(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法およびそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パックならびに装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20230926BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/494 20210101ALI20230926BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230926BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 C
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/463 A
H01M50/443 E
H01M50/494
H01M50/414
H01M50/443 B
(21)【出願番号】P 2022553658
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132950
(87)【国際公開番号】W WO2022110222
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲叢▼
(72)【発明者】
【氏名】洪 ▲海▼▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ 媛媛
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 建瑞
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲海▼族
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160792(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195988(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0118979(KR,A)
【文献】国際公開第2020/175292(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111192999(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/451
H01M 50/443
H01M 50/434
H01M 50/426
H01M 50/417
H01M 50/42
H01M 50/489
H01M 50/403
H01M 50/463
H01M 50/494
H01M 50/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含み、
前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含み、前記有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第1の有機粒子を含み、
前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmであり、前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%であるセパレータ。
【請求項2】
前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率は0.5%~8%である請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径は15μm~25μmである請求項1~2のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~4のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セパレータは、
(1)前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率≧12%であることと、
(2)前記コーティングにおける前記無機粒子の質量百分率≦80%であることとのうちの少なくとも1つを満たす請求項1~6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記コーティングは、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は、一次粒子である請求項1~7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、2μm~8μmである請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率は、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率より小さい請求項8~9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率≦8%である請求項8~10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項8~11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項8~12のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および上記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項8~13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記第1の有機粒子および第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の合計≦15%である請求項8-14のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記第1の有機粒子と前記第2の有機粒子とのコーティング表面における面積被覆率の比は、1:1~20:1である請求項8~15のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項17】
前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO
2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)のうちの1種または複数種を含む請求項1~16のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項18】
前記セパレータは、
(1)、前記セパレータの透気度が100s/100mL~300s/100mLであることと、
(2)前記セパレータの横方向引張強度(MD)が1500kgf/cm
2~3000kgf/cm
2であることと、
(3)前記セパレータの縦方向引張強度(TD)が1000kgf/cm
2~2500kgf/cm
2であることと、
(4)前記セパレータの横方向破断伸びが50%~200%であることと、
(5)前記セパレータの縦方向破断伸びが50%~200%であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~17のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項19】
前記無機粒子および前記有機粒子は、前記コーティングにおいて不均一なトンネル構造を形成する請求項1~18のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項20】
任意の隣接する2つの無機粒子の間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子の間の間隔をL2とすると、L1<L2である請求項1~19のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
少なくとも、
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも片面に塗布してコーティングを形成し、乾燥させて前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、
前記セパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含み、前記コーティングは無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は第1の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記無機粒子層の表面に突起を形成し、前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmであり、前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%である製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(2)において、前記コーティングスラリーは、第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は、一次粒子である請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記第2の有機粒子は、前記成分材料の乾物重量の合計の8%以下である請求項21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
