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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230926BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230926BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230926BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021035464
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135562
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小里 浩隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-101839(JP,A)
【文献】特開2015-073943(JP,A)
【文献】特開2020-131111(JP,A)
【文献】特開2012-096201(JP,A)
【文献】特表2016-528025(JP,A)
【文献】特開2019-084467(JP,A)
【文献】特開2002-326033(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/76
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
F01N 3/10 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層とを有し、
下流側コート層が、触媒金属としてのRhと、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物と、アルカリ土類金属とを含み、
アルカリ土類金属の含有量が、Rhの物質量1molに対して、2mol~9molである
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
アルカリ土類金属がバリウム及び/又はストロンチウムである、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
上流側コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
上流側コート層と下流側コート層とが重なっており、上流側コート層が、下流側コート層の下に配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
上流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の20%~50%である、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
下流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の60%~80%である、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のための内燃機関、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、有害成分、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等が含まれている。
【0003】
このため、一般的には、これらの有害成分を分解除去するための排ガス浄化装置が内燃機関に設けられており、この排ガス浄化装置内に取り付けられた排ガス浄化用触媒によってこれらの有害成分がほとんど無害化されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、少なくとも1個からなるモノリス担体の上流部に炭化水素浄化能を有する少なくとも1層からなる上流部触媒層が被覆され、下流部に三元性能を有する少なくとも1層からなる下流部触媒層が被覆された排ガス浄化用触媒であって、触媒活性成分として上流部触媒層の最表層が少なくともPtかPdの一方を含み、かつ下流部触媒層が少なくともRhを含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒を開示している。
【0005】
特許文献2は、燃焼ガス又は排気ガス流路内に配置され、排気ガス中の還元ガス成分に対する水素成分比を増加させる、水素富化手段と、前記排気ガス流路上の前記水素富化手段の後に配置されたNOx浄化触媒と、さらに、前記排気ガス流路上の前記NOx浄化触媒の後に配置されたHCトラップ触媒とを有し、前記水素富化手段からNOx浄化触媒に、排気ガスが常に直接流れ、前記水素富化手段が、内燃機関の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期及び吸排気弁の開閉タイミングの少なくともいずれかを制御することにより、水素を生成する燃焼制御手段を有する、ことを特徴とする排気ガス浄化システムを開示している。
【0006】
特許文献3は、基材と、該基材の表面に形成された触媒コート層と、を備える排ガス浄化用触媒であって、前記触媒コート層は、前記基材表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を有する積層構造に形成されており、前記触媒コート層は、貴金属触媒としてRhとPdとを備えており、前記触媒コート層は、担体として酸素吸蔵能を有するOSC材を備えており、前記Rhは、前記触媒コート層の上層に配置されており、前記Pdは、前記触媒コート層の上層と下層の双方に配置されており、前記上層及び下層において、前記Pdの少なくとも一部は前記OSC材に担持されており、前記下層に配置されたPdに対する前記上層に配置されたPdの質量比が、0.4以下である、排ガス浄化用触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-293376号公報
【文献】特開2007-132355号公報
【文献】特開2013-136032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3の排ガス浄化用触媒は、基材に触媒コート層が塗布されている構造を有する。触媒コート層は、触媒金属としての貴金属を含む。
【0009】
排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属の量は、資源リスクの観点から低減させることが求められている。貴金属の量を低減させるためには、貴金属の触媒活性が排ガス浄化用触媒の使用によって低下することを防止すればよく、貴金属の触媒活性が低下するのを防ぐためには、例えば、貴金属の触媒活性の低下の1つの要因である貴金属の排ガス中のHCによる被毒(HC被毒)を抑制することが挙げられる。
【0010】
一方で、触媒コート層は、触媒金属の他に、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(OSC材)を含み得る。OSC材とは、酸素を吸放出することができる材料であり、OSC材によって、空燃比が変動するような場合においても、酸素濃度を一定に保ち、排ガス浄化用触媒の浄化性能を維持することができる。
【0011】
