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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】CNC旋盤のための回転方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 1/00 20060101AFI20230926BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20230926BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B23B1/00 Z
B23B27/14 C
B23B27/16 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020546460
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019052084
(87)【国際公開番号】W WO2019170325
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】18160713.6
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュテルンシュテット, ペル-アンダース
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03128657(US,A)
【文献】特開2012-196748(JP,A)
【文献】特開2004-148498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによる数値制御旋盤のための回転方法であって、
- 結合部(4)、中間部(5)、および切削部(2)を備える切削工具(1)を提供するステップであって、前記中間部(5)は前記結合部(4)と前記切削部(2)との間で延び、前記結合部(4)の長手方向中心軸が工具旋回軸(R1)を定め、前記中間部(5)はその長手方向中心軸(A1)に沿って延び、前記切削部(2)は上面(7)を備え、前記上面(7)は前記結合部(4)から離れる方を向き、前記切削部(2)は第1のノーズ部(10)を備え、前記第1のノーズ部(10)は、前記上面(7)に、第1の切れ刃(11)と、第2の切れ刃(12)と、前記第1の切れ刃(11)と前記第2の切れ刃(12)とを連結する凸状ノーズ切れ刃(13)とを備える、切削工具(1)を提供するステップと、
- 金属加工物(31)を提供するステップと、
- 前記金属加工物(31)を加工物旋回軸(R2)の周りで旋回させるステップと、
- 前記工具旋回軸(R1)を前記加工物旋回軸(R2)に対して垂直または実質的に垂直に設定するステップと、
- 前記第1の切れ刃(11)が有効となるように、および、前記第2の切れ刃(12)が無効となるように、第1の経路(36)を作るステップと、
- 前記第1の切れ刃(11)が無効となるように、および、前記第2の切れ刃(12)が有効となるように、第2の経路(37)を作るステップであって、前記第2の経路(37)は、前記第1の経路(36)と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対に方向付けられる、第2の経路(37)を作るステップと
を含み、
前記第1の経路(36)の間、および/または、前記第2の経路(37)の間、および/または、前記第1の経路(36)の後であるが前記第2の経路(37)の前に、前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)の周りで旋回させるステップを含む回転方法。
【請求項2】
前記第2の経路(37)の間に機械加工表面(38)の少なくとも一部分を前記第1の経路(36)から機械加工するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の経路の間に前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)の周りで第1の方向に旋回させるステップと、
前記第2の経路の間に前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)の周りで第2の方向に旋回させるステップであって、前記第2の方向は前記第1の方向と反対である、前記切削工具(1)を旋回させるステップと
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の経路(36)の後に前記切削工具(1)を前記金属加工物(31)から後退させるステップと、
前記第2の経路(37)の前に前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)の周りで旋回させるステップと
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
所定の特徴を前記金属加工物(31)に漸進的に切削するために前記第1の経路と前記第2の経路とを繰り返すステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属加工物(31)が前記凸状ノーズ切れ刃(13)と接触する点における接線が前記結合部(4)と交差または実質的に交差するように前記工具旋回軸(R1)を設定するステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記切削部(2)は第2のノーズ部(10’)を備え、
前記第1のノーズ部(10)および前記第2のノーズ部(10’)は前記切削工具(1)の自由端を各々形成し、
上面図において、前記第1のノーズ部(10)と前記第2のノーズ部(10’)とは、前記中間部(5)の前記長手方向中心軸(A1)の周りで測定されるときに互いに対して90°超の角度を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合部(4)と前記中間部(5)とは工具本体(3)を合同で形成し、
前記切削部(2)は第1の切削インサート(2)の形態であり、
前記工具本体(3)の前端(20)が、前記第1の切削インサート(2)のための第1のインサート座部(6)によって定められ、
前記第1の切削インサート(2)は、締め付け手段(14)によって前記第1のインサート座部(6)において取り外し可能に締め付けられ、
前記第1の切削インサート(2)は、前記上面(7)と反対の下面(8)を備え、側面(9)が前記上面(7)と前記下面(8)とを連結し、
中間平面(M1)が前記上面(7)と前記下面(8)との間の中間で延び、
前記凸状ノーズ切れ刃(13)は、上面図において、0.15~1.3mmの曲率半径を有して凸状に湾曲される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記切削工具(1)を前記金属加工物(31)から後退させるステップと、
前記第1のノーズ部(10)が前記金属加工物(31)から離れる方に移動させられるように、および、前記第2のノーズ部(10’)が前記金属加工物(31)に向けて移動させられるように、前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)の周りで旋回させるステップと
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記凸状ノーズ切れ刃(13)は前記工具旋回軸(R1)と交差または実質的に交差し、前記長手方向中心軸(A1)は前記工具旋回軸(R1)と平行に、かつ前記工具旋回軸(R1)から離間している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のノーズ部(10)と前記第2のノーズ部(10’)とは前記長手方向中心軸(A1)に対して対称に配置され、
前記長手方向中心軸(A1)は前記工具旋回軸(R1)と同一線上にある、請求項7又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記切削工具(1)は、第2のインサート座部において締め付けられる第2の切削インサート(29)を備え、前記第2のインサート座部は前記工具本体(3)の前記中間部(5)において形成され、前記第2のインサート座部は、長手方向において前記第1の切削インサート(2)と前記結合部(4)との間に位置決めされ、前記第1の切削インサート(2)および前記結合部(4)から離間され、
前記方法は、
前記切削工具(1)を前記金属加工物(31)から後退させるステップと、
前記切削工具(1)を前記工具旋回軸(R1)に沿って前方向に移動させるステップと
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
最大切屑厚さを前記第1の経路および/または前記第2の経路の間に一定または実質的に一定に設定するステップをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加工物旋回軸(R2)の周りでの前記金属加工物(31)の旋回の方向は、前記第1の経路(36)と前記第2の経路(37)との両方の間で同じである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の経路(36)と前記第2の経路(37)とは長手方向において反対方向にある、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ数値制御旋盤によって実行されるとき、前記コンピュータ数値制御旋盤に、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムを保存しているコンピュータ読取可能媒体。
【請求項18】
