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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20230927BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230927BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230927BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230927BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230927BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018088325
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019194282
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月1日にウェブサイト(http://www.y-yokohama.com/product/truckbustire/710r/)に掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞哉
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082122(JP,A)
【文献】特開2017-031356(JP,A)
【文献】特開2012-136581(JP,A)
【文献】特表2014-526589(JP,A)
【文献】特開2008-050449(JP,A)
【文献】特開平11-172052(JP,A)
【文献】特開2017-124773(JP,A)
【文献】特開2008-207669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッド部の表面にタイヤ周方向に沿って延在する複数本の周方向溝と、タイヤ幅方向に沿って延在する複数本のラグ溝とを備え、前記周方向溝と前記ラグ溝とによって複数のブロックが区画された空気入りタイヤであって、前記複数のブロックはタイヤ赤道上に配置された複数のセンターブロックがタイヤ全周に亘って配列されて構成されたセンターブロック列を含み、
タイヤ赤道を中心としたトレッド展開幅の50%の範囲内をセンター領域としたとき、前記センター領域内のすべての溝の総面積に対するタイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックの間に位置するラグ溝の総面積の割合が20%~50%であり、
前記トレッド部は加硫ゴムからなり、該加硫ゴムを構成するゴム組成物は、天然ゴムおよびポリブタジエンゴムからなり前記ポリブタジエンゴムを35質量部以上70質量部以下含むジエン系ゴム100質量部に対して、シリカおよびカーボンブラックを含む充填剤が55質量部以上80質量部以下配合され、前記シリカの配合量が前記充填剤の総量の10質量%以上50質量%以下であり、
前記加硫ゴムは20℃におけるtanδが0.18以上0.28以下であり、20℃におけるJIS-A硬度が66以上76以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
記ゴム組成物を構成している全ての成分に対する前記充填剤の体積分率が19%以上28%以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
記ゴム組成物を構成している全ての成分に対する前記シリカの体積分率が2%以上14%以下であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター領域内のすべての溝の総面積に対する前記センター領域内のラグ溝の総面積の割合が30%~60%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数のブロックの踏面における輪郭線をそれぞれタイヤ赤道に垂直な投影面に向かって投影した幅方向溝成分の総長さをLa、タイヤ赤道に平行な投影面に向かって投影した周方向溝成分の総長さをLbとし、且つ、正規内圧を充填して正規荷重の20%を負荷した際に路面に当接する範囲のタイヤ幅方向長さをTW′としたとき、これら長さが、40≦La/TW′≦50かつ65≦Lb/TW′≦75の関係を満たすことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
タイヤ赤道を中心とした前記センターブロックのタイヤ幅方向長さの10%の範囲内を赤道領域としたとき、前記赤道領域の総面積に対する前記赤道領域内のブロック踏面の面積の割合が30%~70%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記センターブロックの踏面にタイヤ幅方向に沿って延在して両端が前記周方向溝に開口する細溝が形成されたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として重荷重用空気入りタイヤのトレッド部に用いることを意図したタイヤ用ゴム組成部と、それを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、主として、排水性を確保したりウェット路面におけるトラクション性能(以下、ウェット性能という)を確保するためにトレッド面に多数の溝が形成されている。一方で、溝の本数を多くし過ぎると、陸部の剛性が低下して耐摩耗性が低下する傾向がある。