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特許7355786多層ポリエステルフィルム、このフィルム及び金属薄板材から製造される積層体、かかるフィルム及びかかる積層体を製造する方法、並びにかかる積層体から製造される容器
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  • 特許-多層ポリエステルフィルム、このフィルム及び金属薄板材から製造される積層体、かかるフィルム及びかかる積層体を製造する方法、並びにかかる積層体から製造される容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】多層ポリエステルフィルム、このフィルム及び金属薄板材から製造される積層体、かかるフィルム及びかかる積層体を製造する方法、並びにかかる積層体から製造される容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230926BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20230926BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230926BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B15/09 A
C08L67/02
C08K3/013
C08K3/36
B65D65/40 D
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120117
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2019506404の分割
【原出願日】2016-08-05
(65)【公開番号】P2021178512
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】510173292
【氏名又は名称】トーレ・フィルムズ・ヨーロッパ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ラクランペ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・サン・ピエール,オドレ
(72)【発明者】
【氏名】ファルディスタ,ジュリアン
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-216805(JP,A)
【文献】特表2002-536209(JP,A)
【文献】特開平07-195619(JP,A)
【文献】特開平05-209116(JP,A)
【文献】特開2004-042643(JP,A)
【文献】特開2004-025876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層二軸配向ポリエステルフィルムであって、
(C)PET-Gからなる少なくとも1つのアモルファス層Cであって、ここで、PET-Gは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位及びシクロヘキサンジメタノール-CHDM-単位を含むコポリエステルである、前記層C;
(B)少なくとも1つの層Bであって、
・少なくとも1種類のコポリエステルCP1がPET-Xであり、ここで、PET-Xは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、イソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである前記層B;
(A)少なくとも1つの層Aであって、少なくともポリエチレンテレフタレートPETを含む、前記層A;を順番に含み
(i)前記層C中の前記CHDM単位の濃度は、5~35モル%の間であり;
(ii)前記層Bの融点は180~245℃の間である、上記フィルム。
【請求項2】
前記層B中の前記DADFTA単位の濃度が、1モル%以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
記層Aは、少なくとも50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル樹脂の結晶性の層である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記層C、B、Aの少なくとも1つが、μmで、次の範囲:[1.0~15.0]の中位径D50を有するフィラー粒子を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィラー粒子が、酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム、酸化スズ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸アルミニウム、湿式及び乾式コロイダルシリカ及びアルミナ、スチレンを含むポリマー、シリコーン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンを含むポリマー、及びこれらの混合物を含む群の無機及び/又は有機粒子の中から選択される、請求項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィラー粒子が、μmで、次の範囲:[2.0~12.0]の中位径D50を有するSiO2粒子を含む、請求項4に記載のフィルム。
【請求項7】
全層の全体の固有粘度(IV)が、フィルム生成物のIVとして0.45~0.70dL/gの間である、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記層Cの厚さが、μmで、次の範囲内:[0.3~6.0]である、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記層Cの厚さが、全体のフィルム厚さの%で、次の範囲内:[0.5~40]である、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
前記層Bに結合している前記層Cの表面の反対側の前記層Cの表面が表面処理によって処理されて、その表面張力が、mN/mで、次の範囲内:[>40]で増加している、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の多層二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、かかる製造方法は、
(i)請求項1~10のいずれかに規定するポリエステルを合成するか又は用意すること;
(iii)前記ポリエステルを加熱してそれを溶融し、それを展性にすること;
(iv)溶融した前記ポリエステルを多層フィルムで押出すこと;
(v)前記多層フィルムを、急速冷却(クエンチ)及び固化すること;
(vi)前記多層フィルムを、延伸温度Tsにおいて縦方向及び横方向において二軸延伸すること;
(vii)二軸延伸したフィルムを加熱温度Thにおいて加熱すること;
を含む上記方法。
【請求項12】
金属支持体を含む金属/多層二軸配向ポリエステルフィルム積層体であって、前記支持体は請求項1~10のいずれかに記載のフィルムに結合されている、上記積層体。
【請求項13】
請求項12に記載の積層体を製造する方法であって、前記多層二軸配向ポリエステルフィルムを金属支持体と積層し、前記積層が、270℃以下の温度T1における誘導加熱工程;270℃以下の温度T2におけるIRアニール工程;及び冷却工程を含む、上記方法。
【請求項14】
請求項12に記載の積層体から製造される容器であって、前記金属支持体が前記容器の外壁である上記容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層(コ)ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)、或いはポリブチレンテレフタレート(PBT)のような芳香族ポリエステルフィルムであって、前記(コ)ポリエステルフィルムは好ましくは二軸配向を有する前記フィルムに関する。
【0002】
これらの多層(コ)ポリエステルフィルムは、それらの熱安定性、寸法安定性、耐化学薬品性、及び比較的高い表面エネルギーの周知の優れた特性の理由で、特に金属シートを含む積層体のためのフィルムとして非常に広く用いられている。これらの積層体は、包装用途;容器、特に金属缶のような食品容器の製造において用いられる。
【0003】
本発明はまた、これらのポリエステルフィルム、及びこれらの金属/ポリエステルフィルム積層体の製造及び使用、並びにこれらの積層体から製造される容器にも関する。
【背景技術】
【0004】
金属の基材又はシート上へのポリエステルフィルムの共積層は開発中の用途である。ポリエステルフィルム/金属シート積層体は、特に包装産業のための原材料として有用である。
【0005】
この用途においては、接着性、柔軟性、耐化学薬品性、及び腐食抑制性の有利な特性を示し、経済的で、容器内に包装されている影響を受けやすい食品及び飲料の味及び他の知覚特性に悪影響を与えない、食品及び飲料容器の外側及び内側において用いるための固体の被覆組成物を形成することができる二軸配向で多層の透明なポリエステルフィルムに対する必要性が存在する。既存の有機溶媒ベースの被覆組成物は、これらの仕様に適合しているが、有機溶媒のために環境上及び毒性の側面に関して特に不利であるという主要な欠点を有している。
