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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】エンボス成形金型の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/20 20060101AFI20230926BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20230926BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B21D37/20 Z
B21D22/02 B
B23C5/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023119526
(22)【出願日】2023-07-22
【審査請求日】2023-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592015271
【氏名又は名称】テクノエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 羊史
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-98236(JP,A)
【文献】特開平6-344202(JP,A)
【文献】特開2011-197546(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163125(WO,A1)
【文献】特開2000-136720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/20
B21D 22/02
B23C 5/12 - 5/14
B24B 7/00
B23D 79/00
B23B 5/00 - 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で配列された大径凸部の回りを前記大径凸部よりも小径の複数個の小径凸部が周方向に等間隔で取り囲むように配置されたエンボス板をプレス成形する凸型及び凹型から成るエンボス成形金型の加工方法であって、
前記大径凸部の断面形状に対応する凹形状を有する大径凸部切削切れ刃と、前記大径凸部切削切れ刃に続いて形成された前記大径凸部の外周の平坦部に対応する形状の大径凸部外周切れ刃とを有し、前記大径凸部切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される大径凸部切削工具と、前記小径凸部の断面形状に対応する凹形状を有する小径凸部切削切れ刃と、前記小径凸部切削切れ刃に続いて形成された前記小径凸部の外周の平坦部に対応する形状の小径凸部外周切れ刃とを有し、前記小径凸部切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される小径凸部切削工具と、をそれぞれ用意する凹状切刃切削工具準備工程と、
前記大径凸部切削工具を、前記大径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する大径凸部形成突起切削工程と、
前記小径凸部切削工具を、前記小径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する小径凸部形成突起切削工程と、を含む
ことを特徴とするエンボス成形金型の加工方法。
【請求項2】
前記大径凸部切削工具の前記大径凸部切削切れ刃には、前記大径凸部切削切れ刃により切削される前記大径凸部形成突起の周縁部に前記凸型の成形面に対して垂直な環状垂直壁面を形成するための垂直切れ刃部が設けられている
ことを特徴とする請求項1のエンボス成形金型の加工方法。
【請求項3】
前記大径凸部の断面形状に対応する凸形状を有する大径凹穴切削切れ刃と、前記大径凹穴切削切れ刃に続いて形成された前記大径凸部の外周の平坦部に対応する形状の大径凹穴外周切れ刃とを有し、前記大径凹穴切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される大径凹穴切削工具と、前記小径凸部の断面形状に対応する凸形状を有する小径凹穴切削切れ刃と、前記小径凹穴切削切れ刃に続いて形成された前記小径凸部の外周の平坦部に対応する形状の小径凹穴外周切れ刃とを有し、前記小径凹穴切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される小径凹穴切削工具と、をそれぞれ用意する凸状切刃切削工具準備工程と、
前記大径凹穴切削工具を、前記大径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する大径凸部形成凹穴切削工程と、
前記小径凹穴切削工具を、前記小径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する小径凸部形成凹穴切削工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2のエンボス成形金型の加工方法。
【請求項4】
前記エンボス板は、
