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特許7355744カリウム塩とリチウム塩の混合物と電池におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】カリウム塩とリチウム塩の混合物と電池におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20230926BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230926BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230926BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20230926BHJP
   C01D 15/04 20060101ALI20230926BHJP
   C01D 3/02 20060101ALI20230926BHJP
   C01B 25/10 20060101ALI20230926BHJP
   C01B 17/45 20060101ALI20230926BHJP
   C01D 15/00 20060101ALI20230926BHJP
   C01B 35/06 20060101ALI20230926BHJP
   C01B 35/10 20060101ALI20230926BHJP
   C01B 21/086 20060101ALI20230926BHJP
   C07D 233/90 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0567
C01D15/04
C01D3/02
C01B25/10
C01B17/45 G
C01D15/00
C01B35/06
C01B35/10 Z
C01B21/086
C07D233/90 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020540704
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 FR2019050196
(87)【国際公開番号】W WO2019145662
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】1850664
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/052742(WO,A1)
【文献】特開2014-024786(JP,A)
【文献】特表平11-507761(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132892(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/149095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01M 10/0569
H01M 10/0567
H01G 11/62
C01D 15/04
C01D 3/02
C01B 25/10
C01B 17/45
C01D 15/00
C01B 35/06
C01B 35/10
C01B 21/086
C07D 233/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ LiPF;LiBF;CHCOOLi;CHSOLi;CFSOLi;CFCOOLi;Li1212;LiBC;以下の式(I):R-SO-NLi-SO-R(I)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;以下の式(II):
(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;及びそれらの混合物からなる群から選択される99重量%から99.9999重量%の少なくとも一種のリチウム塩Aと;
・KPF;KBF;CHCOOK;CHSOK;CFSOK;CFCOOK;K1212;KBC;以下の式(III):R-SO-NK-SO-R(III)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;以下の式(IV):
(上式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;及びそれらの混合物からなる群から選択される1重量ppmから50重量ppmの少なくとも一種のカリウム塩B
を含む、混合物。
【請求項2】
- 99.1重量%から99.9999重量%の少なくとも一種のリチウム塩A、及び/又は
- 1ppmから50ppmの少なくとも一種のカリウム塩B
を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
- 99重量%から99.999重量%の少なくとも一種のリチウム塩A、及び/又は
- 10ppmから50ppmの少なくとも一種のカリウム塩B
を含む、請求項1及び2の何れか一項に記載の混合物。
【請求項4】
1から20ppmの少なくとも一種のカリウム塩Bを含むことを特徴とする、請求項1及び2の何れか一項に記載の混合物。
【請求項5】
リチウム塩Aとカリウム塩Bが同じアニオンを有する、請求項1から4の何れか一項に記載の混合物。
【請求項6】
・ リチウム塩Aは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;かつカリウム塩Bは、KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
又は
・ リチウム塩Aは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;かつカリウム塩Bは、式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;
又は
・ リチウム塩Aは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;かつカリウム塩Bは請求項1に記載の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;
