(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ピンチ及びピンチハンガ
(51)【国際特許分類】
D06F 55/02 20060101AFI20230927BHJP
D06F 55/00 20060101ALI20230927BHJP
D06F 57/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
D06F55/02
D06F55/00 Z
D06F57/00 350
(21)【出願番号】P 2019190385
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】500367067
【氏名又は名称】株式会社カインズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 政良
(72)【発明者】
【氏名】升谷 賢児
(72)【発明者】
【氏名】逸見 隆
(72)【発明者】
【氏名】寺本 安志
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036696(JP,A)
【文献】実開昭56-035396(JP,U)
【文献】特開2016-202420(JP,A)
【文献】実開昭58-064286(JP,U)
【文献】特開平08-071293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128080(JP,U)
【文献】実公昭48-026907(JP,Y1)
【文献】中国特許出願公開第103850099(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0055150(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F55/00-55/02
D06F57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線回りに回動可能に組み付けられる一対のベース部と、
前記一対のベース部のうち、前記ベース部の延在方向で前記第1軸線に対して一方側にそれぞれ位置し、前記一対のベース部の前記第1軸線回りの回動に伴い接近離間可能に構成されて物品を挟持可能な挟持部と、を備え、
前記挟持部は、
前記第1軸線に沿う第2軸線回りにそれぞれ回転可能に前記ベース部に支持された第1挟持部と、
前記ベース部のうち、前記第1挟持部に対して前記第1軸線寄りに位置する部分から、向かい合う前記ベース部に向けて膨出する第2挟持部と、を含
み、
前記第2挟持部は、
一方の前記ベース部のうち、前記第1軸線に沿う方向の両端部から他方の前記ベース部に向けて膨出する一対の側壁部と、
一対の前記側壁部の頂部同士の間を直線状に結ぶ架け渡し部と、を備えているピンチ。
【請求項2】
一対の前記ベース部のうち、前記第1軸線に対して前記一方側に位置する部分が最も接近した状態において、前記第1挟持部同士は互いに当接する一方、前記第2挟持部同士は隙間をあけた状態で対向する請求項1に記載のピンチ。
【請求項3】
前記第2挟持部は、前記第1軸線に沿う方向に延在し、
前記ベース部のうち、前記第2挟持部に対して前記第1軸線寄りに位置する部分には、前記ベース部の延在方向に沿って延びるとともに、前記第2挟持部に連なるガイド部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のピンチ。
【請求項4】
前記第1挟持部は、
前記ベース部に支持され
るとともに、前記第2軸線に沿う方向から見て角形状に形成された回転体と、
前記回転体
の各角部から突出するとともに、前記第2軸線回りの周方向で間隔をあけて配置された複数の突起と、を備え、
前記周方向で隣り合う前記突起間の間隔は、前記突起における前記周方向の幅よりも広くなっている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のピンチ。
【請求項5】
前記第2挟持部は、前記ベース部に比べて摩擦係数が大きい材料によって、前記ベース部とは別体で設けられている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のピンチ。
【請求項6】
支持部材に吊り下げられるフックと、
前記フックに支持されたフレームと、
前記フレームに間隔をあけて複数取り付けられた請求項1から請求項5の何れか1項に記載のピンチと、を備えるピンチハンガ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンチ及びピンチハンガに関する。
【背景技術】
