(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】二次電池、その製造方法、該二次電池を含む電池モジュール、電池パック及び装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20230926BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230926BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230926BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230926BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230926BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230926BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20230926BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/36 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M10/0525
(21)【出願番号】P 2022542212
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2020106076
(87)【国際公開番号】W WO2022021273
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】康蒙
(72)【発明者】
【氏名】董暁斌
(72)【発明者】
【氏名】王家政
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/125577(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105762336(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/58
H01M 10/0525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、正極、セパレータ及び電解質を含み、前記負極は負極板を含み、前記負極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一方の面に設けられて黒鉛を包含する負極活物質を含む負極膜層と、を含み、前記黒鉛は人造黒鉛を含み、前記負極活物質の体積平均粒径D
v50は、8μm≦D
v50≦16μmを満たし、
前記負極活物質の粒度スパン(D
v
90-D
v
10)/D
v
50が、1.0≦(D
v
90-D
v
10)/D
v
50≦1.4を満たし、前記負極膜層の面密度(AD)は、0.09kg/m
2≦AD≦0.117kg/m
2を満たし、前記負極膜層の圧密密度(PD)は、1.53g/
cm
3≦PD≦1.68g/
cm
3を満たし、前記負極板は、前記負極板とリチウム金属片でコイン電池を構成し、且つ前記コイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有することを満たす、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記容量増分曲線V-dQ/dVは、0.057V~0.077Vの所に黒鉛の3次吸蔵リチウム吸蔵の相移転ピークを有する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク強度は、-3Ah/V/g~-15Ah/V/gである、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極活物質の体積平均粒径D
v50は、9.5μm≦D
v50≦14.5μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極膜層の面密度(AD)は、0.094kg/m
2≦AD≦0.107kg/m
2を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率≧60%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極活物質は、天然黒鉛を含み、前記負極活物質における前記天然黒鉛の質量比率≦40%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極活物質は、二次粒子を含み、前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率≧60%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は、0.3~0.4である、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、さらに、
(1)前記負極活物質の粒度スパン(D
v90-D
v10)/D
v50が、1.
1≦(D
v90-D
v10)/D
v50≦1.
3を満たすことと、
(2)前記負極活物質の黒鉛化度が93%~95%であることと、
(3)前記負極活物質の粉体OI値が2.5~4.5であることと、
(4)前記負極活物質のタップ密度が0.8g/cm
3~1.2g/cm
3であることと、
(5)前記負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度が1.65g/cm
3~1.85g/cm
3であることと、
(6)前記負極活物質のグラム容量が350mAh/g~360mAh/gであることとのうちの1つ又は複数を満たす、請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極被膜層は、
(1)前記負極膜層の多孔率Pが、25%≦P≦45%を満たすことと、
(2)前記負極膜層と前記負極集電体との間の接着力Fが、4.5N/m≦F≦15N/mを満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極は正極板を含み、前記正極板は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一方の面に設けられて正極活物質を含む正極膜層と、を含み、前記正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの1種又は複数種を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項15】
前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率は80%~100%である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項16】
前記負極活物質における前記天然黒鉛の質量比率は10%~30%である、請求項7に記載の二次電池。
【請求項17】
前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率は80%~100%である、請求項8に記載の二次電池。
【請求項18】
前記負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は0.31~0.36である、請求項9に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池の技術分野に属し、具体的には二次電池、その製造方法、該二次電池を含む電池モジュール、電池パック及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中に新エネルギー自動車の発展と応用を力を入れて推進している。二次電池はエネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、且つ汚染がなく、記憶効果がないなどの利点を有するため、新エネルギー自動車を代表する電気自動車に広く適用されている。しかし従来の燃料車の燃料補充の利便性と効率性に対して、二次電池は一般的に低率で充電し、充電時間が10時間以上かかる。これはユーザの走行距離への不安を深刻化させ、消費者の体験に影響を与え、電気自動車の速やかな普及を制限する。したがって、二次電池の急速充電能力をいかに向上させるかが研究の話題の問題となっている。
【発明の概要】
【0003】
本願に係る第1態様は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一方の面に設けられて黒鉛を包含する負極活物質を含む負極膜層とを有する負極板を含み、前記負極板は、前記負極板とリチウム金属片をコイン電池に構成し、且つ前記コイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有することを満たす。
【0004】
本願に係る二次電池において、負極板の負極活物質は黒鉛を含み、且つ前記負極板は、負極板とリチウム金属片をコイン電池に構成し、且つコイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、得られた容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の4次リチウム吸蔵化合物から3次リチウム吸蔵化合物への相移転ピークを有することを満たすことにより、負極板が高い可逆容量を有するとともに、高い活性イオンの吸蔵・放出能力を有するようにし、正負極間の活性イオンの移動速度を大幅に向上させて、二次電池が高エネルギー密度を有する前提で、急速充電性能及びサイクル寿命を著しく向上させることができる。
【0005】
本願の一部の実施形態において、前記容量増分曲線V-dQ/dVは0.057V~0.077Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有し、任意選択的には、前記容量増分曲線V-dQ/dVは0.061V~0.074Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有する。負極板が上記条件を満たすと、電池の急速充電能力およびサイクル寿命をさらに改善することができる。
