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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】コンタクト・レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G02C7/04
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022032571
(22)【出願日】2022-03-03
(65)【公開番号】P2022136026
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】110107542
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517113716
【氏名又は名称】永勝光学股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】蔡宗旻
(72)【発明者】
【氏名】王▲ジエ▼凱
(72)【発明者】
【氏名】陳健修
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537317(JP,A)
【文献】特表2016-505885(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015743(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/047488(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104094164(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114391121(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクト・レンズであって、
第1の領域、第2の領域及び第3の領域を含む視力領域、を備え、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、レンズ中心から前記の順で同心状に配置され、
前記第1の領域は、近視矯正度数を有する矯正区域を含み、
前記第2の領域及び前記第3の領域はそれぞれ、少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域を含み、
前記少なくとも2つのデフォーカス区域及び前記少なくとも1つの矯正区域は、交互に配置され、
前記第2の領域における、前記少なくとも1つの矯正区域の矯正度数と隣接する前記デフォーカス区域の矯正度数との間の第1の度数差は、-2.00から-5.00Dであり
前記第3の領域における、前記少なくとも1つの矯正区域の矯正度数と隣接する前記デフォーカス区域の矯正度数との間の第2の度数差は、-3.00から-10.00Dであり
前記第2の度数差は、前記第1の度数差よりもマイナスが大きいことを特徴とする、
コンタクト・レンズ。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記レンズ中心から前記第1の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第1の領域の周辺部は、前記レンズ中心までL1の径方向距離を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域の周辺部から前記第2の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第2の領域の周辺部は、前記レンズ中心までL2の径方向距離を有し、前記第3の領域は、前記第2の領域の周辺部から前記第3の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第3の領域の周辺部は、前記レンズ中心までL3の径方向距離を有し、前記L1は2±0.5mmであり、前記L2は3±0.5mmであり、前記L3は4.5±0.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記レンズ中心から前記第1の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第1の領域の周辺部は、前記レンズ中心までa*L3の径方向距離を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域の周辺部から前記第2の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第2の領域の周辺部は、前記レンズ中心までb*L3の径方向距離を有し、前記第3の領域は、前記第2の領域の周辺部から前記第3の領域の周辺部まで外側に延在し、前記第3の領域の周辺部は、前記レンズ中心までL3の径方向距離を有し、前記L3は前記視力領域の径方向長さであり、前記aは0.3から0.56であり、前記bは0.5から0.78であり、a<bであることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【請求項4】