請求項16に記載のコンピュータプログラムを表しているデータストリーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より詳細には、本発明は、コンピュータ数値制御またはコンピュータによる数値制御、つまり、CNC、機械の使用による、金属加工物の回転のための方法の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
CNC旋盤を使用する金属加工物の回転において、所定の形を有する部品を機械加工するために、複数の切削工具を使用することが一般的である。部品の所定の形は、相当に異なる可能性があり、スロットまたは溝などの異なる特徴を含む可能性がある。
【0003】
部品の機械加工において、機械加工時間を短縮することが要求される。機械加工時間を短縮する1つの方法は、工具交換のための時間を短縮することである。
【0004】
EP1158378B1は、単一の工具で複数の機械加工モードにおいて機械加工することができる機械工具を提供することを請求しており、工具交換による機械加工時間の損失が低減でき、準備される工具の数が低減できる。一方のノーズ部が自由端であり、それによって有効または使用可能な位置になるように、約55°のノーズ角の2つの反対のノーズ部を備え、工具本体に装着される切削インサートを備える工具が提供される。スロットの機械加工(図7における工具位置25F、25G)が示されている。いわゆるB軸がいくつかの角度に設定され得る。
【0005】
本発明者は、前述の方法および工具がさらに改良できることを見出した。
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、改良された方法に対する要求があることを見出した。例えば、前述の方法および工具を使用してスロットを機械加工するとき、可能なB角度調節の角度は、特にはスロットの深さおよび幅といった幾何学的形状の要因に基づいて制限される。比較的深く細いスロットについて、工具本体と加工物との間には干渉の危険性の増加がある。本発明者が見出した改良に対するさらなる要求は、特には、深いスロットの回転においてなど、大きな張り出しを有する切削工具が必要とされる場合の、振動の危険性に関する。改良に対するなおもさらなる要求は、CNC機械についてのダウンタイムを短縮することに関する。
【0007】
本発明の目的は、改良された回転方法を提供することである。これは、請求項1に定められているような回転方法によって、つまり、コンピュータによる数値制御旋盤のための回転方法であって、結合部、中間部、および切削部を備える切削工具を提供するステップであって、中間部は結合部と切削部との間で延び、結合部の長手方向中心軸が工具旋回軸を定め、中間部はその長手方向中心軸に沿って延び、切削部は上面を備え、上面は結合部から離れる方を向き、切削部は第1のノーズ部を備え、第1のノーズ部は、第1の切れ刃と、第2の切れ刃と、第1の切れ刃と第2の切れ刃とを連結する凸状ノーズ切れ刃とを備える、切削工具を提供するステップと、金属加工物を提供するステップと、金属加工物を加工物旋回軸の周りで旋回させるステップと、工具旋回軸を加工物旋回軸に対して垂直または実質的に垂直に設定するステップと、第1の切れ刃が有効となるように、および、第2の切れ刃が無効となるように、第1の経路を作るステップと、第1の切れ刃が無効となるように、および、第2の切れ刃が有効となるように、第2の経路を作るステップであって、第2の経路は、第1の経路と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対に方向付けられる、第2の経路を作るステップとを含み、第1の経路の間、および/または、第2の経路の間、および/または、第1の経路の後であるが第2の経路の前に、切削工具を工具旋回軸の周りで旋回させるステップを含む回転方法によって実現される。
【0008】
このような回転方法によって、所定の特徴または所定の特徴の下位部分がより短い時間で機械加工できる。例えば、すべての経路が同じ方向にある複数の経路を使用する従来の長手方向の回転と比較して、本方法は、第1の経路の終了位置から後続の経路のための開始位置までより小さい移動となり得るため、より迅速となる。
【0009】
特に、スロット、または窪み、またはポケット、または溝を備える所定の特徴または所定の特徴の下位部分が、1つだけの切削部が必要であるため、より短い時間で機械加工できる。切削工具の旋回は十分な逃げを提供するように選択され得る。
【0010】
さらに、切削工具の旋回によって、切込み角が送り方向および工具設計の結果である従来の回転と比較して、切込み角が自由に選択できる。したがって、工具耐用期間および/または切屑制御が向上され得る。
【0011】
切削部の上面が結合部から離れる方を向き、工具旋回軸は加工物旋回軸に対して垂直または実質的に垂直であるこのような方法によって、接線方向の切削力が、結合部が連結される機械スピンドルに向けて方向付けられる。それによって、振動または撓みの危険性が低減させられる。それによって、より深いポケットが機械加工できる。
【0012】
このような方法によって、単一の切削工具が数多くの種類の特徴を機械加工するために使用でき、それによって工具の在庫に対する必要性を低下させることができる。
【0013】
このような方法によって、切削部の工具耐用期間は、インサートの摩耗が第1の切れ刃と第2の切れ刃との両方に沿ってより均一に分布させられ得るので、長くなり得る。
【0014】
回転方法は、コンピュータによる数値制御(CNC)旋盤を用いた使用のためである。より明確には、回転方法は、電子制御システムが所定の特徴を金属加工物の所定の場所へと切削するために切削工具および金属加工物の旋回を含む移動を制御する機械加工の順序である。
【0015】
前記所定の特徴は、好ましくはポケットまたは溝を備える。前記所定の特徴は、好ましくは金属加工物の外側周囲面に開放している。
【0016】
金属加工物の回転に適する切削工具が設けられる。別の言い方をすれば、切削工具は、旋回する金属加工物を切削するために使用できる回転工具である。切削工具は、CNC旋盤の例えば機械スピンドルといった旋回可能な機械接合部分に、直接的に、または、1つまたは複数の工具装置によって連結される結合部を備える。CNC旋盤は回転に適しており、例えば回転旋盤、マルチタスク機械、回転フライス機械、またはスライドヘッド式機械の形態であり得る。
【0017】
結合部は、好ましくは、ISO 26623-1:2014に準拠するなどのフランジ接触面を伴う多角形で中空の先細り接合部分、または、DIN69893、ISO 12164-1、またはISO 12164-1Fに準拠するなどのフランジ接触面を伴う中空の先細り部の形態においてなど、好ましくは円錐形または実質的に円錐形である。
【0018】
結合部の長手方向中心軸が工具旋回軸を定める。別の言い方をすれば、結合部が例えば機械スピンドルといった機械接合部分に装着されるとき、切削工具は工具旋回軸の周りで旋回可能である。別の言い方をすれば、切削工具は工具旋回軸の周りで旋回可能となるように配置される。
【0019】
工具旋回軸は結合部の長手方向中心軸である。切削工具はその工具旋回軸の周りで旋回可能となるように配置される。
【0020】
結合部は、好ましくは、工具旋回軸の周りで対称的または実質的に対称的に配置される。
【0021】
結合部は、好ましくは、中間部に永久的に連結され、それによって工具本体を形成する。
【0022】
結合部および中間部は好ましくは鋼鉄から作られる。
【0023】
中間部は、結合部と切削部との間で延び、結合部と切削部とを連結する。
【0024】
中間部はその長手方向中心軸に沿って延びる。中間部は、好ましくは、その長手方向中心軸に対して対称的または実質的に対称的に配置される。
【0025】
旋回軸に対して垂直な断面において、中間部は、好ましくは、中間部の前端においてより、つまり、中間部と切削部との間の交差部においてより、中間部の後端において、つまり、結合部と中間部との間の交差部において、大きさがより大きく、つまり、より大きな面積である。
【0026】
長手方向中心軸は、好ましくは、工具旋回軸と平行または同一線上にあり、つまり、工具旋回軸と同軸である。長手方向中心軸が工具旋回軸と平行であることは、長手方向中心軸が工具旋回軸から離間されていることを意味する。
【0027】
切削工具は切削部を備える。切削部は切削工具の前端を定める。結合部は切削工具の後端を定める。切削は、好ましくは、例えば超硬合金、陶性合金、立方晶窒化ホウ素(CBN)、またはセラミックなど、硬い耐摩耗材料から作られる切削インサートの形態である。切削インサートは、好ましくは、中間部の前端に形成されるインサート座部に取り外し可能に装着される。
【0028】
代替で、切削部、結合部、および中間部は単一の物体である。
【0029】
切削部は、すくい面を備える上面を備える。
【0030】
上面は結合部から離れる方を向いている。
【0031】
上面は、工具旋回軸に対して垂直または実質的に垂直であり、つまり、10°以内にある。
【0032】
上面は、好ましくは1つまたは複数の突起の形態において、好ましくは切屑破壊手段を備える。
【0033】
切削部は第1のノーズ部を備える。ノーズ部が、代わりに角部と呼ばれてもよい。
【0034】
第1のノーズ部は、第1の切れ刃と、第2の切れ刃と、第1の切れ刃と第2の切れ刃とを連結する凸状ノーズ切れ刃とを備える。
【0035】
ノーズ切れ刃は、上面図において、0.15~1.3mm、さらに好ましくは0.3~0.9mmの曲率半径を有する円弧など、好ましくは凸状に湾曲させられる。代替で、ノーズ切れ刃は、上面図において、異なる曲率半径を有する2つ以上の円弧を備える形など、完全な円弧から逸脱する凸状の形を有してもよい。例えば、ノーズ切れ刃はいわゆるワイパノーズ切れ刃であってもよい。
【0036】
好ましくは、ノーズ切れ刃は中間部の長手方向中心軸に対して切削部の最も遠位の部分である。
【0037】