【0006】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク強度が-3Ah/V/g~-15Ah/V/gである。このピーク強度が適正範囲内にあると、負極板の実際リチウム吸蔵容量が高くなり、電池のエネルギー密度をさらに改善することができる。
【0007】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の体積平均粒径Dv50は、8μm≦Dv50≦16μmを満たし、任意選択的には、9.5μm≦Dv50≦14.5μmである。負極活物質のDv50は所与の範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。また、電池のサイクル寿命も向上が図れる。
【0008】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極膜層の面密度CWは、0.09kg/m2≦CW≦0.117kg/m2を満たし、任意選択的には、前記負極膜層の面密度CWは、0.094kg/m2≦CW≦0.107kg/m2を満たす。負極膜層の面密度は上記範囲内にあると、電池のエネルギー密度および急速充電能力を向上させることができる。
【0009】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極膜層の圧密密度PDは、1.5g/m3≦PD≦1.7g/m3を満たし、任意選択的には、前記負極膜層の圧密密度PDは1.53g/m3≦PD≦1.68g/m3を満たす。負極膜層の圧密密度は上記範囲内にあると、電池の急速充電能力およびサイクル性能を向上させることができる。
【0010】
本願の上記いずれかの実施の形態において、前記負極活物質は人造黒鉛を含み、任意選択的には、前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率≧60%であり、任意選択的には、前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率は80%~100%である。負極活物質は上記条件を満たすことにより、電池はより高い急速充電能力およびサイクル寿命を備えることができる。
【0011】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質は天然黒鉛を含む、任意選択的には、前記負極活物質における前記天然黒鉛の質量比率≦40%であり、任意選択的には、前記負極活物質における前記天然黒鉛の質量比率は10%~30%である。負極活物質は上記条件を満たすことにより、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0012】
本願の上記いずれかの実施の形態においては、負極活物質は二次粒子を含み、任意選択的には、前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率≧60%であり、任意選択的には、前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率は80%~100%である。負極活物質は上記条件を満たすことにより、電池の急速充電能力をさらに向上させることができるとともに、電池のサイクル寿命をさらに改善することができる。
【0013】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は、0.3~0.4であり、任意選択的には、前記負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は0.31~0.36である。負極活物質の粒度均一性(Uniformity)が所与の範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができるとともに、電池のサイクル寿命及びエネルギー密度をさらに改善することができる。
【0014】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の粒度スパン(Dv90-Dv10)/Dv50は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たし、任意選択的には、1.1≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.3である。負極活物質の粒度スパン(Dv90-Dv10)/Dv50は所与の範囲にあると、電池の急速充電能力をさらに改善することができる。
【0015】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の黒鉛化度は93%~95%であり、任意選択的には、前記負極活物質の黒鉛化度は93.5%~94.5%である。負極活物質の黒鉛化度は所与の範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができるとともに、電池のサイクル寿命を向上させることもできる。
【0016】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の粉体OI値は2.5~4.5であり、任意選択的には、前記負極活物質の粉体OI値は3~4である。負極活物質の粉体OI値が所与の範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができるとともに、電池のサイクル寿命をさらに向上させることもできる。
【0017】
本願の前記いずれかの実施形態において、前記負極活物質のタップ密度は、0.8g/cm3~1.2g/cm3であり、任意選択的には、前記負極活物質のタップ密度は0.9g/cm3~1.1g/cm3である。負極活物質のタップ密度を所与の範囲内にあると、電池はより高いエネルギー密度を備えることができるとともに、電池の急速充電能力のさらなる改善が図れる。
【0018】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度は1.65g/cm3~1.85g/cm3であり、任意選択的には、前記負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度は1.7g/cm3~1.8g/cm3である。負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度は所与の範囲内にあると、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0019】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極活物質のグラム容量は350mAh/g~360mAh/gであり、任意選択的には、前記負極活物質のグラム容量は352mAh/g~358mAh/gである。この容量区間の負極活物質を用いることにより、電池が高いエネルギー密度及び急速充電能力を備えることを確保することができる。
【0020】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極膜層の多孔率Pは、25%≦P≦45%を満たし、任意選択的には、前記負極膜層の多孔率Pは28%≦P≦35%を満たす。負極膜層の多孔率は上記範囲内にあると、電池のエネルギー密度および急速充電能力を向上させることができる。
【0021】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記負極膜層と前記負極集電体との間の接着力Fは、4.5N/m≦F≦15N/mを満たし、任意選択的には、前記負極膜層と前記負極集電体との間の接着力Fは、8N/m≦F≦12N/mを満たす。負極膜層と負極集電体との間の接着力が上記範囲内にあると、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させることができる。
【0022】
本願の上記いずれかの実施形態において、前記二次電池は、正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一方の面に設けられて正極活物質を含む正極膜層とを有する正極板を含み、前記正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、及びそれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含む。
【0023】
本願の第2態様は、以下の方法により負極板を作製するステップを含む二次電池の製造方法を提供する。黒鉛を含む負極活物質を提供し、前記負極活物質で負極スラリーを形成し、前記負極スラリーを負極集電体の少なくとも一方の面に塗布し、負極膜層を形成し、負極板を得、前記負極板は、前記負極板とリチウム金属片をコイン電池に構成し、且つコイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有することを満たす。
【0024】
本願に係る製造方法で得られた二次電池において、負極板の負極活物質は黒鉛を含み、且つ前記負極板は、負極板とリチウム金属片をコイン電池に構成し、且つ前記コイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、得られた容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有することを満たすことにより、負極板が高い可逆容量を有するとともに、高い活性イオンの吸蔵・放出能力を有するようにし、活性イオンの正負極間の移動速度を大幅に向上させ、二次電池が高エネルギー密度を有する前提で、急速充電能力及びサイクル寿命を著しく向上させることができる。
【0025】
本願の第3態様は、本願の第1態様に係る二次電池、または本願の第2態様に係る製造方法により得られる二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0026】
本願の第4態様は、本願の第3態様に係る電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0027】
本願の第5態様は、本願の第1態様に係る二次電池、本願の第2態様に係る製造方法により得られる二次電池、本願の第3態様に係る電池モジュール、または本願の第4態様に係る電池パックの少なくとも一つを含む装置を提供する。
【0028】