【0006】
US-8,808,844B2においては、金属シート、及び金属シートの少なくとも1つの主表面に熱結合させた二軸配向ポリマーフィルムを含む物品が開示されている。このポリマーフィルムは、
1.金属シートに隣接している、1種類以上のポリエステル材料:例えば33重量%のPET(ポリエステルEG-TA)、及び67重量%のPET-G(コポリエステルEG-CHDM-TA)を含む第1の接着性アモルファス層;
2.重量基準で主要割合の1種類以上の結晶性のポリエステルベースのポリマー:例えば82重量%のPET(ポリエステルEG-TA)、15重量%のPET-G(コポリエステルEG-CHDM-TA)、2.7重量%のポリアミド、及び0.3重量%のコバルト塩を含む第2の層(時には「コア」層と呼ぶ);
3.及び67重量%のPET(ポリエステルEG-TA)、32重量%のPET-G(コポリエステルEG-CHDM-TA)、及び1重量%のワックスブレンドを含む第3の層(上層);
を含む(EG=エチレングリコール;TA=テレフタル酸;CHDM=シクロヘキサンジメタノール)。第1の層の厚さはフィルム全体の厚さの約5~約40%の範囲であり、第2の層の厚さはフィルム全体の厚さの約20~約95%の範囲であり、任意の随意的な他の層の厚さは、存在する場合にはフィルム全体の厚さの約40%以下である。
【0007】
積層包装原材料を形成することが意図されるかかる多層ポリエステルフィルムは、次の特性:
(a)金属/多層ポリエステルフィルムの缶の蓋をタブによって開口(perforate)した
際に多層ポリエステルフィルムの低いフェザリング、即ちフェザリングが小さい(<0.8mm)か、又はフェザリングの形成がないこと;
(b)金属薄板材(foil)と低い積層温度で積層した場合でも高い金属/多層ポリエステルフィルムの接着性(これは、金属薄板材と多層ポリエステルフィルムの間に層間剥離がないことを意味する);
(c)多層ポリエステルフィルムから、金属/多層ポリエステルフィルム積層体で製造された食品容器の内容物への成分の移行がないか又は低いこと(フィルムによる缶の内容物からの芳香成分の吸着がなく、且つフィルムから溶出する物質によって内容物の風味が害されないことが必要である);
(d)腐食、特に酸腐食に対する抵抗性;
(e)かかる積層体から製造される充填された缶が最終的にかけられる熱処理(低温殺菌)プロセスに対する抵抗性(十分でない滅菌抵抗性は、
第1に、滅菌抵抗性が十分な場合には透明な被覆における曇り(「白化」と呼ばれる効果)として;
第2に、層間剥離として;
現れる);
(f)高い引張り強さ;
(g)成形性:容器(缶)の製造中において、金属/多層ポリエステルフィルム積層体のプレス及び成形に耐えるのに十分な柔軟性(製造後にピンホール又は亀裂のような欠陥が生成してはならない。ポリエステルフィルムは、金属缶が衝撃に曝された際に分離するか、或いは亀裂又はピンホールの生成を示してはならない);
を有することが求められる。
【0008】
USP8,808,844B2による多層ポリエステルフィルム、及びそれらの対応する金属との積層体は、特にこれらの特性(a)~(g)に関して改良することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US-8,808,844B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、かかる改良された多層ポリエステルフィルム、及びそれから製造される金属積層体を提供することから構成される。
これに関連し、本発明の重要な目的の1つは、以下の特性:
(a)フェザリング;
(b)金属/多層ポリエステルフィルムの接着性;
(c)移行がないか又は低いこと;
(d)酸腐食に対する抵抗性;
(e)熱処理(低温殺菌)に対する抵抗性;
(f)高い引張り強さ;
(g)成形性;
の少なくとも1つを改良する、改良された多層ポリエステルフィルムを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記(a)~(g)の特徴を有し、例えばドロー・リドロー、ドロー&アイアニング、及びドロー・ウォールアイアニングのような通常の成形プロセスに
よって、食品包装又は工業用途のための金属缶のような容器を、積層体から容易に且つ安価に製造することを可能にする、金属/二軸配向多層ポリエステルフィルムの積層体を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、実施するのが簡単で、安価で、工業的な、上記の目的を満足する多層ポリエステルフィルムを得る方法を提供することである。
本発明の他の目的は、上述の改良された多層ポリエステルフィルムに結合された金属シートから構成される積層体を製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、かかる積層体から製造される容器(缶)、及びそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によって、中でもこれらの目的が達成される。本発明は、第1の形態においては、
多層二軸配向ポリエステルフィルムであって、
(C)少なくとも1種類のコポリエステル、好ましくはPET-Gを含む少なくとも1つのアモルファス層C、ここでPET-Gは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位及びシクロヘキサンジメタノール-CHDM-単位を含むコポリエステルである;
(B)・少なくとも1種類のコポリエステルCP1、好ましくはPET-X、ここでPET-Xは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、好ましくはイソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、アジピン酸-AA-単位、ダイマー酸-DA-単位、ナフタレンジカルボン酸-NA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである;及び
・場合によっては少なくとも1種類のポリエステルPE1、好ましくはポリエチレンテレフタレートPET;
を含む少なくとも1つの層B;
(A)場合によっては、前記層Bと同一か又は異なり、少なくとも1種類のポリエステルPE2、好ましくは少なくとも1種類のポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートPET、及び場合によっては少なくとも1種類のコポリエステルCP2、好ましくはPET-Xを含む少なくとも1つの層A、ここでPET-Xは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、好ましくはイソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、アジピン酸-AA-単位、ダイマー酸-DA-単位、ナフタレンジカルボン酸-NA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである;
を順番に含み;
(i)前記層C中の前記CHDM単位の濃度は、5~50モル%の範囲内、好ましくは10~40モル%の範囲内、より好ましくは15~35モル%の範囲内であり;
(ii)前記層Bの融点は180~245℃の範囲内である、上記フィルムに関する。
【0015】
特徴(i)及び(ii)の組合せがフィルムの性能に対して非常に重要であることは驚くべき発見であった。かかる組合せによって、基材、特にアルミニウム及び鋼材のような金属基材に積層した際に、比較のポリマーよりも大きな接着性が与えられる。この増加した結合強度によって、商業的に入手できる装置を用いて商業的に入手できる基材に適切に施して結合させることができる積層構造体が得られる。特徴(i)及び(ii)の組合せの他の驚くべき利益は、優れたフェザリング特性を有する積層フィルムを提供する能力である。被覆のフェザリングが存在しないことは、例えば食品又は飲料用の缶のためのイー
ジーオープン缶蓋のような幾つかの最終用途において望ましい。かかる缶蓋を製造することは、通常は、金属基材を予めスコア加工すること(これによって、その後に、缶蓋のリベットに取り付けられたプルタブを用いて缶蓋を開放して、包装された食品又は飲料製品を消費することが可能になる)を含む。このスコア加工技術の使用は、基材及び施された被覆の両方が容易に且つ綺麗に引裂することが必要である。綺麗な引裂がないことは、缶の開放部にわたる好適でない量の残留被覆の存在のために、しばしば「フェザリング」(又はヘアリング(hairing))と呼ばれる。内部被覆が目に見える程のフェザリングを示す
ことは、包装された食品又は飲料製品の消費者に対して美観的に心地よくない可能性があるので一般的に望ましくない。したがって、イージーオープンの食品又は飲料用の缶の蓋の内側に関して用いる被覆は目に見える程のフェザリングを示さないことが望ましい。
【0016】