(1)ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量が、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であることと、
(2)前記(2)ステップにおいて、コーティングスラリーの重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有量が28%~45%であることと、
(3)前記ステップ(3)において、前記塗布は、線数が100LPI~300LPIのグラビアロールを含む塗布機を使用することと、
(4)前記ステップ(3)において、前記コーティングの速度が30m/min~90m/minであることと、
(5)前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比が0.8~2.5であることと、
(6)前記ステップ(3)において、前記乾燥の温度が40℃~70℃であることと、
(7)前記ステップ(3)において、前記乾燥の時間が10s~120sであることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか一項に記載のセパレー
タを含む二次電池。
【請求項26】
請求項25に記載の二次電池を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学の分野で使用されるセパレータおよびその製造方法に関し、セパレータを含む二次電池、およびそれに関連する電池モジュール、電池パックならびに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は軽量で、汚染がなく、記憶効果がないなどの突出した特徴を有するため、各種の消費類電子製品や電動車両に広く適用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、ユーザは二次電池に対してより高い使用要求を提出している。例えば、二次電池のエネルギー密度は益々高く設計されているが、電池のエネルギー密度の向上は動力学的性能、電気化学的性能または安全性能などのバランスに不利である傾向にある。
【0004】
したがって、どのように電池にサイクル性能と安全性能を両立させるかは電池設計分野の重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の目的は、セパレータを提供することであり、それを含む二次電池が良好なサイクル性能および安全性能を有することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様は基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第1の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmである。前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%である。
【0007】
従来技術に対して、本願は少なくとも以下のような有益な効果を備える。
【0008】
本願のセパレータは同じコーティングには無機粒子と第1の有機粒子を含み、かつ第1の有機粒子に対して特別な設計をし、両者の相互協力で、電池は比較的高いエネルギー密度の前提で、同時に良いサイクル性能と安全性能を両立することができる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、コーティング表面における前記第1の有機粒子の面積被覆率は、0.5%~8%であり、任意選択的には、0.8%~5%である。第1の有機粒子の面積被覆率が所定範囲内にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は15μm~25μmである。第1の有機粒子の数平均粒子径は所定の範囲にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0011】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含み、
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とビニル基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率≧12%であり、任意選択的に、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率は15%~25%である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量百分率≦80%であり、任意選択的には、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量百分率は65%~75%である。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングは、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は、一次粒子である。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は2μm~8μmである。任意選択的には、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、2.5μm~6μmである。
【0017】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率は、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率より小さい。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率≦8%であり、任意選択的には、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率は、2%~6%である。
【0019】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子の、コーティング表面における面積被覆率の合計≦15%であり、任意選択的には、前記第1の有機粒子および第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の合計は、1%~8%である。
【0020】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子と前記第2の有機粒子とのコーティング表面における面積被覆率の比は、1:1~20:1であり、任意選択的には、2:1~10:1である。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および以上に記載の各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0022】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および上記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0023】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含む。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの透気度は100s/100mL~300s/100mLであり、任意選択的には、前記セパレータの透気度は150s/100mL~250s/100mLである。
【0026】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2~3000kgf/cm2であり、任意選択的には、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2である。
【0027】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は、1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であり、任意選択的には、前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm2~2000kgf/cm2である。
【0028】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であり、任意選択的には、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%である。
【0029】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であり、任意選択的には、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%である。
【0030】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子および前記有機粒子は、前記コーティングにおいて不均一なトンネル構造を形成する。
【0031】
本願の任意の実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0032】
第2の態様では、本願は、セパレータを製造する方法を提供し、前記方法は、少なくとも
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも片面に塗布してコーティングを形成し、乾燥させて前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、
