(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
A61M25/06 510
(21)【出願番号】P 2022123694
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2019560525の分割
【原出願日】2018-12-19
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2017243604
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115315(WO,A1)
【文献】特開2016-168085(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051801(WO,A1)
【文献】特表2015-503422(JP,A)
【文献】特表2014-525319(JP,A)
【文献】特開2009-142357(JP,A)
【文献】特表2016-530934(JP,A)
【文献】国際公開第99/029361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口を有するカテーテルと、
前記カテーテルに挿通された内針と、
前記カテーテルを介して前記内針を支持することにより前記内針の撓みを抑制する撓み抑制機構と、を備え、
前記カテーテルは、前記内針が挿通されたルーメンを有し、
前記カテーテルの周壁部には、前記ルーメンの内側と前記カテーテルの外側との間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造が設けられ、
前記撓み抑制機構は、前記カテーテルが前記内針に対して前進する際に前記カテーテルと擦れ合いながら支持可能な摺接支え部を有し、
前記カテーテルが前記内針に対して前進する前の初期状態で、前記摺接支え部は、前記側部流路構造のうち最も先端側に位置する液体通路よりも基端側に位置する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテル組立体において、
前記摺接支え部は、前記側部流路構造のうち最も基端側に位置する液体通路よりも基端側に設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカテーテル組立体において、
前記摺接支え部は、最も基端側に位置する前記液体通路よりも僅かに基端側に設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記側部流路構造は、前記カテーテルの長手方向に沿って間隔を置いて配置された複数の液体通路を有する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記内針の軸方向と直交する方向のうち前記内針の先端部に設けられた刃面が向く方向を上方として上下方向を定義したとき、
最も基端側に位置する前記液体通路は、前記カテーテルの下部に設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項6】
請求項1~3及び5のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記側部流路構造は、前記カテーテルのうち前記摺接支え部が接触する部位の周方向位置に対応する周方向位置に設けられた液体通路を1つだけ有する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテルは、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の先端部に設けられ、前記カテーテルの最先端部を含み、前記カテーテル本体よりも柔軟な柔軟部と、を有する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項8】
請求項7記載のカテーテル組立体において、
前記内針の軸方向と直交する方向のうち前記内針の先端部に設けられた刃面が向く方向を上方として上下方向を定義したとき、
前記撓み抑制機構は、前記カテーテルを下方から支持する下支え部材を有し、
前記下支え部材は、前記摺接支え部を有し、
前記側部流路構造は、前記カテーテルの下部のみに設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項9】
請求項8記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテルは、先端側に向かって外径が減少するテーパ部を有し、
前記下支え部材は、前記カテーテルを弾性的に支持可能であり、
前記側部流路構造は、前記テーパ部に設けられ、
前記カテーテルが前記内針に対して前進する前の初期状態で、前記摺接支え部は、前記テーパ部よりも基端側に位置する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項10】
請求項1記載のカテーテル組立体において、
前記液体通路は、開口の内方に向かって突出したフラップが設けられた側孔である、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項11】
請求項10記載のカテーテル組立体において、
前記内針の軸方向と直交する方向のうち前記内針の先端部に設けられた刃面が向く方向を上方として上下方向を定義したとき、
前記側部流路構造は、前記カテーテルの上部のみに設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項12】
請求項4記載のカテーテル組立体において、
前記複数の液体通路は、前記カテーテルの軸に対して互いに異なる方向に開口している、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項13】
請求項12記載のカテーテル組立体において、
前記複数の液体通路は、前記カテーテルの前記軸に対して傾斜した方向に開口する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテルには、前記カテーテルよりも硬質な材
料により構成されたリングが埋設されている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項15】
請求項14記載のカテーテル組立体において、
前記少なくとも1つの液体通路は、前記リングより先端側、前記リング自体、前記リングと前記リングとの間、前記リングよりも基端側、前記リングの先端側境界及び前記リングの基端側境界のいずれか1箇所以上に設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項16】
請求項15記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテルは、外径が軸方向に一定のストレート部と、前記ストレート部よりも先端側に設けられ外径が先端側に向かって減少するテーパ部とを有し、
前記リングは、前記テーパ部及び前記ストレート部のいずれか1箇所以上に設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記液体通路は、前記カテーテルの内腔の圧力に応じて開くスリットの形態を有する、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項18】
請求項17記載のカテーテル組立体において、
前記内針の軸方向と直交する方向のうち前記内針の先端部に設けられた刃面が向く方向を上方として上下方向を定義し、前記軸方向及び前記上下方向と直交する方向を横方向と定義したとき、
前記摺接支え部は、前記カテーテルを上方から支持可能な上支え部と、前記カテーテルを横方向から支持可能な横支え部とを有し、
前記スリットは、前記カテーテルの上部及び横部のいずれかの箇所のみに設けられている、
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば患者に対して輸液を行うため又は血液透析を行うために血管に穿刺し、カテーテルを留置するカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者に対し輸液や血液透析等を行うために、例えば、カテーテル組立体が使用される。この種のカテーテル組立体は、カテーテルと、カテーテルの基端に固着されたカテーテルハブと、カテーテル内に挿入された内針と、この内針の基端に固着された針ハブとを備える(例えば、特許第5108882号公報)。カテーテル組立体の使用においては、カテーテルを内針とともに患者の血管内に穿刺し、この穿刺後に、カテーテルを患者に穿刺したままカテーテルから内針を引き抜く。これにより、カテーテルが患者の血管に留置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
輸液や血液透析のためにカテーテル組立体が用いられる場合に、血液吸引時にカテーテル先端が血管壁に貼り付いたりカテーテル先端が潰れたりすると、血液吸引ができない。また、例えば静脈輸液用で比較的長いカテーテルを備えたカテーテル組立体を患者に穿刺する場合に、内針が撓みやすい。穿刺時に内針が撓むと穿刺がしにくい。
【0004】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、血液吸引を支障なく行うことができるとともに、穿刺時に針の撓みを抑制することができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、先端開口を有するカテーテルと、前記カテーテルに挿通された内針と、前記カテーテルを介して前記内針を支持することにより前記内針の撓みを抑制する撓み抑制機構と、を備え、前記カテーテルは、前記内針が挿通されたルーメンを有し、前記カテーテルの周壁部には、前記ルーメンの内側と前記カテーテルの外側との間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造が設けられ、前記撓み抑制機構は、前記カテーテルが前記内針に対して前進する際に前記カテーテルと擦れ合いながら支持可能な摺接支え部を有し、前記カテーテルが前記内針に対して前進する前の初期状態で、前記摺接支え部は、前記側部流路構造のうち最も先端側に位置する液体通路よりも基端側に位置する。
【0006】
上記のように構成された本発明のカテーテル組立体によれば、カテーテルを介して内針を支持することにより内針の撓みを抑制する撓み抑制機構を備えるため、穿刺時の内針の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテルの周壁部には液体通路が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテルが用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で液体通路よりも基端側に摺接支え部が位置するため、液体通路の損傷を抑制でき、カテーテル前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0007】
前記摺接支え部は、前記側部流路構造のうち最も基端側に位置する液体通路よりも基端側に設けられていてもよい。
【0008】
この構成により、すべての液体通路の損傷を防止できるとともに、カテーテル前進時の撓み抑制機構に対する摺動抵抗の変動を可及的に抑制することができる。
【0009】
前記摺接支え部は、最も基端側に位置する前記液体通路よりも僅かに基端側に設けられていてもよい。
【0010】
この構成により、液体通路に干渉しない範囲で、撓み抑制機構でカテーテルを効果的に支えることができる。
【0011】
前記側部流路構造は、前記カテーテルの長手方向に沿って間隔を置いて配置された複数の液体通路を有してもよい。
【0012】
この構成により、液体通路の個数が多いため、血管に対しカテーテルがどのように触れ合っている場合でも血液吸引を確実に行うことができる。また、液体通路の個数が多いことにより液体通路の総開口面積を稼ぐことができ、吸引抵抗を低減できるため、容易に血液吸引を行うことができる。さらに、個々の液体通路の大きさを小さくできるため、液体通路が血管壁を通過する際の抵抗が小さくなり、カテーテルの血管への挿入操作が一層容易になる。
【0013】
最も基端側に位置する前記液体通路は、前記カテーテルの下部に設けられていてもよい。
【0014】
この構成により、血管に留置したカテーテルが血管から抜けかけた場合に、最も基端側に設けられた液体通路が下向きのため、液体通路が血管から抜けにくい。すなわち、カテーテルが血管から抜けかけた際に下方に向く最も基端側の液体通路が血管壁に引っ掛かる。そのとき、他の液体通路は血管内に位置する。
【0015】
前記側部流路構造は、前記カテーテルのうち前記摺接支え部が接触する部位の周方向位置に対応する周方向位置に設けられた液体通路を1つだけ有してもよい。
【0016】
この構成により、吸引しやすいように大きい液体通路を設けても、液体通路は摺接支え部と摺動しないため、液体通路が傷まない。また、液体通路が血管壁を通過する際の抵抗が1回だけであるため、穿刺しやすい。
【0017】
前記カテーテルは、カテーテル本体と、前記カテーテル本体の先端部に設けられ、前記カテーテルの最先端部を含み、前記カテーテル本体よりも柔軟な柔軟部と、を有してもよい。
【0018】
この構成により、穿刺角度が大きい場合でも、カテーテル先端が血管後壁に引っ掛かることを抑制することが可能となる。これにより、カテーテルが血管に挿入できなくなったり、カテーテル先端で血管壁を傷つけたりすることを防止することができる。
