(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/428 20060101AFI20230926BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K31/428
A61P19/06
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2021563960
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045562
(87)【国際公開番号】W WO2021117697
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019221892
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592197599
【氏名又は名称】株式会社富士薬品
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】児玉 敬
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-074017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/40
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゾイル)-1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール[ドチヌラド]又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有し、
D-マンニトール、乳糖水和物、結晶セルロース、カルメロース、ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム
をさらに含むことを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
D-マンニトール及び乳糖水和物が賦形剤であり、
結晶セルロースが賦形剤及び/又は崩壊剤であり、
カルメロースが崩壊剤であり、
ヒプロメロースが結合剤であり、
ステアリン酸マグネシウムが滑沢剤である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
当該固形製剤の総重量に対し、D-マンニトールを10重量%~50重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。
【請求項4】
ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩の含有量が、固形製剤の総重量に対し0.125重量%以上2.0重量%以下であり、乳糖水和物を25重量%~70重量%、D-マンニトールを10重量%~50重量%、結晶セルロースを5重量%~30重量%、カルメロースを3重量%~7重量%、ヒプロメロースを1重量%~5重量%、及びステアリン酸マグネシウムを0.25重量%~1重量%含有することを特徴とする請求項3に記載の固形製剤。
【請求項5】
錠剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記の化学構造式で示される、3-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゾイル)-1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール[以下「ドチヌラド」(一般名)又は「(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)(1,1-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-3H-1λ6-1,3-ベンゾチアゾール-3-イル)メタノン」と記す場合もある]又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む固形製剤に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
ドチヌラドは、顕著な尿酸排泄促進作用を有し、痛風・高尿酸血症の治療薬として有望な化合物である(特許文献1)。
【0004】
医薬品は、その有効成分に対し賦形剤等の添加剤を適宜加えた医薬組成物とし、更にその投与経路に適した製剤(例えば固形製剤、液剤等)とした上で、患者へ提供・投与される。したがって医薬組成物及び製剤においては、有効成分及び製剤自体の安定性が高く、取扱いや服薬が容易であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、ドチヌラドを含有し、乳糖、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムからなる製剤処方例(錠剤)を開示する。しかし、当該特許文献1に記載の処方は、本願処方を示唆しているものではない。本発明の課題は、ドチヌラドを有効成分とし、安定性や製造性に優れた固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ドチヌラドを含む医薬組成物の各種添加剤の検討を行った結果、長期保存時の安定性の高い、ドチヌラド含有固形製剤を創出した。
【0008】
即ち、本発明は