そのため、従来の空気入りタイヤの中には、溝の配置や形状を工夫することにより、これらの相反する性能の向上を図っているものがある(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、溝の態様だけでウェット性能と耐摩耗性能との両立を図ることには限度があり、トレッド部を構成するタイヤ用ゴム組成物の特性によって、これら相反する性能を向上して、これら性能の両立を図るための対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017‐124773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ウェット性能と耐摩耗性能とを向上して、これら性能をバランスよく両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、トレッド部の表面にタイヤ周方向に沿って延在する複数本の周方向溝と、タイヤ幅方向に沿って延在する複数本のラグ溝とを備え、前記周方向溝と前記ラグ溝とによって複数のブロックが区画された空気入りタイヤであって、前記複数のブロックはタイヤ赤道上に配置された複数のセンターブロックがタイヤ全周に亘って配列されて構成されたセンターブロック列を含み、タイヤ赤道を中心としたトレッド展開幅の50%の範囲内をセンター領域としたとき、前記センター領域内のすべての溝の総面積に対するタイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックの間に位置するラグ溝の総面積の割合が20%~50%であり、前記トレッド部は加硫ゴムからなり、該加硫ゴムを構成するゴム組成物は、天然ゴムおよびポリブタジエンゴムからなり前記ポリブタジエンゴムを35質量部以上70質量部以下含むジエン系ゴム100質量部に対して、シリカおよびカーボンブラックを含む充填剤が55質量部以上80質量部以下配合され、前記シリカの配合量が前記充填剤の総量の10質量%以上50質量%以下であり、前記加硫ゴムは20℃におけるtanδが0.18以上0.28以下であり、20℃におけるJIS-A硬度が66以上76以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部に用いられるゴム組成物は、上述の配合であり、且つ、20℃におけるtanδ硬度が上述の範囲に設定されているため、ウェット性能と耐摩耗性能とを向上し、これら性能をバランスよく両立することができる。尚、本明細書において、20℃におけるtanδおよび20℃におけるJIS-A硬度は、前述のゴム組成物からなる加硫ゴムの物性である。具体的には、20℃におけるJIS-A硬度は、JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠して、20℃の条件でタイプAのデュロメータを用いて測定される硬度である。また、20℃におけるtanδは、東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメータを使用し、温度20℃の雰囲気中で、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定した値である。tanδおよび硬度はいずれも加硫された空気入りタイヤから採取したゴム片を用いて測定することができる。本発明の空気入りタイヤでは、トレッド部の表面にタイヤ周方向に沿って延在する複数本の周方向溝と、タイヤ幅方向に沿って延在する複数本のラグ溝とを備え、周方向溝とラグ溝とによって複数のブロックが区画され、複数のブロックはタイヤ赤道上に配置された複数のセンターブロックがタイヤ全周に亘って配列されて構成されたセンターブロック列を含み、タイヤ赤道を中心としたトレッド展開幅の50%の範囲内をセンター領域としたとき、センター領域内のすべての溝の総面積に対するタイヤ周方向に隣り合うセンターブロックの間に位置するラグ溝の総面積の割合が20%~50%であるため、ウェット性能に寄与するセンター領域内において、ウェット性能への影響が特に大きいセンターラグ溝と他の溝とバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。
【0007】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部(加硫ゴム)を構成するゴム組成物は、ゴム組成物中の全配合剤に対する充填剤の体積分率が19%以上28%以下であることが好ましい。また、ゴム組成物中の全配合剤に対するシリカの体積分率が2%以上14%以下であることが好ましい。
【0008】
上述のゴム組成物をトレッド部に用いた本発明の空気入りタイヤでは、トレッド部の表面にタイヤ周方向に沿って延在する複数本の周方向溝と、タイヤ幅方向に沿って延在する複数本のラグ溝とを備え、周方向溝とラグ溝とによって複数のブロックが区画され、複数のブロックはタイヤ赤道上に配置された複数のセンターブロックがタイヤ全周に亘って配列されて構成されたセンターブロック列を含み、タイヤ赤道を中心としたトレッド展開幅の50%の範囲内をセンター領域としたとき、センター領域内のすべての溝の総面積に対するタイヤ周方向に隣り合うセンターブロックの間に位置するラグ溝の総面積の割合が20%~50%であることが好ましい。これにより、ウェット性能に寄与するセンター領域内において、ウェット性能への影響が特に大きいセンターラグ溝と他の溝とバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。
【0009】