【0019】
前記撓み抑制機構は、前記カテーテルを下方から支持する下支え部材を有し、前記下支え部材は、前記摺接支え部を有し、前記側部流路構造は、前記カテーテルの下部のみに設けられていてもよい。
【0020】
前記カテーテルは、先端側に向かって外径が減少するテーパ部を有し、前記下支え部材は、前記カテーテルを弾性的に支持可能であり、前記側部流路構造は、前記テーパ部に設けられ、前記カテーテルが前記内針に対して前進する前の初期状態で、前記摺接支え部は、前記テーパ部よりも基端側に位置していてもよい。
【0021】
この構成の場合、下支え部材のバネ性により、テーパ部は下支え部材に接触するが、液体通路構造が摺接支え部よりも先端側に設けられているため、本発明の効果が良好に発揮される。
【0022】
前記液体通路は、開口の内方に向かって突出したフラップが設けられた側孔であってもよい。
【0023】
この構成により、血液吸引時にフラップが動くことで開口面積が増えるため、血液吸引を効率的に行うことができる。また、カテーテルの前進時に、少なくとも最先端側のフラップは針支えと摺動しないため、フラップの損傷を抑制することができる。
【0024】
前記側部流路構造は、前記カテーテルの上部のみに設けられていてもよい。
【0025】
この構成により、カテーテル先端が斜めに留置された場合でも、液体通路が上にあるため血液吸引しやすい。
【0026】
前記複数の液体通路は、前記カテーテルの軸に対して互いに異なる方向に開口していてもよい。
【0027】
この構成により、薬液の投与時に、血管内で薬液が複数方向に放出され、反作用が打ち消し合うため、血管内でカテーテルが動きにくい。従って、カテーテルが適正な留置位置からずれることを防止することができる。
【0028】
前記複数の液体通路は、前記カテーテルの前記軸に対して傾斜した方向に開口してもよい。
【0029】
この構成の場合、液体通路が斜めに設けられることでエッジが形成されるが、液体通路は撓み抑制機構の摺接支え部と摺動しないため、エッジの破損は有効に防止される。
【0030】
前記カテーテルには、前記カテーテルよりも硬質な材質により構成されたリングが埋設されていてもよい。
【0031】
この構成により、カテーテルがリングによって補強されるため、血液吸引時に、血管内でカテーテルが潰れることを防止できる。
【0032】
前記少なくとも1つの液体通路は、前記リングより先端側、前記リング自体、前記リングと前記リングとの間、前記リングよりも基端側、前記リングの先端側境界及び前記リングの基端側境界のいずれか1箇所以上に設けられていてもよい。
【0033】
前記カテーテルは、外径が軸方向に一定のストレート部と、前記ストレート部よりも先端側に設けられ外径が先端側に向かって減少するテーパ部とを有し、前記リングは、前記テーパ部及び前記ストレート部のいずれか1箇所以上に設けられていてもよい。
【0034】
前記液体通路は、前記カテーテルの内腔の圧力に応じて開くスリットの形態を有してもよい。
【0035】
この構成により、カテーテルの内腔に圧力がかかっていないときはスリットが閉じているため、血管へのカテーテルの挿入時にスリットは閉じている。従って、側部流路構造が血管壁を通過する際の抵抗を抑制することができる。一方、カテーテルの内腔に陽圧及び陰圧がかかるとスリットが開くため、血管内への薬液の投与、又は血液吸引を支障なく行うことができる。
【0036】
前記摺接支え部は、前記カテーテルを上方から支持可能な上支え部と、前記カテーテルを横方向から支持可能な横支え部とを有し、前記スリットは、前記カテーテルの上部及び横部のいずれかの箇所のみに設けられていてもよい。
【0037】
この構成により、カテーテルが前進する際のスリットの損傷及び摺動抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のカテーテル組立体によれば、血液吸引を支障なく行うことができるとともに、穿刺時に針の撓みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図2】
図1に示すカテーテル組立体の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すカテーテル組立体の先端側の拡大図である。
【
図4】
図1に示すカテーテル組立体において、カテーテル部材を前進させた状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図6】
図5に示すカテーテル組立体の先端側の拡大図である。
【
図7】
図5に示すカテーテル組立体の先端側の縦断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図9】
図8に示すカテーテル組立体の先端側の縦断面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係るカテーテル組立体の側面図である。
【
図15】
図14に示すカテーテル組立体の先端側の縦断面図である。
【
図16】本発明の第7実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図17】
図16に示すカテーテル組立体の先端側の側面図である。
【
図18】
図16に示すカテーテル組立体の撓み抑制機構の斜視図である。
【
図19】
図19Aは、他の態様に係る内針及びカテーテルの先端側の縦断面図である。
図19Bは、さらに他の態様に係る内針及びカテーテルの先端側の平面図である。
【
図20】
図9に示したカテーテル組立体の他の態様を示す縦断面図である。
【
図21】
図21Aは、マルチルーメンタイプのカテーテルの先端側の縦断面図である。
図21Bは、他の態様に係るマルチルーメンタイプのカテーテルの先端側の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0041】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、カテーテル12と、カテーテル12の基端側に接続されるカテーテルハブ14と、先端に鋭利な針先17を有しカテーテル12の挿通された内針16と、内針16に接続された針ハブ18と、穿刺時の内針16の撓みを抑制する撓み抑制機構20とを備える。
【0042】
カテーテル組立体10Aは、ユーザ(医師や看護師等)により針ハブ18が把持操作されて、その先端部が患者の血管に穿刺される。カテーテル組立体10Aは、使用前(患者への穿刺前)の初期状態では、カテーテル12に内針16が挿通された2重管構造となり、且つ内針16がカテーテル12の先端から所定長だけ突出している。
【0043】
図1に示す初期状態におけるカテーテル組立体10Aは、カテーテル12と内針16の2重管構造、カテーテルハブ14、針ハブ18及び撓み抑制機構20が組み合わされて一つの組立体を構成し、一体的に取扱い可能となっている。
【0044】
カテーテル12は、可撓性を有する細径の管状部材である。カテーテル12は、例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテルとして用いられてよい。なお、カテーテル12は、末梢静脈カテーテルとして用いられてもよい。カテーテル12は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルとして構成されてもよい。カテーテル12の構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適である。
【0045】
図2に示すように、カテーテル12は、カテーテル12を軸方向に貫通する内腔12aと、カテーテル12の先端にて開口する先端開口12bと、カテーテル12の基端にて開口する基端開口12cとを有する。
【0046】
図3に示すように、カテーテル12の周壁部には、カテーテル12の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造22が設けられている。第1実施形態では、液体通路として、カテーテル12の周壁部の内周面から外周面まで貫通する側孔24が設けられている。側部流路構造22は、カテーテル12の長手方向に間隔をおいて設けられた複数(4つ)の側孔24を有する。第1実施形態では、複数の側孔24は、先端側から基端側に向かって順に、カテーテル12の左側面、上面、右側面、下面に開口している。従って、最も基端側に設けられた側孔24は、下方に開口している。複数の側孔24は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。
【0047】
図1に示すように、カテーテル12の基端には、カテーテルハブ14が接続固定される。カテーテル12及びカテーテルハブ14により、カテーテル部材15が構成されている。
図2に示すように、カテーテルハブ14の基端には、外方に突出し且つ周方向に延在するフランジ部14aが設けられる。フランジ部14aの左右両側には、切欠き14bが設けられる。
【0048】
カテーテルハブ14には、カテーテルハブ14を操作するためのハブ操作部26が設けられる。図示例のハブ操作部26は、カテーテルハブ14の先端から上方に突出したタブであり、カテーテルハブ14に対して一体成形されている。ハブ操作部26は、カテーテルハブ14とは別部品として構成され、カテーテルハブ14に対して着脱可能であってもよい。ユーザはハブ操作部26に触れて把持又は押圧することで、カテーテルハブ14を軸方向に操作することができる。ハブ操作部26はカテーテルハブ14から取り外し可能に構成されていてもよい。
【0049】
カテーテル組立体10Aの使用に際し、カテーテルハブ14は、カテーテル12が血管に穿刺された状態で患者の皮膚上に露呈され、ドレッシング材やテープ等により皮膚上に貼り付けられて留置される。このようなカテーテルハブ14は、カテーテル12よりも硬質の材料(例えば、ポリプロピレン等)によって構成されることが好ましい。
【0050】
内針16は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材であり、例えば金属材料(ステンレス鋼等)からなる。内針16は、カテーテル12に比べて長く形成されている。
図1に示すカテーテル組立体10Aの初期状態において、針先17は、カテーテル12の先端開口12bから所定長だけ突出する。また、初期状態において、内針16は、その長手方向の途中部位がカテーテルハブ14の内部に挿通され、その基端側が針ハブ18によって保持される。
【0051】
針ハブ18は、初期状態でカテーテルハブ14と直列に配置されたハブ本体38と、ハブ本体38から先端方向に延出した延出部39とを有する。
【0052】
本実施形態では、内針16及びカテーテルハブ14の両側で内針16に沿って互いに対向する一対の延出部39が、ハブ本体38の左右両側に設けられる。カテーテル組立体10Aの初期状態において、延出部39は、カテーテルハブ14の基端よりも先端側に延出する。すなわち、延出部39の先端は、カテーテルハブ14の先端よりも先端側に位置する。延出部39は、カテーテル組立体10Aの使用に際してユーザが把持して操作しやすいように適度の大きさ(太さ、長さ)に形成される。
【0053】
一対の延出部39の互いに対向する内側面には、それぞれ、内針16の軸方向に沿って延在するガイド突起40が設けられる。カテーテルハブ14のフランジ部14aに設けられた左右の切欠き14bに左右のガイド突起40がそれぞれ挿入される。これにより、初期状態においては針ハブ18によってカテーテルハブ14が安定的に支持されるとともに、針ハブ18に対するカテーテルハブ14の回転が防止されるためハブ操作部26を上向きに保持できる。また、針ハブ18に対してカテーテルハブ14を前進させる際には、ガイド突起40のガイド作用により、カテーテルハブ14をスムーズに前進操作することができる。なお、針ハブ18は、一対の延出部39の上側及び下側が覆われてハウジング構造になっていてもよい。一対の延出部39の上側が覆われる場合、ハブ操作部26が通過可能なスリットがハウジング構造に設けられる。
【0054】
次に、撓み抑制機構20について説明する。撓み抑制機構20は、
図1に示すカテーテル組立体10Aの初期状態(内針16に対してカテーテル12が前進する前の状態)において、カテーテルハブ14よりも先端側でカテーテル12を介して内針16を支持する。撓み抑制機構20は、内針16を支持する第1状態から、内針16の支持を解除するとともにカテーテルハブ14の通過を許容する第2状態へと変化するように、針ハブ18に対して可動に設けられる。
【0055】
本実施形態において、具体的には、撓み抑制機構20は、開閉可能な一対の支持アーム42と、一対の支持アーム42を閉じた状態に拘束可能であり且つ拘束を解除可能な拘束部44とを有する。以下、一対の支持アーム42の一方と他方を互いに区別して説明する場合には、一方について「支持アーム42a」と表記し、他方について「支持アーム42b」と表記する。
【0056】
一対の支持アーム42は、一対の支持ピン43を介して延出部39に対して回動可能に連結される。本図示例では、一対の支持ピン43は上下方向に軸線を有しており、これにより支持される一対の支持アーム42は、左右方向に開閉可能である。初期状態では、一対の支持アーム42と延出部39との接続部は、カテーテルハブ14の基端よりも先端側にある。
【0057】
図3に示すように、各支持アーム42には、一対の支持アーム42が閉じた状態で内針16を保持するための支持溝53が設けられる。一対の支持アーム42が閉じた状態では、2つの支持溝53によって、内針16(カテーテル12内に挿通された内針16)を支持するための支持孔54が形成される。カテーテル組立体10Aの初期状態において、支持孔54は、内針16の延在方向に沿って延在する。支持孔54は、カテーテル12が内針16に対して前進する際にカテーテル12と擦れ合いながら支持可能な摺接支え部として機能する。以下、支持孔54を「摺接支え部54」という。カテーテル組立体10Aの初期状態で、カテーテル12の外面と摺接支え部54の内面との間には若干の隙間が形成されている。