本願に係る電池モジュール、電池パック及び装置は本願に係る二次電池を含むので、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本願の実施例の態様をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明する図面は本願の一部の実施形態に過ぎず、当業者は、創造的な労働をしない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】本願の実施例2に係る二次電池の負極板とリチウム金属片で構成されるコイン電池が0.05Cで5.0mVまで放電する容量増分曲線V-dQ/dV図である。
【
図2】本願の比較例2に係る二次電池の負極板とリチウム金属片で構成されるコイン電池が0.05Cで5.0mVまで放電する容量増分曲線V-dQ/dV図である。
【
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図8】二次電池を電源として用いる装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願の発明目的、態様及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下は実施例を参照しながら本願をさらに詳細に説明する。本明細書に記載の実施例は単に本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないと理解されよう。
【0031】
簡単のため、本明細書はいくつかの数値範囲のみを明確に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。なお、明記されていないが、範囲の端点間の各点または個別の数値は、いずれもこの範囲に含まれる。したがって、各点又は個別の数値はその自身の下限又は上限として任意の他の点又は個別の数値と組み合わせて或いは他の下限又は上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。
【0032】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種又は複数種」のうちの「複数種」は2種及び2種以上を意味する。
【0033】
本願の上記発明内容は、本願に開示された実施形態全体又は実現形態全体を記載する意図がない。以下のように、記載は、より具体的に例を挙げて例示的な実施形態を説明するものである。本願の明細書の数か所には、一連の実施例により、教示を提供し、これらの実施例は各種の組合せ形式で使用することができる。各実例において、例示は、代表的なものに過ぎず、網羅的な例挙に解釈されるべきではない。
【0034】
二次電池
【0035】
本願の第1態様の実施形態は、二次電池を提供する。この二次電池は、正極板と、負極板と、電解質とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して吸蔵及び放出される。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0036】
[負極板]
【0037】
本願に係る負極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一方の面に設けられて黒鉛を包含する負極活物質を含む負極膜層と、を有し、前記負極板は、前記負極板とリチウム金属片をコイン電池に構成し、且つ前記コイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する場合、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークを有することを満たす。
【0038】
当業者であれば分かるべきであるように、黒鉛はリチウム吸蔵反応中に、容量増分曲線V-dQ/dVには、4つのリチウム吸蔵の相移転ピーク(1次、2次、3次及び4次)があり、それぞれ黒鉛のリチウム吸蔵過程における4つの異なる相移転段階に対応する。すなわち、4つのリチウム吸蔵の相移転ピークは、黒鉛のリチウム吸蔵特性の外的な表現である。具体的には、
図1に示すように、4次リチウム吸蔵の相移転ピーク(4#ピーク)は黒鉛(C)が4次黒鉛層間化合物(LiC36)へ移転する相移転過程に対応し、3次リチウム吸蔵の相移転ピーク(3#ピーク)は4次黒鉛層間化合物(LiC36)から3次黒鉛層間化合物(LiC27)へ移転する相移転過程(以下3次リチウム吸蔵の相移転過程と略称する)に対応し、2次リチウム吸蔵の相移転ピーク(2#ピーク)は3次黒鉛層間化合物(LiC27)から2次黒鉛層間化合物(LiC12)へ移転する相移転過程に対応し、1次リチウム吸蔵の相移転ピーク(1#ピーク)は2次黒鉛層間化合物(LiC12)から1次黒鉛層間化合物(LiC6)へ移転する相移転過程に対応する。黒鉛の各次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置はこの相移転ピークのピーク値(本願でいうピーク値はこの相移転ピークの最下点を指す)に対応する電圧値である。
【0039】
本発明者らは、鋭意研究の結果、負極板の負極活物質が黒鉛を含むとともに、負極板は、この負極板とリチウム金属片をコイン電池に組み立て、且つこのコイン電池を0.05Cで5.0mVまで放電する(すなわち、コイン電池の電圧が5.0mVになるまで0.05Cで負極板にリチウムを吸蔵させる)と、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークを有することを満たす場合、この負極板を用いる二次電池は高エネルギー密度の前提で、急速充電能力及びサイクル寿命を顕著に向上させることができることを初めて見出した。
【0040】
いずれの理論にも限定されることを望まず、本発明者らは大量の研究によって3次リチウム吸蔵ピークのピーク位置が上記範囲内にある場合、負極板は3次リチウム吸蔵の相移転過程のリチウム吸蔵反応をより発生しやすく、リチウムイオンの正負極間の移動速度を大幅に向上させ、二次電池の急速充電能力を顕著に向上させることができることを初めて見だした。また、電池は高率充電時の分極が小さく、電池の容量利用率およびサイクル容量維持率が高い。したがって、この負極板を用いた電池は、高エネルギー密度で、より良好な急速充電能力およびより長いサイクル寿命を備えることができる。
【0041】
一部の実施形態では、任意選択的には、前記負極板とリチウム金属片で構成されるコイン電池が0.05Cで5.0mVまで放電する容量増量曲線V-dQ/dVにおいて、3次リチウム吸蔵ピークのピーク位置は0.055V~0.083V、0.057V~0.083V、0.057V~0.077V、0.06V~0.082V、0.06V~0.08V、0.061V~0.074V、0.063V~0.083Vであってもよい;0.063V~0.075V、0.065V~0.083V、0.065V~0.080V、0.065V~0.078V、又は0.068V~0.075Vなどにあってもよい。3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置が所与の範囲内にあると、二次電池の急速充電能力およびサイクル寿命をさらに改善することができる。
【0042】
一部の実施形態において、前記負極板とリチウム金属片で構成されるコイン電池が0.05Cで5.0mVまで放電する容量増分曲線V-dQ/dVにおいて、3次リチウム吸蔵ピークのピーク強度は-3Ah/V/g~-15Ah/V/gである。3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク強度が適正範囲内にあると、負極板は高い実際リチウム吸蔵容量を有する。したがって、この負極板を用いる電池は、高い急速充電能力とエネルギー密度を両立することができる。任意選択的には、3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク強度は-4~-13Ah/V/g、-5~-12Ah/V/g、-4~-10Ah/V/g、-5~-10Ah/V/g、又は-5~-8Ah/V/gなどであってもよい。
【0043】
なお、本願に記載の「コイン電池」は本願の負極板の特徴を示すためのものに過ぎず、その製造過程は国家標準又は業界規範を参照することができる。例として、負極板を円形の電極板に作製し、リチウム金属の小円板を対極とし、業界内で慣用の電解液を添加してコイン電池を製造することができる。例えばエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で均一に混合して有機溶媒を得て、十分に乾燥されたリチウム塩LiPF6を有機溶媒に均一に溶解し、電解液を得て、LiPF6の濃度は1mol/Lであってもよい。負極板とリチウム金属の小円板との間に、隔離の役割を果たすようにセパレータが設けられる。セパレータは、業界で慣用のセパレータであってもよく、例えば、ポリエチレン(PE)セパレータである。コイン電池は業界内で慣用の型番であってもよく、例えばCR2430型である。コイン電池の組み立ては、例えば、アルゴン雰囲気グローブボックスで行われる。
【0044】
負極板とリチウム金属片で製造されたコイン電池を、25℃で、0.05Cで電圧5.0mVまで放電し、電池の電圧Vと容量Qを収集し、単位電圧変化(dV)に対する容量増分dQ/dVを算出し、続いて、容量増分曲線V-dQ/dVを描く。収集した電圧V及び容量Qのデータにより、EXCELにおいてSLOPE関数を用いてdQ/dVを算出することができる。単位電圧変化dVは、0.2V~0.5V(例えば0.3V)であってもよい。ここで、コイン電池を用いて負極板の容量及び容量増分を測定することは、当分野で公知の方法である。
【0045】
上記したコイン電池の製造に用いられる負極板は負極板の作製工程においてサンプリングすることができるし、二次電池を解体した後にサンプリングすることができる。
【0046】
負極膜層は、負極集電体自体の厚さ方向に対向する2つの面のうちのいずれか一方または両方に設けられていてもよいと理解されよう。
【0047】
本願に係る負極板において、負極活物質の種類、構造パラメータ(例えば本明細書に記載の材料構造パラメータ)、及び負極板の構造パラメータ(例えば本明細書に記載の極板構造パラメータ)のうちの1種又は複数種を調整することにより、前記V-dQ/dV曲線における黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置を本願の所与の範囲内に制御することができる。
【0048】