つまり、排ガス浄化用触媒としては、貴金属のHC被毒の抑制とOSCとを両立させた排ガス浄化用触媒が望ましい。
【0012】
したがって、本発明は、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、OSCを確保しつつ、触媒性能を向上させた排ガス浄化用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
触媒活性におけるNOxの浄化は、貴金属の中でも特にロジウム(Rh)によって担われている。しかしながら、Rhの触媒活性は、HC被毒による影響を受けて低下しやすく、特に、例えば酸素濃度の低い状態が継続するA/Fがリッチである雰囲気下ではRh表面がHCにより覆われ得るため、より低下しやすい。したがって、触媒活性の低下の抑制には、RhのHC被毒の抑制が効果的である。
【0014】
貴金属のHC被毒の対応策としては、貴金属と共にバリウム(Ba)を共存させることが知られている。しかしながら、貴金属のHC被毒を抑制するBaは、排ガス浄化用触媒におけるOSC材の酸素放出を大きく遅らせてしまう。
【0015】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒において、触媒コート層として排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層とを配置し、下流側コート層に触媒金属として貴金属であるRh、並びにアルミナ(Al)-セリア(CeO)-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(ACZ)及びアルカリ土類金属を配置することによって、酸素吸放出速度が速いACZによりOSCを確保しつつ、アルカリ土類金属により貴金属であるRhのHC被毒を抑制することができ、その結果、特にHC被毒しやすいリッチ雰囲気において、触媒性能、特にNOx浄化性能を向上させた排ガス浄化用触媒を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層とを有し、
下流側コート層が、触媒金属としてのRhと、アルミナ(Al)-セリア(CeO)-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(ACZ)と、アルカリ土類金属とを含む、
排ガス浄化用触媒。
(2)アルカリ土類金属がバリウム及び/又はストロンチウムである、(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)アルカリ土類金属の含有量が、Rhの物質量1molに対して、2mol~9molである、(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)上流側コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(5)上流側コート層と下流側コート層とが重なっており、上流側コート層が、下流側コート層の下に配置されている、(1)~(4)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(6)上流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の20%~50%である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(7)下流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の60%~80%である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、OSCを確保しつつ、触媒性能を向上させた排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の触媒コート層の一実施形態を模式的に示す図である。
図2】比較例4及び実施例1~3の排ガス浄化用触媒について、Ba添加量とリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSCとの関係を示すグラフである。
図3】比較例1~3及び実施例1の排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0020】
本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層とを有し、下流側コート層が、触媒金属としてのRhと、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ)と、アルカリ土類金属とを含む、排ガス浄化用触媒に関する。
【0021】
(基材)
基材としては、公知のハニカム形状を有する基材を使用することができ、具体的には、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージェライト、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。これらの中でも、コストの観点から、コージェライトであることが好ましい。
【0022】
(触媒コート層)
触媒コート層は、上流側コート層と、下流側コート層とを少なくとも有する。
【0023】
上流側コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側(排ガスが流入する側)の端部(端面)から形成されており、上流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常20%~50%、好ましくは20%~40%である。
【0024】
上流側コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばPd、Ptの高密度化によるPd、Ptの凝集を抑制しつつ、上流側コート層に含まれる触媒金属と排ガス中の有害成分、例えばHCとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0025】
下流側コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側(排ガスが流出する側)の端部(端面)から形成されており、下流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常60%~80%、好ましくは70%~80%である。
【0026】
下流側コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばRhの高密度化によるRhの凝集を抑制しつつ、下流側コート層に含まれるRhと排ガス中の有害成分、例えばNOxとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0027】
上流側コート層及び下流側コート層は、基材上の全体において一緒になって単層を形成していてもよく、あるいは、互いに重なり合う領域を有していてもよい。上流側コート層及び下流側コート層が互いに重なり合う領域を有する場合には、上流側コート層が、下流側コート層の下に設けられることが好ましい。上流側コート層は、下流側コート層がコートされていない領域及び下流側コート層の下に設けられていることが好ましく、下流側コート層は、上流側コート層がコートされていない領域及び上流側コート層の上に設けられていることが好ましい。
【0028】