熱処理後の引裂抵抗性、並びに酸媒体に対する抵抗性、及び後加熱(低温殺菌)中に結晶化しないことは、本発明によるフィルムを含む金属/多層ポリエステル積層体の他の利点である。食品包装産業において用いられる多くの被覆物品は、物品を80~130℃の温度範囲の水蒸気又は水に曝露する低温殺菌又はレトルト処理のような後加熱工程にかけられる。この低温殺菌中には、結晶性のポリエステルは多少のレベルの結晶化を示す傾向があり、これにより変色、亀裂、クレージング、又は接着性の減少が引き起こされる可能性がある。これらの欠陥のいずれも、積層体の全体的な品質を低下させ、消費者に受け入れられない物品をもたらす可能性がある。
【0017】
移行が低いか又はないこと、及び成形性も、本発明によるフィルムを含む金属/ポリエステル積層体において存在する。
好ましい態様においては、本発明によるフィルムは、層B中のDADFTA単位の濃度が1モル%以上、好ましくは2~50モル%の間、より好ましくは3~25モル%の間であることを特徴とする。
【0018】
有利な変形態様によれば、層B及び/又は層Aは、
・CP1及び/又はCP2と異なる少なくとも1種類のコポリエステルCP3、好ましくはPBT-X、ここでPBT-Xは、ジオール単位がブチレングリコ-ル-BG-単位を含み、酸単位が、テレフタル酸-TA-単位、及び少なくとも1種類のDADFTAの単位を含み、かかるDADFTA単位が、好ましくは、イソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、アジピン酸-AA-単位、ダイマー酸-DA-単位、ナフタレンジカルボン酸-NA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである;及び
・場合によっては、少なくとも1種類のポリエステルのポリブチレンテレフタレートPBT;
を含む。
【0019】
本発明によるフィルムが層Bと異なる層Aを含む特定の態様においては、層Aは、少なくとも50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル樹脂の結晶性の層である。
【0020】
優れた特徴によれば、層C、B、Aの少なくとも1つ、好ましくは層B及び/又は層Aは、μmで、次の範囲内:好ましくは[1.0~15.0]、より好ましくは[2.0~12.0]、更により好ましくは[3.0~10.0]の中位径D50を有するフィラー粒子を含む。
【0021】
最適化の目的として、本発明によるフィルムの層C、B、Aの少なくとも1つ、好ましくは層B及び/又は層Aは、フィラー粒子と異なる微細粒子を含む。
本発明においては、これらのフィラー又は微細粒子は、好ましくは、酸化チタン、硫酸
バリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム、酸化スズ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸アルミニウム、湿式及び乾式コロイダルシリカ及びアルミナ、スチレンを含むポリマー、シリコーン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンを含むポリマー、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群の無機及び/又は有機粒子の中から選択される。
【0022】
微細粒子に関する限りにおいては、微細粒子は、%w/wで、次の濃度範囲:好ましくは[1~25];より好ましくは[2~20];更により好ましくは[3~10]の硫酸バリウム及び/又は酸化チタンの粒子を含む。
【0023】
フィラー粒子に関する限りにおいては、フィラー粒子は、μmで、次の範囲:好ましくは[2.0~9.0]、より好ましくは[3.0~8.5]、更により好ましくは「5.0~8.0]の中位径D50を有するSiO粒子を含む。
【0024】
全層の全体の固有粘度(whole intrinsic viscosity of any layer)(IV)が、0.45~0.70dL/gの間、特に0.50~0.65dL/gの間であることは、本発明の注目すべき特徴である。
【0025】
有利には、C層の厚さは、μmで、次の範囲内:好ましくは[0.3~6.0];より好ましくは[0.5~5.0];更により好ましくは[0.7~4.0]である。
他の表現方法に関しては、C層の厚さは、好ましくは、全体のフィルム厚さの%で、次の範囲内:好ましくは[0.5~40];より好ましくは[0.8~25];更により好ましくは[1.0~20]である。
【0026】
本発明によるフィルムはまた、次の有利な特徴:
(a)フィルムに関して測定される全光線透過率TLTは、%で、次の範囲内:好ましくは[<90];より好ましくは[<80];更により好ましくは[<70]であり;及び/又は
(b)フィルムに関して測定される曇り度は、%で、次の範囲内:好ましくは[>70];より好ましくは[>80];更により好ましくは[>90]である;
によって説明することもできる。
【0027】
DSCによって測定される完全結晶化PETと比べた本発明によるフィルムのグローバル結晶化度(global crystallinity ratio)は、好ましくは、%で、次の範囲:好ましくは[<30];より好ましくは[<25];更により好ましくは[<20]である。
【0028】
フィルムの結合性に関して改良された態様においては、B層に結合しているC層の表面の反対側のC層の表面は、表面処理によって処理されて、その表面張力が、mN/mで、次の範囲内:好ましくは[>40];より好ましくは[>45];更により好ましくは[>50]で増加している。
【0029】
本発明はまた、本発明による多層二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、かかる製造方法は、
(i)上記に規定するポリエステルを合成するか又は用意する(implementation)こと;
(ii)場合によっては前記ポリエステルを予備乾燥すること;
(iii)前記ポリエステルを加熱してそれを溶融し、それを展性にすること;
(iv)溶融した前記ポリエステルを、好ましくはフラットダイを通して多層フィルムで押出すこと;
(v)前記多層フィルムを、好ましくは冷却ドラム上で急速冷却(クエンチ)及び固化
すること;
(vi)前記多層フィルムを、所定の延伸温度Tsにおいて縦方向及び横方向において二軸延伸すること;
(vii)二軸延伸したフィルムを所定の加熱温度Thにおいて加熱すること;
を含む上記方法にも関する。
【0030】
この方法においては、Ts及び/又はThは、より好ましくは、ポリエステルフィルムの加水分解抵抗性を制御するために、吸熱ピーク温度Tmetaが、240℃未満、より好ましくは180~230℃の間、更により好ましくは180~220℃の間に維持されるように選択される。
【0031】
本ポリエステルフィルムは、多層の、簡単な構造、又は共押出されたAB、ABA、又はABC、或いは更にはより複雑な構造のものであってよい(記号A、B、及びCは、異なる性質及び/又は異なる組成の層に対応する)。
【0032】
本発明はまた、フィルムが、
(C)少なくとも1種類のコポリエステル、好ましくはPET-Gを含む少なくとも1つのアモルファス層C、ここでPET-Gは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位及びシクロヘキサンジメタノール-CHDM-単位を含むコポリエステルである;
(B)・少なくとも1種類のコポリエステルPET-I、ここでPET-Iは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びイソフタル酸-IA-単位を含むコポリエステルである;及び
・場合によっては少なくとも1種類のポリエチレンテレフタレートPET;
を含む少なくとも1つのポリエステル層B;
(A)層Bと同一か又は異なり、少なくとも1種類のポリエステル、好ましくは少なくとも1種類のポリエステルのポリエチレンテレフタレートPET、及び場合によっては少なくとも1種類のコポリエステルPET-Iを含む少なくとも1つの層A、ここでPET-Iは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びイソフタル酸-IA-単位を含むコポリエステルである;
を含み;
(i)層C中のCHDM単位の濃度は、18~34モル%の間、好ましくは22~33モル%の間であり;
(ii)層B中のIA単位の濃度は、9モル%以上、好ましくは9~36モル%の間、より好ましくは11~18モル%の間であり;
(iii)層C、B、Aの少なくとも1つ、好ましくは層B及び/又は層Aは、μmで、次の範囲:好ましくは[2.0~12.0]、より好ましくは[3.0~10]、更により好ましくは[5.0~9.0]の中位径D50を有するフィラー粒子を含む;
場合の、好ましくはアルミニウム薄板材と異なる金属支持体を含む金属/多層二軸配向ポリエステルフィルム積層体にも関する。
【0033】
かかる支持体は、本発明によるフィルムに結合されている。
本発明の積層体が、N/mmで、次の範囲内:好ましくは[<5];より好ましくは[<4];更により好ましくは[<3]の、エルメンドルフ引裂抵抗試験機によって測定される引裂抵抗の減少を有することは興味深い。
【0034】
本発明による積層体は、好ましくは、mmで、次の範囲内:好ましくは[<1.0];より好ましくは[<0.8];更により好ましくは[<0.7]内の、金属基材と積層した後のフェザリングの減少を有することを特徴とする。
【0035】
本発明による積層体が、N/38mmで、次の範囲内:好ましくは[>4];より好ま
しくは[>5];更により好ましくは[>6]のシール力の増加を有することは注目すべきである。
【0036】
