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特許7355944グリッドフォーミングインバータの起動を同期させるための方法および装置
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  • 特許-グリッドフォーミングインバータの起動を同期させるための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】グリッドフォーミングインバータの起動を同期させるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230926BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02M7/48 L
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022544161
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021014374
(87)【国際公開番号】W WO2021150725
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/963,669
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515186323
【氏名又は名称】エンフェーズ エナジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Enphase Energy, Inc.
【住所又は居所原語表記】1420 North McDowell Boulevard, Petaluma, California 94954, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・オマー・ムーア
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・リチャード・ジマンク
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/107706(WO,A1)
【文献】特表2019-531677(JP,A)
【文献】特開2019-033613(JP,A)
【文献】特開2013-085412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0248378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02M 7/48
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散リソースアイランドシステム(DRIS)における非集中型パワーコンディショナ起動を同期させるための方法であって、
前記DRISにおけるパワーコンディショナにより、前記DRISの線間電圧がゼロに崩壊するときを判定するステップと、
前記パワーコンディショナにより、前記線間電圧がゼロに崩壊するときに、自力起動タイマを起動するステップであって、前記自力起動タイマが、前記DRISの複数のパワーコンディショナに対応する複数の自力起動タイマと同じ時間量に設定される、ステップと、
前記パワーコンディショナにより、前記自力起動タイマの終了に続いて、自力起動を開始するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記自力起動タイマの前記終了に続いて、かつ前記自力起動を開始する前に、時間遅延を開始するステップ
をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間遅延がランダム時間遅延である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ランダム時間遅延が、特定の極性の電流を発生させる際の信頼水準を示す信頼スコアに基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記信頼スコアが、ランプアップ中に、前記パワーコンディショナによって観察される少なくとも1つの事象に基づいて調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの事象が、前記DRISの少なくとも1つの他のパワーコンディショナからの電圧、不成功のランプアップ試行、または正常に完了したランプアップのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ランダム時間遅延のための遅延範囲が前記信頼スコアに反比例する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
実行されると、DRISにおける非集中型パワーコンディショナ起動を同期させるための方法である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を行わせる命令が記憶された、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項9】
分散リソースアイランドシステム(DRIS)における非集中型パワーコンディショナ起動を同期させるための装置であって、