【0002】
ピンチは、一対のベース部が回動可能に組み合わされている。使用者は、一対のベース部のうち、回動軸に対して一方側に位置する把持部分を互いに接近させる側に摘まむことで、回動軸に対して他方側に位置する保持部分が互いに離間する。この状態で保持部分の間に洗濯物等(以下、単に洗濯物という。)を進入させ、把持部分に付与された把持力を弱める。すると、一対のベース部間に介在する付勢部材の付勢力によって保持部分同士が互いに接近する。これにより、保持部分の間に洗濯物を挟持できるようになっている。
【0003】
ところで、下記特許文献1,2には、保持部分に回転体を設ける構成が開示されている。この構成によれば、ピンチに挟持された洗濯物を下方に引っ張ることで、洗濯物と回転体との間に作用する転がり摩擦によって回転体が回転する。すると、洗濯物が下方に送り出され、洗濯物がピンチから取り外される。その結果、把持部分の操作によって保持部分を離間させることなく洗濯物をピンチから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3653683号公報
【文献】特許第3637432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保持部分に回転体を用いた場合、保持部分と洗濯物との間に作用する転がり摩擦は、保持部分と洗濯物との間に作用する滑り摩擦よりも小さくなるのが一般的である。したがって、保持部分の保持力は、滑り摩擦よりも転がり摩擦が支配的になる。この場合、回転体の保持力のみで洗濯物に対して所望の保持力を発揮させることが難しい。そのため、上述した従来技術にあっては、意図したとき(例えば、洗濯物の取り込み時等)に洗濯物をピンチから容易に取り外すことができ、意図しないときに洗濯物が落下しないような所望の保持力(回動軸回りのトルク)を得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、意図したときに洗濯物をピンチから容易に取り外すことができ、意図しないときに洗濯物が落下しないような所望の保持力を得ることができるピンチ及びピンチハンガを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るピンチは、第1軸線回りに回動可能に組み付けられる一対のベース部と、前記一対のベース部のうち、前記ベース部の延在方向で前記第1軸線に対して一方側にそれぞれ位置し、前記一対のベース部の前記第1軸線回りの回動に伴い接近離間可能に構成されて物品を挟持可能な挟持部と、を備え、前記挟持部は、前記第1軸線に沿う第2軸線回りにそれぞれ回転可能に前記ベース部に支持された第1挟持部と、前記ベース部のうち、前記第1挟持部に対して前記第1軸線寄りに位置する部分から、向かい合う前記ベース部に向けて膨出する第2挟持部と、を含んでいる。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るピンチハンガは、支持部材に吊り下げられるフックと、前記フックに支持されたフレームと、前記フレームに間隔をあけて複数取り付けられた上記態様に係るピンチと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、意図したときに物品をピンチから容易に取り外すことができ、意図しないときに物品が落下しないような所望の保持力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るピンチの正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るピンチの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るピンチの分解斜視図である。
【
図4】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】洗濯物が挟持された状態を示すピンチの部分正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るピンチハンガの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るピンチハンガの平面図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係るピンチの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0011】
[ピンチ1]
図1は、実施形態に係るピンチ1の正面図である。
図2は、実施形態に係るピンチ1の斜視図である。
図1、