本発明の空気入りタイヤでは、センター領域内のすべての溝の総面積に対するセンター領域内のラグ溝の総面積の割合が30%~60%であることが好ましい。これにより、ウェット性能に寄与するセンター領域内において、周方向溝とラグ溝とのバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤでは、複数のブロックの踏面における輪郭線をそれぞれタイヤ赤道に垂直な投影面に向かって投影した幅方向溝成分の総長さをLa、タイヤ赤道に平行な投影面に向かって投影した周方向溝成分の総長さをLbとし、且つ、正規内圧を充填して正規荷重の20%を負荷した際に路面に当接する範囲のタイヤ幅方向長さをTW′としたとき、これら長さが、40≦La/TW′≦50かつ65≦Lb/TW′≦75の関係を満たすことが好ましい。これにより、低負荷状態における接地幅TW′とトレッド面全体の溝の幅方向成分と周方向成分とのバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤ赤道を中心としたセンターブロックのタイヤ幅方向長さの10%の範囲内を赤道領域としたとき、赤道領域の総面積に対する赤道領域内のブロック踏面の面積の割合が30%~70%であることが好ましい。これにより、ウェット性能に対する影響が大きい赤道領域内での溝と陸部のバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤでは、センターブロックの踏面にタイヤ幅方向に沿って延在して両端が周方向溝に開口する細溝が形成されたことが好ましい。これにより、ブロック剛性を著しく低下させることなく細溝の溝成分を追加することができ、耐摩耗性能を維持しながらウェット性能を向上することができる。
【0013】
尚、本発明において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤのトレッド部の一例を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の空気入りタイヤのトレッド部の別の例を模式的に示す正面図である。
図4】本発明のセンターブロックを拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、具体的には、天然ゴムとポリブタジエンゴムとの2種で構成される。ジエン系ゴムとして、天然ゴムとポリブタジエンゴムを用いることで、ゴム組成物の耐摩耗性を良好にすることができる。天然ゴムやポリブタジエンゴムとしては、空気入りタイヤのトレッド用ゴム組成物に通常用いられるものを使用するとよい。
【0017】
ポリブタジエンゴムは、ジエン系ゴム100質量部中に35質量部以上70質量部以下、好ましくは35質量部~55質量部が必ず含まれる。天然ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して好ましくは30質量部以上65質量部以下、より好ましくは45質量部~65質量部である。ポリブタジエンゴムの配合量が35質量部未満であると耐摩耗性が低下する。ポリブタジエンゴムの配合量が70質量部を超えるとウェット性能が低下する。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカおよびカーボンブラックを含む充填剤が必ず配合される。これら充填剤を配合することで、タイヤ用ゴム組成物の強度を高めることができる。充填剤の配合量は、上述のジエン系ゴム100質量部に対して、55質量部以上80質量部以下、好ましくは56質量部~70質量部である。この充填剤のうち、特にシリカの配合量は充填剤の総量の10質量%以上50質量%以下、好ましくは11質量%~33質量%である。このように充填剤中にシリカを適度な量だけ含むことで、耐摩耗性を向上させながらウェット性能を良好にすることができる。充填剤の配合量が55質量部未満であるとウェット性能が低下する。充填剤の配合量が80質量部を超えると耐摩耗性能が低下する。シリカの配合量が充填剤の総量の10質量%未満であると、ウェット性能が低下する。シリカの配合量が充填剤の総量の50質量%を超えると耐摩耗性能が低下する。
【0019】
シリカの配合量は、上述の充填剤の総量に対する比率を満たせばよいが、上述のジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは6質量部~30質量部、より好ましくは7質量部~23質量部にするとよい。
【0020】
シリカのCTAB吸着比表面積は、特に限定されないが、好ましくは140m2 /g~230m2 /g、より好ましくは150m2 /g~180m2 /gであるとよい。
【0021】
シリカとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。シリカは、市販されているものの中から適宜選択して使用することができる。また通常の製造方法により得られたシリカを使用することができる。
【0022】
上記のように充填剤はカーボンブラックを必ず含むが、カーボンブラックの配合量は充填剤の総量の好ましくは70質量%~94質量%、より好ましくは77質量%~93質量%であるとよい。また、上述のジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは35質量部~65質量部、より好ましくは45質量部~55質量部配合するとよい。このように充填剤中にカーボンブラックを適度な量だけ含むことで、ゴム組成物の強度を高くし耐摩耗性を高くすることができる。
【0023】
カーボンブラックとしては、ASTM D1765により分類された等級が、例えばSAF、ISAF級であるカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAは、特に限定されないが、好ましくは90m2 /g~150m2 /g、より好ましくは110m2 /g~145m2 /gであるとよい。