前記大径凸部及び前記小径凸部が第1方向に等間隔で交互に等中心間隔で配置された第1列と、前記小径凸部が前記第1方向に前記等中心間隔で配置され、前記第1列に対して前記等中心間隔と同等以下の間隔で前記第1方向に直交する第2方向に配置された第2列とが、前記第2方向に交互に形成され、
前記第2列内の小径凸部のうちの2つの小径凸部が前記第1列内の前記大径凸部の前記第1方向の中心間に位置し、
前記小径凸部は、前記大径凸部よりも小さい径及び曲率半径を有する
ことを特徴とする請求項1のエンボス成形金型の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の円形凸部が規則的に配列されたエンボス板を成形するエンボス成形金型の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の円形凸部が規則的に配列されたエンボス板が知られている。たとえば、特許文献1に記載された、等間隔で形成された大径の円形凸部の回りを複数個(6個)の小径円形凸部が周方向に等間隔で取り囲むように配置されたエンボス板がそれである。このような、丸凸エンボス板は、一対の金型を用いてプレス加工されることにより成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-136720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のエンボス板を成形する成形金型のうちの凸型の加工に際しては、ボールエンドミルを回転駆動しつつそのボールエンドミルを3軸方向にそれぞれ位置制御できる3軸切削盤を用いる。この場合、ボールエンドミルの位置を制御しつつ成形金型の表面を走査して切削するに際して、粗削り加工、中仕上げ加工、及び仕上げ加工毎に、粗削り用、中仕上げ用、及び仕上げ用の異なる種類の工具を必要とすると共に、それぞれの加工工程毎に多くの加工時間が必要となるという、欠点があった。また、それぞれの加工工程毎に3軸の位置制御に用いる大きなサイズの制御データを必要とし、その制御データの作成に多くの工数を必要とする欠点があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、より少ない種類の工具を用いて短い加工時間で金型を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを小さくしてその制御データの作成に必要な工数を低減できるエンボス成形金型の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)所定の間隔で配列された大径凸部の回りを前記大径凸部よりも小径の複数個の小径凸部が周方向に等間隔で取り囲むように配置されたエンボス板をプレス成形する凸型及び凹型から成るエンボス成形金型の加工方法であって、(b)前記大径凸部の断面形状に対応する凹形状を有する大径凸部切削切れ刃と、前記大径凸部切削切れ刃に続いて形成された前記大径凸部の外周の平坦部に対応する形状の大径凸部外周切れ刃とを有し、前記大径凸部切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される大径凸部切削工具と、前記小径凸部の断面形状に対応する凹形状を有する小径凸部切削切れ刃と、前記小径凸部切削切れ刃に続いて形成された前記小径凸部の外周の平坦部に対応する形状の小径凸部外周切れ刃とを有し、前記小径凸部切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される小径凸部切削工具と、をそれぞれ用意する凹状切刃切削工具準備工程と、(c)前記大径凸部切削工具を、前記大径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する大径凸部形成突起切削工程と、(d)前記小径凸部切削工具を、前記小径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する小径凸部形成突起切削工程と、を含むことにある。
【0007】
第2発明の要旨とするとことは、第1発明において、前記大径凸部切削工具の大径凸部切削切れ刃には、前記大径凸部切削切れ刃により切削される前記大径凸部形成突起の周縁部に前記凸型の成形面に対して垂直な環状垂直壁面を形成するための垂直切れ刃部が設けられている
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明又は第2発明において、(f)前記大径凸部の断面形状に対応する凹形状を有する大径凹穴切削切れ刃と、前記大径凹穴切削切れ刃に続いて形成された前記大径凸部の外周の平坦部に対応する形状の大径凹穴外周切れ刃とを有し、前記大径凹穴切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される大径凹穴切削工具と、前記小径凸部の断面形状に対応する凸形状を有する小径凹穴切削切れ刃と、前記小径凹穴切削切れ刃に続いて形成された前記小径凸部の外周の平坦部に対応する形状の小径凹穴外周切れ刃とを有し、前記小径凹穴切削切れ刃の中央を通る回転中心線まわりに回転駆動される小径凹穴切削工具と、をそれぞれ用意する凸状切刃切削工具準備工程と、(g)前記大径凹穴切削工具を、前記大径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する大径凸部形成凹穴切削工程と、(h)前記小径凹穴切削工具を、前記小径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する小径凸部形成凹穴切削工程と、を含むことにある。
