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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61M1/34 130
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020562893
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043936
(87)【国際公開番号】W WO2020137190
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018248122
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古橋 智洋
(72)【発明者】
【氏名】真木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】カヅィンツィ フェレンツ
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-285830(JP,A)
【文献】特開2016-087442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151554(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0296727(US,A1)
【文献】国際公開第2017/073732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00 - 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を体外循環させる血液回路と、
前記血液回路に設けられた血液浄化器、あるいは前記血液回路に供給液を供給する液供給ラインと、
前記血液回路または前記液供給ラインに設けられた蠕動型の液供給ポンプと、
前記血液浄化器から排液が排出される排液ラインに設けられた蠕動型の排液ポンプと、
前記供給液と前記排液の水収支量を検出する水収支量検出部と、
前記水収支量検出部で検出した水収支量が、目標水収支量と一致するように、前記液供給ポンプと前記排液ポンプの一方または両方のポンプ速度を補正する水収支量制御部と、を備え、
前記水収支量制御部は、水収支量が安定されたと判断される安定判断条件を満たすとの判断に応じて、複数の水収支量の検出結果を基にポンプ速度を補正する第2補正条件に切り替え、水収支量が不安定になったと判断される不安定判断条件を満たすの判断に応じて、水収支量の検出毎にポンプ速度を補正する第1補正条件切り替える、
血液浄化装置。
【請求項2】
前記第1の補正条件において、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間が、前記第2の補正条件において、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間よりも短い、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記水収支量制御部は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、前記安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、
請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記水収支量制御部は、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行っているときに、前記不安定判断条件を満たしたときに、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記不安定判断条件は、血液浄化治療を実行するための制御目標値が変更されることである、
請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記第2補正条件では、複数の水収支量の検出結果の中央値を用いて、ポンプ速度の補正を行う、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記水収支量検出部は、
前記液供給ラインに設けられ前記供給液を一時的に貯留する供給液小分けチャンバと、
前記排液ラインに設けられ前記排液を一時的に貯留する排液小分けチャンバと、
前記供給液小分けチャンバと前記排液小分けチャンバの合計の重さを検出可能な重さ検出機構と、
前記第1の頻度または前記第2の頻度で、前記重さ検出機構で検出された重さの変化量を演算する変化量演算部と、を有し、
前記水収支量制御部は、前記変化量演算部で演算された前記重さの変化量が、前記目標水収支量となる重さの変化量と一致するように、ポンプ速度を補正するように構成される、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記水収支量制御部は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、前記安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替えるよう構成され、
前記安定判断条件は、前記変化量演算部が演算した前記重さの変化量と、前記目標水収支量となる重さの変化量との差分が、前記第1補正条件の開始時に対して正負が逆転し、かつ、当該差分の絶対値が所定の閾値以下となったときとされる、