上流側コート層が下流側コート層の下に設けられている場合、上流側コート層及び下流側コート層の互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常0%~30%、好ましくは10%~20%である。
【0029】
図1に、本発明における、基材1上において、上流側コート層(前部)2が、下流側コート層(後部)3がコートされていない領域及び下流側コート層3の下に設けられており、下流側コート層3が、上流側コート層2がコートされていない領域及び上流側コート層2の上に設けられている場合の触媒コート層の一実施形態を模式的に示す。
【0030】
触媒コート層は、最上層において上流側コート層と、下流側コート層とを含む限り、上流側コート層と、下流側コート層とからなる層のみからなるものであっても、あるいは、上流側コート層と、下流側コート層とからなる層の下に、一層以上、すなわち一層、二層、三層、又は四層以上の層(下層触媒コート層)を有していてもよい。下層触媒コート層の組成及び構造は特に限定されず、上流側コート層及び/又は下流側コート層と同様のものであっても、あるいは、いずれとも異なるものであってもよい。さらに、下層触媒コート層は必ずしも排ガス浄化用触媒の基材全体に亘って均一でなくてもよく、最上層のように排ガス流れ方向に対して上流側と下流側で領域ごとに異なる組成及び構造を有していてもよい。
【0031】
触媒コート層が上流側コート層と下流側コート層とを有することで、上流側コート層でのHCの浄化及び下流側コート層でのNOxの浄化を効率よく行うことができる。
【0032】
(下流側コート層)
下流側コート層は、触媒金属としてのRhと、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ)と、アルカリ土類金属とを含む。
【0033】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルミナ中にセリア及びジルコニアが分散しており、セリア及びジルコニアの一部がセリア-ジルコニア固溶体を形成している複合酸化物であり、透過電子顕微鏡(TEM)等で観察可能である。なお、セリア及びジルコニアがセリア-ジルコニア固溶体を形成していることは、例えばX線回折(XRD)により確認することができる。
【0034】
下流側コート層がアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物はセリア-ジルコニア複合酸化物より酸素吸放出速度が速いため、十分なOSC性能の確保、特にRhのHC被毒を抑制するためのアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウムの存在下においても十分なOSC性能の確保が実現できる。
【0035】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、Ce/Zrモル比が通常0.6以下、例えば0.1~0.6、好ましくは0.15~0.55であり、アルミナ(Al)成分の含有量が、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物総重量に対して、通常40重量%~70重量%である。なお、下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成に依存する。
【0036】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成を前記範囲にすることで、アルミナによる粒子成長の抑制(耐熱性向上、比表面積の確保)、セリアによる酸素吸放出性能(OSC)の確保、ジルコニアによるセリアの安定化作用の確保の効果を十分に得ることができる。
【0037】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられる。希土類元素としては、Y及びLaが好ましい。希土類元素の含有量は、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物総重量に対して、酸化物として、通常2重量%~6重量%である。
【0038】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物が希土類元素を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSCを向上させたりすることができる。
【0039】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~120g、好ましくは80g~120gである。なお、下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのセリア-ジルコニア複合酸化物の添加量に依存する。
【0040】
下流側コート層がアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を前記含有量で含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物はセリア-ジルコニア複合酸化物より酸素吸放出速度が速いため、十分なOSC性能の確保、特にRhのHC被毒を抑制するためのアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウムの存在下においても十分なOSC性能の確保が実現できる。
【0041】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、微細であることが好ましく、限定されないが、走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)の平均値で、通常10nm以下、例えば8nm~10nmである。また、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子は、微細であることが好ましく、限定されないが、その結晶子径は、通常10nm以下、例えば8nm~10nmである。なお、セリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径は、例えば、XRDの半価幅で測定することができる。
【0042】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の平均粒径及びアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0043】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積は、限定されないが、通常30m/g以上、好ましくは50m/g~80m/gである。
【0044】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0045】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、例えば、アルコキシド法又は共沈法によって調製することができる。アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物をアルコキシド法又は共沈法で調製することにより、均一で微細な一次粒子からなる複合酸化物を調製することができ、かつセリア-ジルコニア固溶体を含む複合酸化物を容易に調製することができる。
【0046】