又は
・ リチウム塩Aは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
又は
・ リチウム塩Aは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し;
又は
・ リチウム塩Aは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、請求項1に記載の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;
又は
・ リチウム塩Aは、上記の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
又は
・ リチウム塩Aは、請求項1に記載の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;
又は
・ リチウム塩Aは、請求項1に記載の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有し;かつカリウム塩Bは、請求項1に記載の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)を有する、
請求項1から5の何れか一項に記載の混合物。
【請求項7】
LiPF、R=R=F又はR=R=CFの式(I)の化合物、及びRfがCFを表す式(II)の化合物から選択される少なくとも一種のリチウム塩Aと;KPF、R=R=F又はR=R=CFである式(III)の化合物、及びRpがCFを表す式(IV)の化合物から選択される少なくとも一種のカリウム塩Bを含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の混合物。
【請求項8】
次の混合物:
- LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI(塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiTDI(Rf=CFの式(II)の塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiTDI(Rf=CFの式(II)の塩A)とKPFを含む混合物;
- LiTDI(Rf=CFの式(II)の塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiPF及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKTDI(Rp=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiPF及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;及び
- LiPF及びLiTDI(Rf=CFの式(II))(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物
のうちの一つから選択されることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の混合物。
【請求項9】
次の混合物:
- LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物
のうちの一つから選択されることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の混合物。
【請求項10】
LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含み、KFSIの量が混合物の全重量に対して1から50ppmの範囲にあることを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載の混合物。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の混合物、少なくとも一種の溶媒及び場合によっては少なくとも一種の電解添加剤を含む、電解質組成物。
【請求項12】
- 組成物の全重量に対して、1重量%から99重量%の前記混合物;及び/又は
- 組成物の全重量に対して、1重量%から99重量%の溶媒
を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
電解質組成物中の、請求項1から10の何れか一項に記載の混合物のモル濃度が、7mol/l以下である、請求項11及び12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
溶媒が、エーテル、カーボネート、エステル、ケトン、部分的に水素化された炭化水素、ニトリル、アミド、アルコール、スルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11から13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
次の溶媒混合物:
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 体積比3/7の重量比のエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 体積比3/7のエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 体積比3/7のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 体積比2/1のジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME);
- 体積比1/1のジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME)
のうちの一つを含む、請求項11から14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
