(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/32 20060101AFI20230926BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20230926BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20230926BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/16
B29C70/54
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2021005950
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2021-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020047436
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302019599
【氏名又は名称】ミズノ テクニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】内海 陽吉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸生
【合議体】
【審判長】杉山 輝和
【審判官】川口 聖司
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-55831(JP,A)
【文献】特表2007-533571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ローラが配置され、その周面に沿ってトウプリプレグを搬送する搬送部と、
搬送された前記トウプリプレグを芯材の周囲に巻き付ける巻付部と、
最も下流に配置された前記搬送ローラの下流に配置されて、前記トウプリプレグの張力、前記トウプリプレグの繊維幅、及び前記トウプリプレグの厚さのいずれかを検出する検出部と、
複数の前記搬送ローラの回転トルクを制御する制御部と
を備え、
前記巻付部では、前記芯材が所定の回転速度で回転され、
前記制御部は、前記検出部での検出値に基づいて
前記回転トルクを制御することにより、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力
を、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きく
することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記トウプリプレグが巻き付けられたボビンが設けられた巻出部を備え、
前記制御部は、前記ボビンの回転速度、前記検出部での前記トウプリプレグの張力の目標値、及び前記芯材の回転速度の各初期値を設定し、前記検出部での検出値と前記目標値とを比較して、前記回転トルクを制御することを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記搬送部では、複数の前記搬送ローラが、その周面に対する前記トウプリプレグの接触長さが略同一になるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂材料からなる成形体は、軽量でありながら強度に優れていることから様々な分野で広く利用されている。こうした成形体は、通常、複数本の強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたいわゆるプリプレグと呼ばれるシート状基材を積層し、加圧及び加熱により樹脂を熱硬化させて賦形することにより製造される。プリプレグとしては、シートプリプレグや、より細幅のトウプリプレグが知られている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池車両に搭載される高圧水素タンクを、繊維強化樹脂材料で製造するためのフィラメントワインディング装置に係る発明が記載されている。特許文献1に記載されるフィラメントワインディング装置では、ボビンに巻き付けられた繊維束(トウプリプレグ)が、複数の搬送ローラ(搬送ローラ及びモータ駆動ローラ)の周面に沿って搬送され、複数のアイクチローラで適度に拡幅された状態で、回転するタンクに巻き付けられる。複数の搬送ローラの下流側にはフリーローラが配置されており、搬送ローラの回転速度は、フリーローラの回転速度に基づいて制御されている。これにより、搬送ローラ上での繊維束の摩耗が抑制されて、安定した品質のタンクを製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トウプリプレグに、均一な繊維幅で均質に繊維強化樹脂が含浸されていたとしても、フィラメントワインディング装置での搬送中に、その繊維幅が変動等することにより、トウプリプレグの厚みにばらつきが生じることがある。トウプリプレグの厚みにばらつきが生じると、成形された成形体の表面に凹凸が発生し易くなる。その結果、成形体の周方向や軸方向における強度が不均一になり易くなって、成形体の品質が安定し難い。