【0058】
カテーテル12が内針16に対して前進する前の初期状態で、摺接支え部54は、最も先端側に位置する側孔24よりも基端側に位置する。第1実施形態において、摺接支え部54は、最も基端側に位置する側孔24よりも基端側に設けられている。より具体的には、摺接支え部54は、最も基端側に位置する側孔24よりも僅かに基端側に設けられている。なお、カテーテル組立体10Aの初期状態で、摺接支え部54は、複数の側孔24の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0059】
各支持アーム42には、閉じた状態における正面視で、屈曲した係合溝56a、56bが設けられる。各係合溝56a、56bは支持アーム42を前後方向に貫通している。一方の係合溝56a、(以下、「第1係合溝56a」という)と、他方の係合溝56b(以下、「第2係合溝56b」という)とは、互いに反対方向に屈曲する。具体的には、第1係合溝56aは、下方に屈曲し、第2係合溝56bは、上方に屈曲する。
【0060】
図2に示すように、拘束部44は、一対の支持アーム42に対してスライド可能に配置される。カテーテルハブ14の前進に伴ってカテーテルハブ14によって拘束部44が押されることで、一対の支持アーム42に対する拘束が解除される。
【0061】
拘束部44は、第1係合溝56aにスライド可能に係合する第1拘束突起58aと、第2係合溝56bにスライド可能に係合する第2拘束突起58bとを有する。拘束部44が初期位置(後退位置)にあるとき、拘束部44の第1拘束突起58aと第2拘束突起58bとは、それぞれ、一対の支持アーム42の第1係合溝56aと第2係合溝56bとに係合する。このため、一対の支持アーム42が閉状態に拘束される。
【0062】
第2拘束突起58bは、拘束部44の先端方向への移動に伴って、支持アーム42の第2係合溝56bから先端方向に離脱する。第2拘束突起58bが第2係合溝56bから離脱すると、拘束部44による一対の支持アーム42に対する拘束が解除され、一対の支持アーム42が拡開可能となる。なお、第2拘束突起58bが第2係合溝56bから離脱した後も、第1拘束突起58aと第1係合溝56aとの係合が維持されることにより、拘束部44は支持アーム42aによって保持される。
【0063】
拘束部44の基端には、被押圧部48が設けられる。針ハブ18に対してカテーテルハブ14が前進する際、カテーテルハブ14の先端によって被押圧部48が押されることで、一対の支持アーム42に対して拘束部44が前進する。被押圧部48のカテーテルハブ14に対向する面は、基端方向に向かうにつれて左右外方に変位するように傾斜する傾斜部が設けられる。
【0064】
次に、カテーテル組立体10Aの作用について説明する。
【0065】
カテーテル組立体10Aの使用において、ユーザ(医師や看護師等)は、
図1に示す初期状態のカテーテル組立体10Aの針ハブ18を把持し、カテーテル12及び内針16を患者の血管に穿刺する。このとき、撓み抑制機構20により、内針16が支持される。具体的には、閉じた一対の支持アーム42間に形成される摺接支え部54により、カテーテル12を介して内針16が支持されるため、内針16の撓みが抑制される。
【0066】
穿刺後、カテーテルハブ14から上方に突出したハブ操作部26に指を掛け、ハブ操作部26を先端方向に押す。そうすると、ハブ操作部26に接続されたカテーテルハブ14及びカテーテル12が、針ハブ18に対して先端方向へと移動し、血管内へのカテーテル12の挿入長が増す。
【0067】
カテーテルハブ14の前進に伴って、ハブ操作部26は拘束部44を先端方向に押す。これにより、拘束部44は、一対の支持アーム42に対して先端方向に移動し、第2拘束突起58bが第2係合溝56bから離脱する。第2拘束突起58bが第2係合溝56bから離脱することによって、拘束部44による一対の支持アーム42の拘束が解除され、一対の支持アーム42は拡開可能となる。そして、カテーテルハブ14がさらに前進すると、
図4のように、一対の支持アーム42はハブ操作部26及びカテーテルハブ14によって後方から押され、拡開する。
【0068】
血管内にカテーテル12を所定長挿入したら、次に、カテーテル部材15の位置を保持した状態で、針ハブ18を基端方向に引っ張る。そうすると、内針16がカテーテル部材15内で基端方向に移動し、やがて内針16は、カテーテル部材15から完全に抜去される。この結果、カテーテル組立体10Aのうちカテーテル部材15だけが患者側に留置された状態となる。カテーテル部材15から内針16を引き抜いた後、ドレッシング材やテープ等によりカテーテルハブ14を患者に固定する。
【0069】
この場合、第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、以下の効果を奏する。
【0070】
カテーテル組立体10Aは、カテーテル12を介して内針16を支持することにより内針16の撓みを抑制する撓み抑制機構20を備えるため、穿刺時の内針16の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル12の周壁部には少なくとも1つの側孔24が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル12が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。すなわち、カテーテル12の先端が血管壁に貼り付いたり、カテーテル12の先端が潰れたりした場合でも、側孔24を介してカテーテル12内に血液を吸引することができる。
【0071】
ところで、採血のために、カテーテルハブ14にシリンジを接続し、シリンジの押し子を引くと、カテーテル内部に陰圧がかかる。側孔24が設けられていない従来のカテーテルの場合、カテーテルの血液流入速度が不十分なため、カテーテル内部の陰圧が大きくなり、カテーテルが潰れる可能性がある。特に開口が設けられたカテーテル先端は潰れやすい。これに対し、カテーテル組立体10Aでは、カテーテル12に側孔24が設けられることで、採血のためにカテーテルハブ14に接続したシリンジの押し子を引く際、カテーテル12内部への血液流入速度が上がり、カテーテル12の内部に陰圧がかかりにくくなるため、カテーテル12の潰れを防止することができる。また、側孔24からカテーテル12の内部に血液が流入し、側孔24より先端側のカテーテル12の内部には陰圧がかかりにくいため、潰れを防止する効果が大きい。仮に、カテーテル12の先端開口12bが潰れてしまったり、カテーテル12先端が血管壁に当たってしまったりした場合でも、側孔24から血液を吸引することができる。
【0072】
さらに、カテーテル組立体10Aの初期状態で最も先端側の側孔24よりも基端側に摺接支え部54が位置するため、カテーテル12の前進時の側孔24の損傷及び摺動抵抗の変動を抑制できる。すなわち、側部流路構造22のうち初期状態で摺接支え部54よりも先端側に位置する側孔24は、内針16に対してカテーテル12が前進する際に摺接支え部54に対して摺動する(擦れ合う)ことがない。このため、初期状態で摺接支え部54よりも先端側に位置する側孔24が摺接支え部54によって破損等することがなく、当該側孔24が撓み抑制機構20に対する摺動抵抗を増大させることもない。
【0073】
特に、第1実施形態では、摺接支え部54は、最も基端側に位置する側孔24よりも基端側に設けられている。この構成により、すべての側孔24の損傷を防止できるとともに、カテーテル12前進時の撓み抑制機構20に対する摺動抵抗の変動を可及的に抑制することができる。
【0074】
しかも、第1実施形態では、摺接支え部54は、最も基端側に位置する側孔24よりも僅かに基端側に設けられている。この構成により、側孔24に干渉しない範囲で、撓み抑制機構20でカテーテル12を効果的に支えることができる。
【0075】
カテーテル12は、カテーテル12の長手方向に沿って間隔を置いて配置された複数の側孔24を有する。この構成により、側孔24の個数が多いため、血管に対しカテーテル12がどのように触れ合っている場合でも血液吸引を確実に行うことができる。また、側孔24の個数が多いことにより側孔24の総開口面積を稼ぐことができ、吸引抵抗を低減できるため、容易に血液吸引を行うことができる。さらに、個々の側孔24の大きさを小さくできるため、側孔24が血管壁を通過する際の抵抗が小さくなり、カテーテル12の血管への挿入操作が一層容易になる。
【0076】
最も基端側に位置する側孔24は、カテーテル12の下部に設けられている。この構成により、血管に留置したカテーテル12が血管から抜けかけた場合に、最も基端側に設けられた側孔24が下向きのため、側孔24が血管から抜けにくい。すなわち、カテーテル12が血管から抜けかけた際に下方に向く最も基端側の側孔24が血管壁に引っ掛かる。そのとき、他の側孔24は血管内に位置する。
【0077】
[第2実施形態]
図5に示す第2実施形態に係るカテーテル組立体10Bは、カテーテル60と、カテーテル60に接続されたカテーテルハブ62と、カテーテルハブ62に接続されたカテーテル操作部材64と、カテーテル60に挿入された内針66と、内針66に接続された針ハブ68と、穿刺時の内針66の撓みを抑制する撓み抑制機構70とを備える。
【0078】
カテーテル60は、可撓性を有する細径の管状部材である。カテーテル60は、軸線方向に貫通した内腔60aと、カテーテル60の先端にて開口した先端開口60bと、カテーテル60の基端にて開口した基端開口とを有する。カテーテル組立体10Bは、使用前(患者への穿刺前)の初期状態では、カテーテル60に内針66が挿通された2重管構造となり、且つ内針66がカテーテル60の先端から所定長だけ突出している。
【0079】
図6及び
図7に示すように、カテーテル60の周壁部には、先端開口60bと基端開口との間に、カテーテル60の内外間の液体の通過を許容する1つの液体通路のみからなる側部流路構造72が設けられている。第2実施形態では、液体通路として、側孔73が設けられている。側孔73は、カテーテル60のうち、後述する摺接支え部80が接触する部位の周方向位置に対応する周方向位置に設けられている。具体的に、側孔73は、カテーテル60の下部に設けられている。従って、側孔73は、下方に開口している。
【0080】
側孔73は、
図3に示した第1実施形態の側孔24よりも大きく形成されている。側孔73の開口面積のカテーテル内腔断面積に対する比率は、例えば、0.5~2.0倍程度であり、好ましくは、0.7~1.0倍程度である。カテーテル60の軸方向に沿った側孔73の長さのカテーテル内径に対する比率は、例えば、0.5~3.0倍程度であり、好ましくは、0.7~2.0倍程度である。
【0081】
カテーテル60の基端には、カテーテルハブ62が固定されている。カテーテルハブ62は、カテーテル60よりも硬質の材料によって構成されることが好ましい。カテーテル部材63は、カテーテル60とカテーテルハブ62とが結合したものである。
【0082】
図5において、カテーテル操作部材64は、カテーテルハブ62に接続され、内針66の針先66a及びカテーテル60の先端部を血管に穿刺する穿刺操作の際、カテーテル60の基端と先端との間の部位(カテーテル60の長手方向の中間部位)を押圧可能である。具体的には、カテーテル操作部材64は、カテーテル60の基端と先端との間の部位を押し付けることができる押圧部65を有する。押圧部65は、撓み抑制機構70の一部を構成する。
【0083】
また、カテーテル操作部材64は、直線状態のカテーテル60の軸方向(長手方向)に沿って配置され、カテーテル60上に位置する長尺状の本体部74と、この本体部74の上面に間隔を置いて設けられた滑り止め用の複数のリブ75とを有する。
【0084】
押圧部65は、本体部74の先端部により構成される。押圧部65は、本体部74の先端部から下方に突出した突起部により構成されてもよい。押圧部65は、穿刺操作の際、内針66及びカテーテル60の撓みを効果的に抑制できる位置に配置されるのがよい。
【0085】
カテーテル操作部材64は、カテーテルハブ62に対して回動可能に、カテーテルハブ62に接続される。具体的に、カテーテル操作部材64は、カテーテル60の長手方向に沿って配置された第1の位置(
図5に示すカテーテル操作部材64の位置)と、カテーテル60から退避した第2の位置とに変位可能である。カテーテル操作部材64が第1の位置に位置するときは、カテーテル操作部材64はカテーテル60上に位置し、カテーテル操作部材64の先端部(押圧部65)は、カテーテル60の基端と先端との間に位置する。また、カテーテル操作部材64が第1の位置に位置するときは、カテーテル操作部材64がカテーテルハブ62から分離することが阻止される。
【0086】
一方、カテーテル操作部材64が第2の位置に位置するときは、カテーテル操作部材64は、カテーテル60の長手方向に対して交差する方向に延在し、カテーテル操作部材64がカテーテルハブ62から分離可能である。
【0087】
内針66は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する。カテーテル組立体10Bの初期状態において、針先66aはカテーテル60の先端開口60bから突出し、内針66の基端は、カテーテル部材63の基端部(カテーテルハブ62)よりも基端側に突出する。
【0088】