前記セパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングと、を含み、前記コーティングは無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は第1の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記無機粒子層の表面に突起を形成し、前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmであり、前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%である。
【0033】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(2)において、前記コーティングスラリーは、第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は、一次粒子である。
【0034】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(2)において、前記第2の有機粒子は、前記成分材料の乾物重量の合計の8%以下であり、任意選択的には、2%~6%である。
【0035】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、任意選択的には、12%~30%である。
【0036】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(2)において、コーティングスラリーの重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有量は28%~45%であり、任意選択的には、30%~38%である。
【0037】
本願の任意の実施形態において、前記塗布は、100LPI~300LPI、任意選択的には125LPI~190LPIの線数を有するグラビアロールを含む塗布機を使用する。
【0038】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(3)において、前記塗布の速度は、30m/min~90m/min、任意選択的には50m/min~70m/minである。
【0039】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5であり、任意選択的には0.8~1.5である。
【0040】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(3)において、前記乾燥温度は40℃~70℃であり、任意選択的には50℃~60℃である。
【0041】
本願の任意の実施形態において、前記ステップ(3)において、前記乾燥時間は10s~120sであり、任意選択的には20s~80sである。
【0042】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様のセパレータ、または本願の第2の態様の方法によって製造されるセパレータを含む二次電池を提供する。
【0043】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0044】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0045】
本願の第6の態様は、本願の第3の態様の二次電池、本願の第4の態様の電池モジュール、または本願の第5の態様の電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。
【0046】
本願の技術案をより明確に説明するために、以下、本願に用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を費やさない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1-1】本願のセパレータの一実施形態のコーティング構造の概略図である。
【
図1-2】本願のセパレータの別の実施形態のコーティング構造の概略図である。
【
図2】本願のセパレータの一実施形態の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図3】本願のセパレータの一実施形態のイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
【
図4-1】本願のセパレータの一実施形態の構成概略図である。
【
図4-2】本願のセパレータの別の実施形態を示す構成概略図である。
【
図7】電池モジュールの一実施形態の概略図である。
【
図10】二次電池が電源として使用される装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下では具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものにすぎず、本願の範囲を限定するものではないと理解されよう。
【0049】
簡潔にするために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、個別に開示された各点または単一の数値自体は、下限または上限として、任意の他の点または単一の数値と組み合わせて或いは他の下限または上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。
【0050】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種または複数種」のうちの「複数種」は2種および2種以上を意味する。
【0051】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、用語「または(or)」は包括的なものである。すなわち、[Aまたは(or)B]というフレーズは、「A、BまたはAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(または存在する)でありかつBが偽(または存在しない)である条件と、Aが偽(または存在しない)であり、Bが真(または存在する)である条件と、また、AとBが共に真(または存在する)である条件のいずれかも「AまたはB」を満たしている。
【0052】
特に説明しない限り、本願で使用される用語は、当業者に通常理解される公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願で言及された各パラメータの数値は、当分野でよく使われる各種の測定方法(例えば、本願の実施例に記載の方法)で測定することができる。
【0053】
特に明記しない限り、本願における操作方法は、室温大気圧で実施される。
【0054】
二次電池
二次電池とは、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0055】
二次電池は、通常、正極板、負極板、セパレータおよび電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して挿入や脱離をする。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の効果を果たす。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0056】
[セパレータ]
本願に係るセパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第1の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmである。前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%である。
【0057】
なお、有機粒子の数平均粒子径とは、セパレータコーティングにおいて、有機粒子数で統計する有機粒子の粒子径の算術平均値を意味する。有機粒子の粒子径とは、有機粒子上の最も離れた2点間の距離を意味する。
【0058】
コーティング表面における有機粒子の面積被覆率とは、コーティングの総面積に対する有機粒子の面積の比を意味する。
【0059】
いかなる理論にも束縛されないが、本願のセパレータは同じコーティングにおいて無機粒子と特定の第1の有機粒子を含み、無機粒子層と有機粒子層の2つのコーティングを有するセパレータと比較して、セパレータの全体の厚さを大幅に減少させ、それによって電池のエネルギー密度を向上させる。また、有機粒子と無機粒子は特殊なコーティング構造を形成し、無機粒子と有機粒子との間に十分かつ不均一に分布するトンネル構造を形成することができ、イオン伝送通路の滑らかさを保証し、それにより電池に良好なサイクル性能を持たせる。また、第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率は特定の範囲内にあり、電池が通常の動作環境(例えば45℃以下)にあるとき、コーティングにおける第1の有機粒子が電解液中で膨潤した後に緻密なゲル膜を形成することを効果的に回避することができ、イオンの輸送を容易にするためにセパレータが適度な細孔を有することを保証し、それにより電池のサイクル性能をさらに改善する。特に、電池が高温動作環境(例えば100℃以上)にあるとき、特定の面積被覆率の第1の有機粒子は高温で適当なゲル膜構造を形成し、イオン拡散通路を急速に減少させ、熱拡散の時間を遅延させ、それにより電池の安全性能を効果的に改善する。
【0060】
図1-1に示すように、前記セパレータは、基材(A)と、第1の有機粒子(B1)および無機粒子(B2)を含むコーティング(B)とを含み、第1の有機粒子(B1)は二次粒子であり、かつ第1の有機粒子は前記無機粒子(B2)によって形成された無機粒子層に嵌めこまれ、前記無機粒子層の表面に突起を形成する。
【0061】
本願人は鋭意研究を重ねた結果、本願のセパレータが、上記の設計条件を満たした上で、下記の条件の1つまたは複数をさらに選択的に満たした場合に、二次電池の性能をさらに改善できることを発見した。
【0062】
