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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/30 20060101AFI20230927BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230927BHJP
   H01Q 5/357 20150101ALI20230927BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01Q9/30
H01Q1/32 Z
H01Q5/357
H01Q1/22 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019148735
(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公開番号】P2021034750
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆太郎
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170622(JP,A)
【文献】特開2009-278192(JP,A)
【文献】特開2015-133692(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0117111(US,A1)
【文献】国際公開第2004/047223(WO,A1)
【文献】特開2007-174017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/30
H01Q 1/32
H01Q 5/357
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量素子と、
一端が給電点に接続され他端が前記容量素子に接続された第1のコイルと、
一端が前記容量素子に接続された第2のコイルと、
一端が前記第2のコイルに接続され他端が接地点に接続された1つの容量部と、を備え
前記1つの容量部は、第1周波数帯では容量性リアクタンスが大となり、第2周波数帯では容量性リアクタンスが小となる容量を有するアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、分布定数のコイル又は集中定数のコイルのチップ部品若しくはリード部品である請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記容量部は、分布定数の容量部又はコンデンサのチップ部品若しくはリード部品である請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記給電点及び前記接地点を有する本体基板部と、
前記本体基板部に立設され、前記容量素子に電気的に接続され、前記第1のコイル及び前記第2のコイルを有するアンテナ基板部と、を備える請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記容量素子を支持する支持部を備える請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記本体基板部及び前記支持部が設置されたアンテナベース部と、
前記アンテナベース部を車両に取り付ける車両取付部と、
シャークフィン形状のアンテナカバー部と、を備える請求項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のルーフに設置される車載のアンテナ装置として、AM(Amplitude Modulation)ラジオ放送(周波数帯は、MW(Medium Wave:中波)(LW(Long Wave:長波))帯)/FM(Frequency Modulation)ラジオ放送(周波数帯は、VHF(Very High Frequency:超短波)帯)などの無線通信方式(規格)の電波を受信可能なアンテナ装置が知られている。このアンテナ装置は、車両のルーフの設置面に形成された固定用のルーフ穴(固定用開口)に、アンテナ装置の底面に設けられた固定部を挿入し、適当な方法により固定される。
【0003】
シャークフィン形状のシャークフィンアンテナ装置をはじめとする車載アンテナ装置は、近年低背化の要求が強まってきている。しかし、モノポールタイプのアンテナを低背化すると、放射に寄与する部分が物理的に短くなるため、アンテナ利得が低下するというデメリットが生じてしまう。このため、低背化することによって低下してしまうアンテナ利得を増加させるための手法として、アンテナを折り返し型構造とする手法が使われることがある。
【0004】
