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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】水中マスク
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/12 20060101AFI20230926BHJP
   A63B 33/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B63C11/12
A63B33/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021204775
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2023090040
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391042128
【氏名又は名称】鬼怒川パシフィック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100073483
【弁理士】
【氏名又は名称】八鍬 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100164286
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚隆
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3145414(JP,U)
【文献】登録実用新案第3038946(JP,U)
【文献】中国実用新案第207274942(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/12
A63B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面に密着する良好な弾性を有する材料によって作製され、前記顔面に密着可能なスカート部と、目を覆うレンズが水密状に装着可能なレンズ取付部と、鼻全体を覆うノーズポケット部と、を少なくとも具備してなるマスク本体、を含む水中マスクであって、
前記マスク本体における前記ノーズポケット部の両脇に沿った部分には、指が挿入可能な凹部が顔面側に突出して形成され、
前記凹部は、前記ノーズポケット部の両脇から前記スカート部の周縁端部に亘って、前記スカート部の周縁端部に向かう接線ベクトルが下方又は顔面側への方向成分を有した状態で顔面側に向かって延びる面を有し、
前記凹部は、前記ノーズポケット部の両脇に沿った部分から前記スカート部に向かうにつれて顔面方向の厚みが小さくなる第1凹部と、前記第1凹部から前記スカート部の周縁端部に向かうにつれて顔面方向の厚みが大きくなる第2凹部と、を有し、
前記第2凹部は、当該第2凹部の幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する、ことを特徴とする水中マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の水中マスクにおいて、
前記マスク本体は、前記レンズ取付部から前記スカート部に亘って顔面側とは反対側に突出し、前記反対側から頬を覆うための突出部をさらに有し、
前記突出部は、前記レンズ取付部から前記スカート部に向かうにつれて顔面方向の厚みが小さくなるとともに幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する、ことを特徴とする水中マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシュノーケリングやスキンダイビング、あるいはスキューバダイビングやフリーダイビングの際に用いられる水中マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に水中マスクとは、額から上唇の上部までの目鼻を覆い顔面に装着するマスクをいう。シュノーケリングやスキューバダイビングに代表されるマリンスポーツにはこのような水中マスクが不可欠である。このような水中マスクとして、例えば、特許文献1に記載のようなダイビングマスクが知られている。
【0003】
このような水中マスクは一般に、目を覆うレンズと、このレンズを取り囲むフレームと、鼻を収納するためのノーズポケットと、フレームおよびノーズポケットから外周に延びるスカート部とを有している。
