(式中、R’は、出現ごとに独立して、H、C~C15アルキルまたはシクロアルキルであり、xは、0、1または2である)への結合に置き換えられている、上記基のいずれか(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル(cycloalkyenyl)、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレン)を意味する。一部の実施形態では、置換基はC~C12アルキル基である。他の実施形態では、置換基はシクロアルキル基である。他の実施形態では、置換基は、ハロ基、例えば、フルオロなどである。他の実施形態では、置換基はオキソ基である。他の実施形態では、置換基はヒドロキシル基である。他の実施形態では、置換基はアルコキシ基(-OR’)である。他の実施形態では、置換基はカルボキシル基である。他の実施形態では、置換基はアミン基(-NR’R’)である。
【0065】
「必要に応じた」または「必要に応じて」(例えば、必要に応じて置換されている)は、続いて記載されている状況の事象が起こっても、または起こらなくてもよいことを意味し、記載は、前記事象または状況が起こった場合と、それが起こらない場合とを意味する。例えば、「必要に応じて置換されているアルキル」とは、アルキルラジカルは、置換されていても、または置換されていなくてもよいことを意味し、記載は置換アルキルラジカルと置換を有さないアルキルラジカルの両方を含むことを意味する。
【0066】
「プロドラッグ」とは、生理的条件下で、または構造(I)の生物活性のある化合物への加溶媒分解により、変換することができる化合物を示すことを意図する。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される構造(I)の化合物の代謝性前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする被験体に投与されたときで不活性であってよいが、in vivoで構造(I)の活性化合物に変換される。プロドラッグは通常、例えば、血中の加水分解により、in vivoで急速に変換されて、構造(I)の親化合物を産生する。プロドラッグ化合物は、哺乳動物の生物において、溶解度、組織適合性または遅延放出という利点をしばしばもたらす(Bundgard, H.、Design of Prodrugs(1985年)、7~9頁、21~24頁(Elsevier、Amsterdam)を参照されたい)。プロドラッグの議論は、Higuchi, Tら、A.C.S. Symposium Series、14巻およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年において提供されている。
【0067】
「プロドラッグ」という用語はまた、このようなプロドラッグが哺乳動物の被験体に投与された場合に構造(I)の活性化合物をin vivoで放出する任意の共有結合した担体を含むことを意図する。構造(I)の化合物のプロドラッグは、修飾が、慣例的な操作またはin vivoのいずれかで切断されて構造(I)の親化合物になるように、構造(I)の化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が任意の基に結合し、構造(I)の化合物のプロドラッグが、哺乳動物の被験体に投与された場合、この任意の基が切断されて、遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基をそれぞれ形成する構造(I)の化合物を含む。プロドラッグの例として、これらに限定されないが、構造(I)の化合物中のアルコールのアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体またはアミン官能基のアミド誘導体などが挙げられる。
【0068】
本明細書で開示されている本発明の実施形態はまた、1個または複数の原子が、異なる原子量または質量数を有する原子で置き換えられることにより同位体標識されている、構造(I)の化合物のすべての薬学的に許容される化合物を包含することを意図する。開示化合物に取り込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなどが挙げられる。これらの放射性標識した化合物は、例えば、作用部位もしくは作用機序、または薬理学的に重要な作用部位への結合親和性を特徴付けることにより、化合物の有効性を決定または測定するのを助けるのに有用であり得る。構造(I)または(II)の構造のある特定の同位体で標識された化合物、例えば、放射性同位体を取り込んでいるものなどは、薬物および/または基質組織分布研究において有用である。放射性同位元素トリチウム、すなわち、H、および炭素14、すなわち、14Cは、これらの組込みの容易さおよび素早い検出手段を考慮すると、この目的に特に有用である。
【0069】
より重い同位体、例えば、重水素、すなわち、Hなどによる置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の増加または必要用量の減少に起因するある特定の治療上の利点をもたらすことができるので、一部の状況では好ましいこともある。
【0070】
ポジトロン放出同位体、例えば、11C、18F、15Oおよび13Nなどによる置換は、基質受容体占有率を調査するためのポジトロン放出トポグラフィー(PET)研究において有用であり得る。構造(I)の同位体標識された化合物は、当業者に公知の従来の技術によって、または以前に利用した非標識試薬の代わりに、適当な同位体標識した試薬を使用して、以下に提示されているように、調製および実施例に記載されているものと類似のプロセスにより一般的に調製することができる。
【0071】
本明細書で開示されている本発明の実施形態はまた、開示化合物のin vivo代謝産物を包含することを意図する。このような産物は、主に酵素的プロセスによる、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などから生じ得る。したがって、本発明の実施形態は、その代謝産物を産生するのに十分な期間、本発明の化合物を哺乳動物に投与することを含むプロセスにより生成される化合物を含む。このような産物は、構造(I)の放射性標識した化合物を検出可能な用量で、ラット、マウス、モルモット、サル、またはヒトなどの動物に投与し、代謝が起きるだけの十分な時間おき、尿、血液または他の生物試料からその変換産物を単離することによって通常同定される。
【0072】
「安定した化合物」および「安定した構造」とは、反応混合物から有用な程度の純度への単離および効果的治療剤への製剤化に耐え抜くのに十分に強固な化合物を示すことを意図する。
【0073】
「哺乳動物」は、ヒトならびに家畜、例えば、実験動物および家庭のペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)と、非家畜動物、例えば、野生生物などの両方を含む。
【0074】
「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」として、限定されないが、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤(glidant)、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、香味向上剤(flavor enhancer)、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が挙げられ、これらは、ヒトまたは家畜における使用が許容されるとして米国食品医薬品局により認可されたものである。
【0075】
「薬学的に許容される塩」は、酸付加塩(acid addition salt)と塩基付加塩(base addition salt)の両方を含む。
【0076】
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的でも他の点でも望ましくないわけではなく、無機酸、例えば、これらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、および有機酸、例えば、これらに限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイヒ酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などと一緒に形成される塩を指す。
【0077】
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的でも他の点でも望ましくないわけではない塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加から調製される。無機塩基に由来する塩として、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられる。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩である。有機塩基に由来する塩として、これらに限定されないが、第一級、第二級、および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0078】