針ハブ68は、内針66及びカテーテル60の長手方向に沿って延在し、全体として長尺状に構成される。針ハブ68は、内針66の基端側で内針66に接続されるとともに、初期状態で、カテーテル操作部材64を長手方向に移動可能に収容する。具体的には、針ハブ68は、内針66の基端部を保持する針保持部76と、針保持部76から先端方向に延出したハウジング78とを有する。
【0089】
針ハブ68は、針保持部76において内針66を保持しているため、カテーテル60に対して針ハブ68を基端方向に移動させると、針ハブ68の移動に伴って内針66もカテーテル60に対して基端方向に移動させられる。
【0090】
ハウジング78は、底板78aと、底板78aの左右両側から上方に延出した左右の側壁78bとを有しており、上方及び先端側が開放している。ハウジング78は、ユーザがカテーテル組立体10Bを使用する際に把持する把持部として機能する。底板78aの先端部は、カテーテル60が内針66に対して前進する際にカテーテル60と擦れ合う摺接支え部80である。
【0091】
摺接支え部80は、押圧部65とともに撓み抑制機構70を構成する。カテーテル60が内針66に対して前進する際に、当該摺接支え部80と、カテーテル操作部材64の押圧部65との間にカテーテル60(及び内針66)が保持される。カテーテル60が内針66に対して前進する前の初期状態で、摺接支え部80は、側孔73よりも基端側に位置する。
【0092】
カテーテル操作部材64は、このように構成された針ハブ68(ハウジング78)の内側に配置される。針ハブ68は、カテーテル操作部材64が先端方向に移動する際に、カテーテル操作部材64の移動方向を規制するガイド部材としての機能を有する。
【0093】
次に、カテーテル組立体10Bの作用について説明する。
【0094】
図5に示すように、カテーテル組立体10Bの初期状態において、内針66がカテーテル60に挿入されて針先66aがカテーテル60の先端から所定長だけ突出している。このようなカテーテル組立体10Bを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作では、ユーザは、針ハブ68(ハウジング78)を一方の手(例えば、右手)で把持する。
【0095】
そして、当該一方の手の人差し指でカテーテル操作部材64の先端部を押圧しつつ、カテーテル組立体10Bの先端部(内針66が挿通されたカテーテル60の先端部)を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。カテーテル操作部材64(押圧部65)でカテーテル60の途中部位を押し付けた状態では、カテーテル60が押圧部65とハウジング78の先端部(摺接支え部80)との間に挟まれて支持される。この結果、内針66及びカテーテル60の撓みが抑制される。
【0096】
次に、カテーテル操作部材64を一方の手の人差し指で先端方向に数mm程度進め、これによりカテーテル60を数mm程度進める。次に、カテーテル操作部材64を他方の手で先端方向に移動させ、これによりカテーテル60の先端を血管内の目標位置まで挿入する。カテーテル60が内針66に対して先端方向に移動する際、カテーテル60は、摺接支え部80に対して摺動する。
【0097】
次に、カテーテル操作部材64を他方の手で押さえつつ、一方の手で針ハブ68を把持し、当該針ハブ68を基端方向に引っ張る。これにより、内針66がカテーテル60から抜去される。内針66をカテーテル60から抜去した後、必要に応じてカテーテル操作部材64をカテーテルハブ62から取り外してもよい。
【0098】
この場合、第2実施形態に係るカテーテル組立体10Bは、以下の効果を奏する。
【0099】
カテーテル組立体10Bは、カテーテル60を介して内針66を支持することにより内針66の撓みを抑制する撓み抑制機構70を備えるため、穿刺時の内針66の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル60の周壁部には側孔73が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル60が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で側孔73よりも基端側に摺接支え部80が位置するため、側孔73の損傷を抑制でき、カテーテル60前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0100】
側孔73は、カテーテル60のうち摺接支え部80が接触する部位の周方向位置に対応する周方向位置に1つだけ設けられている。この構成により、吸引しやすいように大きい側孔73を設けても、カテーテル60の前進時に側孔73は摺接支え部80と摺動しないため、側孔73が傷まない。また、側孔73が血管壁を通過する際の抵抗が1回だけであるため、穿刺しやすい。
【0101】
[第3実施形態]
カテーテル組立体10Cは、
図8に示すように、カテーテル82と、カテーテル82を固定保持するカテーテルハブ84と、カテーテルハブ84に装着されるカテーテル操作部材86と、カテーテル82内に抜去可能に挿入される中空の内針88と、内針88を固定保持する針ハブ89と、穿刺時の内針88の撓みを抑制する撓み抑制機構90とを備える。カテーテル組立体10Cは、
図8に示す使用前の初期状態で、カテーテル82及び内針88を重ねた多重管構造(多重管部)を形成している。
【0102】
カテーテル82は、可撓性を有する細径で長尺な管状部材である。カテーテル82は、軸方向に貫通した内腔82aと、カテーテル82の先端で開口した先端開口82bと、カテーテル82の基端で開口した基端開口とを有する。穿刺抵抗を減らすためにカテーテル82の先端は縮径しており、カテーテル組立体10Cの初期状態では、当該縮径部分でカテーテル82の内面と内針88の外面とが密着している。
【0103】
図9に示すように、カテーテル82の内周面と内針88の外周面との間には、フラッシュバック確認用のフラッシュバック流路108が形成されている。フラッシュバック流路108は、カテーテル82の先端部から基端部まで延在する。
【0104】
カテーテル82の周壁部には、カテーテル82の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造92が設けられている。第3実施形態では、液体通路として、カテーテル82の周壁部の内周面から外周面まで貫通する側孔93が設けられている。側部流路構造92は、カテーテル82の長手方向に間隔をおいて設けられた複数の側孔93を有する。複数の側孔93は、すべてカテーテル82の下部に設けられている(下方に開口している)。複数の側孔93は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。
【0105】
図8において、カテーテル82の基端部は、カテーテルハブ84の先端部に固定されている。カテーテル82とカテーテルハブ84により、カテーテル部材85が構成されている。カテーテルハブ84は、カテーテル82が血管内に挿入された状態で患者の皮膚上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル82とともに留置される。カテーテルハブ84は、先端方向に先細りの筒状に形成される。
【0106】
カテーテルハブ84の内部には、カテーテル82の内腔82aに連通して輸液剤を流通可能な中空部84aが設けられている。この中空部84aには、内針88の穿刺時に血液の逆流を防ぐとともに、輸液チューブのコネクタの挿入に伴い輸液を可能とする、図示しない止血弁やプラグ等が収容されてもよい。
【0107】
内針88は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有し、カテーテル82の内腔82a及びカテーテルハブ84の中空部84aに貫通配置される。内針88は、カテーテル82よりも長い全長に形成され、その先端には鋭利な針先88aが設けられる。内針88の内部には、内針88の軸方向に貫通するルーメンが設けられ、このルーメンは、内針88の先端開口に連通する。内針88は、中実針(内腔がない針)として構成されてもよい。
【0108】
針ハブ89は、内針88の基端部に固定された針保持部材94と、針保持部材94が固定されるとともに内針88及びカテーテル82に沿って延在するハウジング96とを有する。カテーテル組立体10Cは、初期状態で、多重管部の一部、カテーテルハブ84及びカテーテル操作部材86をハウジング96内に収容している。針保持部材94及びハウジング96は一体成形されていてもよい。
【0109】
針ハブ89は、針保持部材94において内針88を保持しているため、カテーテル82に対して針ハブ89を基端方向に移動させると、針ハブ89の移動に伴って内針88もカテーテル82に対して基端方向に移動させられる。
【0110】
カテーテル操作部材86は、カテーテルハブ84に装着されている。このため、カテーテル操作部材86を針ハブ89に対して相対的に前進させると、カテーテル部材85が内針88に対して相対的に前進する。カテーテル操作部材86は、カテーテルハブ84に着脱自在に装着されるハブ装着部86aと、ハブ装着部86aからカテーテル82に沿って先端方向に延在する操作板部86bとを有する。操作板部86bの上面には、ゆき掛け用のタブ86c及び滑り止め用の複数のリブ86dが設けられている。なお、カテーテル組立体10Cにおいて、カテーテル操作部材86は設けられていなくてもよい。
【0111】
撓み抑制機構90は、カテーテル操作部材86に保持されたカテーテル82の下側を支える下支え部材98を有する。下支え部材98は、ハウジング96の先端側に設けられている。具体的に、下支え部材98は、ハウジング96の先端部に設けられた配置用凹部96aに回転自在に取り付けられている。
【0112】
内針88及びカテーテル82の皮膚への穿刺時、下支え部材98がカテーテル82を下方から支持するため、カテーテル82及び内針88の撓みが抑制される。カテーテル操作部材86がハウジング96から抜け出す際には、ハブ装着部86aに押されることで下支え部材98はハウジング96の外側に向かって回転させられるため、カテーテルハブ84はハウジング96から先端方向に離脱することができる。
【0113】
下支え部材98は、ハウジング96の先端部に上下方向の軸心を中心軸に回転自在に取り付けられた軸棒部98aと、軸棒部98aの軸心から直交方向に突出する支持本体98bとを有する。支持本体98bは、正面視でクランク状に形成されており、上下方向に弾性変形可能である。これにより、下支え部材98は、カテーテル82を弾性的に支持可能となっている。下支え部材98は、カテーテル82が内針88に対して前進する際にカテーテル82と擦れ合う摺接支え部100を有する。カテーテル組立体10Cの初期状態(内針88に対してカテーテル82が前進する前の状態)で、摺接支え部100は、最も基端側に設けられた側孔93よりも基端側に位置する。なお、カテーテル組立体10Cの初期状態で、摺接支え部100は、複数の側孔93の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0114】
図9に示すように、カテーテル82は、先端側に向かって外径が減少するテーパ部102を有する。テーパ部102は、カテーテル82の先端部を構成する。テーパ部102の長さL1は、例えば、1~60mm程度に設定される。複数の側孔93は、テーパ部102に設けられている。
図8及び
図9に示すように、カテーテル組立体10Cの初期状態で、テーパ部102の基端位置P1は、摺接支え部100よりも若干だけ先端側に位置する。
【0115】
図9に示すように、カテーテル82は、当該カテーテル82の主要部を構成するカテーテル本体104と、カテーテル本体104の先端部に設けられた柔軟部106とを有する。このため、カテーテル82の先端側では、最先端部に向かってより柔軟になっている。柔軟部106は、ハウジング96(
図8)から露出している。
【0116】
カテーテル本体104は、カテーテル82の全長の大部分を占めている。このため、カテーテル本体104の最先端部は、カテーテル82の最先端近傍に位置する。カテーテル82及び柔軟部106は、可撓性を有する樹脂材料により構成されている。フラッシュバックを確認できるように、カテーテル本体104及び柔軟部106のうち少なくともカテーテル本体104は透明性を有する。
【0117】
カテーテル本体104は、軸方向に沿って外径が一定のストレート部104aと、ストレート部104aから先端方向に延出するとともに先端方向に向かって外径が減少する本体テーパ部104bと、本体テーパ部104bから先端方向に延出するとともにカテーテル本体104の最先端部までを構成する先端構成部104cとを有する。本体テーパ部104bは、上述したテーパ部102の基端部を構成する。
【0118】
カテーテル82は、カテーテル本体104の箇所で、下支え部材98(
図8)によって支持されている(カテーテル本体104が下支え部材98によって支持されている)。これにより、確実にカテーテル82を支持することができるとともに、カテーテル82を前進させる際の摺動抵抗を低くすることができる。しかも、下支え部材98(
図8)によって支持される部分が、カテーテル本体104と柔軟部106との界面105よりも基端側に位置するため、下支え部材98に対してカテーテル82が摺動することによる界面105の剥がれを防止することができる。
【0119】
カテーテル本体104の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。カテーテル本体104の硬度(ショアA)は、例えば、70D未満である。
【0120】