図2に示すピンチ1は、一対のピンチ片10と、ピンチ片10同士を連結する連結部11と、を備えている。ピンチ1は、ピンチ片10同士が第1軸線O1回りに回動可能に組み合わされることで、例えば洗濯物(物品)を挟持可能に構成されている。なお、各ピンチ片10は、互いに同等の構成になっている。したがって、以下では、一対のピンチ片10のうち、主に一方のピンチ片10を例にして説明する。
【0012】
ピンチ片10は、ベース部20と、支点部21と、第1挟持部22と、第2挟持部23と、を備えている。本実施形態において、ピンチ片10は、樹脂材料等により形成されている。
ベース部20は、第1軸線O1に沿う方向(第1軸線O1方向)から見た正面視において、他方のピンチ片10に接近する側に突の円弧状に湾曲しながら、上下方向(延在方向)に延在している。したがって、ピンチ1は、全体として下方に向けて先細る正面視V字状に形成されている。ベース部20は、正面視において、第1軸線O1に対して一方側(上方)に位置する把持部25と、第1軸線O1に対して他方側(下方)に位置する保持部26と、を備えている。
【0013】
図3は、ピンチ1の分解斜視図である。
図3に示すように、支点部21は、ベース部20に一体に形成されている。支点部21は、ベース部20のうち、上下方向の中央部(把持部25と保持部26との境界部分)から、他方のピンチ片10に接近する側に突出する突出部28を備えている。突出部28は、正面視で半円状に形成されている。突出部28は、第1軸線O1方向に間隔をあけて複数配置されている。突出部28は、各ピンチ片10において第1軸線O1方向で異なる位置(互い違い)に配置されている。
【0014】
支点部21は、一方のベース部20のうち、他方のベース部20の突出部28と第1軸線O1方向で同じ位置に、軸受部29を備えている。軸受部29は、突出部28に対して他方のベース部20から離間する側に窪んでいる。ピンチ1は、一方のベース部20における突出部28が他方のベース部20の軸受部29内に摺動可能に保持され、かつ各ピンチ片10の突出部28同士が正面視で重なり合うように組み合わされる(噛み合う)。これにより、ピンチ1は、突出部28における正面視の中央部を通る第1軸線O1回りに回動可能に構成されている。
【0015】
把持部25の上端部(第1軸線O1から離間する側の端部)には、凹部31が形成されている。凹部31は、一方のピンチ片10の外面に対して他方のピンチ片10に接近する側に窪んでいる。凹部31の底壁には、係止溝32が形成されている。係止溝32は、第1軸線O1方向を幅方向とし、上下方向に延びている。係止溝32は、幅広部33と、幅広部33の上方に連なる幅狭部34と、を備えている。係止溝32内には、後述するハンガフレーム112にピンチ1を吊り下げるための接続部材102が係止される。本実施形態において、凹部31の周壁には、上方に開口する挿入溝35が形成されている。なお、ピンチ1を単体で用いる場合等には、凹部31や係止溝32が形成されていなくてもよい。
【0016】
保持部26の下部には、回転体収容部41が形成されている。回転体収容部41は、下方に開口するとともに、保持部26をピンチ片10の厚さ方向(各ピンチ片10同士が対向する方向)に貫通している。
【0017】
図4は、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図4に示すように、ベース部20において、把持部25の下端部には、通過孔43が形成されている。通過孔43は、把持部25をピンチ片10の厚さ方向に貫通するとともに、上下方向に延在している。ベース部20において、支点部21から保持部26の上部に至る部分には、バネ受部44が形成されている。バネ受部44は、ベース部20に対してピンチ片10の厚さ方向に窪み、上下方向に延びる溝状に形成されている。バネ受部44は、上端部において、上述した通過孔43に連通している。
【0018】
第1挟持部22は、回転体収容部41内において、第1軸線O1に平行な第2軸線O2回りに回転可能に収容されている。具体的に、第1挟持部22は、回転体51と、突起52と、を備えている。
回転体51は、正面視で六角形状に形成されている。回転体51は、回転体収容部41の内面のうち、第1軸線O1方向で対向する部分から突出する軸部41aに回転可能に支持されている。なお、回転体51の正面視形状は、六角形状以外の角形状であっても、円形状であってもよい。
【0019】
突起52は、回転体51における各角部から突出している。すなわち、突起52は、第2軸線O2回りの周方向で間隔をあけて複数配置されている。突起52は、正面視において基端側に向かうに従い漸次広がるテーパ状に形成されている。これにより、突起52の基端部は、回転体51の外周面に滑らかに連なっている。一方、突起52の先端部は、丸みを帯びている。本実施形態において、各突起52の第2軸線O2回りの周方向の幅は、周方向で隣り合う突起52間の幅(回転体51の辺部分の幅)よりも狭くなっている。