結晶化は多くの場合、構造(I)の化合物の溶媒和物を生成する。本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、構造(I)の化合物の1個または複数の分子と、溶媒の1個または複数の分子とを含む凝集体を指す。溶媒は水であってよく、このケースでは、溶媒和物は水和物であってよい。代わりに、溶媒は有機溶媒であってよい。したがって、本発明の化合物は、一水和物、二水和物、半水化物、セスキ水和物(sesquihydrate)、三水和物、四水和物などを含めた水和物、ならびに対応する溶媒和形態として存在し得る。一部の実施形態では、構造(I)の化合物は真の溶媒和物として存在してもよいが、その一方で、他のケースでは、構造(I)の化合物は、単に外来性の水を保持してもよいし、または水とある外来性溶媒の混合物であってもよい。
【0079】
「医薬組成物」とは、構造(I)の化合物と、哺乳動物、例えば、ヒトに生物活性化合物を送達するために当技術分野で一般的に認められた媒体との製剤を指す。このような媒体として、このためのすべての薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤が挙げられる。
【0080】
「有効量」または「治療有効量」とは、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合、哺乳動物、好ましくはヒトにおける処置を実行するのに十分である、構造(I)の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の実施形態の脂質ナノ粒子の量は、化合物、状態およびその重症度、投与方式、ならびに処置すべき哺乳動物の年齢に応じて変動することになるが、当業者であれば、自身の知識および本開示を考慮して慣例的に決定することができる。
【0081】
本明細書で使用される「処置すること」または「処置」は、目的の疾患または状態を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおける目的の疾患または状態の処置を網羅し、
(i)哺乳動物において、特に、このような哺乳動物がその状態に対する素因を有するが、それを有するとまだ診断されていない場合、その疾患もしくは状態が生じるのを防止すること、
(ii)疾患もしくは状態を阻害する、すなわち、その発症を抑止すること、
(iii)疾患もしくは状態を緩和する、すなわち、その疾患もしくは状態の退行を引き起こすこと、または
(iv)疾患もしくは状態に起因する症状を緩和する、すなわち、根底にある疾患もしくは状態に対処することなく疼痛を緩和すること
を含む。本明細書で使用される場合、「疾患」および「状態」という用語は、交換可能に使用してもよいし、または特定の疾病もしくは状態が公知の原因物質を有さないこともあり(そのため、病因がまだ解決されておらず)、したがって疾患としてまだ認識されていないが、望ましくない状態もしくは症候群としてのみ認識され、程度の差はあるが特定の一連の症状が臨床医により確認されているという点で異なる場合もある。
【0082】
構造(I)の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の不斉中心を含有することができ、したがって、アミノ酸に対して、絶対立体化学の点から(R)-もしくは(S)-、または(D)-もしくは(L)-と定義することができるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性形態を生じることができる。本発明の実施形態は、すべてのこのような可能な異性体、ならびにこれらのラセミおよび光学的に純粋な形態を含むことを意図する。光学活性(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製してもよいし、または従来技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別再結晶を使用して分割してもよい。個々のエナンチオマーの調製/単離の従来技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用したラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割を含む。本明細書に記載の化合物がオレフィン二重結合または他の幾何的不斉中心を含有する場合、他に特定されていない限り、化合物は、EとZの両方の幾何異性体を含むことが意図される。同様に、すべての互変異性形態もまた含まれることが意図される。
【0083】
「立体異性体」とは、同じ結合により結合した同じ原子で構成されるが、交換可能ではない異なる三次元構造を有する化合物を指す。本発明は、様々な立体異性体およびその混合物を想定し、「エナンチオマー」を含み、「エナンチオマー」とは、その分子が互いに重ね合わせ不可能な鏡像である2つの立体異性体を指す。
【0084】
「互変異性体」とは、分子の1個の原子から、同じ分子の別の原子へのプロトンシフトを指す。本発明は任意の前記化合物の互変異性体を含む。
【0085】
化合物
ある態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドと共に脂質ナノ粒子を形成するために、他の脂質成分、例えば、中性脂質、荷電脂質、ステロイドおよび/またはポリマーコンジュゲート脂質などと組み合わせることが可能である新規脂質化合物を提供する。理論に制約されることを望むことなく、これらの脂質ナノ粒子は、血清中でオリゴヌクレオチドを分解から遮蔽し、in vitroおよびin vivoでのオリゴヌクレオチドの細胞への有効な送達を提供すると考えられている。
【0086】
一実施形態では、化合物は、以下の構造(I):
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくは立体異性体を有し、式中、
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NRまたは-NRC(=O)ORであり、
は、-O(C=O)R、-(C=O)OR、-C(=O)R、-OR、-S(O)、-S-SR、-C(=O)SR、-SC(=O)R、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-NRC(=O)NR、-OC(=O)NR;-NRC(=O)ORまたはRへの直接結合であり、
およびGは、それぞれ独立して、C~C12アルキレンまたはC~C12アルケニレンであり、
は、C~C24アルキレン、C~C24アルケニレン、C~CシクロアルキレンまたはC~Cシクロアルケニレンであり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはC~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり、
およびRは、それぞれ独立して、C~C12アルキルまたはC~C12アルケニルであり、
およびRは、それぞれ独立して、分岐状C~C24アルキルまたは分岐状C~C24アルケニルであり、
は-N(R)Rであり、
はC~C12アルキルであり、
は置換C~C12アルキルであり、
xは、0、1または2であり、
アルキル、アルケニル、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリールおよびアラルキルは各々、他に特定されていない限り、独立して置換されているまたは置換されていない。
【0087】
ある特定の実施形態では、Gは置換されていない。より特定の実施形態では、GはC~C12アルキレンであり、例えば、一部の実施形態では、GはC~Cアルキレンであり、または他の実施形態では、GはC~C12アルキレンである。一部の実施形態では、GはCまたはCアルキレンである。
【0088】
前述の実施形態の一部では、化合物は、以下の構造(IA):
【化4】
を有し、式中、yおよびzは、それぞれ独立して、2~12の範囲の整数、例えば、2~6の整数、4~10の整数、または例えば4もしくは5である。ある特定の実施形態では、yおよびzはそれぞれ同じであり、4、5、6、7、8および9から選択される。
【0089】
前述の実施形態の一部では、Lは、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRであり、Lは、-O(C=O)R、-(C=O)ORまたは-C(=O)NRである。例えば、一部の実施形態では、LおよびLはそれぞれ-(C=O)ORおよび-(C=O)ORである。他の実施形態では、Lは-(C=O)ORであり、Lは-C(=O)NRである。他の実施形態では、Lは-C(=O)NRであり、Lは-C(=O)NRである。
【0090】
前述のものの他の実施形態では、化合物は、以下の構造(IB)、(IC)、(ID)または(IE):
【化5】
の1つを有する。
【0091】
前述の実施形態の一部では、化合物は構造(IB)を有し、他の実施形態では、化合物は構造(IC)を有し、さらに他の実施形態では、化合物は構造(ID)を有する。他の実施形態では、化合物は構造(IE)を有する。
【0092】
前述のものの一部の異なる実施形態では、化合物は、以下の構造(IF)、(IG)、(IH)または(IJ):
【化6】
の1つを有し、式中、yおよびzは、それぞれ独立して、2~12の範囲の整数、例えば、2~6の整数、例えば、4である。
【0093】
前述の実施形態の一部では、yおよびzは、それぞれ独立して、2~10、2~8、4~10または4~7の範囲の整数である。例えば、一部の実施形態では、yは、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。一部の実施形態では、zは、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。一部の実施形態では、yおよびzは同じであり、一方で、他の実施形態では、yおよびzは異なる。