請求項7に記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記変化量演算部は、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間よりも短い時間で設定された所定の時間毎に前記重さ検出機構で測定された重さのデータを用い、最小二乗法により、当該検出時間での前記重さの変化量を演算する、
請求項7または8に記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記第1補正条件及び前記第2補正条件では、フィードバック制御によりポンプ速度の補正を行い、
前記水収支量制御部は、治療開始時に、内挿又は外挿によりポンプ速度の補正を行った後に、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行う、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化治療に用いられる血液浄化装置では、患者の血液から除いた水分量である除水量の管理が重要となる。特許文献1では、透析液、補充液、及び血液浄化器からの排液をそれぞれ一次的に貯留する貯留容器と、3つの貯留容器を一括して計量する重量計とを備え、この重量計の検出結果を基に目標除水量となるように、透析液、補充液、あるいは排液のポンプ速度(ポンプ流量)の制御を行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2004/014463号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、血液浄化治療は高流量化の傾向があり、これに伴い、水収支量(除水量)の誤差をより小さくすることが望まれている。したがって、実際の水収支量(除水量)がより目標水収支量(目標除水量)に近づくように、ポンプ速度(ポンプ流量)を精密に補正する必要がある。
【0005】
特に治療初期の段階においては、製造公差や治療条件(ポンプ入口側圧力等)に起因する水収支量(除水量)の誤差は、速やかに補正されることが望まれる。高流量で血液浄化治療を行った場合に、水収支量(除水量)の誤差が大きい状態が長く続いてしまうと、患者に血圧変動等の負担が生じるおそれがあるためである。しかし、ポンプ速度の補正を急激に行い過ぎると、例えば装置に人がぶつかる等の外乱が発生した場合に、重さの計測が正確に行えずかえって除水量の誤差が大きくなってしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、より精密に水収支量の制御を行うことが可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、患者の血液を体外循環させる血液回路と、前記血液回路に設けられた血液浄化器、あるいは前記血液回路に供給液を供給する液供給ラインと、前記血液回路または前記液供給ラインに設けられた蠕動型の液供給ポンプと、前記血液浄化器から排液が排出される排液ラインに設けられた蠕動型の排液ポンプと、前記供給液と前記排液の水収支量を検出する水収支量検出部と、前記水収支量検出部で検出した水収支量が、目標水収支量と一致するように、前記液供給ポンプと前記排液ポンプの一方または両方のポンプ速度を補正する水収支量制御部と、を備え、前記水収支量制御部は、水収支量が安定されたと判断される安定判断条件を満たすとの判断に応じて、複数の水収支量の検出結果を基にポンプ速度を補正する第2補正条件に切り替え、水収支量が不安定になったと判断される不安定判断条件を満たすの判断に応じて、水収支量の検出毎にポンプ速度を補正する第1補正条件切り替える、血液浄化装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記第1の補正条件において、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間が、前記第2の補正条件において、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間よりも短い、請求項1に記載の血液浄化装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記水収支量制御部は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、前記安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、請求項1または2に記載の血液浄化装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記水収支量制御部は、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行っているときに、前記不安定判断条件を満たしたときに、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、請求項1乃至3の何れか1項に記載の血液浄化装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記不安定判断条件は、血液浄化治療を実行するための制御目標値が変更されることである、請求項4に記載の血液浄化装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記第2補正条件では、複数の水収支量の検出結果の中央値を用いて、ポンプ速度の補正を行う、請求項1乃至5の何れか1項に記載の血液浄化装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