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特許7355733イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/04 20060101AFI20230926BHJP
   C07C 67/48 20060101ALI20230926BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20230926BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
C07C67/04
C07C67/48
C07C69/54 B
C07B61/00 300
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020511668
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009390
(87)【国際公開番号】W WO2019193925
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018072154
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】今康 敏貴
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-069944(JP,A)
【文献】特開2001-048838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法であって、
(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させることによりイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を得る工程と、
得られた反応混合物を固体塩基で中和する工程および蒸留する工程を含み、
前記固体塩基が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸塩、およびアルカリ土類金属炭酸水素塩からなる群より選ばれる1種以上であり、
イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度が99.5%以上であり、かつ未反応の(メタ)アクリル酸が0.02重量%以下であるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物を得ることを特徴とするイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソボルニル(メタ)アクリレートは、例えば、印刷用インク、硬化性塗料用バインダー、接着剤、光硬化反応希釈剤などの製品で使用されている。従来、イソボルニル(メタ)アクリレートの製造方法として、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させる方法が知られている(特許文献1、2)。このような反応で得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物には、未反応の(メタ)アクリル酸とカンフェンが含まれるため、例えば、特許文献1では、上記反応混合物を減圧蒸留後、アルカリ水で洗浄することにより、ガスクロマトグラフィーによる純度が99.9%であるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-69944号公報
【文献】特開2009-149559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような製品が高品質化するに伴って、原料のイソボルニル(メタ)アクリレートには、より高純度なものが求められてきている。とくに、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させて得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物に含まれる未反応の(メタ)アクリル酸は、上記の製品に不具合(例えば、着色、保管安定性の低下等)を起こす要因と考えられ、市場では、未反応の(メタ)アクリル酸が低減されたものが切望されている。
【0005】
また、未反応の(メタ)アクリル酸を低減させるためには、上記の特許文献1のように、反応混合物をアルカリ水で洗浄することは有効であると考えられるが、当該製造方法は、アルカリ廃水が多量に発生するため、環境負荷の観点から、問題がある。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させることによって得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む混合物から、未反応のアクリル酸が低減された高純度のイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物を得るための製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、未反応のアクリル酸が低減された高純度のイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法であって、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させることによりイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を得る工程と、得られた反応混合物を固体塩基で中和する工程および蒸留する工程を含み、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度が99.5%以上であり、かつ未反応の(メタ)アクリル酸が0.02重量%以下であるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物を得ることを特徴とするイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法、に関する。
【0009】
また、本発明は、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度が99.5%以上であり、かつ(メタ)アクリル酸の割合が0重量%超0.02重量%以下であることを特徴とするイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させることによって得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む混合物から、未反応のアクリル酸が低減された高純度のイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物が得られるため、当該イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物は、例えば、印刷用インク、硬化性塗料用バインダー、接着剤、光硬化反応希釈剤などの製品に使用する原料として有用である。
【0011】
また、本発明の製造方法によれば、未反応の(メタ)アクリル酸を中和する際に多量のアルカリ水を必要としないため、多量のアルカリ廃水を処理する際の煩雑な後処理工程が不要であり、環境負荷の観点からも有益である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法>