第1の切れ刃および第2の切れ刃は各々、上面図において、好ましくは真っ直ぐまたは実質的に真っ直ぐである。好ましくは、上面図において、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間の中間に形成される二等分線が中間部の長手方向中心軸と交差する。
【0038】
第1の切れ刃と第2の切れ刃とは、上面図において、好ましくは、90°未満、好ましくは15°~85°、さらにより好ましくは20°~40°であるノーズ角を形成する。
【0039】
第1のノーズ部は切削工具の自由端を形成する。別に系統立てて言うと、第1のノーズ部は、切削工具の前端の径方向外側の端部分を備える。
【0040】
したがって、第1のノーズ部は、切削工具の前端の径方向遠位の部分を形成し、ここで、前記径方向の距離は中間部の長手方向中心軸に対してである。
【0041】
切削工具は、好ましくは、上面から締め付け部分までの距離が、中間部の長手方向中心軸に対して垂直な平面において測定される切削工具の最大直径より大きくなるように、中間部の長手方向中心軸の方向において細長くされる。
【0042】
好ましくは、上面図において、切削部は、50mmの直径を有する円の内側にあり、より好ましくは、35mmの直径を有する円の内側にある。
【0043】
好ましくは、切削工具は、80~400mm、より好ましくは90~250mmである、工具旋回軸に沿ってかまたは工具旋回軸と平行に測定される長さを有する。
【0044】
好ましくは、切削工具は、切削工具の前記長さより小さく、好ましくは前記長さの0.2~0.8倍である、工具旋回軸に対して垂直に測定される最大直径を有する。
【0045】
好ましくは、工具旋回軸に沿ってかまたは工具旋回軸と平行に測定される結合部の長さは中間部の長さより小さい。
【0046】
好ましくは、工具旋回軸に沿ってかまたは工具旋回軸と平行に測定される切削部の長さは、中間部の長さより小さく、より好ましくは中間部の長さの15%未満である。
【0047】
金属加工物が提供される。金属加工物は、例えば鋼鉄、ステンレス鋼、ニッケルに基づく超合金、またはアルミニウムから作られ得る。
【0048】
金属加工物は、好ましくは、その旋回軸の周りで回転対称または実質的に回転対称である。例えば、金属加工物は円筒形または実質的に円筒形であり得る。
【0049】
金属加工物は周囲面を備える。金属加工物が円筒形である場合、周囲面は、側部の面積または側面の面積(側部の面積2πrh)と、上基部の面積および下基部の面積(基部の面積とも呼ばれる各々の面積はπrである)とを備え、ここで、rは円筒の半径であり、hは円筒の高さ(加工物旋回軸に沿う)である。
【0050】
金属加工物が円筒の形態でない場合であっても、側部の表面、つまり、加工物旋回軸から離れる方を向く表面と、基部の表面、つまり、加工物旋回軸と平行な方向を向く表面とをなおも定めることができる。
【0051】
方法は、金属加工物をその加工物旋回軸の周りで回転させるステップを含む。前記加工物旋回軸の周りでの旋回の方向は、第1の経路と第2の経路との両方の間で同じである。金属加工物は、その締め付け端において締め付け手段によって締め付けられ、旋回はモータを用いて実現される。CNC旋盤は前記モータを備える。金属加工物は、金属加工物の周囲面の速度が好ましくは40~1000m/minとなるように旋回する。
【0052】
方法は、加工物旋回軸に対して、垂直である、または、実質的に垂直、つまり、15°未満である工具旋回軸を設定するステップを含む。工具旋回軸と加工物旋回軸とは離間される。
【0053】
方法は、第1の切れ刃が有効となり、前刃または主切れ刃となるように、および、第2の切れ刃が無効となり、後刃または副切れ刃となるように、切削工具および工具旋回軸を金属加工物に対して移動させることで、第1の経路を作るステップを含む。ノーズ切れ刃は、切れ刃を発生させる表面である。第1の経路は、金属加工物の機械加工表面を作り出すか、または形成するか、または結果的にもたらす。
【0054】
前記第1の経路は、線形とでき、つまり、直線に沿うことができる。代替で、前記第1の経路は、湾曲され得る、または、非線形であり得る。いずれの場合でも、前記第1の経路は、好ましくは軸方向もしくは長手方向の成分である成分、つまり、長手方向の回転など、加工物旋回軸に沿う成分を含む、または代替で、フェーシングもしくはアウトフェーシングなど、加工物旋回軸に向かうかもしくは加工物旋回軸から離れる径方向の成分を含む。
【0055】
金属加工物の旋回速度と組み合わされる前記移動の速度は、第1の切れ刃についての送り込み速さを結果的にもたらし、その送り込み速さは好ましくは0.05~1.5mm/回転である。
【0056】
方法は、第1の切れ刃が無効となり、後刃または副切れ刃となるように、および、第2の切れ刃が有効となり、前刃または主切れ刃となるように、切削工具および工具旋回軸を金属加工物に対して移動させることで、第2の経路を作るステップを含む。ノーズ切れ刃は、切れ刃を発生させる表面である。第2の経路は機械加工表面を作り出す。
【0057】
前記第2の経路は、線形とでき、つまり、直線に沿うことができる。代替で、前記第2の経路は、湾曲され得る、または、非線形であり得る。いずれの場合でも、前記第2の経路は、好ましくは軸方向もしくは長手方向の成分である成分、つまり、長手方向の回転など、加工物旋回軸に沿う成分を含む、または代替で、フェーシングもしくはアウトフェーシングなど、加工物旋回軸に向かうかもしくは加工物旋回軸から離れる径方向の成分を含む。
【0058】
第1の経路についての開始位置と終了位置とは離間される。
【0059】
第2の経路についての開始位置と終了位置とは離間される。
【0060】
金属加工物の旋回速度と組み合わされる前記移動の速度は、第2の切れ刃についての送り込み速さを結果的にもたらし、その送り込み速さは好ましくは0.05~1.5mm/回転である。
【0061】
第2の経路は、第1の方向と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対に方向付けられる。別の言い方をすれば、第2の経路は、第1の方向と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対である。例えば、第1の経路またはその成分が金属加工物の締め付け端に向かう場合、第2の経路またはその成分は金属加工物の前記締め付け端から離れる方を向く。別の言い方をすれば、第2の経路は第1の経路と長手方向で反対である。
【0062】
別の例は、第1の経路またはその成分が加工物旋回軸に向かう場合である。このような場合、第2の経路またはその成分が加工物旋回軸から離れる。別の言い方をすれば、第2の経路は第1の経路と径方向で反対である。
【0063】
別に系統立てて言うと、第1の経路であっても第2の経路であっても金属加工物の側部の表面の切削に両方とも関連付けられる、または、第1の経路および第2の経路は金属加工物の一方の基部の表面の切削に両方とも関連付けられる。第1の例では、第1の経路および第2の経路は、長手方向の回転加工、または、長手方向において反対方向でのプロフィール回転加工であり得る。
【0064】
第2の例では、第1の経路および第2の経路は、それぞれインフェーシング加工およびアウトフェーシング加工など、フェーシング加工であり得る。
【0065】
別の言い方をすれば、「第2の経路は、第1の経路と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対である」という表現は、第1の経路が長手方向の成分を含み、第2の経路が反対の長手方向の成分を含むかのように理解でき、第1の経路が径方向の成分を含む場合、第2の経路は反対の径方向の成分を含む。
【0066】
線形であり、径方向、つまり、加工物旋回軸に対して垂直である第2の経路は、第2の経路が加工物旋回軸に沿う成分を有していないため、線形であり、加工物旋回軸と平行である第1の経路の反対とは見なされない。
【0067】
好ましくは、第1の経路および第2の経路によって形成される所定の特徴または所定の特徴の下位部分は、金属加工物の側部の表面において完全にかまたは大規模に形成され、第1の方向および第2の方向の反対の成分はそれぞれ長手方向である。
【0068】
代替で、第1の経路および第2の経路によって形成される所定の特徴または所定の特徴の下位部分は、金属加工物の基部の表面において完全にかまたは大規模に形成され、第1の経路および第2の経路の反対の成分はそれぞれ径方向である。
【0069】
第1の経路および第2の経路のそれぞれの間の工具旋回軸の移動は、好ましくは平行な移動である。別の言い方をすれば、工具旋回軸の初期、中間、および最終の配向または位置が平行である。
【0070】
第1の経路および第2の経路は自動化された切削サイクルである。
【0071】
方法は、第1の経路の間、および/または、第2の経路の間、および/または、第1の経路の後であるが第2の経路の前に、回転工具を工具旋回軸の周りで旋回させるステップを含む。別の言い方をすれば、方法は、工具旋回軸の周りでの回転工具の旋回移動を含む。
【0072】
工具旋回軸の周りでの回転工具の前記旋回は、好ましくは、第1の経路および/または第2の経路の間の場合、切込み角が一定または実質的に一定となるように送り方向の変化と同期する。
【0073】
工具旋回軸の周りで回転工具を旋回させるステップは、第1の経路と第2の経路との間であり得る、つまり、第1の経路の後であるが第2の経路の前であり得る。このような場合、回転工具は、360°未満、好ましくは20°~170°、より好ましくは40°~130°である工具旋回軸の周りでの角度で旋回する。
【0074】
工具旋回軸の周りで回転工具を旋回させるステップは、代替で、第1の経路の間、つまり、第1の経路と同時であってもよい。このような場合、回転工具は、360°未満、好ましくは5°~180°、より好ましくは10°~170°である工具旋回軸の周りでの角度で旋回する。
【0075】