電解添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、LiB(C、硝酸リチウム、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、ホスホネート、ビニルを含むシラン化合物、2-シアノフラン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11から15の何れか一項に記載の組成物。
【請求項17】
25℃以上の温度、及び/又は4ボルトと5ボルトの間の電圧の、電池における、請求項1から10の何れか一項に記載の混合物、又は請求項11から16の何れか一項に記載の電解質組成物の使用。
【請求項18】
負極、正極、及び負極と正極との間に介在させた請求項11から16の何れか一項に記載の電解質組成物、又は請求項1から10の何れか一項に記載の混合物を含む電気化学セル。
【請求項19】
請求項18に記載の少なくとも一つの電気化学セルを含む電池。
【請求項20】
電池の寿命を改善するための、請求項1から10の何れか一項に記載の混合物における、少なくとも一種のカリウム塩Bの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム塩とカリウム塩の混合物と、また電池におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、電池(例えば、リチウムイオン電池又はLi硫黄電池など)は、少なくとも負極(アノード)、正極(カソード)、セパレーター及び電解質を含む。電解質は、粘度と誘電率の間の良好な妥協点を得るために、一般に有機カーボネート混合物である溶媒に溶解されたリチウム塩から一般に構成される。
【0003】
電池の分野では、最初の充電/放電サイクル中に形成されるパッシベーション層が、電池の寿命にとって不可欠である。パッシベーション層としては、特に、カソードで使用される集電体であるアルミニウム上のパッシベーション層、又は他に、アノード/電解質及びカソード/電解質界面に形成される無機及び高分子層である「固体電解質界面」(SEI)を挙げることができる。パッシベーション層が正しく形成されない場合や安定していない場合は、充電/放電サイクル中のその再形成が電池寿命の低下の原因になる:これは、電流の一部が電池寿命に貢献しないでこれらパッシベーション層の再形成に使用されるためである。リチウム金属アノード上での樹枝状結晶の形成がまた電池寿命の低下を引き起こす。
【0004】
従って、上述の欠点を克服する必要があり、特にLiイオンタイプ電池を含む電池の寿命を改善する必要がある。
【発明の説明】
【0005】
[混合物]
本出願は、
・ i)LiPF;LiBF;CHCOOLi;CHSOLi;CFSOLi;CFCOOLi;Li1212;LiBC;以下の式(I):R-SO-NLi-SO-R(I)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;以下の式(II):
(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;及びそれらの混合物からなる群から選択される99重量%から99.9999重量%の少なくとも一種のリチウム塩Aと;
・ ii)KPF;KBF;CHCOOK;CHSOK;CFSOK;CFCOOK;K1212;KBC;以下の式(III):R-SO-NK-SO-R(III)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;以下の式(IV):
(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;及びそれらの混合物からなる群から選択される1重量ppmから10000重量ppmの少なくとも一種のカリウム塩Bと
を含む(好ましくは本質的にこれらからなり、優先的にはこれらからなる)、混合物に関する。
【0006】
本発明の文脈において、「ppm」又は「百万分率」という用語は、重量ppmを意味することを意図している。
【0007】
一実施態様では、本発明は、
・ i)LiPF;LiBF;CHCOOLi;CHSOLi;CFSOLi;CFCOOLi;Li1212;LiBC;以下の式(I):R-SO-NLi-SO-R(I)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩からなる群から選択される99重量%から99.9999重量%の少なくとも一種のリチウム塩Aと;
・ ii)KPF;KBF;CHCOOK;CHSOK;CFSOK;CFCOOK;K1212;KBC;以下の式(III):R-SO-NK-SO-R(III)(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;以下の式(IV):
(上式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表す)の塩;及びそれらの混合物からなる群から選択される1重量ppmから10000重量ppmの少なくとも一種のカリウム塩Bと
を含む(好ましくは本質的にこれらからなり、優先的にはこれらからなる)、混合物に関する。
【0008】
一実施態様によれば、混合物は、
- i)99.1重量%から99.9999重量%、好ましくは99.2重量%から99.9999重量%、優先的には99.3重量%から99.9999重量%、有利には99.4重量%から99.9999重量%、更により優先的には99.5重量%から99.9999重量%、更により有利には99.6重量%から99.9999重量%、好ましくは99.7重量%から99.9999重量%、例えば99.8重量%から99.9999重量%、特に99.9重量%から99.9999重量%の上述の少なくとも一種のリチウム塩A、及び/又は
- ii)1ppmから9000ppm、好ましくは1から8000ppm、優先的には1から7000ppm、有利には1から6000ppm、更により優先的には1から5000ppm、更により有利には1から4000ppm、好ましくは1から3000ppm、例えば1から2000ppm、特に1から1000ppmの上述の少なくとも一種のカリウム塩B
を含む。
【0009】
一実施態様によれば、混合物は、1から1000ppm、好ましくは1から50ppm、優先的には1から20ppm、更により好ましくは1から10ppmの上述の少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0010】