【0004】
このような水中マスクを装着することにより、スイミング用ゴーグルなどを装着した場合と同様に、目と水や海水の間に空気層を設け、はっきりとした視界が得られずボヤケたり、像がゆがんでしまうのを抑制することができる。
【0005】
また、水中に潜行・潜水をする場合、水圧の影響で鼓膜に圧力が掛かり、深さが増すにつれ、水圧が強くなりそのまま放置すると鼓膜が破れることがある。このような事態を未然に防ぐため、鼓膜の内外の圧力を均等にする一般的にいう耳抜きという技術を使い鼓膜への圧力を軽減させる行為が必要となることがある。
【0006】
このため特許文献1に記載の水中マスクのノーズポケットの幅方向両脇とレンズとの間には、それぞれ鼻の穴を指でつまむための指先が収まる凹部が形成されている。
【0007】
前記した鼓膜の内外の圧力を均等にする耳抜きの行為をする際、一般的には潜行・潜水中に鼓膜に外側から内側への水圧が掛かかったら、水中マスクの外側(ノーズポケット)から鼻をつまみ鼻の穴から空気が漏れないようにし、鼻をかんで鼻腔内の圧力を高め、鼓膜に掛かった水圧の負荷を内側から外側に押し出し、鼓膜の負担を軽減させる。
【0008】
前記した鼻をつまんで鼻の穴を塞ぐためにノーズポケットの左右脇の凹部は、概ね顔面に対して垂直方向に凹んだ状態で形成されており、左手右手のどちらの指先でも挿入し収まるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-094030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の水中マスクでは、指を顔面に対して垂直方向から挿入する場合、ノーズポケットの両脇とレンズとの間に指を挿入する必要があり、指先が鼻脇を越え顔面に接触するほど奥側に挿入し難い為、鼻の穴を摘まんで塞いでいるつもりが、しっかりと鼻の穴を摘まんで塞げないことがあった。このため、鼓膜の内外の圧力を均等にする耳抜きが出来ず鼓膜を痛めたり、出血させたり、ひどい状況では鼓膜が破れてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ノーズポケット部の幅方向両脇に形成された凹部の奥側にまで指先を挿入し易くし、しっかりとノーズポケット部をつまむことができる水中マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明に係る水中マスクは、顔面に密着する良好な弾性を有する材料によって作製され、前記顔面に密着可能なスカート部と、目を覆うレンズが水密状に装着可能なレンズ取付部と、鼻全体を覆うノーズポケット部と、を少なくとも具備してなるマスク本体、を含む水中マスクであって、前記マスク本体における前記ノーズポケット部の両脇に沿った部分には、指が挿入可能な凹部が顔面側に突出して形成され、前記凹部は、前記ノーズポケット部の両脇から前記スカート部の周縁端部に亘って、前記スカート部の周縁端部に向かう接線ベクトルが下方又は顔面側への方向成分を有した状態で顔面側に向かって延びる面を有し、前記凹部は、前記ノーズポケット部の両脇に沿った部分から前記スカート部に向かうにつれて顔面方向の厚みが小さくなる第1凹部と、前記第1凹部から前記スカート部の周縁端部に向かうにつれて顔面方向の厚みが大きくなる第2凹部と、を有し、前記第2凹部は、当該第2凹部の幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する、ことを特徴とする(請求項1)
【0013】
この水中マスクによれば、マスク本体におけるノーズポケット部の幅方向の両脇に形成された凹部が、前記凹部は、前記ノーズポケット部の両脇から前記スカート部の周縁端部に亘って、前記スカート部の周縁端部に向かう接線ベクトルが下方又は顔面側への方向成分を有した状態で顔面側に向かって延びる面を有するので、ノーズポケット部の幅方向の両脇から前記スカート部にかけて、特に凹部とスカート部との段差を軽減することができる。このため、水中マスクの装着状態において、従来は鼻全体を覆うノーズポケット部の両脇にある凹部に顔面から垂直方向からしか指先を挿入できなかったが、本発明によれば凹部とスカート部との間の段差を軽減し下方向から凹部への指の挿入を可能とすることができる。
【0014】
したがって、指を凹部に対して顔面方向から挿入する場合に比べて、指がノーズポケット部とレンズフレームとの間に挟まるのを抑制し、ノーズポケット部の幅方向両脇に形成された凹部の奥側にまで指先を挿入し易くし、しっかりとノーズポケット部をつまむことができる。