回転工具を工具旋回軸の周りで回転させるステップは、代替で、第2の経路の間、つまり、第2の経路と同時であってもよく、つまり、工具旋回軸を反対の第2の方向において移動させるステップの間、つまり、そのようなステップと同時であってもよい。このような場合、回転工具は、360°未満、好ましくは5°~180°、より好ましくは10°~170°である工具旋回軸の周りでの角度で旋回する。
【0076】
工具旋回軸の周りで回転工具を旋回させるステップは、代替で、第1の経路および第2の経路の間、つまり、第1の経路および第2の経路と同時であってもよい。このような場合、第1の経路および第2の経路のそれぞれの間の回転工具は、好ましくは5°~180°、より好ましくは10°~170°である工具旋回軸の周りでの角度で旋回する。このような場合、第1の経路の間の旋回の方向は、第2の経路の間の旋回の方向と反対である。別の言い方をすれば、第1のステップの間の旋回が時計回りである場合、第2のステップの間の旋回は反時計回りであり、第1のステップの間の旋回が反時計回りである場合、第2のステップの間の旋回は時計回りである。
【0077】
第1の経路および第2の経路の間、切削部の上面はすくい面またはすくい表面として機能する。
【0078】
実施形態によれば、方法は、第2の経路の間に機械加工表面の少なくとも一部分を第1の経路から機械加工するステップをさらに含む。
【0079】
このような回転方法によって、所定の特徴がより短い時間で機械加工できる。例えば、すべての経路が同じ方向にある複数の経路を使用する従来の長手方向の回転と比較して、本方法は、第1の経路の終了位置から後続の第2の経路のための開始位置までより小さい移動となり得るため、より迅速となる。
【0080】
特に、金属加工物の側部の表面もしくは基部の表面に形成される、窪み、またはポケット、または溝を備える所定の特徴は、1つだけの切削部が必要であるため、より短い時間で機械加工できる。
【0081】
第1の経路は第2の経路に先行する。第1の経路からの機械加工表面の好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%は、第2の経路の間に機械加工される。
【0082】
好ましくは、第1の経路についての開始位置から第2の経路についての終了位置までの間の距離は、第1の経路の開始位置と終了位置との間の距離より短い。
【0083】
第1の経路および第2の経路は各々、少なくとも一部で円弧形とされてもよい。
【0084】
実施形態によれば、方法は、第1の経路の間に切削工具を工具旋回軸の周りで第1の方向に旋回させるステップと、第2の経路の間に切削工具を工具旋回軸の周りで第2の方向に旋回させるステップであって、前記第2の方向は前記第1の方向と反対である、切削工具を旋回させるステップとをさらに含む。
【0085】
切削工具は第1の経路および第2の経路の間に旋回するこのような方法によって、より複雑な形とされる所定の特徴が1つだけのノーズ部を用いて機械加工できる。
【0086】
このような方法によって、凹状のポケットなどの所定の特徴が、切込み角が良好な切屑制御および/または表面仕上げを実現するために各々の瞬間において選択され得るように、機械加工され得る。
【0087】
第1の方向および第2の方向における工具旋回軸の移動は、それぞれ好ましくは非線形の移動である。別の言い方をすれば、第1の経路および第2の経路は非線形の線または工具経路に沿っている。
【0088】
好ましくは、第1の経路および第2の経路は凹状の線または工具経路に沿っている。
【0089】
したがって、方法は、第1の経路の間、つまり、第1の切れ刃が有効である間、切削工具を工具旋回軸の周りで第1の方向に旋回させるステップと、第2の経路の間、つまり、第2の切れ刃が有効である間、切削工具を工具旋回軸の周りで第2の方向に旋回させるステップであって、前記第2の方向は前記第1の方向と反対である、切削工具を旋回させるステップとを含む。例えば、第1の経路の間の旋回が時計回りである場合、第2の経路の間の旋回は反時計回りであり、第1の経路の間の旋回が反時計回りである場合、第2の経路の間の旋回は時計回りである。
【0090】
第1の経路および/または第2の経路の間の旋回は時計回りと反時計回りとの両方を含み得る。
【0091】
好ましくは、工具旋回軸の周りでの切削工具の旋回は、切込み角、つまり、リード角が一定または実質的に一定となるようになっている。別の言い方をすれば、好ましくは、送り方向と有効な切れ刃とは、第1の経路および第2の経路のそれぞれの間、互いに対して一定または実質的に一定の角度を形成する。
【0092】
前記切込み角は、好ましくは90°以下であり、好ましくは5°~85°である。
【0093】
別に系統立てて言うと、好ましくは、方法は、第1のステップおよび第2のステップの間、切込み角を一定または実質的に一定に設定するステップを含む。
【0094】
第1の経路および第2の経路のそれぞれについての開始位置と終了位置との間での角度差として定められる、第1の経路および第2の経路のそれぞれの間の工具旋回軸の周りでの切削工具の旋回は、好ましくは300°未満、好ましくは5°~180°、より好ましくは10°~170°である。
【0095】
実施形態によれば、方法は、第1の経路の後に切削工具を金属加工物から後退させるステップと、第2の経路の前に切削工具を工具旋回軸の周りで旋回させるステップとをさらに含む。
【0096】
このような方法によって、第1の経路の終わりまたは出口における切削工具の配向に拘わらず、第2の経路の入口における切削工具の配向が自由に選択できるため、工具耐用期間および/または切屑制御は向上させることができる。
【0097】
第1の方向および第2の方向における工具旋回軸の移動は、それぞれ線形または非線形であり得る。別の言い方をすれば、第1の経路および第2の経路は、直線、もしくは非線形の線、または工具経路に沿っている。
【0098】
したがって、方法は、第1の経路の後に切削工具を金属加工物から後退させる、つまり、切削から外すステップと、切削工具が切削から外れている間、第2の経路である切削へと向かう前に切削工具を工具旋回軸の周りで旋回させるステップとを含む。
【0099】
第1の経路の後であるが第2の経路の前での工具旋回軸の周りでの切削工具の旋回は、好ましくは360°未満であり、より好ましくは20°~170°であり、さらにより好ましくは40°~130°である。
【0100】
実施形態によれば、方法は、所定の特徴を金属加工物に漸進的に切削するために第1の経路と第2の経路とを繰り返すステップをさらに含む。
【0101】
このような方法によって、深いポケットなど比較的深い所定の特徴がより短い時間で機械加工できる。この文脈における深いとは、第1の切れ刃または第2の切れ刃について推奨される切削深さの2倍を超える金属除去深さを要求する所定の特徴を意味する。
【0102】
したがって、方法は、好ましくはポケットまたは溝の形態での所定の特徴が金属加工物の所定の場所に漸進的に切削されるように、第1の経路と第2の経路とを繰り返すステップをさらに含む。
【0103】
別の言い方をすれば、方法は、後続の経路が反対または実質的に反対の方向である切削工具の一連の交互の経路を含む。
【0104】
実施形態によれば、方法は、凸状ノーズ切れ刃との接触の点における金属加工物の接線が結合部と交差または実質的に交差するように工具旋回軸を設定するステップをさらに含む。
【0105】
このような方法によって、接線方向の切削力が、結合部が連結される機械スピンドルに向けて方向付けられる。それによって、振動または撓みの危険性が低減させられる。それによって、より深いポケットが機械加工できる。
【0106】
したがって、方法は、凸状ノーズ切れ刃との接触の点における金属加工物の接線が結合部と交差するように、および、工具旋回軸が、前記接線と同一線上、もしくは実質的に同一線上、または平行、もしくは実質的に平行になるように、つまり10°以内となるように、工具旋回軸を設定するステップをさらに含む。別の言い方をすれば、工具旋回軸の方向は接線方向の力の方向と同一線上、もしくは実質的に同一線上、または平行、もしくは実質的に平行である。
【0107】
工具旋回軸は、金属加工物の周囲面と交差する、または、金属加工物の周囲面からある距離で離間させられ、より明確には、第1の経路および第2の経路の間に機械加工された表面と交差する、または、その表面からある距離で離間させられる。前記距離は好ましくは80mm未満であり、さらにより好ましくは50mm未満であり、さらにより好ましくは20mm未満である。
【0108】
実施形態によれば、切削部は第2のノーズ部を備え、第1のノーズ部および第2のノーズ部は切削工具の自由端を各々形成し、上面図において、第1のノーズ部と第2のノーズ部とは、中間部の長手方向中心軸の周りで測定されるときに互いに対して90°超の角度を形成する。
【0109】
このような切削工具によって、切削工具はより長い時間にわたって使用できる。使用した第1のノーズ部から新しいかまたは未使用の第2のノーズ部への変更は、非常に短い時間で行え、CNC旋盤の制御システムによって制御される旋回移動とすることができる。
【0110】
好ましくは、第1のノーズ部と第2のノーズ部とは、好ましくは切削部が切削インサートの形態にあるなど、永久的に連結される。
【0111】
切削部の上面が見る人の方を向いている上面図において、第1のノーズ部と第2のノーズ部とは、中間部の長手方向中心軸の周りで測定されるときに互いに対して90°超、好ましくは120°または180°の角度を形成する。
【0112】
好ましくは、切削部は、上面図において対称または実質的に対称に180°または120°である。
【0113】
好ましくは、上面図において、第1の切れ刃と同一線上の第1の延長線と、第2の切れ刃と同一線上の第2の延長線とは、中間部の長手方向中心軸に対して両側において延びる。
【0114】
好ましくは、上面図において、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間に形成される二等分線の延長が中間部の長手方向中心軸と交差する。