記水収支量検出部は、前記液供給ラインに設けられ前記供給液を一時的に貯留する供給液小分けチャンバと、前記排液ラインに設けられ前記排液を一時的に貯留する排液小分けチャンバと、前記供給液小分けチャンバと前記排液小分けチャンバの合計の重さを検出可能な重さ検出機構と、前記第1の頻度または前記第2の頻度で、前記重さ検出機構で検出された重さの変化量を演算する変化量演算部と、を有し、前記水収支量制御部は、前記変化量演算部で演算された前記重さの変化量が、前記目標水収支量となる重さの変化量と一致するように、ポンプ速度を補正するように構成される、請求項1乃至6の何れか1項に記載の血液浄化装置である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記水収支量制御部は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、水収支量が安定したと判断される安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替えるよう構成され、前記安定判断条件は、前記変化量演算部が演算した前記重さの変化量と、前記目標水収支量となる重さの変化量との差分が、第1補正条件の開始時に対して正負が逆転し、かつ、当該差分の絶対値が所定の閾値以下となったときとされる、請求項7に記載の血液浄化装置である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、前記変化量演算部は、前記水収支量検出部が水収支量を検出する時間よりも短い時間で設定された所定の時間毎に前記重さ検出機構で測定された重さのデータを用い、最小二乗法により、当該検出時間での前記重さの変化量を演算する、請求項7または8に記載の血液浄化装置である。
【0016】
請求項10に係る発明は、前記第1補正条件及び前記第2補正条件では、フィードバック制御によりポンプ速度の補正を行い、前記水収支量制御部は、治療開始時に、内挿又は外挿によりポンプ速度の補正を行った後に、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行う、請求項1乃至9の何れか1項に記載の血液浄化装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、より精密に水収支量の制御を行うことが可能な血液浄化装置を提供できる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、第1の補正条件にてより早急な補正が可能となると共に、第2の補正条件にてより精度の高い補正が可能になる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、安定判断条件が成立する前では相対的に高頻度で補正し、安定判断条件が成立した後では、相対的に低頻度で補正するため、効率よく、水収支量を適正に補正できる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、不安定判断条件が成立する前では相対的に低頻度で補正し、不安定判断条件が成立した後では、相対的に高頻度で補正するため、効率よく、水収支量を適正に補正できる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、制御目標値が変更された際に不安定判断条件を成立させ、高頻度の補正に切り替えて早急に水収支量の補正を行うことが可能になる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、装置の振動等の影響による突出値を除外でき、第2の補正条件にてより精度の高い補正が可能になる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、重さ検出機構で検出した重さの変化量を用いて、ポンプ速度を補正し、水収支量をより精密に制御できる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、水収支量が安定したことを精度よく判定できる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、重さの変化量をより精度よく求めることができる。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、治療開始時により短時間でポンプ速度を目標値に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施の形態に係る血液浄化装置の概略構成図である。
図2】重さの変化量とその移動平均値、及び排液ポンプ吐出量の経時変化を示すグラフ図である。
図3】ポンプ速度の補正条件の切り替え制御におけるフロー図である。
図4】本発明の他の実施の形態において、重さの変化量、及び排液ポンプ吐出量の補正値の経時変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置の概略構成図である。図1に示すように、血液浄化装置1は、患者の血液を体外循環させる血液回路2と、血液回路2に設けられた血液浄化器3、あるいは血液回路2に供給液を供給する液供給ライン4と、血液浄化器3から排液が排出される排液ライン5と、を備えている。
【0030】
血液回路2は、例えば可撓性を有するチューブ等から構成される。血液回路2の一端には、動脈側穿刺針21が設けられ、他端には静脈側穿刺針22が設けられている。また、血液回路2には、動脈側穿刺針21側から静脈側穿刺針22側にかけて、第1気泡検出装置23、血液ポンプ24、血液浄化器3、気液分離器25、第2気泡検出装置26が順次設けられている。第1気泡検出装置23及び第2気泡検出装置26は、気泡を検出する気泡検出センサを有し、気泡を検出したときに血液回路2をクランプする(挟み込んで閉塞する)機構を有している。