(1)3-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゾイル)-1,1-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール[ドチヌラド]又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有し、更に賦形剤として糖アルコール又はセルロース誘導体、あるいはそれらの両方を含むことを特徴とする固形製剤。
(2)糖アルコールの含有量が、固形製剤の総重量に対し10重量%以上50重量%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の固形製剤。
(3)前記糖アルコールがD-マンニトールであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の固形製剤。
(4)セルロース誘導体の含有量が、固形製剤の総重量に対し5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする前記(1)-(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5)前記セルロース誘導体が結晶セルロースであることを特徴とする前記(1)-(4)のいずれかに記載の固形製剤。
(6)更に賦形剤として、乳糖水和物を含有することを特徴とする前記(1)-(5)のいずれかに記載の固形製剤。
(7)前記乳糖水和物の含有量が、固形製剤の総重量に対し25重量%以上70重量%以下であることを特徴とする前記(6)に記載の固形製剤。
(8)ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩の含有量が、固形製剤の総重量に対し0.125重量%以上2.0重量%以下であることを特徴とする前記(1)-(7)のいずれかに記載の固形製剤。
(9)更に崩壊剤、結合剤、及び滑沢剤を含有することを特徴とする前記(1)-(8)のいずれかに記載の固形製剤。
(10)崩壊剤として、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、トウモロコシデンプン、及びタルクからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、前記(9)に記載の固形製剤。
(11)結合剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、部分アルファ化デンプン、及びアルファ化デンプンからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、前記(9)又は(10)に記載の固形製剤。
(12)滑沢剤として、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、及びタルク、よりなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、前記(9)-(11)のいずれかに記載の固形製剤。
(13)ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む固形製剤であって、当該固形製剤の総重量に対し、ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩を0.125重量%~2.0重量%、乳糖水和物を25重量%~70重量%、D-マンニトールを10重量%~50重量%、結晶セルロースを5重量%~30重量%、カルメロースを3重量%~7重量%、ヒプロメロースを1重量%~5重量%、及びステアリン酸マグネシウムを0.25重量%~1重量%含有することを特徴とする固形製剤。
(14)錠剤であることを特徴とする前記(1)-(13)のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固形製剤は、主薬(有効成分)の分解等が抑えられ、安定性が高いことを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する固形製剤を提供する。ただし前記固形製剤は、その総重量に対し、有効成分として、ドチヌラドを0.125重量%以上2.0重量%以下含有する。
【0011】
本明細書中、ドチヌラドと記載した場合、その水和物、溶媒和物も含まれるものとする。またドチヌラドの薬理学的に許容される塩とは、医薬として許容される塩であれば特に限定されることはなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられ、その水和物、及び溶媒和物も含める。
【0012】
ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩のヒトへの1回あたりの投与量は、0.1mg~4.0mgが望ましい。
【0013】
本発明の固形製剤は、賦形剤として、D-マンニトールを、固形製剤の総重量に対し10重量%以上50重量%以下、好ましくは25重量%以上50重量%以下含有する。
【0014】
本発明の固形製剤は、結晶セルロースを、固形製剤の総重量に対し5重量%以上30重量%以下含有することが好ましい。
【0015】
本発明の固形製剤は、乳糖水和物を、固形製剤の総重量に対し25重量%以上70重量%以下含有することが好ましい。
【0016】
本発明の固形製剤は、カルメロースを、固形製剤の総重量に対し3重量%以上7重量%以下含有することが好ましい。
【0017】
本発明の固形製剤は、ヒプロメロースを、固形製剤の総重量に対し1重量%以上5重量%以下含有することが好ましい。
【0018】
本発明の固形製剤は、ステアリン酸マグネシウムを、固形製剤の総重量に対し0.25重量%以上1重量%以下含有することが好ましい。