【0024】
更に、本発明では、ゴム組成物中の全配合剤に対する上述の充填剤の体積分率が好ましくは19%以上28%以下、より好ましくは20%~25%であるとよい。このように充填剤の体積分率を設定することで、耐摩耗性を良好にすることができる。充填剤の体積分率が19%未満であるとウェット性能および耐摩耗性能を向上する効果が限定的になる。充填剤の体積分率が28%を超えると耐摩耗性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。
【0025】
また、ゴム組成物中の全配合剤に対するシリカの体積分率が好ましくは2%以上14%以下、より好ましくは3%~10%であるとよい。このようにシリカの体積分率を設定することで、耐摩耗性を向上乃至は維持しながら、ウェット性能を良好にすることができる。シリカの体積分率が2%未満であるとウェット性能および耐摩耗性能を向上する効果が限定的になる。シリカの体積分率が14%を超えると耐摩耗性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。尚、充填剤およびシリカの体積分率は、カーボンおよびシリカのコンパウンド中の配合重量をそれぞれの原料比重で割る事により求められる体積をAとし、コンパウンド総重量をコンパウンド比重で割って求められるコンパウンド体積をBとしたとき、体積Bに対する体積Aの割合(A/B)として求めることができる。
【0026】
本発明のトレッド用ゴム組成物では、シリカの分散性を向上しジエン系ゴムとの補強性をより高くするために、シリカと共にシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対して好ましくは6質量%~16質量%、より好ましくは8質量%~12質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカの配合量の6質量%未満であると、シリカの分散性を向上する効果が充分に得られない。また、シランカップリング剤が16質量%を超えると、シランカップリング剤同士が重合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、シリカおよびカーボンブラック以外の充填材、加硫剤または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、一般的に空気入りタイヤ用ゴム組成物に使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0028】
上述の配合で構成された本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更に、20℃におけるtanδが0.18以上0.28以下、好ましくは0.19~0.24であり、20℃におけるJIS-A硬度が66以上76以下、好ましくは67~74である。このような物性を有することで、耐摩耗性能とウェット性能を良好にすることができる。20℃におけるtanδが0.18未満であると耐摩耗性能とウェット性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。20℃におけるtanδが0.28を超えると耐摩耗性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。20℃におけるJIS-A硬度が66未満であると耐摩耗性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。20℃におけるJIS-A硬度が76を超えると耐摩耗性能を向上する効果を充分に確保することが難しくなる。
【0029】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記の配合および物性によって、ウェット性能と耐摩耗性能を向上し、これら性能をバランスよく両立することができる。そのため、空気入りタイヤ(特に、重荷重用空気入りタイヤ)のトレッド部に好適に用いることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物を適用する空気入りタイヤの構造は特に限定されないが、溝の形状や配置によって、ウェット性能と耐摩耗性能の両立を図っているタイヤであれば、ゴム組成物による性能とタイヤ構造による性能との相乗効果により、より高次元でウェット性能と耐摩耗性能を両立することが可能にある。例えば、図1図3に示す空気入りタイヤは、後述のようにウェット性能および耐摩耗性能に優れるものであり、本発明のタイヤ用ゴム組成物を好適に用いることができる。
【0030】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。子午線断面図に描写された他のタイヤ構成部材についても、特に断りがない限り、いずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0031】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では4層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。図1のタイヤでは採用されていないが、本発明では、ベルト層7の外周側に、更にベルト補強層(不図示)を設けることもできる。ベルト補強層を設ける場合、ベルト補強層は、例えばタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含み、この有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定することができる。
