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特許7355878締結構造、及び締結構造を備えたプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】締結構造、及び締結構造を備えたプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20230926BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20230926BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
F16B5/02 U
F16B5/10 D
F16B37/04 X
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022070744
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2017182846の分割
【原出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2022097555
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富阪 賢一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-030517(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0808926(KR,B1)
【文献】国際公開第2008/146844(WO,A1)
【文献】実開平06-001825(JP,U)
【文献】特開2008-121723(JP,A)
【文献】特開2000-170732(JP,A)
【文献】特許第5073644(JP,B2)
【文献】特開2012-041900(JP,A)
【文献】実開平06-071913(JP,U)
【文献】特許第3726850(JP,B2)
【文献】特開平08-170612(JP,A)
【文献】実開平05-077607(JP,U)
【文献】特開2015-155734(JP,A)
【文献】米国特許第06945414(US,B1)
【文献】特開2016-011693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16B 5/10
F16B 37/04
F16B 41/00
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを締結する締結構造であって、
ボルトと、
前記ボルトに螺合可能なナットと、
前記第1部材に設けられ、前記ナットを収納可能で、内周面に囲われた溝状のナット収納部と、
前記第2部材に設けられ、前記ボルトが挿通可能な貫通部と、を備え、
前記ナット収納部は、前記ナット収納部の底面と直交する方向から前記ナットが挿入可能な第1領域と、前記第1領域と連接しており且つ前記ナット収納部の底面と直交する方向への前記ナットの離脱を阻止する離脱阻止手段を有する第2領域と、を有しており、
前記第1領域に挿入した前記ナットの少なくとも一部が前記第2領域にスライド移動可能であり、且つ、前記ナットが前記第2領域に移動した状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能であり、
前記ボルトの挿通方向と、前記ナットの挿入方向とが、同じ方向であることを特徴とする締結構造。
【請求項2】
前記第1部材がアルミニウム又は単結晶シリコンから構成されている、
請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記ナットが前記第2領域に移動した状態において、前記貫通部及び前記離脱阻止手段に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能である、請求項又はに記載の締結構造。
【請求項4】
前記離脱阻止手段が、前記第2領域の内周面から内側に延設されたつば部であり、
前記第2領域に収納された前記ナットの周縁部が前記つば部に当接することにより前記ナットの離脱が阻止される、請求項乃至の何れか一項に記載の締結構造。
【請求項5】
前記ナットの外周面が前記第1領域又は前記第2領域の内周面に当接することにより前記ナットの前記第2領域における回転が阻止される、請求項乃至の何れか一項に記載の締結構造。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載の締結構造と、
前記締結構造によって締結される前記第1部材及び前記第2部材と、
を備えるプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造、締結構造を備えたプラズマ処理装置、及び締結構造に用いられるナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトとインサートナット(ねじインサートともいう)とを用いた締結構造が知られている。例えば、部材と他部材とを締結する締結構造であって、ボルトと、前記部材に設けられボルトに螺合可能なインサートナットと、前記他部材に設けられ前記ボルトが挿通可能な貫通部と、を備えた締結構造が知られている。このボルトを貫通部に挿通し、インサートナットと螺合することにより、前記部材と前記他部材とを締結可能である。
【0003】
このような締結構造は、プラズマ処理装置などの基板処理装置で一般的に用いられている。例えば、特許文献1に開示されたプラズマ処理装置(成膜装置)では、チャンバ1内において、ブラケット8のブラケット曲部8Aと補足板6とが前述のボルトとインサートナットとを用いた締結構造によって締結されている。具体的には、同文献の段落[0032]に開示されているように、補足板6にはインサートナット7が設けられており、ブラケット曲部8Aに設けられた穴部8E、8Fに挿入されたボルト(ねじ9A、9B)がインサートナット7に螺合されることにより、補足板6がブラケット曲部8Aに着脱可能に固定(即ち、締結)されている。
【0004】
インサートナットは、内面にボルトと螺合可能な雌ねじ部を有しており且つ外面に部材と強固に噛合可能な構造(例えば、ローレット目など)を有する筒状の部材である。例えば、部材に設けられた取付孔にインサートナットを圧入することで、部材の取付孔の内側に雌ねじ部を設けることができる。
【0005】
アルミニウムなど、部材が比較的柔らかい材料からなる場合、部材の取付孔の内面に直接雌ねじ部を設けてボルトを螺合すると、雌ねじ部とボルトの締結力が不十分になるおそれがあり、また、ボルトを雌ねじ部に何度も出し入れすると、雌ねじ部のねじ山が潰れるおそれがある。これに対し、比較的硬い材料からなるインサートナットを部材の取付孔に設けることにより、この問題を解消することができる。
【0006】
しかしながら、ボルトとインサートナットとを用いた締結構造を長期間に亘って使用すると、大気中であってもインサートナットの内面(雌ねじ部)が徐々に腐食し、ボルトと十分に締結できなくなる場合がある。インサートナットは、部材に一度設けてしまうと、取り外すことが実質的に困難である。具体的には、インサートナットを取り外すこと自体は可能であるが、取り外すと、部材の取付孔の内側に設けられた雌ねじ部のねじ山が潰れてしまい、再挿入できなくなる。そのため、インサートナットの内面が腐食した場合、インサートナットを設けた部材ごと新品に取り替えねばならず、不経済である。
特に、プラズマ処理装置の内部には、プラズマ処理のためにフッ素系ガスや塩素系ガスなどのハロゲン系ガスを含む処理ガスが供給される。プラズマ処理装置の内部に設けられた締結構造は、処理ガスに曝露されるため、より腐食し易いという問題がある。また、反応生成物によって汚染され易いという問題もある。
【0007】
このような問題を解決するため、インサートナットの内面(雌ねじ部)に耐腐食性のコーティング処理を施すことも考えられるが、コーティング膜は、ボルトをインサートナットから何度も出し入れすることにより徐々に剥がれ落ちる。そのため、耐腐食性のコーティング処理を施すだけでは、インサートナットの腐食を十分に防止できず、結局、締結構造を長期間に亘って使用することができない。
【0008】