【0094】
前述の実施形態の一部では、RもしくはRまたは両方は、分岐状C~C24アルキルである。例えば、一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、以下の構造:
【化7】
を有し、式中、
7aおよびR7bは、出現ごとに独立して、HまたはC~C12アルキルであり、
aは2~12の整数であり、
7a、R7bおよびaは各々、RおよびRがそれぞれ独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、一部の実施形態では、aは、5~9または8~12の範囲の整数である。
【0095】
前述の実施形態の一部では、R7aの少なくとも1つの出現はHである。例えば、一部の実施形態では、R7aは出現ごとにHである。前述のものの他の異なる実施形態では、R7bの少なくとも1つの出現はC~Cアルキルである。例えば、一部の実施形態では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0096】
異なる実施形態では、RもしくはRまたは両方は、以下の構造:
【化8】
の1つを有する。
【0097】
前述の実施形態の一部では、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C~C12アルキルである。例えば、一部の実施形態では、R、R、RおよびRはn-ヘキシルであり、他の実施形態では、R、R、RおよびRはn-オクチルである。
【0098】
前述の実施形態のいずれかでは、Rは、置換されているかまたは置換されていない、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである。例えば、一部の実施形態では、Rは置換されていない。他のものでは、Rは、-OR、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-C(=O)R、-OC(=O)R、-C(=O)ORおよび-OROH(式中、
は、出現ごとに独立して、HまたはC~Cアルキルであり、
は、出現ごとに独立して、C~Cアルキルであり、
は、出現ごとに独立して、C~Cアルキレンである)
からなる群より選択される1つまたはそれより多くの置換基で置換されている。
【0099】
前述の実施形態の他のものでは、Rは、置換されている、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである。一部の実施形態では、Rは置換されているエチルまたは置換されているプロピルである。他の異なる実施形態では、Rはヒドロキシルで置換されている。なおもさらなる実施形態では、Rは、-OR、-NRC(=O)R、-C(=O)NR、-C(=O)R、-OC(=O)R、-C(=O)ORおよび-OROH(式中、
は、出現ごとに独立して、HまたはC~Cアルキルであり、
は、出現ごとに独立して、C~Cアルキルであり、
は、出現ごとに独立して、C~Cアルキレンである)
からなる群より選択される1つまたはそれより多くの置換基で置換されている。
【0100】
他の実施形態では、Rは置換されていないメチルであり、Rは、置換されている、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチルまたはn-ノニルである。これらの実施形態の一部では、Rはヒドロキシルで置換されている。
【0101】
一部の他の特定の実施形態では、Rは、以下の構造:
【化9】
の1つを有する。
【0102】
様々な異なる実施形態では、化合物は、以下の表1に記載の構造の1つを有する。
【表1-1】
【表1-2】
【0103】
表1中の化合物は、当技術分野で公知の方法、例えば、本明細書で以下に記載されている一般的方法に従い、調製および試験した。
【0104】
上に記載されているような構造(I)の化合物の任意の実施形態、および上に記載されているような構造(I)の化合物における任意の特定の置換基および/または変数は、構造(I)の化合物の他の実施形態ならびに/または置換基および/もしくは変数と独立して組み合わせることによって、上に具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成することができることが理解されている。加えて、特定の実施形態および/または請求項において、置換基および/または変数の一覧が任意の特定のR基、L基、G基または変数a、x、y、またはzに対して列挙されている場合、それぞれ個々の置換基および/または変数は、特定の実施形態および/または請求項から削除されてもよく、置換基および/または変数の残りの一覧は、本発明の実施形態の範囲内にあると考えられることが理解されている。
【0105】
本記載では、示されている式の置換基および/または変数の組合せは、このような寄与が安定した化合物をもたらす場合のみ許容できることが理解されている。
【0106】
一部の実施形態では、構造(I)の化合物のいずれか1つまたは複数と、治療剤とを含む組成物が提供される。一部の実施形態では、構造(I)の1つまたは複数の化合物を含む脂質ナノ粒子が提供される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、構造(I)の化合物のいずれかと、治療剤と、中性脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質から選択される1種または複数の賦形剤とを含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体もまた、組成物の様々な実施形態に含まれている。
【0107】
一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質はDSPCである。様々な実施形態では、化合物 対 中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0108】
様々な実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイドアナログをさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイドアナログはコレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物 対 コレステロールのモル比は、約5:1~1:1の範囲である。
【0109】
様々な実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanoloamine)(PEG-PE)、PEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカンオキシ)プロピル)カルバメートまたは2,3-ジ(テトラデカンオキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどを含む。様々な実施形態では、化合物 対 ペグ化脂質のモル比は、約100:1~約20:1の範囲である。
【0110】
一部の実施形態では、組成物は、以下の構造(II):
【化10】
(式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、1つまたは複数のエステル結合により、必要に応じて分断されており、
wは30~60の範囲の平均値を有する)
を有するペグ化脂質またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を含む。
【0111】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含有する、直鎖状の、アルキルである。一部の実施形態では、wは、43~53の範囲の平均値を有する。他の実施形態では、wの平均は約45である。他の異なる実施形態では、wの平均は約49である。
【0112】
一部の実施形態では、構造(I)の化合物のいずれか1つまたは複数と、治療剤とを含む脂質ナノ粒子(LNP)が提供される。例えば、一部の実施形態では、LNPは、構造(I)の化合物のいずれかと、治療剤と、中性脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質から選択される1種または複数の賦形剤とを含む。
【0113】
LNPの一部の実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。一部の実施形態では、中性脂質はDSPCである。様々な実施形態では、化合物 対 中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0114】
LNPの様々な実施形態では、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。ある特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド類似体はコレステロールである。これらの実施形態の一部では、化合物 対 コレステロールのモル比は、約5:1~1:1の範囲である。
【0115】