【0020】
なお、
図4の例において、軸部41aは、回転体収容部41において、一方のピンチ片10の厚さ方向における中心に対して他方のピンチ片10寄りに位置している。したがって、一方のピンチ片10の厚さ方向において、回転体収容部41に対する第1挟持部22の膨出量は、他方のピンチ片10に接近する側の膨出量B1が他方のピンチ片10から離間する側の膨出量B2に比べて大きくなっている。
【0021】
図3に示すように、第2挟持部23は、保持部26のうち、第1挟持部22(回転体収容部41)よりも上方に位置する部分に、保持部26(ピンチ片10)と一体に形成されている。第2挟持部23は、側壁部61と、架け渡し部62と、を備えている。
側壁部61は、保持部26のうち第1軸線O1方向の両端部から他方のピンチ片10に向けて膨出している。側壁部61は、正面視で半円状に形成されている。
架け渡し部62は、各側壁部61間を第1軸線O1方向に架け渡している。架け渡し部62は、第1軸線O1方向に直線状に延び、各側壁部61の頂部(最も他方のピンチ片10側に突出した部分)同士を接続するリブ状に形成されている。架け渡し部62の先端面は、側壁部61の頂部と面一の湾曲面とされている。
【0022】
保持部26のうち、第1軸線O1方向において各側壁部61間に位置し、架け渡し部62の上方に位置する部分には、ガイドリブ(ガイド部)65が形成されている。ガイドリブ65は、保持部26から他方のピンチ片10に向けて突出するとともに、上下方向に延在している。ガイドリブ65の下端は、架け渡し部62に連なっている。ガイドリブ65の先端縁は、側壁部61の外周縁に倣って円弧状に湾曲している。本実施形態において、ガイドリブ65は、第1軸線O1方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0023】
図3、
図4に示すように、連結部11は、金属等の線材が下方に開口するU字状に屈曲された線バネ状に形成されている。連結部11は、各ピンチ片10の通過孔43を通じて各ピンチ片10間を跨り、各ピンチ片10のバネ受部44内に保持されることで、各ピンチ片10同士を連結している。連結部11は、バネ受部44を介して各ピンチ片10の保持部26同士を接近させる方向に付勢している。具体的に、連結部11は、一対の押圧部71と、押圧部71の上端部同士を接続する接続部72と、を備えている。
【0024】
押圧部71は、各ピンチ片10のバネ受部44内に収容されている。各押圧部71は、互いに接近離間する方向に蛇行しながら下方に延在している。押圧部71の下端部は、バネ受部44に当接している。本実施形態において、押圧部71とバネ受部44との当接部分は、上述した第2挟持部23(架け渡し部62)よりも上方に位置している。但し、押圧部71とバネ受部44との当接部分は、第2挟持部23と同一高さ、若しくは第2挟持部23の下方であってもよい。また、押圧部71の上端部は、バネ受部44から上方に突出して、通過孔43を臨んでいる。
接続部72は、通過孔43を通じて押圧部71の上端部同士を接続している。
【0025】
ここで、
図4に示すように、本実施形態のピンチ1は、初期状態(把持部25に対して把持力が付与されていない状態)において、連結部11の付勢力により各ピンチ片10の保持部26同士が第1挟持部22を介して押し付け合った状態に保持される。この場合、各ピンチ片10の第2挟持部23同士は、ピンチ片10の厚さ方向において、互いに離間している。本実施形態では、各ピンチ片10の保持部26同士が最も接近した最接近位置において、第2挟持部23同士が離間していることが好ましい。最接近位置とは、一方のピンチ片10における突起52の先端が、他方のピンチ片10における回転体51の辺部分のうち、突起52の基端部周辺に当接している位置である。
【0026】
[作用効果]
次に、上述したピンチ1の作用について説明する。
図5は、洗濯物Sが挟持された状態を示すピンチ1の部分正面図である。
図5に示すように、ピンチ1によって洗濯物Sを挟持する際には、まず各ピンチ片10の把持部25同士を、互いに接近する側に摘まむ。すると、各ピンチ片10は、連結部11の付勢力に抗して、保持部26が互いに離間する側に回動する。
【0027】