前記DRISにおけるパワーコンディショナのためのコントローラ
を備え、前記コントローラは、少なくとも1つのプロセッサを備えており、
前記DRISの線間電圧がゼロに崩壊するときを判定することと、
前記線間電圧がゼロに崩壊するときに、自力起動タイマを起動することであって、前記自力起動タイマが、前記DRISの複数のパワーコンディショナに対応する複数の自力起動タイマと同じ時間量に設定される、ことと、
前記自力起動タイマの終了に続いて、自力起動を開始することと
を行う、装置。
【請求項10】
前記コントローラが、前記自力起動タイマの前記終了に続いて、かつ前記自力起動を開始する前に、時間遅延をさらに開始する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記時間遅延がランダム時間遅延である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ランダム時間遅延が、特定の極性の電流を発生させる際の信頼水準を示す信頼スコアに基づく、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記信頼スコアが、ランプアップ中に、前記パワーコンディショナによって観察される少なくとも1つの事象に基づいて調整される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの事象が、前記DRISにおける少なくとも1つの他のパワーコンディショナからの電圧、不成功のランプアップ試行、または正常に完了したランプアップのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ランダム時間遅延のための遅延範囲が前記信頼スコアに反比例する、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して分散発電システムに関し、より詳細には、分散発電システムの自力起動に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統(EPS)において、自力起動(black-start)とは、送電網への接続がない純粋にオフグリッド状態のシステムの瞬断または起動後に電力を回復する工程である。複数グリッドフォーミングインバータが大負荷に接続されて給電されるとき、それらは、同時に電流を生成し始める必要がある。それらが十分に同期されなければ、それらは負荷をサポートしかつ電圧波形を確立するのに十分な電流を個々に供給することができないので、インバータは電圧低下に陥るであろう。インバータは同極性の電流を生成する必要もあり、無極性コネクタを有するインバータに関しては、インバータが異極性と物理的に接続されて互いの起動電流を相殺する可能性がある。
【0003】
したがって、当該技術において、複数パワーコンディショナに対してタイミングの同期および電流方向に対処する自力起動のための方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、概して、特許請求の範囲にさらに完全に記載されるように、実質的に図の少なくとも1つに図示されかつ/または関連して記載される分散リソースアイランドシステム(DRIS)におけるグリッドフォーミングインバータの非集中型起動を同期させるための方法および装置に関する。
【0005】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、本開示の以下の詳細な説明に加えて、同様の参照符号が全体を通して同様の部分を指す添付の図の検討から認識され得る。
【0006】
本発明の上に列挙された特徴を詳細に理解できるように、上に簡潔に要約された本発明のより詳細な説明が実施形態への参照によって行われてよく、その一部が添付の図面に例示される。しかしながら、添付の図面が本発明の典型的な実施形態だけを例示しており、したがって本発明が他の等しく有効な実施形態を認め得るために、その範囲を限定していると考えられるものではないことが留意されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つまたは複数の実施形態を使用する電力変換のためのシステムのブロック図である。
図2】本発明の1つまたは複数の実施形態に従うパワーコンディショナコントローラのブロック図である。
図3】本発明の1つまたは複数の実施形態に従う分散リソースアイランドシステム(DRIS)におけるグリッドフォーミングインバータの非集中型起動を同期させるための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、概して、分散リソースアイランドシステム(DRIS)におけるパワーコンディショナに対してタイミングの同期および電流方向に対処する非集中型自力起動技術のための方法および装置に関する。本明細書に記載される技術は、グリッドフォーミングパワーコンディショナが、負荷リレーを有しないシステムにおいて負荷へそれらの最大定格負荷まで自力起動することを可能にする。追加的に、本明細書に記載される技術は、パワーコンディショナが、追加のリレーなしでかつ非集中方式で、すなわちゲートウェイまたは中央デバイスからの協調なしかつインバータ間の追加の通信チャネルなしで負荷へ自力起動することを可能にする。
【0009】