LNPの様々な実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。例えば、一部の実施形態は、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanoloamine)(PEG-PE)、PEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカンオキシ)プロピル)カルバメートまたは2,3-ジ(テトラデカンオキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどを含む。様々な実施形態では、化合物 対 ペグ化脂質のモル比は、約100:1~約20:1の範囲である。
【0116】
一部の実施形態では、LNPは、以下の構造(II):
【化11】
(式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、1つまたは複数のエステル結合により、必要に応じて分断されており、
wは、30~60の範囲の平均値を有する)
を有するペグ化脂質またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を含む。
【0117】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含有する直鎖状のアルキルである。一部の実施形態では、wは、43~53の範囲の平均値を有する。他の実施形態では、wの平均は約45である。他の異なる実施形態では、wの平均は約49である。
【0118】
上記脂質、脂質ナノ粒子および組成物の調製方法は、本明細書に以下に記載されており、および/または、例えば、それぞれこれら全体において参照により本明細書に組み込まれている、PCT公開WO2015/199952、WO2017/004143およびWO 2017/075531において当技術分野で公知である。
【0119】
前述の組成物の一部の実施形態では、治療剤は核酸を含む。例えば、一部の実施形態では、核酸は、アンチセンスおよびメッセンジャーRNAから選択される。
【0120】
他の異なる実施形態では、本発明は、それを必要とする患者に治療剤を投与するための方法であって、前述の組成物のいずれかを調製または提供するステップと、組成物を患者に投与するステップとを含む方法を対象とする。
【0121】
投与の目的のために、構造(I)の化合物(通常、治療剤と組み合わせた脂質ナノ粒子の形態で)は、粗製の化学物質(raw chemical)として投与してもよいし、または医薬組成物として製剤化してもよい。本発明の実施形態の医薬組成物は、構造(I)の化合物(例えば、LNP中の構成成分として)と、1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む。構造(I)の化合物は、例えば、目的の特定疾患または状態を処置するために、脂質ナノ粒子を形成し、治療剤を送達するのに有効である量で、組成物中に存在する。適当な濃度および投薬量は、当業者により容易に決定することができる。
【0122】
本発明の実施形態の組成物および/またはLNPの投与は、同様の有用性を果たすための薬剤の容認された投与モードのいずれかを介して行うことができる。本発明の実施形態の医薬組成物は、固体、半固体、液体または気体の形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、およびエアゾールに製剤化することができる。このような医薬組成物を投与する典型的な経路として、限定されないが、経口、局所、経皮、吸入、腹腔、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻腔内が挙げられる。本明細書で使用される腹腔という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内注射または注入技術を含む。本発明の医薬組成物は、組成物を患者に投与すると、その中に含有されている活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投薬単位の形態をとり、この場合、例えば、錠剤は、単一投薬単位であってよく、エアゾール形態の構造(I)の化合物の容器は、複数の投薬単位を保持することができる。このような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明らかであろう。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science、2000年)を参照されたい。投与される組成物は、いずれにしても、本発明の実施形態の教示に従って、目的の疾患または状態の処置のための、治療有効量の構造(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含有する。
【0123】
本発明の実施形態の医薬組成物は、固体または液体の形態であってよい。一態様では、担体(複数可)は微粒子であり、これによって、組成物は、例えば、錠剤または散剤の形態である。担体(複数可)は液体であってよく、組成物は、例えば、経口シロップ剤、注射液または、例えば、吸入投与に有用であるエアゾールである。
【0124】
経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは、固体または液体のいずれかの形態であり、半固体、半液体、懸濁物およびゲル形態は、本明細書で固体または液体のいずれかと考えられる形態に含まれる。
【0125】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、カシェ剤などの形態に製剤化することができる。このような固体組成物は、通常1種または複数の不活性希釈剤または食用担体を含有する。加えて、以下の1つまたは複数が存在し得る:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースまたはデキストリンなど;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチなど;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックスなど;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリンなど;矯味矯臭剤、例えば、ペパーミント、サルチル酸メチルまたはオレンジ香味料など;および着色剤。
【0126】
医薬組成物がカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態である場合、医薬組成物は、上記タイプの材料に加えて、液体担体、例えば、ポリエチレングリコールまたは油などを含有してもよい。
【0127】
医薬組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、乳剤または懸濁剤などであってよい。液体は、2つの例として、経口投与用または注射による送達のためのものであってよい。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物またはLNPに加えて、甘味剤、防腐剤、染料/着色剤および香味向上剤の1種または複数を含有する。注射による投与が意図される組成物では、界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤および等張剤(isotonic agent)の1種または複数が含まれてもよい。
【0128】
本発明の実施形態の液体医薬組成物は、これらが、液剤、懸濁剤または他の同様の形態であろうと、以下のアジュバントの1種または複数を含み得る:無菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウムなど、不揮発性油、例えば、溶媒または懸濁媒としての役目を果たすことができる合成モノまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒など;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩など、および張度調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど;抗凍結剤として作用する薬剤、例えば、スクロースまたはトレハロースなど。腹腔調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアルに封入することができる。生理食塩水は好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は好ましくは無菌である。
【0129】
腹腔または経口投与のいずれかを意図する本発明の実施形態の液体医薬組成物は、適切なLNPが得られるように、ある量の構造(I)の化合物を含有すべきである。
【0130】
本発明の実施形態の医薬組成物は局所投与を意図してもよく、この場合、担体は、液剤、乳剤、軟膏剤またはゲル剤の基剤を適切に含むことができる。基剤は例えば、以下の1種または複数を含むことができる:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤、例えば、水およびアルコールなど、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤は、局所投与用医薬組成物中に存在し得る。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含むことができる。
【0131】