柔軟部106は、カテーテル82の最先端部を含む。柔軟部106の外径は、先端側に向かって減少する。柔軟部106は、上述したテーパ部102の先端部を構成する。柔軟部106は、カテーテル本体104よりも柔軟である。すなわち、カテーテル本体104の弾性率k1と、柔軟部106の弾性率k2とは、k1>k2の関係を有する。柔軟部106の内周面は、内針88の外周面と全周に亘って液密に密着(嵌合)している。
【0121】
柔軟部106の構成材料としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0122】
カテーテル82では、カテーテル本体104及び柔軟部106のうちカテーテル本体104のみが存在するカテーテル本体単体領域82Aと、カテーテル本体104及び柔軟部106のうち柔軟部106のみが存在する柔軟部単体領域82Bと、カテーテル本体104及び柔軟部106が存在する混在領域82Cとが、軸方向に配置されている。
【0123】
カテーテル本体単体領域82Aは、カテーテル本体104のうち柔軟部106の最基端部よりも基端側に存在する部分である。柔軟部単体領域82Bは、柔軟部106のうちカテーテル本体104の最先端部よりも先端側に存在する部分である。混在領域82Cは、カテーテル本体104及び柔軟部106が径方向に積層されている部分である。複数の側孔93は、カテーテル本体単体領域82Aと、柔軟部単体領域82Bと、混在領域82Cとに設けられている。なお、側孔93は、カテーテル本体単体領域82Aと、柔軟部単体領域82Bと、混在領域82Cのいずれか1箇所以上に設けられていればよい。
【0124】
柔軟部106(柔軟部単体領域82B)の硬さは、23℃で、例えば、JIS硬度(タイプA)で80Aよりも硬く、カテーテル本体104よりも柔らかく、好ましくはJIS硬度(タイプD)で53D~64Dである。図示例の柔軟部106は、カテーテル本体104に接合されている。柔軟部単体領域82Bの軸方向長さ及び硬度が上記の範囲に設定されることにより、穿刺時のカテーテル82の先端(柔軟部106)のめくれを抑制することができる。また、カテーテル82の挿入時の血管後壁での引っ掛かりを好適に抑制できる。さらに、血液吸引時のカテーテル82の先端のつぶれを抑制することができる。
【0125】
カテーテル本体104と柔軟部106との界面105は、カテーテル82の軸に対して略一定角度で傾斜するテーパ状に形成されている。カテーテル82では、カテーテル本体104と柔軟部106との界面105は、先端方向に向かってカテーテル82の軸(中心)に近づくように傾斜している。このため、混在領域82Cでは、カテーテル本体104の外側に柔軟部106が存在している。
【0126】
界面105を有する上記構成に代えて、カテーテル82は、異なる硬度の材料の配合量を軸方向に変化させることで、先端方向に向かって軟らかくなるように形成されてもよい。この場合、異なる材料の押し出し速度を変化させながら押出成型してもよい。あるいは、カテーテル82の先端部の可塑剤の含有量を増やしてもよい。この場合、カテーテル82の先端部に可塑剤を塗布してもよい。
【0127】
内針88には、フラッシュバック流路108と連通するとともに当該フラッシュバック流路108に血液を導入するための導入路110が設けられている。
図9に示す導入路110は、内針88の壁部を径方向に貫通する側孔である。
【0128】
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10Cの作用について説明する。
【0129】
カテーテル組立体10Cの使用においては、カテーテル組立体10Cを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザは、
図8に示す初期状態のカテーテル組立体10Cのハウジング96を把持しつつ、カテーテル組立体10Cの先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。これにより、内針88及びカテーテル82の各先端部が皮膚に穿刺される。
【0130】
次に、ユーザは、針ハブ89(ハウジング96)の位置を固定しつつ、カテーテル操作部材86を先端方向に操作してカテーテル部材85(カテーテル82及びカテーテルハブ84)を前進させる。これによりカテーテル82を血管内の目標位置まで挿入する。
【0131】
次に、ユーザは、カテーテル操作部材86及びカテーテル部材85の位置を保持しつつ、ハウジング96を基端方向に引っ張る。これにより、カテーテル部材85及びカテーテル操作部材86がハウジング96から完全に出るとともに、内針88がカテーテル82から基端方向に抜去される。
【0132】
次に、カテーテル操作部材86は、カテーテルハブ84から取り外される。これにより、カテーテル部材85は患者に留置される。なお、ユーザの好みによっては、カテーテル操作部材86をカテーテルハブ84に取り付けたままにしてもよい。
【0133】
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10Cは、以下の効果を奏する。
【0134】
カテーテル組立体10Cは、カテーテル82を介して内針88を支持することにより内針88の撓みを抑制する撓み抑制機構90を備えるため、穿刺時の内針88の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル82には側孔93が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル82が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で最も基端側に設けられた側孔93よりも基端側に摺接支え部100が位置するため、側孔93の損傷を抑制でき、カテーテル82前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0135】
カテーテル82は、カテーテル本体104と、カテーテル本体104の先端部に設けられた柔軟部106とを有する。この構成により、穿刺角度が大きい場合でも、カテーテル82の先端が血管後壁に引っ掛かることを抑制することが可能となる。これにより、カテーテル82が血管に挿入できなくなったり、カテーテル82の先端で血管壁を傷つけたりすることを防止することができる。
【0136】
カテーテル82は、先端側に向かって外径が減少するテーパ部102を有し、下支え部材98は、カテーテル82を弾性的に支持可能である。そして、側孔93は、テーパ部102に設けられている。カテーテル82が内針88に対して前進する前の初期状態で、摺接支え部100は、テーパ部102よりも基端側に位置する。この構成の場合、下支え部材98のバネ性により、テーパ部102は下支え部材98に接触するが、少なくとも最も先端側の側孔93が摺接支え部100よりも先端側に設けられているため、本発明の効果が発揮される。特に、第3実施形態では、すべての側孔93が摺接支え部100よりも先端側に設けられているため、すべての側孔93の損傷を防止できるとともに、カテーテル82前進時の撓み抑制機構90に対する摺動抵抗の変動を一層効果的に低減することができる。
【0137】
[第4実施形態]
図10に示す第4実施形態に係るカテーテル組立体10Dは、カテーテル112と、カテーテル112に接続されたカテーテルハブ114と、カテーテルハブ114に離脱可能に接続されたカテーテル操作部材116と、カテーテル112に挿入された内針118と、内針118に接続された針ハブ120と、内針118に挿通されたガイドワイヤ122と、ガイドワイヤ122に接続されたワイヤ操作部材124と、穿刺時の内針118の撓みを抑制する撓み抑制機構126とを備える。
【0138】
カテーテル112は、カテーテル112を軸方向に貫通する内腔112aと、カテーテル112の先端にて開口する先端開口112bと、カテーテル112の基端にて開口する基端開口とを有する。
【0139】
カテーテル112の周壁部には、カテーテル112の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造128が設けられている。第4実施形態では、液体通路として、カテーテル112の周壁部の内周面から外周面まで貫通する側孔130が設けられている。側部流路構造128は、カテーテル112の長手方向に間隔をおいて設けられた複数の側孔130を有する。複数の側孔130はすべて、カテーテル112の上部に設けられている(上方に開口している)。複数の側孔130は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。
【0140】
図11Aに示すように、側孔130は、非円形形状を有する。具体的に、側孔130には、開口の内方に向かって突出したフラップ132が設けられている。フラップ132は、カテーテル112の径方向に弾性変形可能である。フラップ132は、先端方向又は基端方向に突出している。複数の側孔130において、フラップ132は、すべて同じ方向に突出していてもよく、
図11Aに示すように一部のフラップ132が他のフラップ132と異なる方向に突出していてもよい。フラップ132は、カテーテル112の周方向に突出していてもよい。フラップ132は、カテーテル112の軸方向又は周方向に対して傾斜した方向に突出していてもよい。
【0141】
カテーテルハブ114は、カテーテル112の基端部に固定されている。
図10に示すカテーテル組立体10Dの初期状態で、カテーテルハブは、針ハブ120内に収容されている。カテーテル操作部材116は、カテーテルハブの基端部に離脱可能に接続された中央基部116aと、中央基部116aから左右方向両側に延出した一対の指掛け部116bとを有する。カテーテル組立体10Dの初期状態で、中央基部116aは針ハブ120内に収容されている。
【0142】
針ハブ120は、上ハウジング134と下ハウジング136とを有する。カテーテル組立体10Dの初期状態で、上ハウジング134と下ハウジング136とは上下に重なり、針ハブ120の先端部は閉じている。また、上ハウジング134と下ハウジング136の各先端部134a、136aは、上述した一対の規制アーム142aに抱きかかえられるように保持されることで、上下方向の拡開が規制されている。針ハブ120の左右側部には、上ハウジング134と下ハウジング136との間に、針ハブ120の長手方向に延びるスリット135が形成されている。一対の指掛け部116bは、当該スリット135から突出している。上ハウジング134は、スリット135の延在方向に対して斜めに傾斜した一対の側方把持部134cを有する。カテーテル組立体10Dの使用時、ユーザは、この一対の側方把持部134cを把持して、内針118及びカテーテル112を患者の皮膚に穿刺することができる。
【0143】
上ハウジング134の先端部134aと、下ハウジング136の先端部136aとにより、撓み抑制機構126が構成されている。
図11Bに示すように、上ハウジング134の先端部134aには保持溝134bが形成され、下ハウジング136の先端部136aには保持溝136bが形成されている。2つの保持溝134b、136bにより、カテーテル112が内針118に対して前進する際にカテーテル112と擦れ合う孔状の摺接支え部140が構成されている。カテーテル組立体10Dの初期状態で、カテーテル112の外面と摺接支え部140の内面との間には若干の隙間が形成されている。
【0144】
図10に示すように、カテーテル組立体10Dの初期状態で、摺接支え部140は、最も先端側に位置する側孔130よりも基端側に位置する。第4実施形態において、摺接支え部140は、最も基端側に位置する側孔130よりも基端側に設けられている。なお、カテーテル組立体10Dの初期状態で、摺接支え部140は、複数の側孔130の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0145】
ガイドワイヤ122は、カテーテル112を患者に留置するためにカテーテル112を血管内に挿入する際に、カテーテル112をガイドするための可撓性を有する線状部材である。カテーテル組立体10Dの初期状態で、ガイドワイヤ122の先端は、内針118の針先118aよりも基端側にあり、針先118aの近傍に位置する。ガイドワイヤ122は、内針118に摺動可能に挿入され、先端が針先118aから突出可能である。
【0146】
ワイヤ操作部材124は、カテーテル112を患者の血管内に挿入する操作に先行して、ガイドワイヤ122を血管内に挿入する操作を行うための操作部である。ワイヤ操作部材124の上面には、指掛け用のタブ124a及び滑り止め用の複数のリブ124bが設けられる。
【0147】
ワイヤ操作部材124は、針ハブ120内に配置された図示しない連結部を介して、ガイドワイヤ122の基端部に連結されている。ワイヤ操作部材124は、針ハブ120に対して前後方向に変位可能に設けられている。ワイヤ操作部材124は、針ハブ120の先端部が上下方向に開くことを規制する規制部142を有する。規制部142は、カテーテル組立体10Dの初期状態で針ハブ120の先端部を保持する一対の規制アーム142aを有する。
【0148】
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10Dの作用について説明する。
【0149】
カテーテル組立体10Dの使用においては、カテーテル組立体10Dを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザは、
図10に示す初期状態のカテーテル組立体10Dの針ハブ120を把持しつつ、カテーテル組立体10Dの先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。これにより、内針118及びカテーテル112の各先端部が皮膚に穿刺される。
【0150】