この折り返し型構造は、モノポールアンテナタイプであれば、コイルを2つ以上用いて、一方を給電、もう一方を接地(短絡)させるのが一般的ではある。例えば、AMラジオ放送(MW(LW)帯)受信用の外側板と、第1コイルの一端に給電点を接続して他端に容量板(容量素子)の一端部を接続し、第2コイルの一端に容量板の他端部を接続して他端を接地するFMラジオ放送(VHF帯)の受信用の折り返し型構造のモノポールアンテナと、を備えるアンテナ装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、MW(LW)帯とVHF帯との信号受信用のアンテナ装置として、コイルと、容量板とを備え、コイルの一端に給電点を接続して他端に容量板の一端部を接続し、容量板の他端部を開放端としたモノポールアンテナも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-170622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の折り返し型構造のモノポールアンテナのアンテナ装置では、車載アンテナ装置に求められるような、MW(LW)帯とVHF帯との複合アンテナとする場合、接地することでMW(LW)帯が受信しづらく、別にMW(LW)帯用の外側板を設けて、複合アンテナとして機能させており、構造が複雑となる。
【0008】
また、上記開放端を有するモノポールアンテナでは、折り返し方式を構成することができないため、VHF帯において、希望する周波数にアンテナの共振点を合わせることができない。
【0009】
さらに、上記折り返し型構造のモノポールアンテナのアンテナ装置では、容量板を大型化する必要があり、シャークフィンアンテナ装置といったデザイン性を重視する形状には不適であった。
【0010】
本発明の課題は、アンテナ装置において、複数の周波数帯の受信特性を良好にし、構造を簡単かつ小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のアンテナ装置は、
容量素子と、
一端が給電点に接続され他端が前記容量素子に接続された第1のコイルと、
一端が前記容量素子に接続された第2のコイルと、
一端が前記第2のコイルに接続され他端が接地点に接続された1つの容量部と、を備え
前記1つの容量部は、第1周波数帯では容量性リアクタンスが大となり、第1周波数帯では容量性リアクタンスが小となる容量を有する
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のアンテナ装置において、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、分布定数のコイル又は集中定数のコイルのチップ部品若しくはリード部品である。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記容量部は、分布定数の容量部又はコンデンサのチップ部品若しくはリード部品である。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記給電点及び前記接地点を有する本体基板部と、
前記本体基板部に立設され、前記容量素子に電気的に接続され、前記第1のコイル及び前記第2のコイルを有するアンテナ基板部と、を備える。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のアンテナ装置において、
前記容量素子を支持する支持部を備える。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のアンテナ装置において、
前記本体基板部及び前記支持部が設置されたアンテナベース部と、
前記アンテナベース部を車両に取り付ける車両取付部と、
シャークフィン形状のアンテナカバー部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アンテナ装置において、複数の周波数帯の受信特性を良好にし、構造を簡単かつ小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態のアンテナ装置を示す外観斜視図である。
図2】アンテナ装置を示す分解斜視図である。
図3】容量素子の展開図である。
図4】アンテナカバー部内のアンテナ装置を示す組立斜視図である。
図5】アンテナの回路図である。
図6】(a)は、MW帯におけるアンテナの容量部の容量に対する容量性リアクタンスを示す図である。(b)は、VHF帯におけるアンテナの容量部の容量に対する容量性リアクタンスを示す図である。
図7】(a)は、容量部の容量を変更したアンテナ装置の周波数に対するAMゲインを示す図である。(b)は、容量部の容量を変更したアンテナ装置の周波数に対するFMゲインを示す図である。
図8】(a)は、車両の前方の各種アンテナ装置の取り付け位置を示す斜視図である。(b)は、車両の後方の各種アンテナ装置の取り付け位置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0021】