1つまたは複数のパワーコンディショナが自力起動を試みるが負荷をサポートすることができない様々な実施形態において、自力起動は失敗して電圧はゼロに崩壊する。ゼロ線間電圧を観察した上で、全ての接続パワーコンディショナはタイマを起動し、そしてタイマが終了すると、電力変換を再開しようと試みる。全てのパワーコンディショナが同時に電圧崩壊事象を観察するので、それらのタイマが同じ量に設定されると、それらは同時に終了して同期再開を提供するであろう。
【0010】
例えば無極性コネクタを有するパワーコンディショナにとって、適切な電流極性が決定される必要がある実施形態において、最初に厳密に同期して起動するよりむしろ、各パワーコンディショナは、極性信頼スコアに基づく遅延アルゴリズムを利用する。生成されることになる電流極性に強い信頼を有するパワーコンディショナが先に起動しやすく、そしてより弱い信頼を有するパワーコンディショナは後に起動しやすい。これは、後に起動するパワーコンディショナに、残りのパワーコンディショナから来る電圧を観察する機会を提供しており、全体的効果は、パワーコンディショナが最初は僅かに散らばって起動するので、互いが増減するのを見ることができるということである。数回の試行の後に、全てのパワーコンディショナは、電圧がどちらに行く必要があるかに気付いているであろうし、その時点で遅延はゼロに縮小されて、パワーコンディショナがそれ以来厳密に同期して起動することを許容する。
【0011】
図1は、本発明の1つまたは複数の実施形態を使用する電力変換のためのシステム100のブロック図である。この図は、本発明を活用し得る無数の可能なシステム構成およびデバイスの1つの変形例を描くものにすぎない。
【0012】
システム100は、マイクログリッドまたは分散リソースアイランドシステム(DRIS)とも称されてよく、複数のパワーコンディショナ102-1,...102-N,...102-N+M、総称してパワーコンディショナ102、複数のDC電源104-1...104-N、総称してDC電源104、複数のエネルギー貯蔵/流通デバイス(例えば、バッテリ)112-1...112-M、総称してエネルギー貯蔵/流通デバイス112、システムコントローラ106、バス108、およびロードセンタ110を備える分散発電システムである。DC電源104は、DC電力を提供するための、直前の電力変換段からの出力、バッテリ、再生可能エネルギー源(例えば、ソーラパネルもしくは光起電力(PV)モジュール、風力タービン、水力発電システムまたは類似の再生可能エネルギー源)等などの、任意の適切なDC電源でよい。図1に関して記載される実施形態など、一部の実施形態において、DC電源104はPVモジュールであり、「PVモジュール104」と称される。エネルギー貯蔵/流通デバイス112は、エネルギーを貯蔵して貯蔵エネルギーを使用するために流通させることができる任意の適切なデバイス(例えば、バッテリ、水力発電ダム等)でよいが、図1に関して本明細書に記載される実施形態において、エネルギー貯蔵/流通デバイス112はバッテリであり、本明細書において「バッテリ112」と称される。
【0013】
パワーコンディショナ102は双方向グリッドフォーミングDC:ACインバータであるが、但し別の実施形態においてパワーコンディショナ102は他の種類の電力変換器(例えば、AC-ACマトリクスコンバータ)でよい。電力変換部品に加えて、パワーコンディショナ102は、DC電流/電圧およびAC電流/電圧を監視するための電流モニタおよび電圧モニタ、他のパワーコンディショナおよび/またはシステムコントローラ106と(例えば、電力線通信(PLC)などの有線技術および/または無線技術を介して)通信するためのトランシーバ等など、電力変換および/または本明細書に記載される技術を促進する当該技術において公知の部品(図1に図示せず)を備える。
【0014】
各パワーコンディショナ102-1...102-Nは、それぞれ一対一の対応でPVモジュール104-1...104-Nに結合されるが、但し一部の別の実施形態において複数PVモジュール104がパワーコンディショナ102の1つまたは複数に結合されてよい。各パワーコンディショナ102-(N+1)...102-(N+M)は、それぞれ一対一の対応でバッテリ112-1...112-(M)に結合されるが、但し別の実施形態において単一のバッテリが複数パワーコンディショナに結合されてよく、ここでパワーコンディショナ102およびバッテリ112の各ペアリングが「ACバッテリ」130を形成する(例えば、バッテリ112-1およびパワーコンディショナ102-(N+1)はACバッテリ130-1を形成し、そしてバッテリ112-Mおよびパワーコンディショナ102-(N+M)はACバッテリ130-Mを形成する)。パワーコンディショナ102はバス108を介してシステムコントローラ106に結合され、バス108はロードセンタ110を介して1つまたは複数の負荷および送電網160(例えば、商用グリッド、1つまたは複数の他のマイクログリッド等)にさらに結合される。
【0015】