そのため、成形体の品質を安定させるためには、トウプリプレグの巻き付け量を多くせざるを得ず、成形体が厚肉化して重量が大きくなってしまうことになる。これは、例えば、車両の燃費向上の観点から、車両に搭載する各種部品を軽量化するといった世の中の流れに反する。また、部品の軽量化は、車両等の輸送分野のみならず、他の様々な分野に適用される成形体においても要請されるところである。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、品質の安定した薄肉の成形体を成形することのできるフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の搬送ローラが配置され、その周面に沿ってトウプリプレグを搬送する搬送部と、搬送された前記トウプリプレグを芯材の周囲に巻き付ける巻付部とを備えるフィラメントワインディング装置であって、前記巻付部では、前記芯材が所定の回転速度で回転され、前記搬送部では、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御される。
【0008】
トウプリプレグに大きな張力を掛けて搬送しようとすると、トウプリプレグが巻回されたボビンでは、トウプリプレグを巻き出す際に、積層方向に重なり合ったトウプリプレグで、トウプリプレグを構成する強化繊維同士が食い込むような状態となり易い。これにより、トウプリプレグの巻き出しがスムーズに行えず、繊維幅が変動し易くなる。また、トウプリプレグに大きな張力を掛けて搬送すると、搬送ローラの周面上では、トウプリプレグが滑り易くなって搬送ローラだけが回転する状態となる。これによっても、トウプリプレグの巻き出しがスムーズに行えず、繊維幅が変動し易くなる。
【0009】
上記の構成によれば、搬送部では、複数の搬送ローラに対して、上流側から下流側へ行くほど搬送ローラから搬送されるトウプリプレグの張力が段階的に大きくなるように制御している。そのため、上流側のボビンでは、トウプリプレグを巻き出す際の張力を小さく抑えることができる一方で、下流側の搬送ローラでは、トウプリプレグに対して大きな張力を掛けることができる。
【0010】
これにより、トウプリプレグの巻き出し時に強化繊維同士の食い込みが発生し難くなり、搬送中のトウプリプレグが各搬送ローラの周面上で滑り難くなる。その結果、トウプリプレグの巻き出しがスムーズになって、トウプリプレグは複数の搬送ローラ間を繊維幅が安定した状態で搬送される。また、下流側の搬送ローラでは大きな張力が掛けられるため、搬送ローラの周面に沿って搬送される際にトウプリプレグ中の樹脂が滲み出してその厚みが薄くなり、繊維体積含有率Vfが上昇する。このように、トウプリプレグは、複数の搬送ローラ間を繊維幅が安定した状態で搬送されるとともに、高い繊維体積含有率Vfとなる。そのため、薄肉であっても安定した品質の成形体を成形することができる。また、薄肉であっても強度に優れた成形体を成形することができる。
【0011】
上記の構成において、前記搬送部では、複数の前記搬送ローラの回転トルクが制御されることが好ましい。
上記の構成によれば、搬送ローラの回転を回転トルクで制御するので、複数の搬送ローラの径が異なっていても、トウプリプレグに掛かる張力の調整を容易に行え、トウプリプレグの搬送速度の調整が容易に行える。
【0012】
上記の構成において、前記搬送部では、複数の前記搬送ローラが、その周面に対する前記トウプリプレグの接触長さが略同一になるように配置されていることが好ましい。
上記の構成によれば、複数の搬送ローラの回転トルクの上げ幅を同じにすることができる。そのため、複数の搬送ローラの回転トルクを一つの制御部で管理することができる。制御を簡単にすることができ、装置構成を簡略化することができる。なお、ここでの略同一とは、複数の搬送ローラの周面に対するトウプリプレグの接触長さが完全に同一である場合だけでなく、例えば、±20%程度の誤差範囲である場合を含むものとする。
【0013】
上記の構成において、最も下流側の前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力を検出する検出部を備え、前記搬送部では、前記張力の検出値に基づいて、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグに掛かる張力が制御されるとともに、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御されることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、芯材に巻かれる手前のトウプリプレグに掛かる張力に基づいて、搬送ローラでの搬送中のトウプリプレグの張力を制御するため、トウプリプレグに掛かる張力を狙った値に管理し易い。トウプリプレグに掛かる張力を狙った値に管理できることにより、トウプリプレグの繊維体積含有率Vf(%)を狙った値に管理し易い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、品質の安定した薄肉の成形体を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のフィラメントワインディング装置の模式図。