図1図7を参照して、本発明に係る実施の形態のアンテナ装置1を説明する。図1は、本実施の形態のアンテナ装置1を示す外観斜視図である。図2は、アンテナ装置1を示す分解斜視図である。図3は、容量素子50の展開図である。図4は、アンテナカバー部10内のアンテナ装置1を示す組立斜視図である。図5は、アンテナAT1の回路図である。
【0022】
本実施の形態のアンテナ装置1は、自動車などの車両のルーフの設置面の固定用開口(図示略)に取り付けられるいわゆるシャークフィンアンテナの車載アンテナ装置であって、AMラジオ放送(周波数帯:MW(LW)帯)/FMラジオ放送(周波数帯:VHF帯)を受信する複合アンテナ装置である。
【0023】
図1に示すように、アンテナ装置1は、アンテナカバー部10を備え、アンテナカバー部10部内にアンテナの本体部分などを収納する構造を有する。アンテナカバー部10は、後述するアンテナベース部20に取り付けられ、前方から後方に向けて流線型状に隆起して形成され、車両の外観が損なわれないように、低姿勢のシャークフィン形状に形成されている。アンテナカバー部10は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などの電波透過性及び絶縁性を有する合成樹脂などからなり、下面が開放された成形品とされる。
【0024】
図2のアンテナ装置1の分解図に示すように、アンテナ装置1は、アンテナカバー部10(図2では図示略)と、アンテナベース部20と、基板部30と、支持部としてのインナーカバー部40と、容量素子50と、パッキン部60と、車両取付部としての車両取付具70と、を備える。
【0025】
アンテナカバー部10の下面開口は、アンテナベース部20などが取り付けられたときに、基板部30、インナーカバー部40、容量素子50などの収納空間が形成されるようになっている。
【0026】
アンテナベース部20は、アンテナ装置1の土台部であり、基板部30を支持するとともに、車両の設置面の固定用開口に取り付けられる構造を有する。アンテナベース部20は、平板部21を有する。平板部21は、アルミ、亜鉛などのダイカストで構成された金属製の略平板形状のベース部であり、螺子穴21h1,21h2,21h3、穴部21h4、凸部(図示略)を有する。なお、平板部21は、鋼板などの板金で構成したものでもよい。
【0027】
螺子穴21h1は、貫通された雌螺子孔であり、車両取付具70の雄螺子部が螺合され、車両取付具70が取り付けられる。螺子穴21h2は、貫通されていない雌螺子穴であり、雄螺子(ビス)である螺子S1が螺合され、インナーカバー部40が取り付けられる。螺子穴21h3は、貫通されていない雌螺子穴であり、雄螺子(ビス)である螺子S2が螺合され、基板部30が取り付けられる。凸部(図示略)は、平板部21の下側に設けられ、車両取付具70が取り付けられる。
【0028】
基板部30は、本体基板部としての本体基板31と、ケーブルガイド部32と、接続端子33a,33b,33c,33dと、アンテナ基板部としてのアンテナ基板34と、第1、第2のコイルとしてのアンテナコイル35a,35bと、接続端子36a,36bと、を有する。本体基板31は、平面が水平方向に配置されたPCB(Printed circuit board)であり、後述する容量部311などの電子部品が実装され回路パターンが形成されており、上面に接続端子33a,33b,33c,33dが実装され、下面にケーブルガイド部32が取り付けられ、複数の穴部31hが形成されている。
【0029】
穴部31hは、貫通された孔であり、螺子S2が貫通される。穴部31hを介する螺子穴21h3への螺子S2の螺合により、基板部30がアンテナベース部20に固定取り付けされる。また、容量部311、アンテナコイル35a,35b、容量素子50などにより、AMラジオ放送/FMラジオ放送を受信する折り返し型構造のモノポールアンテナのアンテナAT1が構成される。
【0030】
接続端子33a,33b,33c,33dは、M字状の金属製の接続端子であり、アンテナ基板34を挟み込んで支持接続する。接続端子33aは、本体基板31の給電側の給電点P(後述)を含む回路パターンの端子に電気的に接続されており、アンテナ基板34の接続により、アンテナ基板34のアンテナコイル35aに電気的に接続された回路パターンの端子に電気的に接続される。接続端子33bは、本体基板31の接地側の容量部311、接地点G(後述)を含む回路パターンの端子に電気的に接続されており、アンテナ基板34の接続により、アンテナ基板34のアンテナコイル35bに電気的に接続された回路パターンの端子に電気的に接続される。なお、接続端子33aが、接地側の回路パターンの端子に電気的に接続され、接続端子33bが、給電側の回路パターンの端子に電気的に接続される構成としてもよい。
【0031】
アンテナ基板34は、本体基板31上に立設され、平面が垂直方向に配置されるPCBであり、アンテナコイル35a,35bを支持するとともに、アンテナコイル35a,35bに電気的に接続された回路パターンが形成され、接続端子33a,33b,36a,36b用の端子を有する。
【0032】
