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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】距離推定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20230927BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01C3/06 120S
G01B11/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190536
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067469
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519137888
【氏名又は名称】株式会社Lightblue
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷部 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】大山 巧
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 岳
(72)【発明者】
【氏名】古川 慧
(72)【発明者】
【氏名】園田 亜斗夢
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊一
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186575(JP,A)
【文献】特開2011-209269(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179116(WO,A1)
【文献】特開2018-109824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像手段と、取得した前記画像に基づいて、撮像位置から前記対象物までの間の距離、または、任意の位置から前記対象物までの距離を推定する推定手段とを備えた距離推定装置であって、
前記撮像手段は、前記撮像位置から所定の距離に所定の間隔で平地内に配置された複数の標識と前記対象物を含む領域を撮像し、
前記推定手段は、取得した前記画像から前記標識を抽出し、抽出した前記標識に基づいて、前記撮像位置からの等距離線を近似曲線で平地上に設定し、設定した近似曲線上の異なる位置から取得した複数の点を用いて重回帰分析を行ない、距離推定のための重回帰式を作成することにより、前記撮像位置から前記画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するモデル生成部と、取得した前記画像から前記対象物の特徴部分を抽出し、抽出した前記対象物の特徴部分から前記対象物の推定対象部分の位置を推定する位置推定部と、前記推定モデルを用いて、前記推定対象部分の位置と前記撮像位置または任意の位置との間の距離を推定する距離推定部を有することを特徴とする距離推定装置。
【請求項2】
前記標識は、前記撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、前記近似曲線は、等距離線を2次関数で近似した曲線であることを特徴とする請求項1に記載の距離推定装置。
【請求項3】
前記位置推定部は、平地上の人物の骨格または姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を前記推定対象部分の位置として推定することを特徴とする請求項1または2に記載の距離推定装置。
【請求項4】
対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像ステップと、取得した前記画像に基づいて、撮像位置から前記対象物までの間の距離、または、任意の位置から前記対象物までの距離を推定する推定ステップとを有する距離推定方法であって、
前記撮像ステップは、前記撮像位置から所定の距離に所定の間隔で平地内に配置された複数の標識と前記対象物を含む領域を撮像し、
前記推定ステップは、取得した前記画像から前記標識を抽出し、抽出した前記標識に基づいて、前記撮像位置からの等距離線を近似曲線で平地上に設定し、設定した近似曲線上の異なる位置から取得した複数の点を用いて重回帰分析を行ない、距離推定のための重回帰式を作成することにより、前記撮像位置から前記画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するステップと、取得した前記画像から前記対象物の特徴部分を抽出し、抽出した前記対象物の特徴部分から前記対象物の推定対象部分の位置を推定するステップと、前記推定モデルを用いて、前記推定対象部分の位置と前記撮像位置または任意の位置との間の距離を推定するステップを有することを特徴とする距離推定方法。
【請求項5】
前記標識は、前記撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、前記近似曲線は、等距離線を2次関数で近似した曲線であることを特徴とする請求項4に記載の距離推定方法。
【請求項6】
前記推定ステップにおいて、平地上の人物の骨格および姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を前記推定対象部分の位置として推定することを特徴とする請求項4または5に記載の距離推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ位置または任意の位置からカメラに映った被写体までの2点間距離を推定する距離推定装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラを用いて物体までの距離を推定する装置として、例えば特許文献1~3に記載の技術が知られている。特許文献1は、ステレオカメラで物体認識を行い、各カメラが認識した対象物の視差情報を算出し、三角測量の原理に基づいて、物体までの距離検出を行うものである。撮影画像の解像度を下げて演算を行うことにより演算量を削減する。
【0003】
特許文献2は、ステレオカメラで撮影画像上の領域探索を行い、相関を用いたブロックマッチング方式により視差情報を求め、被写体までの距離および物体の種別を判定するものである。距離測定の精度が特に求められる処理領域については単眼カメラの被写体とパタンデータとの類似量から物体を検出し、高さと大きさにより、被写体の距離検出を行う。ステレオカメラ部での処理結果に基づく演算領域のスクリーニングにより、距離測定の精度が求められる単眼カメラ部での演算量を削減する。
【0004】