本願の負極板において、負極活物質は人造黒鉛及び天然黒鉛のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0049】
一部の実施形態において、任意選択的には、負極活物質は人造黒鉛を含む。人造黒鉛はリチウム吸蔵過程における体積変化が小さいため、負極板が高い電解液濡れ性と保持量を保持することに有利であり、負極板の細孔間のリチウムイオンの拡散がより容易であり、黒鉛リチウム吸蔵反応の進行に有利であり、3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置が要求を満たすようにする。また、人造黒鉛は構造安定性が高く、サイクル中の副反応が少ないため、電池は長いサイクル寿命を備えることができる。
【0050】
一部の実施形態において、任意選択的には、前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率≧60%である。前記負極活物質における前記人造黒鉛の質量比率は、例えば、70%~100%、75%~100%、80%~100%、又は90%~100%などであってよい。
【0051】
一部の実施形態において、負極活物質は、天然黒鉛をさらに含むことができる。天然黒鉛の表面のリチウム吸蔵サイトが多く、電荷交換インヒーダンスが小さいとともに、天然黒鉛内部の黒鉛層の欠陥が少なく、それにおけるリチウムイオンの固相拡散能力がより高いため、負極活物質は天然黒鉛を適量含むことで、黒鉛のリチウム吸蔵反応性能をさらに改善し、電池の急速充電能力を向上させることができる。
【0052】
一部の実施形態において、任意選択的には、負極活物質における天然黒鉛の質量比率≦40%である。例えば、負極活物質における天然黒鉛の質量比率は、10%~40%、20%~40%、10%~30%、又は15%~25%などであってもよい。負極活物質における天然黒鉛の質量比率が適正範囲内にあると、二次電池の急速充電能力とサイクル寿命とのバランスがよりよく取れる。
【0053】
本願に係る負極板において、負極活物質は本願の上記負極活物質を含むほか、さらに一定量の他の常用の負極活物質を含むことができ、例えばソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、錫系材料、チタン酸リチウムのうちの1種又は複数種である。前記ケイ素系材料は単体ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭素複合体、ケイ素合金のうちの1種又は複数種から選ぶことができる。前記錫系材料は単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種又は複数種から選ぶことができる。
【0054】
本願に用いられる負極活物質は、いずれも商業的ルートから入手可能であるか、又は当分野で公知の方法を用いて製造することができる。例として、人造黒鉛は、次の方法によって作製することができる。石油コークスを粉砕し、粉砕生成物の体積平均粒径Dv50は5μm~10μm、5.5μm~7.5μm、6.5μm~8.5μm、又は7.5μm~9.5μmなどであってもよく、粉砕後の石油コークスに対して整形、分級処理を行い、前駆体を得る。選択可能に、前駆体を造粒するステップにおいて、有機炭素源がある又はない条件で前駆体を造粒し、造粒型の前駆体を得ることができる。2800℃~3200℃の温度で前駆体に対して黒鉛化処理を行い、人造黒鉛を得る。選択可能には、さらに有機炭素源を用いて黒鉛化処理生成物を被覆し、炭化処理を経て、被覆変性の人造黒鉛を得ることができる。造粒および被覆用有機炭素源は、当分野で公知の材料から独立に選ぶことができ、例えばピッチ、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などである。選択可能に、前記黒鉛コークスの揮発分含有量は3%~8%(質量%)である。選択可能に、前記石油コークスは石油生コークスを含む。
【0055】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質の体積平均粒径Dv50は、8μm≦Dv50≦16μmを満たす。例えば、負極活物質のDv50は、8μm~14μm、8μm~11μm、10μm~14μm、9μm~15μm、9.5μm~14.5μm、又は13μm~16μmなどであってもよい。負極活物質は、Dv50が適正範囲内にあると、急速リチウム吸蔵通路を多く備え、また粒子内部におけるリチウムイオンの移動経路を短くし、黒鉛のリチウム吸蔵反応性能を向上させることができる。また、負極活物質粒子同士の接触が良好であると共に、電解液の濡れに適した豊富なトンネル構造を形成することができ、黒鉛のリチウム吸蔵性能をさらに改善することができる。したがって、適切なDv50を有する負極活物質を用いることにより、V-dQ/dV曲線における3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置が本願の所与の範囲を満たすことに有利である。
【0056】
負極活物質のDv50が適正範囲内にあると、粒子表面での電解液の副反応を低減し、分極現象を減少し、電池のサイクル寿命を向上させることができる。したがって、任意選択的には、負極活物質のDv50は9.5μm~14.5μmであってもよい。
【0057】
一部の実施形態において、選択可能には、負極活物質は二次粒子を含むことができる。本発明者らは、研究を重ねた結果、負極活物質が一定量の二次粒子を含むと、提供可能なリチウム吸蔵の通路が多くなり、負極活物質のリチウム吸蔵反応性能をさらに改善することができ、電池の急速充電能力の向上に有利であることを見出した。またリチウム吸蔵過程における負極板の膨張効果を低減することができ、これは電池のサイクル寿命の改善に有利である。任意選択的には、負極活物質における二次粒子の個数比率≧60%である。例えば、負極活物質における二次粒子の個数比率は、70%~100%、75%~100%、80%~100%、又は90%~100%などであってもよい。
【0058】
一部の実施形態において、選択可能には、負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は0.3~0.4である。例えば、負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は0.3~0.38、0.31~0.36、0.32~0.4、0.32~0.37、0.34~0.36、又は0.33~0.39などであってもよい。この負極活物質を用いる負極板は、短い液相輸送経路を形成しやすく、黒鉛のリチウム吸蔵反応性能をさらに改善し、電池の急速充電能力を向上させることができる。また、負極板の粒子間に大きな接触面積を有することができ、密着を実現し、負極板が高い圧密密度を得るようにし、電池のエネルギー密度を向上させる。粒子と集電体との間にも大きな接触面積を有することができ、負極板が良好な接着性を備えるようにし、負極板における電子伝導に有利であり、負極活物質のリチウム吸蔵反応性能を改善するとともに、負極板の脱膜、粉落ちのリスクを低減するため、電池の急速充電能力及びサイクル寿命をさらに向上させることができる。
【0059】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質の粒度スパン(Dv90-Dv10)/Dv50は1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たすことができる。負極活物質の(Dv90-Dv10)/Dv50は、例えば、1.0~1.3、1.05~1.35、1.1~1.4、1.1~1.3、又は1.15~1.25などであってもよい。
【0060】
負極活物質の(Dv90-Dv10)/Dv50は、負極活物質における大きな粒子の粒径と小さな粒子の粒径とが体積平均粒径Dv50からずれる程度を反映している。負極活物質の(Dv90-Dv10)/Dv50が適切であると、負極活物質粒子が負極膜層において高い分散均一性を有することに有利であり、負極膜層の異なる領域における負極活物質がいずれも高いリチウム吸蔵反応性能を示すことに有利であり、電池の急速充電性能を改善する。
【0061】
一部の実施形態において、選択可能には、負極活物質の黒鉛化度は93%~95%である。負極活物質の黒鉛化度は、例えば93.5%~94.5%などであってもよい。負極活物質の黒鉛化度が所与の範囲内にあると、負極活物質が高い可逆容量を有するとともに大きな黒鉛層間距離を兼ね備えるようにし、黒鉛のリチウム吸蔵性能をさらに改善し、電池の急速充電能力を向上させることができる。また、この負極活物質は充放電過程における構造安定性に優れ、電池のサイクル寿命を向上させることができる。
【0062】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質の粉体OI値は2.5~4.5であってもよい。例えば、負極活物質の粉体OI値は、3~4.2、3~4、または3.2~3.8などでであってもよい。負極活物質の粉体OI値は、負極活物質の配向指数を表す。負極活物質は、粉体OI値が適切であると、リチウムイオンの急速吸蔵通路を多く備えることができ、リチウム吸蔵性能を向上させることができる。また、負極活物質の粉体OI値が適正範囲内にあると、さらにリチウム吸蔵過程における負極板の膨張効果を低減し、電池のサイクル寿命を改善することができる。
【0063】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質のタップ密度は0.8g/cm3~1.2g/cm3である。負極活物質のタップ密度は、例えば、0.9g/cm3~1.1g/cm3などであってもよい。負極活物質のタップ密度が所与の範囲内にあると、負極膜層の圧密密度を高めることができ、電池の高エネルギー密度化に有利である。また、負極膜層における負極活物質粒子同士に良好な接触を形成するとともに、スムーズなトンネル構造を形成し、負極活物質のリチウム吸蔵性能の改善に有利であり、電池の急速充電能力を改善することができる。