アンテナコイル35a,35bは、エナメル被覆銅線や、ニッケル被覆銅線などで構成された巻回導線による分布定数のコイルである。なお、アンテナコイル35a,35bは、アンテナ基板34に実装された集中定数のコイル(インダクタ)のチップ部品、リード部品などとして構成してもよい。
【0033】
接続端子36a,36bは、M字状の金属製の接続端子であり、アンテナ基板34を挟み込んで固定接続する。接続端子36aは、雄螺子(ビス)である螺子S3用の穴部を有し、アンテナ基板34の接続により、アンテナ基板34のアンテナコイル35aに電気的に接続された回路パターンの端子に電気的に接続される。接続端子36bは、螺子S3用の穴部を有し、アンテナ基板34の接続により、アンテナ基板34のアンテナコイル35bに電気的に接続された回路パターンの端子に電気的に接続される。
【0034】
インナーカバー部40は、アンテナカバー部10の内側に配置され、基板部30を収納するとともに、容量素子50を固定的に支持する固定ホルダー部である。容量素子50に対するアンテナ基板34(接続端子36a,36b)の接続だけでは、アンテナベース部20に対する容量素子50の固定が弱いため、インナーカバー部40で容量素子50を支持している。
【0035】
インナーカバー部40は、ドーム部41、平板部42を有し、螺子穴部41a,41bなどの金属部品と樹脂とを一体成型した構成を有する。ドーム部41は、耐熱性のある絶縁性の樹脂からなり、アンテナ基板34などを内側に収納するカバー部であり、螺子穴部41a,41bを有する。この耐熱性のある絶縁性の樹脂は、例えば、PC(PolyCarbonate:ポリカーボネート)、PC/PET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)の混合材料、PC/ABSの混合材料である。
【0036】
螺子穴部41aは、軸方向が垂直方向に延在する金属製の雌螺子部であり、接続端子36aの穴部を介して螺子S3が螺合され、容量素子50の穴部51aを介して雄螺子(ビス)である螺子S4が螺合される。螺子穴部41bは、軸方向が垂直方向に延在する金属製の雌螺子部であり、接続端子36bの穴部を介して螺子S3が螺合され、容量素子50の穴部51bを介して螺子S4が螺合される。
【0037】
螺子S3が接続端子36a,36bの穴部を介して螺子穴部41a,41bにそれぞれ螺合され、接続端子36a,36bがアンテナ基板34に接続されることにより、インナーカバー部40が基板部30に固定的に取り付けられる。
【0038】
平板部42は、ドーム部41と同様の樹脂からなり、本体基板31などを内側に収納するカバー部であり、複数の穴部42hを有する。螺子S1が穴部42hを介して螺子穴21h2に螺合されることにより、インナーカバー部40がアンテナベース部20に固定的に取り付けられる。
【0039】
容量素子50は、容量板部51を有する。図3に示すように、容量板部51は、ブリキなどの金属製の容量板(金属板)であり、穴部51a,51bを有する。なお、容量板部51は、金属板に限定されるものではなく、基板、導電樹脂などで構成してもよい。導電樹脂は、樹脂の高分子化合物自体が導電性を示すものや、金属や炭素を微粒子にして樹脂に混合して導電性を与えたものである。
【0040】
図3に示す容量板部51を複数箇所で折り曲げることにより、図2に示す立体的な形状に構成され、穴部51aと穴部51bとの間に電流経路を有する容量板として機能する。
【0041】
パッキン部60は、アンテナ装置1を車両のルーフに取り付けた場合に、外部からの水、塵などがアンテナ装置1及び車両内部に侵入することを防ぐ部材であり、パッキン61,62を有する。パッキン61は、発泡ウレタンなどの弾性体製のパッキンであり、アンテナベース部20とインナーカバー部40との間に配置され、挟まれて圧縮されることにより、防水、防塵の機能を実現する。パッキン62は、発泡ウレタンなどの弾性体製のパッキンであり、アンテナベース部20とルーフの設置面との間に配置され、挟まれて圧縮されることにより、防水、防塵の機能を実現する。
【0042】
車両取付具70は、例えば金属製であり、雄螺子が形成された雄螺子部と、取付時に車両の設置面及びアンテナベース部20の凸部に接触する脚部と、を有する。車両取付具70の雄螺子部をルーフの固定用開口に挿入して、パッキン62を挟んで螺子穴21h1に締結することで、アンテナ装置1を車両のルーフの設置面に固定設置する。
【0043】
図3に示す車両取付具70を除く各部品を組み立てることにより、図4に示すように、組み立て後のアンテナ装置1が構成される。ただし、図4においては、アンテナカバー部10及びインナーカバー部40の図示を省略している。
【0044】
図5に示すように、アンテナAT1において、アンテナコイル35aの一端に本体基板31の給電点Pを接続して他端に容量素子50の容量板部51の一端の穴部51aを接続し、アンテナコイル35bの一端に容量板部51の他端の穴部51bを接続して他端を容量部311の一端に接続している。容量部311の他端は、本体基板31の接地点Gに接続(接地、短絡)されている。容量部311は、集中定数のコンデンサのチップ部品やリード部品で構成するものとする。なお、容量部311は、集中定数のコンデンサに限定されるものではなく、分布定数の容量部(本体基板31のスリットなど)として構成してもよい。