【0115】
実施形態によれば、結合部と中間部とは工具本体を合同で形成し、切削部は第1の切削インサートの形態であり、工具本体の前端が、第1の切削インサートのための第1のインサート座部によって定められ、第1の切削インサートは、締め付け手段によって第1のインサート座部において取り外し可能に締め付けられ、第1の切削インサートは、上面と反対の下面を備え、側面が上面と下面とを連結し、中間平面が上面と下面との間の中間で延び、ノーズ切れ刃は、上面図において、0.15~1.3mmの曲率半径を有して凸状に湾曲される。
【0116】
切削部が第1の切削インサートの形態にあるこのような方法によって、第1の切削インサートだけが使用後に差し替えられる必要があり、それによって切削工具をより経済的にする。
【0117】
切削工具は、好ましくは超硬合金など、金属切削に適した硬い耐摩耗材料から好ましくは作られる第1の切削インサートを備える。切削工具は、例えば鋼鉄など、比較的より劣った耐摩耗材料から好ましくは作られる工具本体を備える。工具本体は結合部と中間部とを備える。結合部と中間部とは永久的に連結され、それによって工具本体を単一の物体の形態で形成する。
【0118】
工具本体は、締め付け部分によって定められる後端と、第1の切削インサートのための第1のインサート座部またはインサートポケットによって定められる前端との間で長手方向に延びる。
【0119】
第1の切削インサートは、例えば1つまたは複数のネジを用いてといった締め付け手段によって、第1のインサート座部において取り外し可能もしくは除去可能に締め付けまたは係止される。
【0120】
第1の切削インサートは、前記締め付けネジのための孔を好ましくは備え、孔は第1の切削インサートの上面および下面と交差する。前記孔は第1の切削インサート中心軸を好ましくは定める。第1の切削インサート中心軸は、好ましくは旋回軸と同一線上または並行である。
【0121】
第1の切削インサートは、上面と反対の下面を備える。上面はすくい面を備える。側面は上面と下面とを連結する。側面は逃がし面を備える。第1の切れ刃、第2の切れ刃、およびノーズ切れ刃は、側面と上面との間の交差部に形成される。
【0122】
中間平面が上面と下面との間の中間で延びる。好ましくは、前記中間平面は、中間部の長手方向中心軸に対して垂直であり、旋回軸に対して垂直である。
【0123】
第1の切削インサートは中間平面に対して鏡面対称であってもよい。別の言い方をすれば、第1の切削インサートは、いわゆるネガティブの切削インサートであり得る。
【0124】
好ましくは、上面の面積は下面の面積より大きく、前記面積は、前記面の外側境界線の内側の面積として定められる。別の言い方をすれば、好ましくは、第1の切削インサートはポジティブの切削インサートであり得る。このようなインサートは向上した逃げを与える。
【0125】
好ましくは、上面および下面は、それらの形が対応または実質的に対応するように成形される。例えば、上面が概して三角形とされる場合、下面は好ましくは三角形とされる。他の適切な形には菱形がある。
【0126】
好ましくは、第1の切削インサートは、第1のインサート座部旋回係止手段と協働する旋回係止手段を備える。
【0127】
前記第1の切削インサートの旋回係止手段または旋回防止手段は、第1の切削インサートの下面に、好ましくは1つもしくは複数の突起または凹所の形態で、さらにより好ましくは1つもしくは複数の溝または隆条部の形態で、好ましくは形成される。
【0128】
ノーズ切れ刃は、上面図において、0.15~1.3mmの曲率半径を有して凸状に湾曲される。別の言い方をすれば、上面図において、ノーズ切れ刃はアーチ状にされる。ノーズ切れ刃は、上面図において、円形のアーチの形を有し得る。代替で、ノーズ切れ刃は、上面図において、例えば、ワイパノーズ半径、もしくはワイパ半径、またはワイパ設計として一般的には知られている形など、アーチ形とされるが完全な円形のアーチから逸脱する形を有してもよい。
【0129】
上面図において、第1のノーズ部および第2のノーズ部は、好ましくは、工具本体の前端の外側で径方向に延び、つまり、インサート座部の外側で径方向に延びる。
【0130】
上面図において、中間部は、好ましくは、結合部の外側境界線の内側にある。
【0131】
中間部の前端、つまり、工具本体の前端は、好ましくは、ちょうど1つのインサート座部から成る。
【0132】
実施形態によれば、方法は、切削工具を金属加工物から後退させるステップと、第1のノーズ部が金属加工物から離れる方に移動させられるように、および、第2のノーズ部が金属加工物に向けて移動させられるように、切削工具を工具旋回軸の周りで旋回させるステップとをさらに含む。
【0133】
このような方法によって、有効位置にある使用された第1のノーズ部から有効位置における第2の新たなノーズ部への変更が短時間で行えるため、割り出し時間が短縮される。従来、回転において、割り出しは手作業で行われており、切削インサートをインサート座部から除去するステップを伴う。代替で、新たなノーズ部への変更は、使用された切削工具を機械接合部分から除去することを伴う自動または手動のステップによって行われる。従来の切削工具を使用する前述の従来の方法と比較して、本切削工具は、より短い時間しか掛からない選択肢を提供する。
【0134】
したがって、方法は、好ましくは第2の経路の後、切削工具を金属加工物から後退させるステップを含む。切削工具は、後続の旋回の間に干渉を回避するために、十分な逃げが提供されるように十分な距離で後退させられる。前記旋回は、第1のノーズ部が金属加工物から離れる方に移動させられるように、および、第2のノーズ部が金属加工物に向けて移動させられるように、切削工具を工具旋回軸の周りで旋回させることを意味する。別の言い方をすれば、割り出しは、使用された第1のノーズ部が無効位置へと持って行かれるように、および、新たな第2のノーズ部が有効位置へと持って行かれるように行われる。
【0135】
前記旋回は、第1のノーズ部分と第2のノーズ部分との間の上面図における角度差と好ましくは等しいかまたは実質的に等しい。前記旋回は、好ましくは、90°、120°、180°、または240°に等しいかまたは実質的に等しい。
【0136】
好ましくは、前記方法は、第1のノーズ部に関して対応する方法で第2のノーズ部を使用して、金属加工物、または、前記金属加工物と同様または実質的に同様の第2の金属加工物を切削するステップを含む。
【0137】
実施形態によれば、凸状ノーズ切れ刃は工具旋回軸と交差または実質的に交差し、長手方向中心軸は工具旋回軸と平行に、かつ工具旋回軸から離間している。
【0138】
このような切削工具によって、凸状ノーズ切れ刃についての位置決めは、より便利な手法で決定でき、それによって、CNC旋盤のプログラミングをより容易に行える。
【0139】
このような切削工具によって、特に第1のノーズ部と第2のノーズ部とが上面図において180°または実質的に180°の角度を形成する場合に第2のノーズ部を使用するとき、干渉の危険性が低減されるため、より深いポケットが機械加工できる。
【0140】
凸状ノーズ切れ刃は工具旋回軸と交差または実質的に交差する。この文脈における実質的な交差は、凸状ノーズ切れ刃の中間点が工具旋回軸から0.5mm以内に位置決めされるなどとして解釈される。
【0141】
実施形態によれば、第1のノーズ部と第2のノーズ部とは長手方向中心軸に対して対称に配置され、長手方向中心軸は工具旋回軸と同一線上にある。
【0142】
このような切削工具によって、第1の切削インサートの割り出しは、第1の切削インサートが細い空洞または細いポケットの内側にある場合、より複雑でない方法で行うことができる。この文脈における割り出しは、1つの切削部が有効位置に位置決めされるように、好ましくは120°または180°といった角度での切削工具の旋回軸の周りでの旋回を通じて行われる。このような切削工具によって、切削工具は、切削部を交換することなく長い時間にわたって使用できる。
【0143】
好ましくは、上面図における切削部は、少なくとも2つであるが4つ以上ではないノーズ部を備える。
【0144】
例えば、切削部は、上面図において互いに対して180°で配置される2つのノーズ部を備え得る。このような場合、工具旋回軸は第1のノーズ部と第2のノーズ部との間の中間で延びる。
【0145】
別の例では、切削部は、上面図において互いに対して120°で配置される3つのノーズ部を備え得る。このような場合、工具旋回軸は第1のノーズ部と第2のノーズ部と第3のノーズ部との間の中間で延びる。
【0146】
好ましくは、第1の切れ刃と第2の切れ刃との間で延びる二等分線が長手方向中心軸と交差する。
【0147】
実施形態によれば、切削工具は、第2のインサート座部において締め付けられる第2の切削インサートを備え、第2のインサート座部は工具本体の中間部において形成され、第2のインサート座部は、長手方向において第1の切削インサートと結合部との間に位置決めされ、第1の切削インサートおよび結合部から離間され、方法は、切削工具を金属加工物から後退させるステップと、切削工具を工具旋回軸に沿って前方向に移動させるステップとをさらに含む。
【0148】
このような切削工具によって、第1の切削インサートから第2の切削インサートへの変更が短い時間で行えるため、部品を機械加工するための時間がさらに短縮できる。
【0149】
切削工具、より正確には工具本体は、第2のインサート座部において、好ましくは締め付けネジを用いて、締め付けられるかまたは除去可能に留め付けられる第2の切削インサートの形態で第2の切削部を備える。
【0150】
好ましくは、第2の切削インサートは、第1の切削インサートと比較して、上面図において形が異なる。例えば、第2の切削インサートはネジ切りインサートまたは溝切りインサートであり、第1の切削インサートは回転インサートである。
【0151】