システムコントローラ106はコントローラ118を備え、そしてパワーコンディショナ102の動作制御および/または監視を提供する(例えば、パワーコンディショナ102にコマンドを通信する、パワーコンディショナ102からデータ(例えばパワーコンディショナ102の性能に関する)を得る、等)のために無線および/または有線通信(例えば、電力線通信(PLC))によってパワーコンディショナ102と通信してよい。追加的に、パワーコンディショナ102は無線および/または有線通信(例えば、PLC)によって互いと通信してよい。一部の実施形態において、システムコントローラ106は、通信ネットワークを介して、例えばインターネットを介して別のデバイス(リモートマスタコントローラなど、描写せず)から情報を受信するおよび/またはそれに情報を送信するためのゲートウェイでよい。そのような実施形態において、システムコントローラ106は、リモートマスタコントローラにパワーコンディショナ102に関連する情報(例えば、性能データ)を通信し、かつ/またはパワーコンディショナ102の1つまたは複数にリモートマスタコントローラから受信されるデータ(例えば、制御コマンド)を通信してよい。
【0016】
システム100は、いつ送電網160から切断/送電網160に接続するべきかを決定するための、および切断/接続を行うための、アイランド相互接続デバイス(IID)とも称されてよい、マイクログリッド相互接続デバイス(MID)140をさらに備える。例えば、MID140は、グリッド変動、外乱または瞬断を検出し、そして結果として、送電網160からシステム100を切断してよい。一旦送電網160から切断されると、システム100は、送電網160上で作業中であり得るいかなる電線路作業者にも安全性リスクを課すことなく意図的なアイランドとして電力を発生させ続けることができる。MID140は、グリッドまたはより大きなマイクログリッドに対してシステム100を物理的に切断/接続するための切断部品(例えば、接触器等)を備える。一部の実施形態において、MID140は、一部の中性電流で不平衡を有し得る分相負荷に平衡電力システム100を結合するためのオートトランス(autoformer)を追加的に備えてよい。別の実施形態において、システムがアイランドとしてだけ動作する場合、MID140は存在しなくてよい。
【0017】
一部の代替実施形態において、システムコントローラ106はMID140またはMID140の一部分を備える。例えば、システムコントローラ106は、送電網160を監視し、グリッド故障および外乱を検出し、いつ送電網160から切断/送電網160に接続するべきかを決定し、それに応じて切断部品を駆動するための単独運転モジュールを備えてよく、ここで切断部品は、システムコントローラ106の一部でも、または代替的に、システムコントローラ106と別でもよい。図1に描かれる実施形態など、別の実施形態において、MID140は、システムコントローラ106と別であり、かつ切断部品の他にCPUならびに、送電網160を監視し、グリッド故障および外乱を検出し、いつ送電網160から切断/送電網160に接続するべきかを決定し、それに応じて切断部品を駆動するための単独運転モジュールを備える。一部の実施形態において、MID140は、例えば電力線通信および/または無線通信を使用して、システムコントローラ106と協調してよい。したがって、送電網160に対するシステム100の切断/接続は、MID140によって駆動される制御されたプロセスである。
【0018】
パワーコンディショナ102-1...102-Nは、PVモジュール104からのDC電力をAC出力電力に変換し、そして生成された出力電力をバス108を介してロードセンタ110に結合する。ロードセンタ110は、送電網160(例えば、商用送電網、より大きなマイクログリッド等)ならびに1つまたは複数の負荷(例えば、電気器具)にさらに結合される。パワーコンディショナ102-(N+1)...102-(N+M)は、ACバス108からのACをDCに変換して結果的なエネルギーを対応するバッテリ112-1...112-Mに貯蔵でき、かつ対応するバッテリ112-1...112-MからのDCをACに変換してからACバス108に結合させることができる双方向コンバータである。そのため、システム100は、PVモジュール104を介して日中にAC出力電力を発生させ、生成されたエネルギーの少なくとも一部分をバッテリ112に貯蔵し、そしてバッテリ112に貯蔵されたエネルギーを使用して夕刻にAC出力を発生させ続けることができる。送電網160に接続されている間、パワーコンディショナ102は、パワーコンディショナ102からの出力を同期させるための基準電圧としてグリッド電圧が使用される「電力モード」で動作してよい。
【0019】
本発明の1つまたは複数の実施形態に従って、パワーコンディショナ102-1...102-(N+M)の各々は、システム100が単独運転および断電されるときにパワーコンディショナ102に対してタイミングの同期および電流方向に対処する非集中型自力起動を提供するための自力起動モジュール114-1...114-(N+M)を有する対応するコントローラ116-1...116-(N+M)を備える。システム100は各種の理由で単独運転されて(すなわち、送電網160に接続されなくて)よく、例えば、MID140は、送電網160上の電力不足に続いて送電網160からシステム100を切断してよく、ユーザが、整備を行うかつ/または部品を追加するために送電網160からシステム100を手動で切断してよく、システム100は設置されたがまだ送電網160に接続されていなくてよく、システム100は送電網160への無接続のために(すなわち、純粋にオフグリッド状態のシステムとして)構成されてよい、等。一部の実施形態において、システム100は、その負荷がシステム生成能力を上回る結果として単独運転されるときに断電されてよい。別の実施形態において、システム100は、電源104および112から不十分な入力を受けた結果として単独運転されるときに断電されてよく、例えば、DC電源104がPVモジュールである1つまたは複数の実施形態において、システム100は、PVモジュールがいかなる出力も生成していない夜間に、およびバッテリ112が負荷需要を満たすには不十分な貯蔵を有する場合に単独運転されているときに断電されるようになってよい。さらに別の実施形態において、システム100は、定例整備を行うためにまたはシステム100を拡張するために単独運転されている間意図的に断電されてよい。自力起動の前に、1つまたは複数の負荷(非限界負荷など)が必要に応じてシステム100から切断されてよい。