続いて、保持部26の間に洗濯物Sを進入させた後、把持部25に付与された把持力を弱める。すると、各ピンチ片10は、連結部11の付勢力によって保持部26同士が互いに接近する側に回動する。これにより、保持部26の間に洗濯物Sを挟持できる。具体的に、厚手の洗濯物Sの場合は、洗濯物Sを支点部21付近まで進入させることで、第1挟持部22及び第2挟持部23の双方に挟持された状態となる。この際、洗濯物Sは、第1挟持部22から洗濯物に作用する保持力(第1軸線O1回りのトルク)、及び第2挟持部23から洗濯物に作用する保持力それぞれに起因する摩擦力によって保持される。
【0028】
洗濯物Sをピンチ1から取り外すには、洗濯物Sを下方に引っ張り下ろす。ここで、第1挟持部22と洗濯物Sとの間に作用する転がり摩擦は、第1挟持部22と洗濯物Sとの間に作用する滑り摩擦よりも小さい。そのため、第1挟持部22の保持力は、滑り摩擦よりも転がり摩擦が支配的になる。その上で、洗濯物に作用する引張力が、第1挟持部22と洗濯物Sとの間に作用する最大転がり摩擦力と、第2挟持部23と洗濯物Sとの間に作用する最大静摩擦力と、の和を上回ると、洗濯物Sが各ピンチ片10(保持部26)の間から引っ張り下ろされる。これにより、各ピンチ片10の第1挟持部22は、洗濯物Sとの間に作用する転がり摩擦により互いに逆方向に回転する。その結果、把持部25の操作によって保持部26を離間させることなく、洗濯物Sをピンチ1から取り外すことができる。
【0029】
このように、本実施形態では、回転可能な第1挟持部22及びベース部20から突出した第2挟持部23によって洗濯物を保持する構成とした。
この構成によれば、
図5に示すように、第1軸線O1から第1挟持部22までの距離をL1、第1軸線O1から第2挟持部23までの距離をL2、第1軸線O1から押圧部71とバネ受部44との当接部分までの距離をL3とし、第1挟持部22と洗濯物Sとの間に作用する保持力をF1、第2挟持部23と洗濯物Sとの間に作用する保持力をF2、連結部11の付勢力をF3とした場合、ピンチ1の全体での保持力Fは以下の式で表される。
F=F3・L3=F1・L1+F2・L2
すなわち、第1挟持部22及び第2挟持部23で洗濯物Sを挟持した場合には、連結部11の付勢力が第1挟持部22及び第2挟持部23に分散されることになる。しかし、本実施形態では、第2挟持部23において、滑り摩擦によって洗濯物を保持することで、連結部11の付勢力を効果的に洗濯物に付与することができる。そのため、例えば第1挟持部22のみによって洗濯物を保持する場合に比べ、連結部11の付勢力を変更せずに、洗濯物Sの保持力を高めることができる。
一方、第1挟持部22及び第2挟持部23のうち、第1挟持部22が回転可能に構成されていることで、例えば第1挟持部及び第2挟持部の双方において、滑り摩擦による保持力を支配的にする場合に比べ、ピンチ1の保持力を弱めることができる。そのため、洗濯物Sを下方に引っ張り下ろした際には、第1挟持部22と洗濯物Sとの間に作用する転がり摩擦によって洗濯物Sを取り外し易くなる。
その結果、意図したときに洗濯物Sをピンチ1から容易に取り外すことができ、意図しないときに洗濯物Sが落下しないような所望の保持力を得ることができる。
【0030】
特に、本実施形態では、第2挟持部23の形状(例えば、ベース部20に対する第2挟持部23の膨出量や洗濯物Sとの接触面積)によってピンチ1の保持力を変更することができる。そのため、連結部11の付勢力を変更したり、第1挟持部22自体の保持力を変更したりする場合に比べ、設計自由度の向上を図ることができる。
【0031】
本実施形態において、各ピンチ片10の保持部26同士が最も接近した最接近位置において、第1挟持部22同士が互いに当接する一方、第2挟持部23同士は離間している構成とした。
この構成によれば、第2挟持部23から洗濯物Sに作用する保持力が過大になるのを抑制できる。したがって、洗濯物Sを引っ張り下ろす際に、第2挟持部23と洗濯物Sとの間に作用する摩擦力によって洗濯物が傷付いたりするのを抑制できる。特に、比較的薄手の洗濯物Sを保持する際等には、第2挟持部23と洗濯物Sとの間に作用する保持力F2(滑り摩擦)を小さくすることができ、洗濯物Sが傷付くのをより確実に抑制できる。
【0032】
本実施形態では、第2挟持部23の架け渡し部62が第1軸線O1方向に延在している構成とした。
この構成によれば、第2挟持部23を洗濯物Sに対して線接触させることができ、第2挟持部23から洗濯物Sに対して局所的に保持力が作用するのを抑制できる。しかも、本実施形態では、上下方向に延びるガイドリブ65が洗濯物を引っ張り下ろす際のガイドとして機能する。これにより、洗濯物が第2挟持部23に引っ掛かる等のおそれを軽減し、洗濯物Sが傷付くのを抑制できる。
【0033】
本実施形態では、第2軸線O2回りの周方向において、各突起52の幅が、隣り合う突起52間の間隔よりも狭い構成とした。