アルコキシド法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属アルコキシドを混合し、加水分解後に焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を金属アルコキシドとして用いなくても、その少なくとも一種を金属アルコキシドとして用いれば、残りの金属は硝酸塩やアセチルアセテート塩等の溶液として用いることもできる。
【0047】
この金属アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、ブトキシド等のいずれでもよいが、溶媒であるアルコールに対する溶解度が高いものが好ましい。なお、溶媒であるアルコールに関しても任意のものを使用できる。
【0048】
共沈法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属の硝酸塩等の水溶性の塩を混合し、アンモニア水等で水酸化物として共沈させ、それを焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を水溶性の塩として用いずとも、その少なくとも一種を水溶性の塩として用いれば、残りの金属を金属粉末又は酸化物粉末等の固体として用いることもできる。
【0049】
このようにして得られたアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、予め通常500℃~900℃で熱処理することが好ましい。アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を予め熱処理することにより、粒子の過度の結晶成長を抑えつつ、耐久後のOSCの低下を一層抑制することができる。
【0050】
下流側コート層に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物としては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開平10-202102号公報、特開2001-232199号公報、特開2012-187518号公報に記載されているものであってよい。
【0051】
下流側コート層は、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ)をさらに含んでもよい。
【0052】
下流側コート層がセリア-ジルコニア複合酸化物を含むことで、十分なOSCを確保することができる。
【0053】
下流側コート層に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物では、セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率が、モル比([セリウム]:[ジルコニウム])で、通常43:57~48:52の範囲である。なお、セリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのセリア-ジルコニア複合酸化物の組成に依存する。
【0054】
セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率が前記範囲であることで、耐熱性がより十分に高く、長時間高温に晒された後においてもより十分に優れたOSCを発揮することができる。
【0055】
下流側コート層に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。希土類元素としては、Y及びLaが好ましい。希土類元素の含有量は、セリア-ジルコニア複合酸化物総重量に対して、酸化物として、通常1重量%~20重量%、好ましくは3重量%~7重量%である。
【0056】
セリア-ジルコニア複合酸化物が希土類元素を含むことにより、セリア-ジルコニア複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSCを向上させたりすることができる。
【0057】
下流側コート層に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常5g~50g、好ましくは5g~20gである。なお、下流側コート層に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのセリア-ジルコニア複合酸化物の添加量に依存する。
【0058】
下流側コート層がセリア-ジルコニア複合酸化物を前記含有量で含むことで、十分なOSCを確保することができる。
【0059】
セリア-ジルコニア複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、微細であることが好ましく、限定されないが、SEM又はTEMの平均値で、通常10μm以下、例えば3μm~7μmである。また、セリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子は、微細であることが好ましく、限定されないが、通常500nm以下、例えば100nm~200nmである。なお、セリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径は、例えば、XRDの半価幅で測定することができる。
【0060】
セリア-ジルコニア複合酸化物の平均粒径及び結晶子径を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0061】
セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積は、限定されないが、通常2m/g以下、好ましくは0.5m/g~2m/gである。
【0062】
セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0063】
下流側コート層に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物は、従来排ガス浄化触媒において助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料であり、その詳細は当業者には公知である。セリア-ジルコニア複合酸化物は、好ましくはセリアとジルコニアが固溶体を形成している。セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルコキシド法又は共沈法で調製することができ、共沈法であれば、例えばセリウム塩(硝酸セリウム等)とジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム等)を溶解させた水溶液に、アンモニア水を加えて共沈殿を生成させ、得られた沈殿物を乾燥させた後に通常400℃~500℃で通常5時間程度焼成し、さらに通常400kgf/cm~3500kgf/cmの圧力で加圧成型し、通常1450℃~2000℃の温度条件で還元処理することにより調製することができる。
【0064】
下流側コート層に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物としては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開2011-219329号公報に記載されているものであってよい。
【0065】
下流側コート層に含まれるアルカリ土類金属は、バリウム及び/又はストロンチウムが好ましく、バリウムがより好ましい。
【0066】