本発明の実施形態の医薬組成物は、例えば、直腸内で融解して、薬物を放出する坐剤の形態で、直腸投与を意図することができる。直腸投与用組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有してもよい。このような基剤として、限定されないが、ラノリン、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0132】
本発明の実施形態の医薬組成物は、固体または液体投薬単位の物理的形態を改変する様々な材料を含むことができる。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は通常不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶コーティング剤から選択することができる。代わりに、活性成分をゼラチンカプセル剤に入れることができる。
【0133】
固体または液体形態の本発明の実施形態の医薬組成物は、構造(I)の化合物に結合し、これによって、化合物の送達を補助する薬剤を含むことができる。この能力で作用することができる適切な薬剤として、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、またはタンパク質が挙げられる。
【0134】
本発明の実施形態の医薬組成物は、エアゾールとして投与することができる投薬単位からなってもよい。エアゾールという用語は、コロイド状の性質のものから加圧パッケージからなる系までにわたって様々な系を表すのに使用される。送達は、液化ガスもしくは加圧ガスによるものであっても、または活性成分を分配する適切なポンプシステムによるものであってもよい。構造(I)の化合物のエアゾールは、活性成分(複数可)を送達するために単相、二相、または三相系で送達することができる。エアゾールの送達は、一緒になってキットを形成することができる、必要な容器、アクチベーター、弁、副容器(sub-container)などを含む。当業者は、過度の実験を行わずに、好ましいエアゾールを決定することができる。
【0135】
本発明の実施形態の医薬組成物は、薬学分野において周知の方法により調製することができる。例えば、注射による投与を意図する医薬組成物は、溶液を形成するために、本発明の脂質ナノ粒子を、無菌の、蒸留水または他の担体と組み合わせることによって調製することができる。界面活性剤は、均一溶液または懸濁物の形成を促進するために加えることができる。界面活性剤は、水系送達系において化合物の溶解または均一な懸濁を促進するために、構造(I)の化合物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0136】
本発明の実施形態の組成物またはこれらの薬学的に許容される塩は、治療有効量で投与されるが、この治療有効量は、利用する特定の治療剤の活性、治療剤の代謝安定性および作用期間、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与のモードおよび時間、排出速度、薬物の組合せ、特定の障害または状態の重症度、ならびに治療を受ける被験体を含めた、様々な因子に応じて変動することになる。
【0137】
本発明の実施形態の組成物はまた、1種または複数の他の治療剤の投与と同時に、投与前に、または投与後に投与することもできる。このような併用療法は、本発明の実施形態の組成物と、1種または複数の追加の活性薬剤の単一の医薬投与製剤の投与、ならびに本発明の組成物および各活性薬剤の、それ自体別個の医薬投与製剤での投与を含む。例えば、本発明の実施形態の組成物および他の活性薬剤は、錠剤もしくはカプセル剤などの単一の経口投与組成物として一緒に患者に投与することができ、または各薬剤を別個の経口投与製剤として投与することができる。別個の投与製剤を使用する場合、構造(I)の化合物および1種または複数の追加的活性薬剤は、本質的に同じ時間、すなわち、同時に、または時間をずらして別々に、すなわち、逐次的に投与することができ、併用療法は、これらのすべてのレジメンを含むと理解されている。
【0138】
上記化合物および組成物のための調製方法は、本明細書で以下に記載されており、および/または当技術分野で公知である。
【0139】
本明細書に記載のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基を適切な保護基で保護することが必要であり得ることは、当業者であれば理解している。このような官能基として、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシの適切な保護基として、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられる。アミノ、アミジノおよびグアニジノの適切な保護基として、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトの適切な保護基として、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸の適切な保護基として、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルが挙げられる。保護基は、当業者に公知であり、本明細書に記載されているような標準技術に従って付加または除去することができる。保護基の使用は、Green, T.W.およびP.G.M. Wutz、Protective Groups in Organic Synthesis(1999年)、3版、Wileyにおいて詳細に記載されている。当業者であれば理解しているように、保護基はまた、ポリマー樹脂、例えば、Wang樹脂、Rink樹脂または2-クロロトリチル-クロリド樹脂などであってもよい。
【0140】
本発明の化合物のそのような保護された誘導体は、それ自体では薬理活性を保有しないことがあるが、哺乳動物に投与され、その後、体内で代謝されて、薬理学的に活性である構造(I)の化合物を形成し得ることも、当業者であれば理解する。したがって、そのような誘導体は、「プロドラッグ」として記載され得る。構造(I)の化合物のすべてのプロドラッグは、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
【0141】
さらに、遊離塩基または酸形態で存在するすべての構造(I)の化合物は、当業者に公知の方法により適当な無機塩基もしくは有機塩基または無機酸もしくは有機酸で処理することによって、これらの薬学的に許容される塩に変換することができる。構造(I)の化合物の塩は、標準技術によりこれらの遊離塩基または遊離酸の形態に変換することができる。
【0142】
構造(I)の化合物およびこれを含む脂質ナノ粒子は、当業者に公知または当業者によって導き出せる方法、例えば、PCT公開WO2015/199952、WO2017/004143およびWO2017/075531(これらのそれぞれがその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示された方法に従い、調製することができる。
【0143】
以下の一般反応スキームは、構造(I)の化合物:
【化12】
(式中、R、L、L、G、GおよびGは本明細書で定義されているとおりである)
またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を作製する例示的方法を例示している。当業者は、同様の方法で、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることによりこれらの化合物を作製可能であり得ることが理解されている。当業者であれば、適当な開始構成成分を使用し、必要に応じて合成のパラメーターを改変することによって、以下に具体的に示されていない、構造(I)の他の化合物を、以下に記載されているものと同様の方式で作製可能であることもまた理解されている。一般的に、開始構成成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCIおよびFluorochem USAなどの供給元から得てもよく、当業者に公知の情報元に従い合成してもよく(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)、または本発明に記載の通り調製してもよい。
【0144】
【化13】
構造(I)の化合物の実施形態(例えば、化合物A-5)は、一般反応スキーム1(「方法A」)に従い調製することができ、式中、Rは、出現ごとに独立して、RまたはRを表し、mは、0~23の整数であり、各nは、独立して、2~12の整数である。一般反応スキーム1について言及すると、構造A-1の化合物は、商業的供給源から購入してもよく、当業者によく知られている方法に従い調製してもよい。A-1、A-2およびDMAPの混合物をDCCで処理して、臭化物A-3を得る。臭化物A-3、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)およびN,N-ジメチルジアミンA-4の混合物を、任意の必要な後処理およびまたは精製ステップの後、A-5を生成するために十分な温度および時間で加熱する。
【0145】
【化14】