【0009】
第4発明の要旨とするところは、第1発明において、前記エンボス板は、前記大径凸部及び前記小径凸部がX方向に等間隔で交互に等中心間隔で配置された第1列と、前記小径凸部がX方向に前記等中心間隔で配置され、前記第1列に対して前記等中心間隔よりも同等以下の間隔でY方向に配置された第2列とが、Y方向に交互に形成され、前記第2列内の小径凸部のうちの2つの小径凸部が前記第1列内の前記大径凸部のX方向の中心間に位置し、前記小径凸部は、前記大径凸部よりも小さい径及び曲率半径を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
第1発明のエンボス成形金型の加工方法によれば、前記大径凸部切削工具を、前記大径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する大径凸部形成突起切削工程と、前記小径凸部切削工具を、前記小径凸部切削工具の回転中心線を前記凸型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成突起を前記凸型の成形面に切削する小径凸部形成突起切削工程と、が含まれる。この結果、大径凸部形成突起切削工程において、大径凸部切削工具の回転中心線方向の移動のみにより、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成突起が前記凸型の成形面に切削され、小径凸部形成突起切削工程において、小径凸部切削工具の回転中心線方向の移動のみにより、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成突起が前記凸型の成形面に切削される。これにより、従来より少ない2種類の工具を用いて、切削工具の回転中心線方向の移動のみによる短い切削加工時間で凸型を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向で短い加工時間に対応して小さくでき、制御データの作成に必要な工数を低減できる。
【0011】
第2発明のエンボス成形金型の加工方法によれば、前記大径凸部切削工具の大径凸部切削切れ刃には、前記大径凸部切削切れ刃により切削される前記大径凸部形成突起の周縁部に前記凸型の成形面に対して垂直な環状垂直壁面を形成するための垂直切れ刃部が設けられていて、凸型の成形面に切削される大径凸部形成突起の径を小さくできるので、大径凸部形成突起及び小径凸部形成突起の個数の密度を高めることができ、エンボス板の大径凸部および小径凸部の密度を高くしてエンボス板の剛性を高くすることができる。また、大径凸部形成突起と干渉しないように制限される小径凸部切削工具の外径を拡大することができ、切削残部が解消される。さらに、前記凸型と前記凹型の間で前記エンボス板をプレス成形するに際して、エンボス板の大径凸部及び小径凸部の形状は、凹形に形成された大径凸部形成凹穴及び小径凸部形成凹穴の形状に沿って形成されるので、大径凸部形成突起の環状垂直壁面の外周側に形成される隙間及び小径凸部形成突起の外周に形成される隙間を詰める大きな荷重をかける必要はなく、小さなプレス荷重でプレス成形できる。
【0012】
第3発明のエンボス成形金型の加工方法によれば、前記大径凹穴切削工具を、前記大径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する大径凸部形成凹穴切削工程と、前記小径凹穴切削工具を、前記小径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向に往復移動させ、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成凹穴を前記凹型の成形面に切削する小径凸部形成凹穴切削工程と、が含まれる。この結果、大径凸部形成凹穴切削工程において、大径凹穴切削工具の回転中心線方向の移動のみにより、前記大径凸部に対応する形状の大径凸部形成凹穴が前記凹型の成形面に切削され、小径凸部形成凹穴切削工程において、小径凹穴切削工具の回転中心線を前記凹型の成形面に対して垂直とした状態で前記回転中心線方向の移動のみにより、前記小径凸部に対応する形状の小径凸部形成凹穴が前記凹型の成形面に切削される。これにより、従来より少ない2種類の工具を用いて、切削工具の回転中心線方向の移動のみによる短い切削加工時間で凹型を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向で短い加工時間に対応して小さくでき、制御データの作成に必要な工数を低減できる。
【0013】
第4発明のエンボス成形金型の加工方法によれば、前記エンボス板は、前記大径凸部及び前記小径凸部が第1方向に等間隔で交互に等中心間隔で配置された第1列と、前記小径凸部が第1方向に前記等中心間隔で配置され、前記第1列に対して前記等中心間隔と同等以下の間隔で前記第1方向に直交する第2方向に配置された第2列とが、前記第2方向に交互に形成され、前記第2列内の小径凸部のうちの2つの小径凸部が前記第1列内の前記大径凸部の前記第1方向の中心間に位置し、前記小径凸部は、前記大径凸部よりも小さい径及び曲率半径を有するものである。これにより、板厚を増加させることなく、十分な剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例の加工方法により加工されたエンボス成形金型を用いてプレス成形されるエンボス板から成る製品を説明する斜視図である。