第2のインサート座部は、長手方向において第1の切削インサートと結合部との間で、第1の切削インサートおよび結合部から離間される工具本体の中間部に形成される。別の言い方をすれば、第2のインサート座部は第1のインサート座部の後方に配置される。
【0152】
好ましくは、第2の切削インサートは、第2のインサートの少なくとも1つのノーズ部が、第1のノーズ部と比較して位置決めされ、中間部の長手方向中心軸より大きな距離に配置されるように、第2のインサート座部に除去可能に留め付けられる。
【0153】
好ましくは、第2の切削インサートにおいて、上面図において有効位置(つまり、径方向外側の位置)におけるノーズ部が、第1のノーズ部および第2のノーズ部に対して等しい大きい角度または実質的に等しい大きい角度を形成するように、第2の切削インサートは第2のインサート座部において除去可能に留め付けられる。例えば、切削工具が上面図において見られるとき、第1の切削インサートは、6時および12時に配置される2つのノーズ部を備えてもよく、第2の切削インサートは、おおよそ3時または代替でおおよそ9時に配置される径方向外側のノーズ部を備えてもよく、ここで、時間の参照は、アナログの12時間の時計に言及している。このような切削工具によって、逃げがさらに向上させられる。
【0154】
好ましくは、切削工具は第3のインサート座部を備える。好ましくは、第3のインサート座部は、中間部の長手方向中心軸に対して、第2のインサート座部の反対または実質的に反対に位置決めされる。
【0155】
好ましくは、第3のインサート座部と第2のインサート座部とは、長手方向において締め付け部分から等しい距離または実質的に等しい距離に位置決めされる。
【0156】
方法は、後続の移動の間に衝突または接触を回避するために十分な逃げまたは空間を提供するように、切削工具を金属加工物から後退させるステップをさらに含む。
【0157】
方法は、切削工具を工具旋回軸に沿って前方向に移動させるステップをさらに含む。別の言い方をすれば、方法は、第1の切削インサートが金属加工物から遠くに離れるように持って行かれるように、および、第2の切削インサートが金属加工物の近くに持って来られるように、切削工具の長手方向の運動を含む。
【0158】
前記方法は、好ましくは、第2の切削インサートが有効位置になるように、切削工具を工具旋回軸の周りで所定の角度で回転させるステップをさらに含む。前記所定の角度は、好ましくは、30°~330°の範囲内にあり、さらにより好ましくは、80°~100°の範囲内にある。
【0159】
好ましくは、前方向における前記移動の距離は、第1の切削インサートと第2の切削インサートとの間の長手方向の距離と等しいかまたは実質的に等しい。
【0160】
実施形態によれば、方法は、最大切屑厚さを第1の経路および/または第2の経路の間に一定または実質的に一定に設定するステップをさらに含む。
【0161】
このような方法によって、特には幾何学的な制限が一定の切込み角を可能にしない機械加工のとき、工具耐用期間および/または生産性はさらに向上させられる。
【0162】
切取り厚さとしても知られ、「hex」と呼ばれることもある最大切屑厚さhは、h=f×sin Kとなるように、リード角としても知られる切込み角Kの正弦関数で乗算された1回転当たりの送り込み速さfとして定められる。1回転当たりの送り込み速さfは、倣削りにおいてであり、つまり、送り込みが、径方向の成分と長手方向の成分との合計に等しい径方向および長手方向の成分を含む場合である。別の言い方をすれば、ある点における前記送り込み速さfは、前記点の長手方向の送り込み成分および径方向の送り込み成分のベクトルの合計に等しい。実質的に一定の最大切屑厚さによって、最大切屑厚さhが第1の経路および/または第2の経路の少なくとも90%の間に±25%内で変化することを意味する。切込み角Kは、送り方向と有効な主切れ刃との間の角度として定められる。第1の経路の間、第1の切れ刃は有効な主切れ刃である。第2の経路の間、第2の切れ刃は主切れ刃である。前記切込み角Kは、好ましくは90°以下であり、好ましくは5°~85°である。
【0163】
実施形態によれば、加工物旋回軸の周りでの金属加工物の旋回の方向は、第1の経路と第2の経路との両方の間で同じである。
【0164】
例えば、金属加工物は、第1の経路と第2の経路との両方の間で時計回り方向に旋回する。代替で、金属加工物は、第1の経路と第2の経路との両方の間で反時計回り方向に旋回する。
【0165】
実施形態によれば、第1の経路と第2の経路とは長手方向において反対の方向にある。
【0166】
実施形態によれば、コンピュータプログラムが、コンピュータ数値制御旋盤によって実行されるとき、コンピュータ数値制御旋盤に、先に定められた回転方法を実施させる命令を有する。
【0167】
このようなコンピュータプログラムによって、前記回転方法は数多くのCNC旋盤またはCNC機械において容易に実施できる。
【0168】
前記コンピュータプログラムは、切削工具の移動および旋回を制御するための命令と、先に定められた方法による回転加工を用いて素材を除去するための金属加工物の旋回のための命令とを有する。
【0169】
前記命令は、切削速度、送り込み速さ、工具経路、および切削深さなどの切削データを含み得る。
【0170】
ここで、本発明は、本発明の異なる実施形態の記載によって、および、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1】第1の切削工具の一部である工具本体の斜視図である。
図2】第1の切削工具の斜視図である。
図3図1における工具本体のインサート座部の斜視図である。
図4図2における切削工具の側面図である。
図5図2における切削工具のさらなる側面図である。
図6】第2の切削工具の側面図である。
図7図6における切削工具の斜視図である。
図8図6における切削工具の上面図である。
図9】第3の切削工具の斜視図である。
図10図9における切削工具の側面図である。
図11図9における工具本体の斜視図である。
図12図11における工具本体のインサート座部の斜視図である。
図13図9における切削インサートの斜視図である。
図14図13における切削インサートの側面図である。
図15図13における切削インサートの上面図である。
図16図13における切削インサートのさらなる斜視図である。
図17】第4の切削工具の側面図である。
図18図17における切削工具のさらなる側面図である。
図19図17における切削工具の斜視図である。
図20図17における切削工具の上面図である。
図21図6における切削工具を使用する第1の回転方法の実施形態による第1の経路の開始である。
図22図21に示された第1の経路の終了である。
図23図6における切削工具を使用する第1の回転方法の実施形態による第2の経路の開始である。
図24図23に示された第2の経路の終了である。
図25図9における切削工具を使用する第2の回転方法の実施形態による第1の経路の図示である。
図26図9における切削工具を使用する回転方法による第2の経路の図示である。
図27】第3の回転方法の実施形態による複数の経路の図示である。
図28図9における切削工具を使用する回転方法の側面図である。
図29図9における切削工具を使用する回転方法による側面図である。
図30図25および図26における回転方法の側面図である。
図31図28に示された切削工具および金属加工物の斜視図である。
図32図17における切削工具を使用する第4の回転方法の実施形態の側面図である。
図33図17における切削工具を使用する第4の回転方法の実施形態の側面図である。
図34図6における切削工具を使用する第5の回転方法の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0172】
すべての切削工具および切削インサートの図は一定の縮尺で描かれている。
【0173】
ここで、本発明はより詳細に説明され、本発明による方法を実施するために使用できる切削工具の例が説明される。第1~第4の切削工具である、4つの切削工具、または、切削工具の4つの実施形態がより詳細に説明される。このような切削工具は、前述の回転方法を実施するための具体的に適していることは見出されている。
【0174】
工具本体3および切削インサート2を備える第1の切削工具1を示す図1図5を参照する。工具本体3は、図1では切削インサート2なしで示されている。切削工具は、図3に示されているインサート座部6を備える。切削工具1は、結合部4、中間部5、および切削部2を備える回転工具である。結合部4と中間部5とは永久的に連結され、鋼鉄から作られた工具本体3を合同で形成している。切削部2は、超硬合金から作られた第1の切削インサート2の形態である。第1の実施形態による切削工具1は、1つだけの切削インサートを備える。
【0175】
結合部4は旋回可能な機械接合部分(図示せず)に適している。結合部4は、実質的に円錐形または先細りの部分39と、ISO 26623-1:2014に準拠する輪状に成形された部分40とを備える。
【0176】
工具本体3の前端20または前方端が、第1の切削インサート2のための第1のインサート座部6によって定められる。第1の切削インサート2は、締め付け手段14によって第1のインサート座部6に取り外し可能に締め付けられ、前記締め付け手段は締め付けネジ14の形態である。
【0177】
第1の切削インサート2は、上面7と反対の下面8を備える。側面9が上面7と下面8とを連結する。
【0178】
図4において見られるように、中間平面M1が上面7と下面8との間の中間で延びている。
【0179】
中間部5は結合部4と切削部2との間で延びている。
【0180】
結合部4の長手方向中心軸が工具旋回軸R1を定めている。
【0181】
中間部5はその長手方向中心軸A1に沿って延びている。
【0182】
第1の実施形態による切削工具1について、長手方向中心軸A1は、図2図4、および図5に見られるように、工具旋回軸R1と同一線上または同軸である。
【0183】