【0045】
このように、アンテナAT1では、MW(LW)帯とVHF帯との複合アンテナを容量部311を用いることで実現する。
【0046】
つぎに、図6(a)、図6(b)を参照して、アンテナAT1の動作を説明する。図6(a)は、MW帯におけるアンテナAT1の容量部311の容量に対する容量性リアクタンスを示す図である。図6(b)は、VHF帯におけるアンテナAT1の容量部311の容量に対する容量性リアクタンスを示す図である。
【0047】
アンテナAT1では、アンテナコイル35bを接地(短絡)させる際、容量部311を介して接続をさせることで容量素子50を大型化せずとも、MW(LW)帯の信号を効率よく受信することができる。例えば、容量部311の容量容量性リアクタンスとの関係は反比例の関係にあり、容量部311の容量が大きくなればなるほど容量性リアクタンス分が小さくなる。
【0048】
また、容量部311の容量と容量性リアクタンスとの関係は、周波数にも依存しており、次式(1)に示すように、周波数が高ければ高いほどより小さな容量部311の容量容量性リアクタンス分が小さくなる。
【数1】
ただし、X:容量性リアクタンス[Ω]、f:周波数[Hz]、C:容量[F]である。
【0049】
図6(a)に、アンテナAT1のMW(LW)帯(1[MHz])における容量部311の容量[pF]に対す容量性リアクタンス[Ω]を示す。図6(b)に、アンテナAT1のVHF帯(98[MHz])における容量部311の容量[pF]に対す容量性リアクタンス[Ω]を示す。図6(a)、図6(b)に示すように、MW(LW)帯とVHF帯との複合アンテナとしてのアンテナAT1において、MW(LW)帯では容量性リアクタンスが大となり、VHF帯では容量性リアクタンスが小となる容量の容量部311を用いることで、アンテナAT1がMW(LW)帯では開放端のモノポールアンテナとして動作し、アンテナAT1がVHF帯では折り返し型構造のモノポールアンテナとして動作させることが可能となる。
【0050】
ついで、図7(a)、図7(b)を参照して、アンテナ装置1のアンテナ特性を説明する。図7(a)は、容量部311の容量を変更したアンテナ装置1の周波数に対するAMゲインを示す図である。図7(b)は、容量部311の容量を変更したアンテナ装置1の周波数に対するFMゲインを示す図である。
【0051】
アンテナAT1の構成により、アンテナ装置1のMW(LW)帯の信号の受信効率の向上が見込まれる。図7(a)は、アンテナ装置1において、接地させるアンテナコイル35bと接地点Gとの間の容量部311の有無及び定数(容量性リアクタンス)の違いにより、周波数[kHz]に対するMW(LW)帯の受信レベルとしてのAMゲインを示したものである。容量部311がない場合を、開放端(N.M.:No Mount)とした。
【0052】
図7(a)によると、MW(LW)帯においては、完全に開放端(N.M.)にした場合が一番受信レベルが高く、容量部311の定数を大きくするにつれ、受信レベルが下がっていくことがわかる。また、容量部311を介さず接地させた場合(0[Ω])の受信レベルが最低になっていることがわかる。
【0053】
これに対して、図7(b)は、アンテナ装置1において、接地させるアンテナコイル35bと接地点Gとの間の容量部311の有無及び定数(容量性リアクタンス)の違いにより、周波数[MHz]に対するVHF帯の受信レベルとしてのFMゲインを示したものである。
【0054】
図7(b)によると、VHF帯においては、開放端(N.M.)にした場合、折り返し型構造を構成することができなくなるため、希望する周波数にアンテナ装置1の共振点を合わせることができない。容量部311を介してあるいは介さず(0[Ω])で接地させた場合のみ折り返し型構造が成立し、アンテナコイル35bのインダクタンスを介する容量部311によりアンテナ装置1の共振点は変動するものの、ほぼ同程度の受信レベルを有することが分かる。
【0055】
以上、本実施の形態によれば、アンテナ装置1のアンテナAT1は、容量素子50と、一端が給電点Pに接続され他端が容量素子50に接続されたアンテナコイル35aと、一端が容量素子50に接続されたアンテナコイル35bと、一端がアンテナコイル35bに接続され他端が接地点Gに接続された容量部311と、を備える。
【0056】
このため、アンテナ装置1において、MW(LW)帯の受信特性を良好にでき、かつ容量部311の容量性リアクタンスを調整することでVHF帯の共振点を希望する周波数に合わせて受信特性を良好にできる。さらに、アンテナ装置1において、別体のアンテナエレメントを追加せず、折り返し型構造をとることができ、容量部311により容量素子50の大型化を避けることができるので、構造を簡単かつ小さくできる。
【0057】
また、アンテナコイル35a及びアンテナコイル35bは、分布定数のコイル又は集中定数のコイルのチップ部品若しくはリード部品である。このため、アンテナコイル35a及びアンテナコイル35bを適切に設けることができる。