図2図1のエンボス板を成形するエンボス成形金型を説明する図である。
図3図1のエンボス板の要部を拡大して説明する平面図である。
図4図2のエンボス板の断面を示す、図2のIV-IV視図である。
図5図2のエンボス板の断面を示す、図2のV-V視図である。
図6】エンボス成形金型の従来の加工方法に用いられる工具であるボールエンドミルを説明する図である。
図7】エンボス成形金型の凸型の従来の加工方法であって、ボールエンドミルを用いて加工する場合を示す斜視図である。
図8】エンボス成形金型の凹型の従来の加工方法であって、ボールエンドミルを用いて加工する場合を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施例のエンボス成形金型の加工方法のうち、凸型の加工方法を説明する工程図である。
図10】本発明の一実施例のエンボス成形金型の加工方法のうち、凹型の加工方法を説明する工程図である。
図11図9の大径凸部切削工具準備工程で準備される大径凸部切削工具を説明する図である。
図12図9の小径凸部切削工具準備工程で準備される小径凸部切削工具を説明する図である。
図13図9の大径凸部形成突起切削工程および小径凸部形成突起切削工程を説明する斜視図である。
図14図9の凸型の加工方法を用いて切削加工した凸型の断面の要部を拡大して示す断面図である。
図15図14の凸型の加工方法を用いた切削加工を説明する平面図である。
図16図9の凸型の加工方法を用いて切削加工した凸型の断面の要部を拡大して示す断面図であって、切削加工された大径凸部形成突起の外周部に環状垂直壁面が形成された場合を示す図である。
図17図16の凸型の加工方法を用いた切削加工を説明する平面図である。
図18図16に示す、環状垂直壁面が形成された大径凸部形成突起を有する凸形と図21に示す凹形との間でエンボス板をプレスする状態を拡大して説明する断面図である。
図19図10の大径凹穴切削工具準備工程で準備される大径凹穴切削工具を説明する図である。
図20図10の小径凹穴切削工具準備工程で準備される小径凹穴切削工具を説明する図である。
図21図10の大径凸部形成凹穴切削工程および小径凸部形成凹穴切削工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【実施例
【0016】
図1は、エンボス板10から成形されたエンボス製品INSを例示する斜視図である。このエンボス製品INSは、たとえば車両の排気管EPを覆うように曲成されており、排気管EP近傍の図示しない車体に固定されることで、車体側への熱を遮断するインシュレータとして機能している。エンボス板10は、ステンレスやアルミニウム等のたとえば0.4mm程度の厚みを有する金属薄板から成り、たとえば図2に示すエンボス成形金型(以下、成形金型という)12からプレス加工により成形される。成形金型12は、たとえば工具鋼製の凸型14および凹型16から構成される。図2では、凸型14が下型として用いられ、凹型16が上型として用いられている。
【0017】
図3は、エンボス板10を拡大して示す平面図である。図4は、図3IV-IV視断面図、図5は、図3のV-V視断面図である。エンボス板10には、その剛性を高めるために、平面視で所定の外径D1を有してZ方向に突き出す部分球状の複数個の大径凸部18と、外径D1よりも小さい径D2を有してZ方向に突き出す部分球状の複数個の小径凸部20が、プレス加工により形成されている。エンボス板10には、第1方向であるX方向に沿って大径凸部18及び小径凸部20がX方向に等中心間隔D1で交互に配置された第1列L1と、小径凸部20がX方向に等中心間隔D1で配置され、第1列L1に平行な第2列L2とが、第1方向に直交する第2方向であるY方向に交互に且つ前記等中心間隔と同等以下の間隔或いは前記等中心間隔よりも僅かに短い間隔たとえば(7/8〕D1で配置されている。第2列L2内の小径凸部20のうちの2つの小径凸部20が第1列内L1の大径凸部18のX方向の中心間に位置し、小径凸部20の外径D2は、大径凸部18の外径D1よりも小さく、たとえば73%程度の値である。また、小径凸部20の曲率半径R2は、大径凸部18の曲率半径R1よりも小さく、たとえば73%程度の値である。
【0018】
凸型14の成形面14aには、大径凸部18及び小径凸部20にそれぞれ対応する形状および間隔で突き出す大径凸部形成突起22及び小径凸部形成突起24が、形成されている。また、凹型16の成形面16aには、大径凸部18及び小径凸部20にそれぞれ対応する形状および間隔で凹む大径凸部形成凹穴26及び小径凸部形成凹穴28が形成されている。大径凸部形成凹穴及26に対してエンボス板10を挟んで大径凸部形成突起22が押し入れられることで大径凸部18が加工され、小径凸部形成凹穴28に対してエンボス板10を挟んで小径凸部形成突起24が押し入れられることで小径凸部20が加工される。
【0019】