いくつかの実施形態において、コーティング表面における前記第1の有機粒子の面積被覆率は、0.5%~10%、任意選択的には0.5%~8%であり、例えば、コーティング表面における前記第1の有機粒子の面積被覆率は、0.5~7%、0.5%~5%、0.5%~3%、0.8%~10%、0.8%~8%、0.8%~6%、0.8%~5%、0.8%~2.5%、1%~8%、1%~6%、1%~3%、1.5%~10%、1.5%~5.5%、1.5%~3.5%、1.5%~2.5%、1.8%~5.5%、1.8%~3.5%、2%~10%、4%~8%であってもよい。第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率が所定範囲内にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は15μm~25μmであってもよい。第1の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、有機粒子間に十分な空隙を存在させることができ、電解液中で有機粒子が膨潤しても十分なイオン伝送通路を形成することができ、それにより、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0064】
前記有機粒子の数平均粒子径とは、セパレータのコーティングにおいて、有機粒子数で統計する有機粒子の粒子径の算術平均値を意味する。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、及び前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記含フッ素アルキル基モノマー単位は、ジフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記アルキレン基モノマー単位は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記アルキレンオキサイド系モノマー単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とビニル基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均分子量は30万~80万、例えば40万~65万である。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含むことができる。例えば、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50≦2.5μmである。例えば、前記無機粒子の体積平均粒子径は0.5μm~2.5μm、1.5μm~2.5μm、0.3μm~0.7μmなどであってもよい。無機粒子の体積平均粒子径が所定範囲内に制御されると、セパレータが良好なサイクル性能および安全性能の前提で、電池の体積エネルギー密度を向上させることを確保することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける第1の有機粒子の質量百分率≧12%であり、例えば、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率は、12%~30%、15%~25%である。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量百分率≦80%であり、例えば、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量百分率は65%~75%である。
【0077】
適当な第1の有機粒子と無機粒子の含有量を選択することによって、両者に良好な協同作用を発揮させ、セパレータが安全性能を保証する前提で、さらに適当なトンネル構造を有すると同時に、セパレータの軽質化を実現することを確保し、それによって電池のエネルギー密度をさらに改善する。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記コーティングは、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する第2の有機粒子をさらに含み、前記第2の有機粒子は、一次粒子である。コーティング中に第2の有機粒子も含まれる場合、電池の安全性能をさらに改善することができる。
【0079】
なお、有機粒子の形状(一次粒子および二次粒子)は、当該技術分野において周知の意味を有する。一次粒子とは、凝集状態になっていない粒子をいう。二次粒子とは、2個以上の一次粒子の凝集により形成される凝集状態の粒子を意味する。
【0080】
図1-2に示すように、前記セパレータは、基材(A)と、第1の有機粒子(B1)、無機粒子(B2)、および第2の有機粒子(B3)を含むコーティング(B)とを含み、第1の有機粒子(B1)は二次粒子であり、第2の有機粒子(B3)は一次粒子であり、第1の有機粒子(B1)および第2の有機粒子(B3)はいずれも前記無機粒子(B2)によって形成された無機粒子層に嵌めこまれ、前記無機粒子層の表面に突起を形成する。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は2μm~8μmである。例えば、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、2.5μm~8μm、2.5μm~6μm、3.0μm~5.5μmであってもよい。本発明者らは、第2の有機粒子の数平均粒子径が所定範囲内にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに向上させることができることを研究によって見出した。本発明者らは、第2の有機粒子の数平均粒子径が小さすぎる場合(例えば、2μmより小さい)、それが電解液中で膨潤してゲル膜構造を形成しやすく、電池が正常に動作しているとき、イオン伝送通路を遮断し、これにより電池のサイクル性能に影響することを多くの研究により見出した。第2の有機粒子の数平均粒子径が大きすぎる場合(例えば、8μmを超える)、それが電池製造のホットプレスプロセスの後、セパレータと電極板との間に過度に強固な接着が生じ、電解液の濡れ不良を引き起こし、それにより、電池のサイクル性能に影響する可能性がある。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0083】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および上記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記アクリレート系モノマー単位は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記アクリル酸系モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸などのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記スチレン系モノマー単位は、スチレン、メチルスチレンなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0089】
前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物とは、各ホモポリマーまたはコポリマーにおけるモノマー単位と、特定官能基含有モノマー単位とを共重合して得られる変性化合物を意味する。例えば、含フッ素アルキル基モノマー単位とカルボキシル基含有官能基の化合物とを共重合して変性化合物などを得ることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、第2の有機粒子の数平均分子量は1万~10万、例えば2万~8万である。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率は、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量百分率より小さい。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量百分率≦8%であり、例えば、2%~8%、2%~6%、3%~6.5%であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の合計が≦20%、任意選択的に≦15%である。任意選択的には、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の合計は、1%~20%、1%~16%、1%~13%、1%~8%、2%~15%、2%~10%、2.5%~12%、3%~18%、3.5%~9%、4.5%~15%、4.5%~8%である。第1の有機粒子および前記第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の合計が前記範囲内にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子と前記第2の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率の比は、1:1~20:1であり、任意選択的には、2:1~10:1,3:1-5:1である。前記比が上記範囲内にある場合、第1の有機粒子と第2の有機粒子の含有量を最適に一致させることができ、それにより、電池のエネルギー密度とサイクル性能をさらに向上させることができる。第1の有機粒子の含有量が多すぎると、電池のエネルギー密度に影響する可能性がある。第2の有機粒子の含有量が多すぎると、電池のサイクル性能に影響する可能性がある。
【0095】
いくつかの実施例に基づき、前記コーティングは、その他の有機化合物をさらに含むことができ、例えば、耐熱性を改善するポリマー(単に「耐熱接着剤」ともいう)、分散剤、湿潤剤、その他の種類のバインダーなどを含んでいてもよい。上記の他の有機化合物は、コーティングにおいていずれも非粒子状物質である。本願は、前記の他の有機化合物の種類について特に限定せず、良好な改善性能を有する任意の公知材料を選んで用いることができる。