この積層体は、プルタブ又はステイオンタブによって開放するために開口することができる蓋によって閉止することができるような容器、例えば食品容器を製造するために用いることができる。
【0037】
而して、本発明はまた、本発明による積層体を製造する方法であって、多層二軸配向ポリエステルフィルムを、100~300℃の間の温度T1においてアルミニウム薄板材と異なる金属支持体と積層し、かかる積層は、好ましくは、誘導加熱工程、IRアニール工程、及び好ましくは水噴霧による冷却工程を含む上記方法にも関する。
【0038】
本発明は更に、上記に規定された積層体から製造される容器であって、金属支持体が容器の外壁である上記容器を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明による積層体アルミニウム/多層体の一例の断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書において、いずれの「単数形」も「複数形」として解釈することができ、逆も成り立つことを留意されたい。
本発明による多層ポリエステルフィルムは、上述の特性(a)~(g)の少なくとも1つが必要な包装用途のような種々の用途のために好適である。
【0041】
多層ポリエステルフィルム
例えば、本発明による多層ポリエステルフィルムは、3層のポリエステルフィルムC/B/Aである。
【0042】
これらの層を構成することができる二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば、
・ポリエチレンテレフタレートによって構成されるか;
・或いはこれらは、エチレン単位の代わりにシクロヘキシルジメチロール単位を含むポリエチレンテレフタレートコポリエステルの混合物(US-A-4,041,206又はEP-A-0408042を参照)であるか、又はそうではなく;
・或いは、イソフタレート単位を有するポリエステル部分を有するポリエチレンテレフタレートコポリエステル(PET-I)(EP-B-0515096を参照)の混合物から構成されるか、又は構成されず;
・或いは、セバケート単位を有するポリエステル部分を有するポリエチレンテレフタレートコポリエステル(PET-S)の混合物から構成されるか、又は構成されず;
・或いは、アジペート単位を有するポリエステル部分を有するポリエチレンテレフタレートコポリエステル(PET-A)の混合物から構成されるか、又は構成されず;
・或いは、共押出によって得られる、上記に記載した異なる化学的性質のポリエステルの幾つかの層によって構成される。
【0043】
芳香族ポリエステル(PET1、PET2、・・・)の具体例は、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(ジメチル-1,4-シクロヘキシレンテレフタレート)、及びポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートである。芳香族ポリエステルは、これらのポリマーのコポリマー、又はこれらのポリマーと少量の他の樹脂、例えば限定ではないがポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンドであってよい。
【0044】
好適な二軸配向フィルムは、例えば、キャストポリエステルフィルムを、ガラス転移温度よりも高いが、結晶化温度よりも低い温度において、縦方向においてその元の長さの2.5~5倍、横方向においてその元の幅の2.5~5倍に延伸し、次に延伸したフィルムを180~240℃の温度においてヒートセットすることによって製造することができる。より詳しくは、縦方向においてその元の長さの約3.3倍、横方向においてその元の幅の約3.3倍に延伸し、次に180~200℃の温度において張力下でヒートセットした二軸配向ポリエステルフィルムが、金属シートに積層されるその能力及びその後の成形性の観点で最適である。
【0045】
第1の接着剤/アモルファス層C
二軸配向フィルムの「第1の層」は、金属基材と直接接触するフィルムの層として規定される。この層Cは、或いは「接触層」、「結合層」、「接着層」、又は「接着剤層」と呼ぶことができる。
【0046】
PET-G
コポリエステルのPET-Gは、一方ではエチレングリコール-EG-単位及びシクロヘキサンジメタノール-CHDM-単位であるジオール単位、及び他方ではテレフタル酸-TA-単位である酸単位を含む。
【0047】
層Cは、少なくとも55重量%の1種類又は幾つかのアモルファスPET-Gコポリエステルを含む。
-CHDM-単位のモル%は、10~45モル%、好ましくは12~40モル%の範囲である。かかる範囲は、シール及び金属との接着強度に関して最適である。PET-Gは、シールを、より良好な予備接着を伴って例えば120~140℃から開始することを可能にする。
【0048】
PET
層Cはまた、少なくとも1種類のポリエチレンテレフタレートホモポリマーも含む。
C中のPET-G及びPETの重量%は、それぞれ、例えば60~90重量%の間、及び40~10重量%の間である。
【0049】
層Cの固有粘度(IV)は、例えば0.65~0.80dL/gの間である。
C層の厚さは、例えば0.7~3.0μmの間であり、多層ポリエステルフィルムの厚さの例えば18~30%を示す。
【0050】
層Cはまた、そのD50が1~5μmの間である0.1~5重量%の間のフィラー粒子も含んでいてよい。
更に、接着性の観点から、C層の中心線平均粗さRaは、好ましくは0.005~0.1μm、より好ましくは0.008~0.05μmの範囲である。
更に、1~100の間、好ましくは5~50の間の最大粗さRtの比、即ちRt/Raの比を選択することによって、高速加工能力を増大させることができる。
【0051】
第2の結晶性層B
層Bは、1つ又は幾つかのコポリエステルCP1、CP3、・・・CPnから構成することができる。
【0052】
CP1は、PET-X、例えばPET-I、及び/又はPET-S、及び/又はPET-A、及び/又はPET-DA、及び/又はPET-NAであってよい。
CP3は、PBT-X、例えばPBT-I、及び/又はPBT-S、及び/又はPBT
-A、及び/又はPBT-DA、及び/又はPBT-NAであってよい。
【0053】
好ましい態様においては、CP1はPZT-I(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-I(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-Iは、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びイソフタル酸-IA-単位である酸単位を含む。
【0054】
層Bには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Iコポリエステルを含ませることができる。
-IA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である。
【0055】
CP1はPZT-S(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-S(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-S-は、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びセバシン酸-SA-単位である酸単位を含む。
【0056】
層Bには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Sコポリエステルを含ませることができる。
-SA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である。
【0057】
CP1はPZT-A(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-A(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-A-は、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びアジピン酸-AA-単位である酸単位を含む。
【0058】
層Bには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Aコポリエステルを含ませることができる。
-AA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である。
【0059】
PET
層Bにはまた、少なくとも1種類のポリエステルPE1、好ましくはホモポリマー、より好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び場合によってはPE1と異なる他のポリエステルPE2を含ませることもできる。PET2は、例えばポリブチレンテレフタレートである。
【0060】
第1の可能性においては、B中のPET-X及びPETの重量%は、それぞれ、例えば80~100重量%の間、及び20~0重量%の間である。
第2の可能性においては、B中のPET-X、PBT-X、及びPETの重量%は、それぞれ、例えば20~80重量%の間、20~70重量%の間、及び20~0重量%の間である。
【0061】