【0032】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層R1が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層R2が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層R3が配されている。トレッドゴム層R1は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層およびアンダートレッドゴム層)をタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、これらゴム層のうちトレッドゴム層R1に用いられる。
【0033】
図2に示すように、トレッド部1の外表面には、タイヤ周方向に延在する複数本の周方向溝10と、タイヤ幅方向に延在する複数本のラグ溝20とが設けられ、これら周方向溝10およびラグ溝20によって複数のブロック30が区画されている。
【0034】
周方向溝10としては、タイヤ赤道面CLの両側に配設された一対の内側周方向溝11と、この一対の内側周方向溝11のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配設された一対の外側周方向溝12とが設けられている。これら内側周方向溝11と外側周方向溝12とは、タイヤ周方向に沿ってジグザグ状に屈曲しながらタイヤ全周に亘って延在している。
【0035】
尚、内側周方向溝11は、溝幅が例えば6mm以上15mm以下、溝深さが例えば10mm以上18mm以下であり、外側周方向溝12は、溝幅が例えば4mm以上12mm以下、溝深さが例えば6mm以上18mm以下である。また、内側周方向溝11の溝幅W1は外側周方向溝12の溝幅W2よりも大きく設定されており、溝幅の比W2/W1は例えば0.5~0.9の関係を満たしている。
【0036】
ラグ溝20としては、一対の内側周方向溝11どうしの間に設けられて、両端がそれぞれ内側周方向溝11に連通するセンターラグ溝21と、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向溝11と外側周方向溝12との間に設けられて、一端が内側周方向溝11に連通し、他端が外側周方向溝12と交差して外側周方向溝12のタイヤ幅方向外側の陸部内で終端する中間ラグ溝22と、外側周方向溝12のタイヤ幅方向外側に設けられて、一端が外側周方向溝12と交差して内側周方向溝11と外側周方向溝12との間の陸部内で終端し、他端が接地端に向かって開放されるショルダーラグ溝23が設けられる。これらセンターラグ溝21、中間ラグ溝22、ショルダーラグ溝23は、それぞれ複数本ずつ設けられ、タイヤ周方向に間隔をおいて配列されている。
【0037】
尚、センターラグ溝21は、溝幅が例えば4mm以上9mm以下、溝深さが例えば9mm以上18mm以下であり、中間ラグ溝22は、溝幅が例えば4mm以上9mm以下、溝深さが例えば2mm以上16mm以下であり、ショルダーラグ溝23は、溝幅が例えば4mm以上16mm以下、溝深さが例えば2mm以上16mm以下である。
【0038】
センターラグ溝21と中間ラグ溝22とは、共通の内側周方向溝11に接続されるが、内側周方向溝11に接続される部分のタイヤ周方向における位置は、センターラグ溝21と中間ラグ溝22とで異なっている。同様に、中間ラグ溝22とショルダーラグ溝23とは、共通の外側周方向溝12に接続されるが、外側周方向溝12に接続される部分のタイヤ周方向における位置は、中間ラグ溝22とショルダーラグ溝23とで異なっている。
【0039】
トレッド部1に形成されるブロック30は、一対の内側周方向溝11とタイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝21とによって区画されるセンターブロック31と、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向溝11および外側周方向溝12とタイヤ周方向に隣り合う中間ラグ溝22とによって区画される中間ブロック32と、外側周方向溝12のタイヤ幅方向外側でタイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝23によって区画されるショルダーブロック33とを含む。これらセンターブロック31、中間ブロック32、ショルダーブロック33はそれぞれタイヤ周方向に沿って配列されている。
【0040】
センターラグ溝21は、複数の位置で屈曲することにより、タイヤ周方向に延びる周方向延在部21aと、タイヤ幅方向に延びる幅方向延在部21bとを有している。具体的には、1つのセンターラグ溝21は、一端が内側周方向溝11に連通する一対の幅方向延在部21bと、これら一対の幅方向延在部21bの他端どうしを連結する周方向延在部21aとで構成される。周方向延在部21aは、少なくとも一部がタイヤ赤道CL上に存在し、タイヤ周方向に対して例えば0°以上15°以下の範囲内で傾斜している。
【0041】
センターブロック31の踏面には、図3の例のように、タイヤ幅方向に沿って延在して両端が周方向溝に開口する細溝40を設けることもできる。細溝40は、上述の各種ラグ溝20よりも溝幅および溝深さが小さい溝であり、溝幅を例えば0.5mm~5.0mm、溝深さを例えば0.5mm~5.0mmにすることができる。細溝40は、図示のように複数の位置で屈曲させることもできる。このような細溝40を設けることで、ブロック剛性を著しく減少させることなく溝成分を増加することができるので、耐摩耗性能を維持しながらウェット性能を高めることができる。
【0042】