【0019】
本明細書中、ドチヌラド及び添加剤の重量%の数値は、当該数値の±10%迄、好ましくは当該数値の±5%迄の値も含み得るものである。
【0020】
本発明における崩壊剤としては、特に限定されないが、医薬品添加成分として承認されたものが好ましく、好ましい例として、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、タルク等が挙げられ、単独又は適宜組み合わせて用いることができる。好ましくは、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、トウモロコシデンプン、及びタルクが挙げられ、特に好ましくは、カルメロースが挙げられる。
【0021】
本発明における結合剤としては、特に限定されないが、医薬品添加成分として承認されたものが好ましく、好ましい例として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース、ポピドン、ポリビニルアルコール、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン等が挙げられる。好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、部分アルファ化デンプン、及びアルファ化デンプンが挙げられ、特に好ましくは、ヒプロメロースが挙げられる。
【0022】
本発明における滑沢剤としては、特に限定されないが、医薬品添加成分として承認されたものが好ましく、好ましい例として、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク等が挙げられる。好ましくは酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、及びタルクが挙げられ、特に好ましくは、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0023】
本発明における固形製剤とは、例えば、錠剤(素錠、糖衣錠、口腔内速崩壊錠、チュアブル剤、発泡錠、トローチ剤、フィルムコーティング錠等を含む)、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、フィルム剤、ドライシロップ剤、ゼリー剤、液剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、坐剤等が挙げられ、好ましくは錠剤、又は顆粒剤であり、特に好ましくは錠剤である。
【0024】
錠剤1錠あたりの重さは特に限定されないが、50mg~500mgが好ましい。更には100mg~200mgがより好ましい。
【0025】
本発明における固形製剤は、適応される製剤に合わせて種々の添加剤を用いることができる。例えば、上述の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤の他に、崩壊補助剤、流動化剤、緩衝剤、持続化剤、安定剤、抗酸化剤、還元剤、清涼化剤、甘味剤、矯味剤、香料、着色剤、界面活性剤、可逆剤、可溶化剤、懸濁剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、光沢化剤、コーティング剤、基剤、防腐剤、保存剤、pH調整剤等を用いることができる。
【0026】
本発明の更なる実施形態として、固形製剤の総重量に対し、ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩を0.125重量%~2.0重量%、乳糖水和物を49重量%~54重量%、D-マンニトールを24重量%~26重量%、結晶セルロースを14重量%~16重量%、カルメロースを3重量%~7重量%、ヒプロメロースを1重量%~5重量%、ステアリン酸マグネシウムを0.25重量%~1重量%含有する固形製剤を提供する。
【0027】
本願明細書中、水分量とは、ドチヌラドを有効成分として含む固形製剤中に含まれる水分量を、赤外線水分計(ケツト科学研究所製 FD-620)にて測定した結果を示したものである(75℃、20分)。また本願明細書中における、水分量(乾燥後)とは、ドチヌラド及び添加剤を混合、造粒、乾燥後に、上記記載の方法にて、製剤中に含まれる水分量を測定した結果である。
【0028】
本明細書において成分含量とは、有効成分の理論的に算出される含有量に対する、実際に製造された錠剤が含有する有効成分量の割合(%)を示す。ドチヌラドを含む固形製剤が、適切な投与量において有効に薬効を発現するためには、成分含量は95%~110%であることが好ましく、更に97~105%であることがより好ましい。また本明細書においては、成分含量が95%未満の場合を低下と表記する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例にて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
本実施例における製造性は、以下のように評価した。
++:製造時における固形製剤の取扱が良である
+ :製造時における固形製剤の取扱が可である。
ただし、取扱が良とは製造機器への付着が起こらない場合を示し、取扱が可とは製造機器への付着が認められた場合を示す。
【0031】
本実施例において、ドチヌラドの成分含量は、次のように求めた。すなわち、ドチヌラド25mgを溶解液(溶出試験第2液:メタノール=1:1)にて調整した標準溶液(0.01mg/mL)に対する、各実施例の固形製剤を同溶解液にて、同濃度に調整した試料溶液におけるドチヌラド量の割合(%)を、紫外可視吸光度測定(島津製作所製 UV-2550、極大波長326nm)により算出した。