ところで、一般に、被締結部材に部品を締結しようとする場合、部品の取り付け方向と反対の方向からボルトで締結することも考えられる。すなわち、被締結部材にボルトが挿通可能な貫通部を設け、部品に雌ねじ部を設け、被締結部材側から挿通させたボルトを部品の雌ねじ部に螺合させて締結することも考えられる。この場合、部品に設ける雌ねじ部を止まり穴にすれば、気密性が保たれる。また、例えば、プラズマ処理装置の内部において部品を内側から取り付けようとする場合、上記のように、部品に設ける雌ねじ部が止まり穴であれば、雌ねじ部がプラズマ処理装置の内部に露出しないため、雌ねじ部は腐食しない。しかしながら、部品の取り付け方向と反対の方向からボルトを挿通させる必要があり、作業効率が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2008/146844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、長期間に亘って使用可能な締結構造、該締結構造を備えたプラズマ処理装置、及び該締結構造に用いられるナットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者は、いったん部材に設けた後は交換不能なインサートナットに代えて交換可能なナットを用いることができれば、部材を新品に交換することなく長期間に亘って締結構造を使用可能になる可能性があることに着眼し、ナットを用いた特有の締結構造について鋭意研究した結果、本発明を創出した。
【0012】
本発明に係る第1手段は、第1部材と第2部材とを締結する締結構造であって、ボルトと、前記ボルトに螺合可能なナットと、前記第1部材に設けられ、前記ナットを収納可能で、内周面に囲われた溝状のナット収納部と、前記第2部材に設けられ、前記ボルトが挿通可能な貫通部と、を備え、前記ナット収納部は、前記ナット収納部の底面と直交する方向から前記ナットが挿入可能な第1領域と、前記第1領域と連接しており且つ前記ナット収納部の底面と直交する方向への前記ナットの離脱を阻止する離脱阻止手段を有する第2領域と、を有しており、前記第1領域に挿入した前記ナットの少なくとも一部が前記第2領域にスライド移動可能であり、且つ、前記ナットが前記第2領域に移動した状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能であり、前記ボルトの挿通方向と、前記ナットの挿入方向とが、同じ方向であることを特徴とする締結構造である。
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記第1部材がアルミニウム又は単結晶シリコンから構成されている。
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記ナットが前記第2領域に移動した状態において、前記貫通部及び前記離脱阻止手段に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能である。
【0013】
本発明に係る第1手段の締結構造は、第1部材と第2部材とを締結する締結構造であって、第1部材に設けられた溝状のナット収納部と、第2部材に設けられたボルトが挿通可能な貫通部とを備えている。ナット収納部は、ナットが挿入可能な第1領域と、貫通部に挿通されたボルトがナットに螺合可能である第2領域とを有しており、ナットの少なくとも一部(ナットの孔部を含む部分)が第1領域から第2領域へスライド移動可能である。このため、ナットを第1部材の第1領域に挿入し、第2領域にスライド移動させた後、第2部材に設けられた貫通部にボルトを挿通し、このボルトをナットに螺合させることで、第1部材と第2部材とを締結可能である。この際、第2領域は、離脱阻止手段を有するため、ボルトと螺合したナットが離脱するおそれがない。このため、第1部材と第2部材との締結状態を維持可能である。
【0014】
また、本発明に係る第1手段の締結構造は、第1領域にナットを挿入可能であるため、ボルトとナットとが螺合していない非締結状態において、ナットを第1領域から抜き取ることができる。このため、例えば、ナットが腐食したり汚染した場合、この腐食・汚染したナットを第1領域から抜き取ることにより、新しいナットに容易に交換することができる。したがい、本発明に係る第1手段では、ナット収納部が設けられた第1部材自体を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造を使用可能である。
【0015】
なお、本発明に係る第1手段の締結構造が備える第2部材に設けられた「貫通部」は、ボルトが挿通可能である限り貫通孔に限られるものではなく、例えば第2部材の周縁から内側に向けて形成された切欠き等も含む。
【0016】
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記離脱阻止手段が、前記第2領域の内周面から内側に延設されたつば部であり、前記第2領域に収納された前記ナットの周縁部が前記つば部に当接することにより前記ナットの離脱が阻止される。
【0017】
つば部は、例えば、切削によってナット収納部を第1部材に形成する際、部分的に切削しない箇所を設けるだけで容易に形成することが可能である。このため、本発明に係る第1手段の上記好ましい形態のように、離脱阻止手段がつば部であれば、ナット収納部ひいては締結構造を既存の第1部材を用いて容易に形成することができる。
なお、離脱阻止手段がつば部である場合、第1部材に設けられたつば部と第2部材とがボルトとナットとの間で締結されることになる。このため、つば部の厚みが過度に薄いと締結強度が低くなり、締結の際や締結後につば部が破損するおそれもある。このため、つば部の厚みは一定以上に厚くするのが好ましい。
【0018】
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記ナットの外周面が前記第1領域又は前記第2領域の内周面に当接することにより前記ナットの前記第2領域における回転が阻止される。
【0019】
ボルトがナットに螺合する際、ナットが固定されていないとボルトの回転に伴ってナットも回転(供回り)する。本発明に係る第1手段の上記好ましい形態では、ボルトの回転に伴ってナットが回転しようとしても、ナットの外周面が第1領域又は第2領域の内周面に当接することで回転が阻止されるため、第2領域におけるナットの供回りを容易に防ぐことができる。このため、ボルトをナットに容易に螺合させることができる。
【0020】
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、少なくとも前記ナットと前記ボルトとが螺合する際、前記第1領域が前記第2領域よりも上方に位置する。
【0021】
ナットとボルトとを螺合する際(第1部材と第2部材との締結動作を行う際)、第1領域が第2領域よりも下方に位置すると、第2領域にスライド移動したナットが、自重により再び第1領域にスライド移動するおそれがある。これに対し、本発明に係る第1手段の上記好ましい形態によれば、第1領域が第2領域よりも上方に位置するので、第2領域にスライド移動したナットが再び第1領域に戻り難く、ボルトとナットとを的確に素早く螺合させることができる。
なお、ナットとボルトとの螺合が完了した後には、第1部材と第2部材とは締結している状態であるため、第1領域が第2領域よりも下方に位置したとしても何ら問題は生じない。
【0022】
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記ナットは、前記ナット収納部に収納された状態において、前記第1領域から前記第2領域へ延びる前記ナット収納部の連接方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称であり、前記ナット収納部は、前記ナットが前記連接方向に対して予定されている本来の向きで挿入される場合に限って前記ナットを収納可能な形状の内周面を有する。
「前記ナット収納部の連接方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向(以下、この方向を適宜「幅方向」と称する)を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称である」とは、幅方向に延びる如何なる直線を基準にしたとしても、ナットの外縁形状が線対称にならない(線対称の基準となる直線が存在しない)ことを意味する。
【0023】
ナット収納部に収納された状態で幅方向を基準として外縁形状が線対称となるナット(例えば、六角ナットや丸ナット)の場合、ナット収納部の連接方向に対して予定されている本来のナットの向きを誤って反転させたとしても、線対称であるため、ナット収納部の第1領域に挿入可能である。しかしながら、第2領域にナットがスライド移動した際、向きが反転しているため、ナットの孔部がボルトに螺合する適切な位置に来ない場合がある。このような場合、ナットを第1領域から抜き取り、その向きを整えた上で、再度ナットをナット収納部に収納する必要があり、非常に煩雑である。