層Bはまた、0.01~10重量%の間の、D50が2.5~10μmの間である粗大なフィラー粒子、及び場合によっては15重量%以下の、D50が0.01~5μmの間である微細粒子も含む。
【0062】
粗大なフィラー粒子は、層B、多層フィルム、及び積層体の製造物の、非粘着特性、取扱い性、及び加工性を増大させるのに特に有用である。
及び更には、粗大なフィラー粒子は、積層体のフェザリング性能に良好な影響を与える。
【0063】
微細粒子は、低温殺菌及び酸媒体抵抗性試験の後のマスキング特性(masking property)を向上させ、また良好な美観特性も得る役割を有する。
層Bの固有粘度(IV)は、例えば0.50~0.70dL/gの間である。
B層の厚さは例えば1.0~10.0μmの間であり、多層ポリエステルフィルムの厚さの例えば50~90%を示す。
【0064】
第3の層A
この層Aは、好ましくは層B及びCとは異なる。しかしながら、変形態様においては、層Aは層Bと同じであってよい。
【0065】
ポリエステルPE2、好ましくはPET
かかる層の好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーである。
【0066】
層Aにはまた、PE2と異なる少なくとも1種類のポリエステルPE3、好ましくはホモポリマー、より好ましくはポリエチレンテレフタレートを含ませることもできる。
層Aにはまた、1種類又は幾つかのコポリエステルCP2、CP3、・・・CPhを含ませることもできる。
【0067】
CP2は、PET-X、例えばPET-I、及び/又はPET-S、及び/又はPET-A、及び/又はPET-DA、及び/又はPET-NAであってよい。
CP3は、PBT-X、例えばPBT-I、及び/又はPBT-S、及び/又はPBT-A、及び/又はPBT-DA、及び/又はPBT-NAであってよい。
【0068】
好ましい態様においては、CP2はPZT-I(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-I(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-Iは、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びイソフタル酸-IA-単位である酸単位を含む。
【0069】
層Aには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Iコポリエステルを含ませることができる。
-IA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である。
【0070】
CP2はPZT-S(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-S(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-S-は、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びセバシン酸-SA-単位である酸単位を含む。
【0071】
層Aには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Sコポリエステルを含ませることができる。
-SA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である
【0072】
CP2はPZT-A(Zはエチレンに対応する)であってよく、CP3はPZT-A(Zはブチレンに対応する)であってよい。
コポリエステルのPZT-A-は、一方においてはエチレングリコール-EG-単位であるジオール単位、及び他方においてはテレフタル酸-TA-単位及びアジピン酸-AA-単位である酸単位を含む。
【0073】
層Aには、少なくとも50重量%の1種類又は幾つかのPZT-Aコポリエステルを含ませることができる。
-AA-単位のモル%は、9~36モル%、好ましくは11~18モル%の範囲である。
【0074】
第1の可能性においては、A中のPET及びPET-Xの重量%は、それぞれ、例えば90~100重量%の間、及び10~0重量%の間である。
第2の可能性においては、A中のPET、PET-X、及びPBT-Xの重量%は、それぞれ、例えば0~30重量%の間、30~80重量%の間、及び50~0重量%の間である。
【0075】
層Aにはまた、1~15重量%の間の、D50が2.5~10μmの間である粗大なフィラー粒子、及び場合によっては15重量%以下の、D50が0.01~5μmの間である微細粒子を含ませることもできる。
【0076】
層Aの固有粘度(IV)は、例えば0.50~0.70dL/gの間である。
A層の厚さは例えば0.5~5.0μmの間であり、多層ポリエステルフィルムの厚さの例えば5~20%を示す。
【0077】
構造
本発明で製造する二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム構造は、少なくとも2つの層C/B、3つの層C/B/A又はC/B/B、又は3つより多い層であってよく、積層体の厚さ比は下記に記載する範囲内であってよいが、2つの層C/B及び3つの層C/B/Aが好ましい。現在提唱されているフィルムは、μmで、次の範囲内:好ましくは[5~50];より好ましくは[7~30];更により好ましくは[9~20]の全厚さを有する。コア層Bの厚さ、層C及び外側層Aの厚さは、これらの2つが釣り合う値(the proportion of these two)であり、或いは3つの厚さを所期の最終用途に応じて変化させる
ことができる。通常は、二軸配向フィルムの全厚さは、約5~50ミクロンの範囲である。
【0078】
二軸配向ポリエステルフィルムを用いて1つ又は複数の金属薄板材との積層体を形成して、延伸加工によって形成される容器を製造する場合には、2つ/3つの層の合計厚さは、成形性を考慮して、好ましくは約7~30ミクロン、特に約9~20ミクロンの範囲である。かかるフィルムから製造される積層体が、高い耐腐食性が必要な用途において用いることを意図している場合には、コア層Bの厚さは約30ミクロンを超えてもよいが、殆どの用途においては約7~30ミクロン、好ましくは約9~20ミクロンの範囲である。接着剤層Cの厚さは、主として積層体の製造のために用いる金属シートの表面粗さに応じて変化する。しかしながら、金属シートが比較的平滑な表面のものである場合には、接着剤層Cの厚さは、所望の用途のためには少なくとも0.3~6ミクロン、好ましくは0.5~5.0マイクロメートル、より好ましくは0.7~4マイクロメートルであってよい。
【0079】
接着剤層Cの厚さは、好ましくはレトルト処理に対する所望の適応性のためには1.0ミクロンより大きくてよく、より好ましくは少なくとも2.0ミクロンであってよい。而して、全ての層に対する層Cの厚さの比は、次の%の範囲:[0.5~40];[0.8~25];[1.0~20]であってよい。
【0080】
層C内におけるコポリエステル(好ましくはPET-G)のレベルは、接着強度を向上させるためには好ましくは0.5%以上、及び金属/多層ポリエステルフィルム積層体から製造される容器の製造から構成される用途においてフェザリング性能を向上するためには好ましくは40%以下である。
【0081】
添加剤
更に、必要な場合には、多層二軸配向フィルムには、好ましくは次の群:ラジカルスキャベンジャー、難燃剤、染料、静電防止剤、酸化防止剤、有機潤滑剤、抗UV添加剤又は耐火添加剤、触媒、又は任意の他の同様の添加剤から選択される少なくとも1種類の他の添加剤を更に含ませることができる。
【0082】
抗UV添加剤は、著作物の"Additives for plastics on book, John Murphy, 2版, 2001, Elsevier Advanced Technology"に記載されているもののような公知の製品の幾つかの例から選択することができる。抗UV添加剤の例として、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾオキサジノン類、及びトリアジン類のような酸化防止剤又は吸収剤の群のもの;及び単独か又は酸化防止剤と組み合わせた「ヒンダードアミン光安定剤」(HALS)の群のものを言及することができる。これらの抗UV添加剤は、ポリエステルフィルムに対するUV及び酸素の影響を阻止するのに役立つ。
【0083】
表面処理
本発明の多層二軸配向フィルムは、接着性、静電防止性能、スリップ性、及び巻取り性能を向上させるために、少なくとも一方の面上に表面処理を与えることができる。表面処理は、物理的表面処理(例えば、UV、周囲空気下又はガスの存在下でのコロナ処理、真空蒸着、プラズマ処理、又はプラズマ支援気相化学堆積)、又は化学的表面処理(例えば、アクリル樹脂、コポリエステル、ポリエステル、又はポリウレタンベースの配合物の被覆)であってよい。
化学的表面処理は、共押出、押出被覆、フィルム製造プロセス中に横方向延伸の前に行うインライン被覆、又はオフライン被覆によって得ることができる。
【0084】
多層ポリエステルフィルムの製造
多層二軸配向フィルムは、好ましくは2段階プロセスで製造される。通常の商業的プロセスにおいては、これらの段階は直列で行われ、通常は連続的に実施される。明確にするために、3つの層で構成される多層フィルムをより詳細に議論するが、この原理を用いて4、5、又はそれ以上の層を有する多層フィルムを製造することができる。
【0085】