【0020】
システム100が単独運転されている間、十分なDC入力を有するパワーコンディショナ102は、断電からソフトグリッドレベルか公称電圧かでアクティブグリッドに移行するために自力起動を開始し始める。複数パワーコンディショナ102が同時に稼動することを必要とするほど負荷が十分に大きいとき、パワーコンディショナ102は、本明細書に記載されるように同時に稼動するために同期されることになる。
【0021】
パワーコンディショナ102の1つまたは複数が稼動しようと試みるが(例えば、入力電圧が閾値を超えるとき)、負荷をサポートしかつ電圧波形を確立するのに十分な電流を個々にまたは少数で供給することができないとき、パワーコンディショナ稼動は失敗することになり、線間電圧はゼロに崩壊する。線間電圧が崩壊するの(すなわち、ゼロ電圧)を観察した上で、全ての接続パワーコンディショナ102はタイマを起動する。各パワーコンディショナ102は、対応するタイマが終了すると稼動し始めるため、タイマが全て同じ値に設定されると、パワーコンディショナ102の全てが同期されて同時に稼動する。
【0022】
例えば無極性コネクタを有するパワーコンディショナにとって、適切な電流極性が決定される必要がある実施形態において、最初に厳密に同期して起動するよりむしろ、各パワーコンディショナ102は、電流極性を決定するためにその起動にランダム遅延を加える。ランダム遅延は、特定の方向の電流を発生させる際の信頼水準を示す信頼スコアに基づく。この余分の遅延は、電流を生成する前に、パワーコンディショナ102が互いの極性を観察するのに十分な時間を提供する。遅延は、例えばAC幹線サイクルの半分まででよいが、但し他のレベルの遅延が使用されてもよい。
【0023】
1つまたは複数の実施形態において、各パワーコンディショナ102は、範囲-100~100の信頼スコアを維持しており、ここで100の信頼スコアは、パワーコンディショナ102が確実に正電流で起動するべきであることを意味し、-100の信頼スコアは、パワーコンディショナ102が確実に負電流で起動するべきであることを意味し、信頼スコアが或る程度ゼロに近ければ、パワーコンディショナ102は方向をランダムに選択することになる。代替実施形態において、信頼スコア範囲を確立するために他の値が使用されてよい。
【0024】
信頼スコアは、ランプアップ中に観察される事象に基づいて上下に調整される。例えば、別のパワーコンディショナ102からの正電圧を観察することがスコアを押し上げる一方で、別のパワーコンディショナ102からの負電圧を観察することはスコアを押し下げ、正常に完了したランプアップが、電流発生が正しい方向にあるという信頼を増す一方で、失敗したランプアップは信頼を低下させる。
【0025】
各パワーコンディショナ102は、遅延範囲が信頼スコアに反比例するそのランダム遅延を計算する。方向を決定したパワーコンディショナ102が先に起動しやすい一方で、明確になっていないパワーコンディショナ102は後に起動しやすく、それによってそれらが残りのパワーコンディショナ102から来る電圧を観察する機会を提供する。一旦パワーコンディショナ102がそれらの最大信頼水準に達すると、さらなる自力起動試行が厳密に同期されるように追加の遅延範囲はゼロに低減される。パワーコンディショナ102は、このように、どの電流方向に自力起動するか「訓練」される。
【0026】
図2は、本発明の1つまたは複数の実施形態に従うパワーコンディショナコントローラ116のブロック図である。コントローラ116は、サポート回路204およびメモリ(または非一時的コンピュータ可読記憶媒体)206を備え、各々中央処理ユニット(CPU)202に結合される。CPU202は1つまたは複数の従来入手可能なマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを備えてよく、代替的に、CPU202は1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでよい。サポート回路204は、CPU202の機能性を促進するために使用される周知の回路である。そのような回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、バス、入出力(I/O)回路等を含むが、これらに限定されない。コントローラ116は、特定のソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行すると、本発明の様々な実施形態を行うための専用コンピュータになる汎用コンピュータを使用して実装されてよい。別の実施形態において、CPU202は、実行されると、本明細書に記載されるコントローラ機能性を提供するコントローラファームウェアを記憶するための内部メモリを備えるマイクロコントローラでよい。