次に、ユーザは、ワイヤ操作部材124を先端方向に操作して、ガイドワイヤ122を内針118の先端から突出させる。ガイドワイヤ122の先端方向への移動に伴って、ガイドワイヤ122は、血管内に挿入される。ワイヤ操作部材124の先端方向への移動に伴い、ワイヤ操作部材124の規制部142が針ハブ120の先端部よりも先端側に移動すると、上ハウジング134の先端部134aと下ハウジング136の先端部136aの規制部142による上下方向の拡開規制が解除される。
【0151】
ガイドワイヤ122の先端を血管内の目標位置まで挿入したら、次に、ユーザは、針ハブ120の位置を固定しつつ、カテーテル操作部材116を先端方向に操作してカテーテル部材(カテーテル112及びカテーテルハブ114)を前進させる。これによりカテーテル112を血管内の目標位置まで挿入する。その際、上ハウジング134は、先端方向に移動するカテーテル操作部材116により上方に押されることで、上ハウジング134が下ハウジング136に対して開く。これにより、カテーテル操作部材116の先端方向への移動が許容される。
【0152】
次に、ユーザは、カテーテル操作部材116及びカテーテル部材115の位置を保持しつつ、針ハブ120を基端方向に引っ張る。これにより、カテーテル部材115及びカテーテル操作部材116が針ハブ120から完全に出るとともに、内針118がカテーテル112から基端方向に抜去される。次に、カテーテル操作部材116は、カテーテルハブ114から取り外される。これにより、カテーテル部材115は患者に留置される。
【0153】
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10Dは、以下の効果を奏する。
【0154】
カテーテル組立体10Dは、カテーテル112を介して内針118を支持することにより内針118の撓みを抑制する撓み抑制機構126を備えるため、穿刺時の内針118の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル112には側部流路構造128(側孔130)が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル112が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で最も基端側に設けられた側孔130よりも基端側に摺接支え部140(
図11B)が位置するため、側孔130の損傷を抑制でき、カテーテル112前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0155】
図11Aに示すように、側部流路構造128には、開口の内方に向かって突出したフラップ132が設けられている。この構成により、血液吸引時にフラップ132が動くことで開口面積が増えるため、血液吸引を効率的に行うことができる。また、カテーテル112の前進時に、フラップ132は摺接支え部140と摺動しないため、フラップ132の損傷を抑制することができる。
【0156】
側部流路構造128(側孔130)は、カテーテル112の上部に設けられている。この構成により、カテーテル112の先端が斜めに留置された場合でも、側孔130が上にあるため血液吸引しやすい。
【0157】
[第5実施形態]
図12に示す第5実施形態に係るカテーテル組立体10Eは、カテーテル146と、カテーテル146に接続されたカテーテルハブ148と、カテーテルハブ148に離脱可能に接続されたカテーテル操作部材151と、カテーテル146に挿入された内針150と、内針150に接続された針ハブ152と、内針150に挿通されたガイドワイヤ154と、ガイドワイヤ154に接続されたワイヤ操作部材156と、穿刺時の内針150の撓みを抑制する撓み抑制機構158とを備える。
【0158】
カテーテル146は、カテーテル146を軸方向に貫通する内腔146aと、カテーテル146の先端にて開口する先端開口146bと、カテーテル146の基端にて開口する基端開口とを有する。
【0159】
図13Aに示すように、カテーテル146の周壁部には、カテーテル146の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造160が設けられている。第5実施形態では、液体通路として、カテーテル146の周壁部の内周面から外周面まで貫通する側孔162が設けられている。側部流路構造160は、カテーテル146の長手方向に間隔をおいて設けられた複数の側孔162を有する。複数の側孔162は、カテーテル146の軸に対して互いに異なる方向に開口する。複数の側孔162は、カテーテル146の軸に対して傾斜した方向に開口する。複数の側孔162は、先端側に傾斜した側孔162と、基端側に傾斜した側孔162とを含む。複数の側孔162は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。
【0160】
図12において、カテーテルハブ148は、カテーテル146の基端部に固定されている。カテーテル146とカテーテルハブ148により、カテーテル部材149が構成されている。
図12に示すカテーテル組立体10Eの初期状態で、カテーテルハブ148は、針ハブ152内に収容されている。カテーテル操作部材151は、カテーテルハブ148の基端部に離脱可能に接続された中央基部151aと、中央基部151aから左右方向両側に延出した一対の指掛け部151bとを有する。一対の指掛け部151bは、左右方向外側に向かって上方に傾斜している。指掛け部151bの下面には滑り止め用の複数の突起151cが設けられている。カテーテル組立体10Eの初期状態で、中央基部151aは針ハブ152内に収容されている。
【0161】
針ハブ152は、上ハウジング164と下ハウジング166とを有する。針ハブ152の左右側部には、上ハウジング164と下ハウジング166との間に、針ハブ152の長手方向に延びるスリット165が形成されている。一対の指掛け部151bはスリット165から突出している。カテーテル組立体10Eの初期状態で、上ハウジング164と下ハウジング166とは上下に重なり、針ハブ152の先端部は閉じている。下ハウジング166の先端部166aは、左右方向に拡開可能に構成されている。具体的に、下ハウジング166の先端部166aは、右側先端部166Rと左側先端部166Lとを有する。
【0162】
上ハウジング164は、下ハウジング166の右側先端部166R及び左側先端部166Lが左右方向に開くことを規制する規制部168を有する。規制部168は、カテーテル組立体10Eの初期状態で上ハウジング164の先端部の左右両側に位置する一対の規制アーム168aを有する。一対の規制アーム168aの先端部は、先端連結部168bにより連結されている。
【0163】
下ハウジング166の右側先端部166R及び左側先端部166Lにより、撓み抑制機構158が構成されている。
図13Bに示すように、右側先端部166R及び左側先端部166Lにはそれぞれ保持溝170が形成されている。2つの保持溝170により、カテーテル146が内針150に対して前進する際にカテーテル146と擦れ合う孔状の摺接支え部172が構成されている。カテーテル組立体10Eの初期状態で、カテーテル146の外面と摺接支え部172の内面との間には若干の隙間が形成されている。
【0164】
図12に示すように、カテーテル組立体10Eの初期状態で、摺接支え部172は、最も先端側に位置する側孔162よりも基端側に位置する。第5実施形態において、摺接支え部172は、最も基端側に位置する側孔162よりも基端側に設けられている。なお、カテーテル組立体10Eの初期状態で、摺接支え部172は、複数の側孔162の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0165】
ワイヤ操作部材156は、カテーテル146を患者の血管内に挿入する操作に先行して、ガイドワイヤ154を血管内に挿入する操作を行うための操作部である。ワイヤ操作部材156の上面には、指掛け用の複数のリブ156aが設けられている。ワイヤ操作部材156は、針ハブ152内に配置された図示しない中間連結部を介して、ガイドワイヤ154の基端部に連結されている。ワイヤ操作部材156は、針ハブ152に対して前後方向に変位可能に設けられている。
【0166】
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10Eの作用について説明する。
【0167】
カテーテル組立体10Eの使用においては、カテーテル組立体10Eを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザは、
図12に示す初期状態のカテーテル組立体10Eの針ハブ152を把持しつつ、カテーテル組立体10Eの先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。これにより、内針150及びカテーテル146の各先端部が皮膚に穿刺される。
【0168】
次に、ユーザは、ワイヤ操作部材156を先端方向に操作して、ガイドワイヤ154を内針150の先端から突出させる。ガイドワイヤ154の先端方向への移動に伴って、ガイドワイヤ154は、血管内に挿入される。
【0169】
ガイドワイヤ154の先端を血管内の目標位置まで挿入したら、次に、ユーザは、針ハブ152の位置を固定しつつ、カテーテル操作部材151を先端方向に操作してカテーテル部材149(カテーテル146及びカテーテルハブ148)を前進させる。これによりカテーテル146を血管内の目標位置まで挿入する。その際、上ハウジング164は、先端方向に移動するカテーテル操作部材151により上方に押されることで、上ハウジング164が下ハウジング166に対して開く。この結果、上ハウジング164の規制部168による下ハウジング166の右側先端部166Rと左側先端部166Lの左右方向の拡開規制が解除される。これにより、カテーテル操作部材151の先端方向への移動が許容される。
【0170】
次に、ユーザは、カテーテル操作部材151及びカテーテル部材149の位置を保持しつつ、針ハブ152を基端方向に引っ張る。これにより、カテーテル部材149及びカテーテル操作部材151が針ハブ152から完全に出るとともに、内針150がカテーテル146から基端方向に抜去される。
【0171】
次に、カテーテル操作部材151は、カテーテルハブ148から取り外される。これにより、カテーテル部材149は患者に留置される。なお、ユーザの好みによっては、カテーテル操作部材151をカテーテルハブ148に取り付けたままにしてもよい。
【0172】
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10Eは、以下の効果を奏する。
【0173】
カテーテル組立体10Eは、カテーテル146を介して内針150を支持することにより内針150の撓みを抑制する撓み抑制機構158を備えるため、穿刺時の内針150の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル146には側部流路構造160(側孔162)が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル146が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で最も基端側に設けられた側孔162よりも基端側に摺接支え部172が位置するため、側孔162の損傷を抑制でき、カテーテル146前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0174】
図13Aに示すように、複数の側孔162は、カテーテル146の軸に対して互いに異なる方向に開口する。この構成により、薬液の投与時に、血管内で薬液が複数方向に放出され、反作用が打ち消し合うため、血管内でカテーテル146が動きにくい。従って、カテーテル146が適正な留置位置からずれることを防止することができる。
【0175】
複数の側孔162は、カテーテル146の軸に対して傾斜した方向に開口する。この構成の場合、側孔162が斜めに設けられることでエッジ162eが形成されるが、側孔162は撓み抑制機構158の摺接支え部172と摺動しないため、エッジ162eの破損が有効に防止される。
【0176】
[第6実施形態]
図14に示す第6実施形態に係るカテーテル組立体10Fは、カテーテル174と、カテーテル174に接続されたカテーテルハブ176と、カテーテルハブ176に離脱可能に接続されたカテーテル操作部材178と、カテーテル174に挿入された内針180と、内針180に接続された針ハブ182と、内針180に挿通されたガイドワイヤ183と、ガイドワイヤ183に接続されたワイヤ操作部材184と、穿刺時の内針180の撓みを抑制する撓み抑制機構186とを備える。
【0177】
カテーテル174は、カテーテル174を軸方向に貫通する内腔174aと、カテーテル174の先端にて開口する先端開口174bと、カテーテル174の基端にて開口する基端開口とを有する。
【0178】
図15に示すように、カテーテル174の周壁部には、カテーテル174の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造188が設けられている。第6実施形態では、液体通路として、カテーテル174の周壁部の内周面から外周面まで貫通する側孔190が設けられている。側部流路構造188は、カテーテル174の長手方向に間隔をおいて設けられた複数の側孔190を有する。複数の側孔190は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。
【0179】