フィルム形成プロセスの2つの段階は、(1)多層キャストフィルムの製造;及び(2)その後の、上記で議論したプロセス及び比によるキャストフィルムの延伸;を含む。これは、通常は多層キャストフィルムを適当な温度に加熱し、次にフィルムを二軸延伸して、所望のフィルムの長さ、幅、及び厚さを達成することによって行われる。
【0086】
例えば、3層のキャストフィルムが3種類の異なる材料(それぞれの別の層に関するもの)から構成される場合には、3つの押出機、即ちそれぞれの異なる材料を供給するための専用の押出機を用いることが通常的であろう。異なる材料を多層の溶融ベイル(veil)として受容してキャストすることができる多層ダイを用いる。ベイルの種々の層の厚さは、それぞれの溶融材料を押出機からダイへ供給する速度によって制御することができる。例
えば、中央層の押出機の溶融体供給速度が他の押出機の両方の2倍である場合には、その層の割合が例えば約12%/67%/21%であるフィルムが製造されるであろう。キャストフィルムの全厚さは、溶融ポリマーの全供給速度と組合わせて、フィルムを引き出す全ライン速度によって制御することができる。
【0087】
押出及びフィルム形成のために用いられる殆どの材料は、ペレット又は粒状物の形態で供給及び/又は製造される。これらのペレットは、通常は長さが数ミリメートルである。それぞれの材料を、ホッパーを介して押出機の後端部を通して計量投入する。重力式ホッパー計量システムを用いて、材料の重量/時間供給速度を制御することができる。通常のキャストフィルム形成においては、それぞれの押出機のそれぞれのホッパーに1種類の粒状物のみを供給する。したがって、それぞれの層に関して異なる材料を用いる通常の3層キャストフィルムは、通常は合計で3種類の異なるペレットから製造されるであろう。しかしながら、ここで議論するように、層自体が1より多い種類の材料のブレンドから構成される状況が存在する。かかる状況においては、ブレンドを達成するための少なくとも2つの実用的手段が存在する。
【0088】
第1の方法は、単純に複数の材料のブレンド(即ち混合する複数の材料の単純な物理的ブレンド)を調製し、この低温のブレンドを押出機に直接供給することである。このアプローチを用いる場合には、低温のブレンドを適度に混合及びホモジナイズして、混合物をフィルムダイの供給ブロックに均一に供給することを、押出機によって行う。この方法は、フィルムへの材料を計量すること、及び低温のブレンドを均一に混合することの両方を可能にする押出機が必要である。多くの商業的なフィルム押出機は低温のブレンドを混合するのには特には適しておらず、通常は非常に劣った均一性を有するフィルムをもたらすので、このアプローチを用いる場合には注意を払わなければならない。1種類より多い材料のブレンドから構成される層を製造するより好ましい手段は、「コンパウンディング」によるものである。このプロセスにおいては、層中で用いる材料を適当な比で再び低温ブレンドし、材料の混合、ブレンド、又はコンパウンディングのために用いる押出機のホッパー中に供給する。
【0089】
これらの機械には、材料の混合及び分散を達成するようにデザインされている種々のスクリュー構造を含ませることができる。好適な混合押出機は、一軸又は二軸押出機のいずれかであってよく、また、混合物の過剰処理(overworking)(これによって分解が引き起
こされるであろう)を最小にしながら成分の有効な混合を与えることもできる。材料のブレンドがコンパウンディング押出機を通過したら、単一の完全に混合されたペレットが得られる。フィルム製造押出機内での更なる混合は必要ないので、この単一のペレットを次にフィルム製造において用いることができる。
【0090】
本発明の製造のための二軸配向ポリエステルフィルムは製造プロセスのために好都合に用いることができ、例えばこれは、アルミニウムシートに積層し、次に加工することによる食品包装用途のために理想的である。特に、これは、タンパク質を含む食品(例えば食品又は飲料)を保存するために、アルミニウムシートに積層して製造するためのフィルム
として好都合に用いることができる。
本明細書は以下の発明を包含する。
[1]
多層二軸配向ポリエステルフィルムであって、
(C)少なくとも1種類のコポリエステル、好ましくはPET-Gを含む少なくとも1つのアモルファス層Cであって、ここで、PET-Gは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位及びシクロヘキサンジメタノール-CHDM-単位を含むコポリエステルである、前記層C;
(B)少なくとも1つの層Bであって、
・少なくとも1種類のコポリエステルCP1、好ましくはPET-X、ここで、PET-Xは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、好ましくはイソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである;及び
・場合によっては少なくとも1種類のポリエステルPE1、好ましくはポリエチレンテレフタレートPET;を含む、前記層B;
(A)場合によっては、少なくとも1つの層Aであって、前記層Bと同一か又は異なり、少なくとも1種類のポリエステル、好ましくは少なくとも1種類のポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートPET、及び場合によっては少なくとも1種類のコポリエステルCP2、好ましくはPET-Xを含み、ここで、PET-Xは、ジオール単位がエチレングリコール-EG-単位を含み、酸単位がテレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、好ましくはイソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである、前記層A;を順番に含み;
(i)前記層C中の前記CHDM単位の濃度は、5~50モル%の間、好ましくは10~40モル%の間、より好ましくは15~35モル%の間であり;
(ii)前記層Bの融点は180~245℃の間である、上記フィルム。
[2]
前記層B中の前記DADFTA単位の濃度が、1モル%以上、好ましくは2~50モル%の間、より好ましくは3~25モル%の間である、[1]に記載のフィルム。
[3]
前記層B及び/又は前記層Aが、
・CP1及び/又はCP2と異なる少なくとも1種類のコポリエステルCP3、好ましくはポリブチレンテレフタレートPBT-X、ここでPBT-Xは、ジオール単位がブチレングリコ-ル-BG-単位を含み、酸単位が、テレフタル酸-TA-単位、及びテレフタル酸と異なる少なくとも1種類のジカルボン酸の単位(DADFTA単位)を含み、前記DADFTA単位が、好ましくは、イソフタル酸-IA-単位、セバシン酸-SA-単位、アジピン酸-AA-単位、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコポリエステルである;及び
・場合によっては、PE1と異なる少なくとも1種類のポリエステルPE2、好ましくはポリブチレンテレフタレートPBT;
を含む、[1]に記載のフィルム。
[4]
前記層Bと異なる層Aを含み、前記層Aは、少なくとも50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル樹脂の結晶性の層である、[1]に記載のフィルム。
[5]
前記層C、B、Aの少なくとも1つ、好ましくは前記層B及び/又は前記層Aが、μm
で、次の範囲:好ましくは[1.0~15.0]、より好ましくは[2.0~12.0]、更により好ましくは[3.0~10.0]の中位径D50を有するフィラー粒子を含む、[1]に記載のフィルム。
[6]
前記層C、B、Aの少なくとも1つ、好ましくは前記層B及び/又は前記層Aが、前記フィラー粒子と異なる微細粒子を含む、[1]に記載の積層体。
[7]
前記粒子が、好ましくは、酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム、酸化スズ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸アルミニウム、湿式及び乾式コロイダルシリカ及びアルミナ、スチレンを含むポリマー、シリコーン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンを含むポリマー、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群の無機及び/又は有機粒子の中から選択される、[5]又は[6]に記載のフィルム。
[8]
前記微細粒子が、%w/wで、次の濃度範囲:好ましくは[1~25];より好ましくは[2~20];更により好ましくは[3~10]の硫酸バリウム及び/又は酸化チタンの粒子を含む、[7]に記載のフィルム。
[9]
前記フィラー粒子が、μmで、次の範囲:好ましくは[2.0~12.0]、より好ましくは[3.0~10.0]、更により好ましくは[5.0~9.0]の中位径D50を有するSiO 2 粒子を含む、[7]に記載のフィルム。
[10]
全層の全体の固有粘度(IV)が、フィルム生成物のIVとして0.45~0.70dL/g、特に0.50~0.65dL/gの間である、[1]~[9]のいずれかに記載のフィルム。
[11]
前記C層の厚さが、μmで、次の範囲内:好ましくは[0.3~6.0];より好ましくは[0.5~5.0];更により好ましくは[0.7~4.0]である、[1]~[10]のいずれかに記載のフィルム。
[12]