一実施態様によれば、混合物は、混合物の全重量に対して99重量%以上、好ましくは99.5%以上、優先的には99.9%以上、有利には99.95%以上、更により優先的には99.99%以上、更により有利には99.995%以上、好ましくは99.999%以上、例えば混合物の全重量に対して99.9995%以上の重量含有量で、上に記載の少なくとも一種のリチウム塩Aを含む。
【0011】
一実施態様によれば、混合物は、混合物の全重量に対して10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、優先的には1000ppm以下、有利には500ppm以下、更により優先的には100ppm以下、更により有利には50ppm以下、好ましくは10ppm以下、例えば5重量ppm以下の重量含有量で、上に記載の少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0012】
一実施態様によれば、混合物は、
- i)99重量%から99.999重量%、好ましくは99.5重量%から99.999重量%、優先的には99.7重量%から99.999重量%、有利には99.85重量%から99.999重量%、更により優先的には99.85重量%から99.995重量%、更により有利には99.9重量%から99.99重量%の上述の少なくとも一種のリチウム塩A、及び/又は
- ii)10ppmから10000ppm、好ましくは10から5000ppm、優先的には10から3000ppm、有利には10から1500ppm、更により優先的には50から1500ppm、更により有利には100から1000ppmの上述の少なくとも一種のカリウム塩B
を含む。
【0013】
一実施態様によれば、混合物は、少なくとも一種のリチウム塩Aと少なくとも一種のカリウム塩Bを含み、該塩は同じアニオンを有する。例えば、混合物は、LiPFとKPF(共通のアニオンはPF である)を含みうるか、又は混合物は、R=R=Fである式(I)の塩と、R=R=Fである式(III)の塩を含みうる。
【0014】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくともリチウム塩A(リチウム塩Aは、好ましくはLiPFである)と;KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種のカリウム塩B(カリウム塩Bは、好ましくはKPFである)を含む。
【0015】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくともリチウム塩A(リチウム塩Aは、好ましくはLiPFである)と;式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは、互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0016】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、LiPF、LiBF、CHCOOLi、CHSOLi、CFSOLi、CFCOOLi、Li1212、LiBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくともリチウム塩A(リチウム塩Aは、好ましくはLiPFである)と;上述の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rpは好ましくはCFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0017】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種のカリウム塩B(カリウム塩は好ましくはKPFである)を含む。
【0018】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは、互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0019】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、式(I)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;上述の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rpは好ましくはCFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0020】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、上述の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rfは好ましくはCFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;KPF、KBF、CHCOOK、CHSOK、CFSOK、CFCOOK、K1212、KBC、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種のカリウム塩B(カリウム塩Bは好ましくはKPFである)を含む。
【0021】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、上述の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rfは好ましくはCFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;式(III)R-SO-NK-SO-R(式中、R及びRは、互いに独立して、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、R及びRは、好ましくは、互いに独立して、F又はCF、優先的にはFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0022】