中間平面M1は、中間部5の長手方向中心軸A1に対して垂直であり、旋回軸R1に対して垂直である。
【0184】
第1の切削インサート2の上面7は結合部4から離れる方を向いている。上面7は平面状ではなく、切屑破壊手段または切屑破壊物を突起の形態で備える。
【0185】
第1の切削インサート2は、切削工具1の自由端を各々形成する第1のノーズ部10および第2のノーズ部10’を備える。
【0186】
第1のノーズ部10は、上面図において両方とも真っ直ぐな第1の切れ刃11および第2の切れ刃12と、第1の切れ刃11と第2の切れ刃12とを連結する凸状ノーズ切れ刃13とを備える。凸状ノーズ切れ刃13は上面図において凸状である。ノーズ切れ刃13は、上面図において、0.15~1.3mmの曲率半径を有して凸状に湾曲されている。第1の実施形態による切削工具の上面図が示されていないが、第1の実施形態による第1の切削インサート2の上面図が、同一の切削インサートを示す図8において示されている。
【0187】
第1の実施形態によれば、曲率半径は0.4mmである。
【0188】
第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、35°であるノーズ角を形成している。
【0189】
上面図において、第1のノーズ部10と第2のノーズ部10’とは、中間部5の長手方向中心軸A1の周りで測定されるときに互いに対して180°の角度を形成している。
【0190】
第1の切削インサート2は、上面図および下面図において180°対称である。第1の切削インサートは上面図において平行四辺形とされている。
【0191】
図3に示されているように、第1のインサート座部6は、隆条部23~26を備える第1のインサート座部旋回係止手段を備え、ここで、2つの隆条部23、26は同一線上にあり、2つの隆条部24、25は平行である。
【0192】
第1の切削インサート2は、下面8に形成され、第1のインサート座部旋回係止手段23~26と協働する溝(図示せず)の形態での第1の切削インサート旋回係止手段を備える。
【0193】
第1の切削インサート2は締め付けネジ14のための孔を備える。前記孔は上面8および下面9と交差し、孔の中心軸は、旋回軸R1および長手方向中心軸A1と同一線上の第1の切削インサート中心軸を定めている。
【0194】
切削工具1は、工具本体3に形成され、結合部4とノズル28との間で延びる冷却剤通路を備える。前記ノズル28は中間部5に形成されており、冷却剤通路とノズル28とは、冷却剤流体を第1のノーズ部10および第2のノーズ部10’に向けて方向付けるように配置されている。
【0195】
ここで、切削インサート2を備える第2の切削工具1を示す図9図16を参照する。第1の切削工具と比較しての主たる違いは、切削インサート2およびインサート座部6の設計に関する。
【0196】
図15で見られるような上面図において、第1の切れ刃11と同一線上の第1の延長線21と、第2の切れ刃12と同一線上の第2の延長線22とが、第1の切削インサート中心軸A2に対して両側において延びており、第1の切削インサート中心軸A2は、切削インサート2がインサート座部6に装着されるとき、旋回軸R1および長手方向中心軸A1と同一線上にある。先の文は、第1の実施形態による切削工具1についても当てはまる。
【0197】
第1の切削インサート2は3つのノーズ部10、10’、10”を備える。第1の切削インサート2は、上面図および下面図において120°対称である。
【0198】
図15において見られるような上面図では、第1の切れ刃11および第2の切れ刃12は、35°であるノーズ角αを形成している。
【0199】
図12において見られるように、第1のインサート座部6は、隆条部23~25を備える第1のインサート座部旋回係止手段を備え、前記隆条部23~25は、第1のインサート座部6に形成された締め付けネジ14のための孔32に対して径方向に延びている。
【0200】
第1の切削インサート2は、下面8に形成され、第1のインサート座部旋回係止手段23~26と協働する溝16~18を備える第1の切削インサート旋回係止手段を備える。
【0201】
ここで、第4の切削工具1を示す図17図20を参照する。第4の切削工具1は、切削工具1が第2のインサート座部および第3のインサート座部にそれぞれ締め付けまたは装着される第2の切削インサート29および第3の切削インサート30を備える点において、第1の切削工具と主に異なる。前記第2のインサート座部および前記第3のインサート座部は、長手方向において第1の切削インサート2と結合部4との間で、第1の切削インサート2および結合部4から離間される工具本体3の中間部5に形成されている。
【0202】
第2の切削インサート29および第3の切削インサート30は、第1の切削インサート2と比較して、上面図において形が各々異なる。第3の切削インサート30はネジ切りインサートである。
【0203】
第2の切削インサート29および第3の切削インサート30は、ノーズ部を各々備え、前記ノーズ部の各々は切れ刃のセットを備える。
【0204】
第1の切削インサート2と比較して、第2の切削インサート29および第3の切削インサート30は、中間部5の長手方向中心軸A1からより大きい距離に配置される。
【0205】
図20において見られるような上面図において、第2の切削インサート29および第3の切削インサート30は、第1のノーズ部および第2のノーズ部に対して等しく大きい角度または実質的に等しく大きい角度を形成する。図20では、第1の切削インサートは、6時および12時にそれぞれ配置されている2つのノーズ部10、10’を備える。第2の切削インサート29は9時に配置されており、第3の切削インサート30は3時に配置されており、ここで、時間の参照は、アナログの12時間の時計に言及しており、長手方向中心軸A1に対する相対位置に関連している。このような切削工具によって、逃げがさらに向上させられる。
【0206】
図17において見られるように、第2の切削インサート29および第3の切削インサート30は、長手方向において締め付け部分4から等しい距離または実質的に等しい距離に位置決めされている。
【0207】
ここで、第2の切削工具1を示す図6図8を参照する。第2の切削工具1について、長手方向中心軸A1が工具旋回軸R1と平行で工具旋回軸R1から離間されており、第1のノーズ部10の凸状ノーズ切れ刃13が工具旋回軸R1と交差または実質的に交差する点において、第2の切削工具1は第1の切削工具と主に異なる。別の言い方をすれば、中間部5は工具旋回軸R1に対してずれている。第1のノーズ部10の凸状ノーズ切れ刃13の中間点は、工具旋回軸R1から0.5mm以下に位置決めされている。
【0208】
他の点において、第2の切削工具1は第1の切削工具と同様である。例えば、図8において見られるような上面図において、第1の切れ刃11と同一線上の第1の延長線21と、第2の切れ刃12と同一線上の第2の延長線22とは、中間部5の長手方向中心軸A1に対して両側において延びている。
【0209】
第1、第3、および第4の実施形態によれば、図8において見られるような上面図において、中間部5と第1の切削インサート2とは結合部4の外側境界線の内側にある。
【0210】
ここで、コンピュータによる数値制御旋盤(図示せず)についての第1の実施形態による回転方法を示す図21図24を参照する。前述の切削工具のいずれも使用できるが、第2の切削工具1が提供されている。切削インサート2は第1のノーズ部10と第2のノーズ部10’とを備える。図21図24における方法では、第2のノーズ部10’は有効位置にある。方法は、代わりに第1のノーズ部10が有効位置にある場合に実施されてもよい。このような場合、切削工具1は工具旋回軸R1の周りで180°旋回させられる。
【0211】
加工物旋回軸R2の周りに旋回する金属加工物31が提供される。工具旋回軸R1は加工物旋回軸R2に対して垂直である。例では、加工物旋回軸R2は水平位置にあり、工具旋回軸R1は鉛直位置にある。1つの可能な代替は、加工物旋回軸R2を鉛直位置で配置し、工具旋回軸R1を水平位置で配置することである。
【0212】
方法は、第1の切れ刃11’が有効となるように、および、第2の切れ刃12’が無効となるように、および、機械加工表面38がノーズ切れ刃13’によって形成されるように、上面図で見たとき、切削工具1を移動させることで第1の経路36を作るステップを含む。第1の経路36の開始は図21に示されている。第1の経路の終了または完了は図22に示されている。
【0213】
方法は、第1の切れ刃11’が無効となるように、第2の切れ刃12’が有効となるように、および、第1の経路36から機械加工表面38の少なくとも一部分が機械加工されるように、切削工具1を移動させることで、第2の経路37を作るステップを含み、第2の経路は第1の経路と長手方向または径方向で反対もしくは実質的に反対である。第2の経路37の開始は図23に示されている。第2の経路の終了または完了は図24に示されている。図21図24に示されている方法について、第2の経路は第1の経路に対して長手方向で反対である。
【0214】
図21および図22から分かるように、前記第1の経路は線形である。したがって、前記第1の経路は、加工物旋回軸R2と平行である、つまり、加工物旋回軸R2に沿う成分32によって定められ得る。
【0215】
図23および図24から分かるように、前記第2の経路は線形である。したがって、前記第2の経路は、加工物旋回軸R2と平行であり、第1の方向についての成分32と反対である成分33によって定められ得る。
【0216】
図21および図22において見られるように、第1の経路36についての開始位置と終了位置とは離間されている。
【0217】
第1の経路36および第2の経路37の間、切込み角は一定である。
【0218】
加工物旋回軸R2の周りでの金属加工物31の旋回の方向は、第1の経路36と第2の経路37との両方の間で同じである。
【0219】
第1の経路36の後であるが第2の経路37の前、切削工具1は金属加工物31から後退させられる。