前記C層の厚さが、全体のフィルム厚さの%で、次の範囲内:好ましくは[0.5~40];より好ましくは[0.8~25];更により好ましくは[1.0~20]である、[1]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]
エルメンドルフ引裂抵抗試験機によって測定される引裂抵抗の減少が、N/mmで、次の範囲内:好ましくは[<5];より好ましくは[<4];更により好ましくは[<3]である、[1]~[12]のいずれかに記載のフィルム。
[14]
金属基材と積層した後のフェザリングの減少が、mmで、次の範囲内:好ましくは[<1.0];より好ましくは[<0.8];更により好ましくは[<0.7]である、[1]~[13]のいずれかに記載のフィルム。
[15]
シール力の増加が、N/38mmで、次の範囲内:好ましくは[>4];より好ましくは[>5];更により好ましくは[>6]である、[1]~[14]のいずれかに記載のフィルム。
[16]
DSCによって測定される完全結晶化PETと比べたグローバル結晶化度が、%で、次の範囲内:好ましくは[<30];より好ましくは[<25];更により好ましくは[<20]である、[1]~[15]のいずれかに記載のフィルム。
[17]
前記B層に結合している前記C層の表面の反対側の前記C層の表面が表面処理によって処理されて、その表面張力が、mN/mで、次の範囲内:好ましくは[>40];より好ましくは[>45];更により好ましくは[>50]で増加している、[1]~[16]のいずれかに記載のフィルム。
[18]
[1]~[17]のいずれかに記載の多層二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法であって、かかる製造方法は、
(i)[1]~[17]のいずれかに規定するポリエステルを合成するか又は用意すること;
(ii)場合によっては前記ポリエステルを予備乾燥すること;
(iii)前記ポリエステルを加熱してそれを溶融し、それを展性にすること;
(iv)溶融した前記ポリエステルを、好ましくはフラットダイを通して多層フィルムで押出すこと;
(v)前記多層フィルムを、好ましくは冷却ドラム上で急速冷却(クエンチ)及び固化すること;
(vi)前記多層フィルムを、所定の延伸温度Tsにおいて縦方向及び横方向において二軸延伸すること;
(vii)二軸延伸したフィルムを所定の加熱温度Thにおいて加熱すること;
を含む上記方法。
[19]
好ましくはアルミニウム薄板材と異なる金属支持体を含む金属/多層二軸配向ポリエステルフィルム積層体であって、前記支持体は[1]~[17]のいずれかに記載のフィルムに結合されている、上記積層体。
[20]
[19]に記載の積層体を製造する方法であって、前記多層二軸配向ポリエステルフィルムを金属支持体と積層し、前記積層が、270℃以下、好ましくは265℃以下の温度T1における誘導加熱工程;270℃以下、好ましくは265℃以下の温度T2におけるIRアニール工程;及び好ましくは水噴霧による冷却工程を好ましくは含む、上記方法。[21]
[19]に記載の積層体から製造される容器であって、前記金属支持体が前記容器の外壁である上記容器。
【0091】
下記において、本発明の実施例を記載するが、これらの実施例はいかなるようにも本発明の解釈を限定しない。
【0092】
金属/ポリエステル積層体
本発明は、積層体、特に包装材を製造するための積層体を包含する。
本発明による積層体は、それぞれがそれらの独自の物理的な存在状態を有する異なる層の集合体に対応する。これは、ペースト化、積層、押出被覆、複合体化のような技術によ
って得られる。
【0093】
例示の目的で、添付の図1は、本発明によるアルミニウム/多層膜積層体の一例の断面概要図である。
【実施例
【0094】
(I)測定
固有粘度
所定量の試料(ポリマー又はフィルム)を、少なくとも120℃において、1,2-ジクロロベンゼン/フェノールの50/50の溶媒混合物100mL中に30分間かけて溶解することによって、試料溶液を得る。冷却した後、ウベローデ粘度計を用いて試料溶液の溶出時間を測定する。標準規格ISO-1628/5にしたがい、次の相関関係を用いて試料の固有粘度の値IVを計算する。
【0095】
純粋な溶媒混合物の粘度η0を、試料溶液の粘度ηと比較する。相対粘度ηrは、ηr=η/η0=t*ρ/t0*ρ0(t0及びρ0は溶媒混合物の溶出時間及び密度であり;t及びρは試料溶液の溶出時間及び密度である)によって与えられる。
【0096】
この実験においてはρ~ρ0であるので、したがって比粘度ηspに関して以下の等式が得られる:ηsp=ηr-1=(t-t0)/t0。ηspと固有粘度IVとの間の相関関係は、(ηsp/C)=IV+k*IV*C(ここで(ηsp/C)は粘度数であり;Cは溶液中のポリマーの濃度であり;kは定数である)によって与えられる。固有粘度IVは、粘度数(ηsp/C)を濃度Cの関数として測定することによって実験的に求めることができる。固有粘度IVは、濃度がゼロに近付いた(無限希釈)時の(ηsp/C)の値に対応する。
【0097】
粒子の中位径d 50
粒子の中位径d50(μmで表す)は、標準的な方法を用いて、MalvernからのmasterSizer上でレーザーによって測定した。この試験のために、試験片をリン酸含有水(1g/LのNa・10HO)と共にセル内に配置する。次に、セルを試験装置内に配置する。試験手順は自動であり、d50の値の数学的決定を含む。d50は、粒子の寸法の累積分布曲線によって求められる。分布曲線と縦座標50%との交点によって、横座標の軸上にd50の値が直接与えられる。
【0098】
粒子濃度(レーザー回折法)
最新のデータ処理及び自動化における進歩によって、これが工業的PSD測定において用いる主要な方法になった。レーザー回折は、分散された粒状物試料をレーザービームが通過する際に散乱する光の強度の角度変化を測定することによって、粒径分布を測定する。下記に示すように、大きな粒子はレーザービームに対して小さな角度で光を散乱させ、小さな粒子は大きな角度で光を散乱させる。次に、光散乱のMie理論を用いて、角度散乱
強度データを分析して散乱パターンの生起に関与する粒子の寸法を計算する。粒子の寸法は、等体積球相当径として報告する。
【0099】
試料としてシートを用い、蛍光X線元素分析装置(MESA-500Wタイプ、HORIBA, Ltdによって製造)を用いて、それぞれの粒子の特徴である粒子元素の含量を計算した。例えば、二酸化チタン含量は、チタン元素の量から換算した。
【0100】
光学特性(曇り度,TLT)(%)
ASTM-D1003に基づいて,曇り度計を用いて曇り度及びTLTを測定した。
融点(Tm)
融点は、示差走査熱量計DSC2(Perkin Elmerによって製造)を用いて測定した。10mgの試料を溶融し、窒素流下において280℃に5分間保持し、次に液体窒素を用いて急冷した。得られた試料を10℃/分の速度で加熱し、結晶の融解による吸熱ピーク温度を融点(Tm)としてとった。
【0101】
結晶化度(crystallinity ratio)(%)
示差走査熱量計DSC2(Perkin Almerによって製造)を用いて結晶化度を測定した。10mgの試料を溶融し、窒素流下において280℃に5分間保持し、次に液体窒素を用いて急冷した。得られた試料を10℃/分の速度で加熱し、結晶の融解による吸熱ピーク温度を融解エネルギー(J/g)(ΔHm)としてとった。次に、計算された結晶化度を、完全結晶化PET(full crystallinity PET)(140.1J/g)と比較する。結晶化度(%)=融解エネルギーΔHm/理論完全結晶化PET(theoretical full crystallinity PET)(140.1J/g)
ポリエステル単位の評価
試料のポリエステルを、試料を溶解することができる重水素化溶媒(例えばCFCOOD)中に溶解し、その化学シフトをH-NMRによって求め、それからそれぞれのエステル単位種及びそれらの比を計算した。それぞれの層のポリエステル単位を評価するために、評価するもの以外の層をプラズマ処理によって除去して、所望の層を分離した。
【0102】
層の厚さ
全体の厚さを厚さゲージによって測定し、予備処理を行い、ミクロトームを用いて共押出層の厚さ方向の断面を切断した。その後、Hitachi, Ltd.によって製造されている電界
放出走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-800を用いて、厚さ断面を、厚さ断面の概観を撮
像することができる倍率(1000倍)で画像キャプチャーして、断面写真の厚さを測定した。顔料又は粒子を含むB層又はA層は、白色の層として画像キャプチャーすることができる。
【0103】
シール特性
ASTM-F1921に基づいて、次の条件:シール温度=高温の上部及び下部ジョーに関して140℃;シール時間=1秒;シール圧力=0.5N/mm;試料幅=38mm;を用いて、ホットタック装置によってシール力を測定した。
【0104】
引裂抵抗(N/mm)
引裂抵抗を測定する前に、試料試験片をオーブン内において230℃で30秒間処理して、金属積層をシミュレートする。次に、ASTM-D1922に基づいて、エルメンドルフ引裂試験機によって980mNの荷重を用いて引裂抵抗を測定した。
【0105】
フェザリングの評価(mm)