従来では、成形金型12の凸型14は、図6に例示する、先端曲率半径が3mmφ、5mmφ、6mmφである3種類のボールエンドミル30を用いて、大径凸部形成突起22及び小径凸部形成突起24が切削加工により形成されていた。図7は、この切削加工を説明する斜視図である。この場合、ボールエンドミル30は、たとえばX方向の切削パスに沿って上下位置(Z方向位置)を変化させつつ往動させられ、次いで、Y方向に所定の送りピック分(たとえば0.3mm)移動させられた後に、上記切削パスに平行な新たな切削パスに沿って復動動させられることが、繰り返される。このようなボールエンドミルのXYZ位置制御には、凸型14の成形面14aが700mm×1200mmであるとすると、1.368GBのデータサイズを必要とし、長いデータ作成時間を必要とし、切削加工時間も長く必要であった。
【0020】
図8は、凹型16のボールエンドミルによる切削を説明する斜視図である。この場合も、図7の凸型14の場合と同様に、ボールエンドミル30は、たとえばX方向の切削パスに沿って上下位置(Z方向位置)を変化させつつ往動させられ、次いで、Y方向に所定の送りピック分(たとえば0.3mm)移動させられた後に、上記切削パスに平行な新たな切削パスに沿って復動動させられることが、繰り返される。この場合も凸型14の場合と同様に、ボールエンドミルのXYZ位置制御には、凹型16が700mm×1200mmであるとすると、0.932GBという大きなデータサイズを必要とし、長いデータ作成時間を必要とし、切削加工時間も長く必要であった。結局、凸型14と凹型16とで2.3GBという大きなデータサイズを必要とした。
【0021】
図9は、本実施例のエンボス成形金型のうちの凸型14の加工方法を説明する工程図である。図10は、本実施例のエンボス成形金型のうちの凹型16の加工方法を説明する工程図である。
【0022】
図9において、大径凸部切削工具準備工程P1では、たとえば図11に示す大径凸部切削工具32が用意される。大径凸部切削工具32は、その回転中心線C1まわりに回転駆動される軸状の凹状切刃切削工具である。大径凸部切削工具32は、凸型14の大径凸部形成突起22の凸断面形状に対応する凹形状を有する凹状切刃である大径凸部切削切れ刃34と、大径凸部切削切れ刃34に続いて形成された大径凸部18の外周の平坦部に対応する平坦な形状の大径凸部外周切れ刃36とを備え、大径凸部切削切れ刃34の中央を通る回転中心線C1まわりに回転駆動されるようになっている。大径凸部切削工具32の大径凸部切削切れ刃34及び大径凸部外周切れ刃36よりも回転方向上流側には、すくい面38が形成されている。
【0023】
小径凸部切削工具準備工程P2では、たとえば図12に示す小径凸部切削工具40が用意される。小径凸部切削工具40は、その回転中心線C2まわりに回転駆動される軸状の凹状切刃切削工具である。小径凸部切削工具40は、凸型14の小径凸部形成突起24の凸断面形状に対応する凹形状を有する凹状切刃である小径凸部切削切れ刃42と、小径凸部切削切れ刃42に続いて形成された小径凸部20の外周の平坦部に対応する平坦な形状の小径凸部外周切れ刃44とを備え、小径凸部切削切れ刃42の中央を通る回転中心線C2まわりに回転駆動されるようになっている。小径凸部切削工具40の小径凸部切削切れ刃42及び小径凸部外周切れ刃44よりも回転方向上流側には、すくい面46が形成されている。本実施例では、大径凸部切削工具準備工程P1及び小径凸部切削工具準備工程P2が、凹状切刃切削工具に対応している。なお、大径凸部切削工具準備工程P1及び小径凸部切削工具準備工程P2は、いずれが先であっても差し支えない。
【0024】
大径凸部形成突起切削工程P3では、図13に示すように、大径凸部切削工具32がその回転中心線C1と予め設定されている大径凸部形成突起22の中心点PAに一致するようにXY位置制御され、且つ回転した状態でZ方向に凸型14側へ往動及び復動させられることにより、大径凸部形成突起22及びその外囲の大径凸部形成突起外周平面部22aが凸型14の成形面14aに形成される。このような切削加工が、凸型14上の大径凸部形成突起22の中心点PA毎に繰り返される。
【0025】
小径凸部形成突起切削工程P4では、図13に示すように、小径凸部切削工具40がその回転中心線C2と予め設定されている小径凸部形成突起24の中心点PBに一致するようにXY位置制御され、且つ回転した状態でZ方向に凸型14側へ往動及び復動させられることにより、小径凸部形成突起24及びその外囲の小径凸部形成突起外周平面部24aが凸型14の成形面14aに形成される。このような切削加工が、凸型14上の小径凸部形成突起24の中心点PB毎に繰り返される。なお、大径凸部形成突起切削工程P3及び小径凸部形成突起切削工程P4は、いずれが先であっても差し支えない。
【0026】
上記の本実施例の凸型14の加工工程によれば、前述の3種類のボールエンドミルを用いた従来の切削加工方法に比較して、以下に示す顕著な効果が得られた。すなわち、成形面14aが700mm×1200mmである凸型14の加工の場合に、2種類の大径凸部切削工具32及び小径凸部切削工具40を用いて凸型14を切削加工するためにZ方向に凸型14側へ往動及び復動させるだけでよいので、短い加工時間で加工でき、軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向であるので、95%も短い加工時間とすることができ、それに対応して、加工のための制御データも1.368GBから64KBへと大幅に小さくでき、制御データの作成に必要な工数も85%低減できた。また、工具費用も45%低減できた。