本発明のイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造方法は、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させることによりイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を得る工程と、得られた反応混合物を固体塩基で中和する工程および蒸留する工程を含み、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度が99.5%以上であり、かつ未反応の(メタ)アクリル酸が0.02重量%以下であるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物を得る製造方法である。なお、本発明において、イソボルニル(メタ)アクリレートとは、イソボルニルアクリレートおよび/またはイソボルニルメタクリレートを意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0013】
<イソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を得る工程>
前記反応混合物を得る工程において、(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応は、(メタ)アクリル酸が、カンフェン1モルに対して0.8~2.5モルであることが好ましく、0.9~2モルであることがより好ましい。反応温度は、カンフェンと(メタ)アクリル酸を迅速に混合して生産性を高める観点から、10~75℃であることが好ましく、35~60℃であることがより好ましい。反応時間は、反応温度や、後述する反応転化率などによって異なるので一概には決定できないが、通常、2時間以上24時間以下程度である。
【0014】
前記反応混合物を得る工程において、(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応は、溶媒を使用してもよい。溶媒は、特に制限されないが、反応系内で不活性な有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記溶媒の使用量は特に制限されないが、通常、カンフェンと(メタ)アクリル酸の合計量100重量部に対して、100重量部以下程度である。
【0015】
(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応は、重合防止剤および/または酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。重合防止剤および/または酸化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコールなどのキノン系化合物;2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールなどのアルキルフェノール系化合物;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンなどのアミン系化合物;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなどのヒンダートアミン系化合物;金属銅、硫酸銅、塩化第一銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅などの銅系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などが挙げられる。重合防止剤および/または酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
重合防止剤および/または酸化防止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸100重量部に対して、0.0001~1重量部であることが好ましく、0.001~0.1重量部であることがより好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応は、触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸などの酸性触媒;固体酸触媒などが挙げられる。
【0018】
固体酸触媒としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、硫酸ジルコニアなどの硫酸希土類金属塩、ランタントリフレートなどの希土類金属錯体などが挙げられる。固体酸触媒は、水分とカンフェンおよび(メタ)アクリル酸とが反応するのを抑制する観点から、乾燥されていることが好ましい。
【0019】
触媒の使用量は、触媒活性および目的反応率などにより決定されるが、カンフェンと(メタ)アクリル酸の合計量100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、1~5重量部であることがより好ましい。
【0020】
前記反応混合物を得る工程において、(メタ)アクリル酸とカンフェンを反応させる際の反応方式は、単一の反応器内に全ての原料を仕込んで反応を完結させる回分式でもよいし、反応器内に原料を連続的に供給して連続的に反応させる連続式でもよいし、反応器と配合タンクとを備え、反応器と配合タンクとの間で原料を循環させながら反応器で反応させる循環式であってもよい。
【0021】
循環式での反応に際して使用する反応装置としては、例えば、固体酸触媒などの触媒が充填された反応器と、(メタ)アクリル酸にカンフェンを添加する配合タンクとを備え、反応器と配合タンクとの間で(メタ)アクリル酸とカンフェンとの混合物が循環するように、これらを接続した反応装置を用いることができる。この反応装置では、配合タンク内に仕込んだ(メタ)アクリル酸にカンフェンを滴下し、(メタ)アクリル酸とカンフェンとを含む混合物を、配合タンクと反応器との間で循環させながら、反応器にて反応させる。
【0022】
前記反応混合物を得る工程において、(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応は、適時、イソボルニル(メタ)アクリレートの反応転化率をガスクロマトグラフィーで調べ、所定の反応転化率に達した時点で、その反応を終了させて、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を得ることが好ましい。反応転化率が高くなると、反応速度が低下するため、イソボルニル(メタ)アクリレートの工業的な生産性を考慮した場合、所定の反応転化率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0023】
<反応混合物を固体塩基で中和する工程および蒸留する工程>
(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応によって得られたイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物は、固体塩基で中和する工程および蒸留する工程を施すことにより、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度が99.5%以上であり、かつ未反応の(メタ)アクリル酸が0.02重量%以下であるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物が得られる。
【0024】