【0024】
これに対し、本発明に係る第1手段の上記好ましい形態によれば、幅方向を基準としてナットの外縁形状が非線対称であり、なお且つ、ナット収納部は、ナットが本来の向きで挿入される場合に限って収納可能な形状の内周面を有するため、ナットを第1領域に挿入する際にナットの向きを間違えることがなく、本来の向きでナットを収納することができる。この結果、より迅速にボルトとナットとを螺合させることができる。
【0025】
本発明に係る第1手段の好ましい形態では、前記ナットが前記第2領域に移動し、前記ナットの前記連接方向の端部が前記第2領域の前記連接方向の端面に当接した状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能である。
【0026】
本発明に係る第1手段の上記好ましい形態によれば、ボルトをナットに螺合させる際、ナットの連接方向の端部が第2領域の連接方向の端面に当接した状態になる。このため、ボルトに螺合するナットの連接方向の位置を正確に位置決めすることができ、容易にボルトとナットとを螺合させることができる。
【0027】
本発明に係る第1手段の上記好ましい形態において、幅方向を基準としてナットの外縁形状が非線対称である例として、ナットの外縁形状が平面視D字状である場合を挙げることができる。また、ナット収納部が、ナットが本来の向きで挿入される場合に限って収納可能な形状の内周面を有する例として、ナット収納部が平面視D字状の内周面を有する場合を挙げることができる。
【0028】
本発明に係る第1手段では、ナット収納部が第1領域と第2領域とを有する構成であるが、これに代えて、ナット収納部が第2領域に相当する部分のみを有する構成を採用することも可能である。
すなわち、本発明に係る第2手段は、第1部材と第2部材とを締結する締結構造であって、ボルトと、前記ボルトに螺合可能なナットと、前記第1部材に設けられ、前記ナットを収納可能な溝状のナット収納部と、前記第2部材に設けられ、前記ボルトが挿通可能な貫通部と、を備え、前記ナット収納部は、前記ナット収納部の底面に平行な方向から前記ナットが挿入可能で且つ前記ナット収納部の底面と直交する方向への前記ナットの離脱を阻止する離脱阻止手段を有し、前記ナットが前記ナット収納部に挿入され収納された状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能であり、前記ナットは、前記ナット収納部に収納された状態において、前記ナットの挿入方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称であり、前記ナット収納部は、前記ナットが前記挿入方向に対して予定されている本来の向きで挿入される場合に限って前記ナットを収納可能な形状の内周面を有することを特徴とする締結構造である。
【0029】
本発明に係る第2手段の締結構造は、ナット収納部の底面に平行な方向からナットを挿入可能(第1手段の締結構造では、ナット収納部の底面と直交する方向からナットを挿入可能)である点を除き、本発明に係る第1手段の締結構造と同様の構成を有し、第1手段の締結構造と同様の作用効果を奏する。
【0030】
本発明に係る第2手段についても、本発明に係る第1手段の好ましい形態を転用可能であり、第1手段の好ましい形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
すなわち、本発明に係る第2手段の好ましい形態では、前記離脱阻止手段が、前記ナット収納部の内周面から内側に延設されたつば部であり、前記ナット収納部に収納された前記ナットの周縁部が前記つば部に当接することにより前記ナットの離脱が阻止される。
上記好ましい形態のように、離脱阻止手段がつば部であれば、切削によってナット収納部を第1部材に形成する際、部分的に切削しない箇所を設けるだけで容易に形成可能である。このため、ナット収納部ひいては締結構造を既存の第1部材を用いて容易に形成することができる。
【0032】
本発明に係る第2手段の好ましい形態では、前記ナットの外周面が前記ナット収納部の内周面に当接することにより前記ナットの前記ナット収納部における回転が阻止される。
上記好ましい形態では、ボルトの回転に伴ってナットが回転しようとしても、ナットの外周面がナット収納部の内周面に当接することで回転が阻止されるため、ナット収納部におけるナットの供回りを容易に防ぐことができる。このため、ボルトをナットに容易に螺合させることができる。
【0033】
本発明に係る第2手段の好ましい形態では、少なくとも前記ナットと前記ボルトとが螺合する際、前記ナット収納部における前記ナットの挿入方向上流側が前記ナットの挿入方向下流側よりも上方に位置する。
ナットとボルトとを螺合する際、ナット収納部におけるナットの挿入方向上流側がナットの挿入方向下流側よりも下方に位置すると、ナット収納部に収納されたナットが、自重によりナット収納部から抜け出るおそれがある。これに対し、上記好ましい形態によれば、ナットの挿入方向上流側がナットの挿入方向下流側よりも上方に位置するので、ナット収納部に収納されたナットがナット収納部から抜け出し難く、ボルトとナットとを的確に素早く螺合させることができる。
【0034】
本発明に係る第2手段の締結構造では、前記ナットは、前記ナット収納部に収納された状態において、前記ナットの挿入方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称であり、前記ナット収納部は、前記ナットが前記挿入方向に対して予定されている本来の向きで挿入される場合に限って前記ナットを収納可能な形状の内周面を有する。
本発明に係る第2手段の締結構造によれば、幅方向(ナットの挿入方向と直交し且つナット収納部の底面と平行な方向)を基準としてナットの外縁形状が非線対称であり、なお且つ、ナット収納部は、ナットが本来の向きで挿入される場合に限って収納可能な形状の内周面を有するため、ナットを挿入する際にナットの向きを間違えることがなく、本来の向きでナットを収納することができる。この結果、より迅速にボルトとナットとを螺合させることができる。
【0035】
本発明に係る第2手段の好ましい形態では、前記ナットの前記挿入方向の端部が前記ナット収納部の前記挿入方向の端面に当接した状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能である。
上記好ましい形態によれば、ボルトをナットに螺合させる際、ナットの挿入方向の端部がナット収納部の挿入方向の端面に当接した状態になる。このため、ボルトに螺合するナットの挿入方向の位置を正確に位置決めすることができ、容易にボルトとナットとを螺合させることができる。
【0036】
本発明に係る第2手段の好ましい形態では、前記ナットは、外縁形状が平面視D字状であり、前記ナット収納部は、平面視D字状の内周面を有する。
【0037】
本発明の別の局面によれば、プラズマ処理装置が提供される。本発明に係るプラズマ処理装置は、前記第1手段又は前記第2手段の締結構造と、前記締結構造によって締結される前記第1部材及び前記第2部材とを備える。
また、本発明の別の局面によれば、第1部材と、第2部材とを備えると共に、前記第1部材と前記第2部材とを締結する締結構造を内部に備えるプラズマ処理装置であって、前記締結構造は、ボルトと、前記ボルトに螺合可能なナットと、前記第1部材に設けられ、前記ナットを収納可能な溝状のナット収納部と、前記第2部材に設けられ、前記ボルトが挿通可能な貫通部と、を備え、前記ナット収納部は、前記ナット収納部の底面と直交する方向から前記ナットが挿入可能な第1領域と、前記第1領域と連接しており且つ前記ナット収納部の底面と直交する方向への前記ナットの離脱を阻止する離脱阻止手段を有する第2領域と、を有しており、前記第1領域に挿入した前記ナットの少なくとも一部が前記第2領域にスライド移動可能であり、且つ、前記ナットが前記第2領域に移動した状態において、前記貫通部に挿通された前記ボルトが前記ナットに螺合可能であることを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0038】
本発明に係るプラズマ処理装置は、第1手段又は第2手段の締結構造を備えることにより、長期間に亘って締結構造を使用可能である。特に、プラズマ処理装置の内部は、ナットが処理ガスに曝露されたり、反応生成物が付着し易い環境である。本発明に係るプラズマ処理装置は、処理ガスの曝露によりナットが腐食したり、反応生成物の付着によりナットが汚染しても、新品のナットに容易に交換することができる。このため、第1部材自体を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造を使用可能である。