【0016】
従来は当該箇所が顔面に対し平面で接触していた為、水面近くで呼吸をする際に用いるスノーケルや水中で呼吸をする際に用いる空気タンクから呼吸用の空気を吸うレギュレーター(減圧呼吸器)を咥える際、ほうれい線とも呼ばれるシワが出来てしまい、水中マスク外周端面と顔面との接触面に隙間が出来、その隙間から水中マスク内へ漏水が発生するという問題があった。
【0017】
この構成によれば、凹部は、ノーズポケット部の幅方向の両脇からスカート部に向かうにつれて方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有するので、凹部の突起面(水中マスクの装着状態において顔面側の面)をほうれい線と呼ばれるシワに追従させることが出来、結果として水中マスク外周端面と顔面の接触面との間の隙間を小さくし、水中マスクの外側から内側への水の侵入を抑制することができる。
【0018】
前記水中マスクにおいて、前記マスク本体は、前記レンズ取付部から前記スカート部に亘って顔面側とは反対側に突出し、前記反対側から頬を覆うための突出部をさらに有し、前記突出部は、前記レンズ取付部から前記スカート部に向かうにつれて顔面方向の厚みが小さくなるとともに幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する、のが好ましい(請求項)。
【0019】
水中マスクを装着し遊泳、潜水、潜行する場合、一般的には水面近くで呼吸をする際に用いるスノーケルや水中で呼吸をする際に用いる空気タンクから呼吸用の空気を吸うレギュレーター(減圧呼吸器)を咥え遊泳、潜水、潜行するがその場合、必然的に小頬骨筋や大頬骨筋が収縮し頬が隆起する。そのことにより、水中マスクと顔面が接触している水中マスク端面の頬周辺が顔面から浮き上がり剥離してしまい、水中マスクと顔面との間に水が浸入してしまう事がある。
【0020】
この構成によれば、顔面から離間して顔面の外側にレンズを取り付けているレンズ取付部からスカート部に亘って顔面方向とは反対方向に突出し頬を覆うための突出部が、レンズ取付部からスカート部に向かうにつれて幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有するので、顔面の頬と水中マスクの内側(顔面側)とが接触するのを抑制することができる。このため、水中マスクと顔面の頬とが接触してスカート部の周縁部が顔面から浮き上がってこの周縁部から水中マスクの内側に水が浸入するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の水中マスクによれば、ノーズポケット部の幅方向両脇に形成された凹部の奥側にまで指先を挿入し易くし、しっかりとノーズポケット部をつまむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の水中マスクの正面図である。
図2】前記水中マスクの側面図である。
図3】前記水中マスクに係るマスク本体の正面図である。
図4図3のA-A’断面図である。
図5】前記水中マスクの背面図である。
図6図5のB-B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る水中マスク1について図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
なお、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための水中マスク1の一例を示すに過ぎないものであって、本発明は以下の説明及び図示したものに限定されるものではない。特に、実施の形態及び図面に示されている構成部品の形状、相対的配置関係等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎないものである。
【0025】
また、以下説明のために、図1の紙面左右方向を幅方向、図1の紙面前後方向を顔面方向と、記載することがある。
【0026】
水中マスク1は、図1に示すように、顔面に密着する良好な弾性を有する材料によって作製されたマスク本体10と、ユーザがマスク本体10を装着した状態において使用者が水中マスク1の内側から外側を目視するためのレンズ6と、レンズ6をマスク本体10に保持するためのレンズフレーム7と、を含む。
【0027】
このマスク本体10は、図1に示すように、レンズ6を水密状に嵌着可能なレンズ取付部3と、前記レンズ取付部に挟まれた位置に形成されているとともに鼻全体を覆うことが可能なノーズポケット部4と、前記ノーズポケット部4から延びて顔面に密着可能なスカート部2と、を含む。