【
図2】フィラメントワインディング装置での搬送ローラの回転トルクの制御について説明するフローチャート。
【
図3】搬送ローラでトウプリプレグが搬送される状態について説明する図。
【
図4】トウプリプレグに掛かる張力と繊維体積含有率Vfとの関係について示す図。
【
図5】搬送ローラの回転トルクの制御の変更例について説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したフィラメントワインディング装置(以下、FW装置と言う。)について、
図1に基づいて説明する。
成形体を構成する繊維強化樹脂の材質は特に限定されず、繊維強化樹脂を構成する樹脂及び強化繊維は従来公知のものから適宜選択することができる。例えば、繊維強化樹脂を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、繊維強化樹脂を構成する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のFW装置1は、巻出部10、搬送部20、巻付部30、制御部40、検出部50、及び入力部60を備えている。
巻出部10には、ボビン11が設けられており、ボビン11には、強化繊維束に樹脂が含浸されたトウプリプレグTが巻き付けられている。トウプリプレグTは、ボビン11から巻き出されて、
図1に矢印Aで示す方向に搬送される。つまり、
図1において、左側がFW装置1の上流側、右側がFW装置1の下流側である。
【0019】
搬送部20には、上流側からテンションローラ21、搬送ローラ22、アイクチローラ23が設けられている。テンションローラ21は、トウプリプレグTに所定の張力を付与して、ボビン11からトウプリプレグTを巻き出すためのローラである。搬送ローラ22は、複数設けられており、トウプリプレグTをその周面に沿わせて搬送するためのローラである。本実施形態では、搬送ローラ22は5個設けられている。アイクチローラ23は、トウプリプレグTに適切な圧力を加えて、その繊維幅を保持した状態で搬送するためのローラである。
【0020】
5個の搬送ローラ22は、トウプリプレグTの搬送時に、その周面に対するトウプリプレグTの接触長さが、それぞれ略同一となるような位置関係で配置されている。具体的には、5個の搬送ローラ22をそれぞれ上流側から順に搬送ローラ22a、22b、22c、22d、22eとすると、搬送ローラ22aの周面に対するトウプリプレグTの接触長さは、搬送ローラ22bの周面に対するトウプリプレグTの接触長さと略同一である。同様に搬送ローラ22c、22d、22eの周面に対するトウプリプレグTの接触長さとも略同一である。
【0021】
搬送ローラ22には、回転トルク駆動部24が設けられている。回転トルク駆動部24は、後に説明する制御部40によって制御される。本実施形態では、5個の搬送ローラ22が1つの回転トルク駆動部24で駆動可能に構成されている。
【0022】
巻付部30には、芯材としてのマンドレル31が設けられている。マンドレル31は、製造する成形体の大きさを有する円柱状の中空体もしくは中実体であり、例えば、外径が90cm、長さが100cmに形成されている。
【0023】
制御部40は、搬送ローラ制御部41、送り速度制御部42、テンションローラ制御部43、アイクチローラ制御部44、及び回転速度制御部45を備えている。
搬送ローラ制御部41は、搬送部20の回転トルク駆動部24に接続されている。搬送ローラ制御部41は、後に説明する検出部50で検出されたトウプリプレグTに掛かる張力の検出値に基づいて、回転トルク駆動部24を駆動させて、搬送ローラ22の回転トルクを制御する。
【0024】
送り速度制御部42は、巻出部10のボビン11に接続されており、トウプリプレグTの巻き出し速度を制御する。テンションローラ制御部43は、搬送部20のテンションローラ21に接続されており、テンションローラ21の回転トルク乃至高さを調整して、ボビン11から巻き出されるトウプリプレグTに掛かる張力を制御する。アイクチローラ制御部44は、アイクチローラ23に接続されており、アイクチローラ23の高さを調整して、トウプリプレグTがアイクチローラ23の周面に押し付けられる圧力を制御する。アイクチローラ23の高さを調整することで、搬送ローラ22から搬送されたトウプリプレグTがアイクチローラ23の周面に押し付けられて、トウプリプレグTの繊維幅が保持される。回転速度制御部45は、マンドレル31に接続されており、マンドレル31の回転速度を制御する。
【0025】
検出部50は、アイクチローラ23に設けられた接触式の張力検出センサとして構成されている。張力検出センサは、アイクチローラ23の下流側でトウプリプレグTに掛かる張力を検出して検出値として取得し、その検出値を電気信号(張力検出信号ST)に変換して、所定時間ごとに制御部40の搬送ローラ制御部41に出力する。
【0026】
入力部60は、FW装置1の駆動時の初期設定として、ボビン11の送り速度、テンションローラ21の回転トルク乃至高さ、アイクチローラ23の高さ、アイクチローラ23の下流側でトウプリプレグTに掛かる張力の目標値、及びマンドレル31の回転速度等を制御部40に入力可能に構成されている。これらの入力値から、制御部40に記憶されたマップに基づいて、搬送ローラ制御部41から搬送部20の回転トルク駆動部24へ回転トルク信号SRが出力され、搬送ローラ22の回転トルクが初期値に設定される。