【0039】
なお、本発明に係るプラズマ処理装置が備える締結構造は、必ずしもこれに限るものではないが、第1部材が被締結部材(例えば、上部電極)であり、第2部材が被締結部材に内側から取り付ける部品(例えば、シャワーヘッド)である場合に特に有用である。この場合において、第1手段の締結構造を用いれば、ボルトの挿通方向及びナットの挿入方向を、部品(第2部材)の取り付け方向と同じ方向にすることができるため、作業効率に優れる。
【0040】
本発明の別の局面によれば、第1手段の締結構造に用いられるナットが提供される。
本発明に係る第1手段の締結構造に用いられる締結構造用ナットは、前記ナットが前記ナット収納部に収納された状態において、前記第1領域から前記第2領域へ延びる前記ナット収納部の連接方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称である。
本発明に係る第1手段の締結構造に用いられる締結構造用ナットによれば、幅方向を基準としてナットの外縁形状が非線対称であるため、ナットを第1領域に挿入する際にナットの向きを間違えることがなく、予定されている本来の向きでナットを収納することができる。この結果、より迅速にボルトとナットとを螺合させることができる。
【0041】
本発明の別の局面によれば、第2手段の締結構造に用いられるナットが提供される。
本発明に係る第2手段の締結構造に用いられる締結構造用ナットは、前記ナットが前記ナット収納部に収納された状態において、前記ナットの挿入方向と直交し且つ前記ナット収納部の底面と平行な方向を基準として、前記ナットの外縁形状が非線対称である。
本発明に係る第2手段の締結構造に用いられる締結構造用ナットによれば、幅方向を基準としてナットの外縁形状が非線対称であるため、ナットをナット収納部に挿入する際にナットの向きを間違えることがなく、予定されている本来の向きでナットを収納することができる。この結果、より迅速にボルトとナットとを螺合させることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上に説明したように、本発明によると、ナットを容易に交換することができるため、第1部材を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造を使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第1実施形態に係る締結構造を備えたプラズマ処理装置を表す概要図。
図2図1に示すプラズマ処理装置で用いられる上部電極の下面図。
図3図3(a)は、同プラズマ処理装置で用いられるシャワーヘッドの平面図。図3(b)は、図3(a)のB-B線拡大断面図。
図4図4(a)は、図2のAで示す破線で囲われたナット収納部の拡大平面図。図4(b)は、第1実施形態で用いられるナットの拡大平面図。
図5図5(a)は、図4(a)のC-C線断面図。図5(b)は、図4(a)のD-D線断面図。
図6図6(a)は、第1領域にナットが収納されたナット収納部の拡大平面図。図6(b)は、第2領域にナットが収納されたナット収納部の拡大平面図。図6(c)は、図6(b)のE-E線断面図。
図7】上部電極にシャワーヘッドを締結する手順を説明するプラズマ処理装置の概要図。
図8】第1領域が第2領域よりも上方に位置するナット収納部の拡大平面図。
図9】ボルトとナットとを螺合させ、上部電極とシャワーヘッドとを締結した状態を示す部分拡大断面図。
図10図10(a)は、第2実施形態の第2領域を表す上部電極の部分拡大断面図。図10(b)は、該第2領域にナットを収納した状態を表す上部電極の部分拡大断面図。
図11】第3実施形態のナットがナット収納部の第1領域に収納された状態を表す拡大平面図。
図12図12(a)は、第4実施形態のナットがナット収納部の第1領域に収納された状態を表すナット収納部の拡大平面図。図12(b)は、同ナットがナット収納部の第2領域に収納された状態を表すナット収納部の拡大平面図。
図13】ボルトと第4実施形態のナットとを螺合させ、上部電極とシャワーヘッドとを締結した状態を示す部分拡大断面図(図12(b)のF-F線断面図に相当)。
図14図14(a)は、第1実施形態のナットの拡大平面図。図14(b)は、該ナットの孔部が変位している状態を示す拡大平面図。
図15図15(a)は、第5実施形態のナットの拡大平面図。図15(b)は、図15(a)のH-H線断面図。
図16図16(a)は、第5実施形態のナットを第2領域に収納した状態を表すナット収納部の拡大平面図。図16(b)は、図16(a)のI-I線断面図。
図17図1に示すプラズマ処理装置で用いられる上部電極の他の例を示す下面図。
図18図18(a)は、図17のJ-J線拡大断面図。図18(b)は、図17のK-K線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図1乃至図9を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る締結構造について説明する。次いで、図10乃至図18を参照しつつ、第2乃至第6実施形態に係る締結構造について順番に説明する。第2乃至第6実施形態に係る締結構造については、それまでに説明した締結構造との相違点について説明し、共通する構成及び作用・効果については説明を適宜省略する。各図における寸法は、実際のものとは異なる場合がある点に留意されたい。
また、図1において第1実施形態に係る締結構造を備えたプラズマ処理装置全体を、図2乃至図18においてプラズマ処理装置を構成する各部材を部分的に描写しているが、本発明の締結構造と無関係な部分については適宜描写を省略又は簡略化して描写している点に留意されたい。
【0045】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る締結構造を備えたプラズマ処理装置を表す概要図である。
図1に示すプラズマ処理装置10は、平行平板型(容量結合型)のプラズマ処理装置10である。平行平板型のプラズマ処理装置10は、チャンバ11と、チャンバ11の上端開口部を覆うように設けられた上部電極12と、上部電極12の上方に設けられたガス供給管13と、上部電極12の下方に設けられたシャワーヘッド14と、チャンバ11の内部に設けられた下部電極15と、載置台16と、を備える。また、プラズマ処理装置10は、上部電極12とチャンバ11との間に介在する絶縁部17と、高周波電源18、19とを備える。下部電極15上には、プラズマ処理の対象となるシリコンウエハなどの被処理体Sが載置される。
【0046】
上記構成のプラズマ処理装置10において、高周波電源18、19から上部電極12及び/又は下部電極15(本実施形態では、上部電極12及び下部電極15の双方)に高周波電力が印加されると、上部電極12と下部電極15との間に高周波電界が発生する。この高周波電界により、ガス供給源(図示せず)からガス供給管13を介してチャンバ11の内部に供給された処理ガスがプラズマ化され、このプラズマによって被処理体Sにプラズマ処理(例えば、プラズマエッチング処理やプラズマCVD処理)が施される。
【0047】
プラズマ処理装置10を構成する各部材は、本発明の第1実施形態に係る締結構造20によって締結することが可能である。以下、締結構造20によって締結される各部材のうち、ナット収納部2が設けられた部材を「第1部材」と称し、締結構造20によって第1部材と締結される部材を「第2部材」と称する。本実施形態では、図1に示すように、締結構造20によって第1部材である上部電極12に第2部材であるシャワーヘッド14が締結されている。
【0048】
図2は、プラズマ処理装置10で用いられる上部電極12の下面図である。
上部電極12は、チャンバの上端開口部を閉塞するように設けられた、高周波電力の印加対象となる部材であり、一般的に、アルミニウムや単結晶シリコンなどから構成されている。
図2に示すように、本実施形態では、上部電極12の下面は円形であり、その中央部に貫通孔(ガス流路12a)が1つ設けられている。ガス供給源からガス供給管13を介して供給された処理ガスは、このガス流路12aを介して上部電極12の下方に締結されたシャワーヘッド14に供給される。本実施形態では、上部電極12の下面にナット収納部2が設けられている。
【0049】
図3(a)は、プラズマ処理装置10で用いられるシャワーヘッド14の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のB-B線拡大断面図である。