【0027】
図14は、大径凸部形成突起切削工程P3により切削加工された大径凸部形成突起22及びその外囲の大径凸部形成突起外周平面部22aと、小径凸部形成突起切削工程P4により切削加工された小径凸部形成突起24及びその外囲の小径外周凸部形成突起平面部24aとを備える凸型14の成形面14aの断面を示している。凸型14の成形面14aにおいて、大径凸部形成突起外周平面部22aと小径凸部形成突起外周平面部24aとは、同じ高さである。この場合、エンボス板10の剛性を高めるために、エンボス板10の大径凸部18を形成する大径凸部形成突起22とエンボス板10の小径凸部20を形成する小径凸部形成突起24との個数密度を高くしようとすると、大径凸部切削工具32の外径d32は小径凸部形成突起24と干渉しないように制限され、小径凸部切削工具40の外径d40は大径凸部形成突起22と干渉しないように制限されるため、図15に示すように、大径凸部形成突起外周平面部22aと小径凸部形成突起外周平面部24aとの間に切削残部48が形成され、エンボス板10の剛性の向上が制限される場合があった。
【0028】
これに対して、好適には、図11に示すように、大径凸部切削工具32の大径凸部切削切れ刃34の外周端に、回転中心線C1に平行な垂直切れ刃部34aが形成され、大径凸部切削切れ刃34の径d341が垂直切れ刃部34aが無い場合の径d34よりも小さくされている。これにより、図16図17に示すように、大径凸部切削切れ刃34により切削される大径凸部形成突起22の外周部に凸型14の成形面14aに対して垂直な環状垂直壁面22bが形成されている。凸型14の成形面14aにおいて、大径凸部形成突起22の外径d341は、図14図15に示す環状垂直壁面22bの無い大径凸部形成突起22の外径d34よりも小さく形成されている。このため、図17に示すように、大径凸部形成突起22と干渉しないように制限される小径凸部切削工具40の外径d401を図15の径d40よりも拡大することができ、切削残部48が解消されるので、エンボス板10の大径凸部18及び小径凸部20の密度を高くして剛性を一層向上させることができる。なお、環状垂直壁面22bが形成されている大径凸部形成突起22によりプレス成形される大径凸部18の形状には変化がないことが本発明者により見出され、環状垂直壁面22bの高さ、或いは環状垂直壁面22bの形成による大径凸部形成突起22の径d341の減少値(=d34-d341)は、プレス成形される大径凸部18の形状には影響しない範囲に設定される。
【0029】
凸型14と凹型16の間でエンボス板10をプレス成形するに際しては、大径凸部18に関しては、図18に示すように、エンボス板10の大径凸部18の外周部形状は、凹形に形成された大径凸部形成凹穴26の形状に沿って形成されるので、大径凸部形成突起22の環状垂直壁面22の外周側に形成される隙間SPを詰める大きな荷重をかける必要はなく、小さなプレス荷重で成形できる。図18に示すように、凹型16の大径凸部形成凹穴26とその外周の大径凸部形成凹穴外周平面部26aとの間の曲率半径R26(約1.5mm程度)は、凸型14の環状垂直壁面22とその外周の大径凸部形成突起外周平面部22aとの間の隅の曲率半径R22(0.1mm程度)よりも桁違いに大きい。同様に、小径凸部20に関しても、凹型16の小径凸部形成凹穴28とその外周の小径凸部形成凹穴外周平面部28aとの間の曲率半径小径凸部形成突起24と小径凸部形成突起外周平面部24aとの間の隅の曲率半径(0.1mm程度)よりも桁違いに大きい。このため、凸型14および凹型16が200mm×200mmの場合は、32tのプレス荷重がその-35%減のプレス荷重となった。
【0030】
図10に戻って、大径凹穴切削工具準備工程P11では、たとえば図19に示す大径凹穴切削工具52が用意される。大径凹穴切削工具52は、その回転中心線C3まわりに回転駆動される軸状の凸状切刃切削工具である。大径凹穴切削工具52は、凹型16の大径凸部形成凹穴26の凹断面形状に対応する凸形状を有する凸状切刃である大径凹穴切削切れ刃54と、大径凹穴切削切れ刃54に続いて形成された大径凸部形成凹穴26の外周の平坦部に対応する平坦な形状の大径凹穴外周切れ刃56とを備え、大径凹穴切削切れ刃54の中央を通る回転中心線C3まわりに回転駆動されるようになっている。大径凹穴切削工具52の大径凹穴切削切れ刃54及び大径凹穴外周切れ刃56よりも回転方向上流側には、すくい面58が形成されている。
【0031】
小径凹穴切削工具準備工程P12では、たとえば図20に示す小径凹穴切削工具60が用意される。小径凹穴切削工具60は、その回転中心線C4まわりに回転駆動される軸状の凸状切刃切削工具である。小径凹穴切削工具60は、凹型16の小径凸部形成凹穴28の凹断面形状に対応する凸形状を有する凸状切刃である小径凹穴切削切れ刃62と、小径凹穴切削切れ刃62に続いて形成された小径凸部形成凹穴28の外周の平坦部に対応する平坦な形状の小径凹穴外周切れ刃64とを備え、小径凹穴切削切れ刃62の中央を通る回転中心線C4まわりに回転駆動されるようになっている。小径凹穴切削工具60の小径凹穴切削切れ刃62及び小径凹穴外周切れ刃64よりも回転方向上流側には、すくい面66が形成されている。本実施例では、大径凹穴切削工具準備工程P11及び小径凹穴切削工具準備工程P12が、凸状切刃切削工具に対応している。なお、大径凹穴切削工具準備工程P11及び小径凹穴切削工具準備工程P12は、いずれが先であっても差し支えない。