【0031】
血液ポンプ24は、チューブをしごいて血液を血液浄化器3側へと流動させる蠕動型のポンプからなる。血液浄化器3は、ダイアライザとも呼称されるものであり、図示しない血液浄化膜を介して血液と透析液とを接触させることで、血液を浄化するものである。気液分離器25は、気泡を除去し液体のみを静脈側穿刺針22側に通すように構成されている。
【0032】
本実施の形態では、血液浄化装置1で様々な治療を可能とするため、液供給ライン4として、透析液を供給する透析液ライン6と、補充液を供給する補充液ライン7の両ラインを有している。ただし、血液浄化装置1は、透析液ライン6と補充液ライン7のどちらか一方のみを有していてもよい。
【0033】
透析液ライン6は、例えば可撓性を有するチューブ等から構成される。透析液ライン6の一端には、透析液を収容する透析液収容バッグ61が接続されている。透析液ライン6の他端は、血液浄化器3の透析液導入口に接続されている。透析液ライン6には、透析液収容バッグ61側から血液浄化器3側にかけて、透析液移送ポンプ62、透析液を一時的に貯留する透析液小分けチャンバ63、透析液ポンプ64、透析液加熱器65が順次設けられている。透析液小分けチャンバ63は、本発明の供給液小分けチャンバの一態様である。透析液ポンプ64は、本発明の供給液ポンプの一態様である。
【0034】
透析液移送ポンプ62及び透析液ポンプ64は、チューブをしごいて透析液を流動させる蠕動型のポンプからなる。透析液移送ポンプ62は、透析液収容バッグ61内の透析液を透析液小分けチャンバ63に移送するために用いられる。透析液ポンプ64は、透析液小分けチャンバ63内の透析液を血液浄化器3側に流動させるために用いられる。透析液小分けチャンバ63を有することで、治療を中断させずに透析液収容バッグ61を交換することが可能になる。透析液加熱器65は、患者に戻す血液の温度を下げてしまわないように、透析液を適宜な温度に加熱するためのものである。
【0035】
補充液ライン7は、例えば可撓性を有するチューブ等から構成される。補充液ライン7の一端には、補充液を収容する補充液収容バッグ71が接続されている。補充液収容バッグ71の下流の補充液ライン7には、補充液移送ポンプ72、補充液を一時的に貯留する補充液小分けチャンバ73、補充液ポンプ74、補充液加熱器75、補充液用気液分離器76が順次設けられている。補充液小分けチャンバ73は、本発明の供給液小分けチャンバの一態様である。補充液ポンプ74は、本発明の供給液ポンプの一態様である。
【0036】
また、補充液ライン7は、補充液用気液分離器76の下流で分岐し、分岐した一方の補充液ライン7である前補液ライン7aの端部は、血液浄化器3と血液ポンプ24の間の血液回路2に接続されている。前補液ライン7aには、前補液用ポンプ77が設けられている。分岐した他方の補充液ライン7である後補液ライン7bの端部は、血液回路2の気液分離器25に接続されている。
【0037】
補充液移送ポンプ72、補充液ポンプ74、及び前補液用ポンプ77は、チューブをしごいて透析液を流動させる蠕動型のポンプからなる。補充液移送ポンプ72は、補充液収容バッグ71内の補充液を補充液小分けチャンバ73に移送するために用いられる。補充液ポンプ74は、補充液小分けチャンバ73内の補充液を血液回路2側に流動させるために用いられる。前補液用ポンプ77は、血液浄化器3の上流側の血液回路2に補充液を供給する「前補液」を行う際に駆動される。前補液用ポンプ77を駆動しない場合、補充液ポンプ74にて送液された補充液は後補液ライン7bを通り、血液浄化器3の下流側の血液回路2(ここでは気液分離器25)に補充液を供給する「後補液」が行われる。
【0038】
補充液小分けチャンバ73を有することで、治療を中断させずに補充液収容バッグ71を交換することが可能になる。補充液加熱器75は、患者に戻す血液の温度を下げてしまわないように、補充液を適宜な温度に加熱するためのものである。補充液用気液分離器76は、補充液から気泡を分離除去するためのものである。
【0039】
排液ライン5の一端は、血液浄化器3の排液出口に接続されている。血液浄化器3の下流の排液ライン5には、排液ポンプ51、排液を一時的に貯留する排液小分けチャンバ52、排出用ポンプ53が順次設けられている。排液ライン5の他端は、装置外に排液を排出する排液出口54となっている。
【0040】
排液ポンプ51及び排出用ポンプ53は、チューブをしごいて透析液を流動させる蠕動型のポンプからなる。排液ポンプ51は、排液を排液小分けチャンバ52に送液するために用いられる。排出用ポンプ53は、排液小分けチャンバ52内の排液を排液出口54側へ排出するために用いられる。
【0041】
また、血液浄化装置1は、供給液と排液の水収支量を検出する水収支量検出部としての除水量検出部10を有している。除水量検出部10は、供給液の供給量と、排液の排出量とを基に、除水量を検出する。除水量検出部10は、上述の各小分けチャンバ63,73,52と、各小分けチャンバ63,73,52の合計の重さを検出可能な重さ検出機構としての荷重計8と、変化量演算部91と、を有している。なお、除水量とは、供給液と排液の水収支量がマイナスである場合の水収支量である。以下の説明では、水収支量がマイナスである場合について説明し、水収支量を除水量に統一して説明するが、本発明は、供給液と排液の水収支量がプラスの場合(例えば補液を行う場合)も適用可能である。
【0042】