特許文献3は、単眼カメラを移動体に取り付け、連続的に画像を取得するものである。画像から特徴点を抽出し、各特徴点の移動量算出を行う。移動体の移動量と画像上の特徴点の移動量に基づき、画像上の特徴点までの距離推定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-230703号公報
【文献】特開2019-61314号公報
【文献】特開2019-56629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1、2のようにステレオカメラを用いた場合、視差情報を求めるための複雑な処理が必要となり演算量が増えるという問題がある。また、撮影部を複数用意するため装置が複雑になるという問題がある。
【0007】
また、上記の特許文献2の場合、パタンデータとの類似量から距離推定を行う際に、被写体が人物の場合は、個人の身長差を考慮できず、精度の高い距離推定が実現できないという問題がある。
【0008】
また、上記の特許文献3の場合、単眼カメラで物体位置の累積動的視差情報から距離推定を行う際、物体が障害物などにより隠れてしまった場合に、距離推定が行えないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、演算量の低減と推定精度の向上を図ることができる簡易な距離推定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る距離推定装置は、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像手段と、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定手段とを備えた距離推定装置であって、撮像手段は、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定手段は、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するモデル生成部と、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定する位置推定部と、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定する距離推定部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の距離推定装置は、上述した発明において、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の距離推定装置は、上述した発明において、位置推定部は、平地上の人物の骨格または姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の距離推定装置は、上述した発明において、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像ステップと、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定ステップとを有する距離推定方法であって、撮像ステップは、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定ステップは、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するステップと、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定するステップと、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定するステップを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の距離推定方法は、上述した発明において、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の距離推定方法は、上述した発明において、推定ステップにおいて、平地上の人物の骨格および姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る距離推定装置によれば、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像手段と、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定手段とを備えた距離推定装置であって、撮像手段は、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定手段は、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するモデル生成部と、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定する位置推定部と、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定する距離推定部を有するので、演算量の低減と推定精度の向上を図ることができる簡易な距離推定装置を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであるので、距離推定するための初期設定を簡易に行うことができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、位置推定部は、平地上の人物の骨格または姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定するので、人物の足元が障害物によって隠れた場合でも、抽出された骨格や姿勢の特徴部分に基づいて、足元の位置を推定することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像ステップと、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定ステップとを有する距離推定方法であって、撮像ステップは、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定ステップは、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するステップと、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定するステップと、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定するステップを有するので、演算量の低減と推定精度の向上を図ることができる簡易な距離推定方法を提供することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の距離推定方法によれば、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであるので、距離推定するための初期設定を簡易に行うことができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る他の距離推定方法によれば、推定ステップにおいて、平地上の人物の骨格および姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定するので、人物の足元が障害物によって隠れた場合でも、抽出された骨格や姿勢の特徴部分に基づいて、足元の位置を推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る距離推定装置の実施の形態を示す概念図である。