【0032】
大径凸部形成凹穴切削工程P13では、図21に示すように、大径凹穴切削工具52がその回転中心線C3と予め設定されている大径凸部形成凹穴26の中心点PCに一致するようにXY位置制御され、且つ回転した状態でZ方向に凹型16側へ往動及び復動させられることにより、大径凸部形成凹穴26及びその外囲の大径凸部形成凹穴外周平面部26aが凹型16の成形面16aに形成される。このような切削加工が、凹型16上の大径凸部形成凹穴26の中心点PC毎に繰り返される。
【0033】
小径凸部形成凹穴切削工程P14では、図21に示すように、小径凹穴切削工具60がその回転中心線C4と予め設定されている小径凸部形成凹穴28の中心点PDに一致するようにXY位置制御され、且つ回転した状態でZ方向に凹型16側へ往動及び復動させられることにより、小径凸部形成凹穴28及びその外囲の小径外周平面部28aが凹型16の成形面16aに形成される。このような切削加工が、凹型16上の小径凸部形成凹穴28の中心点PD毎に繰り返される。なお、大径凸部形成凹穴切削工程P13及び小径凸部形成凹穴切削工程P14は、いずれが先であっても差し支えない。
【0034】
本実施例の凹型16の加工工程によれば、前述の3種類のボールエンドミルを用いた従来の切削加工方法に比較して、成形面16aが700mm×1200mmである凹型16の加工の場合に、2種類の大径凹穴切削工具52及び小径凹穴切削工具60を用いて凹型16を切削加工するためにZ方向に凹型16側への往動及び復動がくり返されるだけでよいので、短い加工時間で加工でき、軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向であるので、凸型14の場合と同様に、大幅に加工時間を短縮することができ、それに対応して、加工のための制御データも0.932GBから64KBへと大幅に小さくでき、制御データの作成に必要な工数も大幅に低減できた。また、工具費用も低減できた。結局、上述の凸型14および凹型16の加工のための制御データに関しては、2.3GBから1284KBへと大幅に小さくなった。
【0035】
上述のように、本実施例のエンボス加工に用いる成形金型12の加工方法によれば、大径凸部切削工具32を、大径凸部切削工具32の回転中心線C1を凸型14の成形面14aに対して垂直とした状態で回転中心線C1方向に往復移動させ、大径凸部18に対応する形状の大径凸部形成突起22を凸型14の成形面14aに切削する大径凸部形成突起切削工程P3と、小径凸部切削工具40を、小径凸部切削工具40の回転中心線C2を凸型14の成形面14aに対して垂直とした状態で回転中心線方向C2に往復移動させ、小径凸部20に対応する形状の小径凸部形成突起24を凸型14の成形面14aに切削する小径凸部形成突起切削工程P4と、が含まれている。この結果、大径凸部形成突起切削工程P3において、大径凸部切削工具32の回転中心線C1方向の往復移動のみにより、大径凸部18に対応する形状の大径凸部形成突起22が凸型14の成形面14aに切削され、小径凸部形成突起切削工程P4において、小径凸部切削工具40の回転中心線C2方向の往復移動のみにより、小径凸部20に対応する形状の小径凸部形成突起24が凸型14の成形面14aに切削される。これにより、従来より少ない2種類の工具を用いて、2種類の切削工具の回転中心線方向の凸型14側へ往動及び復動の繰り返しによる短い切削加工時間で凸型14を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向で短い加工時間に対応して小さくでき、制御データの作成に必要な工数を低減できる。
【0036】
本実施例のエンボス加工に用いる成形金型12の加工方法によれば、大径凸部切削工具32の大径凸部切削切れ刃34には、大径凸部切削切れ刃34により切削される大径凸部18の周縁部に凸型14の成形面14aに対して垂直な環状垂直壁面22bを形成するための垂直切れ刃部34aが設けられているので、凸型14の成形面14aに切削される大径凸部形成突起22及び小径凸部形成突起24の個数の密度を高めることができる。また、大径凸部形成突起22と干渉しないように制限される小径凸部切削工具40の外径を拡大することができ、切削残部48が解消される。さらに、凸型14と凹型16の間でエンボス板10をプレス成形するに際して、エンボス板10の大径凸部18及び小径凸部20の外周形状は、凹形に形成された大径凸部形成凹穴26及び小径凸部形成凹穴28の形状に沿って形成されるので、0.1mmR程度の小さな曲率半径の隅があっても、大径凸部形成突起22の環状垂直壁面22の外周側に形成される隙間SPやその隅を詰める大きな荷重をかける必要はなく、小さなプレス荷重で成形できる。
【0037】