このような構造において、タイヤ赤道を中心としたトレッド展開幅TWの50%の範囲内をセンター領域としたとき、センター領域内のすべての溝(内側周方向溝11、センターラグ溝21、中間ラグ溝22の一部、細溝40)の総面積A1に対するタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック31の間に位置するラグ溝(センターラグ溝21)の総面積A2の割合(A2/A1×100%)が好ましくは20%~50%、より好ましくは26%~40%であるとよい。このように溝面積を設定することで、ウェット性能に寄与するセンター領域内において、ウェット性能への影響が特に大きいセンターラグ溝21と他の溝とバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。上述の割合(A2/A1×100%)が20%未満であるとトレッド構造によるウェット性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。上述の割合(A2/A1×100%)が50%を超えるとであるとトレッド構造による耐摩耗性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。
【0043】
更に、センター領域内のすべての溝(内側周方向溝11、センターラグ溝21、中間ラグ溝22の一部、細溝40)の総面積A1に対するセンター領域内のラグ溝(センターラグ溝21、中間ラグ溝22の一部)の総面積A3の割合(A3/A1×100%)が好ましくは30%~60%、より好ましくは37%~51%であるとよい。このように溝面積を設定することで、ウェット性能に寄与するセンター領域内において、周方向溝10とラグ溝20とのバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。上述の割合(A3/A1×100%)が30%未満であるとトレッド構造によるウェット性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。上述の割合(A2/A1×100%)が60%を超えるとであるとトレッド構造による耐摩耗性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。
【0044】
上述のトレッド部1の構造において、ブロック30(センターブロック31、中間ブロック32、ショルダーブロック33)の踏面における輪郭線をそれぞれタイヤ赤道CLに垂直な投影面に向かって投影した幅方向溝成分の総長さをLa、タイヤ赤道CLに平行な投影面に向かって投影した周方向溝成分の総長さをLbとし、且つ、正規内圧を充填して正規荷重の20%を負荷した際に路面に当接する範囲のタイヤ幅方向長さをTW′としたとき、これら長さが、40≦La/TW′≦50かつ65≦Lb/TW′≦75の関係を満たすことが好ましい。これにより、低負荷状態における接地幅TW′と、トレッド面全体の溝形状(各溝の幅方向成分と周方向成分とのバランス)が良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。La/TW′が40未満であるとトレッド構造によるウェット性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。La/TW′が50を超えるとであるとトレッド構造による耐摩耗性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。Lb/TW′が65未満であるとトレッド構造によるウェット性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。Lb/TW′が75を超えるとであるとトレッド構造による耐摩耗性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。
【0045】
尚、長さLa,Lbは、図4に示すように、ブロック30の踏面における輪郭線(各辺)について、タイヤ赤道CLに垂直な投影面とタイヤ赤道CLに平行な投影面に向かって投影し、幅方向成分と周方向成分に分解し、それぞれの幅方向成分の長さ(La′)と周方向成分の長さ(Lb′)とを求め、それぞれを合計して算出する(La:La′の総和、Lb:Lb′の総和)。図4では、センターブロック31を例として説明したが、他のブロック30(中間ブロック32、ショルダーブロック33)についても同様の方法で各成分を求めるものとする。
【0046】
上述のトレッド部1の構造において、タイヤ赤道CLを中心としたセンターブロック31のタイヤ幅方向長さwの10%の範囲内を赤道領域としたとき、赤道領域の総面積A4に対する赤道領域内のブロック踏面(陸部)の面積A5の割合(A5/A4×100%)が好ましくは30%~70%、より好ましくは35%~50%であるとよい。このように溝面積を設定することで、ウェット性能に対する影響が大きい赤道領域内での溝と陸部のバランスが良好になり、耐摩耗性能とウェット性能とを高度に両立するには有利になる。上述の割合(A5/A4×100%)が30%未満であるとトレッド構造によるウェット性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。上述の割合(A5/A4×100%)が70%を超えるとであるとトレッド構造による耐摩耗性能の更なる向上が充分に見込めなくなる。
【0047】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0048】