前記少なくとも2つのデフォーカス区域と前記少なくとも1つの矯正区域との間の間隔は、0.2mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【請求項5】
前記少なくとも2つのデフォーカス区域と前記少なくとも1つの矯正区域との間の間隔は、0.2mm又は0.25mmであることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【請求項6】
前記少なくとも2つのデフォーカス区域と前記少なくとも1つの矯正区域との間の度数は、連続的又は不連続に調整されることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【請求項7】
前記第1の領域は、複数の矯正区域を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンタクト・レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト・レンズに関し、詳細には、近視の進行を遅くすることができ、快適に着用可能なコンタクト・レンズ、及び当該コンタクト・レンズを製造する型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンタクト・レンズの使用により近視を矯正する概略図である、図1を参照されたい。
従来の近視矯正の原理は、1つの焦点で、コンタクト・レンズ1を通じて眼球Aの網膜結像領域C上に像を合焦することを支援するものであり、コンタクト・レンズ1は、レンズ光合焦領域E1と、レンズ視力領域E2とを含み、レンズ光合焦領域E1及びレンズ視力領域E2は、レンズ中心からこの順で同心状に配置される。レンズ光合焦領域E1は、レンズ視力領域(有効視覚領域)E2の一部である。レンズ光合焦領域E1の直径D1は、レンズ視力領域E2の直径D2よりも小さく、レンズ視力領域E2の直径D2は、コンタクト・レンズ1の直径Dよりも小さい。コンタクト・レンズ1のパラメータは、瞳孔Bを通じて中心焦点C1に像を合焦させるように、コンタクト・レンズ1の度数によって近視矯正の目標に基づき設計される。
【0003】
しかし、一般に、従来技術の上述の設計は新たな問題をもたらし、即ち、コンタクト・レンズ1の1つ等のレンズの設計は、学童の近視を連続的に悪化させるかもしれないと考えられている。
【0004】
学童の眼軸は生来短く、学童の大部分は遠視であるが、眼軸は、年齢と共に成長し、正視に向かって徐々に伸展する。しかし、コンタクト・レンズ1の設計は、網膜の曲率を考慮していないため、近視矯正において、コンタクト・レンズ1は、網膜の裏側に周辺焦点を生じさせることが多く(図1の上側周辺焦点C2及び下側周辺焦点C3を参照)、過矯正をもたらす。また、学童の正常な軸長の成長に加えて、眼球Aが更に成長すると軸長を増大させ、上側周辺焦点C2及び下側周辺焦点C3が網膜上にある状態にし、これにより連続的な近視の悪化をもたらす。
【0005】
上記の技術的問題を解決するため、特許文献1及び特許文献2は、矯正度数をレンズの中心からレンズの外側区域まで低減させるコンタクト・レンズを開示している。この設計原理は、近視の進行を遅くする効果を達成することができるが、実際の装用において、装用者が遠い物体を見る場合、物体が遠いほど、物体はよりぼやける。更に、レンズの中心とレンズの周辺部との間に著しい視差が生成され、装用者を不快にする。
【0006】
更に、特許文献3及び特許文献4は、交互のデフォーカス区域及び矯正区域を提案しており、交互のデフォーカス区域及び矯正区域は、周辺焦点が網膜の裏側にないように、レンズ周辺部上に配設される。このような従来技術では、デフォーカス区域と矯正区域との間の矯正度数の差は、-0.50から-10.00Dまであるように設定される。しかし、1つの領域が1つの度数差のみで構成され、度数差は同一である。したがって、矯正領域の矯正度数とデフォーカス区域の矯正度数との間の差が大きい場合、視差現象が依然として生じ、矯正領域の矯正度数とデフォーカス区域の矯正度数との間の差が小さい場合、デフォーカス効果がほとんどなく、近視の進行を遅くすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7637612(B2)号
【文献】国際公開第2013015743(A1)号
【文献】米国特許第9829722(B2)号
【文献】国際公開第2012034265(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術の技術的問題に鑑み、本発明は、コンタクト・レンズを提供する。コンタクト・レンズは、第1の領域(OZ1)、第2の領域(OZ2)及び第3の領域(OZ3)を含む視力領域を備え、第1の領域(OZ1)、第2の領域(OZ2)及び第3の領域(OZ3)は、レンズ中心からそのような順で同心状に配置される。第1の領域は、近視矯正度数を有する矯正区域を含む。第2の領域及び第3の領域はそれぞれ、少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域を含み、少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域は、交互に配置される。第2の領域は、-2.00から-5.00Dの第1の度数差(図4図9に示すG1)を有し、第3の領域は、-3.00から-10.00Dの第2の度数差(図4図9に示すG2)を有し、第2の度数差は、第1の度数差と等しいか、又は第1の度数差よりもマイナスが大きい。