荷重計8は、透析液小分けチャンバ63、補充液小分けチャンバ73、及び排液小分けチャンバ52の合計の重さを検出可能に構成されている。荷重計8の検出値は、制御装置9に出力される。
【0043】
例えば、除水量が0(ゼロ)の場合、透析液や補充液の供給量と、排液の排出量とが等しくなる。よって、透析液や補充液の小分けチャンバ63,73からの減少量と、排液小分けチャンバ52での排液の増加量が等しくなり、荷重計8の検出値は時間的に変化しない。これに対して、除水量が大きくなると、透析液や補充液の小分けチャンバ63,73からの減少量よりも、排液小分けチャンバ52での排液の増加量が大きくなる。よって、荷重計8の検出値は徐々に大きくなる。よって、荷重計8の検出値の時間変化(重さの変化量)を検出することで、除水量を検出することができる。
【0044】
本実施の形態では、荷重計8の検出値の時間変化、すなわち重さ検出機構で検出された重さの変化量(単位時間あたりの重さの変化量、すなわち傾き)を、除水量の指標として用いた。この重さの変化量を演算する際の荷重の測定時間を検出時間と呼称する。変化量演算部91は、設定された検出時間での重さの変化量を演算する。変化量演算部91は、制御装置9に搭載され、CPU等の演算素子、メモリ、記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現される。
【0045】
変化量演算部91は、設定された検出時間(除水量検出部10が除水量を検出する時間)よりも短い時間で設定された所定の時間毎に荷重計8で測定された荷重のデータを用い、最小二乗法により、当該検出時間での重さの変化量(傾き)を演算するとよい。これにより、各ポンプの脈動により発生する荷重の検出値の乱れを抑制でき、より精度の高いポンプ速度の補正が可能になる。ポンプ速度の補正の詳細については、後述する。
【0046】
この血液浄化装置1では、収容バッグ61,71内の透析液や補充液を移送ポンプ62,72により小分けチャンバ63,73に移送すると共に、排液小分けチャンバ52内の排液を排出用ポンプ53により排出する計測準備フェーズと、移送ポンプ62,72及び排出用ポンプ53を停止し、荷重計8による測定を実施して重さの変化量を求める計測フェーズとを繰り返すようになっている。計測準備フェーズで小分けチャンバ63,73に移送する透析液や補充液の量を変えることで、計測フェーズの継続時間、すなわち上述の検出時間を適宜変化させることができる。例えば、長い検出時間としたい場合には、計測準備フェーズで小分けチャンバ63,73に移送する透析液や補充液の量を多くする。なお、各ポンプ(血液ポンプ24、透析液移送ポンプ62、透析液ポンプ64、補充液移送ポンプ72、補充液ポンプ74、前補液用ポンプ77、排液ポンプ51、及び排出用ポンプ53)の制御は、制御装置9により行われる。
【0047】
(ポンプ速度の補正)
本実施の形態に係る血液浄化装置1は、除水量検出部10で検出した除水量が、目標除水量と一致するように、液供給ポンプ(透析液ポンプ64及び補充液ポンプ74)と排液ポンプ51の一方または両方のポンプ速度(ポンプ流量)を補正する水収支量制御部としての除水量制御部92を備えている。本実施の形態では、除水量制御部92は、変化量演算部91で演算された重さの変化量(傾き)が、目標除水量となる重さの変化量(傾き)の目標値と一致するように、ポンプ速度を補正するように構成されている。速やかに除水量を制御できるように、除水量制御部92は、PID制御やPI制御などのフィードバック制御を用いて、重さの変化量(傾き)が目標値に近づくように制御する。除水量制御部92は、制御装置9に搭載され、CPU等の演算素子、メモリ、記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現される。
【0048】
なお、液供給ポンプ(透析液ポンプ64及び補充液ポンプ74)と排液ポンプ51の両方のポンプ速度を補正してもよいが、制御が複雑となるため、どちらか一方を一定のポンプ速度のままで維持し、他方のポンプ速度を補正することがより望ましい。また、透析液ポンプ64と補充液ポンプ74の両方を用いる場合(透析と補液の両方の治療を同時に行う場合)には、より制御を簡単にするため、排液ポンプ51のポンプ速度を補正するように構成するとよい。
【0049】
ここで、除水量の誤差の要因について検討する。除水量の誤差の要因としては、以下の4つが上げられる。
(1)チューブのしごき部(ポンプセグメント)の内径の製造ばらつき
(2)治療条件によるポンプ(特に排液ポンプ51)の入口圧力の変化
(3)長時間治療によるチューブの劣化(復元力の低下)
(4)装置振動による荷重計測ミス
【0050】
チューブ(ポンプセグメント)は、製造公差を厳しくしても、内径で±3%程度の製造ばらつきが出てしまうため、(1)の要因を避けることができない。(2)の要因については、例えば、除水量が大きくなると血液浄化器3でのろ過量が増加して排液ポンプ51の吸い込みの抵抗が増加(排液ポンプ51の入口側圧力が低下)し、ポンプ流量が低下することによる。(3)の要因については、長時間治療を継続した場合のチューブ(ポンプセグメント)の復元力が低下しポンプ流量が低下してしまうことによる。近年は、CRRT(持続的腎代替療法)等の非常に長時間の治療が行われており、治療時間にもよるが(3)の要因も避けることはできない。(4)の要因は、周囲の人や患者が装置にぶつかり、荷重計8の検出値に誤差が発生することによる。
【0051】
この4つの要因のうち、(1)と(2)の要因に係る誤差については、治療開始時になるべく速やかにポンプ速度の補正を行い、誤差を小さくすることが望まれる。(3)の要因に係る誤差については、時間経過と共に徐々に大きくなる誤差であるから、早急な補正を行う必要はなく、時間をかけて補正してもよい。(4)の要因に係る誤差については、計測時間を長くしたり、複数の計測回数の結果を用いてポンプ速度の補正を行ったりすることで対応可能であるが、その場合ポンプ速度の補正に時間がかかってしまうことになる。