【0096】
本願において、前記基材の材質は特に制限されず、任意の公知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する基材、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種または複数種を選択することができる。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記基材の厚さは、≦10μmである。例えば、前記基材の厚さは、5μm~10μm、5μm~9μm、7μm~9μmであってもよい。前記基材の厚さが所定範囲内に制御されるとき、電池の倍率性能および安全性能を確保する前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、≦3.0g/m2であり、例えば、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、1.5g/m2~3.0g/m2、1.5g/m2~2.5g/m2、1.8g/m2~2.3g/m2であってもよい。単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーティングの重量を所定の範囲に制御することで、電池サイクル性能および安全性能を確保した前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの透気度は、100s/100mL~300s/100mLであってもよい。例えば、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mL、170s/100mL~220s/100mLであってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。例えば、前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm2~2000kgf/cm2であってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2~3000kgf/cm2であってもよい。例えば、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよい。例えば、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子と前記有機粒子は、前記コーティングにおいて、不均一なトンネル構造を形成している。
【0105】
いくつかの実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0106】
関連パラメータの試験方法
いくつかの実施例によれば、コーティング表面における有機粒子の面積被覆率は、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて試験することができる。一例として、コーティング表面における第1の有機粒子の面積被覆率は、以下の方法に従って試験することができる:セパレータ上に一定のサイズの測定サンプル(例えば、長さ×幅=50mm×100mm)を任意に選択し、該測定サンプルの面積を計算してSと記す。走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用して、例えば、JY/T010-1996を参照して、測定サンプルから複数の異なる測定領域(例えば、10個)を任意に選択して、一定の拡大倍率(例えば、1000倍)で、該測定領域のSEM画像を取得する。
【0107】
測定領域における有機粒子が二次粒子形態である場合には、該有機粒子の面積(なお、有機粒子が不規則的な形状である場合には、当該有機粒子を外接円処理し、当該外接円の面積を当該有機粒子の面積とする)を統計し、各測定領域における第1の有機粒子の面積の合計を統計してS1と記す。コーティング表面における第1の有機粒子の面積被覆率=S1/S×100%である。
【0108】
試験結果の正確さを確保するために、複数の測定サンプル(例えば、5つ)を繰り返して上記試験を行うことができ、各測定サンプルの面積被覆率の平均値を最終的試験結果として取る。
【0109】
第2の有機粒子の面積被覆率も同様に上記の方法で試験する。
【0110】
図2は本願のセパレータの一実施形態の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。以上に記載の方法に従って、コーティング表面における有機粒子の面積被覆率の大きさを算出することができる。
【0111】
いくつかの実施例に基づき、有機粒子の粒子径と数平均粒子径は当分野で知られている機器および方法で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を用いて、例えばJY/T010-1996を参照し、セパレータのSEM画像を取得する。例として、以下のような方法によって測定することができる。セパレータ上で任意に1つの長さ×幅=50mm×100mmの測定サンプルを採取し、測定サンプル中で複数の測定領域(例えば5つ)をランダムに採取し、一定の拡大倍率(例えば、第1の有機粒子を測定した場合は500倍、第2の有機粒子を測定した場合は1000倍)で、各測定領域における各有機粒子の粒子径を読み取る(すなわち、有機粒子上の最も離れる2点間の距離を当該有機粒子の粒子径として取る)、すなわち、本願に記載の有機粒子の粒子径である。各測定領域における有機粒子の数および粒子径の数値を統計し、各測定領域における有機粒子の粒子径の算術平均値を取り、このサンプルにおける有機粒子の数平均粒子径である。測定結果の正確性を確保するために、複数のサンプル(例えば10個)を取って上記測定を行い、各サンプルの平均値を取って最終的な測定結果とすることができる。
【0112】
いくつかの実施例によれば、有機粒子の形状は、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて試験することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用して試験を行うことができる。例として、以下のようなステップによって、操作することができる。まずセパレータを一定のサイズの被測定サンプル(例えば、6mm×6mm)に裁断し、2枚の導電伝熱シート(例えば銅箔)で被測定サンプルを挟み、被測定サンプルとシートとの間に粘着剤(例えば両面テープ)で粘着して固定し、一定の質量(例えば400g程度)の歪取り鉄ブロックで一定の時間(例えば1h)押さえ、被測定サンプルと銅箔との間の隙間を小さくすればするほど好ましく、続いてはさみでエッジを切り揃え、導電性粘着剤を有するサンプル台に粘着し、サンプルがサンプル台のエッジから少し突出すればよい。次にサンプル台をサンプルホルダに入れてロックして固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えば、IB-19500CP)の電源を入れて真空引き(例、10Pa~4Pa)をし、アルゴンガスの流量(例えば、0.15MPa)、電圧(例えば、8KV)および研磨時間(例えば、2時間)を設定し、サンプル台を揺動モードに調整して、研磨を開始し、研磨終了後、走査型電子顕微鏡(例、ZEISS Sigma 300)を用いてサンプルのインオン研磨断面形状(CP)の写真を得る。
【0113】
図3は本願の実施例に係るセパレータのイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
図3から分かるように、セパレータのコーティングは、第1の有機粒子と第2の有機粒子の両方を含む。第1の有機粒子は、複数の一次粒子からなる二次粒子であり、不規則な非中実球断面である。第2の有機粒子の非凝集体の一次粒子は、中実球の断面である。
【0114】
いくつかの実施形態に基づき、有機粒子の物質の種類は、当分野で知られている機器および方法を使用して測定することができる。例えば、材料の赤外線スペクトルを測定して、それに含まれる特徴的なピークを決定することによって、物質の種類を特定することができる。具体的には、当分野で公知されている器具および方法で有機粒子に対して、赤外分光分析を行い、例えば、GB/T6040~2002赤外線分光分析方法通則によって、米国ニコレット(nicolet)社のIS10フーリエ変換赤外線分光器などの赤外線分光器を用いて、測定することができる。
【0115】
いくつかの実施形態に基づき、無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、当分野で公知されている意味であり、当分野で知られている器具および方法を使用することによって測定することができる。例えば、GB/T19077~2016レーザー回折式粒度分布法を参照し、レーザー粒度分析計(たとえば、Master Size 3000)を使用して測定できる。
【0116】
いくつかの実施例に基づき、セパレータの透気度、横引張強度(MD)、縦引張強度(TD)、横方向破断伸び、縦方向破断伸びは、いずれも当分野で公知されている意味を有し、当分野で知られている方法で計測することができる。例えば、いずれもGB/T 36363-2018規格に基づき測定することができる。
【0117】
いくつかの実施例に基づき、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔とは、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する2つの無機粒子(無機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して、外接円処理を行うことができる)を任意に取り、両無機粒子の中心間距離を、両無機粒子間の間隔として測定し、L1とする。
【0118】