【0009】
本発明の特定の実施形態によれば、第1の領域は、レンズ中心から第1の領域の周辺部まで外側に延在し、第1の領域の周辺部は、レンズ中心までL1の径方向距離を有し、第2の領域は、第1の領域の周辺部から第2の領域の周辺部まで外側に延在し、第2の領域の周辺部は、レンズ中心までL2の径方向距離を有し、第3の領域は、第2の領域の周辺部から第3の領域の周辺部まで外側に延在し、第3の領域の周辺部は、レンズ中心までL3の径方向距離を有し、L1は2±0.5mmであり、L2は3±0.5mmであり、L3は4.5±0.5mmである。
【0010】
いくつかの他の実施形態では、第1の領域は、レンズ中心から第1の領域の周辺部まで外側に延在し、第1の領域の周辺部は、レンズ中心までa*L3の径方向距離を有し、第2の領域は、第1の領域の周辺部から第2の領域の周辺部まで外側に延在し、第2の領域の周辺部は、レンズ中心までb*L3の径方向距離を有し、第3の領域は、第2の領域の周辺部から第3の領域の周辺部まで外側に延在し、第3の領域の周辺部は、レンズ中心までL3の径方向距離を有し、L3は視力領域の径方向長さであり、aは0.3から0.56であり、bは0.5から0.78であり、a<bである。
【0011】
本発明の特定の実施形態によれば、第2の領域における少なくとも2つのデフォーカス区域と少なくとも1つの矯正区域との間の間隔は、0.2mm以上であり、好ましくは0.2又は0.25mmである。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、第3の領域における少なくとも2つのデフォーカス区域と少なくとも1つの矯正区域との間の間隔は、0.2mm以上であり、好ましくは0.2又は0.25mmである。
【0013】
本発明の特定の実施形態によれば、第2の領域及び第3の領域において、少なくとも2つのデフォーカス区域と少なくとも1つの矯正区域との間の度数は、連続的又は漸進的に調整される。言い換えれば、一方の標的度数からもう一方の標的度数までの変化は、連続的である。
【0014】
本発明の特定の実施形態によれば、第2の領域及び第3の領域において、少なくとも2つのデフォーカス区域と少なくとも1つの矯正区域との間の度数は、不連続又は階段状に調整される。言い換えれば、一方の標的度数からもう一方の標的度数までの変化は、直接的であり、中間度数を伴わない。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、複数の異なる第1の度数差がある。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、複数の異なる第2の度数差がある。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、第1の領域は、複数の矯正区域を含む。複数の矯正区域は、-2.5から2.5Dの範囲に及ぶ調節矯正度数を有し得る。
【0018】
更に、本発明は、上記したコンタクト・レンズを製造する型を更に提供する。
【0019】
これら及び他の態様は、以下の図面と共に解釈される、好ましい実施形態に対する以下の説明から明らかになるであろう。しかし、本発明において、本開示の新規な概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変形形態及び修正形態に影響を与えることができる。
【0020】
本発明に対する上記の概要及び以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことにより、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のコンタクト・レンズによる近視矯正を示す概略図である。
図2】本発明のコンタクト・レンズによる近視矯正を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態による視力領域内の少なくとも3つの領域の構成の図である。
図4】本発明の第1の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図5】本発明の第2の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図6】本発明の第3の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図7】本発明の第4の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図8】本発明の第5の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図9】本発明の第6の実施形態によるレンズ度数のグラフである。