【0027】
次に、FW装置1でのトウプリプレグTに対する張力制御について説明する。
FW装置1では、検出部50の張力検出センサでのトウプリプレグTに掛かる張力の検出値に基づいて、複数の搬送ローラ22の回転トルクを制御している。複数の搬送ローラ22の回転トルクを制御することにより、複数の搬送ローラ22のうち、最も下流側の搬送ローラ22eから搬送されたトウプリプレグTに掛かる張力が所定値に設定されるとともに、それぞれの搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように設定される。
【0028】
FW装置1でのトウプリプレグTの搬送に先立って、まず、ボビン11に巻き付けられたトウプリプレグTの繊維幅、樹脂含有率Rc、繊維束における強化繊維の本数、強化繊維の材質、塗布された樹脂の材質等に基づいて、入力部60からFW装置1の初期設定を行う。具体的には、ボビン11の送り速度、テンションローラ21の回転トルク乃至高さ、アイクチローラ23の高さ、アイクチローラ23の下流側でトウプリプレグTに掛かる張力の目標値、及びマンドレル31の回転速度等を入力部60から入力する。また、トウプリプレグTの繊維幅を入力部60から入力する。入力部60から入力された各入力値は、制御部40に送られる。
【0029】
ボビン11の送り速度に関する入力値は、送り速度制御部42からボビン11へ初期値として出力される。これにより、ボビン11が所定の回転速度で回転して、トウプリプレグTが所定の巻き出し速度で巻き出される。テンションローラ21の回転トルク乃至高さに関する入力値は、テンションローラ制御部43からテンションローラ21へ初期値として出力されて、ボビン11から巻き出されるトウプリプレグTに所定の張力が付与される。アイクチローラ23の高さに関する入力値は、アイクチローラ制御部44からアイクチローラ23へ初期値として出力されて、搬送されるトウプリプレグTがアイクチローラ23の周面に押し付けられて所定の圧力が付与される。マンドレル31の回転速度に関する入力値は、回転速度制御部45からマンドレル31へ初期値として出力されて、マンドレル31が所定の回転速度で回転する。また、入力部60から入力されたアイクチローラ23の下流側でトウプリプレグTに掛かる張力の目標値は、アイクチローラ23から搬送されるトウプリプレグTに掛かる張力の初期値として制御部40で記憶される。
【0030】
制御部40では、制御部40に記憶されたマップに基づいて、搬送ローラ22の回転トルクを設定する回転トルク信号SRが、搬送ローラ制御部41から回転トルク駆動部24へ出力される。ここでの回転トルク信号SRにより、搬送ローラ22の回転トルクが初期値に設定される。
【0031】
FW装置1には、5個の搬送ローラ22に対して1個の回転トルク駆動部24が設けられており、5個の搬送ローラ22を1個の回転トルク駆動部24で駆動している。搬送ローラ制御部41から出力された回転トルク信号SRは、各搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTに掛かる張力が、同じ上げ幅で段階的に上がっていくように、回転トルク駆動部24を駆動させる。具体的には、最も下流側の搬送ローラ22eから搬送されたトウプリプレグTに対する張力がX(kgf)となるように設定したとき、最も上流側の搬送ローラ22aから搬送されるトウプリプレグTには、X/5(kgf)の張力が掛かり、その下流の搬送ローラ22bから搬送されるトウプリプレグTには、2X/5(kgf)の張力が掛かり、その下流の搬送ローラ22cから搬送されるトウプリプレグTには、3X/5(kgf)の張力が掛かるように回転トルク駆動部24を駆動させる。FW装置1では、5個の搬送ローラ22が、トウプリプレグTの搬送時における周面に対するトウプリプレグTの接触長さがそれぞれ略同一となるような位置関係で配置されているため、1つの回転トルク駆動部24で、すべての搬送ローラ22の回転トルクが同じ上げ幅で上がっていくように制御することが可能となっている。
【0032】
図2のフローチャートに示すように、検出部50の張力検出センサでは、所定時間ごとにトウプリプレグTに掛かる張力の値を検出するように構成されている。ステップS11では、張力の検出値が張力検出信号STに変換されて制御部40の搬送ローラ制御部41に入力される。
【0033】
ステップS12では、搬送ローラ制御部41において、張力の検出値が張力の目標値に対して所定以上の変動幅であるか否かを判定する。所定以上の変動幅でないと判定された場合には、搬送ローラ制御部41からの回転トルク駆動部24への回転トルク信号SRは出力されない。所定以上の変動幅であると判定された場合には、ステップS13に進む。
【0034】
ステップS13では、張力の検出値が張力の目標値に対して小さいか否かを判定する。張力の検出値が張力の目標値に対して小さいと判定された場合には、搬送ローラ制御部41において、搬送ローラ22の回転トルクの上げ幅の目標値を演算する。そして、ステップS14で、搬送ローラ制御部41から回転トルク駆動部24へ、回転トルク信号SRを発信して、搬送ローラ22の回転トルクが目標の上げ幅となるように回転トルク駆動部24を駆動させる。