【0064】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度は1.65g/cm3~1.85g/cm3であってもよい。負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度は、例えば、1.7g/cm3~1.8g/cm3などであってもよい。負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度が所与の範囲内にあると、負極膜層が高い圧密密度を備えることができ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0065】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質のグラム容量は350mAh/g~360mAh/gである。負極活物質のグラム容量は、例えば、352mAh/g~358mAh/g、または353mAh/g~357mAh/gなどであってもよい。この容量区間の負極活物質を用いることにより、電池が高いエネルギー密度及び急速充電性能を備えることを確保できる。
【0066】
一部の実施形態において、選択可能に、負極活物質の表面の少なくとも一部は被覆層を有する。被覆層は負極活物質に対して保護作用を果たし、溶媒共挿入による黒鉛層の剥離を大幅に低減し、負極活物質が高い構造安定性を備えるようにし、二次電池が長いサイクル寿命を備えるようにすることができる。
【0067】
任意選択的には、負極活物質の80%~100%の表面に被覆層を被覆してもよい。さらに、負極活物質の90%~100%の表面に被覆層を被覆してもよい。
【0068】
選択可能に、前記被覆層は非晶質炭素を含む。非晶質炭素を含む被覆層はリチウムイオンを粒子において速く拡散させることができ、負極活物質のリチウム吸蔵性能を改善し、電池の急速充電能力を向上させることができる。非晶質炭素被覆層は、有機炭素源を炭化して形成することができる。有機炭素源としては、例えば、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂、ヤシ殻などの高分子ポリマーから選ぶことができる。
【0069】
本願に係る負極板において、負極膜層は一般には負極活物質、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤を含み、一般には負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て形成されるものである。負極スラリーは、一般には、負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤及び選択可能な助剤などを溶媒に分散させ、均一に攪拌することにより形成されるものである。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0070】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、Super P、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0071】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0072】
他の選択可能な助剤は、例えば例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などである。
【0073】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層の面密度CWは0.09kg/m2≦CW≦0.117kg/m2を満たす。例えば、0.09kg/m2≦CW≦0.105kg/m2、0.09kg/m2≦CW≦0.097kg/m2、0.09kg/m2≦CW≦0.095kg/m2、0.094kg/m2≦CW≦0.107kg/m2、0.095kg/m2≦CW≦0.110kg/m2、0.097kg/m2≦CW≦0.110kg/m2、又は0.105kg/m2≦CW≦0.117kg/m2などである。
【0074】
負極膜層の面密度CWは、負極膜層の単位面積当たりの重量である。CWが上記範囲内にあると、黒鉛の3次リチウム吸蔵ピークのピーク位置を本願の所与の範囲内に制御することに役立つ。また、適切な面密度により、負極板が高い可逆容量を備えるようにするとともに、極板におけるリチウムイオンの移動距離を減少し、電池のエネルギー密度及び急速充電能力をさらに改善することができる。
【0075】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層の圧密密度PDは1.5g/m3≦PD≦1.7g/m3を満たす。例えば、1.5g/m3≦PD≦1.65g/m3、1.5g/m3≦PD≦1.6g/m3、1.53g/m3≦PD≦1.68g/m3、1.55g/m3≦PD≦1.65g/m3、1.55g/m3≦PD≦1.63g/m3、1.58g/m3≦PD≦1.63g/m3、又は1.6g/m3≦PD≦1.7g/m3などである。
【0076】
負極膜層の圧密密度PDは、負極膜層の単位体積あたりの重量であり、負極膜層の面密度CWを負極膜層の厚さで割るものに等しい。PDが上記範囲内にあると、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置を本願の所与の範囲内に制御することに役立つ。また、適切な圧密密度により、負極膜層が高い電子伝導能力及び低い液相伝導インヒーダンスを備えるようにし、電池の急速充電能力及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0077】
発明者らは鋭意研究を重ねた結果、負極活物質のパラメータと負極板のパラメータを合理的に設計することにより、電池が高エネルギー密度を有する前提で、電池の急速充電能力及びサイクル寿命をさらに向上させることができることを見出した。
【0078】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層は、負極活物質のDv50が8μm~11μmであり、負極膜層のCWが0.105kg/m2~0.117kg/m2であり、負極膜層のPDが1.5g/m3~1.6g/m3であり、且つV-dQ/dV曲線において、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置が0.07V~0.085Vであることを同時に満たし、例えば、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置が0.07V~0.08V、又は0.078V~0.085Vなどであってもよい。
【0079】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層は、負極活物質のDv50が10μm~14μmであり、負極膜層のCWが0.097kg/m2~0.110kg/m2であり、負極膜層のPDが1.55g/m3~1.65g/m3であり、且つV-dQ/dV曲線において、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置が0.062V~0.078Vであることを同時に満たし、例えば、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置が0.062V~0.072V、又は0.068V~0.078Vなどであってもよい。
【0080】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層は、負極活物質のDv50が13μm~16μmであり、負極膜層のCWが0.09kg/m2~0.097kg/m2であり、負極膜層のPDが1.6g/m3~1.7g/m3であり、且つV-dQ/dV曲線において、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相転移ピークのピーク位置が0.055V~0.067Vであることを同時に満たし、例えば、黒鉛の3次リチウム吸蔵の相移転ピークのピーク位置が0.055V~0.06V、又は0.059V~0.067Vなどであってもよい。
【0081】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層の多孔率Pは25%≦P≦45%を満たす。例えば、25%≦P≦42%、28%≦P≦40%、28%≦P≦38%、28%≦P≦35%、30%≦P≦43%、30%≦P≦40%、又は30%≦P≦38%などである。Pは上記範囲内にあると、負極板が適切な電解液濡れ性能と良好な反応界面を備えるようにするとともに、リチウムイオンが負極板において伝導する液相インヒーダンスを低減することができ、負極活物質のリチウム吸蔵性能を改善し、電池の急速充電能力を向上させることができる。また、適切なPにより、負極膜層が適切な電解液保持量を備えるとともに、電池が低い重量を備えるようにし、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0082】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層と負極集電体との間の接着力Fは4.5N/m≦F≦15N/mを満たす。例えば、5N/m≦F≦14N/m、7N/m≦F≦15N/m、6N/m≦F≦13N/m、又は8N/m≦F≦12N/mなどである。負極膜層と負極集電体との間の接着力Fが大きいため、負極板は良好な電子伝導性を有し、これは負極活物質のリチウム吸蔵性能の改善に有利である。また、Fはさらに負極板が循環過程において接着信頼性を維持する能力を示し、電池が全ライフサイクルにわたって良好な電子伝導能力を保持することに有利であり、電池の循環性能をさらに改善することができる。
【0083】
本願の負極板において、前記負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質、例えば銅箔を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
本願に係る負極板において、負極膜層の関連パラメータはいずれも片面の負極膜層のパラメータを指す。負極集電体の両面に負極膜層が設けられている場合、いずれか一方の面における負極膜層のパラメータが本願のデータ範囲を満たすと、本願の保護範囲内に収まると考えられる。また本願に記載の黒鉛の3次リチウム吸蔵ピークのピーク位置、負極膜層の圧密密度PD、面密度CW、多孔率P、接着力Fなどの範囲はいずれも冷間プレスにより圧密された後に電池を組み立てるための負極板の膜層のパラメータである。
【0085】
なお、本願に係る負極板は、負極膜層以外の他の付加機能層を排除するものではない。ある実施形態において、負極板は、例えば、負極集電体と負極膜層との間に介在して負極集電体の表面に設けられる導電性下塗層(例えば、導電剤と接着剤で構成される)をさらに含む。他の一部の実施形態において、本願の前記負極板は負極膜層の表面を被覆する保護層をさらに含む。