一実施態様によれば、混合物は、好ましくは、上述の式(II)(式中、RfはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rfは好ましくはCFを表す)を有する少なくともリチウム塩Aと;上述の式(IV)(式中、RpはF、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、C13、C15、C17、又はC19を表し、Rpは好ましくはCFを表す)を有する少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0023】
好ましい一実施態様によれば、混合物は、LiPF、R=R=F又はR=R=CFの式(I)の化合物、及びRがCFを表す式(II)の化合物から選択される少なくとも一種のリチウム塩Aと;KPF、R=R=F又はR=R=CFである式(III)の化合物、及びRがCFを表す式(IV)の化合物から選択される少なくとも一種のカリウム塩Bを含む。
【0024】
好ましくは、本発明の混合物は、次の混合物:
- LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiTDI(R=CFの式(II)の塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiTDI(R=CFの式(II)の塩A)とKPFを含む混合物;
- LiTDI(R=CFの式(II)の塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiPF及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiPF及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;及び
- LiPF及びLiTDI(R=CFの式(II))(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物
のうちの一つから選択される。
【0025】
更により好ましくは、本発明の混合物は、次の混合物:
- LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物;
- LiFSI(塩A)とKTDI(R=CFの式(IV)の塩B)を含む混合物;
- LiFSI及びLiPF(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物
のうちの一つから選択され、更により優先的には、次の混合物:
- LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含む混合物;
- LiPF(塩A)とKPF(塩B)を含む混合物
のうちの一つから選択される。
【0026】
好ましい一実施態様によれば、本発明の混合物は、LiFSI(塩A)とKFSI(R=R=Fの式(III)の塩B)を含み、KFSIの量が混合物の全重量に対して1から1000ppm、好ましくは1から50ppm、優先的には1から20ppm、更により好ましくは1から10ppmの範囲にある、混合物である。
【0027】
本発明に係る混合物は、様々な成分を同時にもしくは逐次的に混合することによって調製することができる。
【0028】
本出願はまた、特に25℃以上、好ましくは25℃と80℃の間の温度、及び/又は特に4と5の間、好ましくは4.2、4.35、4.4、4.5又は4.7ボルトの電圧の、電池、例えばLiイオン電池における、上に記載の混合物の使用に関する。例えば、携帯電話、カメラ、タブレット又はラップトップなどのモバイル機器、電気自動車、再生可能エネルギーの貯蔵において使用される。
【0029】
[電解質組成物]
本発明はまた、上に記載のリチウム塩の混合物、少なくとも一種の溶媒及び場合によっては少なくとも一種の電解添加剤を含む、特に例えばLiイオン電池などの電池用の、電解質組成物に関する。
【0030】
好ましくは、電解質組成物は、上述の混合物のもの以外のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含まない。
【0031】
好ましくは、電解質組成物は、混合物について上述したもの以外のリチウム塩又はカリウム塩を含まない。
【0032】
好ましくは、混合物について上述したカリウム塩及びリチウム塩が、組成物中に存在する全ての塩の100%を占める。
【0033】
本発明の文脈において、「電解質組成物(electrolyte composition)」、「電解質」及び「電解組成物(electrolytic composition)」は互換的に使用される。
【0034】
好ましい実施態様によれば、電解質組成物は、組成物の全重量に対して、1重量%から99重量%、好ましくは5重量%から99重量%、有利には20重量%から95重量%の前記混合物を含む。
【0035】
好ましい実施態様によれば、電解質組成物は、組成物の全重量に対して、1重量%から99重量%、好ましくは5重量%から99重量%、有利には20重量%から95重量%の溶媒を含む。
【0036】
一実施態様によれば、電解質組成物中の上述の混合物のモル濃度は、7mol/l以下、有利には4mol/l以下、好ましくは2mol/l以下、優先的には1.5mol/l以下、特に1.1mol/l以下、例えば1mol/l以下である。
【0037】
一実施態様によれば、電解質組成物は、溶媒又は例えば2、3もしくは4種の異なる溶媒などの溶媒混合物を含みうる。
【0038】
電解質組成物の溶媒は、場合によってはポリマーによりゲル化される液体溶媒、又は場合によっては液体により可塑化される極性ポリマー溶媒でありうる。
【0039】
一実施態様によれば、溶媒は有機溶媒、好ましくは非プロトン性有機溶媒である。好ましくは、溶媒は極性有機溶媒である。
【0040】
一実施態様によれば、溶媒は、エーテル、カーボネート、エステル、ケトン、部分的に水素化された炭化水素、ニトリル、アミド、アルコール、スルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
エーテルの中では、直鎖状又は環状エーテル、例えば、ジメトキシエタン(DME)、2から5個のオキシエチレン単位のオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
エステルの中では、リン酸エステル又は亜硫酸エステルが挙げられる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
特に、ケトンの中では、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0044】