【0035】
一方、張力の検出値が張力の目標値に対して大きいと判定された場合には、搬送ローラ制御部41において、搬送ローラ22の回転トルクの下げ幅の目標値を演算する。そして、ステップS15で、搬送ローラ制御部41から回転トルク駆動部24へ、回転トルク信号SRを発信して、搬送ローラ22の回転トルクが目標の下げ幅となるように回転トルク駆動部24を駆動させる。
【0036】
このように、FW装置1では、所定時間ごとにトウプリプレグTに掛かる張力を検出して、その検出値に基づいて搬送ローラ22の回転トルクを制御している。これにより、アイクチローラ23から搬送されるトウプリプレグTに掛かる張力が目標値に近づくように制御されるとともに、5個の搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTに掛かる張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に同じ幅で大きくなるように制御される。
【0037】
次に、FW装置1を使用して繊維強化樹脂製の成形体を製造する方法について、その作用とともに説明する。
成形体の製造方法は、樹脂が含浸される前のいわゆるドライな状態の強化繊維の繊維束を開繊する開繊工程、開繊された強化繊維に樹脂を含浸させてトウプリプレグTを得る樹脂塗布工程、トウプリプレグTをFW装置1で搬送してマンドレル31に巻き付けることにより中間体を得るフィラメントワインディング工程、中間体の周面にラッピングテープを巻き付けるラッピング工程、ラッピングテープが巻き付けられた中間体を加熱して成形体を得る成形工程を有している。開繊工程、樹脂塗布工程、ラッピング工程、及び成形工程は、従来公知の方法で行うことができる。
【0038】
例えば、開繊工程としては、一定の張力で走行するドライな状態の繊維束をロールで擦過する方法や、繊維束を撓ませた状態で空気流を作用させる方法等が挙げられる。開繊工程を経ることにより、繊維束のうねりが抑制され、いわゆる繊維むらが減少して、その厚みを薄くすることができる。また、繊維幅が全長に亘って一定になり、樹脂塗布工程での樹脂の塗布量を安定させることができる。
【0039】
樹脂塗布工程としては、開繊された繊維束を、搬送ローラに沿って搬送させながら樹脂槽内に漬ける方法や、一定量の樹脂が供給されるオイリングローラの周面に繊維束を沿わせながら搬送する方法等が挙げられる。樹脂塗布工程を経ることにより、開繊された繊維束に対して、一定量の樹脂を塗布することができる。樹脂塗布工程を経たトウプリプレグTは、所定の繊維幅に整えられ、樹脂含有率Rc(wt%)がトウプリプレグTの全長に亘って安定している。トウプリプレグTは、ボビン11に巻き取られて、フィラメントワインディング工程に供給される。
【0040】
フィラメントワインディング工程は、FW装置1を用いて行う。まず、入力部60からFW装置1の初期設定を行う。トウプリプレグTは、ボビン11から所定の張力が掛かった状態で、所定の巻き出し速度で巻き出される。また、搬送ローラ22の周面に沿いながら、段階的に張力が上げられて、アイクチローラ23に搬送される。アイクチローラ23では、トウプリプレグTの繊維幅が保持された状態でマンドレル31に搬送され、マンドレル31に巻き付けられる。
【0041】
フィラメントワインディング工程では、FW装置1における検出部50でのトウプリプレグTに掛かる張力の検出値に基づいて、上記のような制御が行われる。そのため、トウプリプレグTの巻き出し時に強化繊維同士の食い込みが発生し難くなり、搬送中のトウプリプレグTが各搬送ローラ22の周面上で滑り難くなる。その結果、トウプリプレグTは複数の搬送ローラ22間を繊維幅が安定した状態で搬送される。
【0042】
また、
図3に示すように、張力が作用したトウプリプレグTを、搬送ローラ22の周面に沿わせて搬送すると、トウプリプレグTは搬送ローラ22の周面に押し付けられて扁平になろうとする。搬送ローラ22の周面に押し付けられたトウプリプレグTでは、含浸された樹脂Rがその圧力で幅方向に滲み出し、その結果として、トウプリプレグTの繊維体積含有率Vfが上がる。張力を段階的に上げることによって最も下流側の搬送ローラ22eから搬送されたトウプリプレグTには、大きな張力が掛かっている。大きな張力が掛かるほどトウプリプレグT中の樹脂が滲み出し易くなり、その厚みが薄くなって繊維体積含有率Vfが上昇する。
【0043】
図4には、トウプリプレグTに掛かる張力と繊維体積含有率Vfの関係を示すグラフを示している。
図4に示すように、張力が1.5kgfまでの範囲では、トウプリプレグTに掛かる張力が上がるほど、繊維体積含有率Vfの値が上がる傾向となっている。このように、フィラメントワインディング工程で、段階的に張力を掛けながらトウプリプレグTを搬送することにより、繊維幅が一定に保持されるとともに、繊維体積含有率Vfが向上して、トウプリプレグTの品質が安定する。
【0044】
ラッピング工程は、マンドレル31にトウプリプレグTが巻き付けられて形成された中間体の周面に、公知のラッピングテープを巻回することにより行う。ラッピング工程を経ることにより、中間体の周面に適度な圧力を掛けることができるため、樹脂内に空隙が発生することが抑制され、その後の成形工程における凹凸形状の発生を抑制される。