【0052】
そこで、本発明では、除水量制御部92を、第1の頻度で、除水量検出部10が検出する除水量と目標除水量の差分量に基づき、ポンプ速度を補正する第1補正条件と、第1の頻度より少ない第2の頻度で、前記差分量に基づき、ポンプ速度を補正する第2補正条件とを、切り替え可能に構成した。本実施の形態では、除水量の指標として重さの変化量(傾き)を用いているため、除水量制御部92は、第1の頻度で、除水量検出部10で検出した重さの変化量と目標除水量となる重さの変化量との差分量に基づき、ポンプ速度を補正する第1補正条件と、第1の頻度より少ない第2の頻度で、前記差分量に基づき、ポンプ速度を補正する第2補正条件とを、切り替え可能に構成される。
【0053】
より具体的には、除水量制御部92は、治療開始時に第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、除水量が安定したと判断される安定判断条件を満たしたときに、第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替えるようにした。
【0054】
第1補正条件では、上記(1),(2)の要因による誤差を早急に小さくするため、高頻度に補正を行う。そのため、第1補正条件では、できるだけ検出時間(除水量検出部10が除水量を検出する時間)を短くし、短い時間で補正を繰り返すことが望まれる。本実施の形態では、第1補正条件では、検出時間を1分と短い時間に設定し、かつ、重さの変化量の検出の度にポンプ速度の補正を行うようにした。第1補正条件での補正の周期は、第2補正条件において除水量を1回検出する時間(検出時間)よりも短い。検出時間を短くすることで、計測準備フェーズで小分けチャンバ63,73に充填する透析液や補充液の分量を少なくでき、より短い時間間隔でポンプ速度の補正(フィードバック制御)を繰り返すことが可能になる。
【0055】
第2補正条件では、上記(3),(4)の要因による誤差を小さくするために、検出時間(除水量検出部10が除水量を検出する時間)が長く設定され、かつ、複数の検出結果を用いてポンプ速度を補正する。つまり、前記第1の補正条件において、除水量検出部10が除水量を検出する時間は、第2の補正条件において、除水量検出部10が除水量を検出する時間よりも短い。
【0056】
本実施の形態では、第2補正条件では、検出時間を5分(計測準備フェーズで小分けチャンバ63,73を満充填した場合の計測フェーズの時間、すなわち計測フェーズの最大時間)に設定し、かつ、3回の検出結果(重さの変化量の検出結果)の中央値を用いて、ポンプ速度の補正を行うようにした。つまり、3回の検出結果を比較して、最大となる重さの変化量の値及び最小となる重さの変化量の値は破棄し、残りの中央の値となる重さの変化量の値を用いてポンプ速度の補正(フィードバック制御)を行う。なお、第2補正条件で使用する検出結果の回数(サンプル数)については、3回に限らず、例えば5回としてもよい。
【0057】
図2に示すように、除水量が安定して目標値に近づいてくると、重さの変化量とその目標値との差分の移動平均値(所定回数の検出結果の平均値)の絶対値が徐々に小さくなり、正の値になったり負の値になったりを繰り返す。そこで、本実施の形態では、第1補正条件から第2補正条件に切り替える条件である安定判断条件として、重さの変化量とその目標値との差分の移動平均値が、第1補正条件の開始時に対して正負が逆転し、かつ、その絶対値が所定の閾値(例えば0.02mg/sec)以下となったときとした。なお、これに限らず、安定判断条件は、例えば、治療開始から所定時間経過したとき、としてもよい。なお、図2では、移動平均値を求める際のサンプル数を6点としているが、移動平均値を求める際のサンプル数については、これに限定されない。ただし、移動平均値を求める際のサンプル数が少なすぎると、十分に安定したと判断できない場合もあるため、移動平均値を求める際のサンプル数は6点以上とすることが望ましい。本実施の形態では、移動平均値を求める際のサンプル数を12点とした。なお、図2では、参考のため、排液ポンプ51の流量の変化も合わせて示している。また、移動平均に代えて、加重平均や統計処理を用いてもよい。
【0058】
また、除水量制御部92は、第2補正条件によりポンプ速度の補正を行っているときに、除水量が不安定になったと判断される不安定判断条件を満たしたときに、第1補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替えてもよい。不安定判断条件としては、血液浄化治療を実行するための制御目標値が変更されること、とすることができる。制御目標値、すなわち治療条件が変更されると、排液ポンプ51の入口側圧力等が変化し吐出量が変わってしまうため、第1補正条件に切り替えて速やかにポンプ速度の補正を行うことが望ましい。なお、制御目標値とは、具体的には、目標血流量、目標除水速度、目標透析液流量、及び目標補充液流量を表す。目標血流量(血液ポンプ速度)は、患者の血液を脱血し、血液浄化器3を通過した血液を再び患者に返血する速度である。目標除水速度は、設定した水分量を患者(血液回路2)から抽出する速度である。目標透析液流量(透析液ポンプ速度)は、透析液を血液浄化器3に送液する速度である。目標補充液流量(補充液ポンプ速度)は、補充液を血液回路2に送液する速度である。
【0059】