フェザリング試験は次のように説明される。フェザリングを試験するために、「フィルム積層試験片(10cm×21cm)」を、A4シート上の3つの所望の位置から切断する。試験片は、低温殺菌の前後に試験する。低温殺菌後の試料を冷却し、試験片に裏面から2つの異なる位置で切れ目を入れ、プライヤーで裏面から巻き上げる。積層シートを巻き上げた後、試験パネル上の縁から伸長するフィルムを測定する。最も大きな突出部 (penetration)(フェザリング)の距離をmmで報告する。イージーオープン型の食品又は飲料用缶の蓋のフィルム積層体は、好ましくは1.0mmより小さく、より好ましくは0.8mmより小さく、最も好ましくは0.7mmより小さいフェザリングを示す。本発明の幾つかの好ましいフィルムは、上記に記載のように試験した際に0.2~0.6mmのフェザリングを示した。
【0106】
実施例
下記の表1~4は、本発明による実施例(表1及び2)並びに比較例(表3及び4)の金属/多層ポリエステルフィルム積層体の組成及び構造、並びにこれらの積層体の評価の結果を与える。
【0107】
実施例1~6、8、12~13
層A:
ポリエステルAのチップはポリエチレンテレフタレートから製造される(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=3重量%、及びD50=5.2ミクロン)。かかるPETは、凝集シリカ粒子を含むエチレングリコールスラリーを、190℃において2時間熱処理し、エステル化反応の終了の後にスラリーを加え、次に重縮合反応を行うことによって得られる。特定量のこれらのチップを秤量した後、180℃において3時間真空下で乾燥し、一軸押出機に供給した。
【0108】
層B:
ポリエステルBのチップはポリエチレンイソフタレート12モル%を用いて製造される(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)。かかるPET-Iは、凝集シリカ粒子を含むエチレングリコールスラリーを、190℃において2時間熱処理し、エステル化反応の終了の後にスラリーを加え、次に重縮合反応を行うことによって得られる。特定量のこれらのチップを秤量した後、乾燥することなく二軸押出機に供給した。
【0109】
層C:
PET-Gのチップは、Eastman Chemical Companyによって供給されるコポリエステル樹脂であるPET-G EASTAR(登録商標)6763のチップである。この樹脂は、ジオール
ブレンドの全モル数を基準として33モル%のCHDM、及び67モル%のエチレングリコール(EG)を含む。PET-G EASTAR(登録商標)6763のこれらのチップを、次に
PETによって28モル%まで希釈する。
【0110】
チップA及びBを真空下180℃において3時間乾燥して、それぞれの一軸押出機I及びIIに供給し、チップCは、真空下65℃において72時間乾燥して、一軸押出機IIIに供給する。
【0111】
これらのチップから得られるフィルムを通常のダイから排出し、静電ピニング(7kV)を行いながら、鏡面状の冷却ドラム上で冷却及び固化する。PET-Gを含む未延伸のフィルムが製造される(ドラム回転速度=40m/分)。この未延伸のフィルムを、105℃の温度において長さ方向において3.2倍延伸し、次に40℃に冷却する。その後、フィルムを115℃の温度において5秒間予備加熱し、次に同じ温度において幅方向において3.6倍延伸し、その後190℃において5秒間の5%緩和熱処理を行い、実施例1の12μmの厚さの二軸配向ポリエステルフィルムを生成させる。
アルミニウム薄板材と積層した後、かくして得られる積層体のM/C/B/Aを、その有利な特性と一緒に表1に示す。
【0112】
実施例7、9
層Cは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルPET-G+PET-Iを含む:PET-Gのチップは、Eastman Chemical Companyによって供給されるコポリエステル樹脂であるPET-G EASTAR(登録商標)6763のチップである。この樹脂は、ジオ
ールブレンドの全モル数を基準として33モル%のCHDM、及び67モル%のエチレングリコール(EG)を含む。PET-G EASTAR(登録商標)6763のこれらのチップを、
次にPET及びPET-Iによって28及び16.5モル%まで希釈する。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0113】
実施例10~11
フィルムC/B/Aは、層Aが層Bと同一である他は実施例1~6、8に関して記載されているように製造される。
【0114】
実施例12
層Bは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルのPET-I及びPBTを含む。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0115】
PBTのチップは、ポリブチレンテレフタレートから製造される(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)。
【0116】
実施例13
層Bは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルのPET-I及びPBT-Iを含む。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0117】
PBT-Iのチップは、65モル%ポリブチレンテレフタレート及び35モル%イソフタレートから製造される(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)。
【0118】
実施例14~19、21
フィルムC/B/Aは、B及び/A層中の低融点のポリマーの効果を確認するために、層Bにおいてコポリエステルがポリエチレンセバシン酸から製造されるPET-Sである(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)他は、実施例1~9、12~13に関して記載されているように製造される。表面は、コロナ処理装置によって、幾つかの条件を用いて処理される。評価の結果を表2に示す。
【0119】
実施例20、22
層Cは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルのPET-G及びPET-Iを含む。PET-Gのチップは、Eastman Chemical Companyによって供給されるコポリエステル樹脂であるPET-G EASTAR(登録商標)6763のチップである。この樹脂は、
ジオールブレンドの全モル数を基準として33モル%のCHDM、及び67モル%のエチレングリコール(EG)を含む。PET-G EASTAR(登録商標)6763のこれらのチップ
を、次にPET及びPET-Iによって28及び16.5モル%まで希釈する。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0120】
実施例23~24
フィルムC/B/Aは、層Aが層Bと同一である他は実施例14~19、21に関して記載するようにして製造される。
【0121】
実施例25
層Bは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルのPET-I及びPBTを含む。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0122】
PBTのチップは、ポリブチレンテレフタレート(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)から製造される。
【0123】
実施例26
層Bは、下記に記載するようにして得られるコポリエステルのPET-I及びPBT-Iを含む。PET-Iのチップは実施例1と同じ方法である。
【0124】
PBT-Iのチップは、65モル%ポリブチレンテレフタレート及び35モルイソフタレート(三酸化アンチモン触媒、固有粘度=0.65、シリカ濃度=0.05重量%、及びD50=5.2ミクロン)から製造される。
【0125】
比較例1~26
実施例1~26におけるものと同じようにして、ポリエステルの幾つかのタイプ及び粒子を表3及び4に示すものに変化させてフィルム製造を実施することによってフィルムを得た。
【0126】
表1、2、及び表3、4から、比較例1~26からのフィルムは、これらの特性、特にフェザリング性能及びシール力において劣っていたことが分かる。
これに加えて、比較例9~13、22~26においては、積層体M/C/B/Aの140℃におけるシール力を測定することはできなかった。
【0127】
表中において、用いた記号は以下の意味を有していた。
PET:ポリエチレンテレフタレート;
PET/I:共重合したイソフタル酸を有するポリエチレンテレフタレート;
PET/S:共重合したセバシン酸を有するポリエチレンテレフタレート;
PET/N:共重合したナフタレンジカルボン酸(NDC)有するポリエチレンテレフタレート;
PET/G:共重合した[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メタノールを有するポリエチレンテレフタレート;
PBT:ポリブチレンテレフタレート;
PBT/I:共重合したイソフタル酸を有するポリブチレンテレフタレート。
【0128】
【表1-1】
【0129】
【表1-2】
【0130】
【表2-1】
【0131】
【表2-2】
【0132】
【表3-1】
【0133】
【表3-2】
【0134】
【表4-1】
【0135】
【表4-2】
図1