【0045】
成形工程では、例えば、中間体を成形型内で加熱するか、加熱炉内で加熱することにより、樹脂を熱硬化させる。このとき、ラッピングテープの熱収縮により中間体はその外周面から圧力が掛けられた状態で樹脂の熱硬化が進むため、樹脂内のボイドの発生が抑制され、表面に凹凸形状が発生することが抑制される。
【0046】
次に、上記実施形態の効果について説明する。
(1)FW装置1の搬送部20には、複数の搬送ローラ22が配置され、搬送部20では搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御されている。
【0047】
そのため、最も下流側から搬送されるトウプリプレグTに対して大きな張力を掛けることができる。トウプリプレグTの厚みが薄くなり、繊維体積含有率Vfが向上する。これにより、薄肉であっても強度に優れた成形体を成形することができる。
【0048】
(2)搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御されている。
そのため、搬送されるトウプリプレグTには、急激に大きな張力が掛かることが抑制される。トウプリプレグTをボビン11から巻き出す際に、トウプリプレグTを構成する強化繊維同士が食い込むような状態となることが抑制され、トウプリプレグTの巻き出しをスムーズに行うことができる。これにより、繊維幅の変動が抑制され、トウプリプレグTの全長に亘って繊維幅にばらつきが生じることが抑制される。
【0049】
(3)搬送されるトウプリプレグTに対して急激に大きな張力が掛かることが抑制されるため、搬送ローラ22の周面上でトウプリプレグTが滑り難い。トウプリプレグTの巻き出しをスムーズに行うことができて、トウプリプレグTの繊維幅の変動が抑制される。成形体の品質が安定する。
【0050】
(4)FW装置1の搬送部20では、搬送ローラ22の回転トルクを制御することで、搬送ローラ22で搬送されるトウプリプレグTに掛かる張力を調整している。
そのため、複数の搬送ローラ22の径が異なっていても、トウプリプレグTに掛かる張力の調整を容易に行うことが可能であり、トウプリプレグTの搬送速度の調整を容易に行うことができる。
【0051】
(5)FW装置1の搬送部20では、複数の搬送ローラ22が、その周面に対するトウプリプレグTの接触長さが略同一になるように配置されている。
そのため、搬送ローラ22が複数あっても、それらの回転トルクの上げ幅を同じにすることができる。これにより、複数の搬送ローラ22の回転トルクを1つの回転トルク駆動部24で管理することができる。搬送ローラ制御部41からの1つの回転トルク信号SRにより複数の搬送ローラ22からのトウプリプレグTの張力を制御することができる。トウプリプレグTに掛かる張力の制御を簡略化することができ、FW装置1の構成を簡略化することができる。
【0052】
(6)最も下流側の搬送ローラ22eの下流であって、巻付部30のマンドレル31の直前には、トウプリプレグTに掛かる張力を検出する検出部50が設けられている。そして、検出部50で検出された張力の検出値に基づいて、搬送部20でのトウプリプレグTの張力を制御している。
【0053】
そのため、張力を目標値に近づけることができ、繊維体積含有率Vfが良好に管理された状態でトウプリプレグTをマンドレル31に巻き付けることができる。成形体の品質を良好なものにすることができる。
【0054】
(7)搬送部20では、トウプリプレグTに掛かる張力の検出値に基づいて、複数の搬送ローラ22の最も下流側でのトウプリプレグTに掛かる張力を制御するとともに、それぞれの搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御している。
【0055】
そのため、トウプリプレグTに掛かる張力を狙った状態に管理し易く、繊維体積含有率Vfを狙った値に近づけることができる。
(8)FW装置1を使用した成形体の製造方法では、フィラメントワインディング工程の前に、開繊工程、樹脂塗布工程を備えている。開繊工程では、樹脂が含浸される前のいわゆるドライな状態の強化繊維の繊維束を開繊する。
【0056】
そのため、FW装置1に供給されるトウプリプレグTは、繊維束のうねりが抑制され、いわゆる繊維むらが減少して、その厚みを薄くされている。また、繊維幅が全長に亘って一定になっているため、樹脂塗布工程での樹脂の塗布量を安定させることができる。
【0057】
(9)樹脂塗布工程では、開繊工程で開繊された強化繊維の繊維束に樹脂を含浸させている。
そのため、一定量の樹脂を塗布することができて、樹脂含有率Rc(wt%)がトウプリプレグTの全長に亘って安定する。
【0058】
(10)開繊工程、樹脂塗布工程を経て繊維幅、樹脂含有率Rcが安定した状態のトウプリプレグTを、FW装置1により張力を制御しながら搬送している。
そのため、品質の良好なトウプリプレグTを、その状態を保持したままマンドレル31に巻き付けることができる。また、マンドレル31に巻き付けられた状態での凹凸の発生を抑制することができる。品質に優れた成形体を得ることができる。
【0059】
(11)トウプリプレグTに大きな張力を掛けることができるため、トウプリプレグTの繊維体積含有率Vfが向上するとともに、トウプリプレグTの厚みの変動を抑制することができる。