アルコールの中では、例えば、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールが挙げられる。
【0045】
ニトリルの中では、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0046】
カーボネートの中では、例えば、環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS 102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41-1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフルオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
特に好ましい溶媒は、カーボネート及びそれらの混合物から選択される。
【0048】
一実施態様によれば、電解質組成物は、次の混合物:
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 重量比1/1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 重量比1/1のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 体積比3/7の重量比のエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC);
- 体積比3/7のエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC);
- 体積比3/7のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC);
- 体積比2/1のジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME);
- 体積比1/1のジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME)
のうちの一つを含む。
【0049】
一実施態様によれば、電解質組成物は、少なくとも一種の電解添加剤を含む。
【0050】
好ましくは、電解添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、LiB(C、硝酸リチウム、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、ホスホネート、ビニルを含むシラン化合物、2-シアノフラン及びそれらの混合物からなる群から選択され、電解添加剤は好ましくはフルオロエチレンカーボネート(FEC)である。
【0051】
例えば、電解質組成物中の電解添加剤の含有量は、電解質組成物の全重量に対して0.01重量%と10重量%の間、好ましくは0.1重量%と4重量%の間である。特に、電解質組成物中の電解添加剤の含有量は、組成物の全重量に対して2重量%以下である。
【0052】
電解質組成物中の電解添加剤の含有量は、例えば、前記組成物の溶媒の全重量に対して0.01重量%と10重量%の間、好ましくは0.1重量%と4重量%の間でありうる。
【0053】
電解質組成物は、当業者に既知の任意の手段によって、例えば、適切な割合の溶媒及び/又は添加剤中で塩を、好ましくは撹拌しながら、溶解させることによって、調製されうる。
【0054】
本出願はまた、特に25℃以上、好ましくは25℃と80℃の間の温度、及び/又は特に4と5の間、好ましくは4.2、4.35、4.4、4.5又は4.7ボルトの電圧の、電池、例えばLiイオン電池における、上述の電解質組成物の使用に関する。例えば、携帯電話、カメラ、タブレット又はラップトップなどのモバイル機器、電気自動車、再生可能エネルギーの貯蔵において使用される。
【0055】
[電気化学セル]
本出願はまた、上記のように、負極、正極、及び上述したリチウム塩の混合物を含む電気化学セルに関する。
【0056】
本出願はまた、負極、正極、及び負極と正極との間に介在させた、上に記載の電解質組成物を含む電気化学セルに関する。電気化学セルはまた、上に記載の電解質組成物が含浸されているセパレーターを含みうる。
【0057】
本発明はまた、上述の少なくとも一つの電気化学セルを含む電池に関する。電池が本発明に係る幾つかの電気化学セルを含む場合、前記セルは、直列及び/又は並列に組み立てることができる。
【0058】
本発明の文脈において、負電極は、電池が電流を生成するときに(すなわち、それが放電過程にあるときに)アノードとして作用し、電池が充電過程にあるときにカソードとして作用する電極を意味することを意図している。
【0059】
負極は、典型的には、電気化学的活物質、場合によっては電気化学的活物質、及び場合によってはバインダーを含む。
【0060】
本発明の文脈において、「電気化学的活物質」は、イオンを可逆的に挿入することができる物質を意味することを意図している。
【0061】
本発明の文脈において、「電気化学的活性」は、電子を伝導することができる物質を意味することを意図している。
【0062】
一実施態様によれば、電気化学セルの負極は、電気化学的活物質として、グラファイト、リチウム、リチウム合金、LiTi12もしくはTiOタイプのチタン酸リチウム、シリコン又はリチウム/シリコン合金、酸化スズ、リチウム金属間化合物又はそれらの混合物を含む。
【0063】
負極はリチウムを含みうる;その場合、後者は、金属リチウム又はリチウムを含む合金の膜からなりうる。負極の例は、ローラー間にリチウムの帯状体を巻回することによって調製される活性リチウム膜を含みうる。
【0064】
本発明の文脈において、正極は、電池が電流を生成するときに(すなわち、それが放電過程にあるときに)カソードとして作用し、電池が放電過程にあるときにアノードとして作用する電極を意味することを意図している。
【0065】
正極は、典型的には、電気化学的活物質、場合によっては電気化学的活物質、及び場合によってはバインダーを含む。
【0066】