【0086】
本願において、負極活物質の体積平均粒径Dv50、粒度均一性(Uniformity)、粒度スパン(Dv90-Dv10)/Dv50は、いずれも当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器および方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T19077-2016レーザー回折式粒度分析法を参照し、レーザー粒度分析計(例えば、MasterSize3000)を用いて測定することができる。
【0087】
負極活物質の粒度均一性(Uniformity)は、負極活物質における全粒子の粒径が、負極活物質の体積平均粒径(Dv50)からずれるばらつき程度を表すことができ、負極活物質の粒径分布の均一性を反映している。
【0088】
負極活物質の粒度スパン(Dv90-Dv10)/Dv50は、負極活物質における大きな粒子の粒径及び小さな粒子の粒径が体積平均粒径(Dv50)からずれる程度を反映している。
【0089】
Dv10は、負極活物質の累積体積分布率が10%に達する時に対応する粒径を示す。
【0090】
Dv50は、負極活物質の累積体積分布率が50%に達する時に対応する粒径を示す。
【0091】
Dv90は、負極活物質の累積体積分布率が90%に達する時に対応する粒径を示す。
【0092】
負極活物質の黒鉛化度は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器及び方法を用いて測定することができる。例えば粉末X線回折装置(例えばBruker D8 Discover)を用いてJISK0131-1996、JB/T4220-2011に基づいてd002の大きさを測定し、次に、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100に基づいて黒鉛化度Gを算出することができ、d002はナノメータル(mm)ベースの黒鉛結晶構造における層間距離である。
【0093】
本願のX線回折分析測定において、銅ターゲットを陽極ターゲットとし、CuKα線を放射線源とし、放射線波長λ=1.5418Åであり、走査の2θ角度範囲は20°~80°であり、走査速度は4°/minであってもよい。
【0094】
負極活物質の粉体OI値は、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器及び方法を用いて測定することができる。例えば、粉末X線回折装置(例えば、BrukerD8Discover)を用いて、JISK0131-1996、JB/T4220-2011に基づき負極活物質のX線回折スペクトルを得、そして、OI値=C004/C110に基づき負極活物質の粉体OI値を算出することができる。C004は黒鉛004の結晶面の特徴回折ピークのピーク面積であり、C110は黒鉛110の結晶面の特徴回折ピークのピーク面積である。
【0095】
負極活物質のタップ密度CWは、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器および方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T5162-2006規格を参照し、粉体のタップ密度測定器(例えば、丹東百特BT-300型)を用いて簡便に測定することができる。
【0096】
負極活物質の粉体圧密密度PDは、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器および方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T24533-2009規格を参照して、電子圧力試験機(例えば、UTM7305型)により測定することができる。例示的な測定方法は、負極活物質を1g秤量し、底面積1.327cm2の型に入れ、3000kg(30kNに相当)まで加圧し、30s保圧し、続いて減圧し、10s保持し、そして負極活物質の30kN圧における粉体圧密密度を算出して記録することである。
【0097】
本願において、一次粒子及び二次粒子は、いずれも当分野で公知の意味である。一次粒子とは非凝集状態の粒子をいい、二次粒子とは、2つ以上の一次粒子が凝集した凝集状態の粒子をいう。
【0098】
負極活物質における二次粒子の個数比率は、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例示的な測定方法は、負極活物質を導電性粘着剤に敷設して粘着し、長さ×幅=6cm×1.1cmの被測定サンプルを作製し、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を用いて粒子形状を測定することである。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、被測定サンプルにおいて、複数(例えば20つ)の異なる領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば1000倍)で、全粒子数に対する各領域における二次粒子数の百分率を算出すると、当該領域における二次粒子の個数比率を得、複数の測定領域の測定結果の平均値を負極活物質における二次粒子の個数比率とする。
【0099】
負極活物質のグラム容量は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。負極活物質のグラム容量の例示的な測定方法は以下通りである。負極活物質、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるPVDFを質量比91.6:1.8:6.6で溶剤であるNMP(N-メチルピロリドン)に均一に混合し、スラリーを調製し、調製したスラリーを銅箔の集電体に塗布し、オーブンで乾燥した後に使用に備える。金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとする。エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、続いてLiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度は1mol/Lである。アルゴン雰囲気グローブボックスでCR2430型コイン電池を組み立てる。得たコイン電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、10μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、その後、0.1Cの電流で2Vまで定電流充電し、充電容量を記録する。負極活物質の質量に対する充電容量の比は、作製された負極活物質のグラム容量である。
【0100】
負極膜層の面密度は、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例えば、片面塗布で且つ冷間プレスされた負極板(両面塗布の負極板であればそのうちの一面の負極膜層を先に拭き取ることができる)を取り、面積S1の小円板を打ち抜き、その重量を秤量し、M1とする。そして、上記秤量後の負極板の負極膜層を拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、M0として、負極膜層の面密度=(負極板の重量M1-負極集電体の重量M0)/S1である。
【0101】
負極膜層の圧密密度は本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を用いて測定することができる。負極膜層の圧密密度=負極膜層の面密度/負極膜層の厚さである。
【0102】
負極膜層の厚さは、当分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を用いて測定することができる。例えば、小数点以下4桁精度のマイクロメータを用いる。
【0103】
負極膜層の多孔率は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器及び方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T24586-2009を参照して、気体置換法を用いて測定することができる。例示的な測定方法は以下のとおりである。片面塗布で且つ冷間プレスされた負極板(両面塗布の負極板であれば、そのうちの一面の負極膜層を先に拭き取ることができる)を取り、直径14mmの小円板サンプルを打ち抜き、負極膜層の厚さ(負極板の厚さ-負極集電体の厚さ)を測定し、円柱体積の計算式に基づき、負極膜層の見かけ体積V1を算出し、不活性ガス、例えばヘリウムガス又は窒素ガスを媒体とし、気体置換法により、真密度測定器(例えばMicromeritics Accu Pyc II 1340型)を用いて負極板の真体積を測定し、測定はGB/T24586-2009を参照することができ、負極板の真体積から負極集電体の体積を減算し、負極膜層の真体積V2を得、負極膜層の多孔率=(V1-V2)/V1×100%である。複数枚(例えば30枚)の極板サンプルを取って測定し、平均値を結果とすることができ、これにより測定結果の正確性を向上させることができる。
【0104】
負極膜層と負極集電体との間の接着力は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の機器及び方法を用いて測定することができる。負極板を長さ100mm、幅10mmの試料に裁断する。幅25mmのステンレス板を取り、両面テープ(幅11mm)を貼り付け、試料をステンレス板における両面テープに貼り付け、その表面を2000gのローラで3回往復してローリング(300mm/min)する。試料を180度折り曲げ、手動で試料の負極膜片を集電体から25mm剥離し、この試料を試験機(例えばINSTRON 336)に固定し、剥離面と試験機の力線を一致させ、試験機は30mm/minで連続的に剥離し、剥離力曲線を得、安定部分の平均値を剥離力F0とすると、試料における負極膜層と集電体との間の接着力F=F0/試料の幅(Fの計測単位:N/m)である。
【0105】
[正極板]
【0106】