下流側コート層がアルカリ土類金属を含むことで、アルカリ土類金属の電子供与性により、Rhの耐HC被毒性を向上することができる。
【0067】
下流側コート層に含まれるアルカリ土類金属の含有量は、Rhの物質量1molに対して、通常2mol(2mol/mol)~9mol(9mol/mol)、好ましくは2mol(2mol/mol)~8mol(8mol/mol)、より好ましくは5mol(5mol/mol)~7mol(7mol/mol)である。なお、下流側コート層に含まれ得るアルカリ土類金属の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのアルカリ土類金属前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0068】
下流側コート層がアルカリ土類金属を前記含有量で含むことで、アルカリ土類金属の電子供与性によりRhの耐HC被毒性を向上しつつ、アルカリ土類金属がRhよりも先に還元されることによるRh活性化の遅延を防ぎ、十分なOSC性能を確保することができる。
【0069】
下流側コート層に含まれるアルカリ土類金属は、アルカリ土類金属を含む化合物、例えば酸化物の形態でも、下記で説明するRhと同様に、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物やセリア-ジルコニア複合酸化物、本発明の排ガス浄化用触媒に任意選択的に含まれる担体粒子に担持させた形態でもよい。
【0070】
下流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、Rhの金属換算で、通常0.05g~1.0g、好ましくは0.2g~0.8gである。なお、下流側コート層に含まれ得るRhの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのRh前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0071】
下流側コート層がRhを前記含有量で含むことで、上流側コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。
【0072】
下流側コート層は、Rhの他に、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる触媒金属をさらに含んでもよく、例えば貴金属、具体的には、Pt、Pd、Au、Ag、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含んでもよい。
【0073】
下流側コート層に含まれるRhは、そのままでも排ガス浄化用触媒として機能するが、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、セリア-ジルコニア複合酸化物、本発明の排ガス浄化用触媒に任意選択的に含まれる担体粒子に担持されていることが好ましい。
【0074】
Rhを担持する担体粒子は、特に限定されないが、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、セリア-ジルコニア複合酸化物、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に担体粒子として用いられる任意の金属酸化物でよい。
【0075】
したがって、下流側コート層は、担体粒子をさらに含んでいてもよい。担体粒子としては、金属酸化物、例えば、シリカ(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、イットリア(Y)、酸化ネオジム(Nd)、酸化ランタン(La)及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えば前記のアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ)等、並びにそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0076】
酸性担体、例えば、シリカでは、NOxを還元する触媒金属との相性がよい。塩基性担体、例えば、酸化マグネシウムでは、NOxを吸蔵するカリウムやバリウムとの相性がよい。ジルコニアは、他の担体粒子がシンタリングを生じるような高温下において、当該他の担体粒子のシンタリングを抑制し、かつ触媒金属としてのRhと組み合わせることによって、水蒸気改質反応を生じてHを生成し、NOxの還元を効率よく行うことができる。酸塩基両性担体、例えば、アルミナは高い比表面積を有するため、これをNOxの吸蔵及び還元を効率よく行うのに用いることができる。チタニアは、触媒金属の硫黄被毒を抑制する効果を発揮することができる。また、アルミナ、ジルコニア、他の金属酸化物は、添加することにより担体の耐久性を高めることができる。
【0077】
前記の担体粒子の特性によれば、選択した担体粒子の種類、組成、組み合わせとその比率、及び/又は量によって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能、特に、NOx浄化性能が向上する可能性があることを理解されたい。
【0078】
Rhが、前記担体粒子に担持されている場合には、担体粒子の比表面積が大きいことから、排ガスとRhとの接触面を大きくすることができる。これにより、排ガス浄化用触媒の性能を向上させることができる。
【0079】
Rhの担体粒子への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。
【0080】
下流側コート層中の担体粒子(担体粒子がアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア複合酸化物を含む場合、これらの複合酸化物の含有量を含む)の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常25g~170g、好ましくは100g~140gである。なお、下流側コート層に含まれ得る担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0081】
下流側コート層がRh、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、及びアルカリ土類金属を含むことで、アルカリ土類金属によるRhのHC被毒の抑制、特に(1)空燃比(A/F)がリッチであり、かつ(2)排ガス浄化用触媒の低体格化に伴う加速時等の吸入空気量が多い(高吸入空気量又は高Ga:高空間速度又は高SVと同義)条件下におけるRhのHC被毒の抑制と、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物によるOSCの確保とを両立させて、触媒性能、特にNOx浄化性能を向上させた排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0082】
下流側コート層は、主としてRh、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、及びアルカリ土類金属から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、Rh等を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、Rh等と同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0083】