【0027】
メモリ206は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、リムーバブルディスクメモリ、フラッシュメモリ、ならびにこれらおよび/または他の種類のメモリの様々な組合せから成ってよい。メモリ206は、ときに主メモリと称され、かつ一部、キャッシュメモリまたはバッファメモリとして使用されてよい。メモリ206は、概して、CPU能力によってサポートできるコントローラ116の、必要であれば、オペレーティングシステム(OS)208を記憶する。一部の実施形態において、OS208は、LINUX、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)等などであるが限定されない、多くの市販のオペレーティングシステムの1つでよい。
【0028】
メモリ206は、パワーコンディショナ102の動作(例えば、DC-AC変換、AC-DC変換、通信等)を制御するためのパワーコンディショナ制御モジュール210および、実行されると、本明細書に記載されるパワーコンディショナ自力起動機能性を制御するための自力起動モジュール114などの、様々な形態のアプリケーションソフトウェアおよび/またはファームウェアを記憶する。自力起動モジュール114によって提供される機能性に関するさらなる詳細が図3に関して以下に述べられる。
【0029】
メモリ206は、パワーコンディショナ102の動作および/または本発明に関連したデータを記憶するためのデータベース212を追加的に記憶してよい。
【0030】
図3は、本発明の1つまたは複数の実施形態に従う分散リソースアイランドシステム(DRIS)におけるグリッドフォーミングインバータの非集中型起動を同期させるための方法300のブロック図である。グリッドフォーミングインバータは、パワーコンディショナと称されてよく、上記したシステム100におけるようなDRISの一部であり、方法300の開始時には、断電されている。DRISにおけるパワーコンディショナの各々は、パワーコンディショナに対してタイミングの同期および電流方向に対処する非集中型自力起動のための方法300を実装する。
【0031】
様々な実施形態において、方法300は、上記した自力起動モジュール114の実装例である。一部の実施形態において、コンピュータ可読媒体が、プロセッサ(上記したプロセッサなど)によって実行されると、方法300を行うプログラムを含む。
【0032】
方法300はステップ302から始まり、ステップ304に進む。ステップ304で、断電からソフトグリッドレベルか公称電圧かでアクティブグリッドに移行するためにパワーコンディショナによって十分なDC入力が受けられるかどうか判定がなされる。例えば、パワーコンディショナは、受けたDCが閾値を満足させるかどうかを判定してよい。判定の結果が否定であれば、方法300はステップ304に戻る。判定の結果が肯定であれば、方法はステップ306に進み、自力起動が開始される。
【0033】
方法300はステップ308に進み、自力起動が成功かどうか判定がなされる。判定の結果が肯定であり、自力起動が成功であれば、方法300はステップ310に進み、終了する。判定の結果が否定であり、自力起動が不成功であれば(すなわち、線間電圧がゼロに崩壊していれば)、方法300はステップ312に進む。
【0034】
ステップ312で、タイマが起動され、方法はステップ314に進む。ステップ314で、タイマが終了したかどうか判定がなされる。判定の結果が否定であれば、方法300はステップ314に戻る。判定の結果が肯定であれば、方法300はステップ316に進む。
【0035】
ステップ316で、必要な電流極性を決定するために遅延が開始される。遅延は、図1に関して上記した信頼スコアに基づくランダム遅延である。この余分の遅延は、電流を生成する前に、DRISにおける他のパワーコンディショナからの極性の観察のための十分な時間を提供する。遅延は、例えばAC幹線サイクルの半分まででよいが、但し他のレベルの遅延が使用されてもよい。
【0036】
方法300はステップ318に進み、遅延が完了したかどうか判定がなされる。判定の結果が否定であれば、方法300はステップ318に戻り、判定の結果が肯定であれば、方法300はステップ306に戻って自力起動を再度試みる。1つまたは複数の実施形態において、電流極性は決定される必要がなく(例えば、DRISパワーコンディショナが極性コネクタを有する場合)、方法300はステップ314から直接ステップ306に進んで自力起動を再度試みる。
【0037】
以上が本発明の実施形態を対象とするのに対して、本発明の他のさらなる実施形態がその基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0038】
100 システム
102 パワーコンディショナ
104 DC電源
106 システムコントローラ
108 バス
110 ロードセンタ
112 エネルギー貯蔵/流通デバイス
114 自力起動モジュール
116 コントローラ
118 コントローラ
130 ACバッテリ
140 マイクログリッド相互接続デバイス(MID)
160 送電網
202 中央処理ユニット(CPU)
204 サポート回路
206 メモリ
208 オペレーティングシステム(OS)
210 パワーコンディショナ制御モジュール
212 データベース
図1
図2
図3