図10】本発明の一実施形態によるコンタクト・レンズを製造する型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別段に規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書で使用する単数形「1つの(a、an及びthe)」は、文脈上明らかに別段に規定しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのサンプル」に対する言及は、複数のそのようなサンプル、及び当業者に公知のサンプルの等価物を含む。
【0024】
ヒトの目の瞳孔の平均直径は、約9mmである。近くの物体を見る際、平均的な瞳孔直径は、4mm以内に減少し、遠くの物体を見る場合、平均的な瞳孔直径は、6mm以上に増大する。したがって、本発明において、4mm、6mm及び9mmの直径をコンタクト・レンズの視覚領域の境界として使用する。
設計の点で、コンタクト・レンズの有効視覚領域(視力領域)は、3つの領域に分割され、3つの領域は、レンズ中心Oに対して0~L1(L1を含む)の径方向距離を含む第1の領域、レンズ中心Oに対してL1~L2(L2を含む)の径方向距離を含む第2の領域、及びレンズ中心Oに対してL2~L3(L3を含む)の径方向距離を含む第3の領域であり、L1は2±0.5mmであり、L2は3±0.5mmであり、L3は4.5±0.5mmである。
【0025】
更に、第1の領域は、近視矯正度数を有する少なくとも1つの矯正区域と共に配置され、第2の領域及び第3の領域のそれぞれは、少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域と共に配置され、当該デフォーカス区域は、網膜の前面にデフォーカス像を生成し、近視の進行を遅くするために使用される。少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域は、コンタクト・レンズ上に交互に配置される。好ましくは、少なくとも2つのデフォーカス区域及び少なくとも1つの矯正区域は、交互に、同心状に配置される。第2の領域は、-2.00から-5.00Dの第1の度数差を有し、第3の領域は、-3.00から-10.00Dの第2の度数差を有し、第2の度数差は、第1の度数差と等しいか、又は第1の度数差よりもマイナスが大きい。したがって、本発明のコンタクト・レンズは、近視の進行を遅くする効果を有する。
【0026】
本明細書で使用する用語「第1の度数差」は、概して、第2の領域における、矯正区域とデフォーカス区域との間の度数差を指す。本明細書で使用する用語「第2の度数差」は、概して、第3の領域における、矯正区域とデフォーカス区域との間の度数差を指す。
【0027】
代替的に、コンタクト・レンズの有効視覚領域(視力領域)は、L3(視力領域E2の径方向長さ)に比例して3つの領域に分割され、3つの領域は、レンズ中心Oに対して0~a*L3(a*L3を含む)の径方向距離を含む第1の領域、レンズ中心Oに対してa*L3~b*L3(b*L3を含む)の径方向距離を含む第2の領域、及びレンズ中心Oに対してb*L3~L3(L3を含む)の径方向距離を含む第3の領域であり、aは0.3から0.56であり、bは0.5から0.78であり、a<bである。例えば、L3が4.5±0.5mmである場合、a*L3は2±0.5mm、b*L3は3±0.5mmとし得る。
【0028】
本発明のコンタクト・レンズによる近視矯正を示す概略図である、図2を参照されたい。
図2に示すように、近視矯正を満足させることに基づき、コンタクト・レンズ2は、中心焦点C1が依然として網膜結像領域C上にある状態にしているが、上側周辺焦点C2及び下側周辺焦点C3は、レンズ設計を通じて網膜の表側にある。このような設計は、矯正が不十分になり、脳が、眼軸の長さを変更する信号を送信するにもかかわらず、軸長は増大せず、近視は悪化しない。これによって、近視の進行を遅くする目的を達成する。
【0029】
本発明の一実施形態による視力領域内の少なくとも3つの領域の構成を示す、図3を参照されたい。
コンタクト・レンズ2の視力領域(有効視覚領域)E2は、3つの領域、即ち、第1の領域OZ1、第2の領域OZ2及び第3の領域OZ3に分割される。第1の領域OZ1は、レンズ中心Oに対して0~L1(L1を含む)の径方向距離を含み、第2の領域OZ2は、レンズ中心Oに対してL1~L2(L2を含む)の径方向距離を含み、第3の領域OZ3は、レンズ中心Oに対してL2~L3(L3を含む)の径方向距離を含み、L1は2±0.5mmであり、L2は3±0.5mmであり、L3は4.5±0.5mmである。
【0030】
第1の領域OZ1は、1つの(近視)矯正度数を有する1つの矯正区域を含み得るか、(様々な矯正度数を有する)複数の矯正区域を含み得る。第2の領域OZ2及び第3の領域OZ3のそれぞれは、(近視)矯正度数を有する矯正区域と、デフォーカス区域とを含み、矯正区域及びデフォーカス区域は、交互に配置される。本発明の特定の実施形態では、第2の領域OZ2は、(矯正区域とデフォーカス区域との間に)-2.00から-5.00Dまでの第1の度数差を有する。-2.00Dよりもマイナスが小さい度数差は、デフォーカス効果がない可能性があることは、重要である。一方、第3の領域OZ3は、(矯正区域とデフォーカス区域との間に)-3.00から-10.00Dまでの第2の度数差を有する。更に、第2の度数差は、第1の度数差と等しいか、又は第1の度数差よりもマイナスが大きい。