シャワーヘッド14は、上部電極12を介してガス供給源から供給された処理ガスをチャンバ内部に均一に拡散して吐出する部材である。シャワーヘッド14は、例えば、図3(a)に示すように、多数の貫通孔(ガス吐出孔14a、図3(a)では黒点として描写している)が略均一に設けられた円形の部材である。ガス供給源から供給された処理ガスは、このガス吐出孔14aを介してチャンバ内部に吐出される。
シャワーヘッド14には、上面から下面にかけて貫通する貫通部としての貫通孔(ボルト孔14b)が設けられている。本実施形態では、貫通部としてボルト孔14が設けられているが、本発明はこれに限るものではなく、シャワーヘッド14の周縁から内側に向けて形成された切欠き等であってもよい。
【0050】
図3(b)に示すように、ボルト3を、シャワーヘッド14の下面側から白矢印の示す方向に移動(即ち、ボルト孔14bに挿入)させつつ、図2に示す上部電極12に設けられたナット収納部2に収納したナット4に螺合させることにより、第1部材である上部電極12の下面と第2部材であるシャワーヘッド14とが締結される。
【0051】
以下、上部電極12に設けられたナット収納部2及びナット収納部2に収納されるナット4について詳しく説明した後、第1部材(上部電極12)と第2部材(シャワーヘッド14)との締結手順について説明する。
なお、本実施形態では、上部電極12の下面にナット収納部2を設けているため、実際にプラズマ処理装置10を使用する際、ナット収納部2は下方を向いている(図1参照)。しかし、本発明の締結構造20は、ナット収納部2がどの方向を向いていても使用可能である。図5図6(c)及び図9では、説明の便宜上、ナット収納部2の開口部24が紙面の上方を向くようにナット収納部2を描写している。
【0052】
<ナット収納部及びナット>
ナット収納部2は、ナット4を収納可能であると共にその内部でナット4がスライド移動可能な溝状の凹部である。
図2に示すように、本実施形態では、ナット収納部2は、上部電極12の下面周縁に沿って複数(図2では、12個)並設されている。なお、ナット収納部2の数は第1部材(上部電極12)と第2部材(シャワーヘッド14)とを十分な強度で締結できれば特に限定されず、シャワーヘッド14の重量や形状に合わせて適宜変更することが可能である。隣り合うナット収納部2の間隔についても同様である。
【0053】
なお、シャワーヘッド14に設けられるボルト孔14bの位置及び数は、上部電極12に設けられるナット収納部2の位置及び数に合ったものとされる。
図3(a)に示すように、本実施形態では、ボルト孔14bの数はナット収納部4と同数(12個)とされている。また、図3(a)に示すように、ボルト孔14bは周縁に沿って等間隔に配置されている。これに応じて、図2に示すように、ナット収納部2の第2領域22も周縁に沿って等間隔に配置されている。
【0054】
図4(a)は、図2のAで示す破線で囲われたナット収納部2の拡大平面図であり、図4(b)は、第1実施形態で用いられるナット4の拡大平面図である。
図5(a)は、図4(a)のC-C線断面図であり、図5(b)は、図4(a)のD-D線断面図である。
図2図4乃至図5に示すように、ナット収納部2は、第1領域21と第2領域22とに大別される。第1領域21は、ナット収納部2の底面26と直交する方向(以下、「入出方向」と称する)からナット4を挿入可能な領域である。なお、以下、必要に応じて、入出方向のうち、ナット収納部2の底面26に向かう方向を「入方向」と称し、ナット収納部2の底面26から離れる方向を「出方向」と称して区別する。第1領域21は、入方向からナット4を挿入可能な領域である。
【0055】
第2領域22は、第1領域21と連接しており、入出方向(出方向)へのナット4の離脱を阻止する離脱阻止手段23が設けられた領域である。
図5に示すように、本実施形態では、第1領域21と第2領域22とは連続した1つの平面を底面26として共有している。このため、第1領域21に挿入したナット4を、その底面26に沿ってスライド移動させることで、容易に第2領域22へナット4を収納することができる。同様に、第2領域22から第1領域21へナット4をスライド移動させることも可能である。
なお、ナット4のスライド移動は、例えば、素手又は適当な治具(例えば、六角レンチなど)を用いて、第1領域21から第2領域22へナット4を押し込むことで実現可能である。ナット収納部2の深さ(内周面25の高さ)は特に限定されず、ナット4の形状やボルト3の雄ねじ部32の長さに合わせて適宜設定することが可能である。
【0056】
ナット収納部2の開口部24のうち、第1領域21に対応する部分(以下、「第1開口部」と称する)は、ナット4が挿入可能な寸法を有する。第1開口部の寸法は、使用するナット4の外縁形状に合わせて適宜変更することが可能である。
図4(b)に示すように、例えば、本実施形態では、外縁が平面視正六角形状のナット4(所謂、六角ナット)を用いている。また、本実施形態では、ナット収納部2の内周面25は、互いに平行に延びる2つの内側面25aと、第1領域21において2つの内側面25aを繋ぐ第1端面25bと、第2領域22において2つの内側面25aを繋ぐ第2端面25cと、から構成されている。なお、本実施形態では、第1端面25b及び第2端面25cは円弧面とされているが、この端面の形状は特に限定されず、平面であってもよい。また、本実施形態では、2つの内側面25aは平行な平面とされているが、これに限定されず、例えば、互いの離隔距離(後述の長さL1に相当)が一定となるように同心状に配置された緩やかな円弧面にすることも可能である。
【0057】
図6(a)は、第1領域21にナット4が収納されたナット収納部2の拡大平面図であり、図6(b)は、第2領域22にナット4が収納されたナット収納部2の拡大平面図であり、図6(c)は、図6(b)のE-E線断面図である。
本実施形態では、2つの内側面25a間の長さL1(以下、「側面幅L1」と称する)は、ナット4の二面幅L2よりも僅かに長くなっている。第1開口部には、第2領域22のように離脱阻止手段23が設けられていない。このため、図6(a)に示すように、第1開口部から第1領域21へナット4を挿入すると、ナット4の外周面を構成する6つの平面のうち対向する2つの平面が、ナット収納部2の2つの内側面25aに僅かな空隙Gを隔てて隣接する。即ち、ナット4は第1領域21に完全には嵌合しない。このため、第1領域21に収納されたナット4を図6(a)の白矢印で示す方向へスライド移動させて、図6(b)に示すように第2領域22に収納できる。また、第1領域21に収納したナット4を再び出方向へ移動させる(即ち、第1領域21に収納したナット4を第1開口部から抜き取る)こともできる。
【0058】
側面幅L1の長さは特に限定されないが、通常、ナット4の二面幅L2の1.01~1.1倍であり、好ましくは1.01~1.1倍である。本実施形態では、側面幅L1の長さがナット4の二面幅L2の1.01倍を下回ると、第1領域21からナット4を抜き取り難くなるおそれがある。
【0059】
第2領域22には、第1領域21から第2領域22にスライド移動したナット4が出方向へ離脱することを阻止する離脱阻止手段23が設けられている。この離脱阻止手段23により、第2領域22に収納されたナット4が、ナット収納部2の開口部24のうち第2領域22に対応する部分(以下、「第2開口部」と称する)からナット収納部2の外側へ離脱しなくなる。このため、第1部材と第2部材との締結状態を維持することが可能となる。
【0060】
離脱阻止手段23の形態は、特に限定されないが、本実施形態では、第2領域22の内周面25から内側に延設されたつば部を離脱阻止手段23として用いている。本実施形態では、第2端面25cは円弧面とされており且つナット収納部2の2つの内側面25aが互いに平行であるため、つば部23は平面視U字状になっている。つば部23の第2領域22の内周面25からの突出長さは、ナット4の離脱を阻止できる限りにおいて特に限定されない。ただし、ナット収納部2を平面視した際、つば部23と第2領域22に収納されたナット4の孔部41とが重なる部分を有さない突出長さである必要がある。つば部23とナット4の孔部41とが重なる部分を有すると、第2開口部からナット収納部2にボルト3を挿入してナット4に螺合させることができないためである。
【0061】
つば部23の厚み(入出方向についての寸法)は特に限定されないが、つば部23が過度に薄いと第1部材(上部電極12)と第2部材(シャワーヘッド14)の締結強度が低くなり、締結の際や締結後につば部23が破損するおそれもある。これを考慮すると、つば部23の厚みは、好ましくは2mm~5mmであり、より好ましくは3mm~5mmである。
【0062】