【0032】
実施例1:乳糖水和物(DMV,pharmatose200M)8.0g、ドチヌラド0.8gを30号ステンレス篩を用いて篩過した。乳糖水和物(DMV,pharmatose200M)236.0g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ、セオラスPH-101)48.0g、ヒプロメロース(信越化学工業,TC-5E)9.6g、カルメロース(ニチリン化学工業,NS-300)16.0gを30号ステンレス篩を用いて篩過した。精製水31.8gを用いて、撹拌造粒機(深江工業、ハイスピードミキサーLFS-GS-1JD)で造粒した後、60℃にて240分間通風乾燥し、30号ステンレス篩を用いて整粒し、顆粒を得た。これにステアリン酸マグネシウム(日油、日局ステアリン酸マグネシウム)を1.6gを加えて混合した。錠剤質量約100mg、直径6.5mm、曲率半径8.0の一段R杵で硬度約7.0kgfとなるように、打錠機(畑鐵工所、HT-AP12SS-II)を用いて圧縮成形を行い錠剤を製造した。
【0033】
実施例2:乳糖水和物(DMV,pharmatose200M)8.0g、ドチヌラド0.8gを30号ステンレス篩を用いて篩過した。乳糖水和物(DMV,pharmatose200M)156.0g、D-マンニトール(ロケット,ペアリトール50C)80.0g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ,セオラスPH-101)48.0g、ヒプロメロース(信越化学工業,TC-5E)9.6g、カルメロース(ニチリン化学工業,NS-300)16.0gを30号ステンレス篩を用いて篩過した。精製水31.8gを用いて、撹拌造粒機(深江工業、ハイスピードミキサーLFS-GS-1JD)で造粒した後、60℃にて240分間通風乾燥し、30号ステンレス篩を用いて整粒し、顆粒を得た。これにステアリン酸マグネシウム(日油、日局ステアリン酸マグネシウム)を1.6gを加えて混合した。錠剤質量約100mg、直径6.5mm、曲率半径8.0の一段R杵で硬度約7.0kgfとなるように、打錠機(畑鐵工所、HT-AP12SS-II)を用いて圧縮成形を行い錠剤を製造した。
【0034】
実施例3~17及び参考例は、表1~3の処方に基づき、実施例1及び2と同様にして錠剤を製造した。
【0035】
比較例1及び2は、表4の処方に基づき、実施例1及び2と同様にして錠剤を製造した。
【0036】
実施例、参考例、及び比較例で製造した錠剤について、その処方割合と、製造性、水分量(乾燥後)、成分含量を表1~4に記載した。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
実施例4及び比較例1で得られた錠剤をPTP包装した形態にて、40℃±2℃、75%RH±5%RHの雰囲気下での錠剤の安定性試験を実施した。試験開始時、開始から1か月後、3か月後のそれぞれの時点における、錠剤中のドチヌラドの類縁物質の量(%)を、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Inertsil ODS―2(4.6 mm × 250 mm、5 μm)、温度40℃、移動相:薄めたギ酸(1→1000)/アセトニトリル混液(3:2)、UV検出:240nm)により算出した。表5にその結果を記載する。
【0042】
【0043】
比較例2についても、上記と同様の方法により錠剤中のドチヌラドの類縁物質の量(%)を算出した。表6にその結果を記載する。
【0044】
【0045】
実施例4及び比較例1及び2で得られた錠剤について、可視光及びUV-A光を放つ光源下、25℃±2℃にて、総暴露が120万ルクス時間及び200ワット時間/m2以上となるようにして、20日間、遮光又は曝光条件での光安定性試験を実施した。試験開始時、遮光時、曝光時における、錠剤中のドチヌラドの類縁物質の量(%)を、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Inertsil ODS―2(4.6 mm × 250 mm、5 μm)、温度40℃、移動相:薄めたギ酸(1→1000)/アセトニトリル混液(3:2)、UV検出:240nm)により算出した。表7にその結果を記載する。
【0046】
【0047】
D-マンニトール含有量の少ない実施例1及び2は、製造機器への付着が確認された。又、D-マンニトール含有量の多い参考例1は、ドチヌラドの成分含量の低下が確認された。以上の結果より、製剤中の好ましいD-マンニトール含有量は10重量%から50重量%であることが分かった。
【0048】
表5及び6に示す結果より、比較例1及び2に対し、実施例4は類縁物質の生成が抑えられており、より安定な製剤であることが確認された。比較例1及び2は製剤中の水分量(乾燥後)が高いことが製剤の安定性に影響した可能性が考えられる。一方で、上記記載の実施例はいずれも、比較例1や2より水分量(乾燥後)が低いことから、実施例4と同様に安定な製剤であることが示唆される。
【0049】
表7に示す結果より、曝光条件下において、比較例1及び2に対し、実施例4はドチヌラドの類縁物質の生成が抑えられており、より安定な製剤であることが確認された。
【0050】
以上、ドチヌラド又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有し、D-マンニトールを含有することを特徴とする本発明の固形製剤は、製剤の安定性が高く、かつドチヌラドの含量低下を回避した製剤として提供することができる。