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特許7355951制御装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】制御装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/416 20060101AFI20230926BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20230926BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G05B19/416 L
G05B19/4093 J
B23Q15/00 301J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022580538
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2022031733
【審査請求日】2023-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小出 直矢
(72)【発明者】
【氏名】河村 宏之
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067392(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024338(WO,A1)
【文献】特開平11-194813(JP,A)
【文献】特開2017-156834(JP,A)
【文献】特開平9-101814(JP,A)
【文献】特開平6-250724(JP,A)
【文献】特開平9-190211(JP,A)
【文献】特開平10-320026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416,
B23Q 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御用プログラムに基づいて産業機械の送り軸を駆動する制御装置であって、
前記制御用プログラムによる指令を解析する解析部と、
前記解析部による解析の結果に基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出するコーナ検出部と、
前記コーナ部に曲線を挿入することで曲線化し、曲線化した移動経路上での速度を調整するコーナ曲線化処理部と、
挿入した前記曲線の上を移動する際の、前記コーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を分析する各方向速度分析部と、
を備え、
前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動において加速度の変化率の符号が変化する速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令する、
制御装置。
【請求項2】
前記コーナ曲線化処理部は、前記コーナ部に曲線を挿入した新たな移動経路を作成するコーナ曲線化部を備え、
前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動における速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の許容経路誤差を小さく変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令し、
前記コーナ曲線化部は、前記指令に基づいて許容経路誤差を小さく変更した曲線を再作成する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記コーナ曲線化処理部は、前記曲線の上を移動する際の速度及び加速度の推移を定める速度計画を作成する曲線速度計画部を備え、
前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動における速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上を移動する際の前記速度変化の揺らぎが発生する範囲の速度を大きく変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令し、
前記曲線速度計画部は、前記指令に基づいて前記速度変化の揺らぎが発生する範囲の速度を大きく変更した速度計画を再作成する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記コーナ曲線化処理部は、前記曲線の上を移動する際の速度及び加速度の推移を定める速度計画を作成する曲線速度計画部を備え、
前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動における速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上を移動する際の前記速度変化の揺らぎが発生する範囲の加速度の絶対値を小さく変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令し、
前記曲線速度計画部は、前記指令に基づいて前記速度変化の揺らぎが発生する範囲の加速度の絶対値を小さく変更した速度計画を再作成する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
制御用プログラムに基づいて産業機械の送り軸を駆動する制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
制御用プログラムによる指令を解析する解析部、
前記解析部による解析の結果に基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出するコーナ検出部、
前記コーナ部に曲線を挿入することで曲線化し、曲線化した移動経路上での速度を調整するコーナ曲線化処理部、
挿入した前記曲線の上を移動する際の、前記コーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を分析する各方向速度分析部、
としてコンピュータを動作させ、
前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動において加速度の変化率の符号が変化する速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令する、