なお、本明細書において、「ナット4が出方向へ離脱することを阻止する」とは、ナット4が離脱阻止手段23を超えて出方向へ移動しないことを意味する。本実施形態のように、第2領域22に収納されたナット4と離脱阻止手段23との間に空隙が殆どない場合(図6(c)参照)、実質的に第2領域22に収納されたナット4は出方向へ移動しないが、ナット4と離脱阻止手段23との間に空隙がある場合(図示せず)、この空隙の長さの分だけナット4の移動は許容される。
【0063】
本実施形態では、対向するつば部23の部位の離隔距離L3は、ナット4の二面幅L2よりも短くされている。したがい、第2領域22に収納されたナット4を出方向に移動させようとしても、ナット4の周縁部42がつば部23に当接するため、第2開口部からナット収納部2の外側へのナット4の離脱が阻止される(図6(b)参照)。
なお、離隔距離L3の長さは特に限定されないが、通常、ナット4の二面幅L2の0.5倍~0.9倍であり、好ましくは0.5倍~0.8倍である。
【0064】
本発明では、第2領域22においてナット4の回転が阻止されることが好ましい。
第2領域22に収納されたナット4とボルト3とを螺合させる際、すなわち、ボルト3の雄ねじ部32をナット4の孔部41に設けられた雌ねじ部に螺合させる際、ナット4が固定されていなければ、ボルト3に回転に伴ってナット4も回転(供回り)する。素手や治具によってナット4を固定しつつボルト3を螺合させることも可能であるが、非常に煩雑であり、ボルト3とナット4との螺合に長時間を要することになる。この点、第2領域22に収納されたナット4の回転が阻止されれば、素手や治具を用いることなくナット4の供回りを防ぐことができ、容易に素早くボルト3とナット4とを螺合させることができる。
【0065】
第2領域22においてナット4の回転を阻止する構成については、特に限定されないが、ナット4の外周面43が第2領域22の内周面25に当接することによりナット4の第2領域22における回転が阻止される場合を例示できる。本実施形態では、ナット収納部2の側面幅L1が、ナット4の孔部41の中心から外周面43に至る最大長さ(L4)の2倍未満(即ち、L1<2×L4)となっている。したがい、第2領域22においてナット4を回転させる周方向の力が作用しても、ナット4の外周面43がナット収納部2の内側面25aに当接するため、ナット4は回転できない。したがい、ボルト3をナット4に螺合する際、ナット4の供回りを効果的に防ぐことができる。
【0066】
なお、「ナット4の孔部41の中心から外周面43に至る最大長さ(L4)」とは、図4(b)に示すようにナット4を平面視し、ナット4の孔部41の中心からナット4の外周面43に至る無数の仮想直線を想定した場合において、最も長い仮想直線の長さを意味する。本実施形態では、ナット4として六角ナットを用いているため、ナット4の孔部41の中心から外周面43に至る最大長さ(L4)は、ナット4の孔部41の中心からナット4の外縁を構成する正六角形の角に至る長さに等しい。
【0067】
本発明の締結構造20を構成するナット4及びボルト3の材質は特に限定されないが、耐腐食性を有する金属であることが好ましい。このような金属としては、例えば、チタン、ニッケル、又はこれらの合金が挙げられ、好ましくはニッケル合金が挙げられる。
ニッケル合金は、ニッケルを主成分として20質量~90質量%含み且つその他の元素を1種又は複数種含む金属である。ニッケル合金に含まれるその他の元素としては、例えば、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ケイ素、マンガン、炭素、ニオブなどを例示できる。特に、耐腐食性が高いことから、例えば、ハステロイ(登録商標)やインコネル(登録商標)を用いることが好ましい。
【0068】
また、ナット4及びボルト3には、耐腐食性のコーティング膜を用いてコーティング処理を施してもよい。コーティング膜の材質は、特に限定されないが、例えば、ニッケルやフッ素系樹脂が挙げられる。
【0069】
なお、本発明の締結構造20を構成するナット収納部2は、例えば、エンドミルなどの切削手段を用いて第1部材(本実施形態では、上部電極12)に溝状の凹部を加工することにより容易に設けることができる。特に、本実施形態のように離脱阻止手段23としてつば部を採用している場合、このような切削手段によってナット収納部2を設け易い。
【0070】
<第1部材と第2部材との締結手順>
図7は、上部電極12にシャワーヘッド14を締結する手順を説明するプラズマ処理装置10の概要図である。
第1部材である上部電極12にシャワーヘッド14を締結する場合、通常、プラズマ処理装置10に上部電極12を取り付けたままシャワーヘッド14が上部電極12の下面に締結される。
本実施形態のプラズマ処理装置10は、前述のように、被処理体Sを収納したチャンバ11の上部開口部が上部電極12によって閉塞された構造を有している。具体的には、図1及び図7に示すように、チャンバ11は、上壁11a及び側壁11bを具備する。上部電極12は、絶縁部17を介して上壁11aに取り付けられている。上壁11aと側壁11bとは、ヒンジ5により連結されている。このため、プラズマ処理装置10を構成する各部材をメンテナンスする際には、図7の白矢印A1に示すように、ヒンジ5を支点として側壁11bに対して上壁11a、絶縁部17及び上部電極12を上方に約90°回転させることにより、チャンバ11を開口状態にすることが可能である。
【0071】
上部電極12にシャワーヘッド14を取り付けるには、まず、プラズマ処理装置10のチャンバ11を図7に示すような開口状態とする。開口状態において、上部電極12の下面は水平面と略直交する(鉛直面と略平行となる)。次いで、シャワーヘッド14を上部電極12の下面と平行にし、白矢印A2に示すように上部電極12の下面に近付け、ボルト3とナット4とを螺合させる。
【0072】
具体的には、まず、図7に示す上部電極12のナット収納部2に対し、その第1開口部から第1領域21にナット4を挿入する(図6(a)参照)。次いで、第1領域21に挿入したナット4を第2領域22にスライド移動させる(図6(b)参照)。
【0073】
なお、本発明では、少なくともナット4とボルト3とが螺合する際、第1領域21が第2領域22よりも上方に位置することが好ましい。図2は、図7に示すようにチャンバ11を開口状態にした際、矢印A2に示す方向から見た上部電極12の下面図になっている。本実施形態では、図2に示すように、全てのナット収納部2は、チャンバ11を開口状態にした際(即ち、ナット4とボルト3とが螺合する際)、その第1領域21が第2領域22よりも上方に位置するように配置されている。
【0074】
第1領域21が第2領域22よりも下方に位置すると、第2領域22に位置するナット4が、自重により第1領域21に戻り、ナット収納部2から脱落するおそれがある。この点、図2に示すように、第1領域21が第2領域22よりも上方に位置すると、ナット4が、自重により第2領域22から第1領域21に戻らないため、ボルト3とナット4とを的確に素早く螺合させることができる。
【0075】
図8は、第1領域21が第2領域22よりも上方に位置するナット収納部2の拡大平面図である。
図8に示すように、第1領域21が第2領域22よりも上方に位置する場合、第1領域21から第2領域22へ延びるナット収納部2の連接方向(以下、単に「連接方向」と称する)と水平面との成す内角αは特に限定されないが、摩擦角の観点から、好ましくは20°~90°であり、より好ましくは30°~90°であり、さらに好ましくは45°~90°である。
内角αが上記の範囲内にあれば、第1領域21に挿入したナット4が自重により自然に第2領域22にスライド移動し易く、素手や治具を用いてナット4に触らずともナット4を第2領域22に移動させ易くなる。
【0076】
そして、上記のようにして、第2領域22に位置するナット4に対しボルト3を螺合させることで、上部電極12にシャワーヘッド14を締結する。
前述のように、本実施形態では、シャワーヘッド14にボルト3が挿通されるボルト孔14bが設けられている(図3(b))。ボルト孔14bは、ボルト3の雄ねじ部32のねじ径よりも大きく且つボルト3の頭部31の外径よりも小さな内径を有する。したがい、シャワーヘッド14の下面側から上面側にかけてボルト3をボルト孔14bに挿通し、ナット4の雌ねじ部(孔部41)に螺合させることができる。
【0077】
図9は、ボルト3とナット4とを螺合させ、上部電極12とシャワーヘッド14とを締結した状態を示す部分拡大断面図である。
上述のように、ナット4に対しボルト3を螺合させることで、最終的に、図9に示すように、シャワーヘッド14が上部電極12に密接した状態で、上部電極12とシャワーヘッド14との締結が完了する。