構造(I)の化合物の実施形態(例えば、化合物B-5)は、一般反応スキーム2(「方法B」)に従い調製することができ、式中、Rは、出現ごとに独立して、RまたはRを表し、mは、0~23の整数であり、各nは、独立して、2~12の整数である。一般反応スキーム2に示されるように、構造B-1の化合物は、商業的供給源から購入してもよく、当業者によく知られている方法に従い調製してもよい。B-1(1当量)の溶液を酸塩化物B-2(1当量)および塩基(例えば、トリエチルアミン)で処理する。粗生成物を酸化剤(例えば、クロロクロム酸ピリジニウム)で処理し、中間生成物B-3を回収する。次いで、粗製のB-3、酸(例えば、酢酸)およびN,N-ジメチルアミノアミンB-4の溶液を還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)で処理して、任意の必要な後処理および/または精製の後、B-5を得る。
【0146】
出発材料A-1およびB-1は飽和メチレン炭素のみを含むものとして上記で示されているが、炭素-炭素二重結合を含む出発材料もまた炭素-炭素二重結合を含む化合物の調製に利用され得ることに注目されたい。
【0147】
【化15】
構造(I)の化合物の実施形態(例えば、化合物C-7)は、一般反応スキーム3(「方法C」)に従い調製することができ、式中、Rは、出現ごとに独立して、RまたはRを表し、mは、0~23の整数であり、各nは、独立して、2~12の整数である。一般反応スキーム3について言及すると、構造C-1の化合物は、商業的供給源から購入してもよく、当業者によく知られている方法に従い調製してもよい。C-1と適当なヒドロキシルアミン(例えば、C-2)との反応、これに続いて塩素化により、塩化物C-5を生成し、これを適当な第二級アミン(例えば、C-6)で処理して、任意の必要な後処理および/または精製の後、所望の化合物を生成することができる。
【0148】
構造(I)の化合物の調製のための様々な代替の戦略が当業者に利用可能であることに注目されたい。例えば、R部分は、置換基、例えば、ヒドロキシルを含み、置換基をマスクするために適切な保護基が必要とされ得るか、または置換基はRが分子の残りに加えられた後に加えられてもよい。必要な場合の保護基の使用、および上記一般反応スキーム1~3の他の改変が、当業者には容易に明らかとなる。以下の実施例は、例示の目的で提供されるものである、限定ではない。
【実施例
【0149】
(実施例1)
脂質ナノ粒子組成物を使用したルシフェラーゼmRNAのin vivo評価
構造(I)の脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG-脂質を、50:10:38.5:1.5または47.5:10:40.8:1.7のモル比で、エタノール中で可溶化した。脂質ナノ粒子(LNP)を、全脂質のmRNAに対する重量比約10:1~30:1で調製した。簡単に説明すると、10~50mMのクエン酸緩衝液、pH4で、mRNAを0.2mg/mLに希釈した。シリンジポンプを使用して、15mL/分を超える全流量で、エタノール性脂質溶液とmRNA水溶液を約1:5~1:3(vol/vol)の比で混合した。次いで、エタノールを除去し、外部の緩衝液を透析によりPBSに置き換えた。最後に、脂質ナノ粒子を、0.2μm細孔の無菌フィルターを介して濾過した。
【0150】
動物実験委員会(institutional animal care committee(ACC))およびカナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)(CCAC)により確立されたガイドラインに従い、6~8週齢の雌のC57BL/6マウス(Charles River)、8~10週齢のCD-1(Harlan)マウス(Charles River)において研究を実施した。異なる用量のmRNA-脂質ナノ粒子を尾静脈注射により全身投与し、投与後特定の時点(例えば、4時間)で動物を安楽死させた。肝臓および脾臓を、予め計量した管内に採取し、重量を決定し、液体窒素中で直ちに瞬間凍結し、分析用の処理が行われるまで-80℃で保存した。
【0151】
肝臓に関して、約50mgを分析用に切開し、2mLのFastPrep管(MP Biomedicals、Solon OH)内に入れた。1/4インチのセラミック球(MP Biomedicals)を各管に加え、室温に平衡化させた500μLのGlo溶解緩衝液-GLB(Promega、Madison WI)を肝臓組織に加えた。FastPrep24装置(MP Biomedicals)を2×6.0m/秒で15秒間用いて、肝臓組織をホモジナイズした。ホモジネートを室温で5分間インキュベートした後、GLBで1:4希釈し、SteadyGlo Luciferaseアッセイ系(Promega)を使用して評価した。具体的に、50μLの希釈された組織ホモジネートを50μLのSteadyGlo基質と反応させ、10秒間振盪させ、これに続いて5分間インキュベートし、次いで、CentroXS LB 960照度計(Berthold Technologies、Germany)を使用して定量化した。アッセイしたタンパク質の量をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)を使用して決定した。次いで、相対発光単位(RLU)をアッセイした全タンパク質(μg)に正規化した。RLUをルシフェラーゼ(ng)に変換するために、QuantiLum Recombinant Luciferase(Promega)を用いて検量線を作成した。
【0152】
Trilink Biotechnologies製FLuc mRNA(L-6107またはL-7602)は、もともとホタル、photinus pyralisから単離したルシフェラーゼタンパク質を発現する。FLucは、遺伝子発現および細胞生存度の両方を測定するために、哺乳動物細胞培養物に一般的に使用される。これは、基質、ルシフェリンの存在下で生物発光を放出する。このキャッピングおよびポリアデニル化されたmRNAは、5-メチルシチジンおよびプソイドウリジンで完全に置換されている。
【0153】
実施例2
製剤化した脂質のpKの決定
他の箇所で記載されているように、製剤化した脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関する(Jayaraman et al, Angewandte Chemie, International Edition (2012), 51(34), 8529-8533;Semple et al, Nature Biotechnology 28, 172-176 (2010)を参照されたい)。一部の実施形態では、pKの好ましい範囲は約5~約7である。2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用して、構造(I)の代表的化合物のpKを脂質ナノ粒子において決定した。PBS中に、構造(I)の化合物/DSPC/コレステロール/PEG-脂質(50/10/38.5/1.5または47.5:10:40.8:1.7mol%)を総脂質濃度0.4mMで含む脂質ナノ粒子を、実施例1に記載されているようなインラインプロセスを使用して調製した。TNSは、蒸留水中100μMストック溶液として調製した。10mM HEPES、10mM MES、10mM酢酸アンモニウム、および130mM NaCl(このpHは2.5~11の範囲である)を含有する2mLの緩衝化溶液中で、ベシクルを24μMの脂質に希釈した。一定分量のTNS溶液を加えて、最終濃度を1μMにし、ボルテックス混合した後、321nmおよび445nmの励起および発光波長を使用する、SLM Aminco Series 2 Luminescence Spectrophotometerで、室温で蛍光強度を測定した。シグモイドの適合度分析(best fit analysis)を蛍光データに適用し、最大半量の蛍光強度を引き起こすpHとしてpKを測定した。
【0154】
脂質ナノ粒子の粒径は、直径およそ55~95nmであり、ある事例では、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、UK)を使用した準弾性光散乱により決定した場合、直径およそ70~90nmであった。示された直径は強度加重平均値である。蛍光インターカレート染料ベースアッセイ(Ribogreen)を使用して封入を決定する。
【0155】
構造(I)の化合物は、下記のモル比:47.5%カチオン性脂質/10%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/40.8%コレステロール/1.7%PEG脂質(「PEG-DMA」2-[2-(ω-メトキシ(ポリエチレングリコール2000)エトキシ]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)を使用して製剤化した。実施例1に記載の通り尾静脈注射を介した投与の4時間後、肝臓内のルシフェラーゼ発現を測定することによって、相対的な活性を決定した。
【0156】
実施例3
in vivoルシフェラーゼmRNA発現げっ歯類モデルを使用する様々なカチオン性脂質を含有する脂質ナノ粒子製剤の有効性の決定