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送り軸を有する工作機械などの産業機械において、加工点が直角コーナなどの不連続な経路に沿って工具を移動させる場合、コーナ部で送り速度を下げたり、コーナ部の形状を丸めたりして、コーナ通過時にショックが発生しないようにしている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-190211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーナ部の形状を丸める方式としては、円弧、スプライン曲線、クロソイド曲線を挿入する方法などが考えられる。しかしながら、その際の速度制御を工夫しないと、送り軸各軸の速度波形が波打つ形状となる。そして、これが原因で加速度の変化によるショックが発生したり、加工精度が低下したりすることがある。
このため、コーナ部の形状を丸めるだけでなく、送り速度の下げ方も重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による制御装置は、コーナ部を曲線化した経路に沿って工具を移動させる際に、曲線化前の各方向の速度を推定し、各方向の速度の変化率が単調に変化するようにコーナ部の通過速度を定める。これにより、曲線化による速度変化の滑らかさと、各軸のショック低減を両立して、上記課題を解決する。
【0006】
そして、本開示の一態様は、制御用プログラムに基づいて産業機械の送り軸を駆動する制御装置であって、前記制御用プログラムによる指令を解析する解析部と、前記解析部による解析の結果に基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出するコーナ検出部と、前記コーナ部に曲線を挿入することで曲線化し、曲線化した移動経路上での速度を調整するコーナ曲線化処理部と、挿入した前記曲線の上を移動する際の、前記コーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を分析する各方向速度分析部と、を備え、前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動において加速度の変化率の符号が変化する速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令する、制御装置である。
【0007】
本開示の他の態様は、制御用プログラムに基づいて産業機械の送り軸を駆動する制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、制御用プログラムによる指令を解析する解析部、前記解析部による解析の結果に基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出するコーナ検出部、前記コーナ部に曲線を挿入することで曲線化し、曲線化した移動経路上での速度を調整するコーナ曲線化処理部、挿入した前記曲線の上を移動する際の、前記コーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を分析する各方向速度分析部、としてコンピュータを動作させ、前記各方向速度分析部は、分析の結果、前記曲線の上の移動において加速度の変化率の符号が変化する速度変化の揺らぎを検出した場合、前記曲線の上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令する、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様により、コーナ部を曲線化した経路に沿って各移動対象を移動させる際に、各方向の速度の変化率が単調に変化するようにコーナ部の通過速度が決められるため、各方向の挙動が安定し、機械に与えるショックが抑えられる。また、コーナ部の加工精度が向上することも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による制御装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】本発明の一実施形態による制御装置の概略的な機能を示すブロック図である。
図3】移動経路におけるコーナ部を例示する図である。
図4】曲線を挿入した移動経路を例示する図である。
図5】曲線の上を移動する際の各方向成分の加速度の変化を例示する図である。
図6】曲線の上を移動する際の速度と所定の方向成分の加速度の変化を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による制御装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明の制御装置1は、モータが駆動することで移動する移動対象を備えた工作機械やロボットなどの産業機械を制御する制御装置として実装することができる。以下では、工具とワークとの相対位置を制御することでワークを加工する工作機械を制御する制御装置1を例として説明する。
【0011】
本発明の制御装置1が備えるCPU11は、制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って制御装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0012】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれた制御用プログラムやデータ、入力装置71を介して入力されたデータや制御用プログラム、産業機械3から取得される各データ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶された制御用プログラムやデータは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムが予め書き込まれている。
【0013】
インタフェース15は、制御装置1のCPU11とUSB装置等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば産業機械3の制御に用いられる制御用プログラムや各パラメータ等を読み込むことができる。また、制御装置1内で編集した制御用プログラムや各パラメータ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)16は、制御装置1に内蔵されたシーケンス・プログラムによって、産業機械3及び該産業機械3の周辺装置(例えば、工具交換装置や、ロボット等のアクチュエータ、産業機械3に取付けられているセンサ等)にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、PLC16は、産業機械3の本体に配備された操作盤の各種スイッチや周辺装置等からの信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU11に渡す。