別の実施態様では、電気化学セルの正極は、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えば、LiMn又はLiMnO)、リチウム/ニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウム/コバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCo)、リチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えばx+y+z=1のLiNiMnCo)、リチウムに富むリチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えば、Li1+x(NiMnCo1-x)、リチウム/遷移金属複合酸化物、スピネル構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えば、LiMn2-yNi)、オリビン構造のリチウム/リン酸化物(例えば、LiFePO、LiFe1-yMnPO又はLiCoPO)、硫酸鉄、酸化バナジウム及びそれらの混合物から選択される電気化学的活物質を含む。
【0067】
好ましくは、正極は、LiCoO、LiFePO(LFP)、LiMnCoNi(x+y+z=1のNMC)、LiFePOF、LiFeSOF、LiNix1Coy1Alz1(x+y+z=1のNCA)及びそれらの混合物から選択される電気化学的活物質を含む。
【0068】
正極の材料は、前記電気化学的活物質に加えて、例えばカーボンブラック、ケッチェン(登録商標)カーボン、シャウィニガンカーボン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー(気相成長炭素繊維(VGCF)など)、有機前駆体の炭化により得られる非粉末状炭素、又はこれらの二種以上の組み合わせを含む炭素源のような電気化学的活物質をまた含みうる。リチウム塩又はセラミックもしくはガラスタイプの無機粒子、又は他の適合性のある活物質(例えば硫黄)などの他の添加剤もまた正極の材料中に存在しうる。
【0069】
正極の材料はまたバインダーを含みうる。バインダーの非限定的な例には、直鎖、分岐及び/又は架橋ポリエーテルポリマーバインダー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、又はポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、又はその二種の混合物(つまりEO/POコポリマー)に基づき、場合によっては架橋可能な単位を含むポリマー)、水溶性バインダー(SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)など)、又はフルオロポリマータイプのバインダー(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など)、及びそれらの組み合わせが含まれる。水溶性であるものなどの一部のバインダーは、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤をまた含みうる。
【0070】
本発明に係る塩の混合物は、有利には、電池の寿命を改善することを可能にする。
【0071】
本発明はまた電池、特にLiイオン電池の寿命を改善するための、上に記載の少なくとも99重量%の少なくとも一種のリチウム塩A(好ましくは99重量%から99.9999重量%の少なくとも一種のリチウム塩A)を含む混合物における、上に記載の少なくとも一種のカリウム塩Bの使用に関する。
【0072】
本発明の文脈において、「xとyの間の」又は「xとyの間」という用語は、限界値xとyが含まれる間隔を意味することを意図している。例えば、「1%と98%の間の」範囲又は「1%から98%の範囲」は、特に1%及び98%の値を含む。
【0073】
上述の全ての実施態様は、互いに組み合わせることができる。
【0074】
次の実施例は本発明を例示するもので、発明を限定するものではない。
【実験セクション】
【0075】
実施例1:塩A=LiPF
サイクリックボルタンメトリー試験を実施した。このため、CR2032ボタンセルを、作用電極として直径20mmのアルミホイル、参照電極として直径8mmのリチウム金属ペレットと、体積比3/7のエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(CAS=623-53-0)からなる溶媒混合物中のカリウム塩KPFが添加された1mol/lのリチウム塩LiPF溶液を12滴(0.6ml)含浸させた直径18mmのグラスファイバーセパレーターを用いて製造した。ついで、ボタンセルの端子で電圧スイープを実施し、生成された電流を測定し記録する。電圧スイープは4Vと4.2Vで実施する。次の表は、様々な量のカリウム塩を添加した場合の二通りの逆電圧スイープと順電圧スイープ後の様々な電圧での酸化電流を示している。先の二通りのスイープにより、SEIなどのパッシベーション層の形成とアルミニウムのパッシベーションが可能になる。
【0076】
観察された酸化電流は、アルミニウムの腐食、電解質の劣化、リチウム樹枝状結晶の形成など、多くの現象を反映している場合がある。これら全ての現象は、リチウムイオン電池の寿命の低下の原因である。電流が低いほど、電池の寿命は改善される。4V及び4.2Vでの結果は、LiPFへのKPFの添加により、LiPFのみと比較してこの酸化電流を有利に低減させ、よってLiイオン電池の寿命を改善することが可能になることを示している。
【0077】
実施例2:塩A=LiFSI
サイクリング試験を実施した。このため、CR2032ボタンセルを、NMC111カソード、アノードとして直径8mmのリチウム金属ペレットと、体積比3/7のエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(CAS=623-53-0)からなる溶媒混合物中のカリウム塩KFSIが添加されたリチウム塩LiFSIの1mol/溶液を12滴(0.6ml)含浸させた直径18mmのグラスファイバーセパレーターを用いて製造した。この電池は、C/20のレートで二回の形成サイクルを受けて、様々なパッシベーション層を形成する。これらの二回の形成サイクルの後、容量が二回の形成サイクル後に決定されて初期容量の80%に到達するまで、電池は25℃においてC/5で充電され、C/2で放電される。次表は、(LiFSIと混合した)KFSIの様々な含有量に対して80%の容量に到達したサイクル数を示している。