なお、特に図示しないが、シャワーヘッド14のボルト孔14bとボルト3の頭部31との間に、ワッシャーを挟み込んでもよい。
【0078】
締結した上部電極12とシャワーヘッド14とは、上述した手順と逆の手順により、容易に非締結状態とすることができる。本実施形態の締結構造20では、非締結状態において、ナット4を第1領域21から抜き取ることができる。このため、ナット4が腐食したり汚染した場合、この腐食・汚染したナット4を第1領域21から抜き取ることにより、新しいナット4に容易に交換することができる。したがい、上部電極12を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造20を使用可能である。
【0079】
[第2実施形態]
図10(a)は、第2実施形態の第2領域22を表す上部電極12の部分拡大断面図であり、図10(b)は、第2領域22にナット4を収納した状態を表す上部電極12の部分拡大断面図である。
第2実施形態は、第1実施形態と比べて、ナット収納部2の第2領域における内側面25aの形状を変更しており且つ離脱阻止手段23としてつば部以外の手段を採用している点が異なる。
【0080】
第1実施形態では、ナット収納部2の第1領域21及び第2領域22において、2つの内側面25aは互いに平行で且つ底面26から直立している(図5(a)参照)。これに対し、図10(a)に示すように、本実施形態では、2つの内側面25aは、第2領域22において、開口部24から底面26にかけて(即ち、入方向に向かうにつれ)互いに離反するテーパ面とされている。このように、本実施形態では、所謂アリ溝構造の第2領域22を採用している。
【0081】
本実施形態では、第2領域22における内側面25aの最小側面幅L5は、ナット4の二面幅L2よりも短い。したがい、図10(b)に示すように、第2領域22にナット4をスライド移動させた後においては、内側面25aがナット4の外周面43に当接することによりナット4が出方向へ移動することが阻止される。即ち、本実施形態では、内側面25aが離脱阻止手段23としての機能を奏することになる。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、ボルト3とナット4とを螺合させ、上部電極12とシャワーヘッド14とを締結することができる。
【0082】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態のナット4がナット収納部2の第1領域21に収納された状態を表す拡大平面図である。
第3実施形態では、第1実施形態と比べて、ナット4の形状を変更している。
第1実施形態では、ナット4として六角ナットを用いているが、本発明で用いることができるナット4の形状は特に限定されず、種々の形状のナット4を用いることができる。本実施形態では、図11に示すように、ナット4の外縁形状が、ナット収納部2の連接方向についての寸法の方が、ナット収納部2の幅方向(ナット収納部2の連接方向と直交し且つナット収納部2の底面26と平行な方向)についての寸法よりも大きな長円形状とされている。しかし、これに限定されず、楕円形状や長方形など、直交する方向の寸法が異なる他の外縁形状を有するナット4を用いることも可能である。
【0083】
本実施形態のように、直交する方向の寸法が異なる外縁形状を有するナット4を用いれば、ナット4をナット収納部2に挿入する際、予定されている本来のナット4の向きを誤って挿入するおそれが低減する。すなわち、外縁形状の寸法の小さな方が連接方向に向くように(外縁形状の寸法の大きな方が幅方向に向くように)ナット4を挿入するおそれがなくなる。
【0084】
[第4実施形態]
図12(a)は、第4実施形態のナット4がナット収納部2の第1領域21に収納された状態を表すナット収納部2の拡大平面図であり、図12(b)は、同ナット4がナット収納部2の第2領域22に収納された状態を表すナット収納部2の拡大平面図である。図13は、ボルト3と第4実施形態のナット4とを螺合させ、上部電極12とシャワーヘッド14とを締結した状態を示す部分拡大断面図である。
第4実施形態でも、第1実施形態と比べて、ナット4の形状を変更している。
本実施形態では、図12(a)に示すように、ナット4がナット収納部2に収納された状態において、ナット収納部2の幅方向を基準として、ナット4の外縁形状が非線対称である。すなわち、幅方向に延びる如何なる直線を基準にしたとしても、ナット4の外縁形状が線対称にならない(線対称の基準となる直線が存在しない)。図12(a)では、ナット4の外縁形状は、第2領域22側の外縁44が円弧面の平面視D字状とされているが、ナット4の外縁形状は幅方向を基準として非線対称であれば特に限定されず、その他の形状を採用することも可能である。
【0085】
図14(a)は、第1実施形態のナットの拡大平面図であり、図14(b)は、該ナットの孔部が変位している状態を示す拡大平面図である。
図14(a)に示すように、第1実施形態で用いたような六角ナットは、通常、外縁形状を構成する正六角形の図心(対角線の交点)がナット4の孔部41の中心に位置する(即ち、外縁形状の図心と孔部の中心とが一致する)。しかし、市販の六角ナットは、対角線寸法が保証されていないので、ナット4の孔部41の位置が変位している場合がある。例えば、図14(b)に示すように正六角形の図心よりも僅かにずれた位置に孔部41の中心が位置している場合がある。しかし、このような場合、孔部41が正六角形の図心から変位していることは一見して判別し難いため、ナット4をナット収納部2に収納する際、その予定されている向きを誤ることにより、第2領域22にナット4がスライド移動した際、ボルト3に螺合する適切な位置にナット4の孔部41が位置しない場合がある。このような問題は、六角ナットに限定されるものではなく、外縁形状が幅方向を基準として線対称であるナット全てに共通するものである。
【0086】
本実施形態のように、ナット4の外縁形状が幅方向を基準として非線対称であれば、ナット4をナット収納部2に挿入する際にナット4の向きを間違えることがなく、予定されている本来の向きでナット4を収納することができる。特に、本実施形態のナット収納部2は、図12(a)に示すようにナット4が本来の向き(第2領域22側に円弧面の外縁44が位置する向き)で挿入される場合に限ってナット4を収納可能な平面視D字状の内周面を有するため、より一層、ナット4の向きを間違えることがない。この結果、より迅速にボルト3とナット4とを螺合させることができる。
【0087】
また、第1実施形態のように、ナット4が六角ナットであり、ナット収納部2の第2端面25cが円弧面である場合、図6(b)、(c)に示すように、ナット4が第2領域22に移動した際、ナット4の角4aよりも先に角4b、4cが第2端面25cに当接し、これ以上移動しない(角4aが第2端面に当接しない)状態となり得る。しかも、通常、六角ナットの角は面取りされている(ただし、図6(b)、(c)等の図面では、便宜上、面取りをしていない状態でナット4を図示している)ため、ナット4の角4b、4cの当接位置が面取りの状態に応じてずれる可能性がある。仮に、ナット4の寸法や第2端面25cの曲率に応じて、角4aが第2端面に当接する場合であっても、ナット4の角4aの当接位置が角4aの面取りの状態に応じてずれる可能性がある。すなわち、第2領域22において、ボルト3に螺合するナット4の連接方向の位置を正確に位置決めすることができないおそれがある。
【0088】
これに対し、本実施形態のナット4は、第2領域22側の外縁44が円弧面とされている。この円弧面の曲率は、同じく円弧面であるナット収納部2の第2端面25cの曲率と同等に設計されている。このため、図12(b)に示すように、ナット4が第2領域22に移動した場合、ナット4の連接方向の端部(外縁44)が第2領域22の連接方向の端面(第2端面25c)に当接した状態となる。したがい、図13に示すように、ボルト3に螺合するナット4の連接方向の位置(ナット4の外縁44がナット収納部2の第2端面25cに当接する位置)を正確に位置決めすることができ、容易にボルト3とナット4とを螺合させることができる。
【0089】
さらに、本実施形態のナット4は、平面視D字状であるため、長円形状である第3実施形態のナット4を用いる場合に比べて、ナット収納部2の連接方向の寸法をコンパクトにすることが可能である。
【0090】
[第5実施形態]
図15(a)は、第5実施形態のナットの拡大平面図であり、図15(b)は、図15(a)のH-H線断面図である。図16(a)は、第5実施形態のナットを第2領域に収納した状態を表すナット収納部の拡大平面図であり、図16(b)は、図16(a)のH-H線断面図である。