【0031】
上記の設計を通じて、第1の領域OZ1は、近視を矯正するのに十分な矯正度数を有し、第2の領域OZ2は、焦点が網膜の裏側にないようなデフォーカス効果を有し、同時に、第2の領域OZ2は、像の飛びを回避するように適度な第1の度数差を有する。更に、第3の領域OZ3は、第1の度数差に等しいか又は第1の度数差よりもマイナスが大きい第2の度数差を有して更なるデフォーカス効果をもたらし、コンタクト・レンズ2の周辺焦点を網膜の前側により良好に向けるようにする。
【0032】
次に、本発明の第1の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図4を参照されたい。
本実施形態では、第1の領域OZ1は、レンズ中心Oに対して0~2mm(2mmを含む)の径方向距離を含み、第2の領域OZ2は、レンズ中心Oに対して2~3mm(3mmを含む)の径方向距離を含み、第3の領域OZ3は、レンズ中心Oに対して3~4.5mm(4.5mmを含む)の径方向距離を含む。第1の領域OZ1は、-3.00Dの近視矯正度数(P1とする)を有し、第2の領域OZ2は、-1.00Dの第1のデフォーカス度数(P2とする)を有するデフォーカス区域を含み、第3の領域OZ3は、0Dの第2のデフォーカス度数(P3とする)を有するデフォーカス区域を含む。したがって、第2の領域OZ2は、-2.00D(P1-P2=-3.00D-(-1.00D)=-2.00D)である第1の度数差(「第1のデフォーカス範囲」とも呼ぶ)G1を有し、第3の領域OZ3は、-3.00D(P1-P3=-3.00D-0D=-3.00D)である第2の度数差(「第2のデフォーカス範囲」とも呼ぶ)G2を有する。
【0033】
更に、第2の領域OZ2において、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の間隔は0.25mmであり、第3の領域OZ3において、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の間隔は0.25mmである。更に、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の度数調整(power alteration)は、連続的(又は漸進的)である。
【0034】
本発明の第2の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図5を参照されたい。
この第2の実施形態のレンズ度数のグラフは、第1の実施形態のグラフと概ね同じであるが、この第2の実施形態では、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の度数調整が、不連続(又は階段状)であるという点で異なる。即ち、一方の標的度数からもう一方の標的度数までの変化は、直接的であり、中間度数を伴わない。
【0035】
本発明の第3の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図6を参照されたい。
この第3の実施形態のレンズのグラフは、第2の実施形態のグラフと概ね同じであるが、それぞれ、-2.00DのG1及び-2.50DのG1’という2つの異なる第1の度数差があるという点で異なる。
【0036】
本発明の第4の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図7を参照されたい。
この第4の実施形態のレンズ度数のグラフは、第2の実施形態のグラフと概ね同じであるが、第1の領域OZ1が-5.00Dの近視矯正度数を有し、それぞれ、-3.00DのG2及び-5.00DのG2’という2つの異なる第2の度数差があるという点で異なる。
【0037】
次に、本発明の第5の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図8を参照されたい。
この第5の実施形態のレンズ度数グラフは、第2の実施形態のグラフと概ね同じであるが、以下の点、(i)第1の領域OZ1が-8.00Dの近視矯正度数を有する点、(ii)それぞれ、-5.00DのG1、-3.00DのG1’及び-2.00DのG1’’という3つの異なる第1の度数差がある点、及び(iii)それぞれ、-10.00DのG2、-8.00DのG2’、-6.00DのG2’’、及び-5.00DのG2’’’という4つの異なる第2の度数差がある点で異なる。更に、本実施形態では、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の度数調整は、不連続(又は階段状)である。更に、第2の領域OZ2及び第3の領域OZ3の両方における矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の間隔は、0.2mmである。
【0038】
本発明の第6の実施形態によるレンズ度数のグラフを示す、図9を参照されたい。
この第6の実施形態では、第1の領域OZ1は、複数の矯正区域と共に配置される。そのような第1の領域OZ1の調整設計は、近くの物体を見る際のコンタクト・レンズの性能を向上させることができ、第1の領域OZ1は、近くの物体を見るための-2.5から2.5Dの範囲に及ぶ調節矯正度数を有し得る。本実施形態によれば、第1の領域OZ1は、-8.00Dの近視矯正度数、及び近くの物体を見るための+0.50Dの調節矯正度数を有する。