【0060】
そのため、成形体を成形するためのトウプリプレグTの積層数を少なくすることができるとともに、複数層のトウプリプレグTの層間に隙間が生じることが抑制される。これにより、ラッピング工程、成形工程で、隙間に起因するボイドの発生が抑制される。品質の良好な成形体を製造することができる。
【0061】
上記実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・搬送部20には、5個の搬送ローラ22が設けられているが、その数は特に限定されない。トウプリプレグTに掛ける張力の大きさ、張力の上げ幅、搬送ローラ22の径等に応じて、適宜の数に設定することができる。
【0062】
・複数の搬送ローラ22は、すべて同径のものであってもよく、異なる径のものが混在していてもよく、すべて異なる径であってもよい。
・テンションローラ21の構成は特に限定されない。公知のアクティブダンサーローラとともにトウプリプレグTの張力を調整するようなものであってもよい。
【0063】
・テンションローラ21、アイクチローラ23は省略してもよい。アイクチローラ23が省略されている場合、検出部50の張力検出センサは、最も下流側の搬送ローラ22eに設けるようにすればよい。
【0064】
・回転トルク駆動部24は、一つでなく、例えば、各搬送ローラ22に対して別個に設けられていてもよい。
・複数の搬送ローラ22は、トウプリプレグTの周面への接触長さが略同一になるように配置されていなくてもよい。
【0065】
・制御部40の構成は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、送り速度制御部42、テンションローラ制御部43が設けられていなくてもよい。
・回転トルクの上げ幅は略同一でなくてもよく、搬送ローラ22から搬送されたトウプリプレグTの張力の上げ幅は略同一でなくてもよい。上流側から下流側へ行くほど段階的に上がっていけば、上げ幅は特に限定されない。回転トルクの上げ幅や張力の上げ幅は、搬送ローラ22の周面上でのトウプリプレグTの滑りや繊維幅の変動を起こさない範囲で適宜設定することができる。
【0066】
・上記実施形態では、検出部50でトウプリプレグTに掛かる張力を検出し、その検出値に基づいて、搬送部20では、複数の搬送ローラ22の最も下流側でのトウプリプレグTに掛かる張力を制御するとともに、それぞれの搬送ローラ22から搬送されるトウプリプレグTの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御している。しかし、検出部50での検出する対象は張力に限定されない。トウプリプレグTの繊維幅でもよく、トウプリプレグTの厚さでもよい。また、制御態様も上記実施形態のものに限定されない。
【0067】
例えば、検出部50を、アイクチローラ23の下流側でのトウプリプレグTの繊維幅を検出する幅検出センサで構成する場合について説明する。幅検出センサとしては、投光部及び受光部を備えるセンサが挙げられる。幅検出センサは、投光部から投光された光がトウプリプレグTによって遮られたときに、受光部に到達する光量の変化を電気信号に変換して出力する。例えば、幅検出センサは、トウプリプレグTが幅検出センサを通過する際に、受光部に到達する光量の変化から、トウプリプレグTの幅方向の両端縁の位置を検出し、その検出値からトウプリプレグTの繊維幅の値を取得する。繊維幅の値を電気信号に変換して、所定時間ごとに制御部40の搬送ローラ制御部41に出力する。
【0068】
この場合の制御態様としては、
図5に示すようなフローチャートが考えられる。まず、入力部60から入力されたトウプリプレグTの繊維幅の入力値が、トウプリプレグTの繊維幅の初期値として制御部40で記憶される。
【0069】
検出部50では、所定時間ごとに、トウプリプレグTが検出部50を通過したときの繊維幅の値を検出するように構成されている。ステップS21では、繊維幅の検出値が幅検出信号に変換されて制御部40の搬送ローラ制御部41に入力される。
【0070】
ステップS22では、搬送ローラ制御部41において、繊維幅の検出値が繊維幅の初期値に対して所定以上の変動幅であるか否かを判定する。所定以上の変動幅でないと判定された場合には、搬送ローラ制御部41からの回転トルク駆動部24への回転トルク信号SRは出力されない。所定以上の変動幅であると判定された場合には、ステップS23に進む。
【0071】
ステップS23では、繊維幅の検出値が繊維幅の初期値に対して小さいか否かを判定する。繊維幅の検出値が繊維幅の初期値に対して小さいと判定された場合には、搬送ローラ制御部41において、搬送ローラ22の回転トルクの上げ幅の目標値を演算する。そして、ステップS24で、搬送ローラ制御部41から回転トルク駆動部24へ、回転トルク信号SRを発信して、搬送ローラ22の回転トルクが目標値の上げ幅となるように回転トルク駆動部24を駆動させる。
【0072】
一方、繊維幅の検出値が繊維幅の初期値に対して大きいと判定された場合には、搬送ローラ制御部41において、搬送ローラ22の回転トルクの下げ幅の目標値を演算する。そして、ステップS25で、搬送ローラ制御部41から回転トルク駆動部24へ、回転トルク信号SRを発信して、搬送ローラ22の回転トルクが目標値の下げ幅となるように回転トルク駆動部24を駆動させる。