【0028】
このマスク本体10におけるノーズポケット部4の幅方向の両脇には、図1,5,6に示すように、指が挿入可能な凹部20が顔面側(図1の紙面奥側)に突出して形成されている。
【0029】
また、マスク本体10には、図1,2,3に示すように、レンズ取付部3からスカート部2に亘って顔面側に突出して形成されているとともに頬を覆うための突出部30がさらに形成されている。
【0030】
マスク本体10は、例えばシリコーンゴムのような顔面に密着する良好な弾性を有する高分子材料によって作成されている。なお、マスク本体10を構成する高分子材料は、顔面に密着する良好な弾性を有するものであれば、シリコーンゴムに限られずその他の高分子材料を用いることができる。
【0031】
スカート部2は、顔面に密着することにより、当該スカート部2と顔面との間を通じたマスク本体10の内部(マスク本体10の装着状態においてマスク本体10と顔面との間に形成される空間)への水の侵入を規制するための部位である。
【0032】
このスカート部2は、ノーズポケット部4及びレンズ取付部3からマスク本体10の周囲に向かって延びるように形成されており、また、マスク本体10の周囲に向かうにつれて顔面側に向かって広がる形状を有している。
【0033】
スカート部2の周縁端部が顔面と密着することにより、当該スカート部2と顔面との間を通じたマスク本体10の内部への水の侵入が規制される。
【0034】
レンズ取付部3は、図3に示すように、レンズ6を水密状に嵌着するための部位である。
【0035】
具体的にレンズ取付部3は、図3に示すように、レンズ6を嵌め込むための嵌め込み溝を有する。
【0036】
レンズ6をレンズ取付部3に嵌着する際は、レンズ取付部3をその弾性力により伸ばしてこの嵌め込み溝に嵌め込む。そして、レンズ6は、その周囲からレンズ取付部3に囲まれて、嵌着される。
【0037】
このため、レンズ取付部3の顔面外側(図3の紙面左側)の端縁は、レンズ6の端縁の大きさよりもやや小さくされており、嵌め込み溝の端縁は、レンズ6の端縁の大きさとほぼ同じ大きさにされている。
【0038】
レンズ6を嵌め込み溝に嵌め込んだ状態で図1、2に示すように、レンズ取付部3にレンズフレーム7を取り付けることにより、レンズ6をレンズ取付部3とレンズフレーム7との間に保持することができる。
【0039】
ノーズポケット部4は、顔面の鼻を外側から覆うための部位であり、ノーズポケット部4の大きさは、鼻全体を収納することができるように鼻の大きさよりもわずかに大きく形成されている。ノーズポケット部4は、良好な弾性を有するので、このノーズポケット部4を、幅方向から指でつまむことによりノーズポケット部4の外側からでも鼻の穴を塞ぐことができる。
【0040】
凹部20は、図3に示すように、マスク本体10におけるノーズポケット部4の幅方向の両脇に沿って顔面側(水中マスク1の装着状態において顔面に向かう方向)に突出して形成されており、ノーズポケット部4の幅方向の両脇に沿って延びてスカート部2の周縁端部に亘って形成されている。
【0041】
凹部20は、図6に示すように、マスク本体10におけるノーズポケット部4の両脇に沿った部分からスカート部2に向かうにつれて顔面方向の厚みが小さくなる第1凹部20aと、第1凹部20aからスカート部2の周縁端部に向かうにつれて顔面方向の厚みが大きくなる第2凹部20bと、を有する。
【0042】
第1凹部20aは、図3,5に示すように、その幅方向の長さが長くなるように変化しながら広がる形状を有し、第2凹部20bは、その幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する。
【0043】
これにより、第1凹部20aと第2凹部20bとの境界部分の曲げ変形を大きくし、水中マスク1の装着時における、顔面とマスク本体10との密着性を向上させることができる。
【0044】
なお、第1凹部20aと第2凹部20bとの境界部分は、ノーズポケット部4の下端部(スカート部2側の端部)の両脇に位置するのが好ましい。すなわち、第1凹部20aは、ノーズポケット部4に沿って、ノーズポケット部4の下端部(スカート部2側の端部)に亘って形成されるのが好ましい。
【0045】
第1凹部20aと第2凹部20bとの境界部分は、凹部20において、幅方向の長さが最も長く、顔面方向の厚みが最も小さい。このような境界部分において、凹部20は、指一本が挿入可能な幅を有する。