下流側コート層中の他の成分の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~120g、好ましくは80g~120gである。なお、下流側コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0084】
下流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常45g~250g、好ましくは160g~250gである。なお、下流側コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0085】
下流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。下流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0086】
下流側コート層中の各材料の量及び下流側コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0087】
(上流側コート層)
上流側コート層は、触媒金属を含む。
【0088】
上流側コート層に含まれる触媒金属は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられるものであり、例えば貴金属、具体的には、Pt、Pd、Rh、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらの中でも、触媒性能の観点から、Pt、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、Pt及び/又はPdがより好ましい。
【0089】
上流側コート層に含まれる触媒金属の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.2g~5.0g、好ましくは2.0g~5.0gである。なお、上流側コート層に含まれる触媒金属の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての触媒金属前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0090】
上流側コート層が触媒金属を含むこと、すなわち、触媒金属を含むコート層を上流側、つまり排ガス浄化用触媒前部に配置することで、触媒金属、例えばPt、Pdの高密度化による着火性向上により、排ガス、特にHCの浄化性能が向上する。
【0091】
上流側コート層に含まれる触媒金属は、そのままでも排ガス浄化用触媒として機能するが、本発明の排ガス浄化用触媒に任意選択的に含まれる担体粒子に担持されていることが好ましい。
【0092】
触媒金属が担持される担体粒子は、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に担体粒子として用いられる任意の金属酸化物でよい。
【0093】
したがって、上流側コート層は、担体粒子をさらに含んでいてもよい。担体粒子としては、金属酸化物、例えば、シリカ、酸化マグネシウム、ジルコニア、セリア、アルミナ、チタニア、イットリア、酸化ネオジム、酸化ランタン及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばセリア-ジルコニア複合酸化物(CZ)、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ)並びにそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。なお、複合酸化物、例えばCZ及びACZ中の各酸化物の比率は限定されず、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる比率でよい。CZ及びACZとしては、例えば下流側コート層の項目で説明したCZ及びACZを用いることができる。
【0094】
例えば、セリアは、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、リッチ雰囲気で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)特性を有するため、排ガス浄化用触媒内をストイキ雰囲気に保つことができ、アルミナ、ジルコニア、他の金属酸化物は、添加することにより担体の耐久性を高めることができる。
【0095】
前記の担体粒子の特性によれば、選択した担体粒子の種類、組成、組み合わせとその比率、及び/又は量によって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能、特に、HC浄化性能が向上する可能性があることを理解されたい。
【0096】
触媒金属が、前記担体粒子に担持されている場合には、担体粒子の比表面積が大きいことから、排ガスと触媒金属との接触面を大きくすることができる。これにより、排ガス浄化用触媒の性能を向上させることができる。
【0097】
触媒金属の担体粒子への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。
【0098】
上流側コート層中の担体粒子の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~200g、好ましくは20g~100g、より好ましくは40g~100gである。なお、上流側コート層に含まれる担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0099】
上流側コート層は、主として触媒金属としての貴金属及び当該貴金属を担持している担体粒子から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、触媒金属等を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、触媒金属と同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0100】
上流側コート層中の他の成分の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~100g、好ましくは20g~100g、より好ましくは40g~100gである。なお、上流側コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0101】
上流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常40g~200g、好ましくは100g~200gである。なお、上流側コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0102】
上流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。上流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0103】
上流側コート層中の各材料の量及び上流側コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0104】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記で説明した排ガス浄化用触媒の構成成分を使用すること以外は、公知のコーティング技術を使用して製造することができる。