【0073】
このように、所定時間ごとにトウプリプレグTの繊維幅を検出して、その検出値に基づいて搬送ローラ22の回転トルクを制御することで、トウプリプレグTの繊維幅が搬送ローラ22による搬送中に変動することが抑制される。
【0074】
・巻付部30で、芯材としてのマンドレル31に温度調節機構を搭載するようにしてもよい。温度調節機構としては、例えば、マンドレル31の内部にIHヒータ等の熱源を配置する構造、マンドレル31の内部に熱源となる高温の流体を循環させる構造等が挙げられる。この場合、制御部40に温度制御部を設け、温度制御部をマンドレル31の温度調節機構に接続して、マンドレル31の温度を制御するようにすればよい。また、入力部60から、FW装置1の駆動時の初期設定として、マンドレル31の温度を入力可能にすればよい。マンドレル31の温度に関する入力値は、温度調節部から温度調節機構に初期値として出力されて、熱源が所定温度に設定される。
【0075】
このように、マンドレル31に温度調節機構を搭載することにより、成形途中でのマンドレル31の温度変化が抑制され、マンドレル31の外径寸法を安定させることができる。これにより、成形体の品質をより良好にすることができる。
【0076】
・成形体の製造方法は、開繊工程、樹脂塗布工程を経てトウプリプレグTを調整する場合に限らない。ボビンに巻き付けられた状態の市販品のトウプリプレグTを調達するようにしてもよい。トウプリプレグTの繊維幅、樹脂含有率Rcが好適に管理されていれば、上記FW装置1による搬送時に、トウプリプレグTの状態を保持することができる。
【0077】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に追記する。
(イ)フィラメントワインディング法による繊維強化樹脂製の成形体の製造方法であって、複数の搬送ローラの周面に沿ってトウプリプレグを搬送する搬送工程と、搬送された前記トウプリプレグを芯材の周囲に巻き付けて中間体を形成する巻き付け工程と、前記中間体を熱硬化させて成形体を成形する成形工程とを備え、前記巻き付け工程では、前記芯材を所定の回転速度で回転させ、前記搬送工程では、前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御することを特徴とする成形体の製造方法。
【0078】
(ロ)前記搬送工程では、複数の前記搬送ローラの回転トルクを制御することを特徴とする前記(イ)に記載の成形体の製造方法。
(ハ)前記搬送工程では、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグの繊維幅の検出値に基づいて、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグに掛かる張力を制御するとともに、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御することを特徴とする前記(イ)又は(ロ)に記載の成形体の製造方法。
【0079】
(ニ)フィラメントワインディング法によって繊維強化樹脂製の成形体を製造する製造システムであって、複数の搬送ローラが配置され、その周面に沿ってトウプリプレグを搬送する搬送部と、搬送された前記トウプリプレグを芯材の周囲に巻き付ける巻付部と、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグの繊維幅を検出する検出部と、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力を制御する制御部を備え、前記制御部では、前記検出部での前記繊維幅の検出値に基づいて、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグに掛かる張力を制御するとともに、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御することを特徴とする製造システム。
【0080】
(ホ)複数の搬送ローラが配置され、その周面に沿ってトウプリプレグを搬送する搬送部と、搬送された前記トウプリプレグを芯材の周囲に巻き付ける巻付部と、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグの繊維幅及び厚さの少なくとも一方の値を検出する検出部を備え、前記巻付部では、前記芯材が所定の回転速度で回転され、前記搬送部では、前記検出値に基づいて、複数の前記搬送ローラの最も下流側での前記トウプリプレグに掛かる張力が制御されるとともに、それぞれの前記搬送ローラから搬送される前記トウプリプレグの張力が、上流側から下流側へ行くほど段階的に大きくなるように制御されることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【符号の説明】
【0081】
T…トウプリプレグ、1…フィラメントワインディング装置、10…巻出部、11…ボビン、20…搬送部、21…テンションローラ、22、22a、22b、22c、22d、22e…搬送ローラ、23…アイクチローラ、30…巻付部、31…マンドレル(芯材)、40…制御部、41…搬送ローラ制御部、50…検出部。