【0014】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、制御用プログラムやシステム・プログラム等が実行された結果として得られたデータ等が、インタフェース18を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、インタフェース19を介して作業者による操作に基づく指令,データ等をCPU11に渡す。
【0015】
産業機械3が備える軸を制御するための軸制御回路30は、CPU11からの軸の移動指令量を受けて、軸の指令をサーボアンプ40に出力する。サーボアンプ40はこの指令を受けて、産業機械3が備える各移動対象を軸に沿って移動させるサーボモータ50を駆動する。軸のサーボモータ50は位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置・速度フィードバック信号を軸制御回路30にフィードバックする。軸制御回路30は、サーボモータ50の位置・速度のフィードバック制御を行う。なお、図1のハードウェア構成図では、軸制御回路30、サーボアンプ40、サーボモータ50は1つずつしか示されていないが、実際には制御対象となる産業機械3に備えられた軸の数だけ用意される。例えば、一般的な直線3軸を備えた工作機械を制御する場合には、工具が取り付けられた主軸とワークとを直線3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向に相対的に移動させる3組の軸制御回路30、サーボアンプ40、サーボモータ50が用意される。
【0016】
スピンドル制御回路60は、主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61はこのスピンドル速度信号を受けて、産業機械3のスピンドルモータ62を指令された回転速度で回転させ、主軸を駆動する。スピンドルモータ62にはポジションコーダ63が結合されている。ポジションコーダ63が主軸の回転に同期して帰還パルスを出力し、その帰還パルスはCPU11によって読み取られる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による制御装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による制御装置1は、回転する工具とワークとの相対位置を制御し、工具とワークとを接触させることでワークを切削加工する。本実施形態による制御装置1が備える各機能は、図1に示した制御装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、制御装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0018】
本実施形態の制御装置1は、解析部100、コーナ検出部110、コーナ曲線処理部120、コーナ曲線化部122、曲線速度計画部124、各方向速度分析部130、各軸加減速部150、制御部160を備える。また、制御装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、産業機械3を制御するために用いられる制御用プログラム200が予め記憶される。
【0019】
解析部100は、制御用プログラム200のブロックを逐次読み出す。そして、読み出したブロックによる指令を解析する。制御用プログラム200には、送り軸の移動量、移動経路、移動速度などの指令が含まれている。解析部100は、これらの指令を解析して、それぞれのサーボモータ50の位置を制御するための移動指令に係るデータを生成する。また、制御用プログラム200に主軸の回転速度の指令が含まれている場合は、スピンドルモータ62の回転を制御するための主軸回転指令に係るデータを生成する。解析部100は、制御用プログラム200のブロックを先読みして解析することが望ましい。解析部100は、生成した指令に係るデータをコーナ検出部110に出力する。
【0020】
コーナ検出部110は、解析部100から入力された移動指令に係るデータに基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出する。本明細書では、2つの連続する移動経路P1、P2において、前の移動経路P1の方向と、後の移動経路P2の方向とが不連続に接続する部分をコーナ部と称している。図3は、コーナ部の例を示している。図3の例では、コーナ部の前の移動経路P1の方向と、コーナ部の後の移動経路P2の方向とが、略直角を為して接続されている。コーナ部Cは、図3に例示する以外にも、より鋭角に接続するものや、より鈍角に接続するものであってもよい。また、コーナ部前後の移動経路P1、P2は直線の移動経路である必要は無く、曲線を描くものであってもよい。コーナ検出部110は、解析部100から入力された移動指令に係るデータに基づいて、各移動経路の接続点を検出する。そして、例えば接続点の前後の移動経路が成す角度が予め定めた所定の角度θth(θth<180°)以下である場合に、当該接続点をコーナ部として検出する。
【0021】
コーナ曲線処理部120は、コーナ検出部110が検出したコーナ部を曲線化し、また、曲線化した移動経路上での速度を調整する。コーナ曲線処理部120は、コーナ曲線化部122及び曲線速度計画部124を備える。
【0022】
コーナ曲線化部122は、コーナ検出部110が検出したコーナ部に曲線を挿入し、新たな移動経路とする。図4は、コーナ曲線化部122がコーナ部に挿入する曲線の例を示している。コーナ曲線化部122は、コーナ部の前の移動経路上の所定の点Psを始点とし、コーナ部の後の移動経路上の所定の点Peとを終点とする曲線Piをコーナ部Cに挿入する。この時挿入される曲線は、移動経路P1、P2の接続点との最短距離が予め定めた所定の許容経路誤差ep以下となる曲線である。そして、コーナ部の前の移動経路P1を終点を点Psとした移動経路P1’と置き換え、コーナ部の後の移動経路P2を始点を点Peとした移動経路P2’と置き換えることで、新たな移動経路を作成する。挿入する曲線は、その両端において位置、速度、加速度がコーナ部の前後の移動経路P1’、P2’と略連続になっていればよい。また、挿入する曲線は、2階以上の複数階微分可能な曲線であることが望ましい。このような曲線の挿入処理は、例えば特開平09-190211号公報、特開平10-320026号公報などで公知となっているので、本明細書での詳細な説明は省略する。
【0023】
曲線速度計画部124は、コーナ曲線化部122が挿入した曲線上を移動する際の速度計画を作成する。曲線速度計画部124は、最初に曲線上を移動する際の速度計画を作成する時は、制御装置1に設定されている加減速の設定に従った速度計画を立てる。曲線速度計画部124は、ここで作成した速度計画を各方向速度分析部130に出力する。
【0024】