いくつかの実施例に基づき、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔とは、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に取り、この無機粒子とこの有機粒子との中心間距離を無機粒子と有機粒子との間隔として測定し、L2とする。上記有機粒子は、第1の有機粒子を取ってもよいし、第2の有機粒子を取ってもよい。
【0119】
上記間隔は当分野で知られている器具で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で測定することができる。例として、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔L2は以下の方法によって測定することができる。セパレータを縦×横=50mm×100mmのサンプルに製造し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma300)を用いて、セパレータを測定する。JY/T010-1996を参照して測定することができる。サンプルから領域をランダムに選択し、走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、3000倍)で、セパレータのSEM図像を取得し、SEM図像において、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子は不規則体である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に選択し、無機粒子(またはその外接円)の中心と有機粒子(またはその外接円)の中心との距離を計測し、本願に記載の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔であり、L2とする。測定結果の正確性を確保するために、サンプルにおいて複数組の隣接する粒子(例えば10組)を取って上記測定を繰り返し、各組の測定結果の平均値を最終的な結果とする。
【0120】
同様に、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔L1についても、上記方法で、測定することができる。
【0121】
本願はまた、少なくとも、
基材を提供するステップ(1)と、
機粒子と、第1の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)とを含む上記のセパレータを製造するための方法を提供し、
前記セパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングと、を含み、前記コーティングは無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は第1の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記無機粒子層の表面に突起を形成し、前記第1の有機粒子は二次粒子であり、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧13μmであり、前記第1の有機粒子のコーティング表面における面積被覆率≦10%である。
【0122】
コーティングの性質または成分は、セパレータにおいて上記したものと同じ定義を有する。
【0123】
前記コーティングは、前記基材の片面のみに設けてもよいし、前記基材の両面に設けてもよい。
【0124】
図4-1に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の片面のみに設けられている。
【0125】
図4-2に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の両面ともに設けられている。
【0126】
本願の実施例は、前記基材の材質に対して特別な制限がなく、任意の公知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する基材、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリビニリデンフルーランドの1種または複数種を選択することができる。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0127】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記溶媒は水であってもよく、例えば、脱イオン水である。
【0128】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、前述の第2の有機粒子をさらに含むことができる。第2の有機粒子の各パラメータは、前述の内容を参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0129】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、他の有機化合物、例えば、耐熱性を改善するポリマー、分散剤、湿潤剤、他の種類のバインダーなどを含んでもよい。上記の他の有機化合物は、コーティングにおいていずれも非粒子状物質である。本願は、上記の他の有機化合物の種類について、特に限定せず、良好な改善性能を有する任意の公知材料を選んで用いることができる。
【0130】
いくつかの実施形態においては、ステップ(2)において、溶媒に成分材料を加えて均一に攪拌してコーティングスラリーを得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、例えば、12%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、16%~22%である。
【0132】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の8%以下であり、例えば、2%~10%、2%~6%、3%~7%、3%~5%である。
【0133】
なお、成分材料が固形である場合、成分材料の乾物重量は、この成分材料の添加質量である。成分材料が懸濁液、エマルジョンまたは溶液である場合、成分材料の乾物重量は、この成分材料の添加質量とこの成分材料の固形分含有率との積である。前記成分材料の乾物総重量は、各成分材料の乾物重量の合計である。
【0134】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、コーティングスラリーの固形分含有率を28%~45%に制御することができ、例えば、30%~38%であってもよく、コーティングスラリーの重量ベースである。コーティングスラリーの固形分含有率が上記範囲にある場合、コーティングの膜面問題および塗布ムラの発生確率を効果的に低減することができ、電池のサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0135】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を用いて行われる。
【0136】
本願の実施例において、塗布機の型式は特に限定されず、市販の塗布機を用いることができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は転写塗布、回転スプレー、浸漬塗布などのプロセスを用いることができ、例えば、前記塗布には、転写塗布が用いられる。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記塗布機はグラビアロールを含み、前記グラビアロールは、コーティングスラリーを基材に転移するために使用される。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記グラビアロールの線数は、100LPI~300LPIであってもよく、例えば、125LPI~190LPI(LPIは線/インチである)であってもよい。グラビアロールの線数が上記範囲にある場合、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数を制御することに寄与し、セパレータのサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0140】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minに、例えば、50m/min~70m/minに制御することができる。塗布速度が上記範囲内にある場合、前記無機粒子層の厚さに対する比が所定の範囲内に制御されるように、前記突起の平均高さを調整するのに役立ち、また、コーティングの膜面問題を効果的に減少させ、コーティング不均一の確率を低下させ、それによって電池のサイクル性能と安全性能をさらに改善することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5に制御することができ、例えば、0.8~1.5、1.0~1.5であってもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は、40℃~70℃であってもよく、例えば、50℃~60℃であってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は、10s~120sであってもよく、例えば、20s~80s、20s~40sであってもよい。
【0144】
上記の各プロセスパラメータを所定の範囲に制御することにより、本願に係るセパレータの使用性能をさらに改善することができる。当業者は実際の生産状況に基づき、上記1つまたは複数のプロセスパラメータを選択的には、調節制御することができる。
【0145】
前記無機粒子および前記有機粒子は、二次電池の性能をさらに改善するために、選択可能には、さらに上記した各パラメータ条件のうちの1つまたは複数を満たす。ここでは説明を省略する。
【0146】
上記基材、第1の有機粒子および第2の有機粒子は、いずれも市販されるものである。
【0147】