表2に示されているカチオン性脂質は、核酸で以前に試験されたものである。比較する目的で、これらの脂質を、実施例1においておよびPCT/US10/22614(これによって、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において記載されているように、株混合法を使用して、FLuc mRNA(L-6107)を含有する脂質ナノ粒子を製剤化するためにも使用した。脂質ナノ粒子は、以下のモル比:50%カチオン性脂質/10%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%コレステロール/1.5%PEG脂質(「PEG-DMG」、すなわち、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール、2000の平均PEG分子量を持つ)を使用して製剤化され得る。代替実施形態では、カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG-脂質は、約47.5:10:40.8:1.7のモル比で製剤化される。実施例1に記載の通り尾静脈注射を介した投与の4時間後、肝臓内のルシフェラーゼ発現を測定することによって、相対的な活性を決定した。0.3および1.0mgのmRNA/kgの用量での活性を比較し、実施例1に記載の通り、投与の4時間後に測定したルシフェラーゼ(ng)/肝臓(g)として表現した。
【表2】
【0157】
表3に示されている本発明の代表的化合物は、以下のモル比:50%カチオン性脂質/10%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%コレステロール/1.5%PEG脂質(「PEG-DMA」2-[2-(ω-メトキシ(ポリエチレングリコール2000)エトキシ]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)または47.5%カチオン性脂質/10%DSPC/40.8%コレステロール/1.7%PEG脂質を使用して製剤化した。そうではないと述べない限り、0.5mgのmRNA/kgの用量での活性を比較し、実施例1に記載の通り、投与の4時間後に測定したルシフェラーゼ(ng)/肝臓(g)として表現した。表3中の化合物番号は、表1の化合物番号を指す。
【表3】
【0158】
実施例4
【化16】
【0159】
4-1の合成
6-ブロモヘキサン酸(16mmol、3.12g)、2-ヘキシル-1-デカノール(22.4mmol、5.43g)およびDMAP(8mmol、976mg)のDCM(50mL)溶液に、DCC(17.6mmol、3.62g)を加えた。生成した混合物を室温で16時間撹拌した。沈殿物(DCU)を濾過によって除去した。濾液を濃縮し、生成した残留油状物質/固体をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0~5%酢酸エチル)により精製した。これにより、所望の生成物を無色の油状物質として得た(5.79g、無色の油状物質、13.8mmol、86%)。
【0160】
4-2の合成
2-アミノエタノール(333mg、5.46mmol)の35mlの無水THF溶液に、4-1(4.37g、10.4mmol)、炭酸カリウム(1.44g、10.4mmol)、炭酸セシウム(534mg、1.64mmol)およびヨウ化ナトリウム(30mg)を加えた。生成した混合物を密閉圧力フラスコ内で、70Cで6日間加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をヘキサンおよび酢酸エチル(94:4)の混合物中に入れ、水およびブラインで洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥抽出物(320mL)をシリカゲルのカラムに充填した。カラムを、ヘキサン、EtOAcおよびトリエチルアミン(95:5:0~80:20:1)の混合物で溶出した。これにより、所望の生成物を無色の油状物質として得た(2.68g、3.63mmol、70%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.53 (t, 5.3 Hz, 2H), 3.08-2.79 (br. 1H), 2.57 (t, 5.3 Hz, 2H), 2.45 (t様, 7.4 Hz, 4H), 2.31 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.67-1.59 (m, 6H), 1.51-1.41 (m, 4H), 1.38-1.10 (52H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).
【0161】
4-3の合成
1mLのCHC1中の4-2(300mg、0.41mmol)の氷冷溶液に、5mLのクロロホルム中の塩化チオニル(1.23mmol、146mg)を、Ar雰囲気下、滴下添加した。SOClの添加(1~2分)が完了した後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温(20C)で16時間撹拌した。クロロホルムおよびSOClの減圧下での除去により、濃厚な暗赤色の油状物質を得た。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~1%MeOH)により精製した。所望の生成物を褐色油状物質として得た(190mg、0.25mmol、61%)。
【0162】
化合物1の合成
4-3(190mg、0.25mmol)をTHF(5mL)に溶解させた。溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.217mL)および4-4(0.75mmol、140mg;1-ブロモノナンおよびアミノエタノールから調製)を加えた。密閉混合物を69Cで一晩加熱した。翌日、ヨウ化ナトリウム(10mg)を混合物に加え、加熱(65Cで)を再開した。3日後、混合物を冷却し、濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサン、EtOAcおよびトリエチルアミン(95:5:0~80:20:1)の混合物で溶出した。これにより、所望の生成物を無色の油状物質として得た(150mg、0.17mmol、66%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.90-4.20 (br. 1H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.52 (t, 5.0 Hz, 2H), 2.61-2.53 (m, 4H), 2.52-2.45 (m, 4H), 2.45-2.40 (m, 4H), 2.31 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.69-1.60 (m, 6H), 1.52-1.40 (m, 6H), 1.36-1.18 (64H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 15H).
【0163】
実施例5
【化17】
化合物2を、化合物1と類似の方式で合成した(50mg、無色の油状物質)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.65-5.43 (br. 1H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.77 (t, 5.1 Hz, 2H), 2.62 (t様, 5.6 Hz, 2H), 2.57-2.46 (m, 4H), 2.44-2.38 (m, 6H), 2.31 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.69-1.60 (m, 8H), 1.51-1.40 (m, 6H), 1.36-1.18 (62H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 15H).
【0164】
実施例6
【化18】
化合物3を、化合物1と類似の方式で合成した(62mg、無色の油状物質)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) d: 4.43-4.07 (br. 2H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.58 (t, 5.0 Hz, 4H), 2.71 (t, 5.3 Hz, 4H), 2.68-2.63 (br, 2H), 2.57-2.35 (m, 6H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.67-1.56 (m, 8H), 1.52-1.40 (br., 4H), 1.39-1.18 (60H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).実施例2に記載されている方法を使用して、この化合物のpKaは7.18であることが決定された。
【0165】
実施例7
【化19】
化合物4を、化合物1と類似の方式で合成した(無色の油状物質、251mg、0.31mmol、アルコール4-2から2ステップで51%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) d: 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.57 (t様, 5.5 Hz, 2H), 2.62-2.38 (m, 10H), 2.32 (s, 3H). 2.31 (t, 7.4 Hz, 4H), 1.91-1.64 (br. 推定2H, OH), 1.69-1.59 (m, 6H), 1.54-1.40 (m, 4H), 1.37-1.19 (m, 52H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).