表1~3に示す配合からなる30種類のトレッド用ゴム組成物(比較例1~6、実施例1~24、但し実施例1,5,20,21,23は参考例である)を、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.7Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを同じ1.7Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合してタイヤ用ゴム組成物を調製した。
【0049】
表1~3には、各トレッド用ゴム組成物から得た加硫ゴムについて、東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメータを使用し、温度20℃の雰囲気中で、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定した20℃におけるtanδの値と、JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠して、20℃の条件でタイプAのデュロメータを用いて測定した硬度の値を併記した。
【0050】
更に、各トレッド用ゴム組成物をトレッド部に用いて、タイヤサイズが275/80R22.5であり、図1に示す基本構造を有し、図2に示すトレッドパターンを基調とし、センター領域内のすべての溝の総面積に対するタイヤ周方向に隣り合うセンターブロックの間に位置するラグ溝の総面積の割合(A2/A1×100%)、センター領域内のすべての溝の総面積に対するセンター領域内のラグ溝の総面積の割合(A3/A1×100%)、各ブロックの踏面における輪郭線をそれぞれタイヤ赤道に垂直な投影面に向かって投影した幅方向溝成分の総長さLaとタイヤ赤道に平行な投影面に向かって投影した周方向溝成分の総長さLbと正規内圧を充填して正規荷重の20%を負荷した際に路面に当接する範囲のタイヤ幅方向長さTW′との関係La/TW′およびLb/TW′、赤道領域の総面積に対する赤道領域内のブロック踏面の面積の割合(A5/A4×100%)を表1~3のように設定した空気入りタイヤを作製し、下記に示す方法により、ウェット性能と耐摩耗性能の評価を行った。
【0051】
ウェット性能
各試験タイヤをリムサイズ151/148Jのホイールに組み付けて、空気圧を900kPaとして、排気量12770ccの試験車両(トラック)に装着し、トラクターヘッドの駆動軸に付加荷重6.2kNをかけ、低μ路面で水深1mmのウェット路面にてトラクションコントロール作動無し(デフロック)条件で、停止状態からフルアクセルで加速をし、速度6km/hから21km/hの平均タイヤスリップ率を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、比較例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスリップ率が小さく、ウェット路面におけるトラクション性(ウェット性能)に優れることを意味する。
【0052】
耐摩耗性能
各試験タイヤをリムサイズ151/148Jのホイールに組み付けて、空気圧を900kPaとして、一般道と高速道路との比率が15:85に設定された一定区間を走行する同一車種のトラックに装着し、同一走行距離後の残溝(溝深さ)を測定した。評価結果は、比較例1の値を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど残溝(溝深さ)が大きく、耐摩耗性能に優れることを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1~3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・天然ゴム:STR20
・ブタジエンゴム:日本ゼオン社製NIPOL BR 1220
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN110
・シリカ:EVONIK社製ULTRASIL VN3GR
・シランカップリング剤:デグサ社製Si69
・老化防止剤:住友化学社製アンチゲン6C
・ワックス:大内新興化学社製サンノック
・亜鉛華:正同化学社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸
・硫黄:鶴見化学工業社製油入微粉硫黄
・加硫促進剤:FLEXSYS社製SANTOCURE TBBS
【0057】
表1~3から明らかなように、実施例1~24の空気入りタイヤは比較例1の空気入りタイヤに対して、ウェット性能および耐摩耗性能を向上し、これら性能をバランスよく両立した。
【0058】
一方、比較例2の空気入りタイヤは、タイヤ用ゴム組成物がシリカを含まないため、ウェット性能が悪化した。比較例3の空気入りタイヤは、タイヤ用ゴム組成物における充填剤の配合量が少ないため、ウェット性能が悪化した。比較例4の空気入りタイヤは、タイヤ用ゴム組成物におけるブタジエンゴムの配合量が多すぎるため、ウェット性能が悪化した。比較例5の空気入りタイヤは、タイヤ用ゴム組成物において充填剤の総量に対するシリカの配合量の比率が多すぎるため、耐摩耗性能が悪化した。比較例6の空気入りタイヤは、タイヤ用ゴム組成物において充填剤の配合量が多すぎるため、耐摩耗性が悪化した。
【符号の説明】
【0059】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
10 周方向溝
11 内側周方向溝
12 外側周方向溝
20 ラグ溝
21 センターラグ溝
22 中間ラグ溝
23 ショルダーラグ溝
30 ブロック
31 センターブロック
32 中間ブロック
33 ショルダーブロック
40 細溝
R1 トレッドゴム層
R2 サイドゴム層
R3 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道
図1
図2
図3
図4