【0058】
また、容量部311は、分布定数の容量部又は集中定数のコンデンサのチップ部品若しくはリード部品である。このため、容量部311を適切に設けることができる。
【0059】
また、アンテナ装置1は、給電点P及び接地点Gを有する本体基板31と、本体基板31に立設され、容量素子50に電気的に接続され、アンテナコイル35a,35bを有するアンテナ基板34と、を備える。このため、容量素子50を所望の位置に配置できる。
【0060】
また、アンテナ装置1は、容量素子50を支持するインナーカバー部40を備える。このため、容量素子50を所望の位置に配置して確実に固定して支持できる。
【0061】
また、アンテナ装置1は、本体基板31及びインナーカバー部40が設置されたアンテナベース部20と、アンテナベース部20を車両に取り付ける車両取付具70と、シャークフィン形状のアンテナカバー部10と、を備える。このため、アンテナ装置1をシャークフィンアンテナ装置として構成できる。
【0062】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、アンテナ装置1は、AMラジオ放送/FMラジオ放送を受信するアンテナAT1を実装するものとしたが、これに限定されるものではなく、アンテナ装置1が、アンテナAT1に加えて、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号を受信するパッチアンテナなどの少なくとも1つの他のアンテナを実装する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、デザイン性を重視したシャークフィンアンテナ装置としてのアンテナ装置1を説明したが、これに限定されるものではない。図8(a)は、車両V1の前方斜視方向の各種アンテナ装置の取り付け位置を示す図である。図8(b)は、車両V1の後方斜視方向の各種アンテナ装置の取り付け位置を示す図である。
【0064】
図8(a)に示すように、図5に示す回路構成のアンテナAT1を有するアンテナ装置として、車両V1のルーフトップの位置p0に取り付けるアンテナ装置1以外にも、例えば、車両V1のインパネ(ダッシュボード)内部の位置p1に取り付けるインパネアンテナを有するアンテナ装置や、車両V1のドアミラーの位置p2に取り付けるドアミラーアンテナを有するアンテナ装置としてもよい。また、図8(b)に示すように、アンテナAT1を有するアンテナ装置として、車両V1のリアスポイラーの位置p3に取り付けるスポイラーアンテナを有するアンテナ装置や、車両V1のリアウインドウの位置p4に取り付けるガラスアンテナを有するアンテナ装置としてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、MW(LW)帯とVHF帯との2つの周波数帯の複合アンテナとしてのアンテナAT1を有するアンテナ装置1を説明したが、これに限定されるものではない。2つの周波数帯のうち、少なくも1つを他の周波数帯(UHF(Ultra High Frequency)帯など)とする構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、アンテナコイル35a,35b、容量部311を用いて、2つの周波数帯の複合アンテナとしてのアンテナAT1を有するアンテナ装置1を説明したが、これに限定されるものではない。アンテナAT1において、アンテナコイル35b及び容量部311が直列に接続された回路部を複数設け、各回路部のアンテナコイル35bの一端を容量素子50に電気的に接続し、各回路部の容量部311の一端を接地点Gに電気的に接続し、各回路部の他端を接地点に接続して接地する構成としてもよい。この構成により、アンテナ装置のアンテナAT1を、接地(短絡)させるアンテナコイル35b及び容量部311を増やすことにより、3つの周波数帯以上(例えば、MW(LW)帯とVHF帯とUHF帯との3つの周波数帯)の複合アンテナとすることができる。
【0067】
その他、上記実施の形態におけるアンテナ装置1の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 アンテナ装置
AT1 アンテナ
10 アンテナカバー部
20 アンテナベース部
21 平板部
21h1,21h2,21h3 螺子穴
21h4 穴部
30 基板部
31 本体基板
31h 穴部
311 容量部
32 ケーブルガイド部
33a,33b,33c,33d 接続端子
34 アンテナ基板
35a,35b アンテナコイル
36a,36b 接続端子
40 インナーカバー部
41 ドーム部
41a,41b 螺子穴部
42 平板部
42h 穴部
50 容量素子
51 容量板部
51a,51b 穴部
60 パッキン部
61,62 パッキン
70 車両取付具
S1,S2,S3,S4 螺子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8