【0046】
凹部20は、図6に示すように、ノーズポケット部4の両脇からスカート部4の周縁端部に亘って、スカート部4の周縁端部に向かう接線ベクトルが下方b又は顔面側fへの方向成分を有した状態で顔面側fに向かって延びる面hを有する。この面hは、第1凹部20aと第2凹部20bとに亘って形成されている。
【0047】
面hの接線ベクトルが、下方b又は顔面側fへの方向成分を有した状態で、面hが顔面側fに向かって延びている。具体的に、面hは、図6に示すように、レンズ取付部3の前端面に対して傾斜している。よって、凹部20におけるノーズポケット部4の両脇に沿った部分からスカート部2の周縁端部にかけての段差(顔面前方への突出)が軽減されている。
【0048】
このため、凹部20内に対して、前方からだけでなく下方からも指を容易に挿入することができる。具体的に、マスク1の装着状態において、マスク1の下方から凹部20に指を挿入することができ、この挿入した状態でノーズポケット部4及び鼻をつまみ、耳抜きを行うことができる。したがって、マスク1の前方から凹部20に指を挿入する場合に比べて、フレーム7が干渉しにくく、より確実に耳抜きを行うことができる。
【0049】
突出部30は、図1~3に示すように、マスク1の外側に向かって突出する形状を有しており、マスク本体10におけるレンズ取付部3の周縁部から下方に亘って形成されている。
【0050】
突出部30は、レンズ取付部3からスカート部4に向かうにつれて顔面方向fの厚みが小さくなるとともに幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有する。
【0051】
具体的に、突出部30は、図2に示すように、レンズ取付部3の下端部から下方に向かってレンズ取付部3の前端面に対して傾斜しながら延びてスカート部2に接続されている。
【0052】
また、この突出部30は、図1に示すように、レンズ取付部3の下端部からスカート部4に亘って、その幅方向の長さが短くなるように、形成されている。
【0053】
また、突出部30は、レンズ取付部3からスカート部4に向かうにつれて顔面方向fの厚みが小さくなるように形成されているので、撓み変形がしやすくなり、水中マスク1の装着状態において、頬との間の密着性を向上させることができる。
【0054】
レンズ6は、マスク本体10の幅方向の左右に1枚ずつ設けられる。このレンズ6は、水を通さずかつ、水中マスク1の装着状態において内側(顔面側)から外側を視認することができる透明、又は半透明のものが用いられる。また、レンズ6としては、水中マスク1の外側から内側への紫外線量を低減するUVカット機能を有するもの、着色されているもの、ミラー加工(蒸着加工)されているもの、透明性の高いクリアガラスなどを用いてもよい。また、レンズ6の素材は、ガラス、樹脂などを用いることができる。
【0055】
レンズフレーム7は、一対のレンズ6,6をマスク本体10に固定するためのものである。具体的に、レンズ6を、レンズ取付部3に保持した状態で、このレンズ6をレンズフレーム7とレンズ取付部3との間で挟み込むことで、レンズ6をマスク本体10に固定することができる。
【0056】
レンズフレーム7には、図示しない、ネジ穴が設けられており、このネジ穴からネジを挿入し、レンズ6をレンズ取付部3との間で挟んだ状態で、レンズ取付部3に螺合することによりレンズフレーム7をレンズ6とともにレンズ取付部3に固定することができる。
【0057】
このレンズフレーム7は、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂のような耐衝撃性に優れた特性を発現する硬質合成樹脂によって作成される。また、レンズフレーム7の素材として用いることができるものは、このような樹脂に限られず、切削加工やプレス成型の金属(ステンレス、チタン、アルミなど)を用いてもよい。
【0058】
(作用効果)
本実施形態に係る水中マスク1によれば、マスク本体10におけるノーズポケット部4の幅方向の両脇に形成された凹部20が、凹部20は、ノーズポケット部4の両脇からスカート部2の周縁端部に亘って、スカート部2の周縁端部に向かう接線ベクトルが下方u又は顔面側fへの方向成分を有した状態で顔面側fに向かって延びる面hを有するので、ノーズポケット部4の幅方向の両脇からスカート部2にかけて、特に凹部20とスカート部2との段差を軽減することができる。このため、水中マスク1の装着状態において、従来は鼻全体を覆うノーズポケット部4の両脇にある凹部20に顔面から垂直方向(前方)からしか指先を挿入できなかったが、実施形態に係る水中マスク1によれば凹部20とスカート部4との間の段差を軽減し下方向uから凹部20への指の挿入を可能とすることができる。