図2図2は、本実施の形態の説明図であり、(1)は平面図、(2)は画像イメージ図である。
図3図3は、本発明に係る距離推定方法の実施の形態を示すフローチャート図である。
図4図4は、本実施の形態による推定結果を示す図である。
図5図5は、本実施の形態の説明図である。
図6図6は、本実施の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る距離推定装置および方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、本発明に係る距離推定装置10は、略水平な地面G(平地)の建設現場Aの重機Mに設置されたカメラ12(撮像手段)と、推定手段14とを備える。重機Mは、建設現場Aの地面Gを移動自在である。
【0025】
カメラ12は、動画像を撮像する単眼カメラである。このカメラ12は、重機Mの周囲で資機材の運搬作業に従事する作業員などの人物P(対象物)と、地面Gに配置された図示しないマーカーコーン(標識)を含む領域を撮像して画像を所定の時間間隔で取得する。
【0026】
図2に示すように、マーカーコーンCは、カメラ位置(撮像位置)から等距離に等間隔(例えば1m間隔)で複数配置される。マーカーコーンCは、画像からの抽出が容易となるように、カメラ位置からの距離に応じて異なる色のものを配置することが望ましい。図2の例では、カメラ位置から1m、2m、3m、4m、5mの各距離の位置にピンク色、緑色、赤色、黄色、青色のマーカーコーンCをそれぞれ配置している。
【0027】
推定手段14は、図1に示すように、モデル生成部16と、位置推定部18と、距離推定部20を有する。この推定手段14は、取得した画像に基づいて、カメラ位置または任意の位置から人物Pまでの間の距離Lを推定するものである。
【0028】
モデル生成部16は、取得した画像からマーカーコーンCを抽出し、抽出したマーカーコーンCに基づいてカメラ位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するものである。具体的には、図2(1)に示すように、抽出した同色のマーカーコーンCをつないだ等距離線を2次関数の近似曲線で地面G上に設定する。そして、各近似曲線から多数点(例えば、一つの等距離線あたり40個の点)を取得して、それらを元データとして重回帰分析を行ない、距離推定のための重回帰式を作成する。この重回帰式を、カメラ位置の座標から任意地点の座標までの距離を推定可能な推定モデルとして初期設定する。この初期設定をすることで、図2(2)に示すように、その後に取得した画像上の人物P等の被写体がカメラ位置からどの程度離れているかを精度よく推定できるようになる。
【0029】
位置推定部18は、取得した画像から人物Pを抽出し、抽出した人物Pの足元(推定対象部分)の位置を推定する。具体的には、機械学習を用いて、画像の中から人物Pを検出する。そして、機械学習を用いて、検出した人物Pの足元位置を姿勢推定する。この場合、機械学習による人物Pの骨格解析を行って骨格や姿勢(特徴部分)を抽出し、足元の座標位置を推定してもよい。これらの機械学習は、例えばCenterNetと呼ばれる周知のライブラリの骨格推定処理を使用して行うことができる。本実施の形態では、図4に示すように、検出した人物Pの表示領域を矩形の枠線などのバウンディングボックスで取り囲むことによって、足元の座標位置を推定する。
【0030】
足元の座標位置の推定方法としては、例えば次のような方法がある。第1の方法は、図4に示すように、バウンディングボックスの底辺の中心座標等から足元の座標位置を推定する方法である。第2の方法は、機械学習による骨格解析結果を直接利用して足元の座標位置を推定する方法である。第3の方法は、機械学習による骨格解析結果から頭、肩、腰位置を推定し、これらに基づいて足元の座標位置を推定する方法である。障害物などによって足元が隠れている場合、CenterNetなどの機械学習ライブラリでは、足元の座標位置を適切に評価できないおそれがある。そこで、この第3の方法では、人物Pが地面Gに足をついていると仮定して、検出された骨格(頭、肩、腰など)に基づいて、足元の座標位置を推定する。例えば、図5に示すように、頭から腰までの距離Zを2倍した位置を足元の座標位置として推定してもよい。また、これらの方法による各推定結果を比較して安全性を評価し、より安全側の推定値を採用する方法を用いてもよい。このような方法により、人物Pの足元が障害物によって隠れて画像から直接抽出できない場合でも、足元位置を適切に推定することができる。
【0031】
重機Mの周辺の安全管理のために、重機Mと人物Pとの接触などの事故を防ぐ手段として上記の各推定結果を比較する方法を活用することができる。図6に、推定結果の比較例を示す。図中のF1は第2の方法により推定した足元位置であり、F2は第3の方法により推定した足元位置である。F1、F2を比較すると、カメラ位置から足元位置までの距離が小さいのはF2である。安全性を評価すると、F2がより安全側の推定値として採用される。このような方法によれば、カメラ位置から足元位置までの距離が最も小さく推定されることになるため、安全側の評価(考えられる最も近い位置推定)が可能となる。
【0032】
距離推定部20は、初期設定した推定モデルを参照して、カメラ位置(または任意の位置)から人物Pが立つ地点(足元位置)までの距離Lを推定するものである。距離推定部20による推定結果は、図示しないディスプレイなどの出力部に表示される。図4に、出力部に表示される推定結果の画面例を示す。図の例では、画像中の人物がバウンディングボックスで検出され、その底辺の足元の座標位置までの距離Lが推定されている。推定された距離Lはバウンディングボックスの左上に数値(メートル単位)で表示される。
【0033】
次に、上記の距離推定装置10を用いた距離推定方法について説明する。
【0034】