それぞれ、3つの異なる第1の度数差、即ち、-5.00DのG1、-3.00DのG1’、及び-2.00DのG1’’がある。一方、それぞれ、4つの異なる第2の度数差、即ち、-10.00DのG2、-8.00DのG2’、-6.00DのG2’’及び-5.00DのG2’’’がある。矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の度数調整は、不連続(discontinuous)(又は階段状)である。更に、第2の領域OZ2及び第3の領域OZ3の両方における矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の間隔は、0.2mmである。
【0039】
第2の領域OZ2又は第3の領域OZ3において、矯正度数(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の間隔は、0.2mmほどの小ささとし得ることは重要であるが、これに限定されない。好ましくは、間隔は、少なくとも0.2mmである。例えば、間隔は、約0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29又は0.3mmとし得る。より好ましくは、間隔は、0.2~0.25mmである。より一層好ましくは、0.2又は0.25mmである。
【0040】
本明細書で使用する用語、矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の「間隔」は、矯正区域の中間点又は中線とデフォーカス区域の中間点又は中線との間の距離を指す。矯正区域(複数可)とデフォーカス区域(複数可)との間の度数調整が連続的であるケースでは、矯正区域又はデフォーカス区域は、概して、中間点でその標的度数に達する。
【0041】
更に、角膜形状解析を使用し、本発明のコンタクト・レンズによって達成される効果を検証した。角膜形状解析は、ユーザがコンタクト・レンズを装用した際の角膜からのフィードバック情報を測定するものである。角膜形状解析によって得られたフィードバック情報を通じて、コンタクト・レンズの設計によって角膜にもたらされる効果及び負担を間接的に、迅速に理解することができる。従来の近視矯正用レンズは、角膜に更なる圧力をかけずに、角膜を自然な状態で変化させるものであり、上記で説明したように、そのような従来のレンズは、軸長を増大させるため、学童の近視を悪化させる。角膜矯正レンズは、レンズ設計の調節を通じて、角膜の周囲に浮腫を生成するような適度な圧迫を角膜の周囲に加え、これにより近視度を変化させるものである。
眼科医療機関によって開示されている情報によれば、角膜矯正レンズは、臨床的に、正視を回復させるために近視を一時的に矯正するだけでなく、近視の進行を有効に制御することもできる。近視の進行を軽減することは、学齢期児童及び思春期の子供における角膜矯正レンズの最も有益な使用要因である。カリフォルニア大学バークレー校オプトメトリ学部、ヒューストン大学オプトメトリ学部、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部、及びパシフィック大学オプトメトリ学部を含む6つの学術機関は、角膜矯正レンズに関する研究報告書を公開しており、臨床結果は、角膜矯正レンズによる治療中、悪影響がほとんどないことを示しており、角膜矯正レンズが安全で効果的な矯正対策であることを証明している。また、角膜矯正レンズは、アメリカ食品医薬品局(USFDA)によって承認されている。角膜形状解析の結果は、本発明のコンタクト・レンズが、角膜に、角膜矯正レンズによって生じる視力特性と同様の視力特性を発揮させ、これにより、近視進行の軽減を実現することを示している。
【0042】
コンタクト・レンズを製造する型の断面図である、図10を参照されたい。
本発明のコンタクト・レンズは、型Mの上側型部品UM及び下側型部品LMを使用して、コンタクト・レンズ用材料をプレス加工することによって調製することができる。複数の微細構造は、上側型部品UMのプレス加工面US及び下側型部品のプレス加工面LS上に形成され、得られたコンタクト・レンズ2が、所望のレンズ外形、例えば、上記した第1の実施形態から第6の実施形態までのいずれか1つのレンズ外形を有するようにする。
【0043】
要約すると、角膜形状解析の結果は、本発明のコンタクト・レンズが、角膜に、角膜矯正レンズによって生じる視力特性と同様の視力特性を発揮させ、これにより、近視進行の軽減効果を果たすことを示している。更に、第2の領域における適度な第1の度数差は、像の飛びを回避するため、装用者の快適さを向上させる。
【0044】
当業者は、本明細書の説明に基づき、更なる例示を必要とせずに、本発明の最も広範な範囲まで本発明を利用し得ると考えられる。したがって、提供する明細書及び特許請求の範囲は、決して、本発明の範囲に対する限定でなく、説明の目的であることが理解されよう。
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