本願に係る二次電池において、正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の面に設けられて正極活物質を含む正極膜層とを有してもよい。例えば、正極集電体は、その厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極膜層は、両面のいずれか一方に設けられてもよいし、両面のそれぞれに設けられてもよい。
【0107】
本願に係る二次電池において、前記正極活物質は、当分野で公知の二次電池用の正極活物質を用いることができる。選択可能に、正極活物質はリチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム包含リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性材料のうちの1種または複数種から選ぶことができる。選択可能に、前記リチウム遷移金属酸化物は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらのぞれぞれの変性材料のうちの1種または複数種から選ぶことができる。選択可能には、前記オリビン型リチウム包含リン酸塩はリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、及びそれらのそれぞれの変性材料のうちの1種又は複数種から選ぶことができる。前記変性材料は材料に対して被覆変性及び/又はドーピング変性を行ったものであってもよい。これらの正極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
一部の実施形態において、正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、及びそれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。正極活物質は、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、及びそれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0109】
本願に係る二次電池において、前記正極膜層は一般には、正極活物質及び選択可能な接着剤及び選択可能な導電剤を含み、一般には、正極スラリーを塗布し、乾燥、冷間プレスを行ってなるものである。正極スラリーは、一般には、正極活物質、選択可能な導電剤及び接着剤などを溶媒に分散させ、均一に攪拌して形成されるものである。溶剤、N-メチルピロリドン(NMP)を用いることができる。
【0110】
例として、正極膜層に用いられる接着剤は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリル酸エステル樹脂のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0111】
例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、Super P、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0112】
本願に係る二次電池において、前記正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を用いることができる。例えば、アルミニウム箔であるが、これに限定されない。
【0113】
[電解質]
【0114】
本願に係る二次電池において、電解質の種類について特に限定されず、必要に応じて選択することができる。前記電解質は、固体電解質および液状電解質(すなわち、電解液)のうちの少なくとも1種から選ぶことができる。
【0115】
一部の実施形態において、電解質は電解液を用いる。前記電解液は、電解質リチウム塩と、溶媒とを含む。
【0116】
選択可能に、リチウム塩はLiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1種または複数種から選ぶことができる。
【0117】
選択可能に、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)のうちの1種または複数種から選ぶことができる。
【0118】
一部の実施形態において、電解液は、選択可能に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤を含んでもよいし、正極被膜形成添加剤を含んでもよいし、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤など電池の何らかの性能を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0119】
[セパレータ]
【0120】
一部の実施形態において、二次電池は、セパレータをさらに含む。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の役割を果たす。本願に係る二次電池において、セパレータの種類について、特に限定されず、任意の公知の二次電池用の多孔質構造のセパレータを選ぶことができる。例えば、セパレータはガラス繊維フィルム、不織布フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフイルム、ポリビニリデンフルオライドフィルム、及びこれらのうちの1種又は2種以上を含む多層複合フィルムのうちの1種又は複数種から選ぶことができる。
【0121】
一部の実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。外装は、正極板、負極板および電解質をパッケージするためのものである。
【0122】
一部の実施形態において、二次電池の外装はハードケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどである。二次電池の外装は、軟包装であってもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロプレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種または複数種である。
【0123】
二次電池は、この分野で公知の方法を用いて製造することができる。例えば、正極板、セパレータ及び負極板を巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリを形成し、セパレータが正極板と負極板との間に介在して分離の役割を果たし、電極体を外装に入れ、電解液を注入して封口し、二次電池を得る。
【0124】
本願は、前記二次電池の形状について、特に限定せず、円筒型、角型、その他任意の形状であってもよい。
図3に、一例としての角形構造の二次電池5を示す。
【0125】
一部の実施形態において、外装は、
図4に示すように、ハウジング51と蓋板53とを含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、収容室を閉塞するように前記開口を覆設することができる。正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容室に封入される。電解液は、電極アセンブリ52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つであってもよいし、複数であってもよく、必要に応じて調節することができる。
【0126】
一部の実施例において、二次電池は電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0127】
図5は、一例としての電池モジュール4である。
図5に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並設されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに、これらの複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0128】
選択可能には、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備えてもよい。
【0129】
一部の実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0130】
図6および
図7は、一例としての電池パック1である。
図6および
図7に示すように、電池パック1は、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3をカバーすることで、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケースに配置することができる。
【0131】
装置
【0132】
本願の第2態様は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー貯蔵手段として用いられてもよい。前記装置はモバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカー、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限定されない。
【0133】
前記装置はその使用要求に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選ぶことができる。
【0134】
図8は、一例としての装置である。この装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この装置からの二次電池に対する高出力、高エネルギー密度の要求に応えるためには、電池パックや電池モジュールを用いることができる。
【0135】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量薄型化が求められており、二次電池を電源として用いることができる。
【0136】
実施例
【0137】
以下の実施例は本願の開示内容をより具体的に説明し、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、本願の開示内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかからである。なお、特に断りがない限り、以下の実施例に記載されている部、%、比はいずれも質量ベースである。また、実施例で使用された試薬は全て購入で入手するか又は通常方法に従って合成することができ、且つさらに処理することなくそのまま使用することができ、また、実施例で使用された器具はいずれも購入で入手できる。