図3に示すように、まず、建設現場Aの地面GにマーカーコーンCを配置し、カメラ12で画像を取得する(ステップS1)。続いて、推定手段14のモデル生成部16で推定モデルの初期設定を行う(ステップS2)。次に、位置推定部18で画像中の人物Pを抽出し(ステップS3)、骨格解析を行うとともに(ステップS4)、バウンディングボックスの底辺から足元の座標位置を算出する(ステップS5)。ステップS4の骨格解析結果によって直接、足元の座標位置を推定する(ステップS6)。また、ステップS4の骨格解析結果を用いて頭、肩、腰位置から足元の座標位置を算出する(ステップS7)。次に、ステップS5~S7による結果を比較して安全性を評価する(ステップS8)。最後に、距離推定部20でカメラ位置から足元位置までの距離Lを推定する(ステップS9)。
【0035】
このように本実施の形態によれば、機械学習の姿勢推定により得られた人物の足元位置を使用して、重機などの移動体に取り付けたカメラ位置(または任意の位置)から、画像に映った人物が立つ地点までの2点間距離を推定する。上記の従来のステレオカメラを用いた装置と比較して、演算量を抑えた単純な装置構成が可能となる。これにより、ほぼリアルタイムに距離を推定でき、例えば、カメラ位置からの複数の人物などの被写体までの距離を同時に推定できる。また、重機と人との接触事故回避の問題等に応用が可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では骨格情報から人物の足元位置までの距離を推定するため、パタンデータとの類似量などの個人の身長差を考慮できないという上記の従来の装置の弱点を克服することができる。また、カメラの設置条件(高さ、傾きなど)やカメラの種類(魚眼、画角)などが変更となった場合でも、距離を推定するための推定モデルの初期設定を簡易に行える。
【0037】
人物の足元が障害物によって隠れた場合でも、検出された骨格や姿勢などの特徴部分に基づいて、頭・肩・腰等の位置から足元の座標位置を精度よく推定することができる。また、人物の足元が障害物によって隠れてしまっている場合でも、安全側の評価(最も近い場合の想定)を行うことができる。カメラが重機などの車体に取り付けられて、移動している場合でも、2点間距離を推定可能である。
【0038】
したがって、本実施の形態によれば、演算量の低減と推定精度の向上を図る簡易な距離推定装置を提供することができる。
【0039】
上記の実施の形態においては、人物Pの足元位置を推定する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図2に示すように建設現場A内で稼働する別の重機Qなどの対象物の位置を上記と同様の方法で推定してもよい。例えば、人物の骨格と同様に、対象物の構造(例えば、重機Qの車両の構造)を学習させた機械学習プログラムを用意して、対象物の所定の特徴部分から推定対象部分の位置を推定してもよい。このようにすれば、推定対象部分が障害物に隠れて画像中に現れていない場合でも、カメラ位置と対象物の位置との間の距離を適切に推定することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明に係る距離推定装置によれば、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像手段と、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定手段とを備えた距離推定装置であって、撮像手段は、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定手段は、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するモデル生成部と、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定する位置推定部と、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定する距離推定部を有するので、演算量の低減と推定精度の向上を図ることができる簡易な距離推定装置を提供することができる。
【0041】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであるので、距離推定するための初期設定を簡易に行うことができる。
【0042】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、位置推定部は、平地上の人物の骨格または姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定するので、人物の足元が障害物によって隠れた場合でも、抽出された骨格や姿勢の特徴部分に基づいて、足元の位置を推定することができる。
【0043】
また、本発明に係る他の距離推定装置によれば、対象物を含む領域を撮像して画像を取得する撮像ステップと、取得した画像に基づいて、撮像位置から対象物までの間の距離、または、任意の位置から対象物までの距離を推定する推定ステップとを有する距離推定方法であって、撮像ステップは、撮像位置から所定の距離に所定の間隔で配置された複数の標識と対象物を含む領域を撮像し、推定ステップは、取得した画像から標識を抽出し、抽出した標識に基づいて撮像位置から画像内の任意の位置までの距離を推定するための推定モデルを生成するステップと、取得した画像から対象物の特徴部分を抽出し、抽出した対象物の特徴部分から対象物の推定対象部分の位置を推定するステップと、推定モデルを用いて、推定対象部分の位置と撮像位置または任意の位置との間の距離を推定するステップを有するので、演算量の低減と推定精度の向上を図ることができる簡易な距離推定方法を提供することができる。
【0044】
また、本発明に係る他の距離推定方法によれば、標識は、撮像位置から等距離に等間隔で平地内に配置され、推定モデルは、等距離線を関数で近似したモデルであるので、距離推定するための初期設定を簡易に行うことができる。
【0045】
また、本発明に係る他の距離推定方法によれば、推定ステップにおいて、平地上の人物の骨格および姿勢を特徴部分として抽出し、足元の位置を推定対象部分の位置として推定するので、人物の足元が障害物によって隠れた場合でも、抽出された骨格や姿勢の特徴部分に基づいて、足元の位置を推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る距離推定装置および方法は、建設工事における建機と人物との接触を防ぐ際などの双方間の距離推定に有用であり、特に、演算量の低減と推定精度の向上を図るのに適している。
【符号の説明】
【0047】
10 距離推定装置
12 カメラ(撮像手段)
14 推定手段
16 モデル生成部
18 位置推定部
20 距離推定部
A 建設現場
C マーカーコーン(標識)
G 地面
L 距離
M,Q 重機
P 人物(対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6