【0166】
実施例8
【化20】
ステップ1. 8mLのCHC1中の4-2(2.16g、2.93mmol)の氷冷溶液に、35mLのクロロホルム中の塩化チオニル(8.79mmol、1.05g、0.641)の溶液を、Ar雰囲気下、滴下添加した。SOClの添加(1~2分)の完了後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温(20C)で16時間撹拌した。CHC1およびSOClの減圧下での除去により、濃厚な暗赤色の油状物質を得た。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~1%MeOH)により精製した。所望の生成物を褐色油状物質として得た(1.786g、2.36mmol、80%)。
【0167】
ステップ2. 圧力フラスコ内の、上記塩化物(190mg、0.25mmol)、8-1(3当量、0.75mmol、130mg、9-ブロモ-1-ノナノールおよびメチルアミンから調製)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.217mL)、ヨウ化ナトリウム(10mg)およびTHF(6mL)の混合物を、63Cで3日間加熱した。
【0168】
混合物を冷却し、濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc-Et3N、95:5:0~80:20:1、およびクロロホルム中MeOH、0~5%)により2回精製した。所望の生成物を無色の油状物質として得た(140mg、0.16mmol、63%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ:3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.65 (t, 6.6 Hz, 2H), 2.57-2.51 (m, 2H), 2.44-2.39 (m, 6H), 2.35-2.28 (m, 6H), 2.23 (s, 3H), 1.68-1.53 (m, 9H), 1.50-1.41 (m, 6H), 1.39-1.10 (62H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).
【0169】
実施例9
【化21】
化合物6を、化合物1と類似の方式で合成した(無色の油状物質、115mg、0.13mmol、52%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.63 (br. s, 1H), 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.77 (t, 5.1 Hz, 2H), 2.63 (t様, 5.6 Hz, 2H), 2.57-2.48 (m, 6H), 2.43-2.38 (m, 4H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.69-1.58 (m, 8H), 1.47-1.39 (m, 4H), 1.37-1.18 (60H), 1.05 (t, 7.1 Hz, 3H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).実施例2に記載されている方法を使用して、この化合物のpKaは6.82であることが決定された。
【0170】
実施例10
【化22】
化合物7を、化合物1と類似の方式で合成した(無色の油状物質、166mg、0.19mmol、65%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ:3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.65 (t, 6.6 Hz, 2H), 2.58-2.28 (m, 14H), 2.23 (s, 3H), 1.68-1.53 (m, 9H), 1.50-1.41 (m, 6H), 1.39-1.10 (56H), 0.89 (t様, 6.8 Hz, 12H).
【0171】
実施例11
【化23】
【0172】
11-1の合成
2-ブチルオクタン酸(26.9mmol、5.388g)、9-ブロモ-1-ノナノール(4g、18mmol)およびDMAP(9mmol、1.10g)のDCM(40mL)溶液に、DCC(19.8mmol、4.08g)を加えた。生成した混合物を室温で16時間撹拌した。沈殿物(DCU)を濾過によって除去した。濾液を濃縮し、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0~3%酢酸エチル)により精製した。所望の化合物を無色の油状物質として得た(6.42g、15.8mmol、88%)。
【0173】
11-2の合成
圧力フラスコ内の11-1(2.41g、5.94mmol)、2-アミノエタノール(185mg、3.03mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.32mL)および無水アセトニトリル(20mL)の混合物を、80℃で16時間加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc-EtN、99:1:0~80:20:1)により精製した。所望の化合物を無色の油状物質として得た(1.441g、無色の油状物質、2.03mmol、68%)。
【0174】
11-3の合成
8mLのCHC1中の11-2(1.441g、2.03mmol)の氷冷溶液に、塩化チオニル(6.09mmol、725mg)のクロロホルム(25mL)溶液を、Ar雰囲気下、滴下添加した。SOClの添加の完了後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温(20C)で16時間撹拌した。CHC1およびSOClの減圧下での除去により、濃厚な褐色油状物質、1.730gを得た。粗生成物(1.730g)をシリカゲル上でのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(シリカゲル230~400メッシュグレード、微量のEtNを含むクロロホルム中1%MeOH)により精製した。所望の化合物を褐色油状物質として得た(1.35g、1.8mmol、91%)。
【0175】
化合物8の合成
THF(6mL)中の11-3(268mg、0.37mmol)、8-1(0.75mmol、130mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.22mL)およびヨウ化ナトリウム(10mg)の混合物を密閉し、70℃で3日間加熱した。混合物を冷却し、濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%MeOH)により精製した。所望の化合物を無色の油状物質として得た(135mg、0.16mmol、43%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ:4.06 (t, 6.6 Hz, 4H), 3.64 (t, 6.6 Hz, 2H), 2.57-2.51 (m, 2H), 2.45-2.38 (m, 6H), 2.35-2.27 (m, 4H), 2.22 (s, 3H), 1.66-1.52 (m, 推定11H), 1.50-1.38 (m, 10H), 1.38-1.10 (54H), 0.90-0.85 (m, 12H).
【0176】
実施例12
【化24】
化合物9を、化合物1と類似の方式で合成した(無色の油状物質、154mg、無色の油状物質、0.17mmol、56%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ:3.96 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.64 (t, 6.6 Hz, 2H), 2.56-2.51 (m, 2H), 2.44-2.37 (m, 6H), 2.36-2.31 (m, 2H), 2.29 (t, 7.5 Hz, 4H), 2.22 (s, 3H), 1.66-1.52 (m, 9H, 推定, 水のピークと重複), 1.52-1.37 (m, 8H), 1.37-1.08 (62H), 0.88 (t様, 6.8 Hz, 12H).
【0177】
実施例13
【化25】
化合物10を、上記のスキームに従い、化合物8と同様の方式で合成した。
【0178】
上に記載の様々な実施形態は、組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書において言及され、そして/または2017年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/546,346号を含む出願データシートに列挙されている、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物のすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて修正して、様々な特許、出願および公報の概念を利用し、またさらなる実施形態を提供することができる。これらおよび他の変更は、上記に詳述された記載を考慮して実施形態に行うことができる。一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲で開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、このような特許請求の範囲の権利が与えられている同等物の全範囲と共に、すべての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示により限定されない。