カテーテル174には、カテーテル174よりも硬質な材質により構成されたリング192が埋設されている。第6実施形態では、カテーテル174の長手方向に間隔を置いて複数のリング192が配置されている。少なくとも1つの側孔190は、リング192より先端側、リング192自体、リング192とリング192との間、リング192よりも基端側、リング192の先端側境界及びリング192の基端側境界のいずれか1箇所以上に設けられている。
【0180】
図15において、側孔190aは、リング192より先端側に設けられている。側孔190bは、リング192よりも基端側に設けられている。側孔190cは、リング192自体に設けられている(リング192の壁部を貫通している)。側孔190dは、リング192とリング192の間に設けられている。側孔190eは、リング192の先端側境界に設けられている。側孔190fは、リング192の基端側境界に設けられている。
【0181】
カテーテル174は、外径が軸方向に一定のストレート部174sと、ストレート部174sよりも先端側に設けられ外径が先端側に向かって減少するテーパ部174tとを有する。テーパ部174tの長さL2は、例えば、1~60mm程度に設定される。リング192は、テーパ部174t及びストレート部174sのいずれか1箇所以上に設けられている。
【0182】
図14において、カテーテルハブ176は、カテーテル174の基端部に固定されている。カテーテル174とカテーテルハブ176により、カテーテル部材177が構成されている。
図14に示すカテーテル組立体10Fの初期状態で、カテーテルハブ176は、針ハブ182内に収容されている。カテーテル操作部材178は、針ハブ182の後述する上ハウジング194に前後方向にスライド可能に支持されている。カテーテル操作部材178の上面には、指掛け用の突起178aが設けられている。
【0183】
針ハブ182は、上ハウジング194と下ハウジング196とを有する。針ハブ182の左右側部には、上ハウジング194と下ハウジング196との間に、針ハブ182の長手方向に延びるスリット195が形成されている。ワイヤ操作部材184は、スリット195を介して、カテーテルハブ176に係合している。
【0184】
カテーテル組立体10Fの初期状態で、上ハウジング194と下ハウジング196とは上下に重なり、針ハブ182の先端部は閉じている。下ハウジング196の先端部は、左右方向に拡開可能に構成されている。下ハウジング196の先端部は、右側先端部及び左側先端部を有する。上ハウジング194は、下ハウジング196の先端部が左右方向に開くことを規制する規制部198を有する。規制部198は、カテーテル組立体10Fの初期状態で上ハウジング194の先端部の左右両側に位置する左右一対の規制アーム198aを有する。
【0185】
下ハウジング196の右側先端部及び左側先端部により、撓み抑制機構186が構成されている。図示は省略するが、第5実施形態と同様に、下ハウジング196の右側先端部及び左側先端部にはそれぞれ保持溝170(
図13B参照)が形成されている。2つの保持溝170により、カテーテル174が内針180に対して前進する際にカテーテル174と擦れ合う孔状の摺接支え部172(
図13B参照)が構成されている。カテーテル組立体10Fの初期状態で、カテーテル174の外面と摺接支え部172の内面との間には若干の隙間が形成されている。
【0186】
カテーテル組立体10Fの初期状態で、摺接支え部172は、最も先端側に位置する側孔190よりも基端側に位置する。第6実施形態において、摺接支え部172は、最も基端側に位置する側孔190よりも基端側に設けられている。カテーテル組立体10Fの初期状態で、テーパ部174tの基端位置P2は、摺接支え部172よりも若干だけ先端側に位置する。なお、カテーテル組立体10Fの初期状態で、摺接支え部172は、複数の側孔190の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0187】
ワイヤ操作部材184は、カテーテル174を患者の血管内に挿入する操作に先行して、ガイドワイヤ183を血管内に挿入する操作を行うための操作部である。ワイヤ操作部材184の上面には、指掛け用のリブ184aが設けられている。ワイヤ操作部材184は、針ハブ182内に配置された図示しない中間連結部を介して、ガイドワイヤ183に連結されている。ワイヤ操作部材184は、針ハブ182の上ハウジング194に対して前後方向に変位可能に設けられている。
【0188】
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10Fの作用について説明する。
【0189】
カテーテル組立体10Fの使用においては、カテーテル組立体10Fを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザは、
図14に示す初期状態のカテーテル組立体10Fの針ハブ182を把持しつつ、カテーテル組立体10Fの先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。これにより、内針180及びカテーテル174の各先端部が皮膚に穿刺される。
【0190】
次に、ユーザは、ワイヤ操作部材184を先端方向に操作して、ガイドワイヤ183を内針180の先端から突出させる。ガイドワイヤ183の先端方向への移動に伴って、ガイドワイヤ183は、血管内に挿入される。
【0191】
ガイドワイヤ183の先端を血管内の目標位置まで挿入したら、次に、ユーザは、針ハブ182の位置を固定しつつ、カテーテル操作部材178を先端方向に操作してカテーテル部材177(カテーテル174及びカテーテルハブ176)を前進させる。これによりカテーテル174を血管内の目標位置まで挿入する。その際、上ハウジング194は、先端方向に移動するカテーテル操作部材178により上方に押されることで、上ハウジング194が下ハウジング196に対して開く。この結果、上ハウジング194の規制部198による下ハウジング196の右側先端部と左側先端部の左右方向の拡開規制が解除される。これにより、カテーテル操作部材178の先端方向への移動が許容される。
【0192】
次に、ユーザは、カテーテル操作部材178及びカテーテル部材177の位置を保持しつつ、針ハブ182を基端方向に引っ張る。これにより、カテーテル部材177及びカテーテル操作部材178が針ハブ182から完全に出るとともに、内針180がカテーテル174から基端方向に抜去される。
【0193】
次に、カテーテル操作部材178は、カテーテルハブ176から取り外される。これにより、カテーテル部材177は患者に留置される。なお、ユーザの好みによっては、カテーテル操作部材178をカテーテルハブ176に取り付けたままにしてもよい。
【0194】
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10Fは、以下の効果を奏する。
【0195】
カテーテル組立体10Fは、カテーテル174を介して内針180を支持することにより内針180の撓みを抑制する撓み抑制機構186を備えるため、穿刺時の内針180の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル174には側部流路構造188(側孔190)が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル174が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で最も基端側に設けられた側孔190よりも基端側に摺接支え部172が位置するため、側孔190の損傷を抑制でき、カテーテル174前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0196】
カテーテル174には、カテーテル174よりも硬質な材質により構成されたリング192が埋設されている。この構成により、カテーテル174がリング192によって補強されるため、血液吸引時に、血管内でカテーテル174が潰れることを防止できる。
【0197】
[第7実施形態]
図16に示す第7実施形態に係るカテーテル組立体10Gは、カテーテル200と、カテーテル200に接続されたカテーテルハブ202と、カテーテルハブ202を先端方向に移動させるカテーテル操作部材204と、カテーテル200に挿入された内針206と、内針206に接続された針ハブ208と、内針206に挿通されたガイドワイヤ210と、ガイドワイヤ210に接続されたワイヤ操作部材212と、穿刺時の内針206の撓みを抑制する撓み抑制機構214とを備える。
【0198】
カテーテル200は、カテーテル200を軸方向に貫通する内腔200aと、カテーテル200の先端にて開口する先端開口200bと、カテーテル200の基端にて開口する基端開口とを有する。
図17に示すように、カテーテル200の周壁部には、カテーテル200の内外間の液体の通過を許容する少なくとも1つの液体通路を有する側部流路構造216が設けられている。
【0199】
第7実施形態では、液体通路として、カテーテル200の内腔200aの圧力に応じて開くスリット218が設けられている。スリット218の外端はカテーテル200の外周面に達し、スリット218の内端はカテーテル200の内周面に達している。カテーテル200の内腔200aに圧力がかかっていないときは、スリット218は閉じている。カテーテル200の内腔200aに陽圧及び陰圧がかかると、スリット218がカテーテル200の径方向に動くため、流路が開通する。
【0200】
側部流路構造216は、カテーテル200の長手方向に間隔をおいて設けられた複数のスリット218(218a~218d)を有する。スリット218aは、X字状に形成されている。スリット218bは、V字状に形成されている。スリット218cは、カテーテル200の長手方向に沿った直線状に形成されている。スリット218dは、カテーテル200の周方向に沿って形成されている。複数のスリット218は、互いに同じ大きさに形成されてもよく、互いに異なる大きさに形成されてもよい。複数のスリット218は、カテーテル200の上部及び左右の横部のいずれかの箇所のみに設けられている。
図17では、複数のスリット218がカテーテル200の左の横部のみに設けられた例を示している。
【0201】
図16において、カテーテルハブ202は、カテーテル200の基端部に固定されている。カテーテル200とカテーテルハブ202により、カテーテル部材203が構成されている。
図16に示すカテーテル組立体10Gの初期状態で、カテーテルハブ202は、針ハブ208内に収容されている。カテーテルハブ202は、カテーテル200に接続されたハブ本体202aと、ハブ本体202aから横方向(ハブ本体202aの軸に垂直な水平方向)に突出したサイドポート202bとを有する。サイドポート202bには軟質のチューブ220の一端が接続されている。チューブ220の他端にはコネクタ222が接続されている。チューブ220には、チューブ220内の流路を開閉可能なクランプ224が取り付けられている。クランプ224は、略U字状に構成されており、幅広の開通部224aと、幅狭の閉鎖部224bとを有する。クランプ224をチューブ220に対してスライドさせることで、チューブ220の開通と閉鎖を切り替えることができる。
【0202】
カテーテル操作部材204は、針ハブ208の後述するハウジング226の先端部に前後方向にスライド可能に支持された環状部材である。カテーテル操作部材204には、フランジ状に突出した指掛け部204aが設けられている。カテーテル操作部材204のサイド壁204bには、先端方向に開口した凹部204cが設けられている。凹部204cを介してカテーテルハブ202のサイドポート202bが横方向に突出している。
【0203】
針ハブ208は、ユーザが把持する把持部として機能するハウジング226と、ハウジング226の先端部から先端方向に互いに平行に延出する上側延出部228及び下側延出部230とを有する。カテーテル組立体10Gの初期状態で、上側延出部228と下側延出部230との間にカテーテル200及びカテーテルハブ202が配置されている。
【0204】
撓み抑制機構214は、針ハブ208の先端部に設けられている。具体的に、撓み抑制機構214は、上側延出部228に左右方向の軸を中心に回動可能に支持された支持部材232を備える。支持部材232は、カテーテル200が内針206に対して前進する際にカテーテル200と擦れ合う摺接支え部234(支持本体部)を有する。支持部材232の上部232uには軸部232aが設けられている。軸部232aが上側延出部228に軸支されている。カテーテル組立体10Gの初期状態で、ワイヤ操作部材212の先端部は、支持部材232の上部よりも先端側に位置する。このため、支持部材232は、ワイヤ操作部材212によって上方への回動が規制されている。
【0205】
図18に示すように、摺接支え部234は、カテーテル200を上方から支持可能な上支え部234aと、カテーテル200を横方向から支持可能な左右の横支え部234bとを有する。横支え部234bは、上支え部234aの左右両端部から下方に突出している。従って、摺接支え部234は、カテーテル組立体10Gの長手方向から見て、逆U字状に形成されている。カテーテル組立体10Gの初期状態で、カテーテル200の外面と摺接支え部234との間には若干の隙間が形成されている。
【0206】
図16に示すように、カテーテル組立体10Gの初期状態で、摺接支え部234は、最も先端側に位置するスリット218よりも基端側に位置する。第7実施形態において、摺接支え部234は、最も基端側に位置するスリット218よりも基端側に設けられている。なお、カテーテル組立体10Gの初期状態で、摺接支え部234は、複数のスリット218の一部よりも先端側に設けられていてもよい。