【0105】
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、以下のように製造することができる。まず、基材上において上流側コート層を形成させる領域に、上流側コート層を構成する材料、例えば触媒金属前駆体、例えばPt及び/又はPdを含む塩、例えば硝酸塩、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)及び場合により担体粒子、例えばアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア複合酸化物、添加剤等を含む上流側コート層用の触媒コート層スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、上流側コート層を形成させる。続いて、上流側コート層を形成させた基材上において下流側コート層を形成させる領域に、下流側コート層を構成する材料、すなわちRh前駆体、例えばRhを含む塩、例えば硝酸塩、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、及びアルカリ土類金属を含む化合物、例えばバリウム及び/又はストロンチウムを含む塩、例えば硫酸塩及び/又は酢酸塩、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)並びに場合によりさらなる担体粒子、例えばセリア-ジルコニア複合酸化物、添加剤等を含む下流側コート層用の触媒コート層スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、下流側コート層を形成させる。
【0106】
(排ガス浄化用触媒の用途)
本発明の排ガス浄化用触媒は、リッチ雰囲気での排ガス浄化性能において大きく効果を発揮することができ、リッチ雰囲気で余剰のHC等が排ガス浄化用触媒に吸着して、当該排ガス浄化用触媒を被毒し得るような環境下においても使用することができる高いHC被毒抑制効果を発現する排ガス浄化用触媒として使用することができる。
【実施例
【0107】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0108】
1.使用材料
材料1(Al
:La複合化Al
(La:1重量%~10重量%)
材料2(ACZ複合酸化物)
:Al-CeO-ZrO複合酸化物
(Al:10重量%~55重量%)
(CeO:15重量%~30重量%)
(ZrO:30重量%~60重量%)
(Nd、La、Yが微量添加され、高耐熱化が施されたもの)
材料3(CZ複合酸化物1又はCZ1)
:CeO-ZrO複合酸化物
(CeO:40重量%、ZrO:50重量%、La:5重量%、Y:5重量%)
(特開2011-219329号公報に基づいて調製)
材料4(Pd薬液)
:硝酸パラジウム(硝酸Pd)
材料5(Rh薬液)
:硝酸ロジウム(硝酸Rh)
材料6(硫酸Ba)
:硫酸バリウム
材料7(CZ複合酸化物2又はCZ2)
:CeO-ZrO複合酸化物
(CeO:30重量%、ZrO:60重量%、La:5重量%、Y:5重量%)
材料8(酢酸Sr)
:酢酸ストロンチウム
基材
:875cc(600セル六角 壁厚2mil)のコージェライトハニカム基材
【0109】
2.排ガス浄化用触媒の調製
実施例1
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料4(Pd薬液)、材料1(Al)、材料2(ACZ複合酸化物)、材料3(CZ複合酸化物1)、材料6(硫酸Ba)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0110】
次に、調製したスラリー1を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、上流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の上流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料4がPdの金属換算で5g(5g/L-zone)になり、材料1が50g(50g/L-zone)になり、材料2が95g(95g/L-zone)になり、材料3が10g(10g/L-zone)になり、材料6が13g(13g/L-zone)になるようにした。また、上流側コート層の前駆体層のコート幅は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の35%を占めるように調整した。
【0111】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上流側コート層(前部)を調製した。
【0112】
続いて、前記同様に、蒸留水に、撹拌しながら、材料5(Rh薬液)、材料1(Al)、材料2(ACZ複合酸化物)、材料3(CZ複合酸化物1)、材料6(硫酸Ba)、Al系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。
【0113】
次に、調製したスラリー2を、上流側コート層を形成させた基材に、上流側コート層を形成させた端面の逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、下流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料5がRhの金属換算で0.77g(0.77g/L-zone)になり、材料1が35g(35g/L-zone)になり、材料2が105g(105g/L-zone)になり、材料3が12g(12g/L-zone)になり、材料6が10.1g(10.1g/L-zone)になるようにした。また、下流側コート層の前駆体層のコート幅は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の80%を占めるように調整した。
【0114】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、下流側コート層(後部)を調製し、最終的に排ガス浄化用触媒を調製した。
【0115】
実施例2
実施例1において、スラリー2における材料6(硫酸Ba)の添加量を、硫酸Baとして基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して5.0g(5.0g/L-zone)になるように調整した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0116】
実施例3
実施例1において、スラリー2における材料6(硫酸Ba)の添加量を、硫酸Baとして基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して15.1g(15.1g/L-zone)になるように調整した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0117】
実施例4
実施例1において、スラリー2における材料6(硫酸Ba)を材料8(酢酸Sr)に変更した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0118】
比較例1