前記固体塩基で中和する工程、および前記蒸留する工程は、いずれの工程を先に施してもよく、また、各工程を繰り返し施してもよい。(メタ)アクリル酸とカンフェンの反応によって得られたイソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を蒸留する工程を施すことで、未反応の(メタ)アクリル酸を効率よく除去できる観点から、前記蒸留する工程は、前記固体塩基で中和する工程の前に施すことが好ましい。
【0025】
固体塩基としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩が好ましい。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。固体塩基は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記蒸留する工程を前記固体塩基で中和する工程の前に施す場合、蒸留により未反応の(メタ)アクリル酸の多くが留去できるため、固体塩基の使用量は、(メタ)アクリル酸との接触確率を高め、効率良く中和反応を促進させる観点から、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~5重量部であることがより好ましく、0.1~2重量部であることがさらに好ましい。一方、前記固体塩基で中和する工程を前記蒸留する工程の前に施す場合、上記の反応転化率によって前記反応混合物中の未反応の(メタ)アクリル酸の割合が異なるため一概に言えないが、通常、固体塩基の使用量は、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む反応混合物100重量部に対して、20~5000重量部であることが好ましく、50~2000重量部であることがより好ましく、100~1000重量部であることがさらに好ましい。
【0027】
前記固体塩基で中和する工程において、処理温度は、反応混合物の熱安定性を考慮し、中和反応を促進させる観点から、0~100℃であることが好ましく、10~80℃であることがより好ましく、20~60℃であることがさらに好ましい。また、処理時間は、処理温度などによって異なるので一概には決定できないが、通常、30分~24時間程度である。
【0028】
前記固体塩基で中和する工程において、固体塩基で中和反応させる際の反応方式は、上記の回分式でもよく、連続式でもよく、循環式であってもよい。
【0029】
前記蒸留する工程において、蒸留は、通常、減圧下で加熱することによって行うことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの重合反応を抑制する観点から、加熱温度は30~150℃であることが好ましく、50~130℃であることがより好ましい。また、減圧の程度は、加熱温度によって異なるので一概に決定することはできないが、通常、加熱温度が150℃を超えないようにする観点から、10kPa以下であることが好ましく、5kPa以下であることがより好ましい。
【0030】
また、本発明の製造方法では、上記の前記固体塩基で中和する工程および前記蒸留する工程を設けた後に、目的物(イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物)の純度をより高めるため、目的物を精留する工程を設けることができる。精留は、通常、減圧下で加熱することによって行うことが好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートの沸点を考慮して、通常、加熱温度は100~130℃程度であり、減圧の程度は0.5~3kPa程度である。
【0031】
本発明の製造方法により得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物において、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.5%以上である。イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は、99.8%以上であることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法により得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物において、未反応の(メタ)アクリル酸の割合は0.02重量%以下である。未反応の(メタ)アクリル酸の割合は、0.01重量%以下であることが好ましく、0.005重量%以下であることがより好ましく、0.003重量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
上記の製造方法により得られるイソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物は、未反応のアクリル酸が低減された高純度のイソボルニル(メタ)アクリレートを含むため、例えば、印刷用インク、硬化性塗料用バインダー、接着剤、光硬化反応希釈剤などの製品に使用する原料として有用である。
【実施例
【0034】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>
<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物の製造>
攪拌機、冷却器、温度計、サンプリング管、カンフェン420g(3.08mol)を計量した500ml滴下ロート備えた1Lガラス製反応器に、アクリル酸271g(3.76mol)、重合防止剤としてハイドロキノンを80mg、触媒として強酸性陽イオン交換樹脂(Dow Chemical社製、商品名「AMBERLYST 15 DRY」)を16g仕込んだ。反応容器内部の温度が45~55℃となるように温度調節をしながら、滴下ロートからカンフェンを徐々に滴下した。カンフェンの滴下終了後、反応混合液を45~55℃に温度を制御しながら15時間撹拌混合した。次いで、ガスクロマトグラフィー(Agilent社製6850型)を用い、得られた反応混合物におけるイソボルニルアクリレートの反応転化率が80%を超えていることを確認した後、触媒を濾別した。
【0036】
なお、ガスクロマトグラフィーを用いたイソボルニル(メタ)アクリレートの反応転化率の算出方法は以下のとおりである。
[イソボルニル(メタ)アクリレートの反応転化率の算出方法]
イソボルニル(メタ)アクリレートの反応転化率(%)=イソボルニル(メタ)アクリレートの面積/(イソボルニル(メタ)アクリレートの面積+カンフェンの面積)×100
ガスクロマトグラフィー条件は以下のとおりである。注入口は、ヒーター温度260℃、検出器は、FIDを使用し、ヒーター温度260℃に設定した。GCカラムは、Agilent社製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)を使用した。オーブンは、初期温度100℃から毎分8℃で260℃までの昇温に設定した。スプリット比は、50:1、線速度は、毎分30cmに設定した。打ち込み量は、0.2μlとした。
【0037】
<イソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>