【0138】
一、負極活物質の作製
【0139】
本願の実施例に係る負極活物質は、購入で入手することができるし、以下のような方法によって作製することができる。
【0140】
1、人造黒鉛Aは、以下のような方法によって作製することができる。揮発分含有量が10%である石油生コークスを用いて、粉砕して体積平均粒径Dv50が6.5μmである石油生コークス原料を得、前記石油生コークス原料に対して整形、分級処理を行い、前駆体を得、前駆体に5%のピッチを混合した後に600℃で造粒し、続いて3000℃の温度で黒鉛化処理を行い、黒鉛化生成物に対してピッチで被覆炭化処理を行い、人造黒鉛Aを得る。人造黒鉛Aの体積平均粒径Dv50を9.5μmに、粒度均一性(Uniformity)を0.36に、グラム容量を352mAh/gに制御する。
【0141】
2、人造黒鉛Bは、次のような方法によって作製することができる。揮発分含有量が8%である石油生コークスを用いて、粉砕して体積平均粒径Dv50が7.5μmである石油生コークス原料を得、前記石油生コークス原料に対して整形、分級処理を行い、前駆体を得、前駆体に8%のピッチを混合した後に600℃で造粒し、続いて3000℃の温度で黒鉛化処理を行い、黒鉛化生成物に対してピッチで被覆炭化処理を行い、人造黒鉛Bを得る。人造黒鉛Bの体積平均粒径Dv50を12μmに、粒度均一性(Uniformity)を0.34に、グラム容量を355mAh/gに制御する。
【0142】
3、人造黒鉛Cは、次のような方法によって作製することができる。揮発分含有量が6%である石油生コークスを用いて、粉砕して体積平均粒径Dv50が8.5μmである石油生コークス原料を得、前記石油生コークス原料に対して整形、分級処理を行い、前駆体を得、前駆体に10%のピッチを混合した後に600℃で造粒し、続いて3000℃の温度で黒鉛化処理を行い、黒鉛化生成物に対してピッチで被覆炭化処理を行い、人造黒鉛Cを得る。人造黒鉛Cの体積平均粒径Dv50を14.5μmに、粒度均一性(Uniformity)を0.34に、グラム容量を358mAh/gに制御する。
【0143】
4、天然黒鉛について、貝特瑞新材料集団股▲分▼有限公司から購入され、型番がAGP-8-3であり、体積平均粒径Dv50は約12.5μmであり、粒度均一性Uniformityは約0.41であり、グラム容量は364mAh/gである。
【0144】
二、電池の製造
【0145】
実施例1
【0146】
負極板の作製
【0147】
負極活物質である人造黒鉛(A)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)及び導電剤であるカーボンブラック(Super P)を96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で適量の脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断を経て、負極板を得、前記負極板の圧密密度は1.53g/cm3であり、面密度は0.107kg/m2である。
【0148】
正極板の作製
【0149】
正極活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤であるカーボンナノチューブ(CNT)及び導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるPVDFを97.5:0.5:0.9:1.1の重量比で適量の溶媒であるNMPに十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスした後、正極板を得た。正極膜層の面密度は0.178kg/m2であり、圧密密度は3.4g/cm3である。
【0150】
セパレータ
【0151】
ポリエチレン(PE)フィルムを用いた。
【0152】
電解液の調製
【0153】
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1:1で混合し、続いてLiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度は1mol/Lである。
【0154】
二次電池の製造
【0155】
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ねて、セパレータと負極板との間に基準電極(基準電極は電池のサンプルの後続の性能測定に用いられ、リチウムシート、リチウムワイヤなどを選べ、且つ基準電極はセパレータによって分離され、正、負極板のいずれか一側との接触を防止するべきである)を増設し、巻取を経て、電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージングなどの工程を経て二次電池を得た。
【0156】
実施例2~10及び比較例1~4は実施例1の作製方法と類似しているが、負極板及び正極板の設計パラメータを調整し、異なる製品パラメータの詳細は表2に示す。
【0157】
測定部分
【0158】
(1)黒鉛の相転移ピークのピーク位置の測定
【0159】
コイン電池の製造について、上記各実施例及び比較例における負極板を取り、それぞれ金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとする。エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、続いてLiPF6を上記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPF6の濃度は1mol/Lである。アルゴン雰囲気グローブボックスでCR2430型コイン電池を組み立てた。
【0160】
25℃で、得たコイン電池を8時間静置した後、0.05Cで電圧5.0mVまで定電流放電し、電圧及び容量のデータを収集し、続いてEXCELにおいてSLOPE関数を用いて、dQ/dVを算出し、単位電圧変化dVは0.3Vであり、容量増分曲線V-dQ/dV図を作成すると、相移転ピークに対応するピーク位置を得ることができる。
【0161】
(2)急速充電能力の測定
【0162】
25℃において、実施例および比較例で製造した二次電池を0.33Cで充電終止電圧4.4Vまで定電流充電し、続いて電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cで放電終止電圧2.8Vまで定電流放電し、その実容量をC0として記録した。
【0163】
続いて電池を順に0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0で全電池の充電終止電圧4.4V又は0Vの負極終止電位(先に達したものを基準とする)まで定電流充電し、充電が終了したたびに、1C0で全電池の放電終止電圧2.8Vまで放電する必要があり、異なる充電倍率で10%、20%、30%…80%SOC(StateofCharge、荷電状態)まで充電する時に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-負極電位曲線を描き、線形フィッティングした後、異なるSOC状態での負極電位が0Vである時に対応する充電倍率を得て、この充電倍率は当該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれC10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記し、この電池を10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間T(min)を、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づいて算出した。この時間が短いほど、電池の急速充電能力が優れることを示す。
【0164】
(3)サイクル寿命の測定
【0165】
25℃において、実施例および比較例で製造した二次電池を0.33Cで充電終止電圧4.4Vまで定電流充電し、続いて電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cで放電終止電圧2.8Vまで定電流放電し、その初期容量をC0として記録した。その後、表1に記載の方策に従って充電し、0.33Cで放電を行い、サイクル容量維持率(Cn/C0×100%)が80%になるまで、サイクル毎の放電容量Cnを記録し、サイクル回数を記録した。サイクル回数が多いほど、電池のサイクル寿命が長いことを示す。
【0166】
【0167】
各実施例及び比較例の測定結果を表2に示す。
【0168】
【0169】
表2の結果から分かるように、負極板の負極活物質が黒鉛を含み、且つ負極板は、負極板とリチウム金属片からなるコイン電池を、0.05Cで5.0mVまで放電すると、その容量増分曲線V-dQ/dVが0.055V~0.085Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵ピークを有することを満たす場合、二次電池は良好な急速充電能力と長いサイクル寿命を両立することができる。
【0170】
特に、V-dQ/dV曲線が、0.061V~0.074Vの所に黒鉛の3次リチウム吸蔵ピークを有する場合、電池の急速充電能力およびサイクル寿命がさらに改善される。
【0171】
比較例1~4は、上記条件を満たさないため、電池は急速充電能力とサイクル寿命とを両立することが困難である。
【0172】
本願の各実施例に係る正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM523)のみを例とし、当業者は電池の実際の使用環境に応じて異なる正極活物質を選択することができる。例えば、他の種類のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(例えばNCM622、NCM811など)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、及びそれらのそれぞれの変性化合物などのうちの1種又は複数種を選択することができる。本願に記載の負極板は上記各正極活物質と組み合わせて使用する場合、類似の改善効果を奏することができる。ここでは説明を省略する。
【0173】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。