実施例1において、スラリー2における材料2(ACZ複合酸化物)を材料7(CZ複合酸化物2)に変更した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0119】
比較例2
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料5(Rh薬液)、材料1(Al)、材料2(ACZ複合酸化物)、材料3(CZ複合酸化物1)、材料6(硫酸Ba)、Al系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。
【0120】
次に、調製したスラリー2を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、上流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の上流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料5がRhの金属換算で0.77g(0.77g/L-zone)になり、材料1が35g(35g/L-zone)になり、材料2が105g(105g/L-zone)になり、材料3が12g(12g/L-zone)になり、材料6が10.1g(10.1g/L-zone)になるようにした。また、上流側コート層の前駆体層のコート幅は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の80%を占めるように調整した。
【0121】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上流側コート層(前部)を調製した。
【0122】
続いて、前記同様に、蒸留水に、撹拌しながら、材料4(Pd薬液)、材料1(Al)、材料2(ACZ複合酸化物)、材料3(CZ複合酸化物1)、材料6(硫酸Ba)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0123】
次に、調製したスラリー1を、上流側コート層を形成させた基材に、上流側コート層を形成させた端面の逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、下流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料4がPdの金属換算で5g(5g/L-zone)になり、材料1が50g(50g/L-zone)になり、材料2が95g(95g/L-zone)になり、材料3が10g(10g/L-zone)になり、材料6が13g(13g/L-zone)になるようにした。また、下流側コート層の前駆体層のコート幅は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の35%を占めるように調整した。
【0124】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、下流側コート層(後部)を調製し、最終的に排ガス浄化用触媒を調製した。
【0125】
比較例3
実施例1における排ガス浄化用触媒の上流側と下流側とを入れ替えた(すなわち、実施例1における排ガス浄化用触媒の上流側コート層(前部)が下流側コート層(後部)になり、下流側コート層(後部)が上流側コート層(前部)になる)以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0126】
比較例4
実施例1において、スラリー2における材料6(硫酸Ba)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0127】
比較例5
実施例1において、スラリー2における材料2(ACZ複合酸化物)を材料7(CZ複合酸化物2)に変更し、スラリー2における材料3(CZ複合酸化物1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0128】
表1に、実施例1~4及び比較例1~5の排ガス浄化用触媒の触媒構成をまとめる。
【0129】
【表1】
【0130】
3.耐久試験
実施例1~4及び比較例1~5について、実際のエンジンを用いて以下の耐久試験を実施した。
各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0131】
4.性能評価
3.耐久試験を実施した実施例1~4及び比較例1~5の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の性能評価を実施した。
【0132】
4-1.リッチ雰囲気でのNOx浄化率
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)が14.4の排ガスを供給し、入りガス温度が550℃になった際のNOx浄化率をリッチ雰囲気でのNOx浄化率とした。
【0133】
4-2.OSC評価
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、Ga=22/s、600℃の条件下、A/Fが14.1と15.1になるようにA/Fフィードバック制御を行った。ストイキ点とA/Fセンサ出力の差分より、酸素の過不足を以下の式から算出し、Ga=22/s、600℃での最大酸素吸蔵量をOSCとして評価した。
OSC(g)=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
【0134】
5.評価結果
表2に各排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC結果を示す。
【0135】
【表2】
【0136】
さらに、図2に、各排ガス浄化用触媒について、Ba添加量とリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC結果との関係を示す。
【0137】
表2及び図2より、下流側コート層にBaを添加することによって、リッチ雰囲気でのNOx浄化率が向上することがわかった。特に、下流側コート層において、Ba添加量がRhの物質量に対して6mol/molのとき(実施例1)に、リッチ雰囲気でのNOx浄化率が最も高くなった。ただし、実施例1~3から、Ba添加量を増やし過ぎると、BaがRhよりも先に還元されることによりRh活性化が遅れ、OSCが下がることがわかった。また、実施例4の結果より、Baの代わりにSrを使用しても、Baと同様の効果を得ることができることがわかった。
【0138】
表3に各排ガス浄化用触媒の構成を示す。
【0139】
【表3】
【0140】
さらに、図3に、実施例1及び比較例1~3のリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC結果を示す。
【0141】
表3及び図3より、実施例1と比較例1とを比較すると、下流側コート層において、ACZの代わりにCZを用いた場合、リッチ雰囲気でのNOx浄化率はほぼ同じである一方で、OSCが低下した。これは、CZの酸素放出速度がACZの酸素放出速度よりも遅いため、OSCの低下が顕著に表れたためであると推定される。
【0142】
また、実施例1と比較例2又は比較例3とを比較すると、比較例2及び比較例3は、実施例1の構造に比べてRh利用効率が低いため、リッチ雰囲気でのNOx浄化率が低くなることがわかった。
【符号の説明】
【0143】
1:基材、2:上流側コート層、3:下流側コート層
図1
図2
図3