本実施例のエンボス加工に用いる成形金型12の加工方法によれば、大径凹穴切削工具52を、大径凹穴切削工具52の回転中心線C3を凹型16の成形面16aに対して垂直とした状態で回転中心線C3方向に往復移動させ、大径凸部18に対応する形状の大径凸部形成凹穴26を凹型16の成形面16aに切削する大径凸部形成凹穴切削工程P13と、小径凹穴切削工具60を、小径凹穴切削工具60の回転中心線C4を凹型16の成形面16aに対して垂直とした状態で回転中心線C4方向に往復移動させ、小径凸部20に対応する形状の小径凸部形成凹穴28を凹型16の成形面16aに切削する小径凸部形成凹穴切削工程P14と、が含まれている。この結果、大径凸部形成凹穴切削工程P13において、大径凹穴切削工具52の回転中心線C3方向の往復移動のみにより、大径凸部18に対応する形状の大径凸部形成凹穴26が凹型16の成形面16aに切削され、小径凸部形成凹穴切削工程P14において、小径凹穴切削工具60の回転中心線C4を凹型16の成形面16aに対して垂直とした状態で回転中心線C4方向の往復移動のみにより、小径凸部20に対応する形状の小径凸部形成凹穴28が凹型16の成形面16aに切削される。これにより、従来よりも少ない2種類の工具を用いて、切削工具の回転中心線方向の凹型16側へ往動及び復動の繰り返しのみによる短い切削加工時間で凹型を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向で短い加工時間に対応して小さくでき、制御データの作成に必要な工数を低減できる。
【0038】
本実施例のエンボス加工に用いる成形金型12の加工方法によれば、エンボス板10は、大径凸部18及び小径凸部20がX方向に等間隔で交互に等中心間隔で配置された第1列L1と、小径凸部20がX方向に等中心間隔で配置され、第1列L1に対して等中心間隔よりも同等以下の間隔でY方向に配置された第2列L2とが、Y方向に交互に形成され、第2列内L2の小径凸部20のうちの2つの小径凸部20が第1列L1内の大径凸部18のX方向の中心間に位置し、小径凸部20は、大径凸部18よりも小さい径及び曲率半径を有するものである。これにより、エンボス板10の板厚を増加させることなく、十分な剛性を確保することができる。
【0039】
以上、成形金型12の加工方法を図面に基づいて説明したが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0040】
たとえば、前述の実施例の成形金型12では、凸型14が下型として用いられ、凹型16が上型として用いられていたが、凹型16が下型として用いられ、凸型14が上型として用いられてもよいし、凸型14及び凹型16は、水平方向に組合わせられる左型および右型として用いられてもよい。
【0041】
また、前述の実施例のエンボス板10に設けられた大径凸部18及び小径凸部20は、一定の曲率半径を有する部分球形状であったが、円柱状、円錐状などの他の凸形状であってもよい。
【0042】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:エンボス板、12:成形金型、14:凸型、14a:成形面、16:凹型、16a:成形面、:18:大径凸部、20:小径凸部、22:大径凸部形成突起、22a:大径凸部形成突起外周平面部、22b:環状垂直壁面、24:小径凸部形成突起、24a:小径凸部形成突起外周平面部、26:大径凸部形成凹穴、26a:大径凸部形成凹穴外周平面部、28:小径凸部形成凹穴、28a:小径凸部形成凹穴外周平面部、30:ボールエンドミル、32:大径凸部切削工具、26a:大径凸部形成凹穴外周平面部、34:大径凸部切削切れ刃、34a:垂直切れ刃部、36:大径凸部外周切れ刃、38:すくい面、40:小径凸部切削工具、42:小径凸部切削切れ刃、44:小径凸部外周切れ刃、46:すくい面、48:切削残部、52:大径凹穴切削工具、54:大径凹穴切削切れ刃、56:大径凹穴外周切れ刃、58:すくい面、60:小径凹穴切削工具、62:小径凹穴切削切れ刃、64:小径凹穴外周切れ刃、66:すくい面、D1:大径凸部の外径、D2:小径凸部の外径、R1:大径凸部の曲率半径、R2:小径凸部の曲率半径、L1:第1列、L2:第2列、PA:大径凸部形成突起の中心点、PB:小径凸部形成突起の中心点、PC:大径凸部形成凹穴の中心点、PD:小径凸部形成凹穴の中心点、P1:大径凸部切削工具準備工程、P2:小径凸部切削工具準備工程、P3:大径凸部形成突起切削工程、P4:小径凸部形成突起切削工程、P11:大径凹穴切削工具準備工程、P12:小径凹穴切削工具準備工程、P13:大径凸部形成凹穴切削工程、P14:小径凸部形成凹穴切削工程
【要約】
【課題】少ない種類の工具を用いて短い加工時間で金型を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを小さくしてその制御データの作成に必要な工数を低減できるエンボス成形金型の加工方法を提供する。
【解決手段】大径凸部形成突起切削工程P3において、大径凸部切削工具32の回転中心線C1方向の往復移動のみにより、大径凸部18に対応する形状の大径凸部形成突起22が凸型14の成形面14aに切削され、小径凸部形成突起切削工程P4において、小径凸部切削工具40の回転中心線C2方向の往復移動のみにより、小径凸部20に対応する形状の小径凸部形成突起24が凸型14の成形面14aに切削される。これにより、短い切削加工時間で凸型14を加工でき、3軸の位置制御に用いる制御データのサイズを従来よりも単純な移動方向で短い加工時間に対応して小さくでき、制御データの作成工数を低減できる。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21