本願に係るセパレスタットの製造方法は、一回の塗布によってコーティングを製造し、セパレータの生産プロセスフローを大幅に簡単化し、また、上記方法で製造されたセパレータを電池に適用して、電池のサイクル性能および安全性能を効果的に改善することができる。
【0148】
[正極板]
二次電池では、前記正極板は、通常、正極集電体と、正極集電体に設けられ正極活物質を含む正極膜層とを有している。
【0149】
前記正極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0150】
前記正極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の正極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。
【0151】
例として、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム含有リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。リチウム遷移金属酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、マンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン型リチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0152】
いくつかの実施形態において、前記各材料の変性化合物は、材料に対してドーピング変性および/または表面被覆変性を行ったものであってもよい。
【0153】
前記正極膜層はまた、一般的には、バインダー、導電剤、および他の任意選択的な補助剤を任意選択的に含む。
【0154】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であってもよい。
【0155】
例として、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0156】
[負極板]
この二次電池では、前記負極板は、通常、負極集電体と、負極集電体に設けられ負極活物質を含む負極膜層とを有している。
【0157】
前記負極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(例えば、金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、負極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0158】
前記負極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の負極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。例として、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料および錫系材料のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸化物(例えば、一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金のうちの1種または複数種から選択することができる。前記錫系材料は、単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種または複数種から選択することができる。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0159】
いくつかの実施形態において、電池のエネルギー密度を増加させるために、前記負極活物質は、シリコン系材料を含むことができる。
【0160】
前記負極膜層はまた、一般的には、バインダー、導電剤、および他の任意選択的な補助剤を任意選択的に含む。
【0161】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であってもよい。
【0162】
例として、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0163】
例として、その他の選択可能な助剤としては、増粘・分散剤、(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などであってもよい。
【0164】
[電解液]
本願の実施形態は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす電解質の選択に対して特に限定されない。電解質は、電解質塩および溶媒を含むことができる。
【0165】
一例として、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ素酸リチウム)、LiFSI(ビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiBOB(ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)から選択される1種または複数種であってもよい。
【0166】
一例として、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ぎ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及ジエチルスルホン(ESE)から選択される1種または複数種であってもよい。
【0167】
いくつかの実施形態において、電解液には添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、正極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでいてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、本願の二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0169】
本願の実施例は、二次電池の形状について、特に限定せず、円筒形、角形、その他の任意の形状であってよい。
図5は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0170】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、正極板、負極板および電解液をパッケージするためのものである。
【0171】
いくつかの実施形態において、
図6を参照すると、外装は、筐体51およびカバープレート53を含むことができる。そのうち、ハウジング51は底板および底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設可能である。
【0172】
正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入されている。電解液は、電極アセンブリ52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極ユニット52の数は、1つまたは複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0173】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロプレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種または複数種を含むことができる。
【0174】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの用途および容量に応じて調整してもよい。
【0175】
図7は、一例としての電池モジュール4である。
図7を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0176】
任意選択的には、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングを含んでもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途および容量に応じて調整されてもよい。
【0178】
図8および
図9は、一例としての電池パック1である。
図8および
図9を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ケースに配列することができる。
【0179】
[装置]
本願はまた、本願に記載の二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー蓄積ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギ貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限定されない。
【0180】
前記装置は、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0181】
図10は一例としての装置である。この装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。この装置は二次電池に対する高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0182】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0183】
以下には、実施例を参照して本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0184】
実施例