第5実施形態でも、第1実施形態と比べて、ナット4の形状を変更している。
【0091】
第1実施形態では、ナット4の表面は連続した一つの面であったが、本実施形態では、ナット4の表面に段差が設けられている。具体的には、図15(a)及び図15(b)に示すように、本実施形態では、ナット4の周縁部42よりも出方向に突出するナット4の出方向端部45が設けられている。ナット4の出方向端部45は、第2領域22に収納したナット4を図16(a)に示すように平面視した際、出方向端部45の表面がナット収納部2の第2領域22の第2開口部から完全に露出するように配置されている。また、ナット4の出方向端部45の表面と離脱阻止手段23の表面(上部電極2の下面)とがほぼ同一平面上に位置する(図16(b)参照)。
【0092】
このように、本実施形態では、ナット4が出方向に突出する出方向端部45を有するため、出方向端部45の無い第1実施形態のナット4に比べて雌ねじ部を長くすることができ、ボルト3とより強く螺合させることが可能である。あるいは、雌ねじ部の長さ全体を第1実施形態のナット4と同等にした場合には、ナット4の周縁部42の入出方向の寸法を小さくすることができる(周縁部42に位置する雌ねじ部の長さを短くできる)ため、その分だけナット収納部2をコンパクトにすることが可能である。
また、本実施形態では、ナット4の出方向端部45が第1部材である上部電極2の下面と同一平面上に位置するため、ボルト3とナット4とを螺合させた際、第2部材であるシャワーヘッド14が第1部材だけでなくナット4の出方向端部45にも当接する。このため、第1部材と第2部材とをより強固に締結することができる。
【0093】
[第6実施形態]
図17は、図1に示すプラズマ処理装置10で用いられる上部電極12の他の例(上部電極12に設けられたナット収納部の他の例)を示す下面図である。
図18(a)は、図17のJ-J線拡大断面図である。図18(b)は、図17のK-K線拡大断面図である。図18の上側が上部電極12の下面側に、図18の下側が上部電極12の上面側に相当する。
第6実施形態は、第1実施形態と比べて、上部電極12及びナット収納部を変更している。
【0094】
第1実施形態では、上部電極12に設けられた何れのナット収納部2も第1領域21と第2領域22とを有する構成であったが、本実施形態では、図17に示すように、第1実施形態と同じナット収納部2の他、第2領域22に相当する部分のみを有する構成のナット収納部2A、2Bが設けられている。また、第1実施形態の上部電極12の下面は、全体が面一の平坦面であったが、本実施形態の上部電極12の下面は、円環状の平坦な最下面12bと、最下面12bの内側に設けられ、最下面12bよりも上面側に凹んだ位置にある平坦な円環面12cとから構成されている。
【0095】
具体的には、図18に示すように、ナット収納部2A、2Bは、ナット収納部2A、2Bの底面26に平行な方向(図18に示す「挿入方向」)からナット4が挿入可能で且つナット収納部2A、2Bの底面26と直交する方向へのナット4の離脱を阻止する離脱阻止手段(つば部)23を有している。図18(b)に示すように、ナット収納部2Bの底面26は、円環面12cと面一になっている。
図17を参照すれば分かるように、ナット収納部2Aには、上部電極12の外側から内側に向けてナット4が挿入される。ナット収納部2Bには、上部電極12の内側から外側に向けてナット4が挿入される。前述のように、ナット収納部2Bの底面26は、円環面12cと面一になっているため、ナット収納部2Bにナット4を挿入する際には、ナット4を円環面12に沿わせて内側から外側に移動させればよい。
【0096】
本実施形態のナット収納部2A、2Bも、第1実施形態のナット収納部2と同様に、ナット4を上部電極12のナット収納部2A、2Bに挿入して収納し、シャワーヘッド14に設けられたボルト孔14bにボルト3を挿通し、このボルト3をナット4に螺合させることで、上部電極12とシャワーヘッド14とを締結可能である。この際、ナット収納部2A、2Bは、離脱阻止手段としてのつば部23を有するため、ボルト3と螺合したナット4が離脱するおそれがない。このため、上部電極12とシャワーヘッド14との締結状態を維持可能である。
【0097】
また、第1実施形態のナット収納部2と同様に、ボルト3とナット4とが螺合していない非締結状態において、ナット4を挿入方向と反対側にナット収納部2A、2Bから抜き取ることができる。このため、例えば、ナット4が腐食したり汚染した場合、この腐食・汚染したナット4をナット収納部2A、2Bから抜き取ることにより、新しいナット4に容易に交換することができる。したがい、ナット収納部2A、2Bが設けられた上部電極12自体を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造を使用可能である。
【0098】
図17は、図2と同様に、図7に示すようにチャンバ11を開口状態にした際、矢印A2に示す方向から見た上部電極12の下面図になっている。本実施形態では、図17に示すように、ナット収納部2A、2Bは、チャンバ11を開口状態にした際(即ち、ナット4とボルト3とが螺合する際)、ナット収納部2A、2Bにおけるナット4の挿入方向上流側(図17の上側)がナット4の挿入方向下流側(図17の下側)よりも上方に位置する。
ナット4の挿入方向上流側がナット4の挿入方向下流側よりも上方に位置するので、ナット収納部2A、2Bに収納されたナット4がナット収納部2A、2Bから抜け出し難く、ボルト3とナット4とを的確に素早く螺合させることができる。
【0099】
なお、本実施形態のナット収納部2A、2Bについても、第2実施形態のアリ溝構造のようなつば部以外の離脱阻止手段23を採用することが可能である。
また、本実施形態のナット収納部2A、2Bについても、第3実施形態のナット4と同様に、挿入方向についての寸法の方がナット収納部2A、2Bの幅方向(ナット4の挿入方向と直交し且つナット収納部2A、2Bの底面26と平行な方向)についての寸法よりも大きな長円形状等のナット4を用いることが可能である。
また、本実施形態のナット収納部2A、2Bについても、第4実施形態のナット4と同様に、ナット4がナット収納部2A、2Bに収納された状態において、ナット収納部2A、2Bの幅方向を基準として、外縁形状が非線対称であるナット4(平面視D字状のナット等)を用いることが可能である。
また、本実施形態のナット収納部2A、2Bについても、第5実施形態のナット4と同様に、表面に段差が設けられたナット4を用いることが可能である。
さらに、図17に示す例では、第1実施形態と同じナット収納部2も設けているが、全てを本実施形態のナット収納部2A、2Bにすることも可能である。
【0100】
以上のように、本発明に係る締結構造について、プラズマ処理装置に用いられる場合を例に挙げて説明したが、締結構造の用途は特に限定されず、各種の機械装置、船舶、家具などに適用することも可能である。
【0101】
本明細書では、プラズマ処理装置として平行平板型(容量結合型)のプラズマ処理装置を例示して説明を行ったが、本発明の締結構造を採用し得るプラズマ処理装置はこれに限定されず、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、誘導結合プラズマ(ICP)処理装置などにも採用可能である。また、本明細書では、第1部材として上部電極12を例示し、第2部材としてシャワーヘッド14を例示したが、第1及び第2部材はこれらに限定されず、適宜変更することが可能であり、例えば、第1部材としてチャンバ11を採用し第2部材として上部電極12を採用する(即ち、チャンバ11と上部電極12との締結に本発明の締結構造20を用いる)ことも可能である。
【0102】
さらに、本発明は、上述した具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、外縁形状が非線対称である第4実施形態のナット4の出方向端部を第5実施形態に示すように突出させてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…プラズマ処理装置、20…締結構造
12…上部電極、14…シャワーヘッド、15…下部電極
2…ナット収納部、21…第1領域、22…第2領域、23…離脱阻止手段、24…開口部、25…内周面、25a…内側面、25b…第1端面、25c…第2端面、26…底面
3…ボルト、31…頭部、32…雄ねじ部
4…ナット、41…孔部、42…周縁部、43…外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18