【0220】
切削工具1の後退の後であるが第2の経路37の前、切削工具1は、40°~130°である角度で工具旋回軸R1の周りに旋回させられる。
【0221】
ここで、第3の切削工具を使用する第2の実施形態による回転方法を示す図25図26に注目する。切削工具の切削インサート2だけが示されている。方法は、前述されている切削工具のいずれかを用いて使用できる。
【0222】
加工物旋回軸R2の周りに旋回する金属加工物31が提供される。工具旋回軸(図示せず)は加工物旋回軸R2に対して垂直である。方法は、第1の切れ刃11が有効となるように、および、第2の切れ刃12が無効となるように、および、機械加工表面38がノーズ切れ刃13によって形成されるように、切削工具を移動させることで、図25に示された第1の経路を作るステップを含む。右手側から開始して左手側に向けて移動する切削インサート2の5つの位置が示されている。
【0223】
方法は、第1の切れ刃11が無効となるように、および、第2の切れ刃12が有効となるように、および、第1の経路からの機械加工表面38の少なくとも一部分が機械加工されるように、切削工具を移動させることで、図26に示された第2の経路を作るステップを含む。
【0224】
第1の経路の間、切削工具は、工具旋回軸の周りで、図25では反時計回りである第1の方向に旋回する。
【0225】
第2の経路の間、切削工具は、工具旋回軸の周りで第2の方向に旋回し、図26では時計回りである前記第2の方向は、前記第1の方向と反対である。
【0226】
図25において見られるような第1の経路の間、切削工具は非線形または湾曲した線に沿って移動させられる。第1の経路は、左手側に向かっている長手方向の成分32を含む。
【0227】
図26において見られるような第2の経路の間、切削工具は非線形または湾曲した線に沿って移動させられる。第2の経路は、右手側に向かっている、つまり、第1の経路の長手方向の成分32と反対である長手方向の成分33を含む。
【0228】
第1の経路および第2の経路の間、切込み角は一定である。
【0229】
第1の経路の後であるが第2の経路の前、切削工具は金属加工物31から後退させられる。
【0230】
加工物旋回軸R2の周りでの金属加工物31の旋回の方向は、第1の経路36と第2の経路37との両方の間で同じである。
【0231】
ここで、第3の実施形態による回転方法を示す図27に注目する。前述されている回転工具のいずれかが使用できる。第1の経路36および第2の経路37が示されている。前記第1の経路36と前記第2の経路37とは、第2の実施形態による回転方法と同様または実質的に同様である。前記第1の経路36および前記第2の経路37は、所定の特徴を金属加工物に漸進的に切削するために繰り返される。別の言い方をすれば、第3の実施形態による回転方法は、後続の経路が反対または実質的に反対の方向である切削工具の一連の交互の経路を含む。
【0232】
加工物旋回軸の周りでの金属加工物の旋回の方向は、第1の経路36と第2の経路37との両方の間で同じである。
【0233】
ここで、金属加工物31および第3の切削工具1の相対的な位置および配向を側面図において示す図28に注目する。代替で、前述されている切削工具の任意の他のものが使用できる。切削工具1は、CNC旋盤(図示せず)の機械接合部分40に締め付けられる結合部4と、中間部5と、切削インサートの形態での切削部2とを備える。CNC旋盤(図示せず)は、コンピュータプログラム、コンピュータ読取可能媒体、またはデータ流における命令によって回転方法を実施するように指示され得る。結合部4の長手方向中心軸が工具旋回軸R1を定めている。中間部5はその長手方向中心軸A1に沿って延びている。切削部2は、結合部4から離れる方を向く上面を備える。
【0234】
金属加工物31は、図28において、加工物旋回軸R2の周りで時計回り方向に回転する。
【0235】
工具旋回軸R1は加工物旋回軸R2に対して垂直である。工具旋回軸R1は、凸状ノーズ切れ刃13との接触の点における金属加工物31の接線が結合部4と交差するように配置されている。接線方向の切削力が機械接合部分40に向けて方向付けられる。工具旋回軸R1は金属加工物31の周囲面からある距離で離間されている。工具旋回軸R1は前記接線と平行である。
【0236】
ここで、金属加工物31および第3の切削工具1の相対的な位置および配向を示す図29に注目する。図29における配置は、工具旋回軸R1が前記接線と平行ではないが前記接線に対して10°以下の角度を形成する点だけにおいて、図28と異なっている。
【0237】
ここで、切削工具1を含む図25および図26から切削インサート2の中心位置の側面図を示す図30に注目する。
【0238】
ここで、図28において示されている構成の斜視図を示す図31に注目する。図示された金属加工物31は円筒形であり、側部の表面41、つまり、加工物旋回軸R2から離れる方を向く表面と、基部の表面42、つまり、加工物旋回軸R2と平行な方向を向く表面とを備える。金属加工物31は、見る人から離れる方を向く第2の基部の表面を備える。前述した第1、第2、第3、および第4の回転方法において、機械加工は、金属加工物31の側部の表面41において行われる。後述する第5の回転方法において、機械加工は、金属加工物31の基部の表面42において行われる。
【0239】
ここで、第4の切削工具1を使用する第4の実施形態による回転方法を示す図32および図33に注目する。
【0240】
方法は、第1の切削インサート2を使用する前述した回転方法のいずれかを含み、第4の切削工具1は、図32に示されているような金属加工物31に対して所定位置にある。方法は、切削工具1を金属加工物31から後退させるステップと、切削工具1を工具旋回軸R1に沿って図33に示された位置まで前方向に移動させるステップとをさらに含む。方法は、第2の切削インサート29が有効位置になるように、切削工具1を工具旋回軸R1の周りで所定の角度で回転させるステップをさらに含む。前記所定の角度は80°~100°の範囲内にある。
【0241】
ここで、前述の切削工具のいずれかが使用できるが第2の切削工具1を使用する第5の実施形態による回転方法を示す、図34を参照する。
【0242】
加工物旋回軸R2の周りに回転する金属加工物31が提供される。工具旋回軸R1は加工物旋回軸R2に対して垂直である。
【0243】
先に記載した回転方法と異なり、第5の実施形態による回転方法の間の機械加工は金属加工物31の基部の表面において行われる。
【0244】
工具旋回軸R1は加工物旋回軸R2に対して垂直である。例では、加工物旋回軸R2と工具旋回軸R1との両方が水平位置にある。1つの可能な代替は、加工物旋回軸R2と工具旋回軸R1との両方を鉛直位置で配置することである。
【0245】
切削インサート2は第1のノーズ部10と第2のノーズ部10’とを備える。図34における方法では、第2のノーズ部10’は有効位置にある。方法は、代わりに第1のノーズ部10が有効位置にある場合に実施されてもよい。このような場合、切削工具1は工具旋回軸R1の周りで180°旋回させられる。
【0246】
方法は、第1の切れ刃11’が有効となるように、および、第2の切れ刃12’が無効となるように、および、機械加工表面がノーズ切れ刃13’によって形成されるように、切削工具を移動させることで第1の経路36を作るステップを含む。
【0247】
方法は、第1の切れ刃11’が無効となるように、および、第2の切れ刃12’が有効となるように、および、第1の経路36からの機械加工表面の少なくとも一部分が機械加工されるように、切削工具を移動させることで、第2の経路37を作るステップを含む。
【0248】
第1の経路の間、切削工具は、工具旋回軸R1の周りで、図34では反時計回りである第1の方向に回転する。
【0249】
第2の経路37の間、切削工具は、工具旋回軸の周りで第2の方向に旋回し、図34では時計回りである前記第2の方向は、前記第1の方向と反対である。
【0250】
第1の経路36の間、切削工具は非線形または湾曲した経路に沿って移動させられる。第1の経路は、加工物旋回軸R2に対して垂直で加工物旋回軸R2に向かう、図34において下向きの径方向の成分34を含む。
【0251】
第2の経路37の間、切削工具は非線形または湾曲である経路に沿って移動させられる。第2の経路は、加工物旋回軸R2に対して垂直で加工物旋回軸R2から離れる方への、図34において上向きの径方向の成分35、つまり、第1の経路の径方向の成分34と反対の径方向の成分35を含む。
【0252】
第1の経路および第2の経路の間、切込み角は一定である。
【0253】
第1の経路36の後であるが第2の経路37の前、切削工具は金属加工物31から後退させられる。
【0254】
加工物旋回軸R2の周りでの金属加工物31の旋回の方向は、第1の経路36と第2の経路37との両方の間で同じである。
【0255】
本出願では、「含む」などの用語の使用はオープンエンド形式であり、「備える」などの用語と同じ意味を有し、他の構造、材料、または行為の存在を除外しないように意図されている。同様に、「~できる」または「~し得る」などの用語の使用はオープンエンド形式であり、構造、材料、または行為が必要ではないことを反映するように意図されているが、このような用語を使用していないことが、構造、材料、または行為が必須であることを反映するようには意図されていない。構造、材料、または行為が必須であるようにここで見なされている限りにおいて、それらはそのようにして特定される。「上方」、「上向き」、「下方」、「上」、「下」、「前方」、「前」、および「後」などの用語は、ここでの図面において示され、当業者によって認識されるような特徴を参照している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21-24】
図25-27】
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34