この構成によれば、第1挟持部22により洗濯物Sを保持する際において、一方のピンチ片10における突起52が、他方のピンチ片10における回転体51の辺部分(隣り合う突起52間に位置する部分)に洗濯物Sを介して対向し易くなる。すなわち、各ピンチ片10において、第1挟持部22の突起52同士が噛み合い易くなるので、連結部11の付勢力F3を増加させることなく、洗濯物Sをより安定して保持し易くなる。
【0034】
[ピンチハンガ]
図6は、ピンチハンガ100の斜視図である。
図6に示すように、ピンチハンガ100は、ハンガ本体101と、接続部材102と、上述したピンチ1と、を備えている。
ハンガ本体101は、上側ハンガベース110と、下側ハンガベース111と、ハンガフレーム112と、を備えている。
【0035】
各ハンガベース110,111は、上下方向に沿う第3軸線回りO3に互いに回転可能に組み合わされている。各ハンガベース110,111は、例えば樹脂材料等により形成されている。
【0036】
上側ハンガベース110は、上側ハブ120と、一対のスリーブ121と、フック122と、を備えている。
上側ハブ120は、平面視で円形状に形成されている。
各スリーブ121は、上側ハブ120の外周面のうち、第3軸線O3回りで約180°ずれた位置から片持ちで延在している。
フック122は、上側ハブ120から上方に延在している。フック122は、例えば物干し竿等の支持部材に係止可能に構成される。フック122が物干し竿等に係止されることで、ピンチハンガ100が物干し竿等に吊り下げられる。
【0037】
下側ハンガベース111は、下側ハブ130と、一対のスリーブ131と、取手132と、を備えている。
下側ハブ130は、上側ハブ120に下方から組み合わされている。下側ハブ130は、上側ハブ120に対して第3軸線O3回りに相対回転可能に構成されている。
スリーブ131は、下側ハブ130の外周面のうち、第3軸線O3回りで約180°ずれた位置から片持ちで延在している。
取手132は、下側ハブ130から下方に延在している。ピンチハンガ100は、例えば物干し竿等の支持部材に吊り下げられた状態において、取手132を介して持ち上げることができる。これにより、高所で係止されたフック122の係止を解除することができる。
【0038】
ハンガフレーム112は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成されている。ハンガフレーム112は、円筒状に形成されている。ハンガフレーム112の基端部は、上述したスリーブ121,131内にそれぞれ保持されている。これにより、各ハンガフレーム112は、各スリーブ121,131からそれぞれ片持ちで延在している。
【0039】
図7は、ピンチハンガ100の平面図である。
図7に示すように、ハンガ本体101は、各ハンガベース110,111が第3軸線O3回りに相対回転することで、展開位置(
図7中実線)及び収納位置(
図7中鎖線)の間を移動する。ハンガ本体101は、展開位置において、各ハンガフレーム112同士が第3軸線O3回りで約90°間隔で配置されることで、平面視X字状をなしている。一方、ハンガ本体101は、収納位置において、各ハンガベース110,111に保持されたハンガフレーム112同士が互いに並んで配置されることで、平面視で直線状をなしている。
【0040】
図6に示すように、接続部材102は、本体接続部140と、ピンチ接続部142と、を備えている。本体接続部140は、延長部144と、本体係止部145と、を備えている。
【0041】
延長部144は、上下方向に延在している。
本体係止部145は、延長部144の上端部から下方に向かうに従い互いに離間する方向に延在している。本体係止部145は、互いに接近離間する方向に弾性変形可能に構成されている。本体係止部145は、ハンガフレーム112に形成された取付孔152内に挿入されている。取付孔152は、下方に開口するとともに、ハンガフレーム112の延在方向に間隔をあけて形成されている。本体係止部145は、取付孔152を通じてハンガフレーム112内に進入することで、ハンガフレーム112の内面に上方から係止されている。
【0042】
ピンチ接続部142は、アーチ部155と、ピンチ係止部156と、を備えている。
アーチ部155は、上方に向けて突の円弧状に形成されている。アーチ部155の頂部は、延長部144の下端に接続されている。
【0043】
図2、
図4に示すように、ピンチ係止部156は、アーチ部155の両端部に形成されている。ピンチ係止部156は、アーチ部155の両端部において、互いに対向する向きに突出している。具体的に、ピンチ係止部156は、首部158と、首部158の先端部から外周側に張り出す張出部159と、を備えている。
【0044】