本願が解決しようとする課題、技術的解決策および有益な効果をより明確にするために、以下、実施例および図面によって、本願をさらに詳細に説明する。明らかに、説明された実施例は本願のいくつかの実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての記載は、本質的に説明するためのものに過ぎず、決して本願およびその適用に対する如何なる限定でもない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0185】
一、セパレータの製造
本願で使用される原材料は、いずれも市販されている。
【0186】
例えば、基材は上海恩捷新材料有限公司から購入することができる。
【0187】
無機粒子は、壹石通材料科技股分有限公司から購入することができる。
【0188】
第1の有機粒子は、阿科瑪(常熟)化学有限公司から購入することができる。
【0189】
第2の有機粒子は、四川茵地楽科技有限公司から購入することができる。
【0190】
耐熱接着剤は四川茵地楽科学技術有限会社から購入することができる。
【0191】
湿潤剤は陶氏化学公司から購入することができる。
【0192】
分散剤は、常熟威怡科技有限公司から購入することができる。
【0193】
セパレータ1:
(1)PE基材を提供し、例えば、基材の厚さは7μmであり、空隙率が40%であり、
(2)コーティングスラリーを調製し、無機粒子のアルミナ(Al2O3)、第1の有機粒子であるポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロペンコポリマー(数平均分子量55万)、耐熱接着剤であるアクリル酸-アクリロニトリルコポリマー、分散剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、および湿潤剤である有機ケイ素変性ポリエーテルを、60:30:8:1.5:0.5の質量比(乾物重量比)で溶媒脱イオン水に均一に混合して、コーティングスラリーの重量基準で36%の固形分含有量のコーティングスラリーを得る。ここでは、無機粒子のアルミナ(Al2O3)の体積平均粒子径Dv50は1μmであり、第1の有機粒子は二次粒子であり、且つ第1の有機粒子の数平均粒子径は15μmである。
(3)ステップ(2)で調製したコーティングスラリーをPE基材の2つの表面にロールコート方式で塗布し、乾燥、ストライプ化プロセスによりセパレータ1を得る。ここでは、塗布機のグラビアロールの線数は190LPIであり、塗布の速度は60m/minであり、塗布の線速度比は1.2であり、セパレータの単位面積当たりの片面コーティング重量は、2.3g/m2である。セパレータ1において、前記第1の有機粒子は、前記無機粒子層に嵌めこまれ、かつ前記無機粒子層の表面に突起が形成され、前記第1の有機粒子は、コーティングの表面における面積被覆率が10%である。
【0194】
セパレータ2-19および比較セパレータ1-3の製造方法は、セパレータ1と同様であるが、第1の有機粒子の数平均粒子径、種類と質量の比率を調整することで異なり、具体的には表1を参照する。
【0195】
セパレータ20-33の製造方法は、セパレータ1と同様であるが、コーティングにさらに第2の有機粒子を添加し、その数平均粒子径と種類を調整することで異なり、具体的には表2を参照する。
【0196】
二、電池の製造
実施例1
1.正極板の製造
正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤カーボンブラック(Super P)、バインダーのポリビニリデンフルオリド(PVDF)を質量比96.2:2.7:1.1で適量の溶媒N-メチルピロリドン(NMP)に均一に混合して正極スラリーを得て、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔上に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、切断等のプロセスにより正極板を得る。任意選択的には、正極板の片面の面密度は0.207mg/mm2であり、正極板の圧密密度は3.5g/cm3である。
【0197】
2.負極板の製造
負極活物質の人造黒鉛、導電剤のカーボンブラック(Super P)、バインダーのスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比96.4:0.7:1.8:1.1で適量の溶媒の脱イオン水に均一に混合して負極スラリーを得て、負極スラリーを負極集電体銅箔に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、切断等のプロセスにより負極板を得る。任意選択的には、負極板の片面の面密度は0.126mg/mm2であり、負極板の圧密密度は1.7g/cm3である。
【0198】
3.セパレータ
セパレータは上記に製造されたセパレータ1を使用する。
【0199】
4.電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)を質量比30:70で混合して有機溶媒を得て、十分に乾燥した電解質塩LiPF6を上記混合溶媒に溶解し、電解質塩の濃度を1.0mol/Lとし、均一に混合して電解液を得る。
【0200】
5.二次電池の製造
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ね、セパレータを正、負極板の間に介在させて隔離の役割を果たし、続いて巻き取って電極アセンブリを得、電極モジュールを外装に入れ、以上に製造した電解液を乾燥後の二次電池に注入し、真空パッケージ、静置、化成、整形等のプロセスによって二次電池を得る。
【0201】
実施例2-33および比較例1-3の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と類似しているが、異なるセパレータを用いた点で異なり、詳細は表1および表2を参照されたい。
【0202】
三、電池性能測定
1.45℃サイクル性能
45℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで定電流充電した後、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、30min静置し、さらに0.33C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、30min静置し、このときの電池容量C0を記録する。この方法で電池に対してサイクル充放電を1500回行い、1500回のサイクル後の電池容量をC1と記録する。
電池の45℃でのサイクル容量維持率=C1/C0×100%
【0203】
2.熱拡散性能
25℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1Cレートで充電終止電圧4.2Vまで定電流充電し、その後電流≦0.05Cまで定電圧充電し、10min静置し、続いて、電池表面に1枚の金属加熱板を密着させ、電池の非接触加熱板の位置にクランプで電池を締め付け、クランプと電池の間に3mmの断熱パッドを入れ、電池が熱暴走するまで200℃で恒温加熱する。電池に熱暴走が発生した時間を記録する。
【0204】
3.Crack SOH性能テスト
25℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を0.5C倍率で充電カットオフ電圧4.25Vまで定電流充電した後、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、30min静置し、さらに0.33C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、30min静置し、このときの電池容量C0を記録する。
【0205】
この方法に従って電池にサイクル充放電試験を行い、電池容量を、C0のベースで1%減衰させたときに、電池にX-ray CT試験(X線コンピュータ断層スキャン)を行い、電池の正極板または負極板の角部で破断が観察されたときに、そのときの電池容量C1を記録する。
【0206】
Crack SOH=C1/C0×100%
測定された各実施例および比較例の電池性能は、表1および表2に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0207】
表1から分かるように、本願のセパレータを含む二次電池はいずれも優れたサイクル容量維持率、熱拡散性およびCrack SOH改善値を得る。例えば、得られた二次電池の1500サイクル後のサイクル容量維持率は高くも91.7%に達することができ、二次電池の熱拡散性能は、高くも559秒に達することができ、Crack SOH値は、高くも70%を超えることができる。第1の有機粒子を単独で使用する場合、13μm未満の粒子径を使用する比較例1および2は、二次電池のサイクル保持率および熱拡散時間において、いずれも本願のセパレータを含む二次電池よりも劣っている。同時に、本発明の数平均粒子径範囲の第1の有機粒子を使用しても、そのセパレータ中の質量の占める割合が大きすぎると、得られる二次電池のサイクル性能と安全性能がいずれも低下し、比較例3を参照されたい。
【0208】
表2から明らかなように、特定量、種類および数平均粒子径の範囲の第2の有機粒子をさらに加えることにより、得られるセパレータは、依然として二次電池の安全性能およびサイクル性能の要求を満たす。
【0209】
本発明者らはまた、本願の範囲内の無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子の他の使用量および材質、他の基材、他のコーティングプロセスパラメータおよび他のプロセス条件を用いて実験を行い、実施例1-32と同様の電池のサイクル性能および安全性能を向上させる効果を得る。
【0210】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0211】
1 電池パック
2 上ケース
3 下ケース
4 電池モジュール
5 二次電池
51 筐体
51 ハウジング
52 電極ユニット
52 電極アセンブリ
53 カバープレート