【0059】
したがって、指を凹部20に対して顔面方向から挿入する場合に比べて、指がノーズポケット部4とレンズフレーム7との間に挟まるのを抑制し、ノーズポケット部4の幅方向両脇に形成された凹部20の奥側にまで指先を挿入し易くし、しっかりとノーズポケット部4をつまむことができる。
【0060】
従来は凹部20が顔面に対し平面で接触していた為、水面で呼吸をする際に用いるスノーケルや水中で呼吸をする際に用いる空気タンクから呼吸用の空気を吸うレギュレーター(減圧呼吸器)を咥える際、ほうれい線とも呼ばれるシワが出来てしまい、水中マスク外周端面と顔面との接触面に隙間が出来、その隙間から水中マスク1内へ漏水が発生するという問題があった。
【0061】
凹部20は、ノーズポケット部4の両脇に沿った部分からスカート部2に向かうにつれて顔面方向fの厚みが小さくなる第1凹部20aと、第1凹部20aからスカート部2の周縁端部に向かうにつれて顔面方向fの厚みが大きくなる第2凹部20bと、を有し、第2凹部20bは、当該第2凹部20bの幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有するので、凹部20の突起面(水中マスクの装着状態において顔面側の面)をほうれい線と呼ばれるシワに追従させることが出来、結果として水中マスク1外周端面と顔面の接触面との間の隙間を小さくし、水中マスク1の外側から内側への水の侵入を抑制することができる。
【0062】
水中マスク1を装着し遊泳、潜水、潜行する場合、一般的には水面で呼吸をする際に用いるスノーケルや水中で呼吸をする際に用いる空気タンクから呼吸用の空気を吸うレギュレーター(減圧呼吸器)を咥え遊泳、潜水、潜行するがその場合、必然的に小頬骨筋や大頬骨筋が収縮し頬が隆起する。そのことにより、水中マスク1と顔面が接触している水中マスク1端面の頬周辺が顔面から浮き上がり剥離してしまい、水中マスク1と顔面との間に水が浸入してしまう事がある。
【0063】
マスク本体1は、レンズ取付部3からスカート部2に亘って顔面側fとは反対側に突出し、反対側から頬を覆うための突出部30をさらに有し、突出部30は、レンズ取付部3からスカート部2に向かうにつれて顔面方向fの厚みが小さくなるとともに幅方向の長さが短くなるように変化しながら消滅する形状を有するので、顔面の頬と水中マスク1の内側(顔面側f)とが接触するのを抑制することができる。このため、水中マスク1と顔面の頬とが接触してスカート部2の周縁部が顔面から浮き上がってこの周縁部から水中マスク1の内側に水が浸入するのを抑制することができる。
【0064】
(変形例)
前記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0065】
例えば、前記実施形態では、レンズ6としては、左右で分離したものが用いられるが、レンズ6として用いられるレンズはこのようなレンズ6に限られない。例えば、レンズ6として、左右で一体に形成されているものを用いてもよい。この場合、レンズフレーム7及びレンズ取付部3の形状もレンズ6の形状に合わせて形成される。
【0066】
また、前記実施形態では、レンズフレーム7によりレンズ6をマスク本体10のレンズ取付部3に保持する構成を有する水中マスク1を用いたが、水中マスク1は、必ずしもレンズフレーム7を有している必要はない。
【0067】
この場合、レンズ6をレンズ取付部3の嵌め込み溝に嵌め込み、レンズ6を嵌め込み溝に嵌着することにより、またはレンズ6を嵌め込み溝に対してネジ等により螺合することにより、またはレンズ6と嵌め込み溝とを接着剤などで接着することにより、レンズ6をレンズ取付部3に取り付けてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、凹部20は、スカート部2の周縁端部に向かって、延びて形成されていたが、この凹部20は、スカート部2の周縁端部にまで延びて形成されていてもよい。
【0069】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1 水中マスク1
2 スカート部
3 レンズ取付部
4 ノーズポケット部
6 レンズ
7 フレーム
10 マスク本体
20 凹部
20a 第1凹部
20b 第2凹部
30 突出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6