上記の触媒を濾別した反応混合物を、減圧下(0.5~3kPa)、85~125℃で、蒸留することにより、未反応のアクリル酸とカンフェンを留去し、イソボルニルアクリレートを含む組成物を495g得た。蒸留後のイソボルニルアクリレートを含む組成物において、イソボルニルアクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.8%で、アクリル酸は0.03重量%であった。続いて、蒸留後のイソボルニルアクリレートを含む組成物に、未反応のアクリル酸を中和するため、炭酸カリウム2.9gを加えて50℃で6時間撹拌した後、炭酸カリウムを濾別してイソボルニルアクリレートを含む組成物を得た。得られたイソボルニルアクリレートを含む組成物において、イソボルニルアクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.8%で、アクリル酸は0.002重量%であった。
【0038】
なお、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物における、イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度(%)および(メタ)アクリル酸の割合(重量%)の算出方法は以下のとおりである。
[イソボルニル(メタ)アクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度(%)の算出方法]
イソボルニル(メタ)アクリレートの純度(%)は、前記反応転化率の算出で用いた装置条件にて分析を行い、面積百分率から算出した値とした。
【0039】
[(メタ)アクリル酸の割合(重量%)の算出方法]
(メタ)アクリル酸の割合(重量%)は、以下の(メタ)アクリル酸換算での遊離酸分(重量%)から算出した。(メタ)アクリル酸換算での遊離酸分(重量%)の測定は、100mL三角フラスコにエタノール約50mLを採り、フェノールレッドを指示薬として、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、次いで、当該溶液に、試料(イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物)約30gを精秤し、均一に溶解撹拌しながら0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い、微赤色が約30秒間消えない点を滴定終点とした。
(メタ)アクリル酸換算の遊離酸分(重量%)={(0.1×f×A×B)/(C×1000)}×100
A:滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
B:定量される酸の分子量(アクリル酸の場合72.06、メタクリル酸の場合86.09)
C:試料の秤取量(g)
【0040】
<実施例2>
<イソボルニルメタクリレートを含む反応混合物、およびイソボルニルメタクリレートを含む組成物の製造>
上記の実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物の製造>において、アクリル酸271g(3.76mol)の替わりに、メタクリル酸324g(3.76mol)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、イソボルニルメタクリレートを含む反応混合物を得た。次いで、触媒を濾別した反応混合物を、減圧下(0.5~3kPa)、90~135℃で、蒸留することにより、未反応のメタクリル酸とカンフェンを留去し、イソボルニルメタクリレートを含む組成物を521g得た。蒸留後のイソボルニルメタクリレートを含む組成物において、イソボルニルメタクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.9%で、メタクリル酸は0.04重量%であった。続いて、蒸留後のイソボルニルメタクリレートを含む組成物に、炭酸カリウム3.3gを加えて30℃で10時間撹拌した後、炭酸カリウムを濾別してイソボルニルメタクリレートを含む組成物を得た。得られたイソボルニルメタクリレートを含む組成物において、イソボルニルメタクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.9%で、アクリル酸は0.003重量%であった。
【0041】
<実施例3>
<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物、およびイソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>
上記の実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物の製造>と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む反応混合物を得た。次いで、実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>において、蒸留後のイソボルニルアクリレートを含む組成物に、未反応のアクリル酸を中和するため、炭酸カリウム2.9gを加えて50℃で6時間撹拌した替わりに、炭酸カルシウム2.1gを加えて50℃で24時間撹拌したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む組成物を得た。得られたイソボルニルアクリレートを含む組成物において、イソボルニルアクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.8%で、アクリル酸は0.01重量%であった。
【0042】
<実施例4>
<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物、およびイソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>
上記の実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物の製造>と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む反応混合物を得た。次いで、実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>において、蒸留後のイソボルニルアクリレートを含む組成物に、未反応のアクリル酸を中和するため、炭酸カリウム2.9gを加えて50℃で6時間撹拌した替わりに、炭酸ナトリウム2.2gを加えて50℃で24時間撹拌したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む組成物を得た。得られたイソボルニルアクリレートを含む組成物において、イソボルニルアクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.8%で、アクリル酸は0.003重量%であった。
【0043】
<比較例1>
<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物、およびイソボルニルアクリレートを含む組成物の製造>
上記の実施例1の<イソボルニルアクリレートを含む反応混合物の製造>と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む反応混合物を得た。次いで、実施例1の<イソボルニル(メタ)アクリレートを含む組成物の製造>において、蒸留後のイソボルニルアクリレートを含む組成物に、未反応のアクリル酸を中和する工程を施さずに、再度、減圧下(0.5~3kPa)、85~125℃で、蒸留を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、イソボルニルアクリレートを含む組成物を得た。得られたイソボルニルアクリレートを含む組成物において、イソボルニルアクリレートのガスクロマトグラフィーによる純度は99.8%で、アクリル酸は0.03重量%であった。