各方向速度分析部130は、コーナ曲線化部122が作成した移動経路について、曲線速度計画部124が作成した曲線上を移動する際の速度計画を分析する。この時、各方向速度分析部130は、曲線上を移動する際の速度計画を、コーナ部の前後の移動経路の方向成分に分解し、それぞれの方向成分の速度変化を分析する。図5は、曲線上を移動する際のコーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を例示する図である。図5に例示するように、曲線上では移動経路P1’方向の速度は全体としてみれば減速(加速度は負から0へと漸近)し、移動経路P2’方向の速度は全体としてみれば加速(加速度は0から次第に増加)する。しかしながら、曲線の中点付近に向かうにつれて、一度弱まった移動経路P1’方向の速度は減速度合い(負方向の加速度)が一時的に強まり、移動経路P1’方向の速度は加速度合い(正方向の加速度)が一時的に強まる。このような一時的な加速度の変化は、曲線の形状(曲率の変化)によって発生する加速度などが影響している。このように、曲線上での速度の変化に揺らぎが生じ、これが曲線上を移動する際のショックとして現れる。各方向速度分析部130は、このような曲線上での速度変化の揺らぎ(一時的な加速度の変動)を加速度の変化率の符号の変化(加速度における極値の存在)として検出する。
【0025】
各方向速度分析部130は、その分析の結果として、曲線上での速度変化の揺らぎが検出されなかった場合には、作成された速度計画に基づいて各軸を動作させるようにコーナ曲線処理部120へと指令する。一方で、各方向速度分析部130は、その分析の結果として、曲線上での速度変化の揺らぎを検出した場合、コーナ曲線処理部120に対して曲線上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更を指令する。
【0026】
曲線上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更の例として、コーナ部での許容経路誤差epを変更する方法がある。この方法では、主に許容経路誤差epを小さくすることで、加速度の極大点と極小点が発生する位置を近づけることを目的としている。これにより、加速度の変化率の符号の変化を防ぎ、速度変化の揺らぎを防止することができる。
【0027】
曲線上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更の他の例として、速度変化の揺らぎが発生する前後における速度を変更する方法がある。この方法では、速度変化の揺らぎが発生する前後における速度を上げることで、加速度の極大点及び極小点を無くすことを目的としている。図6は、曲線上の速度と1方向成分の加速度の例を示すグラフである。曲線上を移動する際に速度変化の揺らぎが発生すると、図6に例示するように、加速度の変化に極大点及び極小点が発生する。速度変化の揺らぎが起こる範囲をPfs~Pfeとした場合、この範囲における速度を上げることで、その範囲の各方向成分の加速度を上昇させ、極大点及び極小点を無くすことができる。これにより、速度変化の揺らぎを防止することができる。
【0028】
曲線上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更の更に他の例として、速度変化の揺らぎが発生する前後における所定の方向成分の加速度を変更する方法がある。この方法では、例えば速度変化の揺らぎが発生する前後における所定の方向成分の加速度の絶対値を下げることで、加速度の極大点及び極小点を無くすことを目的としている。即ち、図6に例示する速度変化の揺らぎが起こる範囲Pfs~Pfeにおける加速度の絶対値を下げる(0に近づける)ことで、極大点及び極小点を無くすことができる。これにより、速度変化の揺らぎを防止することができる。
【0029】
各方向速度分析部130は、曲線上での速度変化の揺らぎを検出した場合、コーナ曲線処理部120に対して上記したコーナ曲線処理の少なくともいずれかの変更を指令する。これらの変更の指令を受けたコーナ曲線処理部120は、指令が許容経路誤差epの変更指令である場合、コーナ曲線化部122に対して、変更された許容経路誤差epを満足する曲線の挿入を行うように指令する。また、指令が速度乃至加速度の変更指令である場合、曲線速度計画部124に対して、指定された範囲の速度乃至加速度を変更した速度計画を立てるように指令する。その後、各方向速度分析部130は、再度作成された速度計画を分析する。これを、速度変化の揺らぎが検出されなくなるまで繰り返す。最終的に、速度変化の揺らぎが発生しない移動経路及び速度計画が作成されると、作成された移動経路及び速度計画が移動指令に係るデータと共に各軸加減速部150へと出力される。
【0030】
各軸加減速部150は、コーナ曲線処理部120が作成した変化の揺らぎが発生しない移動経路及び速度計画に基づいて、産業機械3の各軸の制御周期毎の移動量を算出し、算出した移動量に対して加減速処理を行う。
そして、制御部160は、各軸加減速部150が加減速処理をした移動量と、主軸回転指令に係るデータに基づいて、産業機械3の各部モータを制御する。
【0031】
上記構成を備えた制御装置1は、コーナ部を曲線化した経路に沿って各移動対象を移動させる際に、各方向の速度の変化率が単調に変化するようにコーナ部の通過速度が決められるため、各方向の挙動が安定し、機械に与えるショックが抑えられる。また、コーナ部の加工精度が向上することも期待できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 制御装置
3 産業機械
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,18,19 インタフェース
16 PLC
17 I/Oユニット
22 バス
30 軸制御回路
40 サーボアンプ
50 サーボモータ
60 スピンドル制御回路
61 スピンドルアンプ
62 スピンドルモータ
63 ポジションコーダ
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 解析部
110 コーナ検出部
120 コーナ曲線処理部
122 コーナ曲線化部
124 曲線速度計画部
130 各方向速度分析部
150 各軸加減速部
160 制御部
200 制御用プログラム
【要約】
本開示による制御装置は、制御用プログラムによる指令を解析する解析部と、解析部による解析の結果に基づいて、移動経路の方向が不連続になるコーナ部を検出するコーナ検出部と、コーナ部に曲線を挿入することで曲線化し、曲線化した移動経路上での速度を調整するコーナ曲線化処理部と、挿入した曲線の上を移動する際の、コーナ部の前後の移動経路の方向成分の速度の変化を分析する各方向速度分析部と、を備え、各方向速度分析部による分析の結果、曲線の上の移動における速度変化の揺らぎを検出した場合、曲線の上での速度変化の揺らぎを解消するためのコーナ曲線処理の変更をするようにコーナ曲線化処理部へと指令する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6