【0207】
ワイヤ操作部材212は、カテーテル200を患者の血管内に挿入する操作に先行して、ガイドワイヤ210を血管内に挿入する操作を行うための操作部である。ワイヤ操作部材212の先端には指掛け用の突起212aが設けられるとともに、滑り止め用の複数のリブ212bが設けられている。ワイヤ操作部材212は、上側延出部228の上面に前後方向にスライド可能に支持されている。ガイドワイヤ210の一端部は内針206の先端近傍に配置されている。詳細は図示しないが、ガイドワイヤ210の他端はワイヤ操作部材212に接続され、ガイドワイヤ210の中間部はハウジング226内で折り返されている。
【0208】
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10Gの作用について説明する。
【0209】
カテーテル組立体10Gの使用においては、カテーテル組立体10Gを患者の皮膚に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザは、
図16に示す初期状態のカテーテル組立体10Gのハウジング226を把持しつつ、カテーテル組立体10Gの先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管に向かって皮膚に穿刺する。これにより、内針206及びカテーテル200の各先端部が皮膚に穿刺される。
【0210】
次に、ユーザがワイヤ操作部材212を基端方向に移動させると、ハウジング226内で中間部が折り返されたガイドワイヤ210は、内針206内で先端方向に移動する。これにより、ガイドワイヤ210は、内針206の先端から突出し、血管内に挿入される。ワイヤ操作部材212の基端方向への移動に伴い、ワイヤ操作部材212の先端部は、支持部材232の上部よりも基端方向に移動する。これにより、ワイヤ操作部材212による支持部材232の上方への回動規制が解除される。
【0211】
ガイドワイヤ210の先端を血管内の目標位置まで挿入したら、次に、ユーザは、針ハブ208の位置を固定しつつ、カテーテル操作部材204を先端方向に操作してカテーテル部材203(カテーテル200及びカテーテルハブ202)を前進させる。これによりカテーテル200を血管内の目標位置まで挿入する。その際、支持部材232は、先端方向に移動するカテーテル200により押されることで、上方に回動する。これにより、針ハブ208からのカテーテル200の先端方向への離脱が許容される。
【0212】
次に、ユーザは、カテーテル操作部材204及びカテーテル部材203の位置を保持しつつ、ハウジング226を基端方向に引っ張る。これにより、カテーテル部材203及びカテーテル操作部材204が針ハブ208から完全に出るとともに、内針206がカテーテル200から基端方向に抜去される。この結果、カテーテル200が患者の血管に留置される。
【0213】
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10Gは、以下の効果を奏する。
【0214】
カテーテル組立体10Gは、カテーテル200を介して内針206を支持することにより内針206の撓みを抑制する撓み抑制機構214を備えるため、穿刺時の内針206の撓みが抑制される。これにより、安定した穿刺が可能である。また、カテーテル200には、液体通路を有する側部流路構造216が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル200が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。さらに、初期状態で最も基端側に設けられたよりも基端側に摺接支え部234が位置するため、液体通路の損傷を抑制でき、カテーテル200前進時の摺動抵抗の変動を抑制できる。
【0215】
図17に示すように、液体通路は、カテーテル200の内腔200aの圧力に応じて開くスリット218の形態を有する。この構成により、カテーテル200の内腔200aに圧力がかかっていないときはスリット218が閉じているため、血管へのカテーテル200の挿入時にスリット218は閉じている。従って、側部流路構造216が血管壁を通過する際の抵抗を抑制することができる。一方、カテーテル200の内腔に陽圧及び陰圧がかかるとスリット218が開くため、血管内への薬液の投与、又は血液吸引を支障なく行うことができる。
【0216】
摺接支え部234は、カテーテル200を上方から支持可能な上支え部234aと、カテーテル200を横方向から支持可能な横支え部234bとを有し(
図18)、スリット218は、カテーテル200の上部及び横部のいずれかの箇所のみに設けられている(
図17)。この構成により、カテーテル200が前進する際のスリット218の損傷及び摺動抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【0217】
上述したいずれかの実施形態において、
図19Aに示すカテーテル250及び内針252が適用されてもよい。カテーテル250の先端部の内周面には、内針252の外周面に密着した密着部254を有する。カテーテル250と内針252との間であって、密着部254よりも基端側には、フラッシュバック確認用の流路(以下、「フラッシュバック流路256」という)が形成されている。フラッシュバック流路256は、カテーテル250の内周面と、内針252の外周面との間に形成されており、カテーテル250の基端開口まで延在している。内針252には、フラッシュバック流路256と連通するとともに当該フラッシュバック流路256に血液を導入するための導入路258が設けられている。導入路258は、図示例のような内針252の軸方向に沿って延在する溝部258aであってもよく、あるいは、内針252の周壁部を径方向に貫通する孔部であってもよい。
【0218】
カテーテル250の周壁部を貫通し、カテーテル250の内周面と外周面に開口する側孔260が、密着部254に設けられている。従って、初期状態で、カテーテル250の先端部の内周面のうち側孔260を囲む部分は、内針252の外周面に密着している。側孔260は、導入路258から周方向にずれた位置(導入路258に対向しない位置)に設けられている。側孔260は、カテーテル250の内外間の液体の通過を許容する液体通路である。上述した実施形態(カテーテル組立体10A等)と同様に、カテーテル250に側孔260が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル250が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。
【0219】
特に、
図19Aの態様の場合、密着部254に側孔260が設けられており、密着部254以外の箇所には側孔260が設けられていない。このため、内針252の先端が血管に挿入された時点で側孔260が血管外にあった場合でも、導入路258を介してフラッシュバック流路256に流入した血液が、側孔260から体内(血管外の体内)に漏れ出て内出血となることや、体外に漏れ出ることがない。
【0220】
図19Aに示したカテーテル250では密着部254に側孔260が設けられているが、
図19Bに示すカテーテル261のように、密着部254よりも基端側(フラッシュバック流路256に臨む箇所)に、カテーテル261の内腔の圧力に応じて開くスリット262が設けられてもよい。上述したスリット218(
図17参照)と同様に、スリット262は、カテーテル261の外周面及び内周面に達しており、カテーテル261の内外間の液体の通過を許容する液体通路である。
【0221】
上述した実施形態と同様に、カテーテル261にスリット262が設けられているため、輸液や血液透析のためにカテーテル261が用いられる場合に、血液吸引を好適に行うことが可能となる。また、カテーテル261の内腔に圧力がかかっていないとき(圧力が所定以下であるとき)はスリット262が閉じている。このため、内針252の先端が血管に挿入された時点でスリット262が血管外にあった場合でも、導入路258を介してフラッシュバック流路256に流入した血液が、スリット262から体内(血管外の体内)に漏れ出て内出血となることや、体外に漏れ出ることがない。
【0222】
図9に示した実施形態において、カテーテル82は、カテーテル本体104と、カテーテル本体104の先端部に設けられた柔軟部106とを有しているが、
図20に示すように、カテーテル本体272と、カテーテル本体272の先端部に設けられた硬質部274とを有するカテーテル270が適用されてもよい。カテーテル本体272は、硬質部274よりも柔軟に構成されている。硬質部274の構成材料としては、例えば、上述したカテーテル本体104の構成材料として例示したもの(ポリテトラフルオロエチレン等)が挙げられる。
【0223】
カテーテル270では、カテーテル本体272及び硬質部274のうちカテーテル本体272のみが存在するカテーテル本体単体領域270Aと、カテーテル本体272及び硬質部274のうち硬質部274のみが存在する硬質部単体領域270Bと、カテーテル本体272及び硬質部274が存在する混在領域270Cとが、軸方向に配置されている。
【0224】
カテーテル本体単体領域270Aは、カテーテル本体272のうち硬質部274の最基端部よりも基端側に存在する部分である。硬質部単体領域270Bは、硬質部274のうちカテーテル本体272の最先端部よりも先端側に存在する部分である。混在領域270Cは、カテーテル本体272及び硬質部274が径方向に積層されている部分である。複数の側孔93は、カテーテル本体単体領域270Aと、硬質部単体領域270Bと、混在領域270Cとに設けられている。なお、側孔93は、カテーテル本体単体領域270Aと、硬質部単体領域270Bと、混在領域270Cのいずれか1箇所以上に設けられていればよい。
【0225】
先端部に硬質部274を有するカテーテル270を用いることにより、カテーテル270先端部の潰れを防止する効果を高めることができる。
【0226】
ところで、内針88の血管に対する穿刺角度と同じ角度でカテーテル270が進んでいき、血管後壁にカテーテル270先端が急角度で当たり、血管後壁を傷つけることが懸念される。そこで、カテーテル270前進時にガイドワイヤを用いることが好ましい。すなわち、内針88の穿刺後、内針88の内側からガイドワイヤを血管内に前進させると、ガイドワイヤは、血管に沿った形状になる。次に、ガイドワイヤに沿ってカテーテル270を前進させると、カテーテル270の先端が血管後壁に急角度で当たらないため、血管後壁を傷つけにくい。
【0227】
上述したいずれかの実施形態において、
図21Aに示すようなマルチルーメンタイプのカテーテル280が適用されてもよい。このカテーテル280は、第1薬液用のメインルーメン282と、このメインルーメン282と平行に延在する第2薬液用のサブルーメン284とを有する。メインルーメン282には、初期状態で内針(例えば、
図1に示した内針16)が挿通及び配置される。サブルーメン284は、メインルーメン282よりも流路断面積が小さい。カテーテル280においてサブルーメン284は複数設けられてもよい。サブルーメン284の先端に、先端方向に開口した開口部が設けられてもよい。
【0228】
カテーテル280は、カテーテル本体286と、カテーテル本体286とは硬さ(弾性率)の異なる先端部288が設けられている。先端部288は、カテーテル本体286より柔軟でもよく、あるいはカテーテル本体286より硬質でもよい。カテーテル280の他の態様において、カテーテル本体286と先端部288とは同じ硬さであってよい。
【0229】
カテーテル280には、メインルーメン282に連通する複数の側孔290aと、サブルーメン284に連通する複数の側孔290bとが設けられている。メインルーメン282及びサブルーメン284の一方の側孔の数は、1つだけでもよい。複数の側孔290a、290bは、カテーテル本体286のみが存在する領域と、先端部288のみが存在する領域と、カテーテル本体286と先端部288の混在領域とにそれぞれ設けられている。なお、側孔290a、290bは、上記複数の領域のいずれか1箇所以上に設けられていればよい。
【0230】
図21Bに示すマルチルーメンタイプのカテーテル300のように、少なくとも1つのルーメンにおいて、潰れ防止用の補強部302が設けられてもよい。補強部302は、カテーテル300よりも硬質な材料により構成されたリング状又は筒状の部材であり、カテーテル300に埋設されている。補強部302は、メインルーメン282を補強する第1補強部302aと、サブルーメン284を補強する第2補強部302bとを有する。第1補強部302aは、メインルーメン282を囲む。第2補強部302bは、サブルーメン284を囲む。第1補強部302aと第2補強部302bの一方は省略されてもよい。
【0231】
メインルーメン282に連通する少なくとも1つの側孔290aは、第1補強部302aより先端側、第1補強部302aより基端側、第1補強部302aの端部、第1補強部302aの中間部のいずれの位置に設けられてもよい。サブルーメン284に連通する少なくとも1つの側孔290bは、第2補強部302bより先端側、第2補強部302bより基端側、第2補強部302bの端部、第2補強部302bの中間部のいずれの位置に設けられてもよい。
【0232】
上述したいずれかの実施形態において、カテーテル(
図1に示したカテーテル12等)のキンクや破断を防止するために、カテーテルに補強構造を付加してもよい。補強構造は、例えば、カテーテルの全長に亘って設けられている。補強構造としては、例えば、多層チューブやブレード入りチューブが挙げられる。あるいは、側孔(側孔24等)付近のみに補強構造が設けられてもよい(
図21Bの構成がこれに対応する)。