図3は、ポンプ速度の補正条件の切り替え制御におけるフロー図である。図3の制御フローは治療開始時に実行され、治療中は当該制御が継続される。図3に示すように、まず、治療開始時には、ステップS1にて、第1補正条件に設定する。その後、ステップS2にて、安定判断条件を満たしたかを判定する。より具体的には、ステップS2にて、重さの変化量とその目標値との差分の移動平均値が、第1補正条件の開始時に対して正負が逆転し、かつ、その絶対値が所定の閾値(例えば0.02mg/sec)以下となったかを判定する。ステップS2にてNoと判定されれば、ステップS2に戻り第1補正条件を継続する。ステップS2にてYesと判定されたとき、ステップS3にて、第2補正条件に切り替える。
【0060】
その後、ステップS4にて、不安定判断条件を満たしたかを判定する。より具体的には、ステップS4にて、治療条件が変更されたかを判定する。ステップS4にてNoと判定された場合、ステップS4に戻り第2補正条件を継続する。ステップS4にてYesと判定された場合、ステップS1に戻り、第1補正条件に切り替える。
【0061】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る血液浄化装置1では、除水量制御部92は、水収支量の検出毎にポンプ速度を補正する第1補正条件と、複数の水収支量の検出結果を基にポンプ速度を補正する第2補正条件とを、切り替え可能に構成されている。
【0062】
これにより、例えば治療開始時に第1補正条件として、水収支量の検出毎にポンプ速度を補正することで、高頻度に補正を行ってチューブ(ポンプセグメント)の製造公差や治療条件による除水量の誤差を速やかに小さくできる。さらに、除水量が安定した後に第2補正条件に切り替え、複数回の水収支量(重さの変化量)の検出結果を用いて装置振動による誤差等を抑制することが可能になる。すなわち、本実施の形態によれば、高流量時においても除水量の誤差を最小限に抑えつつ、装置にぶつかるなどしたときの外乱の影響を受けにくい、より精密に除水量の制御を行うことが可能な血液浄化装置1を実現できる。血液浄化装置1は、例えば、透析液や補充液の供給流量が10000mL/h以上である場合等、透析液や補充液の供給流量が6000mL/hを超える高流量の治療を行う場合に、特に好適に用いることができる。
【0063】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、第1補正条件及び第2補正条件にて、フィードバック制御(PID制御やPI制御など)によりポンプ速度の補正を行ったが、第1補正条件によるポンプ速度の補正(すなわちフィードバック制御によるポンプ速度の補正)に先立ち、第3補正条件として、内挿又は外挿によるポンプ速度の補正を行うようにしてもよい。ここでは、内挿(線形補間)によりポンプ速度の補正を行う場合、例えば線形外挿等の外挿を用いて補正する場合、或いは内挿と外挿を併用して補正する場合が含まれる。
【0064】
第3補正条件(内挿又は外挿)は、フィードバック制御と比較して、より早期に制御値を目標値に近づけることができる。よって、第1条件によるポンプ速度の補正に先立って第3補正条件(内挿又は外挿)によるポンプ速度の補正を行うことにより、チューブ(ポンプセグメント)の製造公差や治療条件による除水量の誤差をより速やかに小さくすることができる。その後、フィードバック制御によるポンプ速度の補正(第1補正条件及び第2補正条件によるポンプ速度の補正)に切り替えることによって、高精度にポンプ速度を制御することが可能になる。
【0065】
より具体的には、図4に示すように、除水量制御部92は、治療開始時に、まず第3補正条件(内挿又は外挿)によるポンプ速度の補正を行う。第3補正条件によるポンプ速度の補正では、上述の第1補正条件と同じく、高頻度にポンプ速度の補正を行うことが望ましく、検出時間は例えば1分と短い時間に設定され、重さの変化量の検出の度にポンプ速度の補正を行うようにされる。除水量制御部92は、第3補正条件によるポンプ速度の補正の際には、前回補正量と、前回補正量で縮まった差分と、残りの差分とから、下式
(前回補正量):(今回補正量)=(前回補正量で縮まった差分):(残りの差分)
を満たすように今回補正量を決定し、ポンプ速度の補正を行う。なお、「残りの差分」とは、前回補正後の重さの変化量の実測値と目標値との差分であり、「前回補正量で縮まった差分」とは、前回補正前後の「残りの差分」の差分(すなわち「残りの差分」の減少量)を表している。また、前回補正量及び今回補正量は、ポンプ速度(例えば排液ポンプ51の吐出量)の補正量を表している。
【0066】
除水量制御部92は、第3補正条件(内挿又は外挿)によるポンプ速度の補正を行った後、第1補正条件によるポンプ速度の補正に切り替える。第3補正条件から第1補正条件への切り替えは、例えば、「残りの差分」が予め設定した閾値以下となったとき、としてもよいし、治療開始からの時間が予め設定した閾値時間以上となったとき、としてもよいし、補正回数が所定回数以上となったとき、としてもよい。第1補正条件に切り替えた後は、上記実施の形態と同様の制御を行うとよい。
【0067】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0068】
[1]患者の血液を体外循環させる血液回路(2)と、前記血液回路(2)に設けられた血液浄化器(3)、あるいは前記血液回路(2)に供給液を供給する液供給ライン(4)と、前記血液回路(2)または前記液供給ライン(4)に設けられた蠕動型の液供給ポンプ(24,64,74)と、血液浄化器(3)から排液が排出される排液ライン(5)に設けられた蠕動型の排液ポンプ(51)と、前記供給液と前記排液の水収支量を検出する水収支量検出部(10)と、前記水収支量検出部(10)で検出した水収支量が、目標水収支量と一致するように、前記液供給ポンプ(24,64,74)と前記排液ポンプ(51)の一方または両方のポンプ速度を補正する水収支量制御部(92)と、を備え、前記水収支量制御部(92)は、水収支量の検出毎にポンプ速度を補正する第1補正条件と、複数の水収支量の検出結果を基にポンプ速度を補正する第2補正条件とを、切り替え可能に構成されている、血液浄化装置(1)。