ピンチ係止部156をピンチ1に係止するには、上述した幅広部33内にピンチ係止部156を挿入した後、ピンチ係止部156をピンチ1に対して上方引き上げる。すると、首部158が幅狭部34内に進入するとともに、張出部159が把持部25に対してピンチ片10の厚さ方向で係止される。この場合、アーチ部155は、両端部が凹部31内に収容されるとともに、挿入溝35を通じて上方に引き出されている。これにより、ピンチ片10の外面に対してアーチ部155が膨出するのを抑制できる。
【0045】
本実施形態のピンチハンガ100では、一又は複数のピンチ1を用いて洗濯物を保持する。これにより、複数の洗濯物を一括して干すことができる。なお、以下の説明では、ハンガ本体101が平面視X字状に形成された構成について説明したが、ハンガ本体の辺メイン視形状は矩形枠状や円形枠状等、適宜変更が可能である。
【0046】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、最接近位置において、第2挟持部23同士が離間している構成について説明したが、この構成に限られない。最接近位置において、第1挟持部22及び第2挟持部23それぞれが当接していてもよく、第2挟持部23同士が当接し、第1挟持部22同士が離間していてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、第1挟持部22が突起52を有する構成について説明したが、突起52のピッチや形状等は適宜変更が可能である。また、第1挟持部22は、少なくとも回転可能に構成されていれば、突起52を有さない構成であってもよい。また、第1挟持部22の表面を回転体51と別材料で形成する等してもよい。
【0048】
上述した実施形態では、第2挟持部23がベース部20に一体に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、第2挟持部23は、ベース部20と別体で形成されていてもよい。このような構成として、
図8に示すピンチ1は、ベース部20のうち、第1挟持部22の上方に位置する部分に、取付凹部200が形成されている。取付凹部200は、向かい合うベース部20に向けて開口している。
【0049】
第2挟持部201は、ベース部20の形成材料よりも弾性に優れ、かつベース部20の形成材料に対して摩擦係数の大きい材料により形成されている。図示の例では、ベース部20がPP樹脂により形成されるのに対し、第2挟持部201はEVA樹脂により形成されている。
第2挟持部201は、嵌合部210と、膨出部211と、が一体に形成されたものである。
嵌合部210は、上述した取付凹部200内に嵌め込まれている。
膨出部211は、嵌合部210から向かい合うベース部20に向けて膨出している。本実施形態において、膨出部211は、第1軸線O1方向に向けて延びる半円柱状に形成されている。膨出部211の下部には、上述した回転体収容部41の上部を避ける逃げ部213が形成されている。
【0050】
図8の構成によれば、ベース部20と第2挟持部201とを別体で形成することで、第2挟持部201の材料や形状等の選択自由度を向上させることができる。特に、第2挟持部201をベース部20よりも摩擦係数の大きい材料により形成することで、第2挟持部201と洗濯物Sとの間に作用する最大静摩擦力を高めることができる。その結果、洗濯物Sの保持力を高めることができる。
【0051】
なお、第2挟持部201は、ベース部20に対して摩擦係数の小さい材料等により形成してもよい。
上述した実施形態では、第2挟持部23がベース部20における第1軸線O1方向全体に亘って延在している構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、第2挟持部23は、第1軸線O1方向において、間隔をあけて形成されてもよい。
上述した実施形態では、第2挟持部23の先端が丸みを帯びている構成について説明したが、この構成に限られない。第2挟持部23の先端は、平坦であっても、凹凸を有していてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、連結部11として押しばねを用いた構成について説明したが、この構成に限らず、引きばねを用いてもよい。
上述した実施形態では、第1挟持部22及び第2挟持部23の2つの挟持部を有する構成について説明したが、この構成に限らず、3つ以上の挟持部を有していてもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ピンチ
20…ベース部
22…第1挟持部
23…第2挟持部
51…回転体
52…突起
65…ガイドリブ(ガイド部)
100…ピンチハンガ
122…フック
S…洗濯物(物品)