【0069】
[2]前記第1の補正条件において、前記水収支量検出部(10)が水収支量を検出する時間が、前記第2の補正条件において、前記水収支量検出部(10)が水収支量を検出する時間よりも短い、[1]に記載の血液浄化装置(1)。
【0070】
[3]前記水収支量制御部(92)は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、水収支量が安定したと判断される安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、[1]または[2]に記載の血液浄化装置(1)。
【0071】
[4]前記水収支量制御部(92)は、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行っているときに、水収支量が不安定になったと判断される不安定判断条件を満たしたときに、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替える、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の血液浄化装置(1)。
【0072】
[5]前記不安定判断条件は、血液浄化治療を実行するための制御目標値が変更されることである、[4]に記載の血液浄化装置(1)。
【0073】
[6]前記第2補正条件では、複数の水収支量の検出結果の中央値を用いて、ポンプ速度の補正を行う、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の血液浄化装置(1)。
【0074】
[7]前記水収支量検出部(10)は、前記液供給ライン(4)に設けられ前記供給液を一時的に貯留する供給液小分けチャンバ(63,73)と、前記排液ライン(5)に設けられ前記排液を一時的に貯留する排液小分けチャンバ(52)と、前記供給液小分けチャンバ(63,73)と前記排液小分けチャンバ(52)の合計の重さを検出可能な重さ検出機構(8)と、前記第1の頻度または前記第2の頻度で、前記重さ検出機構(8)で検出された重さの変化量を演算する変化量演算部(91)と、を有し、前記水収支量制御部(92)は、変化量演算部(91)で演算された前記重さの変化量が、前記目標水収支量となる重さの変化量の目標値と一致するように、ポンプ速度を補正するように構成される、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の血液浄化装置(1)。
【0075】
[8]前記水収支量制御部(92)は、治療開始時に前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行い、水収支量が安定したと判断される安定判断条件を満たしたときに、前記第2補正条件によりポンプ速度の補正を行うように切り替えるよう構成され、前記安定判断条件は、前記変化量演算部(91)が演算した前記重さの変化量と、前記目標水収支量となる重さの変化量との差分が、第1補正条件の開始時に対して正負が逆転し、かつ、当該差分の絶対値が所定の閾値以下となったときとされる、[7]に記載の血液浄化装置(1)。
【0076】
[9]前記変化量演算部(91)は、前記水収支量検出部(10)が水収支量を検出する時間よりも短い時間で設定された所定の時間毎に前記重さ検出機構(8)で測定された重さのデータを用い、最小二乗法により、当該検出時間での前記重さの変化量を演算する、[7]または[8]に記載の血液浄化装置(1)。
【0077】
[10]前記第1補正条件及び前記第2補正条件では、フィードバック制御によりポンプ速度の補正を行い、前記水収支量制御部(92)は、治療開始時に、内挿又は外挿によりポンプ速度の補正を行った後に、前記第1補正条件によりポンプ速度の補正を行う、[1]乃至[9]の何れか1項に記載の血液浄化装置(1)。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0079】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、荷重計8を用いて除水量(重さの変化量)を求めたが、これに限らず、透析液や補充液、排液の流量を検出する流量計を用いて、除水量を求めるようにしてもよい。さらに、透析液収容バッグ61や補充液収容バッグ71の重さを測定するとともに、排液の重さを測定し、これらの測定結果を基に除水量を求めるようにしてもよい。さらに、上記実施の形態では、第1補正条件と第2補正条件の2つの補正条件を切り替えたり、第1~3補正条件を切り替えたが、4つ以上の補正条件を切り替える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…血液浄化装置
2…血液回路
3…血液浄化器
4…液供給ライン
5…排液ライン
51…排液ポンプ
52…排液小分けチャンバ
6…透析液ライン
63 透析液小分けチャンバ(供給液小分けチャンバ)
64…透析液ポンプ(液供給ポンプ)
7…補充液ライン
73…補充液小分けチャンバ(供給液小分けチャンバ)
74…補充液ポンプ(液供給ポンプ)
8…荷重計(重さ検出機構)
9…制御装置
91…変化量演算部
92…除水量制御部(水収支量制御部)
10…除水量検出部(水収支量検出部)
図1
図2
図3
図4